(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも高低2段階以上の加熱力に切替可能とされ、輻射加熱または対流加熱によって収容場所に収容された被調理物を加熱調理する加熱源と、被調理物の温度の上昇に伴い上昇する加熱温度を検出する温度センサと、加熱開始後に前記加熱温度が切替温度に達したときに加熱力を低い側の加熱力に設定する制御部とを備えた加熱調理器であって、
前記被調理物の重量を検出する重量センサを備え、
前記制御部は、前記温度センサによる検出値と前記重量センサの検出値とに基づいて被調理物の熱吸収率の高低を判定する判定機能を有すると共に、前記熱吸収率が低いと判定したときには前記切替温度を高い値に変更設定する、または、前記熱吸収率が高いと判定したときには前記切替温度を低い値に変更設定することを特徴とする加熱調理器。
前記収容場所が、被調理物の出し入れ用の開口部と、前記開口部を閉塞するグリル扉と、前記グリル扉の開閉状態を検出する扉開閉検出手段とを具備するグリル庫で構成され、前記扉開閉検出手段が前記グリル扉の閉状態を検出している場合にのみ加熱を行い、かつ、前記扉開閉検出手段が前記グリル扉の閉状態を検出している場合にのみ前記初期重量記憶手段に前記初期重量を記憶させることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
前記扉開閉検出手段が前記グリル扉が閉状態から開状態になったことを検出した時点において、順次記憶した前記重量センサの検出値と予め記憶された前記仮の基準値とを比較し、前記順次記憶した前記重量センサの検出値と前記仮の基準値との差が予め記憶された所定の許容値より大きいときには、基準値読み込み異常である旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
加熱中において、前記重量センサで検出される被調理物の重量が減少する単位時間当たりの変化率が所定の減少変化率より小さく、かつ、前記温度センサで検出される前記加熱温度が上昇する単位時間当たりの変化率が所定の上昇率より大きくなる時点が焦げ付き開始時点であると判断し、焦げ付き開始時点若しくは焦げ付き開始時点から所定時間経過した時点で加熱を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、以下の問題点があった。
【0006】
(1)特許文献1の温度センサを利用して加熱量を調整する方法では、加熱手段が電気ヒータや表面燃焼バーナなど、輻射熱によって被調理物を加熱するものである場合、被調理物が「あじ」等の白っぽく輻射熱の吸収率が低いものと、「さんま」等の黒っぽく輻射熱の吸収率が高いものとでは、同じ重量でも必要な加熱時間が異なる。良好な調理仕上げを得るためには、白っぽいあじの方が黒っぽいさんまより加熱時間を長くする必要があった。
【0007】
さらに、「あじ」等の白っぽく輻射熱の吸収率が低い被調理物を加熱した場合は、被調理物に熱が移動しにくいため、排ガス温度が上がりやすく、「さんま」等の黒っぽく輻射熱の吸収率が高い被調理物を加熱した場合に比べると、同じ重量でもより軽いと判定しまうことになる。つまり、温度センサによってのみ判断すると、加熱時間がより長くする必要のある白っぽい魚の方が、黒っぽい魚より重量が軽いと判断され、より加熱時間が短くなる、といった不具合が発生する虞があった。
【0008】
(2)特許文献2の従来技術のように、重量センサによって被調理物の重量を測定すれば、重量減少率に基き加熱時間の調整は可能になるが、被調理物が白っぽいものであるのか、黒っぽいものであるのかの判断ができない為、加熱量をどのタイミングで切替えれば焦げ過ぎを抑えることが出来るかの判断が困難であった。
【0009】
さらに、被調理物が同じ重量であっても厚みが大きいものに比べて厚みが小さいものほど体積に対する表面積の比が大きい傾向にあるため加熱されやすく、表面が滑らかなものに比べて表面が粗いものほど表面における対流による熱伝達率が大きくなるから加熱されやすいものであるが、被調理物の厚みに応じた適正な加熱時間の設定や焦げ過ぎ防止のための加熱量の適切な切替え、および、表面の滑らかさや粗さに応じた適正な加熱時間の設定や焦げ過ぎ防止のための加熱量の適切切替えが困難なものであった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、被調理物の色味、厚み、表面粗さに関わらず、適正な加熱調理を行う制御を実行する加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも高低2段階以上の加熱力に切替可能とされ、輻射加熱または対流加熱によって収容場所に収容された被調理物34を加熱調理する加熱源と、被調理物34の温度の上昇に伴い上昇する加熱温度を検出する温度センサ19と、加熱開始後に前記加熱温度が切替温度に達したときに加熱力を低い側の加熱力に設定する制御部10とを備えた加熱調理器であって、前記被調理物34の重量を検出する重量センサ13を備え、前記制御部10は、前記温度センサ19による検出値と前記重量センサ13の検出値とに基づいて被調理物34の熱吸収率の高低を判定する判定機能を有すると共に、前記熱吸収率が低いと判定したときには前記切替温度を高い値に変更設定する、または、前記熱吸収率が高いと判定したときには前記切替温度を低い値に変更設定することを特徴としている。
【0012】
このような構成とすることで、被調理物34の熱吸収率に応じて強火から弱火への切替温度を変更設定することにより、被調理物34の色合いの差に起因する熱吸収率の高低に応じた加熱力の設定が可能になり、焦げ目が程よいものとなるなど調理の仕上がりを良好なものとなる。
【0013】
