特許第5759073号(P5759073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5759073スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物、製造方法、並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759073
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物、製造方法、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/40 20060101AFI20150716BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   C08F2/40
   C08F12/00 510
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-526604(P2014-526604)
(86)(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公表番号】特表2014-524504(P2014-524504A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】IN2012000553
(87)【国際公開番号】WO2013054353
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】2403/MUM/2011
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512169534
【氏名又は名称】ドルフ ケタール ケミカルズ(インド)プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DORF KETAL CHEMICALS (INDIA) PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニヤム,マヘッシ
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−321401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0034247(US,A1)
【文献】 特開2005−247927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物であって、
当該添加剤組成物はアミン及びキノンメチドからなり、
前記アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)、プロポキル化エチレンジアミン(PED)、トリエタノールアミン(TEA)、トリブチルアミン(TBA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン(MEA)及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される、
添加剤組成物。
【請求項2】
前記アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)、プロポキル化エチレンジアミン(PED)、及びトリエタノールアミン(TEA)、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
前記アミンはトリブチルアミン(TBA)である、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
前記アミンはジエタノールアミン(DEA)及びモノエタノールアミン(MEA)及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物であって、
当該添加剤組成物は酸化物処理したアミンの誘導体及びキノンメチドからなり、
前記酸化物処理したアミンの誘導体は酸化エチレン、酸化プロピレン及び酸化ブチレン処理したアミンの誘導体からなるグループから選択される、
添加剤組成物。
【請求項6】
前記酸化物処理したアミンの誘導体はN,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミンのエトキシル化誘導体(UOP5+EO)である、請求項5に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記組成物は99:1乃至50:50、99:1乃至85:15、99:1乃至90:10、及び95:5乃至90:10の重量パーセント比からなるグループから選択される重量パーセント比でキノンメチド及び前記アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体からなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記キノンメチドが4−ベンジリデン−2,6−ジ−tert−ブチルシクロヘキサ−2,5ジエノンである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の製造方法であって、当該製造方法はキノンメチド及び前記アミンもしくは前記酸化物処理したアミンの誘導体を請求項7に記載の重量パーセント比で混合することを有する、製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の使用方法であって、当該使用方法はキノンメチド及び前記アミンもしくは前記酸化物処理したアミンの誘導体の請求項7に記載の重量パーセント比での混合物からなる組成物をスチレン重合の反応装置に添加することを有する、使用方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の使用方法であって、当該使用方法は成分a)キノンメチド及び成分b)前記アミンもしくは前記酸化物処理したアミンの誘導体を請求項7に記載の重量パーセント比でスチレン重合の反応装置に別々に添加することを有する、使用方法。
