(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性プラスチック100質量部に対して、前記微粉炭を50〜500質量部混合し、加熱して前記熱可塑性プラスチックの少なくとも一部を溶融した後、溶融した前記熱可塑性プラスチックを冷却して再固化し、粒状化して得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体燃料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
廃プラスチックを利用した固体燃料の製造方法は、通常工業スケールで行われるため、固体燃料を高収率且つ簡便な工程で製造することが求められる。また、製造される固体燃料は、良好な燃焼性を有することが求められる。しかしながら、上述の特許文献1の方法では、固体燃料(コークス)の製造に際し、プラスチックを含む原料を高温(1000℃以上)に加熱して乾留させているため、プラスチック及び石炭の揮発分が殆ど揮発し、得られる固体燃料の収率が低くなってしまう。また、そのような固体燃料は、揮発分が少ないために着火性が十分ではない。
【0009】
また、特許文献2の方法では、別途、融着防止材を調製する必要があることから、工程が煩雑となるうえに、融着防止材として、燃焼させて得られるダストや部分燃焼スラグを使用するため、得られる固体燃料の燃焼性に改善の余地がある。また、特許文献3の方法では、微粉炭の表面に溶融した熱可塑性樹脂が付着することとなるため、溶融した熱可塑性樹脂が装置内部に付着することが懸念される。特に、工業スケールで大量に微粉炭を造粒する場合には、特に装置内部への付着が問題となり得る。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、原料としてプラスチックを用いても、良好な燃焼性を有する固体燃料を高収率で容易に製造することが可能な固体燃料の製造方法を提供することを目的とする。また、プラスチックの熱分解物を含んでいても、良好な燃焼性を有しており、熱可塑性プラスチックを用いた場合であっても、製造時における装置への融着を十分に低減することが可能な固体燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、石炭から得られる粉体と、プラスチックを加熱して得られる加熱処理物と、を含む固体燃料であって、上記粉体は、石炭を粉砕した微粉炭、及び当該微粉炭を熱分解して得られる熱分解物の少なくとも一方を含有し、プラスチックは、熱可塑性プラスチックを含有し、上記加熱処理物は、熱可塑性プラスチックを溶融した後、冷却して得られる再固化物を含有し、揮発分の含有率が25〜80質量%、且つ固定炭素の含有率が10〜70質量%である固体燃料を提供する。
【0012】
本発明の固体燃料は、微粉炭及び/又はその熱分解物とともに、プラスチックの加熱処理物を含んでいることから、廃棄物を有効利用することが可能である。また、揮発分と固定炭素とを特定の範囲で含有するため、良好な燃焼性を有する。
【0013】
本発明の固体燃料は、高位発熱量が20000〜40000kJ/kgであることが好ましい。これによって、石炭とほぼ同等の発熱量を得ることができる。
【0014】
本発明の固体燃料は、C(炭素)の含有率が60〜90質量%、H(水素)の含有率が1〜20質量%であることが好ましい。このような範囲で各元素を含有することによって、一層良好な燃焼性を有する固体燃料とすることができる。このような固体燃料は、特にセメント焼成用の燃料として特に好適である。
【0015】
本発明の固体燃料は、上記再固化物を含む第1の相と、第1の相の外周を覆う第2の相と、を有し、第2の相は、第1の相に付着した微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物であることが好ましい。このような相構造を有することによって、通常は着火し難い固体燃料の内部も比較的容易に燃焼させることができる。また、比較的燃焼の早い第1の相を覆うように第2の相を有しているため、長時間に亘って高温燃焼を維持することが可能となる。
【0016】
本発明の固体燃料は、昇温速度10℃/分で昇温する熱重量分析において、300℃における重量減少率と450℃における重量減少率との差が、無水灰基準で40〜80%であることが好ましい。これによって、一層良好な燃焼性を有する固体燃料とすることができる。
【0017】
本発明の固体燃料は、HGIが10以上であることが好ましい。このようなHGIを有する固体燃料は、容易に粉砕することが可能であり、良好な取扱い性及び良好な燃焼性を兼ね備える。
【0018】
本発明の固体燃料は、粒状であり、全体の50質量%以上の粒子が1.0mm以上且つ30mm未満の粒子径を有することが好ましい。このような粒子径を有する粒状の固体燃料は、良好な取扱い性と良好な燃焼性を兼ね備える。
【0019】
本発明の固体燃料は、熱可塑性プラスチック100質量部に対して、微粉炭を50〜500質量部混合し、加熱して熱可塑性プラスチックの少なくとも一部を溶融した後、溶融した熱可塑性プラスチックを冷却して再固化し、粒状化して得られるものであることが好ましい。これによって、廃棄物の有効利用を図りつつ、良好な取扱い性と良好な燃焼性を有する固体燃料とすることができる。