また、前記被調理物34が前記収容場所に収容されていないときの前記重量センサ13の検出値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、[初期重量=(調理の開始が指令された後における加熱開始前の前記重量センサ13の検出値)−(前記基準値)]の式を用いて、初期重量を演算して記憶する初期重量記憶手段とを備え、前記制御部10は、[重量減少率={前記初期重量−(前記重量センサ13の検出値−前記基準値)}÷前記初期重量×100]の式を用いて加熱開始後における重量減少率を求め、加熱開始後に前記重量減少率が所定の調理完了判定用目標値に達したときに加熱を終了するように制御すると共に、前記熱吸収率が高いと判定したときには前記調理完了判定用目標値を低い値に変更設定し、前記熱吸収率が低いと判定したときには前記調理完了判定用目標値を高い値に変更設定するように構成するのが好ましい。この場合、被調理物34の色合いの差に起因する熱吸収率の違いに応じて調理完了判定用目標値が補正されるので、調理の仕上がりをより良好にすることができる。
【0014】
また、前記収容場所が、被調理物34の出し入れ用の開口部と、前記開口部を閉塞するグリル扉31と、前記グリル扉31の開閉状態を検出するグリル扉開閉検出手段12とを具備するグリル庫30で構成され、前記グリル扉開閉検出手段12が前記グリル扉31の閉状態を検出している場合にのみ加熱を行い、かつ、前記扉開閉検出手段12が前記グリル扉31の閉状態を検出している場合にのみ前記初期重量記憶手段に前記初期重量を記憶するように構成するのが好ましい。この場合、初期重量を記憶するとき、および、重量減少率を求める加熱中は何れもグリル扉31が閉じている状態であるから、正確な重量測定が可能になり、調理の仕上がりをより良好なものとすることができる。
【0015】
また、前記制御部10への電源のON/OFFを行う電源スイッチ15を備え、前記グリル扉開閉検出手段12がグリル扉31の閉状態を検出している状態で前記電源スイッチ15がON操作された時点、または、前記制御部10への電源がONになっている状態で前記グリル扉開閉検出手段12がグリル扉31が開状態から閉状態になったことを検出した時点のいずれかの時点から、前記重量センサ13の検出値の最新の値を順次記憶し、前記グリル扉開閉検出手段12がグリル扉31が閉状態から開状態になったことを検出した時点において、順次記憶した前記重量センサ13の検出値と前記制御部10に予め記憶されている仮の基準値とを比較し、前記順次記憶した前記重量センサ13の検出値と前記仮の基準値との差が所定の許容値より小さいときには前記順次記憶した前記重量センサ13の検出値を前記基準値とするように構成するのが好ましい。この場合、電源スイッチ15のON操作またはグリル扉31の開閉をきっかけとして、被調理物34の重量を検出するようになっているので、使用者による重量判定用の指令を必要としないので、より使い勝手がよく、間違った情報が入力されるおそれのない調理制御が行える。
【0016】
また、前記グリル扉開閉検出手段12が前記グリル扉31が閉状態から開状態になったことを検出した時点において、順次記憶した前記重量センサ13の検出値と予め記憶された前記仮の基準値とを比較し、前記順次記憶した前記重量センサ13の検出値と前記仮の基準値との差が予め記憶された所定の許容値より大きいときには、基準値読み込み異常である旨を報知する報知手段を備えるように構成するのが好ましい。この場合、グリル庫30内に過去の調理物が残っている場合や受皿37や焼き網33が挿入されていない場合は異常報知するので、操作ミスによる調理の失敗が防止できる。
【0017】
また、前記加熱中において、前記重量センサ13で検出される被調理物34の重量が減少する単位時間当たりの変化率が所定の減少変化率より小さく、かつ、前記温度センサ19で検出される前記加熱温度が上昇する単位時間当たりの変化率が所定の上昇率より大きくなる時点が焦げ付き開始時点であると判断し、焦げ付き開始時点若しくは焦げ付き開始時点から所定時間経過した時点で加熱を停止するように構成するのが好ましい。この場合、被調理物34の焦げ付き開始時点の判断結果に基づき加熱を停止することで、被調理物34の焦げの程度を程よいものとすることができ、調理の仕上がりをより良好なものとすることができる。
【0018】
また、前記初期重量と前記重量減少率とを表示部に表示する表示手段を備えるのが好ましい。この場合、使用者は、表示される初期重量と前記重量減少率とを認識しながら調理を行うことができるから、操作ミスによるメニュー選択間違いなどに起因する調理の失敗が防止できる。また、重量減少率を確認することは、被調理物34の減水率を確認することになり、グリル扉31を開けることなく減水率が把握できるから、調理の仕上がりを良好なものとすることができる。
【0019】
また、前記収容場所に、ダッチオーブン料理を行うグリル用の専用鍋が収容される場合において、前記制御部10に、専用鍋用仮の基準値と専用鍋用許容値とを記憶しておき、前記専用鍋が前記収容場所に収容されたことを検出する専用鍋検出手段、または、専用鍋を使用することを手動で選択入力する専用鍋選択手段のいずれかを設け、前記専用鍋が前記収容場所に収容されたことを専用鍋検出手段が検出した場合、または、専用鍋を使用することを専用鍋選択手段で選択入力された場合のいずれかにおいて、前記専用鍋用仮の基準値を前記仮の基準値として用い、前記専用鍋用許容値を前記所定の許容値として用いるように構成するのが好ましい。この場合、専用鍋を使用してダッチオーブン料理をする場合には、専用鍋の使用に対応した基準値が選択されるので、専用鍋の使用や不使用に応じた適正な重量の検出ができ、調理の失敗を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のうち請求項1記載の発明は、温度センサによる検出値と重量センサの検出値とに基づいて被調理物の熱吸収率の高低を判定して、熱吸収率の高低に応じて切替温度を変更設定することにより、被調理物の色味、厚み、表面粗さに関わらず、適正な加熱調理を行う制御を実行することができ、調理の仕上がりをより良好にすることができるものである。