【請求項12】
前記組成物を、スチレンの重合における反応材料の重量に基づき1乃至1200ppm、1乃至400ppm、150乃至300ppm、及び200乃至300ppmの量からなるグループから選択される量で使用する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物を60乃至170℃、及び90乃至140℃の温度からなるグループから選択される温度範囲で使用する、前記請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明はモノマー、特にスチレン、の重合を抑制及び阻害する添加剤組成物に関する。
【0002】
一実施形態において、本発明はモノマー、特にスチレン、の重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の製造方法に関する。
【0003】
別の実施形態において、本発明はモノマー、特にスチレン、の重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景:
モノマーの、特に処理中のスチレンの重合は懸案事項であるが、なぜかというと望まないポリマーの形成を起こし、結果として最終生成物の収率の損失となり、プロセスを不経済なものにするからである。
【0005】
当該技術においてスチレンの重合の問題を克服するための阻害剤及び遅延剤及びそれらの組み合わせの使用が報告されていた。
【0006】
阻害剤単独を使用する問題は、阻害剤は継続的にもしくは一定間隔で添加しなければならないということである。なぜならばいったん阻害剤が消費されると、重合が再び開始するからである。
【0007】
遅延剤を使用する問題は、遅延剤はスチレンの重合を実質的な阻害のレベルまでもしくは阻害の許容可能なレベルまで減らすのにあまり有効でないことである。
【0008】
先行技術は重合阻害剤としてキノンメチド(QM)の使用を開示する。他方、本発明者が見出したのであるが(実施例を参照)、キノンメチドを使用する主たる問題は、阻害の許容可能なレベルを達成するにはより大量のキノンメチドを使用しなければならないということ、及びそのような大量の使用はプロセスのコストの増加をもたらすだけでなく、キノンメチドの不安定な性質のため望まない生成物の形成をももたらすことである。
【0009】
先行技術はまたスチレン重合阻害剤としてキノンメチド及び4HT(4−ヒドロキシtempo−2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシド)を有するキノンメチド系組成物を提案している。他方、本発明者が発見したのであるが(実施例を参照)、この周知のキノンメチドの組成物を使用する主たる問題は、大量の使用においても重合の問題は許容可能なレベルまで解消しないことである。
【0010】
先行技術(特許文献1)は阻害剤と遅延剤との組み合わせの使用を開示している。そこでの阻害剤はアルキルヒドロキシルアミンからなる重合阻害剤であり、遅延剤は7−置換キノンメチドである。この組成物の主たる問題は、組成物が継続的に消費され且つ次第に使い果たされてしまう阻害剤を使用することである。よって阻害剤は継続的にもしくは断続的に添加されなければならない、もしくはシステム中に阻害剤の適切量が維持されることを少なくとも確実にしなければならない(特許文献1の第4欄、7〜13行目)。
先行技術D1(特許文献2)は、キノンメチド4−ベンジリデン−2,6−ジ−tert−ブチル−シクロヘキサ−2,5−ジエノン(QM)、ヒドロキシルアミン及びカテコール(これは4−tert−ブチルカテコール(TBC)である)を有する、スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物を開示する(D1の要約、段落0009、0019、0024、実施例、表1、請求項1、請求項10について)。
先行技術D2(特許文献3)はQMとの組み合わせにおけるフェニレンジアミンの使用を開示する(D2の実施例3、段落番号0033について)。
先行技術D3(特許文献4)は酸化型アミンを開示するが、メチドと酸化型アミンの組み合わせを開示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【0011】
【特許文献1】 US7651635B1号
【特許文献2】 US2004/034247A1号
【特許文献3】 US2006/2020089A1号
【特許文献4】 US6342648B1号
本発明によれば「スチレンの重合の阻害の許容可能なレベル」は、スチレンの少なくとも98.5%、好ましくは少なくとも99%の重合の阻害であり、即ちスチレンの1.5%までしか、特に1%までしか重合しないことである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の需要:
したがって、スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適しているだけでなく、きわめて低い投入量をも要求される添加剤組成物の要求が依然としてある。
【0013】
スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適した、特にきわめて低い投入量での添加剤組成物の製造方法を有することへの要求もある。
【0014】
さらにスチレンの重合を実質的に抑制及び阻害する添加剤組成物の特にきわめて低い投入量での使用方法を有することへの要求がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適しているだけでなく、きわめて低い投入量をも要求される添加剤組成物を提供することにより上述の目下の産業上の問題の解決策を提供することを目的とする。
【0016】
本発明は、スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適した、特にきわめて低い投入量での添加剤組成物の製造方法を提供することにより上述の目下の産業上の問題の解決策を提供することをも目的とする。
