【実施例1】
【0025】
図1乃至
図5に示すように、第一実施例は二組の樹脂成形型を上下方向へ直列配置した場合の電子部品の樹脂封止成形装置を示している。
この樹脂封止成形装置の基本的な構造は、装置の機台1と、機台1上に立設したガイド用のポスト2と、ポスト2の上端部に配置した上部プレート3と、機台1上に配置した下部プレート4と、上部プレート3と下部プレート4との上下各プレート3・4間におけるポスト2の位置に上下摺動可能な状態で配置した中間プレート5と、上部プレート3と中間プレート5との間に配置した上部樹脂成形型6と、中間プレート5と下部プレート4との間に配置した下部樹脂成形型7と、上部樹脂成形型6に設けた成形品取出機構8と、下部樹脂成形型7に設けた成形品取出機構9と、上下各樹脂成形型6・7に設けた樹脂成形用のキャビティ6a・7aに溶融樹脂材料11aを加圧注入するための樹脂加圧機構10と、上部樹脂成形型6の上型6bと下型6c及び下部樹脂成形型7の上型7bと下型7cとの型面を開く型開き(
図1参照)と、該型面をパーティングライン面(P.L 面)において閉じ合わせる型締め(
図2参照)とを行うための型開閉機構(図示なし)と、上下各樹脂成形型6・7の型開時にその型面間に樹脂材料11及び樹脂成形前の基板12を供給するための材料供給機構13と、上下各樹脂成形型6・7の型開時に製品(樹脂成形済の基板14)を外部へ搬出するための製品搬出機構15と、上下各樹脂成形型6・7の型締時に上下各樹脂成形型6・7の外方周囲をシールするためのシール部材16を含むシール機構(図示なし)とを備えている。
【0026】
また、上下各樹脂成形型6・7における一方側の型面(下型6c・7cの上面)に、基板嵌装用の凹所6d・7dを設けている。
また、該基板嵌装用凹所と対向する他方側の型面(上型6b・7bの下面)に、樹脂成形前基板12上に装着された電子部品12aを樹脂封止成形するためのキャビティ(6a・7a)を設けており、該キャビティの形状は、電子部品12aが樹脂成形前基板12の片面(上面)側に装着されていることから、これに対応した片面キャビティとして形成されている。
また、他方側の型面(上型6b・7bの下面)に、片面キャビティ6a・7aと連通させた樹脂通路部6e・7eを設けている。
【0027】
また、樹脂通路部6e・7eと対向する一方側の型面(下型6c・7cの上面)の位置に、該樹脂通路部と連通させるスリーブ状の樹脂材料供給用ポット6f・7fを配置している。
また、各樹脂材料供給用ポット6f・7fの夫々に、樹脂加圧用プランジャ17の先端加圧部17aを上下方向へ摺動可能な状態で且つ同じ方向から(上方に向かって)夫々嵌入し、更に、各樹脂加圧用プランジャ17の基端部17bを油圧機構や電動機構その他の適宜な往復駆動機構(図示なし)側との連結部材17cに連結させている。
【0028】
また、上下各樹脂成形型6・7には適宜な加熱機構(図示なし)を設けており、ポット6f・7f内に供給した熱硬化性樹脂材料等の樹脂材料11を、例えば、約180℃の樹脂成形温度に加熱することができるように設けている。
【0029】
また、上部樹脂成形型6に設けた成形品取出機構8、及び、下部樹脂成形型7に設けた成形品取出機構9は、上下方向へ摺動可能な状態で嵌装させたエジェクタプレート8a・9aと、該エジェクタプレートを下方側へ(下型6c・7c側へ)弾性押圧力にて押動させるプッシュピン8b・9bと、エジェクタプレート8a・9aに固着した製品突出用のエジェクタピン8c・9cと、エジェクタプレート8a・9aを元位置に復帰させるためのリターンピン8d・9dとを含んでいる。
そして、上下各樹脂成形型6・7の型開時(
図3参照)には、エジェクタプレート8a・9aとエジェクタピン8c・9c及びリターンピン8d・9dが、プッシュピン8b・9bの弾性押圧力によって押し下げられる。更に、このとき、エジェクタピン8c・9c及びリターンピン8d・9dの先端面(下端面)はキャビティ6a・7aの内底面及び上型6b・7bの下面よりも下方へ突出される所定の高さ位置にまで押し下げられるように構成している。
【0030】