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1の効果に加えて、被調理物の色合いの差に起因する熱吸収率の違いに応じて調理完了判定用目標値を補正することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2の効果に加えて、グリル扉を閉じた状態で被調理物の正確な重量測定が可能となる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項3の効果に加えて、電源スイッチのON操作またはグリル扉の開閉をきっかけとして、被調理物の重量を検出することにより、使い勝手がよく、使用者による間違った情報が入力されるおそれのない調理制御が行える。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項4の効果に加えて、重量センサの基準値の読み込み異常を報知することにより、操作ミスによる調理の失敗が防止できる。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの効果に加えて、被調理物の焦げ付き開始時点の判断結果に基づき加熱を停止することにより、被調理物の焦げの程度を程よいものとすることができる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項
2〜5のいずれかの効果に加えて、使用者は、表示される初期重量と前記重量減少率とを認識しながら調理を行うことができるから、操作ミスによるメニュー選択間違いなどに起因する調理の失敗が防止できると共に、グリル扉を開けることなく被調理物の減水率の把握が容易にできる。
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項
4又は5の効果に加えて、専用鍋を使用してダッチオーブン料理をする場合には専用鍋の使用や不使用に応じた適正な重量の検出ができ、ダッチオーブン調理の仕上がりをより良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
加熱調理器は、以下に示す実施形態ではグリル付きのガスこんろに備えられたグリルである。なお、機器の前面から被調理物の出し入れを行うグリルである必要はなく、被調理物の温度の変化に応じて変化する加熱温度を検出する調理用温度検出手段、および、被調理物の重量を検出する重量センサを備える構造の加熱調理器であればどのような形態の調理器であってもよい。
【0031】
図1に示すように、ガスこんろ1の天面部を構成するガラス製のトッププレート11にはこんろバーナからなるこんろ部2を複数設けている。図示例では、こんろ部2として、標準バーナ2aを備えた左こんろ部2が向かって左側の手前に設けてあり、小バーナ2bを備えた後こんろ部2が左右方向中央の奥に設けてあり、高火力バーナ2cを備えた右こんろ部2が向かって右側の手前に設けてある。
【0032】
トッププレート11の上面には各こんろバーナ2a〜2cを中央に配置した五徳22を設けている。よって本実施形態では各五徳22がこんろバーナ2a〜2cによって鍋等を加熱する際に載置するための載置部となる。
【0033】
グリル3は、
図1、
図2、
図3に示すように、ガスこんろ1内にグリルバーナ32を設けたグリル庫30を備えて構成している。グリル3は、輻射加熱または対流加熱によってグリル庫30に収容された被調理物34を加熱調理するものであって、少なくとも高低2段階の加熱力に切替可能とされる。グリル庫30の被調理物34の出し入れ用の前開口は、ガスこんろ1の前面に設けたグリル扉31によって開閉自在に閉塞される。グリル庫30内の下部に受皿37を設けると共に、受皿37上に、被調理物34を載置させる載置部としての焼き網33を載置して、その被調理物34をグリルバーナ32にて加熱するように構成されている。グリル庫30の後方側には、グリルバーナ32の燃焼排ガスを機外に排気させる排気通路(図示せず)が上方側に延びる状態で連設され、その排気通路にてグリルバーナ32の燃焼排ガスを排気口70に導くように構成されている。グリルバーナ32は、グリル庫30の上部に配設され焼き網33に載置される被調理物34の上面を加熱する上バーナ32aと、グリル庫30の下部に配設され被調理物34の下面を加熱する左右一対の下バーナ32bとからなる。
【0034】
グリル3による調理設定の入力を行うためのグリル用設定入力用の操作パネル6は、
図6に示すように、グリル3の点火・消火操作をするための点火・消火スイッチ61、グリル3による調理時間(焼成時間)を設定するためのタイマー増減スイッチ62、上火、下火の火力を切換るための火力切替スイッチ63、焼成するメニューを選んで該当する焼成物に対応した焼成制御を選択するためのメニュースイッチ64、アラカルトメニュー(後述)を選んで該当するアラカルトメニューに対応した焼成制御を選択するためのアラカルトメニュースイッチ65、タイマー増減スイッチ62、火力切替スイッチ63、メニュースイッチ64、アラカルトメニュースイッチ65等を操作して設定した各入力を取り消すための取消しスイッチ66等を備えている。
【0035】
次に、グリル3を使用する場合につき説明する。操作パネル6を備えた可動部材の前面上部を押して操作パネル6をこんろ本体の前面から前方に突出して
図1に示すように上方に露出させ、上方を向いている操作パネル6の
図6に示したメニュースイッチ64やアラカルトメニュースイッチ65やタイマー増減スイッチ62を指で押すことで調理メニューやアラカルトメニューや調理時間等のグリル調理の設定入力を行い、次に、点火・消火スイッチ61を指で押して点火入力操作を行ってグリル3に点火するものである。これによって目的とするグリル調理がなされるように制御部10(
図3参照)により火力調整、調理時間等が制御されてグリル自動調理が行われるものである。調理設定の入力が終わると、当該可動部材の前面上部を押して操作パネル6が外部に露出しないように収納するものであり、これによりグリル3による調理中に操作パネル6が汚れるのを防止できる。なお、グリル3における自動調理中に自動調理を中止したい場合には点火・消火スイッチ61を指で押すことで消火して自動調理を中止できる。
【0036】
