特許第5759193号(P5759193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759193
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ネジ加工システムおよびその加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/22 20060101AFI20150716BHJP
   B23G 1/02 20060101ALI20150716BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B23Q15/22
   B23G1/02 A
   B23Q17/24 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-21993(P2011-21993)
(22)【出願日】2011年2月3日
(65)【公開番号】特開2012-161854(P2012-161854A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】廣山 正志
(72)【発明者】
【氏名】堀 克弘
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−293713(JP,A)
【文献】 特開平06−079528(JP,A)
【文献】 特表平03−503989(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/067441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00−15/28
B23G 1/00−11/00
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料の棒から連続してネジを製造するためのネジ加工システムであって、
前記樹脂材料の棒を把持する第1のチャックと、
前記樹脂材料の棒をネジの形状に切削加工する切削刃と、
前記ネジの製造後、次のネジの製造中に、プリズムを用いて製造されたネジのネジ山とネジ頭の溝を同時に撮影するスキャナと、
前記撮影された画像からネジの寸法を求める手段と、
求めた前記ネジの寸法が規定値であるか否かを判定する手段と、
前記第1のチャックおよび切削刃の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
求めた前記ネジの寸法が規定値とは異なった場合に、製造中のネジが規定値に入るように、規定値よりも大きければ切削量を大きくし、規定値よりも小さければ切削量が小さくなるように、第1のチャックおよび切削刃の駆動条件を変更するネジ加工システム。
【請求項2】
前記ネジのネジ頭の溝を形成するためのエンドミルを備えた請求項1のネジ加工システム。
【請求項3】
前記切削加工は、ネジ先からネジ頭に向けて加工をおこない、
前記寸法を求める手段は、切削開始後からネジ先におけるネジ山の高さまで切削加工が終わるまでに、画像からネジの寸法を求める請求項1または2のネジ加工システム。
【請求項4】
樹脂材料の棒から連続してネジを製造するためのネジ加工方法であって、
第1のチャックによって樹脂材料の棒を把持するステップと、
切削刃によって前記樹脂材料の棒をネジの形状に切削加工するステップと、
前記ネジの製造後、次のネジの製造中に、スキャナがプリズムを用いて製造されたネジのネジ山とネジ頭の溝を同時に撮影するステップと、
前記撮影された画像からネジの寸法を求めるステップと、
求めた前記ネジの寸法が規定値であるか否かを判定するステップと、
を備え、
求めた前記ネジの寸法が規定値とは異なった場合に、製造中のネジが規定値に入るように、規定値よりも大きければ切削量を大きくし、規定値よりも小さければ切削量が小さくなるように、第1のチャックおよび切削刃の駆動条件を変更するネジ加工方法。
【請求項5】
エンドミルによって前記ネジのネジ頭の溝を形成するステップを備える請求項のネジ加工方法。
【請求項6】
前記切削加工は、ネジ先からネジ頭に向けて加工をおこない、
前記寸法を求める手段は、切削開始後からネジ先におけるネジ山の高さまで切削加工が終わるまでに、画像からネジの寸法を求める請求項またはのネジ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料からなるネジを製造するネジ加工システムおよび加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料によるネジが製造されている。例えば、金属の腐食性が高い環境で使用されるネジは、フッ素系樹脂などの樹脂材料によってネジが製造される。また、ネジの使用後に回収が必要な場合、樹脂材料が分解されれば、ネジの回収が必要なくなる。そこで現在、樹脂材料の棒を切削加工することによってネジを製造する場合がある。