【0017】
本発明は、スチレンの重合を実質的に抑制及び阻害する添加剤組成物の特にきわめて低い投入量での使用方法を提供することにより上述の目下の産業上の問題の解決策を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的:
したがって本発明の主たる目的は、スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適しているだけでなく、スチレンの重合の阻害が同レベルもしくはより優れたレベルを達成するための先行技術の添加剤の投入量と比較してきわめて低い投入量をも要求される添加剤組成物を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、スチレンの重合の実質的な抑制と阻害に適した、スチレンの重合の阻害が同レベルもしくはより優れたレベルを達成するための先行技術の添加剤の投入量と比較して特にきわめて低い投入量での添加剤組成物の製造方法を提供することである。
【0020】
さらに本発明の他の目的は、スチレンの重合を実質的に抑制及び阻害する添加剤組成物の、スチレンの重合の阻害が同レベルもしくはより優れたレベルを達成するための先行技術の添加剤の投入量と比較して特にきわめて低い投入量での使用方法を提供することである。
【0021】
本発明は、重合阻害の許容可能なレベルを提供できる、即ちスチレンの重合の阻害が同レベルもしくはより優れたレベルを達成するための先行技術の添加剤の投入量と比較して低い有効投入量においてさえもスチレンを含むモノマーの重合を減らせる、添加剤組成物を提供することを目的とする。
【0022】
本発明は、スチレンの重合の阻害が同レベルもしくはより優れたレベルを達成するための先行技術の添加剤の投入量と比較して低い有効投入量においてさえも、スチレンを含むモノマーの重合を1.5%未満に、特に1.0%未満に、実質的に減らすのに適当である添加剤組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、添加剤組成物を提供することを目的とするが、ここでは当該添加剤組成物においてキノンメチドの量は減らされており、したがって本発明の組成物は経済的である。キノンメチドは高価であり、容易に入手可能ではない。
【0024】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の範囲を制限することを意図しない実施例と関連付けて読むならば、以下の説明からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の説明及び好ましい実施形態:
先行技術の上述の問題を克服する及び本発明の上述の目的を達成するという意図により、本発明者は、本発明の重合非阻害アミン及びキノンメチドを有する組成物を使用した場合、スチレンの重合が驚くべきこと且つ意外にも実質的に(ここで定義される)許容可能なレベルに抑制且つ阻害されることを発見した。
【0026】
さらに驚くべき且つ意外であることは、本発明の重合非阻害アミンのいくつかは約ゼロの(実質ゼロ%の)スチレン重合という結果となること、即ち約100%の限度までスチレン重合を抑制及び阻害可能であることが分かったこと、及び本発明の重合非阻害アミンのいくつかは約1%のスチレン重合という結果となり、即ち約99%の限度までスチレン重合を抑制及び阻害可能であること(これは実質的に高いスチレン重合の抑制及び阻害である)が分かったことである。
【0027】
したがって、本発明はスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物に関する。ここで組成物はアミン及びキノンメチドを有し、及び前記アミンは重合非阻害剤アミンである。
【0028】
用語「アミンは重合非阻害剤アミンである」とは、先行技術の開示及び教示に反して、アミンそれ自体はスチレンの重合を許容可能なレベルに阻害可能ではないことを意味する。本発明の重合非阻害アミンはアミンなしで実行したブランクの実施例についての19.66%スチレン重合と比較して約14乃至18%のスチレン重合という実質的に高い重合の結果となる(表2を参照)ことが分かった。それゆえ本発明の「アミン」は「重合非阻害剤アミン」と名付ける。
【0029】
本発明の実施形態の一つによれば、重合非阻害アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)、プロポキル化エチレンジアミン(PED)、トリエタノールアミン(TEA)、トリブチルアミン(TBA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン(MEA)及びこれらの組み合わせからなるからなるグループから選択される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、重合非阻害アミンはプロポキル化エチレンジアミン(PED)である。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリブチルアミン(TBA)である。
【0033】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはジエタノールアミン(DEA)である。
【0034】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリエタノールアミン(TEA)である。
【0035】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはモノエタノールアミン(MEA)である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、プロポキル化エチレンジアミン(PED)はBASFから商品名Quadrol204(登録商標)で入手可能なものである。しかしながら本発明はQuadrol204(登録商標)に限定されない。
【0037】