メニュースイッチ64により切り替えられるメニューとしては、「姿焼」「切身」「干物」があり、アラカルトメニュースイッチ65としては、「ダッチオーブン」「ピザ」「焼きおにぎりあたため」の3種類から選択できるようになっている。また、アラカルトメニューの内から、「ピザ」を選択したときは付属品の金属製の調理プレート(図示せず)を焼き網33の上に設置し、この調理プレートの上に食パンやピザ等の被調理物34を載置して調理を行う旨、取扱説明書で推奨しており、使用者はこれに従い必要に応じて付属品の調理プレートを用い、アラカルトメニュースイッチ65を操作してアラカルトメニュー調理を行う。
【0037】
そして、このグリル3には、グリルバーナ32による加熱を開始した後の初期において、焼き網33における被調理物34の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇速度(温度上昇勾配という)を計測するための調理用の温度センサ19(
図3参照)と、被調理物34の重量を検出する重量センサ13とが備えられ、制御部10は、温度センサ19による検出値と重量センサ13の検出値とに基づいて、後述のように切替温度を変更設定すると共に、被調理物34に対する加熱を終了するまでの調理完了判定用目標値を求める。調理完了判定用目標値は、調理メニューの種類と、被調理物34の載置状態に応じて、予め定められた値を適用したり、予め定められた算出式から値を求めるものである。
【0038】
温度センサ19が設けられる位置は、上バーナ32a及び左右一対の下バーナ32bの夫々の燃焼排気ガスが流動する位置で、加熱を開始してから焼き網33に載置される被調理物34の載置状態や被調理物34の熱負荷の大きさに応じて温度上昇勾配が異なる箇所である。なお、重量センサ13が設けられる位置は特に限定されない。
【0039】
以下、本実施形態のグリル3の加熱制御について説明する。
【0040】
グリル扉31は、移動用レール25(
図2参照)と接続されている。移動用レール25は固定レール(図示せず)に沿って前後移動自在に支持されている。使用者が取手を持って引き出したり押し入れたりすることで、移動用レール25上に載置された受皿37とその上に載置された焼き網33とが前後に移動するように構成されている。
【0041】
グリル庫30には、
図3に示すように、グリル扉31の開閉状態を検出するグリル扉開閉検出手段12として、マイクロスイッチ等を備えている。このグリル扉開閉検出手段12は、移動用レール25上の受皿37の上に載置された焼き網33がグリル扉31が閉じられた状態に対応する位置にあるかどうかを検出することによって、グリル扉31の開閉が検出できるように構成されており、グリル扉31が閉じていない状態では燃焼を開始しないように構成されている(
図4、
図5参照)。これにより、グリル扉31が閉じていない状態で下記の制御を実行した場合に、グリル庫30内の排気ガスの流動状態がグリル扉31の全閉状態とは異なる状態で温度センサ19が温度検出してしまうことにより、不適切に調理時間や下記加熱量切替温度が設定されてしまうことを防止している。
【0042】
また、制御部10(
図3参照)は、加熱開始後に加熱温度が切替温度に達したときに加熱力を低い側の加熱力に切替制御すると共に、温度センサ19による検出値と重量センサ13の検出値とに基づいて被調理物34の熱吸収率の高低を判定する判定機能を備えている。この判定機能は、後述のように被調理物34の熱吸収率が低いと判定したときには切替温度を高い値に変更設定し、熱吸収率が高いと判定したときには切替温度を低い値に変更設定するものである。
【0043】
制御部10には、加熱開始後における被調理物34の重量減少率を算出する手段が設けられている。ここで、後述のように初期重量は、[初期重量=(調理の開始が指令された後における加熱開始前の重量センサ13の検出値)−(基準値)]の式を用いて算出される。さらに、加熱開始後の重量減少率は、[重量減少率={前記初期重量−(前記重量センサ13の検出値−前記基準値)}÷前記初期重量×100]の式を用いて算出される。制御部10は、加熱開始後における重量減少率が所定の調理完了判定用目標値に達したときに加熱を終了するように制御するものである。
【0044】
更に、制御部10は、被調理物34の熱吸収率が高いと判定されたときには調理完了判定用目標値を低い値に変更設定する機能を有している。なお、熱吸収率が低いと判定したときには調理完了判定用目標値を高い値に変更設定する機能を備える構成としてもよい。
【0045】
以下、制御部10による、温度上昇勾配と重量低下勾配による切替温度の変更設定と、目標重量減少率の変更設定とを、順次説明する。
【0046】
図4は、被調理物34がグリル庫30に収容されていないときの重量センサ13の検出値を基準値として記憶するための、基準値の読み込みシーケンスのフローチャートである。
【0047】
先ず、電源スイッチ15を投入した時点(ステップS1)で、グリル扉開閉検出手段12によるグリル扉31の開閉がチェックされ(ステップS2)、このときグリル扉31が閉の場合は、1秒毎に重量センサ13による検出値をメモリに連続10個記憶する(ステップS3)。このとき、11個目は最初のデータを上書きすることで常に最新の10個のセンサデータが記憶されるようになっている。なお、グリル扉31が開の状態で点火指令があるとブザー等を鳴らして警告音を発生させて(ステップS2a→S2b)、ステップS2に戻る。これにより、グリル扉31が開いた状態では燃焼を抑制することができる。
【0048】
その後、グリル扉31を開にした時点で、グリル扉31を開にする2秒前のデータをV1として記憶する(ステップS4→S5)。なお、2秒に限定されるものでなく、2秒前〜5秒前までの平均値をV1として記憶してもよい。
【0049】
このとき、記憶されたV1が、Vs−α<V1<Vs+αの範囲にあるかどうかの判定をする。Vsとは、焼き網33上に被調理物34としてなにも載置されていないときの重量に対応する基準値として予め記憶してある値、例えば500gとされる。αは所定の許容値であり、例えば、50gとされる。このように、V1が、Vsにαを加算した値より小さく、かつ、Vsからαを減算した値より大きいときには、焼き網33に被調理物34としてなにも載置されていないものとして、このV1を、以下の制御において特に用いられる、焼き網33の実際の基準値Vs’として記憶する(ステップS7)。つまり、電源スイッチ15のON状態で且つグリル扉31が閉じられて所定時間経過後の値を基準値Vsと比較して、基準値Vsとの差が小さければ、実際の基準値としてVs’を記憶する。
