特許第5759090号(P5759090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5759090圧縮点火エンジンからの排ガスを浄化する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759090
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】圧縮点火エンジンからの排ガスを浄化する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/34 20060101AFI20150716BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20150716BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150716BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20150716BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150716BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B01D53/34
   B01J23/44
   F01N3/02 321A
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2007-273269(P2007-273269)
(22)【出願日】2007年10月22日
(65)【公開番号】特開2008-105027(P2008-105027A)
(43)【公開日】2008年5月8日
【審査請求日】2010年10月21日
【審判番号】不服2013-16226(P2013-16226/J1)
【審判請求日】2013年8月22日
(31)【優先権主張番号】PA200601364
(32)【優先日】2006年10月23日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゼレン・ダール
(72)【発明者】
【氏名】ケルト・ヨハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ゼレン・ペールソン
(72)【発明者】
【氏名】グルリ・モーゲンセン
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 真々田 忠博
【審判官】 河原 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−135970(JP,A)
【文献】 特開昭63−116744(JP,A)
【文献】 特開平2−14744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86,53/94
B01J 21/00-38/74
F01N 3/02, 3/10, 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO含有エンジン排ガスを、NOを還元させてNOにする際に活性であり、ZrOで安定化させたPdおよびCeOからなる触媒と接触させ、それにより排ガス中に含有されるNOを、排ガス中に存在するCO、炭化水素および/またはすすと反応させることによって還元させてNOにする、希薄燃焼圧縮点火エンジンからNO排出を除去する方法。
【請求項2】
触媒を粒子フィルタの壁の上にまたは内部に担持させた、請求項1記載の方法。
【請求項3】
NOを、CO、HCおよび/またはすすと反応させてNOにする際に有効な触媒を装備したエンジン排ガスシステムを含み、触媒がZrOで安定化させたPdおよびCeOからなる、請求項1記載の方法において使用するための装置。
【請求項4】
触媒を粒子フィルタの壁の上にまたは内部に担持させた、請求項3記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンのような希薄燃焼圧縮点火エンジンからの排ガスを浄化する方法および装置ならびにその方法において使用するための装置に関する。 特に, 本発明は、排ガス中に含有される、二酸化物を一酸化炭素 (CO), 炭化水素 (HC)および/またはすすと触媒の存在において反応させる際に還元させて一酸化窒素 (NO)にすることによって、二酸化窒素 (NO2)を除去することを指向する。その方法において使用するために適した装置は、その触媒で被覆された粒子フィルタを含む。