【0020】
本発明の固体燃料は、プラスチックと微粉炭とを含む混合物を加熱して固体燃料を得る加熱工程を有する固体燃料の製造方法であって、プラスチックは、熱可塑性プラスチックを含み、混合物は、熱可塑性プラスチック100質量部に対し微粉炭を50〜500質量部含有しており、加熱工程における、上記混合物に対する固体燃料の収率が、質量基準で70%以上である製造方法を提供する。
【0021】
本発明の製造方法によって得られる固体燃料は、プラスチックと微粉炭とを所定の比率で混合し、高い収率で固体燃料を製造しているため、揮発分の含有率が高くなっている。したがって、燃焼性に優れる固体燃料を高い収率で容易に製造することができる。また、上記製造方法によって得られる固体燃料は、揮発分と微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物の含有率が好適な範囲であるために、揮発分と固定炭素の割合が好適な範囲となり、良好な燃焼性が求められるセメント焼成用の固体燃料として特に好適である。
【0022】
本発明の製造方法では、上記加熱工程の少なくとも一部を負圧下で行うことが好ましい。これによって、プラスチックの熱分解によって生成するタール成分の分圧が低下しプラスチック溶融物の表面の融着性が低減されて、固体同士の一体化・塊状化を一層低減することができる。このような作用によって、粒子径がより小さい粒状の固体燃料を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法では、上記加熱工程を酸素ガス濃度18体積%以下の雰囲気下で行うことが好ましい。このような雰囲気下で熱分解を行うことによって、酸化の進行が抑制されて、一層高い収率で固体燃料を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原料としてプラスチックを用いても、良好な燃焼性を有する固体燃料を高収率で容易に製造することが可能な固体燃料の製造方法を提供することができる。また、プラスチックの熱分解物を含んでいても、良好な燃焼性を有しており、熱可塑性プラスチックを用いた場合であっても、製造時における装置への融着を十分に低減することが可能な固体燃料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0027】
本実施形態の固体燃料は、微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物と、プラスチックの加熱処理物とを含有し、揮発分の含有率が25〜80質量%、且つ固定炭素の含有率が10〜70質量%である。このような固体燃料は、上述の固体燃料の製造方法によって得ることができる。
【0028】
本実施形態の固体燃料の揮発分の含有率は、好ましくは45〜65質量%であり、より好ましくは50〜63質量%である。固体燃料の揮発分の含有率が45質量%未満であると、得られる固体燃料の収率が低くなるとともに、着火性が悪化して十分に良好な燃焼性が損なわれる傾向にある。
【0029】
ところで、固体燃料の原料であるプラスチックを加熱すると、ポリエチレン等塩素を含まない熱可塑性プラスチックからは、可燃性の揮発分のみが揮発する。一方、塩化ビニル等、塩素を含むプラスチックからは可燃性の揮発分とともに塩素が揮発する(脱塩)。そのため、固体燃料の揮発分の含有率が65質量%を超えた場合、原料となるプラスチックが塩素を含まない熱可塑性プラスチックであれば揮発分の収率が高くなるのみであるため問題はないが、塩素を含むプラスチックが原料に含まれていた場合、固体燃料中の揮発分が多いほど脱塩が不十分となり、固体燃料中の塩素等の不純物成分が多くなる。したがって、原料となる熱可塑性プラスチックに塩素が含まれている場合、固体燃料の揮発分は65%以下であることが好ましい。
【0030】
本実施形態の固体燃料の固定炭素の含有率は、好ましくは25〜35質量%であり、より好ましくは26〜32質量%である。固体燃料の固定炭素の含有率が25質量%未満であると優れた高温場の形成が損なわれる。一方、固体燃料の固定炭素の含有率が35質量%を超えると優れた着火性が損なわれる傾向にある。
【0031】
また、揮発分に対する固定炭素の比(燃料比)は、好ましくは0.4〜0.7であり、より好ましくは0.45〜0.65である。燃料比が0.45〜0.65である固体燃料は、一層優れた燃焼性を有する。
【0032】
本実施形態の固体燃料の高位発熱量(気乾ベース)の下限は、好ましくは20,000kJ/kgであり、より好ましくは28,000kJ/kgであり、さらに好ましくは30,000kJ/kgである。固体燃料の高位発熱量が低くなり過ぎると、十分に優れた燃焼性が損なわれる傾向にある。一方、固体燃料の高位発熱量の上限は、実質的に40,000kJ/kgである。
【0033】
なお、本明細書において、高位発熱量は、JIS M−8814に準拠して測定される単位重量(1kg)当たりの気乾ベースの発熱量をいう。また、揮発分及び固定炭素の含有率は、JIS M−8812に準拠して測定される、気乾ベースの含有率をいう。