【0050】
一方、V1が(Vs+α)以上、または、(Vs−α)以下の時には、「基準値読み込み異常警告」がなされ(ステップS6a)、エラー判定してステップS2に戻る。このとき、仮に焼き網33上にすでに調理された被調理物34が載置されているときはこれを取り除いた後、一旦グリル扉31を閉じて、2秒以上経過してから再びグリル扉31を開にすることになる。
【0051】
上記のように、焼き網33の実際の基準値Vs’が記憶されると、
図4から
図5に移行する。
【0052】
図5は、被調理物34の初期重量Vaの読み込みシーケンスのフローチャートである。
【0053】
上述のように、実際の基準値Vs’を記憶した後に、焼き網33上に被調理物34を載置して、その後、グリル扉31を閉にしてから2秒経過した時点における重量センサ13による検出値をV2として記憶する(ステップS10→S11)。なお、グリル扉31を閉にした1秒後〜2秒後までの平均値をV2として記憶してもよい。
【0054】
そして、重量センサ13による検出値を実際の基準値Vs’と比較して、初期重量をVa=V2−Vs’から算出して記憶して表示部16(
図3参照)に表示する(ステップS12)。このとき、Va<0の場合はエラー判定するようにしてもよく、或いは、重量表示に際して電子音による注意喚起を行ってもよい。その後、グリル扉31を閉状態にしてから、『手動」、『オート』、『ダッチオーブン』の各調理モードを使用者が選択する(ステップS13→S14)。なお、グリル扉31が開いたままで点火指令をすると、ブザー等を鳴らして警告音を発生させて(ステップS10a→S10b)、ステップS10に戻る。また、調理モードを選択した後で点火指令がないときもステップS10に戻る。これにより、グリル扉31が開いた状態での燃焼を抑制できる。
【0055】
調理モードの選択完了後に、点火・消火スイッチ61の操作によりグリルバーナへの点火処理が行われると(ステップS15)、選択されたモードに応じた燃焼制御が実行される。本例では、メニュースイッチ64によるメニュー選択を行うことで、『オート』モードが選択され、アラカルトメニュースイッチ65によりダッチオーブン表示を点灯させることで『ダッチオーブン』モードが選択され、『オート』モードも『ダッチオーブン』モードも選択しない場合には、『手動』モードが選択されたものとして以下の制御を行う(ステップS16、S17)。
<『手動』モードが選択されている場合>
『手動』モードが選択されると、グリル燃焼用タイマーによる燃焼制御と点火後所定時間△t経過した時の温度勾配αtと重量勾配αvとに応じて、グリルバーナの火力を上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替える閾値である切替温度を変更する、切替温度補正処理に基く燃焼制御を行う。
【0056】
図7は『手動』モード時における燃焼シーケンスのフローチャートである。
【0057】
先ず、燃焼開始前における温度センサ19(
図3参照)による検出温度Taを記憶し(ステップS20)、過熱防止用のハイカット温度THが、(TH=0.35×Ta+190)として算出される(ステップS21)。制御部10はグリルバーナ燃焼中に温度センサ19による検出温度がハイカット温度TH以上になったときには燃焼を停止させる。なお、このとき、グリルバーナの火力の切替温度Tsは「中」(=TH−20℃)に設定される。
【0058】
その後、点火処理が行われると(ステップS22)、ガス弁が開いて、上バーナ火力、下バーナ火力共に「強」に設定されるが、点火した後は、火力切替スイッチ63により適宜変更可能である。なお点火が確認されないときはエラー停止させる。
【0059】
点火処理と同時にグリル燃焼用タイマーのカウントがスタートする。『手動』モードにおいては、タイマー時間は予め8分に設定されているが、タイマー増減スイッチ62を操作することで1分から18分の間に変更設定可能となっている。
【0060】
点火処理後、所定時間△t(例えば3分)が経過するまでは、ステップS24aにおいて、重量センサ13による検出値に基づいて重量表示部(図示せず)に測定した重量データの表示と、重量センサ13による検出値に基づいて重量減少率表示部(図示せず)に、算出した重量減少率(={初期重量−(重量センサ13の検出値−基準値)}÷初期重量×100)の表示とを行う。さらにタイマー表示部(
図6)に、設定されているグリル燃焼用タイマー値から点火後グリルバーナにより加熱が行われた時間を減算した、グリル燃焼用タイマーの残り時間の表示を行う。
【0061】
なお、『手動』モードにおいて、グリル燃焼用タイマーは予め8分に設定されているが、点火処理を行う時点の温度センサ19による検出温度が80℃以上の場合には、6分に変更設定されるように構成されている。また、被調理物34の初期重量Vaに応じて制御部10がグリル燃焼用タイマーの値を変更設定するように構成してもよい。
【0062】
点火処理後、所定時間△t(例えば3分)が経過した時点以降は、ステップS25に移行して、温度センサ19による検出温度の上昇率である温度勾配αtを算出すると共に、重量センサ13にる検出値の低下率である重量勾配αvを継続し演算し、求めた温度勾配αtと重量勾配αvとに基づいて以下の[表1]に従い、グリルバーナの火力を上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替える閾値である切替温度を変更設定するための、切替温度補正処理を行う。
【0064】
前記[表1]において、温度勾配αtは、温度勾配αtが大きい場合と小さい場合の2段階に区分してあり、温度勾配αtが大きい場合は小さい場合に比べて温度上昇が速いことを表している。また、重量勾配αvも、重量勾配αvが大きい場合と小さい場合の2段階に区分してあり、重量勾配αvが大きい場合は小さい場合に比べて重量の低下速度が速いことを表している。なお、温度勾配αt及び重量勾配αvは、それぞれ、2段階に限定されるものではなく3段階以上に区分してもよい。
