特許第5759191号(P5759191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000005
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000006
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000007
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000008
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000009
  • 特許5759191-パワーモジュール 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759191
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20150716BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20150716BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H01L25/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-16928(P2011-16928)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-49494(P2012-49494A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-18256(P2010-18256)
(32)【優先日】2010年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-90908(P2010-90908)
(32)【優先日】2010年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-172329(P2010-172329)
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 誠治
(72)【発明者】
【氏名】内山 寿恵
(72)【発明者】
【氏名】福岡 孝博
(72)【発明者】
【氏名】原 和孝
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−087735(JP,A)
【文献】 特開2007−305700(JP,A)
【文献】 特開平11−168112(JP,A)
【文献】 特開2009−280650(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116357(WO,A1)
【文献】 特開2008−159995(JP,A)
【文献】 特開2009−044027(JP,A)
【文献】 特開2005−005400(JP,A)
【文献】 特開2011−090868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層、および、前記絶縁層の上に形成される導体回路を備えるパワーモジュール用基板と、
前記パワーモジュール用基板の上に設けられ、前記導体回路に電気的に接続されるパワー素子と、
前記パワーモジュール用基板および/または前記パワー素子から生じる熱を放熱するための熱伝導性シートとを備え、
前記熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子を含有し、
前記熱伝導性シートの厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であり、
前記熱伝導性シートは、前記パワーモジュール用基板の前記絶縁層と、前記パワー素子との間に介在されており、
前記導体回路は、厚み方向に投影した時に、前記熱伝導性シートとは重ならないように、前記絶縁層の上に形成されている
ことを特徴とする、パワーモジュール。
【請求項2】
さらに、前記パワーモジュール用基板の下に設けられる放熱部材を備え、
前記熱伝導性シートが、前記パワーモジュール用基板と前記放熱部材との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記パワーモジュール用基板が、さらに、前記絶縁層の下に設けられる金属支持層を備え、
前記熱伝導性シートが、
前記絶縁層と前記金属支持層との間に設けられるとともに、
前記金属支持層と前記放熱部材との間に設けられることと特徴とする、請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記熱伝導性シートが、アンダーフィルとして設けられることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール、詳しくは、パワー素子を備えるパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッドデバイス、高輝度LEDデバイス、電磁誘導加熱デバイスなどでは、半導体素子により電力を変換・制御するパワーエレクトロニクス技術が採用されている。パワーエレクトロニクス技術では、大電流が熱などに変換されるため、半導体素子の近傍に配置される材料には、高い放熱性(高熱伝導性)が要求されている。
【0003】
そのため、例えば、シリコンチップが搭載される基板を、非シリコーン高熱伝導性グリースを介して、放熱部材に載置することが、提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
非特許文献1では、非シリコーン高熱伝導性グリースにより、基板と放熱部材とを接着するとともに、基板において生じる熱を、放熱部材に伝導させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本データマテリアル株式会社ウェブサイト(http://www.demac.co.jp/products/denshi.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、各種産業分野において、パワーモジュールとしては、さらなる放熱性の向上が要求されている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放熱性に優れるパワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のパワーモジュールは、絶縁層、および、前記絶縁層の上に形成される導体回路を備えるパワーモジュール用基板と、前記パワーモジュール用基板の上に設けられ、前記導体回路に電気的に接続されるパワー素子と、前記パワーモジュール用基板および/または前記パワー素子から生じる熱を放熱するための熱伝導性シートとを備え、前記熱伝導性シートは、板状の窒化ホウ素粒子を含有し、前記熱伝導性シートの厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であることを特徴としている。
【0009】
このようなパワーモジュールでは、パワーモジュール用基板および/またはパワー素子から生じる熱を放熱するための熱伝導性シートが、板状の窒化ホウ素粒子を含有し、その熱伝導性シートの厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であるため、熱伝導性シートの厚み方向に直交する面方向に熱を効率的に伝導させることができ、優れた放熱性を確保することができる。
【0010】
また、本発明のパワーモジュールは、さらに、前記パワーモジュール用基板の下に設けられる放熱部材を備え、前記熱伝導性シートが、前記パワーモジュール用基板と前記放熱部材との間に配置されることが好適である。
【0011】
このようなパワーモジュールによれば、熱伝導性シートが、パワーモジュール用基板と放熱部材との間に配置されるため、パワーモジュール用基板および/またはパワー素子から生じる熱を、熱伝導性シートによって面方向に拡散しつつ、放熱部材に伝導でき、より優れた放熱性を確保することができる。
【0012】
また、本発明のパワーモジュールでは、前記熱伝導性シートが、前記パワーモジュール用基板と前記パワー素子との間に配置されることが好適である。
【0013】