また、樹脂加圧機構10は、樹脂加圧用プランジャ17と該樹脂加圧用プランジャの往復駆動機構(図示なし)とを含み、図においては、樹脂加圧用プランジャ17の先端加圧部17aを上下方向へ摺動可能な状態で且つ同じ方向から夫々嵌入し、更に、該樹脂加圧用プランジャの基端部17bを該往復駆動機構側との連結部材17cに連結させた構成を示している。
この構成では、往復駆動機構を介して、樹脂加圧用プランジャ17を上下方向へ同時に往復駆動させることができる。
従って、樹脂成形型6・7のポット6f・7f内に供給した樹脂材料11に対して、均等な加圧力を同時に加えることが可能となる。
【0031】
また、上下各樹脂成形型6・7の型締時(
図4参照)に、該上下各樹脂成形型の外方周囲をシールするシール機構のシール部材16と真空ポンプ等の真空機構とは適宜な真空経路を介して連通接続されており(図示なし)、従って、該真空機構を作動させることによって、シール部材16にてシールされた範囲内を効率良く減圧することができるように構成している。
【0032】
次に、
図1乃至
図5を参照して、第一実施例に示した樹脂封止成形装置において電子部品を樹脂封止成形する場合について説明する。
【0033】
まず、型開閉機構(図示なし)を介して、
図1及び
図3(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を上方へ移動させて、該上下各樹脂成形型の型開きを行う。
次に、上下各樹脂成形型6・7における上型6bと下型6cとの間、及び、上型7bと下型7cとの間に、樹脂材料11と樹脂成形前基板12とを保持させた材料供給機構13を移動すると共に、
図3(1) 及び
図3(2) に示すように、該材料供給機構を介して、樹脂材料11をポット6f・7f内に供給し、且つ、樹脂成形前基板12を凹所6d・7dに嵌装セットする。
【0034】
次に、型開閉機構(図示なし)を介して、
図2及び
図4(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を下動して、該上下各樹脂成形型の型締めを行う。
この型締作用と同時的に、上下各成形品取出機構8・9のリターンピン8d・9dは、下型6c・7cによる押上力を受ける
ことになる。このため、エジェクタプレート8a・9a及びエジェクタピン8c・9cは、プッシュピン8b・9bの弾性押圧力に抗して、所定の高さ位置にまで同時に押し上げられる。
なお、ここで所定高さ位置にまで押し上げられるとは、上下各成形品取出機構8・9が押し上げられた状態で上下各樹脂成形型6・7の型締めが行われたときに(
図4参照)、各エジェクタピン8c・9cの先端面(下端面)が各キャビティ6a・7aの内底面と同じ高さ位置となるように設定されていることを云う。
【0035】
次に、樹脂加圧機構10におけるプランジャ往復駆動機構(図示なし)を介して、連結部材17c及び樹脂加圧用プランジャ17を上動させて、その先端加圧部17aにより、各ポット6f・7f内に供給した樹脂材料11に対して均等な加圧力を同時に加える。
従って、これにより、ポット6f・7f内の樹脂材料11は、加熱機構(図示なし)による加熱作用とプランジャ17による加圧作用を受けて溶融化が促進されると共に、この溶融樹脂材料11aは、
図4(1) 及び
図4(2) に示すように、樹脂通路部6e・7eを通して、キャビティ6a・7a内に加圧注入され、且つ、該キャビティ内に嵌装セットした樹脂成形前基板12上の電子部品12aを樹脂封止成形することになる。
【0036】
次に、型開閉機構(図示なし)を介して、
図1及び
図5(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を上方の元位置にまで移動させて、該上下各樹脂成形型の型開きを行う。
この型開作用と同時的に、下型6c・7cによるリターンピン8d・9dへの押上力が解除されるため、上下各成形品取出機構8・9はプッシュピン8b・9bの弾性押圧力により押し下げられることになる。
更に、この
上下各樹脂成形型の型開きが行われたとき、エジェクタピン8c・9cの先端面はキャビティ6a・7aの内底面から突出することになり、その結果、該エジェクタピンはキャビティ6a・7a内及び樹脂通路部6e・7e内にて成形された製品(樹脂成形済基板14)を下型6c・7cの上面側に突出すことになる。