本発明者は、酸化物処理したアミンの誘導体を本発明組成物で使用する場合、そのアミンの効率は驚くべきこと且つ意外にもさらに向上することをも発見した。本発明者は、当該酸化物処理したアミンの誘導体は酸化エチレン、酸化プロピレン及び酸化ブチレン処理したアミンの誘導体を包含することを確認している。
【0038】
したがって一実施形態において、本発明は酸化物処理したアミンの誘導体及びキノンメチドを有する、スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物にも関わる。ここでアミンは重合非阻害剤アミンである。
【0039】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミンの誘導体は、酸化エチレン、酸化プロピレン及び酸化ブチレン処理したアミンの誘導体からなるグループから選択される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミン誘導体はN,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミンのエトキシル化(酸化エチレン処理した)誘導体(UOP5+EO)である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、組成物は当該アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体約50%までを有してよい。しかしながら驚くべきこと且つ意外にも、当該アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体のパーセント量約15%を超えて、特に約10%を超えて増やしたとき、当該アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体を有する組成物の効率が当該アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体のパーセント量の増加により減り始めることが分かった。しかしながら、わずかに高い投入量において、例えば約300ppmの投入量において、依然として望ましい許容可能な効率が与えられる。
【0042】
したがって本発明の実施形態の一つによれば、当該組成物のキノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至50:50のパーセント比で使用される。
【0043】
さらに本発明のより好ましい実施形態によれば、当該組成物のキノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約90:10のパーセント比で使用される。
【0044】
なおさらに好ましい実施形態によれば、当該組成物のキノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約95:5乃至約90:10のパーセント比で使用される。当該組成物は、驚くべきこと且つ意外にもその成分比率のこの範囲においてスチレンの重合を抑制及び阻害のための最良の効率を与えることが分かった。
【0045】
したがって本発明によれば、重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、全組成物の約50%以下の量において使用され、本発明の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、全組成物の約15%以下の量において使用され、本発明のより好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、全組成物の約10%以下の量において使用され、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のなおさらに好ましい実施形態によれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約95:5乃至約90:10のパーセント比で使用される。
【0046】
本発明の実施形態の一つによれば、スチレンの重合は、驚くべきこと且つ意外にもキノンメチド単独を使用するとき約3.5%から、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体を有する本発明の組成物を使用するとき約0〜1%まで、減少する。すなわち、キノンメチドのスチレンの重合を制御及び阻害する能力は、低投入量においてさえ、驚くべきこと且つ意外にも、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体を有する本発明の組成物を使用するとき約96.5%から約99〜100%まで増加する。このような実質的(substantial)向上は、本発明の組成物により約200ppmというきわめて低投入量においてさえ、達成された。スチレン重合の問題及びプロセスの経済性を考慮すると、当該組成物使用におけるこのような向上は実質的な向上である。発明者は、スチレンの重合を約3.5%からゼロ(実質的にゼロ%)重合まで減ずるには、当該組成物の投入量よりも2倍の投入量のキノンメチドを使用しなければならないだろうことを、発見した。よって、当該組成物はスチレンの重合を阻害するプロセスのコストを減ずるだけでなく、窒素濃度をも減ずる。これらの予期しない発見は、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体を有する本発明の組成物の相乗効果を確認する。
【0047】
さらに驚くべきこと且つ意外なことは、当該組成物がキノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体を約90:10のパーセント比で有するとき、組成物約200ppmというきわめて低投入量において、スチレンの重合の実質的な抑制及び阻害が達成された、ということである。
【0048】
ここに記載されているように、なおさらに驚くべきこと且つ意外なことは、本発明の重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体のパーセント量を当該組成物の15%より多く、特に10%より多くすると、当該組成物のスチレン重合を抑制及び阻害する効率は、驚くべきこと且つ意外にも減ずるが、しかしそれは依然として許容可能な範囲内であり、意外にもQuadrolの場合、効率はより大きく減少する。