このようなパワーモジュールによれば、熱伝導性シートが、パワーモジュール用基板とパワー素子との間に配置されるため、パワー素子から生じる熱を、熱伝導性シートによって面方向に拡散しつつ放熱部材に伝導でき、より優れた放熱性を確保することができる。
【0014】
また、本発明のパワーモジュールでは、前記パワーモジュール用基板が、さらに、前記絶縁層の下に設けられる金属支持層を備え、前記熱伝導性シートが、前記絶縁層と前記金属支持層との間に設けられるとともに、前記金属支持層と前記放熱部材との間に設けられることが好適である。
【0015】
このようなパワーモジュールによれば、パワーモジュール用基板が金属支持層を備える場合にも、パワーモジュール用基板からおよび/またはパワー素子から生じる熱を、まず、絶縁層と金属支持層との間の熱伝導性シートにより伝導し、次いで、その熱を金属支持層により伝導した後、金属支持層と放熱部材との間の熱伝導シートにより伝導して、放熱部材により放熱することができる。そのため、このようなパワーモジュールによれば、優れた放熱性を確保することができる。
【0016】
また、本発明のパワーモジュールでは、前記熱伝導性シートが、アンダーフィルとして設けられることが好適である。
【0017】
このようなパワーモジュールによれば、熱伝導性シートによって、パワーモジュール用基板とパワー素子との間が封止されるため、パワーモジュール用基板とパワー素子との接続強度の向上を図ることができる。そのため、優れた放熱性を確保しつつ、パワーモジュールの機械強度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパワーモジュールによれば、パワーモジュール用基板および/またはパワー素子から生じる熱を熱伝導性シートによって伝導させることができ、その結果、優れた放熱性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のパワーモジュールの一実施形態の概略構成図を示す。
図2図1に示すパワーモジュールに備えられる熱伝導性シートの製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、混合物または積層シートを熱プレスする工程、(b)は、プレスシートを複数個に分割する工程、(c)は、分割シートを積層する工程を示す。
図3図2に示す熱伝導性シートの斜視図を示す。
図4図1に示すパワーモジュールの製造方法を示す概略工程図であって、(a)は、ヒートシンクを用意する工程、(b)は、ヒートシンクの天板部の表面に、熱伝導性シートを載置する工程、(c)は、熱伝導性シートの上に、絶縁層を載置する工程を示す。
図5図4に続いて図1に示すパワーモジュールの製造方法を示す概略工程図であって、(d)は、絶縁層の上に、配線(図示せず)および端子部を形成する工程、(e)は、絶縁層の上、かつ、端子部の間に、熱伝導性シートを載置する工程、(f)は、熱伝導性シートの上にパワー素子を載置し、ワイヤにより、パワー素子と端子部とを電気的に接続する工程を示す。
図6】本発明のパワーモジュールの他の実施形態の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明のパワーモジュールの一実施形態の概略構成図、図2は、図1に示すパワーモジュールに備えられる熱伝導性シートの製造方法を説明するための工程図、図3は、図2に示す熱伝導性シートの斜視図、図4は、図1に示すパワーモジュールの製造方法を示す概略工程図、図5は、図4に続いて図1に示すパワーモジュールの製造方法を示す概略工程図である。
【0021】
図1において、パワーモジュール1は、パワーモジュール用基板2と、パワー素子3と、熱伝導性シートとしての第1熱伝導性シート21および第2熱伝導性シート22と、放熱部材としてのヒートシンク4とを備えている。
【0022】
パワーモジュール用基板2は、パワー素子3を搭載するための基板であって、絶縁層5、および、絶縁層5の上に形成される導体回路6を備えている。
【0023】
絶縁層5は、パワーモジュール用基板2の外形形状に対応するように形成されており、より具体的には、例えば、長手方向に延びる平板形状に形成されている。
【0024】
このような絶縁層5を形成する絶縁材料としては、例えば、窒化アルミニウム、アルミナなどのセラミックス、例えば、ポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂、さらには、ガラス−エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
なお、絶縁層5の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0026】
導体回路6は、絶縁層5の表面に形成されており、図示しないが、パワーモジュール用基板の長手方向に沿って延びるように、かつ、長手方向に直交する幅方向に間隔を隔てて並行するように形成され、図1に示すように、複数(例えば、2本)設けられている。
【0027】
また、各導体回路6は、端子部7と、その端子部7から連続する配線(図示せず)と、端子部7およびパワー素子3を電気的に接続するためのワイヤ10とを備えている。
【0028】
端子部7は、図示しないが、パワーモジュール用基板2の先端部において、幅方向に沿って互いに間隔を隔てて複数(例えば、2本)並列配置されている。
【0029】
また、配線(図示せず)は、例えば、端子部7から連続して長手方向に沿って設けられ、幅方向において、互いに間隔を隔てて複数(例えば、2本)並列配置されている。
【0030】
このような端子部7および配線(図示せず)を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの金属材料が挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。
【0031】
ワイヤ10は、銅、ニッケル、金などの導体材料から形成され、各端子部7に対応して、複数(例えば、2本)設けられている。
【0032】
各ワイヤ10は、一方側端部(または他方側端部)が端子部7に接続されるとともに、他方側端部がパワー素子3に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0033】
なお、このような導体回路6において、端子部7および配線(図示せず)の厚みおよび幅、各端子部7間の間隔、各配線(図示せず)間の間隔、および、ワイヤ10の直径は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0034】
パワー素子3は、5V以上の電圧、および/または、1A以上の電流を制御するデバイスとして定義される。
【0035】
パワー素子3として、より具体的には、例えば、サイリスタ、パワートランジスタ、整流ダイオードなどの半導体素子などが挙げられる。
【0036】
このようなパワー素子3は、例えば、矩形箱状に形成され、複数(例えば、2本)の導体回路6の間において、絶縁層5の上に設けられるとともに、導体回路6(ワイヤ10)に電気的に接続されている。
【0037】
そして、このようなパワー素子3には、導体回路6を介して、高電力(具体的には、例えば、電圧が、上記したように5V以上、および/または、電流が、上記したように1A以上)が供給される。このとき、供給された電力は、上記パワーモジュール用基板2および/または上記パワー素子3において、熱に変換される。
【0038】
そして、このようにして上記パワーモジュール用基板2および/または上記パワー素子3から生じる熱を放熱するため、パワーモジュール1は、第1熱伝導性シート21および第2熱伝導性シート22を備えている。
【0039】
第1熱伝導性シート21は、絶縁層5よりも大きく、ヒートシンク4の天板部11(後述)より小さい平板形状に形成されており、パワーモジュール用基板2とヒートシンク4との間に配置されている。詳しくは、第1熱伝導性シート21の表面が、パワーモジュール用基板2の裏面に密着するとともに、裏面が、ヒートシンク4の天板部11(後述)の表面に密着している。
【0040】
第2熱伝導性シート22は、絶縁層5よりも小さく、パワー素子3よりも大きい平板形状に形成されており、複数(例えば、2本)の端子部7の間において、絶縁層5とパワー素子3との間に配置されている。詳しくは、第2熱伝導性シート22の表面が、パワー素子3の裏面に密着するとともに、裏面が、パワーモジュール用基板2(絶縁層5)の表面に密着している。
【0041】