【0037】
次に、上下各樹脂成形型6・7における上型6bと下型6cとの間、及び、上型7bと下型7cとの間に製品搬出機構15を移動すると共に、
図5(2) に示すように、該製品搬出機構を介して、下型6c・7cの上面に突出された製品(樹脂成形済基板14)を係止し、且つ、その状態で該製品を型外に搬出する。
【0038】
この実施例の構成によれば、各樹脂材料供給用ポット6f・7fの夫々に樹脂加圧用のプランジャ17の先端加圧部17aを摺動可能な状態で且つ同じ方向から夫々嵌入し、更に、各樹脂加圧用プランジャの基端部17bを往復駆動機構側との連結部材17cに連結させて構成したことにより、成形装置の全体形状が各樹脂成形型6・7の上下方向へ大型化されるのを抑えることができる。
また、各ポット6f・7f内の樹脂材料11を同時に加圧することができるので、樹脂材料に対する樹脂加圧力の均等化を図ることができる。更に、この樹脂加圧力の均等化によって、溶融樹脂材料11aの加圧移送条件やキャビティ6a・7a内に注入充填された溶融樹脂材料11aに対する加圧条件等の均等化を図り得て、均一な製品を成形することができると云った実用的な効果を奏する。
また、各樹脂成形型6・7による電子部品の樹脂封止成形を減圧下において行うことにより、樹脂封止成形体にボイド等が形成されるのを、より確実に防止することができると云った実用的な効果を奏する。
また、各樹脂成形型6・7に専用の製品突出機構を配置したことにより、各キャビティ部にて成形された電子部品の樹脂封止成形品を各キャビティ外に、より確実に離型させることができると云った実用的な効果を奏する。
【0039】
なお、第一実施例においては、少なくとも二組の樹脂成形型6・7を上下位置に直列配置して構成することにより、成形装置の全体形状が上下方向へ大型化されるのを抑えることができる場合について説明した。
しかしながら、上記した構成を、所謂、横型の樹脂成形装置として応用するような場合は、少なくとも二組の樹脂成形型6・7を左右位置に直列配置して構成すれば良く、この場合は、成形装置の全体形状が左右方向へ大型化されるのを抑えることができる。
【0040】
また、第一実施例においては、樹脂加圧用プランジャ17を同時に往復駆動させる往復駆動機構を配設して構成することにより、各樹脂材料供給用ポット6f・7f内に供給された樹脂材料11に対する樹脂加圧力の均等化を図る場合について説明した。
しかしながら、樹脂加圧用プランジャ17を各別に往復駆動させる往復駆動機構を配設して構成することにより、各ポット6f・7f内に供給された樹脂材料に過不足が生じているような場合であっても、該各ポット内の樹脂材料を各別に加圧することによって各樹脂加圧力を均等化することができるようにしても差し支えない。
【0041】
なお、第一実施例の型開閉機構については、
図1及び
図2に示すように、上下各樹脂成形型6・7を下動して該上下各樹脂成形型の型締めを行う構成の場合を説明したが、例えば、上部プレート3の高さ位置を固定しておき、該上部プレートに対して中間プレート5及び下部プレート4を順次に上動させることによって、各樹脂成形型6・7を型締めする機構を採用しても良い。
また、例えば、中間プレート5の高さ位置を固定しておき、この中間プレート5に対して上部プレート3を下動させ且つ下部プレート4を上動させることによって、各樹脂成形型6・7を型締めする機構を採用しても差し支えない。
【0042】
以下、
図6乃至
図8に示す本発明の第二実施例について説明する。
【実施例2】
【0043】
本実施例において前実施例と異なる点は次のとおりであり、その他の点については前実施例について説明した事項と同様である。従って、説明の重複を避けるため、両者に共通する構成については同じ符号を付している。
【0044】
第二実施例の構成の特徴は、第一実施例における上部樹脂成形型6に設けた成形品取出機構8及び下部樹脂成形型7に設けた成形品取出機構9の構成に替えて、少なくとも二組の樹脂成形型6・7に、少なくともキャビティ部(各樹脂成形型6・7の樹脂通路部6e・7eとキャビティ6a・7aとを含む部位)の表面を離型用フイルム18にて被覆する離型フイルム張設機構(図示なし)を配設して構成した点である。