【0003】
しかし、樹脂材料の力学的強度を向上させるために棒は延伸などによって製造するが、完璧な直線に製造することが難しい。棒が完全な直線状ではなく、弧状を含んだ形状になることがある。そのような樹脂材料の棒の製造ロットが変わると、同じ切削条件にもかかわらず、ネジの仕上がり寸法が変化する。製品の寸法を測定して、旋盤の切削条件を変更する必要が生じる。この変更をおこなっている間に切削が進行すると、大量の不良品が発生する。寸法測定が終了するまで切削を中断すると、製造効率が悪くなる。
【0004】
下記の特許文献1は、切削加工をおこないながらワークの寸法を測定して、フィードバックをおこなって、再び切削加工をおこなう電極の製造方法が開示されている。しかし、特許文献2は放電加工機用の電極の切削加工である。電極材料よりも軟性の樹脂材料でも同じように適用できるか不明である。電極材料と樹脂材料とでは内部応力などが異なり、樹脂材料の棒を切削中に正確に寸法を測定できるか不明である。ネジの種類によっては全数検査を要するものもある。そのような場合は、切削後の寸法測定が必ず必要であり、切削中の寸法測定は必ずしも必要でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−146949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、樹脂材料からなるネジが規格内の寸法になるように製造するネジ加工システムおよび加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ネジ加工システムは、樹脂材料の棒から連続してネジを製造する。前記樹脂材料の棒を把持する第1のチャックと、前記樹脂材料の棒をネジの形状に切削加工する切削刃と、前記ネジのネジ頭の溝を形成するためのエンドミルと、前記ネジの製造後、次のネジの製造中に、製造されたネジの外観を撮影するスキャナと、前記撮影された画像からネジの寸法を求める手段と、前記第1のチャック、切削刃およびエンドミルの駆動を制御する制御手段とを備える。
【0008】
求めた前記ネジの寸法が規定値とは異なった場合に、製造中のネジが規定値に入るように、規定値よりも大きければ切削量を大きくし、規定値よりも小さければ切削量が小さくなるように、第1のチャック、切削刃、エンドミルの駆動条件を変更する。
【0009】
樹脂材料の棒において、切削加工された部分を把持する第2のチャックを備えても良い。この場合、第2のチャックの駆動条件も変更される。また、樹脂材料の棒を第1のチャックに向けて押し当てるセンタであっても良い。
【0010】
前記切削加工は、ネジ先からネジ頭に向けて加工をおこない、前記寸法を求める手段は、切削開始後からネジ先におけるネジ山の加工を始めるまでに、画像からネジの大きさを求める。
【0011】
前記スキャナは、プリズムを用いてネジ山とネジ頭の溝を同時に撮影する。
【0012】
前記寸法を求める手段は、画像の中でコントラストが変化する複数の点を抽出し、該複数の点から二次曲線、三次曲線または直線によってネジ螺旋部の側面またはネジ山の山頂を近似し、近似された曲線および直線を基にネジ山の形状および各部の寸法を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ネジの寸法を求めて、以後の切削加工において調整をおこなうため、1本の棒から製造したネジを全て廃棄することはない。廃棄するネジを極端に減少させることができる。ネジ山が形成される前にネジの寸法を求めることによって、切削中のネジから調整をおこなうことができる。切削加工後のネジの寸法を測定しているため、全数検査をおこなうことができ、全てのネジのデータ管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ネジ加工システムの構成を示す図である。
図2】ネジを配置するジグの図であり、(a)は溝の形状を示す側面図であり、(b)は上面図である。
図3】スキャナでの撮影を示す図であり、(a)はネジ頭の側方にプリズムを配置した図であり、(b)はネジの軸とネジ頭の溝とが同時に撮影された画像の図である。