なお、以下において、第1熱伝導性シート21、第2熱伝導性シート22、さらに、後述する第3熱伝導性シート23、および、後述する第4熱伝導性シート24を、熱伝導性シート20と総称する。
【0042】
このような熱伝導性シート20は、窒化ホウ素粒子を含有している。
【0043】
具体的には、熱伝導性シート20は、窒化ホウ素(BN)粒子を必須成分として含有し、さらに、例えば、樹脂成分を含有している。
【0044】
窒化ホウ素粒子は、板状(あるいは鱗片状)に形成されており、熱伝導性シート20において所定方向(後述)に配向された形態で分散されている。
【0045】
窒化ホウ素粒子は、長手方向長さ(板の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1〜100μm、好ましくは、3〜90μmである。また、窒化ホウ素粒子の長手方向長さの平均は、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、例えば、100μm以下、好ましくは、90μm以下である。
【0046】
また、窒化ホウ素粒子の厚み(板の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01〜20μm、好ましくは、0.1〜15μmである。
【0047】
また、窒化ホウ素粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2〜10000、好ましくは、10〜5000である。
【0048】
そして、窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、100μm以下である。
【0049】
なお、光散乱法によって測定される平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置にて測定される体積平均粒子径である。
【0050】
窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径が上記範囲に満たないと、熱伝導性シート20が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0051】
また、窒化ホウ素粒子の嵩密度(JIS K 5101、見かけ密度)は、例えば、0.3〜1.5g/cm、好ましくは、0.5〜1.0g/cmである。
【0052】
また、窒化ホウ素粒子は、市販品またはそれを加工した加工品を用いることができる。窒化ホウ素粒子の市販品としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT−110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP−1」など)などが挙げられる。
【0053】
樹脂成分は、窒化ホウ素粒子を分散できるもの、つまり、窒化ホウ素粒子が分散される分散媒体(マトリックス)であって、例えば、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分などの樹脂成分が挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレート、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0056】
これら樹脂成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
熱硬化性樹脂成分のうち、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0058】
エポキシ樹脂は、常温において、液状、半固形状および固形状のいずれかの形態である。
【0059】
具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など)、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂など)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族型エポキシ樹脂、例えば、脂環族型エポキシ樹脂(例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂など)、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0060】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
好ましくは、液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の組合せ、さらに好ましくは、液状の芳香族系エポキシ樹脂および固形状の芳香族系エポキシ樹脂の組合せなどが挙げられる。そのような組合せとして、具体的には、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂および固形状のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の組合せ、または、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂および固形状のビスフェノール型エポキシ樹脂の組合せが挙げられる。
【0062】
また、エポキシ樹脂として、好ましくは、半固形状のエポキシ樹脂の単独使用が挙げられ、さらに好ましくは、半固形状の芳香族系エポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。そのようなエポキシ樹脂としては、より具体的には、半固形状のフルオレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の組合せ、または、半固形状のエポキシ樹脂であれば、熱伝導性シート20の段差追従性(後述)を向上させることができる。
【0064】
また、エポキシ樹脂は、エポキシ当量が、例えば、100〜1000g/eqiv.、好ましくは、160〜700g/eqiv.であり、軟化温度(環球法)が、例えば、80℃以下(具体的には、20〜80℃)、好ましくは、70℃以下(具体的には、25〜70℃)である。
【0065】
また、エポキシ樹脂の80℃における溶融粘度は、例えば、10〜20,000mPa・s、好ましくは、50〜15,000mPa・sでもある。エポキシ樹脂を2種以上併用する場合には、それらの混合物としての溶融粘度が、上記した範囲内に設定される。
【0066】
また、常温で固形状のエポキシ樹脂と、常温で液状のエポキシ樹脂とを併用する場合には、軟化温度が、例えば、45℃未満、好ましくは、35℃以下の第1エポキシ樹脂と、軟化温度が、例えば、45℃以上、好ましくは、55℃以上の第2エポキシ樹脂とを併有する。これにより、樹脂成分(混合物)の動粘度(JIS K 7233に準拠、後述)を所望の範囲に設定することができ、熱伝導性シート20の段差追従性を向上させることができる。
【0067】
また、エポキシ樹脂には、例えば、硬化剤および硬化促進剤を含有させて、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。
【0068】
硬化剤は、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる潜在性硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物などが挙げられる。また、上記の他に、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィド化合物なども挙げられる。
【0069】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0070】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0071】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0072】
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0073】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0074】
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0075】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