【0034】
本実施形態の固体燃料は、熱可塑性プラスチック100質量部に対し、微粉炭を50〜500質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質量部の質量割合で混合して加熱し、熱可塑性プラスチックを溶融した後、冷却して再固化する工程を有する製造方法によって製造することができる。このような固体燃料は、優れた着火性と高温場の形成とを高水準で両立することが可能であり、一層優れた燃焼性を有する。
【0035】
本実施形態の固体燃料を製造する場合、熱可塑性プラスチックと微粉炭とを含む混合物を、250〜500℃の加熱温度で加熱することが好ましい。この程度の加熱温度では、石炭は種類によって熱分解するものとしないものがある。また、熱可塑性プラスチックは、上述の加熱温度で溶融するが、石炭はあまり溶融しない傾向にある。また、上述の加熱温度は、300〜350℃とすることがより好ましい。ただし、この加熱温度領域では、石炭は殆ど溶融しない。このため、溶融した熱可塑性プラスチックの表面に微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物が付着し、溶融したプラスチック表面上に微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物の層(後述の第2の相)が形成される。この第2の相が存在することにより、装置や他の塊状プラスチック溶融物との融着を低減することができる。
【0036】
第1の相と第2の相を有する固体燃料の構造は、固体燃料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって確認することができる。第1の相は熱可塑性プラスチックの再固化物の他に、副成分として微粉炭やその熱分解物を含んでいてもよい。また、第2の相は、微粉炭及び微粉炭の熱分解物の他に、副成分として熱可塑性プラスチックの再固化物を含んでいてもよい。
【0037】
固体燃料において、微粉炭及び/又は微粉炭の分解物の質量割合が過大になると、廃棄物の有効利用ができないことのみならず、十分優れた着火性が損なわれる傾向にある。一方、微粉炭の熱分解物の質量割合が過小になると、十分優れた高温場の形成が損なわれる傾向にある。
【0038】
本実施形態の固体燃料は、C(炭素)の含有率が好ましくは60〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%、さらに好ましくは65〜75質量%;H(水素)の含有率が4〜9質量%、好ましくは5〜8質量%;O(酸素)の含有率が好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%、さらに好ましくは5〜10質量%;Nの含有率が好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%;Clの含有率が好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。なお、上述の各元素の含有率は、JIS M−8819に準拠して測定される値(無水ベース)である。
【0039】
本実施形態の固体燃料は、昇温速度10℃/分で昇温する熱重量分析において、300℃における重量減少率と、450℃における重量減少率との差が、無水灰基準で、好ましくは40〜80%であり、より好ましくは45〜75%であり、さらに好ましくは50〜65%である。この重量減少率の差が40%未満の場合、優れた燃焼性が損なわれる傾向にあり、80%を超えると、優れた高温場の形成が損なわれる傾向にある。なお、上述の重量減少量は、空気雰囲気中において、通常の熱重量分析計を用いて測定される値である。
【0040】
本実施形態の固体燃料のHGIは、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上である。HGIは高いほど、固体燃料の粉砕が容易となり、粒度調整がし易い傾向にある。なお、HGI(ハードグローブインデックス、石炭の粉砕性指数)は、JIS M−8801に準拠して市販の測定装置を用いて測定することができる。
【0041】
本実施形態の固体燃料の平均粒子径(粉砕前)は、好ましくは2〜15mmであり、より好ましくは5〜10mmである。粉砕前にこのような平均粒子径を有する固体燃料は取り扱い性に優れるとともに燃焼性にも十分に優れる。固体燃料の平均粒子径(粉砕前)が大きくなり過ぎると、固体燃料を製造する加熱炉の取り出し口や固体燃料を使用する設備の投入口等で、固体燃料が閉塞し易くなる傾向にある。なお、本明細書における平均粒子径とは、積算分布曲線の50体積%に相当する粒子径(メジアン径)をいう。同様の観点から、固体燃料(粉砕前)の粒度分布は、粒子径が1.0mm以上且つ16mm未満である粒子が、固体燃料全体の70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。なお、固体燃料(粉砕前)の平均粒子径及び粒度分布は、市販の粒度分析計を用いて測定することができる。
【0042】
次に、上述の固体燃料の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0043】