図4】画像処理を示す図であり、(a)はエッジの複数の点を抽出した図であり、(b)は二次曲線や直線でネジを近似した図である。
図5】ネジ山の山径の値を示すグラフである。
図6】エンドミルの配置を変更したネジ加工システムの構成を示す図である。
図7】センタを使用したネジ加工システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について図面を使用して説明する。
【0016】
図1に示すネジ加工システム10は、樹脂材料の棒12を把持する第1のチャック14、切削加工をおこなう切削刃(バイト)16、切削された棒12の先端部分を把持する第2のチャック(サブスピンドル)18、ネジ頭の溝を形成するエンドミル20を備える。
【0017】
樹脂材料は生分解性樹脂を含み、その中には生体内で加水分解されて生体に吸収される性質を有するものが含まれる。樹脂材料として、例えば、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−およびD−乳酸/グリコール酸共重合体、ポリ−L−およびD−乳酸/カプロラクトン共重合体、及びこれにバイオセラミック(ハイドロキシアパタイト、シトロンチウムアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウム系化合物、A−W結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、カーボン、バイオガラス等)を含む公知の熱可塑性の生分解性高分子が挙げられる。さらに樹脂材料としてはポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、レーニー、耐溶剤性の高い材料としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが含まれる。
【0018】
樹脂材料を溶融、延伸することによって、樹脂材料の棒12を製造する。棒12は円柱を長くした物であり、棒12の長さは複数本のネジが製造できる長さである。棒12の直径は、ネジ頭の直径よりも大きい。延伸時の径方向の温度分布や延伸速度を制御することによって分子配向を制御して、棒12の強度を高める。従来技術で説明したように、この製造方法によって、製造された棒12に多少の弧状を含む場合がある。
【0019】
樹脂材料の棒12は、第1のチャック14に対して切削刃16の反対側に待機される。待機される棒12の本数は限定されない。棒12を押し出す手段を備え、棒12を切削刃16のある方向に向けて押し出す。切削加工するための長さに押し出したところで、ストップする。棒12の押し出した長さを検出するために、光スイッチなどの非接触センサーを備えても良い。
【0020】
第1のチャック14は、押し出し手段が切削刃16の有る方向に向けて棒12を押し出した後、棒12を把持する。第1のチャック14は、樹脂材料の棒12を把持して、回転する。第1のチャック14としてコレットチャックを使用すれば、棒12を傷つけにくい。
【0021】
切削刃16は回転する棒12に押し当てられて、棒12を切削する。回転軸がぶれないように、ガイドチャック22が棒12に押し当てられる。切りくずを除去するためのエアガンを備えても良い。
【0022】
ネジ先からネジ頭まで切削加工した後、第2のチャック18は、切削加工されたネジ先部分を把持する。ネジ先部分のネジ山を破壊しないように、ネジ山に嵌めあわされる溝を設けても良い。第2のチャック18でネジ先部分を把持した後、第1のチャック14が棒12を放す。第2のチャック18は回転して、切削刃16によって棒12とネジ頭を分離させることができる。分離後、第2のチャック18はエンドミル20に対向する位置まで移動する。
【0023】
エンドミル20は、回転することによって切削をおこなう。エンドミル20によって、ネジ頭に「+」や「−」などの溝を形成する。この溝に工具をはめ込んでネジの締め付けをおこなうことできる。第2のチャック18は固定され、形成する溝の方向に沿ってエンドミル20が移動する。エンドミル20の位置を固定して第2のチャック18を移動させても良い。
【0024】
さらにネジ加工システム10は、ネジの外観を撮影するスキャナ24、撮影された画像を画像処理するコンピュータ26、およびネジ加工システム10の動作を制御する制御手段を備える。
【0025】
スキャナ24は、立体を撮影することが可能な工業用スキャナを使用する。スキャナ24は撮像素子が水平方向に移動するように配置する。ネジの軸が水平方向を向くように、ネジを配置するための凹部37aを備えたジグ37を設ける(図2)。ジグ37の凹部37aにネジの軸を配置する。このとき、ネジ頭は空中に浮く。撮影された画像のネジ28と背景とのコントラストが大きくなるように、スキャナ24のネジ28を配置する場所の色を選択する。