硬化剤として、好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0077】
硬化促進剤としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートなどのリン化合物、例えば、4級アンモニウム塩化合物、例えば、有機金属塩化合物、例えば、それらの誘導体などが挙げられる。これら硬化促進剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0078】
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.5〜50質量部、好ましくは、1〜10質量部であり、硬化促進剤の配合割合は、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.2〜5質量部である。
【0079】
上記した硬化剤および/または硬化促進剤は、必要により、溶媒により溶解および/または分散された溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製して用いることができる。
【0080】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン類、例えば、酢酸エチルなどのエステル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などの有機溶媒などが挙げられる。また、溶媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類などの水系溶媒も挙げられる。溶媒として、好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ケトン類、アミド類が挙げられる。
【0081】
熱可塑性樹脂成分のうち、好ましくは、ポリオレフィンが挙げられる。
【0082】
ポリオレフィンとして、好ましくは、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。
【0083】
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0084】
エチレン−プロピレン共重合体としては、例えば、エチレンおよびプロピレンの、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などが挙げられる。
【0085】
これらポリオレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0086】
また、ポリオレフィンの重量平均分子量および/または数平均分子量は、例えば、1000〜10000である。
【0087】
また、ポリオレフィンは、単独使用または複数併用することができる。
【0088】
また、樹脂成分のJIS K 7233(泡粘度計法)に準拠する動粘度試験(温度:25℃±0.5℃、溶媒:ブチルカルビトール、樹脂成分(固形分)濃度:40質量%)によって測定される動粘度は、例えば、0.22×10−4〜2.00×10−4/s、好ましくは、0.3×10−4〜1.9×10−4/s、さらに好ましくは、0.4×10−4〜1.8×10−4/sである。また、上記の動粘度を、例えば、0.22×10−4〜1.00×10−4/s、好ましくは、0.3×10−4〜0.9×10−4/s、さらに好ましくは、0.4×10−4〜0.8×10−4/sに設定することもできる。
【0089】
樹脂成分の動粘度が上記範囲を超える場合には、熱伝導性シート20に優れた柔軟性および段差追従性(後述)を付与することができない場合がある。一方、樹脂成分の動粘度が上記範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子を所定方向に配向させることができない場合がある。
【0090】
なお、JIS K 7233(泡粘度計法)に準拠する動粘度試験では、樹脂成分サンプルにおける泡の上昇速度と、標準サンプル(動粘度が既知)における泡の上昇速度とを比較し、上昇速度が一致する標準サンプルの動粘度が、樹脂成分の動粘度であると判定することにより、樹脂成分の動粘度を測定する。
【0091】
そして、熱伝導性シート20において、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合(固形分、つまり、樹脂成分および窒化ホウ素粒子の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率)は、例えば、35体積%以上、好ましくは、60体積%以上、好ましくは、65体積%以上、通常、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0092】
窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子を熱伝導性シート20において所定方向に配向させることができない場合がある。一方、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲を超える場合には、熱伝導性シート20が脆くなり、取扱性および段差追従性が低下する場合がある。
【0093】
また、熱伝導性シート20を形成する各成分(窒化ホウ素粒子および樹脂成分)の総量(固形分総量)100質量部に対する窒化ホウ素粒子の質量基準の配合割合は、例えば、40〜95質量部、好ましくは、65〜90質量部であり、熱伝導性シート20を形成する各成分の総量100質量部に対する樹脂成分の質量基準の配合割合は、例えば、5〜60質量部、好ましくは、10〜35質量部である。なお、窒化ホウ素粒子の、樹脂成分100質量部に対する質量基準の配合割合は、例えば、60〜1900質量部、好ましくは、185〜900質量部でもある。
【0094】
また、2種のエポキシ樹脂(第1エポキシ樹脂および第2エポキシ樹脂)を併用する場合において、第1エポキシ樹脂の第2エポキシ樹脂に対する質量割合(第1エポキシ樹脂の質量/第2エポキシ樹脂の質量)は、各エポキシ樹脂(第1エポキシ樹脂および第2エポキシ樹脂)の軟化温度などに応じて適宜設定することができ、例えば、1/99〜99/1、好ましくは、10/90〜90/10である。
【0095】
なお、樹脂成分には、上記した各成分(重合物)の他に、例えば、ポリマー前駆体(例えば、オリゴマーを含む低分子量ポリマーなど)、および/または、モノマーが含まれる。
【0096】
次に、熱伝導性シート20を形成する方法について説明する。
【0097】
この方法では、まず、上記した各成分を上記した配合割合で配合して、攪拌混合することにより、混合物を調製する。
【0098】
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合するか、または、例えば、加熱により樹脂成分(好ましくは、熱可塑性樹脂成分)を溶融させることができる。
【0099】
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した硬化剤および/または硬化促進剤が溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
【0100】
溶媒を用いて攪拌混合する場合には、攪拌混合の後、溶媒を除去する。
【0101】
溶媒を除去するには、例えば、室温にて、1〜48時間放置するか、例えば、40〜100℃で、0.5〜3時間加熱するか、または、例えば、0.001〜50kPaの減圧雰囲気下で、20〜60℃で、0.5〜3時間加熱する。
【0102】
加熱により樹脂成分を溶融させる場合には、加熱温度が、例えば、樹脂成分の軟化温度付近またはそれを超過する温度であって、具体的には、40〜150℃、好ましくは、70〜140℃である。
【0103】
次いで、この方法では、得られた混合物を、熱プレスする。
【0104】
具体的には、図2(a)に示すように、混合物を、例えば、必要により、2枚の離型フィルム16を介して熱プレスすることにより、プレスシート20Aを得る。熱プレスの条件は、温度が、例えば、50〜150℃、好ましくは、60〜140℃であり、圧力が、例えば、1〜100MPa、好ましくは、5〜50MPaであり、時間が、例えば、0.1〜100分間、好ましくは、1〜30分間である。
【0105】