【0049】
本発明は、100%までスチレンの重合を抑制及び阻害するための新規組成物を提供することに加え、特にキノンメチドと組み合わせたときに、全てのアミンが同じようにふるまうのではないことをも確認する。
【0050】
一実施形態において、本発明はスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の製造方法に関わり、当該方法において添加剤組成物は、キノンメチド及び本発明のアミンを混合することにより調製され、及びここで前記アミンは重合非阻害剤アミンである。
【0051】
本発明の実施形態の一つによれば、前記重合非阻害アミンは、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、プロポキシル化エチレンジアミン(PED)、トリエタノールアミン(TEA)、トリブチルアミン(TBA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン(MEA)及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)である。
【0053】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、重合非阻害アミンはプロポキシル化エチレンジアミン(PED)である。
【0054】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリブチルアミン(TBA)である。
【0055】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはジエタノールアミン(DEA)である。
【0056】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリエタノールアミン(TEA)である。
【0057】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはモノエタノールアミン(MEA)である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、プロポキシル化エチレンジアミン(PED)はBASFから商品名Quadrol 204(登録商標)で入手可能なものである。しかしながら、本発明はQuadrol 204(登録商標)に限定されない。
【0059】
本発明者はまた、酸化物処理したアミンの誘導体を当該組成物の製造に使用する場合、アミンがスチレンの重合を阻害する効率は、驚くべきこと且つ意外にも、さらに向上することを見出した。
【0060】
よって、本発明の一実施形態において、本発明は、キノンメチド及び酸化物処理したアミンの誘導体を混合することを含む、スチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の製造方法に関わり、ここでアミンは重合非阻害剤アミンである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミンの誘導体は、酸化エチレン、酸化プロピレン及び酸化ブチレン処理したアミンの誘導体からなるグループから選択される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミンの誘導体は、N,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミンのエトキシル化(酸化エチレン処理した)誘導体(UOP5+EO)である。
【0063】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約50:50のパーセント比で混合される。
【0064】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約85:15のパーセント比で混合される。
【0065】
本発明のより好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約90:10のパーセント比で混合される。
【0066】
本発明のさらにより好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約95:5乃至約90:10のパーセント比で混合される。
【0067】
別の実施形態において、本発明はスチレンの重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の使用に関わり、当該使用において添加剤組成物はアミン及びキノンメチドを有し、ここでアミンは重合非阻害剤アミンである。
【0068】
本発明の実施形態の一つによれば、前記重合非阻害アミンは、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、プロポキシル化エチレンジアミン(PED)、トリエタノールアミン(TEA)、トリブチルアミン(TBA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン(MEA)及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、重合非阻害アミンはプロポキシル化エチレンジアミン(PED)である。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリブチルアミン(TBA)である。
【0072】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはジエタノールアミン(DEA)である。
【0073】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはトリエタノールアミン(TEA)である。