【0002】
本発明は、希薄燃焼圧縮点火エンジンに関連して特に有用である。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンのような従来の希薄燃焼圧縮点火エンジンは、すすや揮発性および可溶性有機画分を含む、ディーゼル粒子状物質(PM)排ガスを生成する。PM についての将来法制化される規制により、排気システムに粒子フィルタを設置することが義務付けられる。
【0004】
すすフィルタによる既知の問題は、すすフィルタが稼働中にすすで詰まり, フィルタをを横切る過度の圧力損失を防ぐために、連続してまたは定期的に再生する必要があることである。定期的な再生は、従来、排気システム内の温度を上昇させて、捕獲されたすすを酸化させてガス状成分にし、こうしてフィルタから除去する温度にすることによって行われる。
【0005】
余分な燃料を注入し,排気システム内のフィルタの上流に配置されたディーゼル酸化触媒 (DOC)上で燃料を燃焼させることによって、必要な温度上昇を得るのが典型的である。炭化水素およびCOについての排ガス規制を満足するために、DOCは、すでに多数のディーゼル車に搭載されている。フィルタを横切る過度の圧力損失の増大および定期的な再生は、両方共に、粒子フィルタを用いないエンジン排ガスシステムに比べて燃料の不利を生じる。
【0006】
この燃料の不利を低減させるために、異なるシステムが開発された。このようなシステムの内の一つが開示されており(特許文献1を参照)、“Continuously Regenerating Trap”として商品化されている。このシステムでは、フィルタ上に付着されたディーゼル微粒子を、またガス中で利用可能な酸素によって可能であるよりも低い温度で燃焼させるために、NO2が使用される。フィルタの上流に配置された適した触媒の上の排ガス中に存在するNOを酸化することによって、NO2 が得られる。このNO酸化触媒は、Ptを含有するのが典型的であり, Ptは、優れたNO酸化触媒として知られている。排ガス中のNO2含量を更に増大させるために、フィルタもまたPt含有触媒で被覆された。このようなシステムの不利として, 酸化触媒上で発生されるNO2と反応させるのにフィルタ上のPM が不十分であるかまたは排ガスの温度がNO2中のPMを燃焼させるための好適な範囲より低い場合に、NO2は、フィルタをいつのまにか通過しそして望ましくないことに、大気に排出され得る。
【0007】
二酸化窒素還元接触コンバータを有し、これを、酸化触媒および/またはすすフィルタを備えた排ガス後処理装置の流れ端部に部品として備えた、内燃機関の酸素含有排ガスを後処理するためのデバイスが知られている(特許文献2を参照)。二酸化窒素を還元させるためのSCR触媒に、少量の白金金属を含浸させる。
【0008】
希薄燃焼内燃機関において酸性金属酸化物に排ガスを接触させることによって、二酸化窒素を分解して一酸化窒素することが知られている(特許文献3を参照)。酸性金属酸化物は、ゼオライト, タングステン-ドープトチタニア, シリカ-チタニア, ジルコニア-チタニア, ガンマ-アルミナ, アモルファスシリカ-アルミナおよびこれらの混合物からなる群より選ぶ。
【0009】
NO2は、少量で毒性である。ヨーロッパの都市およびハイウエーにおけるNO2のレベルが上昇していることが危ぐされている(特許文献4を参照)。従って、立法当局は、NO2の量を排ガス中に許容される許容レベルに制限することを検討し始めた。例えば、年間平均ダウンタウンStuttgartは、2004年に68 μg/m3であった, これを指令によって減少させてStuttgartにおいて2010年に限界40 μg/m3 NO2(年間平均)にさせる。よって, 排ガス中のPMおよびNO2の両方の大気への排出の低減は、法律によって要求されることになると考えられる。
【特許文献1】米国特許第特許第4902487号
【特許文献2】DE102005027063A1
【特許文献3】WO06040533A1