【0065】
また前記[表1]において、温度勾配αtが大きく重量勾配αvが大きい第1の状態は、被調理物34が軽いものの、熱吸収率は標準程度であると判定され、切替温度は「中」の設定が維持される。切替温度が「中」の設定が維持されたときは、切替温度はTs=TH−20℃の設定が維持される。
【0066】
また前記[表1]において、温度勾配αtが大きく重量勾配αvが小さい第2の状態は、熱吸収率が低いと判定され、熱吸収率が低い場合には焦げ付きを良くする為に排ガス温度を上げて被調理物34との温度差が大きい状態を長く継続する必要があることから、強火から弱火への切替温度は「高」に変更設定される。切替温度が「高」に変更設定されたときは、切替温度はTs=TH−10℃に変更設定される。例えば、
図11(a)において切替温度は目標値L1から目標値L2に変更される。
【0067】
これにより、「あじ」のように白っぽい魚を加熱調理する場合に、従来では白っぽい魚に対しては焦げ目が付きにくい低めの温度で弱火に切り替わっていたため、焦げ目が付きにくかったのであるが、本例のように弱火切替温度を高めに変更することで、程よく焦げ目をつけることができるようになる。
【0068】
また前記[表1]において、温度勾配αtが小さく重量勾配αvが大きい第3の状態は、熱吸収率が高いと判定され、熱吸収率が高い場合には焦げ付きを抑制する為に、排ガス温度が上がりすぎて被調理物34との温度差が大きくなりすぎることを防止する必要があることから、切替温度は「低」に設定される。切替温度が「低」に設定されたときは、切替温度はTs=TH−30℃に設定される。
【0069】
また前記[表1]において、温度勾配αtが小さく重量勾配αvが小さい第4の状態は、被調理物34が重いものの、熱吸収率は標準程度であると判定され、切替温度は「中」の設定が維持される。切替温度が「中」の設定が維持されたときは、切替温度はTs=TH−20℃の設定が維持される。
【0070】
以上のように被調理物34の熱吸収率(熱交換率)に応じた切替温度の変更設定を行った後に、排気温度が切替温度Ts以上であることを検出すると(ステップS26)、グリルバーナの火力が上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替えられる(ステップS27)。
【0071】
その後、温度センサ19がハイカット温度TH以上になった場合は、消火処理を実行し温度異常報知を行う(ステップS28→S29)。一方、温度センサ19がTH以下で、グリル燃焼用タイマーがタイムアップすると(ステップS27a)、消火処理が実行されてタイムアップ報知(例えば10秒間の電子音「ピピピ」による報知)を行う(ステップS27b)。なお、タイムアップ前にグリルバーナの火力切替指令があると、その指令に応じて火力切替を行い(ステップS27c→S27d)、ステップS24に戻る。また消火指令があると消火処理を実行する(ステップS27e→27f)。
<『オート』モードが選択されている場合>
『オート』モードが選択されると、『手動』モードが選択された場合と同様に、グリル燃焼用タイマーによる燃焼制御と点火後所定時間△t経過した時の温度勾配αtと重量勾配αvに応じて、グリルバーナの火力を上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替える閾値である切替温度を変更する、切替温度補正処理に基く燃焼制御を行う。さらに加えて、重量減少率(={初期重量−(重量センサ13の検出値−基準値)}÷初期重量×100)が、メニュースイッチ64により選択されたメニューに応じた目標重量減少率Gsに達した時点で、消火処理を実行する。なお、この目標重量減少率Gsは、点火後所定時間経過時点で、温度勾配αtと重量勾配αvに応じて実行される目標重量減少率補正処理により補正される。
【0072】
図8は、『オート』モード時における燃焼シーケンスのフローチャートである。ここでは、メニューとして姿焼きを選択した場合を想定している。
【0073】
先ず、燃焼開始前における温度センサ19(
図3参照)による検出温度Taを記憶し(ステップS30)、ハイカット温度THが、TH=0.35×Ta+190として算出される(ステップS31)。制御部10は、グリルバーナ燃焼中に温度センサ19による検出温度がTH以上になったときには燃焼を停止させる。また『手動』モードの場合と同様、グリルバーナの火力の切替温度Tsは「中」(=TH−20℃)に設定される。
【0074】
その後、点火処理が行われると(ステップS32)、上バーナ火力、下バーナ火力共に「強」に設定されるが、上バーナ火力、下バーナ火力は別の火力としてもよい。なお点火が確認されないときはエラー停止させる。
【0075】
点火処理後、所定時間△t(例えば3分)が経過するまでは、ステップS33aに移行して、メニュースイッチ64により選択されたメニューの表示に加えて、重量センサ13にる検出値に基づいて重量表示部(図示せず)に測定した重量データの表示と、と重量センサ13による検出値に基づいて重量減少率表示部(図示せず)に重量減少率の表示を行う。
【0076】
点火処理後、所定時間△t(例えば3分)が経過した時点以降は、ステップS34に移行して、温度センサ19による検出温度の上昇率である温度勾配αtの算出と、重量センサ13にる検出値の低下率である重量勾配αvを継続して演算し、温度勾配αtと重量勾配αvとに基づいて前記[表1]に従い、グリルバーナの火力を上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替える閾値である切替温度の変更設定を行う、切替温度補正処理を行う。ここまでは『手動』モード選択時と同様である。
【0077】
『手動』モードと異なる点は、温度勾配αtと重量勾配αvとに基づいて前記[表1]に従い、前記目標重量減少率Gsの補正処理を実行する(ステップS34)。
【0078】