【0074】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、重合非阻害アミンはモノエタノールアミン(MEA)である。
【0075】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、プロポキシル化エチレンジアミン(PED)はBASFから商品名Quadrol 204(登録商標)で入手可能なものである。しかしながら、本発明はQuadrol 204(登録商標)に限定されない。
【0076】
本発明者はまた、スチレン重合を抑制及び阻害する本発明の組成物において酸化物処理したアミンの誘導体を使用する場合、アミンの効率は、驚くべきこと且つ意外にも、さらに向上することを見出した。
【0077】
したがって別の実施形態において本発明は、スチレン重合を抑制及び阻害する添加剤組成物の使用に関わり、当該使用において添加剤組成物は酸化物処理したアミンの誘導体及びキノンメチドを有し、ここでアミンは重合非阻害剤アミンである。
【0078】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミンの誘導体は、酸化エチレン、酸化プロピレン及び酸化ブチレン処理したアミンの誘導体からなるグループから選択される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、酸化物処理したアミン誘導体はN,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミンのエトキシル化(酸化エチレン処理した)誘導体(UOP5+EO)である。
【0080】
本発明の実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至50:50のパーセント比で使用される。
【0081】
本発明の好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約85:15のパーセント比で使用される。
【0082】
本発明のさらに好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約99:1乃至約90:10のパーセント比で使用される。
【0083】
本発明のなおさらに好ましい実施形態の一つによれば、キノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体は、約95:5乃至約90:10のパーセント比で使用される。
【0084】
本発明によれば、キノンメチドは4−ベンジリデン−2,6−ジ−tert−ブチルシクロヘキサ−2,5ジエノンである
本発明によれば、本発明の添加剤組成物はその成分を混合した後に、すなわち事前ブレンドした組成物として使用してよい。又は組成物の各成分をスチレンの処理ユニットに別々に添加してもよい。
【0085】
したがって一実施形態において、本発明はスチレンの重合を抑制及び阻害する本発明の添加剤組成物を使用方法に関わり、ここで当該方法はキノンメチド及び重合非阻害アミンもしくは酸化物処理したアミンの誘導体の混合物からなる組成物をここに記載されたようなパーセント比でスチレン重合の反応装置に添加することを有する。
【0086】
したがって一実施形態において、本発明はスチレンの重合を抑制及び阻害するための本発明の添加剤組成物を使用する方法に関わり、ここで当該方法は前記添加剤組成物の成分a)キノンメチド及び成分b)前記アミンもしくは前記酸化物処理したアミンの誘導体をここで記載したパーセント比でスチレン重合の反応装置に別々に添加することを有する。
【0087】
処理もしくは製造ユニットにおけるスチレンの連続フローの条件を満たすために、成分を連続的に添加してもよい。処理ユニットに直接添加しても、または芳香族溶剤もしくは希釈剤を包含してよい適当な溶剤もしくは希釈剤に溶解してから添加してもよい。プロセスの始まりにおいて又は製造プロセスが開始してしまってからのいずれかに、添加してもよい。
【0088】
本発明によれば、スチレンの重合での反応材料の重量に基づき、当該組成物約1乃至1200ppm、特に約1乃至400ppm、さらに特に約150乃至300ppm、具体的には約200乃至300ppmを添加してよい。
【0089】
本発明によれば、添加剤組成物を約60乃至170℃、特に約90乃至140℃の温度範囲で使用もしくは利用してよい。
【0090】
「約99:1乃至50:50のパーセント比で使用される」などの表現は、99:1及び50:50の比、等を包含することを意図していることに注意する。
【0091】
「パーセント比で」とは特に注記されていなければ「重量パーセント比で」もしくは「重量によるパーセント比で」を意味することに注意する。
【実施例】
【0092】
ここで本発明を、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例により説明する。
実験:
蒸留したスチレン10g及び必要なアミンを、温度計、窒素の入り口及び出口を備える反応装置に取り入れる。適当な撹拌を確実にするため十分なN2フローを維持する。反応装置の内容物を連続窒素フロー下2時間120℃に加熱する。2時間後、反応装置を砕いた氷に浸すことにより10℃より下に冷却する。反応装置の内容物を次いでメタノールを収容するビーカーへ注ぐ。得られた沈殿物を濾過、メタノールを除去するため乾燥、及び秤量する。1.5〜2g冷却(chilled)重合のため、メタノール約80gをスチレン溶液中に形成されるポリマーを沈殿させるのに使用した。沈殿の重さを以下の表では形成された%ポリマーとして報告する。スチレンは使用前に安定剤を除去するように精製した。
実施例―ブランク及び先行技術添加剤―キノンメチド:
ブランクリーディング(reading)を得るため、添加剤なしで上記の実験を実施する。
【0093】
比較目的で、150ppm乃至400ppmの様々な有効投入量について、先行技術添加剤、キノンメチド(4−ベンジリデン−2,6−ジ−Tert−ブチルシクロヘキサ−2,5−ジエノン)、による上記の実験を実施する。
【0094】
【表1】