図1は、本実施形態の固体燃料の製造方法の工程図である。本実施形態の固体燃料の製造方法は、プラスチックと微粉炭とを、プラスチック100質量部に対し微粉炭を50〜300質量部の質量割合で混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を加熱してプラスチックの加熱処理物と微粉炭の熱分解物とを含む加熱物を得る加熱工程と、加熱物を粉砕する粉砕工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0044】
混合工程では、プラスチックと微粉炭とを上述の質量割合で混合する。微粉炭としては、瀝青炭及び無煙炭など、燃料比(固体炭素分を揮発分で除した数値)が大きいもの、すなわち固定炭素分の多いものが好適に用いられる。燃焼性に一層優れる固体燃料を得る観点から、高位発熱量(気乾ベース)が、好ましくは20,000kJ/kg以上、より好ましくは25,000kJ/kg以上の微粉炭を用いる。また、着火性に優れる固体燃料を得る観点から、揮発分の含有率が好ましくは15〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%である微粉炭を用いる。
【0045】
また、固定炭素の含有率が、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは35〜58質量%の微粉炭を用いる。微粉炭の固定炭素の含有率が小さくなり過ぎると、得られる固体燃料の優れた高温場の形成が損なわれる傾向にあり、微粉炭の固定炭素の含有率が大きくなり過ぎると、相対的に揮発分が少なくなって得られる固体燃料の優れた着火性が損なわれる傾向にある。
【0046】
熱可塑性プラスチックを含むプラスチックとしては、通常の廃プラスチックを用いることができる。廃プラスチックは通常汎用性プラスチックが廃棄されたものであり、汎用性プラスチックの大部分は熱可塑性である。この廃プラスチックは、例えば、熱可塑性プラスチックとしてポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、及びポリエステルを含む。
【0047】
なお、廃プラスチックは、その他のプラスチックを含んでいてもよく、不純物としてプラスチック以外の廃棄物を少量含有していてもよい。不純物は廃プラスチックとともにあらかじめ所定の大きさに破砕されており、金属片や熱硬化性プラスチック等の不純物が含まれていた場合であっても、溶融した塊状の熱可塑性プラスチックに付着し、または内部に取り込まれることにより、固体燃料に一体化される。セメントの原料であるクリンカを焼成する際は金属や灰分を添加するため、固体燃料に不純物が含まれている場合であっても、セメント焼成用燃料としては好適な燃料となる。
【0048】
表1には、本実施形態の固体燃料の製造方法に用いられる廃プラスチックの組成の一例を示す。表1の廃プラスチックA、及び廃プラスチックBは、本実施形態の固体燃料の製造方法における原料として好適に用いることができる。
【0050】
燃焼性に一層優れる固体燃料を得る観点から、プラスチック全体の高位発熱量(気乾ベース)は、好ましくは25,000〜40,000kJ/kg、より好ましくは30,000〜40,000kJ/kgである。また、着火性に優れる固体燃料を得る観点から、プラスチック全体として、揮発分の含有率が好ましくは70〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%である。
【0051】
混合工程では、熱可塑性プラスチック100質量部に対し、微粉炭を50〜300質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質量部の質量割合で混合する。石炭は熱可塑性プラスチックに比べて揮発分が少なく、逆に熱可塑性プラスチックは石炭に比べて固定炭素が少ない。そのため、熱可塑性プラスチックに対する微粉炭の混合割合が高過ぎると、廃棄物の有効利用が十分にできなくなるだけでなく、得られる固体燃料の優れた着火性が損なわれる傾向にある。一方、熱可塑性プラスチックに対する微粉炭の混合割合が低過ぎると、加熱工程において、熱可塑性プラスチックの溶融物同士が融着して、得られる加熱物が塊状になってハンドリングが困難になる傾向がある。また、加熱炉壁面に溶融した熱可塑性プラスチックが融着して、設備にダメージを与え易くなる傾向がある。これは、溶融した熱可塑性プラスチックの表面に付着する微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物の量が少なくなり、融着防止機能を有する微粉炭の相(第2の相)の形成が不十分となるためである。
【0052】
通常、微粉炭などの炭素分の多い物質は、溶融プラスチックとの濡れ性があまり良好ではない。そのため、加熱工程の前に、混合工程によって微粉炭とプラスチックとを混合することによって、微粉炭と熱可塑性プラスチックとが分離してしまうのを抑制し、熱可塑性プラスチックの再固化物を主成分とする第1の相と、微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物を主成分とする第2の相とが良好に分散した固体燃料を得ることができる。