例えば、「さんま」のように黒っぽい魚を被調理物34とした場合は、熱を吸収しやすいことから温度上昇が遅く温度勾配αtは小さいことになり、その結果水分の減少が促進されることから重量減少率の変化が速く重量勾配αvが大きいことになる。つまり、温度勾配αtは小さく重量勾配αvが大きい第3の状態(前記[表1])である場合には熱吸収率が良い(高い)黒い魚であると判定して、目標値を姿焼きを選択した場合の標準値として設定されているGs=20%(
図11(b)の目標値L4)からGs=15%(
図11(b)の目標値L3)に補正することで、より適正な加熱制御ができる。
【0079】
なお、前記[表1]における第1、第2、第4の状態である場合には目標重量減少率Gsの補正処理は実行しないが、第2の状態において、目標重量減少率Gsを大きくする補正処理を実行してもよい。こうすることで、熱吸収率の低いあじ等の魚の場合でもしっかりと加熱され、より適切な加熱制御ができる。また、前記[表1]において、目標重量減少率Gsの補正処理における重量勾配αvと温度勾配αtの区分は2段階に限定されるものではなく3段階以上に区分してもよい。
【0080】
以上のように目標重量減少率Gsの補正処理を行った後に、排気温度が切替温度Ts以上であることを検出すると(ステップS35)、グリルバーナの火力が上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替えられる(ステップS36)。
【0081】
そして、温度センサ19がTH以上になった場合は、消火処理を実行し温度異常報知を行う(ステップS37→S38)。なお、重量減少率が目標重量減少率Gs以下でグリルバーナの火力切替指令があると、火力切替は実行されない旨の警告を行い(ステップS36c→S36d)、ステップS33に戻る。またこのとき消火指令があると消火処理を実行する(ステップS36e→36f)。
【0082】
一方、温度センサ19がTH以下で、重量減少率が目標重量減少率Gs以上になった場合は、消火処理を実行して調理終了報知(例えば3秒間の電子音「ピピピ」による報知)を行い(ステップS36a→S36b)、
図10に移行する。
<『ダッチオーブン』モードが選択されている場合>
『ダッチオーブン』モードとは、焼き網33に換えて、蓋付き鍋等の専用鍋をグリル庫30内に入れて、直接燃焼ガスを専用鍋にあてがいダッチオーブン調理を行うものである。この『ダッチオーブン』モードが選択されている場合は、切替温度Tsはハイカット温度THに応じたTsが設定され、温度勾配αtや重量勾配αvに応じた切替温度Tsの補正は行わない。なお、初期重量Vaが大きい場合は、初期重量Vaが小さい場合に比べて、切替温度Tsを高く設定して、専用鍋の内容量が多い時にも中心付近までじっくり熱が伝わり調理ができるように構成してもよい。また、『ダッチオーブン』モードが選択されている場合は、タイマー増減スイッチ62(
図6)を操作することで1分から25分の間にタイマーを設定して調理を行うものである。
【0083】
図9は『ダッチオーブン』モード時における燃焼シーケンスのフローチャートである。
【0084】
先ず、燃焼開始前における温度センサ19(
図3参照)による検出温度Taを記憶し(ステップS40)、ハイカット温度THが、TH=0.35×Ta+210として算出される(ステップS41)。グリルバーナ燃焼中に温度センサ19による検出温度がTH以上になったときには、燃焼を停止するためのものであり、このときのハイカット温度THは、焼き網33を用いる他の『手動』モードや『オート』モードのときよりも高く設定される。また、切替温度Tsは、上述のようにハイカット温度THに応じて、Ts=TH−30に設定される。
【0085】
その後、点火が行われると(ステップS42)、上バーナ火力、下バーナ火力共に強に設定されるが、上バーナ火力、下バーナ火力は別の火力としてもよい。なお点火が確認されないときはエラー停止させる。
【0086】
点火処理と同時にグリル燃焼用タイマーのカウントがスタートする(ステップS43)。『ダッチオーブン』モードにおいては、タイマー増減スイッチ62を操作することで1分から25分の間に変更設定可能となっている。
【0087】
このとき、調理モードが『ダッチオーブン』モードである旨の表示を行うとともに、タイマー表示部(
図6)に、設定されているグリル燃焼用タイマー値から点火後グリルバーナにより加熱が行われた時間を減算した、グリル燃焼用タイマーの残り時間の表示を行う(ステップS44)。
【0088】
その後、排気温度が切替温度Ts以上であることを検出すると、グリルバーナの火力が上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替えられる(ステップS45→S46)。
【0089】
そして、温度センサ19がTH以上になった場合は(ステップS47)、消火処理を実行し温度異常報知を行う(ステップS48)。
【0090】
一方、温度センサ19がTH以下の状態で、グリル燃焼用タイマーがタイムアップすると(ステップS47a)、消火処理が実行され、調理完了報知(例えば3秒間の電子音「ピピピ」による報知)を行う(ステップS47b)。なお、タイムアップ前にグリルバーナの火力切替指令があると、切替不可の警告を発し(ステップS47c→S47d)、ステップS44に戻る。またこのとき消火指令があると消火処理を実行して(ステップS47e→47f)、
図10に移行する。
【0091】
図10は調理終了後シーケンスのフローチャートである。
【0092】
消火処理を実行した後は、
図10に示す調理終了処理を実行する。この調理終了処理は、調理終了後にグリル扉31が開いたかどうかをチェックする。グリル扉31が開かない場合は、30秒置きに調理終了報知を行うもので、グリル扉31が開いた場合、または、調理終了後2分以上経過した場合は、以降の調理終了報知を行わないように構成されている。
【0093】