上の表1からわかるように、先行技術添加剤キノンメチドは、ゼロ%(実質的にゼロ%)であるスチレン重合を有する400ppmの投入において最良の効率、及び0.14%であるスチレン重合を有する350ppmにおいて、及び0.60%であるスチレン重合を有する300ppmにおいて許容可能な効率を示し、即ちポリマー濃度は1.0%未満に維持される。キノンメチド投入量を250ppmに減らしたとき、スチレン重合は2.35%に増加し、キノンメチドの投入量をさらに200ppmに減らしたとき、スチレン重合はさらに3.5%に増加し、キノンメチド投入量をさらに150ppmに減らしたとき、スチレン重合は実質的に7.24%に増加し、キノンメチドの投入量をさらに100ppmに減らしたとき、スチレン重合は実質的に9.6%に増加した。従って、キノンメチドは低投入量においては適当でないことが観察される。
当該組成物のアミンそれ自体による実施例:
本発明のアミンそれ自体がスチレン重合を阻害可能であるかどうかを知るために、これらのアミンそれ自体による上記の実験を200ppmにおいて実施する。データは表2にある。
【0095】
【表2】
上記表2からわかるように、約200ppmの投入量における本発明の全てのアミンそれ自体は、スチレン重合約14.64%乃至17.80%という結果になり、これはブランク実験のデータと比較して、本発明のアミンそれ自体はスチレン重合を阻害可能ではないことを証明しており、従って本発明のアミンは重合非阻害アミンと名付けられた。
【0096】
上の知見に鑑み、引き続く実験において、先行技術添加剤に対して本発明組成物の効率を比較するために、添加剤組成物の100、200及び300ppm、特に200ppm投入量が選択される。
先行技術組成物に対する本発明組成物による実施例:
本発明の組成物の阻害能力を知るために、本発明の様々なアミン及びキノンメチドを有する本発明の組成物について上記の実験を実施した。データは先行技術添加剤と比較した。
【0097】
【表3】
上の表3において、QMはキノンメチドであり、TIPAはトリイソプロパノールアミンであり、QuadrolはBASFから商品名Quadrol204(登録商標)で入手可能なプロポキシル化エチレンジアミンであり、TBAはトリブチルアミンであり、DEAはジエタノールアミンであり、TEAはトリエタノールアミンであり、MEAはモノエタノールアミン、及び4HTは4−ヒドロキシ−tempo−2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシドである。
【0098】
上の表3において、組成物QM+TIPA、QM+Quadrol、QM+TBA、QM+DEA、QM+TEA、QM+MEAは本発明の組成物であり、QM+4HTは先行技術組成物である。
【0099】
上の表3からわかるように、本発明の組成物QM+TIPA及びQM+Quadrolはすべてのパーセント比で200ppm投入量において、先行技術添加剤キノンメチド(表1)、アミンそれ自体(表2)及びQM及び4HTの先行技術組成物(表3の最後の欄)よりもはるかに優れている。90:10のパーセント比における本発明の組成物QM+TIPA及びQM+Quadrolは、200ppmの有効投入量においてスチレン重合阻害について実質的に優れた効率を示すこともわかる。スチレンの約0乃至0.07%だけが本発明のこれらの組成物200ppm投入量によって重合する。このことは、キノンメチドの200ppm投入量で約3.5%のスチレン重合の結果となる先行技術添加剤、14.64%のスチレン重合の結果となるQuadrol単独、約16.16〜17.08%のスチレン重合の結果となるTIPA単独、約1.64%のスチレン重合の結果となるQM及び4HTの先行技術組成物に対して、実質的な向上である。
【0100】
上の表3からわかるように、全てのパーセント比で200ppmにおける本発明の組成物QM+TBA、QM+DEA及びQM+TEAは、先行技術添加剤キノンメチド(表1)、アミンそれ自体(表2)及びQM及び4HTの先行技術組成物(表3の最後の欄)よりもはるかに優れている。90:10のパーセント比における本発明の組成物QM+TBA、QM+DEA及びQM+TEAは、200ppmの有効投入量においてスチレン重合阻害について実質的に優れた効率を示すこともわかる。本発明のこれらの組成物200ppm投入量によりスチレンの約0.39乃至0.69%だけが重合する。このことは、キノンメチドの200ppm投入量で約3.5%のスチレン重合の結果となる先行技術添加剤、16.21%のスチレン重合の結果となるTBA単独、約15.27%のスチレン重合の結果となるDEA単独、約16.9%のスチレン重合の結果となるTEA単独、及び約1.64%のスチレン重合の結果となるQM及び4HTの先行技術組成物に対して、実質的な向上である。
【0101】
上の表3からもわかることであるが、全てパーセント比で200ppm投入量における本発明の組成物QM+MEAは、先行技術添加剤キノンメチド(表1)、アミンそれ自体(表2)及びQM及び4HTの先行技術組成物(表3の最後の欄)よりもはるかに優れている。90:10のパーセント比における本発明の組成物QM+MEAは、200ppmの有効投入量においてスチレン重合阻害について実質的に優れた効率を示すこともわかる。本発明のこの組成物200ppm投入量によりスチレンの約1.04%だけが重合する。このことは、キノンメチドの200ppm投入量で約3.5%のスチレン重合の結果となる先行技術添加剤、15.47%のスチレン重合の結果となるMEA単独、及び約1.64%のスチレン重合の結果となるQM及び4HTの先行技術組成物に対して、実質的な向上である。
【0102】
上の表3からわかるように、驚くべきこと且つ意外にも、本発明の重合非阻害アミンの単なる1%添加が、キノンメチドの重合阻害効率を実質的に向上させ、本発明の組成物の驚くべき効果を証明している。
【0103】
100、200及び300ppm投入量におけるQM及びTIPA、及びQM及びTBAを有する本発明組成物を、QM及びEDA(エチレンジアミン)、QM及びTEPA(テトラエチレンペンタアミン)、及びQM及びオクチルアミンを有する組成物とも比較した。結果は表4、5及び6にある。
【0104】
【表4】