【0045】
第二実施例の構成においては、まず、型開閉機構(図示なし)を介して、
図6(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を上方へ移動させて、該上下各樹脂成形型の型開きを行う。
次に、上下各樹脂成形型6・7における上型6bと下型6cとの間、及び、上型7bと下型7cとの間に、樹脂材料11と樹脂成形前基板12とを保持させた材料供給機構13を移動すると共に、
図6(2) に示すように、材料供給機構13を介して、樹脂材料11をポット6f・7f内に供給し、且つ、樹脂成形前基板12を凹所6d・7dに嵌装セットする。
この樹脂材料11及び樹脂成形前基板12の供給操作に先行し、又は、この供給操作と同時的に、或は、この供給操作の終了後において、離型フイルム張設機構(図示なし)を介して、各樹脂成形型6・7における少なくともキャビティ部の表面を離型フイルム18にて被覆する。
【0046】
次に、型開閉機構(図示なし)を介して、
図7(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を下動して、該上下各樹脂成形型の型締めを行う。
次に、樹脂加圧機構10におけるプランジャ往復駆動機構(図示なし)を介して、連結部材17c及び樹脂加圧用プランジャ17を上動させ、且つ、その先端加圧部17aにてポット6f・7f内に供給した樹脂材料11に対して、均等な加圧力を同時に加える。
従って、これにより、ポット6f・7f内の樹脂材料11は、加熱機構(図示なし)による加熱作用とプランジャ17による加圧作用を受けて溶融化が促進されると共に、この溶融樹脂材料11aは、
図7(1) 及び
図7(2) に示すように、樹脂通路部6e・7eを通して、キャビティ6a・7a内に加圧注入され、且つ、該キャビティ内に嵌装セットした樹脂成形前基板12上の電子部品12aを樹脂封止成形することになる。
次に、型開閉機構(図示なし)を介して、
図8(1) に示すように、上下各樹脂成形型6・7を上方の元位置にまで移動させて、該上下各樹脂成形型の型開きを行う。
【0047】
上記したように、この樹脂封止成形作用において第一実施例の場合と異なる点は、成形品取出機構8・9の構成に替えて、各樹脂成形型6・7における少なくとも各キャビティ6a・7a部の表面を離型フイルム18にて被覆した点である。
従って、各樹脂成形型6・7における少なくともキャビティ部、即ち、樹脂通路部6e・7e及びキャビティ6a・7aの表面は離型フイルム18にて被覆されているから、この部位に溶融樹脂材料11aが付着しない。このため、
図8(1) に示す上下各樹脂成形型6・7の型開時において、離型フイルム18を該キャビティ部から取り外すと同時に製品(樹脂成形済基板14)を簡単に離型させることができる。
次に、上下各樹脂成形型6・7における上型6bと下型6cとの間及び上型7bと下型7cとの間に製品搬出機構15を移動すると共に、
図8(2) に示すように、該製品搬出機構を介して、離型された状態にある下型6c・7c上面の製品(樹脂成形済基板14)を係止し、且つ、その状態で該製品を型外に搬出する。
なお、離型フイルム張設機構(図示なし)を介して、樹脂成形後の使用済離型フイルム18aを上記した製品の型外搬出と同時に、或は、該製品の型外搬出の後に型外へ搬出すると共に、次の樹脂成形作業に備えて新たな離型フイルム18を各キャビティ6a・7a部の表面に被覆すれば良い。
【0048】
上記した第二実施例の構成によれば、離型フイルム張設機構を介して各キャビティ6a・7a部の表面に張設した離型フイルム18によって、各キャビティ6a・7aにて成形された電子部品の樹脂封止成形品(樹脂成形済基板14)を各キャビティ6a・7a内から効率良く離型させると共に、該各キャビティ部から確実に取り出すことができる。
従って、第一実施例における大形の各成形品取出機構8・9の構成を省略できるので、成形装置の全体形状を更に小型化することができると云った効果を奏する。