【特許文献4】presentations from “NO2 Workshop, Munich February 2006”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明の包括的な目的は、圧縮点火エンジンからの排ガス中のNO2、好ましくはNO2およびPM を相当に低減させる方法および装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の包括的な目的に従って、本発明は、希薄燃焼圧縮点火エンジンからの NO2排出を除去する方法を提供するものであり、NO2含有エンジン排ガスを、NO2を還元させてNOにする際に活性でありかつ少なくとも一種の白金族金属を含み、但し白金金属は、白金でなくそして少なくとも一種のレドックス活性金属酸化物であるという条件で触媒と接触させ, それにより排ガス中に含有されるNO2を、排ガス中に存在するCO, 炭化水素および/またはすすと反応させることによって還元させてNOにする。
【0012】
本発明の方法の好適な実施態様を、サブクレーム2〜6に開示し、かつ本発明の詳細な記載から明らかである。
【0013】
本発明は、その上に、上記の方法において使用するための装置を提供する。 その装置は、それの最も一般的な形態で、NO2を、CO,HCおよび/またはすすと反応させてNOにする際に有効な触媒を備えたエンジン排ガスシステム含み、触媒は、少なくとも一種の白金族金属を含み、但し白金金属は、白金でなくそして少なくとも一種のレドックス活性金属酸化物であることを条件とする。
【0014】
本発明に従う被覆の好適な実施態様をサブクレーム8〜12に開示し、かつ本発明の詳細な記載から明らかである。
【0015】
本発明の好適な実施態様に従えば、NO2還元触媒をディーゼル粒子フィルタ上に被覆する。このフィルタは、任意の既知のタイプでよく、例えばセラミック壁-流モノリスフィルタ, セラミックファイバーフィルタまたは焼結金属フィルタでよい。壁-流モノリスフィルタの主成分は、炭化ケイ素, コーディエライトまたはアルミナチタネートであるのが好ましい。
【0016】
触媒被膜は、パラジウムを0.2〜5 g/フィルタ1Lの量で含むのが好ましく、パラジウムを0.5〜2 g/フィルタ1Lの量で含むのが一層好ましい。
【0017】
触媒被膜は、また、少なくとも一種のレドックス活性な酸化物を含有する。レドックス活性なとは、金属が異なる酸化状態で存在することができることを意味する。レドックス活性な酸化物の好適な量は、1〜100 g/フィルタ1Lであり、5〜60 g/フィルタ1Lであるのが一層好ましい。
【0018】
好適な酸化物は、MnO2, Fe2O3, SnO2, PrO2,およびCeO2である。最も好ましいレドックス活性な酸化物は、CeO2である。
【0019】
場合により、触媒被膜およびレドックス活性な金属酸化物を、TiO2, WO3, SiO2, HfO2, ZrO2, MgO, CaO, Al2O3, La2O3およびBaOからなる群より選ぶ一種以上の酸化物で安定化させる。
【0020】
酸化物がCeO2である場合に, 最も好適な安定化用酸化物は、ZrO2である。
【0021】
触媒被膜の成分は、当分野で知られている任意の方法でフィルタに適用することができる。これらの方法は、薄め塗り(washcoating), 含浸, 乾燥, か焼および還元の順序で含む。触媒は、フィルタ壁の内部および/フィルタ壁の外部に配置することができる。
本発明の一実施態様では、図1に示す通りに、このフィルタを、希薄燃焼圧縮点火エンジン, 例えばディーゼルエンジンの排気システム内に配置し、図1において、
(1)は、希薄燃焼圧縮点火エンジンであり、場合により、余分な燃料を注入して排気温度を上昇させてすすを燃焼させることによって粒子フィルタを再生するためのシステムを含みおよび場合により、粒子フィルタ内のすす燃焼温度を低下させるための燃料添加(fuel borne)触媒を注入するためのシステムを含み;
(2)は、炭化水素およびCOを酸化してこれらの成分の排出を低減させそして余分な燃料を注入するならば、排気温度を上昇させて粒子フィルタを再生することができる、フロースルーモノリス上に担持させたディーゼル酸化触媒(DOC)である。DOC は、場合により、また、すすをNO2により一層低い温度で連続して酸化するために、NOを酸化してNO2にすることができる;
(3)は、本発明に従って被覆した粒子フィルタであり、NO2およびPMの排出の量の低減をもたらす。NO2は、CO, 炭化水素および/またはすすと反応することによって還元されてNO になる。触媒被膜は、また、粒子フィルタを再生するのに必要な温度も低下させる。
【0022】