【0026】
ネジ頭34の端部に設けた溝と対向するようにプリズム38を設ける(図3(a))。プリズム38は光軸を屈折させ、さらに焦点距離を補正するものである。スキャナ24の焦点はネジ28の中心軸にあり、スキャナ24から見てネジ28の側方のネジ山32に焦点を合わせて撮影することができる。側方のネジ山32に焦点を合わせるのは、撮影したときに背景との境界となるためである。さらに、プリズム38によって、ネジ頭34の溝36も同一焦点となるようになっている。図3(a)における上方から撮影した場合に、1回の撮影でネジ山32とネジ頭34の溝36を同時に撮影することができる(図3(b))。同時に撮影することによって、確実にネジ28を加工したか否かを判別し易い。また、1つの画像データとして保存に便利である。
【0027】
コンピュータ26は、撮影された画像からネジ28の寸法を求める手段、求めたネジ28の寸法が規定値であるかを判定する手段として機能する。寸法を求めるための画像処理については後述する。コンピュータ26に接続されたモニタ40に種々のデータを表示させる。
【0028】
押し出し手段、第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20にはプログラマブル・ロジック・コントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)が備えられている。PLCが、実際に所定の処理をおこなうための動力源などをシーケンス制御する。PLCは、同等のマイクロコンピュータであっても良い。
【0029】
押し出し手段、第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20に対してコンピュータ24が通信接続される。コンピュータ26はネジ28の切削加工条件を設定する手段として機能する。この設定は、求められたネジ28の寸法によって変更される。切削加工条件は、押し出し手段、第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20に送信される。
【0030】
コンピュータ26で切削加工条件を設定して、PLCによって押し出し手段、第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20の動作が制御される。すなわち、コンピュータ26とPLCが切削を制御する制御手段として機能する。最初の切削加工条件は、操作者によってコンピュータ26に入力しても良い。
【0031】
コンピュータ26がおこなう画像処理について説明する。(A)画像のノイズをノイズ除去フィルタで除去する。以下の画像処理をおこなう上で、確実にネジ28の寸法を求めるためである。ノイズ除去フィルタは周知のものを使用できる。例えば、一の画素とその周辺の画素の輝度値を小さい値から順番に並べ、中心の輝度値を一の画素の出力値とするフィルタが挙げられる。
【0032】
(B)画像にネジ頭34が含まれることをチェックする。撮影するときにプリズム38を用いてネジ山32とネジ頭34の溝36とを同時に撮影しており、画像内に棒状の領域と円形の領域とが並んでいることをチェックする。ネジ28と背景とのコントラストが大きく異なれば、エッジを抽出することによって、画像内から棒状の領域と円形の領域を抽出し、これらが並んでいることを確認できる。並んでいなければ撮影ミスまたはネジ28に対するプリズム38の位置ずれと判定する。再度撮影をおこなったり、以降の処理を中止したりする。
【0033】
(C)ネジ28が水平を向くように画像を回転させ、基準点を決定する。このとき、画像からネジ28を抽出する。画像のコントラストが大きく変化する境界(エッジ)42から複数点抽出する(図4(a))。抽出する点の数は任意である。抽出された点は、ネジ山らせん部の側面部32であれば二次曲線または三次曲線で近似し、ネジ山の山頂部46であれば直線で近似する(図4(b))。
【0034】
(D)ネジ28の各部の大きさを求める。撮影倍率は設計時に既知であり、画像内でのネジ28の寸法から実際の寸法を求めることができる。したがって、抽出されたネジ28の外形からネジ28の長さ、山径(山頂部46から反対側の山頂部46までの長さ)、谷径(ネジ谷から反対側のネジ谷までの長さ)、山頂幅、ネジ山32のピッチ、ネジ頭34の直径、溝36の長さ、溝の幅などを求めることができる。
【0035】