さらに好ましくは、混合物を真空熱プレスする。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、1〜100Pa、好ましくは、5〜50Paであり、温度、圧力および時間は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
【0106】
熱プレスにおける温度、圧力および/または時間が、上記した範囲外にある場合には、熱伝導性シート20の空隙率P(後述)を所望の値に調整できない場合がある。
【0107】
熱プレスにより得られるプレスシート20Aの厚みは、例えば、50〜1000μm、好ましくは、100〜800μmである。
【0108】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、プレスシート20Aを、複数個(例えば、4個)に分割して、分割シート20Bを得る(分割工程)。プレスシート20Aの分割では、厚み方向に投影したときに複数個に分断されるように、プレスシート20Aをその厚み方向に沿って切断する。なお、プレスシート20Aは、各分割シート20Bが厚み方向に投影されたときに同一形状となるように、切断する。
【0109】
次いで、この方法では、図2(c)に示すように、各分割シート20Bを、厚み方向に積層して、積層シート20Cを得る(積層工程)。
【0110】
その後、この方法では、図2(a)に示すように、積層シート20Cを、熱プレス(好ましくは、真空熱プレス)する(熱プレス工程)。熱プレスの条件は、上記した混合物の熱プレスの条件と同様である。
【0111】
熱プレス後の積層シート20Cの厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0112】
その後、図3が参照されるように、熱伝導性シート20において窒化ホウ素粒子14を樹脂成分15中に所定方向に効率的に配向させるべく、上記した分割工程(図2(b))、積層工程(図2(c))および熱プレス工程(図2(a))の一連の工程を、繰り返し実施する。繰返回数は、特に限定されず、窒化ホウ素粒子の充填状態に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜10回、好ましくは、2〜7回である。
【0113】
なお、上記した熱プレス工程(図2(a))では、例えば、複数のカレンダーロールなどによって、混合物および積層シート20Cを圧延することもできる。
【0114】
これにより、図2および図3に示す熱伝導性シート20を形成することができる。
【0115】
形成された熱伝導性シート20の厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0116】
また、熱伝導性シート20における窒化ホウ素粒子14の体積基準の含有割合(固形分、つまり、樹脂成分15および窒化ホウ素粒子14の総体積に対する窒化ホウ素粒子14の体積百分率)は、上記したように、例えば、35体積%以上(好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは、75体積%以上)、通常、95体積%以下(好ましくは、90体積%以下)である。
【0117】
窒化ホウ素粒子14の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子14を熱伝導性シート20において所定方向に配向させることができない場合がある。
【0118】
また、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合には、例えば、上記した分割工程(図2(b))、積層工程(図2(c))および熱プレス工程(図2(a))の一連の工程を、未硬化状態で繰り返し実施し、そのまま、未硬化状態の熱伝導性シート20として得る。なお、未硬化状態の熱伝導性シート20は、パワーモジュール1に備えた後、必要により、熱硬化させる。
【0119】
そして、このようにして形成された熱伝導性シート20において、図3およびその部分拡大模式図に示すように、窒化ホウ素粒子14の長手方向LDが、熱伝導性シート20の厚み方向TDに交差(直交)する面方向SDに沿って配向している。
【0120】
また、窒化ホウ素粒子14の長手方向LDが熱伝導性シート20の面方向SDに成す角度の算術平均(窒化ホウ素粒子14の熱伝導性シート20に対する配向角度α)は、例えば、25度以下、好ましくは、20度以下であり、通常、0度以上である。
【0121】
なお、窒化ホウ素粒子14の熱伝導性シート20に対する配向角度αは熱伝導性シート20を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で、200個以上の窒化ホウ素粒子14を観察できる視野の倍率で写真撮影し、得られたSEM写真より、窒化ホウ素粒子14の長手方向LDの、熱伝導性シート20の面方向SD(厚み方向TDに直交する方向)に対する傾斜角αを取得し、その平均値として算出される。
【0122】
これにより、熱伝導性シート20の面方向SDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
【0123】
なお、熱伝導性シート20の面方向SDの熱伝導率は、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化の前後において、実質的に同一である。
【0124】
熱伝導性シート20の面方向SDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向SDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向SDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
【0125】
なお、熱伝導性シート20の面方向SDの熱伝導率は、パルス加熱法により測定する。パルス加熱法では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)が用いられる。
【0126】
また、熱伝導性シート20の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.5〜15W/m・K、好ましくは、1〜10W/m・Kである。
【0127】
なお、熱伝導性シート20の厚み方向TDの熱伝導率は、パルス加熱法、レーザーフラッシュ法またはTWA法により測定する。パルス加熱法では、上記と同様のものが用いられ、レーザーフラッシュ法では、「TC−9000」(アルバック理工社製)が用いられ、TWA法では、「ai−Phase mobile」(アイフェイズ社製)が用いられる。
【0128】
これにより、熱伝導性シート20の面方向SDの熱伝導率の、熱伝導性シート20の厚み方向TDの熱伝導率に対する比(面方向SDの熱伝導率/厚み方向TDの熱伝導率)は、例えば、1.5以上、好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上であり、通常、20以下である。
【0129】
また、熱伝導性シート20には、図1において図示しないが、例えば、空隙(隙間)が形成されている。
【0130】
熱伝導性シート20における空隙の割合、すなわち、空隙率Pは、窒化ホウ素粒子14の含有割合(体積基準)、さらには、窒化ホウ素粒子14および樹脂成分15の混合物の熱プレス(図2(a))の温度、圧力および/または時間によって、調整することができ、具体的には、上記した熱プレス(図2(a))の温度、圧力および/または時間を上記範囲内に設定することにより、調整することができる。
【0131】
熱伝導性シート20における空隙率Pは、例えば、30体積%以下であり、好ましくは、10体積%以下である。
【0132】
上記した空隙率Pは、例えば、まず、熱伝導性シート20を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、200倍で観察して、像を得、得られた像から、空隙部分と、それ以外の部分とを二値化処理し、次いで、熱伝導性シート20全体の断面積に対する空隙部分の面積比を算出することにより測定される。
【0133】
なお、熱伝導性シート20において、硬化後の空隙率P2は、硬化前の空隙率P1に対して、例えば、100%以下、好ましくは、50%以下である。
【0134】
空隙率P(P1)の測定には、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化前の熱伝導性シート20が用いられる。