【0053】
図2は、本実施形態の固体燃料の製造方法に用いられる熱分解装置のブロック図である。本実施形態の固体燃料の製造方法は、廃プラスチックの溶融に通常用いられる加熱炉を備える熱分解装置を用いることができる。
【0054】
図2に示すように、原料である廃プラスチック10は、搬送クレーンなどの搬送機11によってストックヤードから破砕機12に搬送され所定のサイズに破砕される。破砕された破砕物は、移送装置13により加熱炉20に移送される。加熱炉20では、微粉炭と廃プラスチックとが混合された後、廃プラスチックは加熱される。
【0055】
加熱工程では、廃プラスチック中の熱可塑性プラスチックは溶融し、加熱工程終了後に、固化して再固化物となる。微粉炭は炭種によって熱分解されるものとされないものがあり、加熱工程終了後には、熱分解されない微粉炭と、熱分解された微粉炭との混合物となる。したがって、加熱工程ではプラスチックの粉砕物と微粉炭とを含む混合物を加熱して、再固化物を含むプラスチックの加熱処理物と微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物とを含む粒状物が得られる。
【0056】
加熱炉20で混合物を加熱すると、熱可塑性プラスチックが溶融し、微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物が溶融した熱可塑性プラスチックの表面に付着した状態になる。その後、熱可塑性プラスチックの溶融が進行し、プラスチックの溶融物の表面に微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物が付着する。その後冷却すると、熱可塑性プラスチックの再固化物(第1の相)の表面が微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物(第2の相)で覆われた構造を有する固体燃料を得ることができる。
【0057】
加熱炉20としては、回転式加熱炉、例えば間接加熱ロータリキルン型の加熱炉を使用することができる。このような加熱炉を用いることによって、プラスチックの破砕物と微粉炭との混合物を加熱することができる。なお、プラスチックの破砕物と微粉炭との混合は、加熱炉20に投入する前に行ってもよく、加熱炉に20に投入した後に行ってもよい。できるだけ均一な固体燃料を得る観点から、加熱炉20内における加熱は、プラスチックの破砕物と微粉炭とを混合しながら行うことが好ましい。
【0058】
プラスチックの破砕物と微粉炭とを含む混合物は、加熱炉20によって加熱される。加熱炉20における加熱温度は、250〜500℃、好ましくは250〜450℃、さらに好ましくは280〜400℃、特に好ましくは300〜350℃である。加熱温度が高すぎると、得られる固体燃料の揮発分が少なくなり、固体燃料の収率が低くなるとともに固体燃料の優れた燃焼性が損なわれる傾向にある。一方、熱可塑性プラスチックに塩素を含むプラスチックが含まれていた場合、加熱温度が低すぎると固体燃料中に塩素等の成分の残存量が増える傾向にある。
【0059】
加熱炉20において上述の加熱温度に加熱する加熱時間は、30〜120分間、好ましくは45〜90分間である。加熱時間が長過ぎると、得られる固体燃料の揮発分が少なくなり、固体燃料の収率が低くなる傾向にある。一方、加熱時間が短過ぎるとプラスチックの脱塩素が不十分となり、固体燃料中に塩素等の成分の残存量が増える傾向にある。
【0060】
加熱炉20における加熱は、大気圧未満の圧力下で行うことが好ましい。これによって、プラスチックの熱分解によって生じるタール成分の加熱炉外への排出が促進される。その結果、熱可塑性プラスチックの溶融物の表面に存在するタール成分の量が減少して、熱可塑性プラスチックの溶融物の表面の融着性が低減されることとなる。したがって、熱可塑性プラスチックの溶融物の表面に、微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物が過剰に付着することが抑制され、熱可塑性プラスチック再固化物(第1の相)を覆う微粉炭及び/又は微粉炭の熱分解物(第2の相)の厚みが大きくなりすぎるのを抑制することができる。このような作用によって、最終的に得られる固体燃料の粒子径を小さくすることができる。
【0061】
加熱炉20における加熱は、具体的には、好ましくは99kPaA以下、より好ましくは98kPaA以下の減圧下で行うことが好ましい。なお、加熱炉20内の圧力に特に下限はないが、設備の耐圧性の観点から90kPaA以上であることが好ましい。
【0062】
加熱炉20内部の酸素ガス濃度は、好ましくは10〜18体積%であり、より好ましくは14〜18体積%である。酸素ガス濃度が高くなり過ぎると、熱可塑性プラスチック及び/又は微粉炭の酸化が進行してしまい、得られる固体燃料の収率が低くなる傾向にある。一方、酸素ガス濃度が低くなり過ぎると、プラスチックが熱分解して生じるタールの酸化が促進されず、タールの残留分が多くなり、溶融した熱可塑性プラスチックの融着が発生し易くなる傾向にある。