上記(A)〜(D)の手順で求めたネジ28の各部の大きさは、コンピュータ26の記憶装置に記憶する。ネジ28は全数検査をおこなうため、その測定されたデータとなる。また、コンピュータ26はネジ28の規定値を記憶しておき、求めたネジ28の寸法が規定値に入っているか否かを判定する。判定の方法は、後述する切削加工の中で説明する。判定結果は、ネジ28の寸法の切削量の変更に使用する。
【0036】
上述したネジ加工システム10を使用したネジ28の切削加工について説明する。(1)樹脂材料の棒12を準備し、第1のチャック14を通して押し出す。このとき、第1のチャック14から押し出される長さは、切削刃16がネジ山32の切削加工をできる長さである。
【0037】
(2)第1のチャック14が棒12を把持し、棒12の中心軸を回転軸として回転させる。このとき、切削刃16が棒12に押し当てられ、切削加工がなされる。また、回転がぶれないように、ガイドチャック22が棒12に当てられる。棒12の端部がネジ先30なるように切削加工する。ネジ山32の高さになるまで棒12を均一に切削した後、ネジ山32およびネジ谷を形成するように切削する。
【0038】
(3)ネジ山32を切削加工した後、第1のチャック14は回転を停止する。このとき、切削刃16はネジ28から放される。
【0039】
ネジ山32を切削加工した後、ネジ首33、ネジ頭34を切削加工するために、上記(1)に戻る。(1)で棒12を所定長だけ押し出し、(2)と(3)の切削と停止を繰り返す。ネジ先30からネジ頭34まで切削加工する。このとき、ネジ頭34の端部は棒12から切り離されていない。
【0040】
(4)第2のチャック18でネジ先部分を把持し、その後、第1のチャック14は棒12を放す。なお、ネジ先部分以外に、ネジ28の軸全体やネジ首33など、切削加工の終了した部分であって、ネジ頭34を棒12から切り離す加工をおこなうときに、切削刃16の邪魔にならない部分を把持しても良い。
【0041】
(5)第2のチャック18が回転して、切削刃16によってネジ頭34の端部を切削加工しながら棒12からネジ28を切り離す。切り離されたとき、ネジ28は第2のチャック18で把持されている。
【0042】
(6)第2のチャック18はネジ28を把持しながらエンドミル20と対向する位置まで移動する。エンドミル20が回転しながらネジ頭34の端部に押し当てられ、ネジ頭34の端部に溝36ができるように切削加工する。溝36は工具でネジ28を回せるように「+」や「−」などの溝である。
【0043】
(7)第2のチャック18からネジ28を放し、ロボットアームによる自動または操作者による手動によってネジ28をスキャナ24で撮影できるようにセットする。上述した方法で切削加工されたネジ28をスキャナ24で撮影して、コンピュータ26がネジ28の各部の寸法を求める。また、求めた寸法はコンピュータ26の記憶装置に記憶する。
【0044】
(8)コンピュータ26は、求めた寸法が規定値に入っているかを確認する。規定値は一定の幅を有しており、確認は、規定値の中心値と求めた寸法との差分の絶対値を求めることによりおこなう。差分の絶対値が所定値よりも大きければ、規定値に入っていないことが分かる。また、求めた寸法と規定値とを直接比較しても良い。コンピュータ26は規定値を記憶しておく。
【0045】
規定値とは異なった場合に、製造中のネジ28が規定値に入るように、規定値よりも大きければ切削量を大きくし、規定値よりも小さければ切削量が小さくなるように、第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20の駆動条件を変更する。すなわち、切削加工における切り込み量や送り量の駆動条件が変更される。駆動条件を含む信号が第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18、エンドミル20に送られる。
【0046】
例えば、図5のようにネジ山32が11あるネジ28を製造し、ネジ山32の山径を求める。Aネジ28は規定値に入っており、駆動条件を変更する必要はない。Bネジ28は1〜3のネジ山32の山径が規定値に入っていない。1〜3のネジ山32の山径において、切削量が大きくなるように駆動条件を変更する。
【0047】
上記(1)〜(8)を繰り返すことによって、1本の棒12から次々とネジ28を切削加工する。一のネジ28の(7)と(8)をおこなっているときに次のネジ28の(1)を開始する。一のネジ28についての上記(7)と(8)は、次のネジ28の上記(2)でのネジ先30のネジ山32の高さまで切削加工が終わるまでに完了させる。ネジ山32を切削加工する前に駆動条件を変更することにより、一のネジ28が規定値にならずに廃棄になったとしても、次のネジ28が規定値に入るようにできる。