【0135】
熱伝導性シート20の空隙率Pが上記した範囲内にあれば、熱伝導性シート20の段差追従性(後述)を向上させることができる。
【0136】
また、熱伝導性シート20は、JIS K 5600−5−1の円筒形マンドレル法に準拠する耐屈曲性試験において、下記の試験条件で評価したときに、好ましくは、破断が観察されない。
【0137】
試験条件
試験装置:タイプI
マンドレル:直径10mm
屈曲角度:90度以上
熱伝導性シート20の厚み:0.3mm
さらに好ましくは、熱伝導性シート20は、上記した試験条件において、屈曲角度を180度に設定したときでも、破断が観察されない。
【0138】
なお、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合には、屈曲性試験に供される熱伝導性シート20は、半硬化(Bステージ状態)の熱伝導性シート20である。
【0139】
上記した屈曲角度での耐屈曲性試験において熱伝導性シート20に破断が観察される場合には、熱伝導性シート20に優れた柔軟性を付与することができない場合がある。
【0140】
また、この熱伝導性シート20は、JIS K 7171(2008年)に準拠する3点曲げ試験において、下記の試験条件で評価したときに、例えば、破断が観察されない。
【0141】
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/min(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
評価方法:上記試験条件で試験したときの、試験片の中央部におけるクラックなどの破断の有無を目視にて観察する。
【0142】
なお、3点曲げ試験には、樹脂成分3が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化前の熱伝導性シート20が用いられる。
【0143】
従って、この熱伝導性シート20は、上記した3点曲げ試験において破断が観察されないことから、段差追従性が優れている。なお、段差追従性とは、熱伝導性シート20を、段差のある設置対象に設けるときに、その段差に沿って密着するように追従する特性である。
【0144】
また、熱伝導性シート20には、例えば、文字、記号などのマークを付着させることができる。つまり、熱伝導性シート20は、マーク付着性に優れている。マーク付着性とは、上記したマークを熱伝導性シート20に確実に付着させることができる特性である。
【0145】
マークは、具体的には、印刷、または、刻印などによって熱伝導性シート20に付着(塗布、定着または固着)される。
【0146】
印刷として、例えば、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、レーザー印刷などが挙げられる。
【0147】
なお、インクジェット印刷、凸版印刷または凹版印刷によって、マークが印刷される場合には、例えば、マークの定着性を向上させるためのインク定着層を、熱伝導性シート20の表面(印刷側面)に設けることができる。
【0148】
また、レーザー印刷によって、マークが印刷される場合には、例えば、マークの定着性を向上させるためのトナー定着層を、熱伝導性シート20の表面(印刷側面)に設けることができる。
【0149】
刻印としては、例えば、レーザー刻印、打刻などが挙げられる。
【0150】
また、このようにして得られる熱伝導性シート20は、通常、絶縁性である。
【0151】
図1において、ヒートシンク4は、断面視略櫛形状をなし、例えば、ニッケル、銅、アルミニウムなど、熱伝導性に優れる金属材料から形成され、パワーモジュール用基板2を冷却するために、パワーモジュール用基板2の下側に設けられている。
【0152】
このようなヒートシンク4は、天板部11と、天板部11の下面側に立設される複数(例えば、13つ)の突出部12とを備えている。
【0153】
天板部11は、その上面が、第1熱伝導性シート21と接触している。
【0154】
突出部12は、厚み方向に直交する幅方向に互いに間隔を隔てて対向配置されている。
【0155】
そして、このようなパワーモジュール1を得るには、まず、図4(a)に示すように、上記のヒートシンク4を用意する。
【0156】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、ヒートシンク4の天板部11の表面に、第1熱伝導性シート21を載置する。
【0157】
なお、このとき、第1熱伝導性シート21において、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合には、好ましくは、Bステージ状態の第1熱伝導性シート21を、ヒートシンク4の天板部11の表面に、貼着する。
【0158】
次いで、この方法では、図4(c)に示すように、第1熱伝導性シート21の上に、絶縁層5を載置する。
【0159】
次いで、この方法では、図5(d)に示すように、絶縁層5の上に、端子部7および配線(図示せず)を、複数(例えば、2本)形成する。
【0160】
端子部7および配線(図示せず)を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法など、公知の方法を採用することができる。
【0161】
次いで、この方法では、図5(e)に示すように、絶縁層5の上、かつ、複数(例えば、2本)の端子部7および配線(図示せず)の間に、第2熱伝導性シート22を載置する。
【0162】
なお、このとき、第2熱伝導性シート22において、樹脂成分15が熱硬化性樹脂成分である場合には、好ましくは、Bステージ状態の第2熱伝導性シート22を、ヒートシンク4の天板部11の表面に、貼着する。
【0163】
その後、この方法では、図5(f)に示すように、第2熱伝導性シート22の上にパワー素子3を載置し、ワイヤ10により、パワー素子3と端子部7とを電気的に接続する。これにより、パワーモジュール1が得られる。
【0164】
なお、図示しないが、このパワーモジュール1において、第1熱伝導性シート21および/または第2熱伝導性シート22が、Bステージ状態である場合には、必要により、パワーモジュール1を加熱し、第1熱伝導性シート21および/または第2熱伝導性シート22を熱硬化させることができる。また、熱硬化のタイミングおよび条件は、目的および用途に応じて、適宜決定される。
【0165】
そして、このようなパワーモジュール1によれば、パワーモジュール用基板2および/またはパワー素子3から生じる熱を熱伝導性シート20によって伝導させることができ、その結果、優れた放熱性を確保することができる。
【0166】
つまり、このようなパワーモジュール1では、パワーモジュール用基板2および/またはパワー素子3から生じる熱を放熱するための熱伝導性シート20が、板状の窒化ホウ素粒子を含有し、その熱伝導性シート20の厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であるため、熱伝導性シート20の厚み方向に直交する面方向に熱を効率的に伝導させることができ、優れた放熱性を確保することができる。
【0167】
また、このようなパワーモジュール1によれば、第1熱伝導性シート21が、パワーモジュール用基板2とヒートシンク4との間に配置されるため、パワーモジュール用基板2および/またはパワー素子3から生じる熱を、第1熱伝導性シート21によって面方向に拡散しつつ、ヒートシンク4に伝導でき、より優れた放熱性を確保することができる。
【0168】
また、このようなパワーモジュール1によれば、第2熱伝導性シート22が、パワーモジュール用基板2とパワー素子3との間に配置されるため、パワー素子3から生じる熱を、第2熱伝導性シート22によって面方向に拡散しつつヒートシンク4に伝導でき、より優れた放熱性を確保することができる。
【0169】
さらに、このようなパワーモジュール1では、上記した熱伝導性シート20が、絶縁性であるため、パワー素子3、導体回路6およびヒートシンク4の間の絶縁性をより確実に確保することができ、それらの短絡を防止するとともに、パワーモジュール1の性能の向上を図ることができる。
【0170】
図6は、本発明のパワーモジュールの他の実施形態の概略構成図である。
【0171】
なお、上記した各部に対応する部材については、図6において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0172】