【0063】
図3は、本実施形態の固体燃料の製造方法に好適に用いられるロータリキルン型加熱炉の内部の攪拌板の例を示す模式図である。攪拌板(リフタ)30は、加熱炉20の軸方向に沿って延びるように備えられる。このような攪拌板30を備えることによって、加熱炉20内に投入された原料(プラスチック及び微粉炭)の撹拌及び混合を円滑に行うことができる。攪拌板30の設置枚数は、加熱炉の規模等によって適宜設定される。例えば、加熱炉20の内径が50mmから300mm程度であれば、
図3(a)から(c)に示すように、2〜4枚の攪拌板30を設けることが好ましく、加熱炉20の内径が600mm程度であれば、
図3(d)に示すように8枚の攪拌板30を設けることが好ましい。
【0064】
攪拌板30は、その高さhの0.3倍から3倍程度のピッチで取り付けられることが好ましい。また、攪拌板30の高さhは、原料(混合物)に含まれるプラスチックが柔らかくなって微粉炭と共に粒状化するまでは加熱炉20の内径に対し、10%から30%程度のサイズであることが好ましい。このように、内部に攪拌板30を備えるキルンを用いることによって、加熱炉20に投入されたプラスチックと微粉炭は、キルンの回転に伴って攪拌板30によって掻きあげられ、混合されながら加熱されることとなる。
【0065】
本実施形態の固体燃料の製造方法では、塩化ビニル等の塩素を含む熱可塑性プラスチック(塩化ビニル等を含む廃プラスチック)を簡便に処理することができる。すなわち、塩化ビニルのような塩素を含有する廃プラスチックを加熱すると、塩素が塩化水素ガスとなり固体原燃料から除去(脱塩)される。これにより、塩素含有率が十分に低減された固体燃料を得ることができる。ただし、廃プラスチック中の塩素含有率が過剰になると、生成した固体原燃料に塩素分が残存し、固体燃料を用いる設備(例えばセメント製造装置や発電用ボイラ)や当該設備を用いて得られる製品品質(例えばセメント)に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、原料であるプラスチックに含まれる塩素分は少ないほうが好ましい。具体的には、プラスチック中の塩素含有率は、30質量%以下、好ましくは10質量%以下である。なお、塩化ビニル等の廃プラスチックを有効に活用する観点から、原料であるプラスチックの塩素含有率は、1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
【0066】
なお、塩化ビニル等、塩素を含むプラスチックは熱可塑性であるが、脱塩素(熱分解)が始まると炭素主体の固形物となる。本実施形態の加熱工程における特に好ましい温度領域は300〜350℃であり、この温度領域では、塩素を含む熱可塑性プラスチックは、通常固体である。そのため、上述の温度領域では、塩素を含む熱可塑性プラスチックは、通常溶融することはなく、装置内に融着することもない。
【0067】
これに対し、他の熱可塑性プラスチックは、上記温度領域(300〜350℃)では溶融・液状化しており、微粉炭等を添加せずに加熱炉20に投入すると装置内に融着してしまう。そこで、本実施形態では、微粉炭を添加することにより、溶融した熱可塑性プラスチックの周囲に微粉炭を付着させ、塩化ビニル等、塩素含有プラスチックに比べて溶融しやすい熱可塑性プラスチックであっても、融着を回避しつつ固体燃料を製造することが可能となる。
【0068】
このように、塩化ビニル等、塩素を含まない熱可塑性プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル等)のみを用いて固体燃料を製造する場合、本実施形態の固体燃料の製造方法の効果がより顕著となる。
【0069】
本実施形態の製造方法では、投入する原料(混合物)全体に対する、生成物(固体燃料)の収率が、70質量%以上であり、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは78質量%以上である。このように、生成物の収率を高く維持することによって、揮発分の含有量が十分に高く良好な燃焼性を有する固体燃料を得ることができる。なお、生成物の収率は、加熱炉における加熱温度や加熱時間を変えることによって調整することができる。
【0070】
加熱工程によって生成した加熱物(固体燃料)は、生成物として加熱炉20より排出され、図示しない冷却装置によって冷却され、必要に応じて後段の回収・分離装置に移送される。
【0071】
一方、加熱炉20における混合物の加熱によって発生したタールを含む熱分解ガスは図示しない燃焼室にて燃焼され、完全に分解される。原料として、塩化ビニルのような塩素を含有する廃プラスチックを使用した場合、燃焼排ガスに含まれる塩化水素は、排ガス洗浄装置23によって回収される。
【0072】
加熱工程で得られる加熱物は、主成分として、熱可塑性プラスチックが溶融した後、冷却して得られる再固化物、及び微粉炭を含有することが好ましい。また、主成分以外に、熱分解されていない熱硬化性プラスチックを少量含んでいてもよい。
【0073】
なお、石炭の種類によっては300〜350℃(本実施形態の加熱工程において特に好ましい温度領域)に加熱しても、熱分解されないものもある。したがって、主成分に含まれる微粉炭は、熱分解されたものと、熱分解されていないものが混在していてもよい。