【0048】
以上のように、ネジ28の寸法を求めて、以後の切削加工において調整をおこなうため、廃棄するネジ28を極端に減少させることができる。切削加工後のネジ28の寸法を測定しているため、全数検査をおこなうことができ、ネジ28を使用することができる。
【0049】
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。ネジ28の切削加工をおこなう第1のチャック14、切削刃16、第2のチャック18およびエンドミル20を複数にしても良い。この複数にした分、同時に複数のネジ28が切削加工され、1台のスキャナ24で複数のネジ28の寸法を一気に測定する。1つの画像に複数のネジ28が撮影される。
【0050】
コンピュータ26は、上記(A)の前に、ネジ28ごとに画像を分割する。分割する方法は、ネジ28の撮影される位置が決まっている場合、その位置ごとに画像を分割することによって、ネジ28ごとに画像を分割することができる。分割された画像の以降の処理は上記の(A)以降と同じである。
【0051】
ネジ28の切削加工はネジ先30からおこなったが、ネジ頭34からおこなっても良い。図6のネジ加工システム10bは、図1のネジ加工システム10と異なり、第1のチャック14が移動する。第2のチャック18とエンドミル20が第1のチャック14と対向するようになっている。
【0052】
切削加工は以下のようにおこなう。(a)棒12を第1のチャック14で把持して、ネジ頭34を切削加工する。(b)第1のチャック14がエンドミル20と対向する位置に移動して、ネジ頭34の溝36をエンドミル20で形成する。(c)第1のチャック14は元の位置に戻り、ネジ山32を切削加工する。(d)第1のチャック14は棒12を放し、第2のチャック18でネジ頭34を把持する。(e)第2のチャック18が回転して、切削刃16でネジ先32を切削加工しながら、棒12から切り離す。ネジ28の切削加工をおこなうために、(a)〜(e)において、適宜棒12を押し出す。以降、上記(7)と(8)の工程がおこなわれる。上述したように、切削加工をおこなう際、一のネジ28の寸法によって、次のネジ28の切削加工の調節をおこなう。
【0053】
図1および図6では第2のチャック18を備えていたが、図7のネジ加工システム10cのように、第2のチャック18の代わりにセンタ50を取り付けた心押台52であっても良い。センタ50が棒12を第1のチャック14の方向に押し当てられる。センタ50が回転中心軸となり、センタ50によって棒12の回転ブレが防がれる。センタ50によって回転ブレが防がれるため、ガイドチャック22は必要ない。
【0054】
切削加工は以下のようにおこなう。(a)棒12を第1のチャック14で把持して、ネジ頭34を切削加工する。このとき、センタ50によって棒12の先端を第1のチャック14へ押し当てる。(b)第1のチャック14がエンドミル20と対向する位置に移動して、ネジ頭34の溝36をエンドミル20で形成する。(c)第1のチャック14は元の位置に戻り、ネジ山32を切削加工する。このとき、センタ50によって棒12の先端を第1のチャック14へ押し当てる。切削刃16でネジ先32を切削加工しながら、棒12から切り離す。ネジ28の切削加工をおこなうために、(a)〜(c)において、第1のチャック14の回転を停止して、適宜棒12を押し出す。以降、上記(7)と(8)の工程がおこなわれる。上述したように、切削加工をおこなう際、一のネジ28の寸法によって、次のネジ28の切削加工の調節をおこなう。
【0055】
上記の各実施例において、ネジ28の撮影を複数回にしても良い。ネジ28は1方向からの撮影だけでは不十分であり、ネジ28を回転させて複数回撮影する。ジグ37の凹部37aにローラなどの回転装置を設けてネジ28を回転させても良いし、操作者によって回転させても良い。
【0056】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0057】
10、10b、10c:ネジ加工システム
12:樹脂材料の棒
14:第1のチャック
16:切削刃
18:第2のチャック
20:エンドミル
22:ガイドチャック
24:スキャナ
26:コンピュータ
28:ネジ
30:ネジ先
32:ネジ山
34:ネジ頭
36:溝
37:ジグ
38:プリズム
50:センタ
52:心押台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7