上記した説明では、パワーモジュール用基板2の絶縁層5と、ヒートシンク4との間に、第1熱伝導性シート21を介在させたが、例えば、パワーモジュール用基板2に、さらに、金属支持層9を備え、絶縁層5と金属支持層9との間に熱伝導性シートとしての第3熱伝導性シート23を備えるとともに、金属支持層9とヒートシンク4との間に熱伝導性シートとしての第4熱伝導性シート24を備えることもできる。
【0173】
より具体的には、この実施形態では、パワーモジュール用基板2は、さらに、絶縁層5の下に設けられる金属支持層9を備えている。
【0174】
金属支持層9は、絶縁層5よりもやや大きい、長手方向に延びる平板形状に形成されている。
【0175】
金属支持層9を形成する材料としては、例えば、金属箔または金属薄板が挙げられ、より具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅、42アロイなどが挙げられる。
【0176】
なお、金属支持層9の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0177】
そして、このようなパワーモジュール1では、金属支持層9と略同一の平板形状に形成された第3熱伝導性シート23が、絶縁層5と金属支持層9との間に設けられる。さらに、金属支持層9よりも大きく、ヒートシンク4の天板部11より小さい平板形状に形成された第4熱伝導性シート24が、金属支持層9とヒートシンク4との間に設けられる。
【0178】
このようなパワーモジュール1によれば、パワーモジュール用基板2が金属支持層9を備える場合にも、パワーモジュール用基板2および/またはパワー素子3から生じる熱を、まず、絶縁層5と金属支持層9との間の第3熱伝導性シート23により伝導し、次いで、その熱を金属支持層9により伝導した後、金属支持層9とヒートシンク4との間の第4熱伝導シート24により伝導して、ヒートシンク4により放熱することができる。そのため、優れた放熱性を確保することができる。
【0179】
また、図示しないが、パワーモジュール1に、上記した熱伝導性シート20を、アンダーフィルとして設けることができる。
【0180】
すなわち、パワーモジュール1の製造では、上記したようにワイヤ10によってパワー素子3を搭載する(ワイヤボンディング)ほか、図示しないが、フリップチップ実装方式によりパワー素子3を搭載することができる(フリップチップボンディング)。
【0181】
フリップチップ実装方式では、パワー素子3の下面(パワーモジュール用基板2側面)に、バンプ電極が形成され、そのバンプ電極と、導体回路6の端子部7とが、半田などで接続される。
【0182】
このとき、半田などが介在することにより、パワー素子3と、パワーモジュール用基板2(端子部7)とが離間するため、上記の熱伝導性シート20(好ましくは、Bステージ状態の熱伝導性シート20)を、アンダーフィルとして、パワーモジュール用基板2とパワー素子3との間に介在させることができる。
【0183】
このようなパワーモジュール1によれば、熱伝導性シート20によって、パワーモジュール用基板2とパワー素子3との間が封止されるため、パワーモジュール用基板2とパワー素子3との接続強度の向上を図ることができる。そのため、優れた放熱性を確保しつつ、パワーモジュール1の機械強度の向上を図ることができる。
【0184】
また、図示しないが、このパワーモジュール1では、必要により、ヒートシンク4の上において、パワーモジュール用基板2、パワー素子3および熱伝導性シート20を、さらに、上記の熱伝導性シート20(好ましくは、Bステージ状態の熱伝導性シート20)や、シリコーン樹脂などにより封止することができる。
【0185】
とりわけ、パワーモジュール用基板2、パワー素子3および熱伝導性シート20を、熱伝導性シート20により封止すれば、さらに放熱性の向上を図ることができる。
【0186】
なお、熱伝導性シート20によって封止する場合には、好ましくは、パワーモジュール用基板2、パワー素子3および熱伝導性シート20などに対応するように、熱伝導性シート20をくり抜いて、その後、封止に供する。これにより、パワーモジュール用基板2、パワー素子3および熱伝導性シート20の破損を防止するとともに、それらをより確実に封止することができる。
【0187】
また、図示しないが、このパワーモジュール1では、放熱性の向上を図るため、1つの端子部7に対して、ワイヤ10を複数並列配置することができ、さらには、ワイヤ10をリボン状に形成することもできる。
【0188】
さらに、図示しないが、このパワーモジュール1では、ワイヤ10(複数並列配置されたワイヤ10や、リボン状に形成されたワイヤ10を含む)の表面を、熱伝導性シート20により被覆することができる。
【0189】
ワイヤ10の表面を熱伝導性シート20により被覆すれば、ワイヤ10において生じる熱を効率的に伝導させることができ、優れた放熱性を確保することができるとともに、各ワイヤ10間の絶縁性を確保することができる。
【実施例】
【0190】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。
【0191】
製造例1(熱伝導性シートの製造)
PT−110(商品名、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)45μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)13.42gと、JER828(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、第1エポキシ樹脂、液状、エポキシ当量184〜194g/eqiv.、軟化温度(環球法)25℃未満、溶融粘度(80℃)70mPa・s、ジャパンエポキシレジン社製)1.0g、および、EPPN−501HY(商品名、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、第2エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量163〜175g/eqiv.、軟化温度(環球法)57〜63℃、日本化薬社製)2.0gと、硬化剤(キュアゾール2P4MHZ−PW(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン分散液)3g(固形分0.15g)(エポキシ樹脂であるJER828およびEPPN−501HYの総量に対して5質量%)とを配合して攪拌し、室温(23℃)で1晩放置して、メチルエチルケトン(硬化剤の分散媒)を揮発させて、半固形状の混合物を調製した。
【0192】
なお、上記の配合において、硬化剤を除く固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂との固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)は、70体積%であった。
【0193】
次いで、得られた混合物をシリコーン処理した2枚の離型フィルムで挟み込み、それらを真空加熱プレス機によって、80℃、10Paの雰囲気(真空雰囲気)下、5トンの荷重(20MPa)で、2分間、熱プレスすることにより、厚み0.3mmのプレスシートを得た(図2(a)参照)。
【0194】
その後、得られたプレスシートを、プレスシートの厚み方向に投影したときに、複数個に分割されるように切断することにより分割シートを得(図2(b)参照)、続いて、分割シートを厚み方向に積層して積層シートを得た(図2(c)参照)。
【0195】
続いて、得られた積層シートを、上記と同様の真空加熱プレス機によって、上記と同様の条件で熱プレスした(図2(a)参照)。
【0196】
次いで、上記した切断、積層および熱プレスの一連の操作(図2参照)を、4回繰り返して、厚み0.3mmの熱伝導性シート(未硬化(Bステージ)状態)を得た(図3参照)。
【0197】
製造例2〜9および11〜16
表1〜表3の配合処方および製造条件に準拠して、製造例1と同様に処理して、熱伝導性シートを得た。
【0198】
製造例10
表2の配合処方に準拠して、各成分(窒化ホウ素粒子およびポリエチレン)を配合して攪拌することにより、混合物を調製した。すなわち、各成分の攪拌では、130℃に加熱して、ポリエチレンを溶融させた。
【0199】
次いで、得られた混合物をシリコーン処理した2枚の離型フィルムで挟み込み、それらを真空加熱プレス機によって、120℃、10Paの雰囲気(真空雰囲気)下、1トンの荷重(4MPa)で、2分間、熱プレスすることにより、厚み0.3mmのプレスシートを得た(図2(a)参照)。