【0074】
粉砕工程では、加熱工程で得られた熱分解物を通常の粉砕装置を用いて所望のサイズになるまで粉砕して粒状化する。これによって、所望の粒子径サイズを有する固体燃料を得ることができる。
【0075】
なお、粉砕工程の前に、加熱炉20から冷却装置を介して得られた固体燃料を振動篩などの手段によって、粒子径が大きいものと小さいものに分離してもよい。この場合、粒子径が小さいものについては、そのまま固体燃料として使用することもできる。
【0076】
以上の通り説明した本実施形態の固体燃料の製造方法によれば、特別な前処理を施すことなく、プラスチックと微粉炭とを原料として用いることによって、簡便な工程で良好な燃焼性を有する固体燃料を得ることができる。
【0077】
得られた固体燃料は、セメント製造装置の仮焼炉やロータリキルンの窯前又は窯尻などに供給して燃焼させ、燃料として使用することができる。また、微粉炭の代替燃料として発電用ボイラに供給して燃焼させることができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、加熱工程の後に粉砕工程を有していたが、粉砕工程を行わずに、
図1に示すように、加熱工程で得られた熱分解物をそのまま固体燃料として用いることも可能である。
【実施例】
【0079】
本発明の内容を、実施例及び比較例の内容を参照しつつより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3)
【0080】
ポリエチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂等を含む廃プラスチックと、市販の微粉炭とを準備した。準備した廃プラスチックと微粉炭の工業分析及び元素分析の結果を、表2に纏めて示す。
【0081】
本実施例では、高位発熱量(気乾ベース)の分析はJIS M−8814に準拠し、1013−J(装置名、吉田製作所製)を用いて行った。工業分析(気乾ベース)は、JIS M−8812に準拠して行った。元素分析(無水ベース)は、JIS M−8819に準拠し、MT−5(装置名、ヤナコ製)を用いて行った。HGI(ハードグローブインデックス、石炭の粉砕性指数)測定は、JIS M−8801に準拠して行った。平均粒子径及び粒度分布の測定は、レーザー回折粒度分布測定装置(堀場製作所製、装置名:LA−920)を用いて行った。平均粒子径は、積算分布曲線の50体積%に相当する粒子径(メジアン径)とした。
【0082】
【表2】
【0083】
図4は、微粉炭Aの粒度分布(体積基準)を示すグラフである。
図5は、微粉炭Bの粒度分布(体積基準)を示すグラフである。
【0084】
上述の廃プラスチック100質量部に対し、微粉炭A100質量部又は微粉炭B100質量部を、
図3に示すようなロータリキルン型加熱炉を備える熱分解装置に投入し、廃プラスチックと微粉炭A又は微粉炭Bとを混合しながら5℃/分間で昇温して加熱し、廃プラスチックと微粉炭A又は微粉炭Bとを、窒素と酸素の混合ガス雰囲気下(酸素濃度:5体積%以下、圧力:98〜101.3kPaA)で加熱処理した。
【0085】
ロータリキルン型加熱炉としては、実施例1では表3に示す内径を有し、耐熱鋼SUS310S製容器(掻き上げ羽根(攪拌板)4枚(羽根高さ70mm×4枚付き)と、当該容器を外部から加熱する電気炉とを備えるものを用いた。ロータリキルン型加熱炉は、隣り合う攪拌板間のインタバル時間が0.1分間となるように回転させながら炉外温度を制御して、炉内試料温度が表3に示す加熱温度となるように加熱した。実施例1A,2,3では、表3に示す内径を有する、実施例1と同様のロータリキルン型加熱炉を用い、実施例1と同様にして加熱を行った。
【0086】
ロータリキルン型加熱炉において加熱工程が終了した後、生成物を冷却して、微粉炭の熱分解物と廃プラスチックの熱分解物とを含有する固体燃料を得た。固体燃料の工業分析及び元素分析の結果を、表3に示す。また、固体燃料(粉砕前)の粒度分布の分析結果を表4に示す。なお、固体燃料の分析方法及び用いた分析装置は、特に明示しない限り、原料である廃プラスチック及び微粉炭の分析と同一である。
【0087】
【表3】
【0088】
表3中、収率は、以下の計算式(1)によって求めた。
収率(質量%)=(固体燃料の質量/廃プラスチックと微粉炭の合計質量)×100 ・・・(1)
【0089】
【表4】
【0090】
実施例1A及び実施例3で得られた固体燃料を粉砕し、それぞれ篩い分けして、粒子径が500〜1000μmのものを用いて、DTF(Drop Tube Furnace)試験を行った。比較のため、原料である微粉炭Aを篩い分けしたもの(粒子径60μm)についても、同様の測定を行った。DTF試験は、内径φ90mm、管長2mのDTF装置を用い、空気と窒素の混合ガス雰囲気(酸素濃度4体積%)下、燃焼温度1100℃〜1400℃の条件で行った。
【0091】