上の表4の実験データからわかるように、99乃至90%QM及び1乃至10%TIPAからなる組成物のおおむね100ppmは重合を約9.6%乃至約5.66〜4.95%減らすことができることが、確認される。同様に、99乃至90%QM及び1乃至10%TBAからなる組成物のおおむね100ppmは、重合を約9.6%乃至約7.91〜7.44%減らすことができる。しかしながら、アミン類EDA、TEPA及びオクチルアミンはスチレン重合を減らすことにおいて同様の効率を示さない。
【0105】
【表5】
上の表5の実験データからわかるように、99乃至90%QM及び1乃至10%TIPAからなる組成物のおおむね200ppmは、重合を約9.6%乃至約0.32〜0.07%実質的に減らすことができることが、確認される。同様に、99乃至90%QM及び1乃至10%TBAからなる組成物のおおむね200ppmは、重合を約9.6%乃至約0.91〜0.39%実質的に減らすことができる。しかしながら、アミン類EDA、TEPA及びオクチルアミンはスチレン重合を減らすことにおいて同様の効率を示さない。
【0106】
【表6】
上の表6の実験データからわかるように、99乃至90%QM及び1乃至10%TIPAからなる組成物のおおむね300ppmは、重合を約9.6%乃至約0.17〜ゼロ%(実質的にゼロ%)実質的に減らすことができることが、確認される。同様に、99乃至90%QM及び1乃至10%TBAからなる組成物のおおむね300ppmは、重合を約9.6%乃至約0.46〜0.28%実質的に減らすことができる。アミン類EDA、TEPA及びオクチルアミンは300ppm投入量においてスチレン重合を減らすことにおいて同様の効率を示すが、しかしながら、上の表6からわかるように、本発明のTIPA及びTBAと比較した場合これらの効率は実質的に劣っている。
【0107】
上の表4、5及び6においてアミン類EDA、TEPA及びオクチルアミンは、QM及びTIPA、及びQM及びTBAを有する本発明組成物の100、200及び300ppm投入量と比較したことに、注意する。しかしながら、上の表3における実験的知見を顧慮したならば、QM及びQuadrol、及びQM及びDEA、及びQM及びTEA、及びQM及びMEAを有する本発明組成物さえも、組成物200ppm投入において証明されたのであるから、100及び300ppm投入量での効率において同様の傾向を証明するであろう、と結論できる。
【0108】
上記表3、4、5及び6からもわかるように、驚くべきこと且つ意外にも、本発明重合非阻害アミンのパーセント量が当該組成物の10%より多くなると、即ち本発明重合非阻害アミンの15%を使用する場合、スチレン重合を抑制及び阻害する当該組成物の効率は、驚くべきこと且つ意外にも減少するが、それはQuadrolを除くすべてのアミンについて依然として許容可能な範囲内のままであり、このことはさらに予期せぬことであり、いまのところQuadrolのこの予期せぬ挙動についての理由は見つけられなかった。
【0109】
現在、本発明者は、QM及び選択されたアミンからなる組成物におけるそれらの百分率が10%より上に増えた場合、全てのアミンの効率において驚くべき且つ予期せぬ突然の減少についての理由は特定できなかった。注意すべきは、本発明のアミン類TIPA及びTBAの効率における減少は他のアミンに比較してきわめて低いことである。
【0110】
上記実験による知見は明白に、本発明組成物の驚くべき且つ予期せぬ相乗的性質を確立している。
本発明組成物及び先行技術組成物による実施例:
本発明組成物の阻害能力を知るために、アミンのエトキシル化誘導体を有する本発明のさらなる実施形態(これはN,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミンのエトキシル化誘導体(UOP5+EO)及びキノンメチド(QM)である)について、上記実験を実施した。実験による知見は、UOP5、UOP5+EO(UOP5のエチルオキシル化誘導体)、QM及びN,N,ジsec−ブチル−パラ−フェニレンジアミン(UOP5)、及びQM及び4HTを有する先行技術組成物と比較した。結果は表7にある。
【0111】
【表7】
上記表7からわかるように、200ppm投入量で全てパーセント比における本発明の組成物QM+(UOP5+EO)は、200ppmでスチレン重合17.8%の結果となるUOP5(表2);発明者によって見出されたように、200ppmにおいて(UOP5+EO2.4モルによる)スチレン重合9.25%の結果となるUOP5+EO;200ppmにおいてスチレン重合3.5%の結果となる先行技術添加剤キノンメチド(表1);及びスチレン重合約3.10乃至3.50%の結果となるQM+UOP5の先行技術組成物(表7の後ろから2番目の欄);及びスチレン重合約1.64乃至2.82%の結果となるQM及び4HTの先行技術組成物(表7の最後の欄)よりもはるかに優れている。
【0112】
上記表7からもわかるように、90:10のパーセント比における本発明の組成物QM+(UOP5+EO)は、200ppmの有効投入量におけるスチレン重合阻害にたいして実質的に優れた効率を示す。スチレンの約0.55%だけが本発明のこの組成物の200ppm投入において重合する。このことは、キノンメチドの200ppm投入量で約3.5%のスチレン重合の結果となる先行技術添加剤、約3.51%のスチレン重合の結果となるQM及びUOP5の先行技術組成物、約1.64%のスチレン重合の結果となるQM及び4HTの先行技術組成物に対して、実質的な向上である。現在、本発明者は、QM及び選択されたアミンからなる組成物におけるそれらの百分率が10%より上に増えた場合、本発明の上記組成物の効率における驚くべき且つ予期せぬ突然の減少についての理由は特定できなかった。
【0113】
上記表7からもわかるように、驚くべき且つ意外にも、本発明UOP5のエトキシル化誘導体だけが、キノンメチドの重合阻害効率を実質的に向上させており、その驚くべき効果を確認している。
【0114】
上記の実験による知見は明白に、本発明組成物の驚くべき且つ予期せぬ相乗的性質を確立している。
【0115】
上記知見はまた、本発明組成物が、先行技術添加剤及び組成物よりも技術的利点及び驚くべき効果を有することを、確認している。