【0200】
その後、得られたプレスシートを、プレスシートの厚み方向に投影したときに、複数個に分割されるように切断することにより分割シートを得(図2(b)参照)、続いて、分割シートを厚み方向に積層して積層シートを得た(図2(c)参照)。
【0201】
続いて、得られた積層シートを、上記と同様の真空加熱プレス機によって、上記と同様の条件で熱プレスした(図2(a)参照)。
【0202】
次いで、上記した切断、積層および加圧の一連の操作(図2参照)を、4回繰り返すことにより、厚み0.3mmの熱伝導性シートを得た。
【0203】
実施例1
ヒートシンクを用意し(図4(a)参照)、次いで、製造例1で得られた未硬化(Bステージ)状態の熱伝導性シートを切り出し、ヒートシンクの天板部の上に貼着した(図4(b)参照)。
【0204】
次いで、熱伝導性シートの上に、窒化アルミニウム製の絶縁層を載置し、(図4(c)参照)、次いで、その絶縁層の上に、印刷法によって、配線および端子部を、それぞれ2本形成した(図5(d)参照)。
【0205】
次いで、製造例1で得られた未硬化(Bステージ)状態の熱伝導性シートを切り出し、各配線および各端子部の間において、絶縁層の上に貼着した(図5(e)参照)。
【0206】
その後、絶縁層の上の熱伝導性シートの上に、パワー素子(サイリスタ)を載置し、ワイヤにより、パワー素子と端子部とを電気的に接続した(図5(f)参照)。
【0207】
その後、これらを150℃で120分間加熱することにより、熱伝導性シートを熱硬化させ、パワーモジュールを製造した。
【0208】
実施例2〜16
製造例2〜16で得られた熱伝導性シートを用いて、実施例1と同様にして、実施例2〜16のパワーモジュールを製造した。
【0209】
なお、製造例10で得られた熱伝導性シートは熱硬化に代えて、120℃で熱融着させた。
【0210】
比較例1
製造例1で得られた熱伝導性シートに代えて、非シリコーン高熱伝導性グリース(TG200、日本データマテリアル社製)を用い、また、加熱による熱硬化に代えて、常温乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、パワーモジュールを製造した。
【0211】
(評価)
1.熱伝導率
製造例1〜16で得られた熱伝導性シートについて、熱伝導率を測定した。
【0212】
すなわち、面方向(SD)における熱伝導率を、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)を用いるパルス加熱法により測定した。
【0213】
その結果を表1〜表3に示す。
2.放熱性
実施例1〜16のパワーモジュールを動作させた後、熱伝導性シートの温度を赤外線カメラで測定したところ、温度上昇がほとんどなかったことが確認された。
【0214】
また、比較例1のパワーモジュールを上記と同様に動作させた後、非シリコーン高熱伝導性グリースの塗膜の温度を赤外線カメラで測定したところ、温度上昇が確認された。
【0215】
従って、実施例1のパワーモジュールの放熱性が優れていることが確認された。
3.空隙率(P)
製造例1〜16の熱硬化前の熱伝導性シートの空隙率(P1)を下記の測定方法により測定した。
【0216】
空隙率の測定方法:まず、熱伝導性シートを厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、200倍で観察して、像を得た。その後、得られた像から、空隙部分と、それ以外の部分とを二値化処理し、次いで、熱伝導性シート全体の断面積に対する空隙部分の面積比を算出した。
【0217】
その結果を表1〜表3に示す。
4.段差追従性(3点曲げ試験)
製造例1〜16の熱硬化前の熱伝導性シートについて、下記試験条件における3点曲げ試験を、JIS K7171(2008年)に準拠して、実施することにより、段差追従性を下記の評価基準に従って評価した。その結果を表1〜表3に示す。
【0218】
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/min(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
(評価基準)
◎:破断が全く観察されなかった。
【0219】
○:破断がほとんど観察されなかった。
【0220】
×:破断が明確に観察された。
5.印刷マーク視認性(印刷マーク付着性:インクジェット印刷またはレーザー印刷によるマーク付着性)
製造例1〜16の熱伝導性シートに、インクジェット印刷およびレーザー印刷によって、マークを印刷し、かかるマークを観察した。
【0221】
その結果、製造例1〜16の熱伝導性シートのいずれについても、インクジェット印刷およびレーザー印刷の両方によるマークを良好に視認することができ、印刷マーク付着性が良好であることを確認した。
【0222】
【表1】
【0223】
【表2】
【0224】
【表3】
【0225】
表1〜表3における各成分中の数値は、特段の記載がない場合には、g数を示す。
【0226】
なお、表1〜表3の窒化ホウ素粒子の欄において、上段の数値は、窒化ホウ素粒子の配合質量(g)であり、中段の数値は、熱伝導性シートにおいて硬化剤を除く固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂またはポリエチレンとの固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)であり、下段の数値は、熱伝導性シートの固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂および硬化剤との固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)である。
【0227】
また、表1〜表3の各成分中、※印を付した成分について、以下にその詳細を記載する。
PT−110※1:商品名、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)45μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
UHP−1※2:商品名:ショービーエヌUHP−1、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)9μm、昭和電工社製
エポキシ樹脂A※3:オグソールEG(商品名)、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂、半固形状、エポキシ当量294g/eqiv.、軟化温度(環球法)47℃、溶融粘度(80℃)1360mPa・s、大阪ガスケミカル社製
エポキシ樹脂B※4:JER828(商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状、エポキシ当量184〜194g/eqiv.、軟化温度(環球法)25℃未満、溶融粘度(80℃)70mPa・s、ジャパンエポキシレジン社製
エポキシ樹脂C※5:JER1002(商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量600〜700g/eqiv.、軟化温度(環球法)78℃、溶融粘度(80℃)10000mPa・s以上(測定限界以上)、ジャパンエポキシレジン社製
エポキシ樹脂D※6:EPPN−501HY(商品名)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量163〜175g/eqiv.、軟化温度(環球法)57〜63℃、日本化薬社製
硬化剤※7:キュアゾール2PZ(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン溶液
硬化剤※8:キュアゾール2P4MHZ−PW(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン分散液
ポリエチレン※9:低密度ポリエチレン、重量平均分子量(Mw)4000、数平均分子量(Mn)1700、Aldrich社製
【符号の説明】
【0228】
1 パワーモジュール
2 パワーモジュール用基板
3 パワー素子
4 ヒートシンク
5 絶縁層
6 導体回路
20 熱伝導性シート
21 第1熱伝導性シート
22 第2熱伝導性シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6