図6は、実施例1A及び実施例3の固体燃料のDTF試験によって得られた燃焼速度データに基づき、酸素濃度4体積%、温度1100℃の条件下における、粒子径が250μmである粒子の燃焼時間を計算したグラフである。これらの評価結果から、実施例1Aの固体燃料は微粉炭Aよりも相対的に燃焼速度が速く着火性に優れることが確認された。また、実施例3においても実施例1Aと同程度の燃焼速度が得られることが確認された。
【0092】
図7及び
図8は、それぞれ、実施例1A及び実施例3の固体燃料の熱重量分析(TG)結果を示すグラフである。熱重量分析は、実施例1A及び実施例3で得られた固体燃料を、上記DTF試験を行う際と同様に粉砕し、それぞれ篩い分けして、粒子径が
図7及び
図8に示す範囲のものについて行った。比較のため、原料である微粉炭A及び微粉炭Bをそれぞれ篩い分けしたもの(粒子径45〜90μm)についても、同様の測定を行った。熱重量分析は、市販の熱重量分析装置(マック・サイエンス製、装置名:MTC1000)を用い、空気雰囲気下、10℃/分間の昇温速度で昇温して測定した。測定結果は、無水無灰基準で整理した。
【0093】
図7及び
図8に示す結果から、実施例1A及び3の固体燃料(粉砕後)は、微粉炭よりも着火性に優れることが確認された。
【0094】
図9は、実施例2の固体燃料の示差走査熱量分析(DSC)結果を示すグラフである。
図10は、実施例2の原料である微粉炭Aの示差走査熱量分析(DSC)結果を示すグラフである。実施例2の固体燃料の発熱量は、2.695J/gであった。一方、実施例2の固体燃料の示差走査熱量の測定と同じ条件で測定した微粉炭Aの発熱量は、4.236J/gであった。これらの結果から、実施例2の固体燃料は、自己発熱量が微粉炭に比較して十分に低く抑えられており、粉塵爆発の発生確率を十分に低減できることが確認された。
【0095】
図11は、実施例2及び実施例3の固体燃料の燃焼可視化試験結果を示すグラフである。燃焼可視化試験は、実施例2及び実施例3で得られた固体燃料を、上記DTF試験を行う際と同様に粉砕し、それぞれ篩い分けして、各粒子径において、市販の燃焼可視化装置(ジャパンハイテック製、装置名:LK−1500、及びキーエンス製、装置名:VB−7000)を用い、炉内温度1100℃で、燃焼用ガスとして空気を用いて行った。なお、比較のため、原料である微粉炭A及び微粉炭Bをそれぞれ篩い分けしたものについても、同様の試験を行った。
【0096】
図11に示す結果から明らかなとおり、同一粒子径で比較すると、原料である微粉炭に比較して、実施例2及び実施例3で得られた固体燃料は、燃焼終了時間が短くなることが確認された。このことは、実施例2及び実施例3の固体燃料が、原料である微粉炭A及び微粉炭Bに比べて、燃焼完了が早く、良好な燃焼性を有することを示している。
【0097】
図12は、実施例1Aで得られた固体燃料の断面構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率:150倍)である。このSEM写真によれば、実施例2の固体燃料は、熱可塑性プラスチックを加熱して溶融した後、冷却して得られる再固化物を主成分とする第1の相100と、微粉炭の熱分解物を主成分とする第2の相200とを有しており、第2の相200が第1の相100を覆うように形成されていることが確認された。
【0098】
上述のように、溶融した熱可塑性プラスチックの周囲に微粉炭及び微粉炭の熱分解物が付着することにより、熱可塑性プラスチックの再固化物(第1の相)表面に微粉炭及び微粉炭の熱分解物の層(第2の相)が形成された。また、本実施例の微粉炭は、本実施例における加熱温度(250〜500℃)では融解しないため、装置内部への融着やプラスチック溶融物への過剰な融着を低減することができた。
【0099】
なお、実施例1、実施例1A、実施例2で用いられる微粉炭Aの熱重量分析(TG)曲線(
図7)は360℃付近から低下しており、実施例3で用いられる微粉炭Bの熱重量分析(TG)曲線(
図8)は300℃付近から低下を開始している。実施例1〜3における加熱温度は300℃〜320℃であるため、実施例1、実施例1A、実施例2における固体燃料の場合、第1の相には微粉炭Aの熱分解物は殆ど含まれない。一方、実施例3における固体燃料の場合、第1の相には微粉炭B及び微粉炭Bの熱分解物がともに含まれる。
【0100】
実施例2の固体燃料の製造を、加熱工程における加熱温度(熱分解温度)を250〜340℃の範囲内でそれぞれ変更して複数回行い、加熱温度の異なる複数の固体燃料を製造した。そして、それぞれの固体燃料の製造毎の収率と固体燃料の平均粒子径との関係を求めた。
図13は、固体燃料の収率と固体燃料の平均粒子径との関係を示すグラフである。
図13の結果から、固体燃料の収率が88〜94.8質量%の範囲(領域D1:好ましい領域)となるように固体燃料を製造することによって、小さい平均粒子径を有する固体燃料が得られることが確認された。また、固体燃料の収率が89〜93質量%の範囲(領域D2:さらに好ましい領域)となるように固体燃料を製造することによって、一層小さい平均粒子径を有する固体燃料が得られることが確認された。
【0101】
なお、
図13における領域D2では、廃プラスチック中に含まれる塩素の脱塩率が80%以上となり、高い脱塩率及び高い収率で、平均粒子径が小さく且つ塩素含有量が十分に低減された固体燃料を得ることができた。