本発明の別の実施態様では、図2に示す通りに、このフィルタ3を希薄燃焼圧縮点火エンジン, 例えばディーゼルエンジンの排気システム内に配置する。 (1)は、希薄燃焼圧縮点火エンジンであり、場合により、余分な燃料を注入して排気温度を上昇させてすすを燃焼させることによって粒子フィルタを再生するためのシステムを含みおよび場合により、粒子フィルタ内のすす燃焼温度を低下させるための燃料添加触媒を注入するためのシステムを含む。(3)は、本発明に従って被覆した粒子フィルタであり、NO2およびPMの両方の排出の低減をもたらす。NO2は、排ガス中に存在する還元体と反応することによってほとんど還元されてNO になる。触媒被膜は、また、粒子フィルタを再生するのに必要な温度も低下させる。これらの還元体は、CO, 炭化水素およびすすになり得る。触媒被膜は、また、粒子フィルタを再生するのに必要な温度も低下させる。その上に、触媒されたフィルタは、COおよび炭化水素排出を低減させることができる。
【実施例】
【0023】
例1:
市販されている3.3 LのSiC壁流ディーゼル粒子フィルタのフィルタ壁内側に、CeO2, ZrO2およびPdO を、従来の含浸, 乾燥およびか焼工程を経て被覆した。Ce含量は、45 g/フィルタ1Lであり、Zr含量は、9.4 g/フィルタ1Lであり、そしてPd 含量は、1.5 g/フィルタ1Lであった。
【0024】
フィルタを、Citroen C2 - 2004モデルからの1.4 L HDI エンジンを装備したエンジンベンチの排気システムにおいて試験した。配置は、図1に相当する。試験中、フィルタを通過した後の排ガス中のCO, 炭化水素, NO およびNOxレベルをモニターした。エンジンを2500 rpmで稼動させそして負荷を変えて異なるフィルタ温度での触媒活性を求めた。
【0025】
NOおよびNO2の測定された濃度を表1および図3にまとめ、図3に、未被覆のフィルタに関する測定値との比較から得られたNO2 転化率を、フィルタ温度の関数としてプロットした。ガス中のNO2濃度は、NOx濃度からNO濃度を減ずることによって求めた。フィルタ温度が300°Cよりも低い場合に、すべてのNO2が転化されて主にNOになり、そしてフィルタ温度が300°Cよりも高い場合に、余分なNO2を形成することが観測された。標準の運転サイクルの間に、排気温度は、主に300°Cよりも低いので、これは、NO2の正味の除去に至る。このことは、実施例2に記載する。
【0026】
すすを燃焼するフィルタの能力は、均衡点(balance point)温度によって定量化する。均衡点温度は、フィルタによって捕らえられるすすの量が、酸化によって除去されるすすに等しいので、フィルタを横切る圧力損失が一定であるフィルタ温度である。均衡点温度は、400°Cである。未被覆のフィルタについて、この温度は、同じエンジンベンチ試験プロトコルにおいて、450°Cよりも高い。
【0027】
COおよび炭化水素転化レートは、同じようにして求めた。両方の排気成分の50%転化率についての温度は、200°Cよりも低い。
【0028】
表 1: 未被覆のSiC壁流粒子フィルタおよび実施例1に記載するフィルタにについて、実施例1に記載するエンジンベンチで測定されたNOおよびNOx濃度。
【0029】
【表1】



【0030】
実施例 2:
Citroen Xsara Picasso 1.6 L HDI -2006年モデルにおいて未被覆のフィルタと取り替えて、実施例1に記載する通りの触媒で被覆された3.3 L SiC 壁流フィルタを使用した。Pt含有DOC触媒の下流に、フィルタを配置した。すす酸化温度を燃料を低下させるために、燃料添加触媒をディーゼルに加えた。配置は、図2に略図を書いたものに相当する。
【0031】
フィルタを取り替える前およびフィルタを取り替えた後に、乗り物をNEDC 標準化された運転サイクルにおいて試験し、その間、排ガスをモニターした。累積結果を表2に示す。
【0032】
表 2: 1.6 L HDIエンジンおよびフィルタの上流にPt含有DOCを装備したCitroen Xsara Picassoに関するNEDC試験において測定された排ガス。未被覆の粒子フィルタを実施例1に記載する通りの触媒 被覆フィルタに比べた。
【0033】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】フィルタを、希薄燃焼圧縮点火エンジン、ディーゼル酸化触媒の排気システム内に配置した例を示す。
図2】フィルタ3を希薄燃焼圧縮点火エンジンの排気システム内に配置
図3】NOおよびNO2の測定された濃度をプロットして示す。
【符号の説明】
【0035】
1 希薄燃焼圧縮点火エンジン
2 ディーゼル酸化触媒
3 粒子フィルタ
図1
図2
図3