つまり、調理終了時点で、報知回数カウント用カウンターCをリセットしてC=0とする(ステップS50)。さらに、グリル扉監視タイマーをリセットしてグリル扉監視タイマーを起動する(ステップS51)。その後、グリル扉31が開いた場合は、調理終了処理を終了する。一方、グリル扉31が閉の状態を継続した状態でグリル扉監視タイマーの値が30秒に達したら(ステップS52→S53)、調理完了報知(例えば3秒間の電子音「ピピピ」による報知)を行い(ステップS54)、報知回数カウント用カウンターCに「1」を加算する(ステップS55)。そして、報知回数カウント用カウンターCが「4」未満の場合は、ステップS56からS51に戻り、グリル扉監視タイマーをリセットしてグリル扉監視タイマーを起動する工程から繰り返す。
【0094】
報知回数カウント用カウンターCが4以上になったら調理終了処理を終了する。
【0095】
なお、被調理物34としてなにも載置せずに加熱を開始したときには、温度センサ19がTH以上になり、消火処理を実行し温度異常報知を行うことになる。
【0096】
上記構成によれば、以下の作用効果を奏する。
【0097】
(1)グリルバーナ32の火力を上バーナ火力=弱/下バーナ火力=弱に切り替える閾値である切替温度を設定変更するにあたって、温度勾配αtと重量勾配αvとに基づいて被調理物34の熱吸収率の高低を判定し、この熱吸収率に応じて切替温度補正処理を行うようにした(前記[表1]、
図11(a)参照)。これにより、被調理物34の色合いの差に起因する熱吸収率の高低に応じた加熱力の設定が可能になり、焦げ目が程よいものとなるなど調理の仕上がりを良好なものとなる。また、熱吸収率に応じた加熱制御を行うことで、魚の温度分布が極力均一化されることとなり、被調理物34の加熱むらが低減されるようになる。
【0098】
(2)また被調理物34の熱吸収率が高いときは目標重量減少率Gsが小さくなるように補正処理を行う(前記[表1]の第3の状態、
図11(b)参照)。これにより、例えば黒い魚「さんま」の調理の仕上がりをより良好にすることができる。なお、前記[表1]の第2の状態においても熱吸収率が低いと判定した場合は目標重量減少率Gsが大きくなるように補正処理をしてもよい。この場合は、例えば白い魚「あじ」の調理の仕上げをより良好にすることができる。
【0099】
(3)加熱中における被調理物34の重量減少率を算出するにあたって、グリル扉31が閉じた状態にあるときのみ、初期重量を記憶させ(
図5のステップS12)、この初期重量から重量減少率を算出するようにしたので(
図7のステップS24a、S25、
図8のステップS33a、S34)、加熱中における正確な重量測定が可能になり、重量減少率が所定の調理完了判定用目標値に達したときに加熱を終了する制御動作がより正確に行われるようになる。
【0100】
(4)被調理物34がグリル庫30に収容されていないときの重量センサ13の検出値から基準値を求めるにあたって、グリル扉31の閉状態で且つ電源スイッチ15がON操作された時点、又は、電源スイッチ15がON状態でグリル扉31が開状態から閉状態になった時点、重量センサ13の検出値の最新の値を順次記憶していき(
図4のステップS2、S3)、その後、グリル扉31が閉状態から開状態になった時点で、順次記憶した重量センサ13の検出値と制御部10に予め記憶されている仮の基準値とを比較し(
図4のステップS6)、順次記憶した重量センサ13の検出値と仮の基準値との差が所定の許容値(α)より小さいときには順次記憶した重量センサ13の検出値を基準値として記憶する(
図4のステップS7)。所定の許容値(α)より大きいときは、基準値読み込み異常である旨をエラー報知する(
図4のステップS6a)。
【0101】
これにより、電源スイッチ15のON操作またはグリル扉31の開閉をきっかけとして、被調理物34の初期重量を正確に検出することができるので、使用者による重量判定用の指令を別途行う必要がないので、より使い勝手がよく、間違った情報が入力されるおそれのない加熱制御を行うことができる。また、グリル庫30内に過去の調理物が残っている場合や受皿37や焼き網33が挿入されていない場合などの異常時には使用者に知らせるので、操作ミスによる調理の失敗が未然に防止できるようになる。
【0102】
(5)『手動』及び『オート』の調理モードにおいては、初期重量と重量減少率とを表示するので(
図7のステップS24a、
図8のステップS33a)、使用者は、表示される初期重量と重量減少率とを認識しながら調理を行うことができるから、操作ミスによるメニュー選択間違いなどに起因する調理の失敗が防止できる。また、重量減少率を確認することは、被調理物34の減水率を確認することになり、グリル扉31を開けることなく減水率が把握できるから、調理の仕上がりをより良好なものとすることができる。
【0103】
図12は他の実施形態である。
図12(a)に示すように、点火処理を行って、加熱開始後排ガス温度が立ち上がった後は、調理が進むに従い温度勾配αtが徐々に小さくなり、その後さらに加熱を継続すると切替温度目標値L5(200℃)付近で、被調理物34の表面付近の水分減少に伴い被調理物34からの水蒸気の発生が減少することになる。そして、被調理物34からの水蒸気の発生が減少すると再び温度(上昇)勾配αtがαt1の箇所で大きくなる。
【0104】
また、
図12(b)に示すように、被調理物34からの水蒸気の発生が減少すると、重量減少率(減水率)の変化量である重量勾配αvは切替温度目標値L6付近で小さくなり、さらに蒸発が進むとαt1の箇所では平坦になる。
【0105】
そこで、温度勾配αtが徐々に小さくなった後、再び温度勾配αtが所定の上昇率より大きくなった場合であって、重量勾配αvが所定の値より小さい場合には被調理物34に焦げが付きだす、焦げ付き開始時点であると判断できる。つまり、加熱中において、重量センサ13で検出される重量の単位時間当たりの変化率が所定の減少変化率より小さく、かつ、温度センサ19で検出される加熱温度の単位時間当たりの上昇率が所定の上昇率より大きくなる時点が焦げ付き開始時点であると判断できるから、焦げ付き開始時点、乃至、焦げ付き開始時点から所定時間経過した時点で消火処理を実行して加熱を停止する。
【0106】
このように、被調理物34の焦げ付き開始時点の判断結果に基づき加熱を停止することで、被調理物34の焦げの程度を程よいものとすることができ、結果、調理の仕上がりをより良好なものとすることができる。
【0107】
なお、焦げの開始時点、または、焦げの開始時点から所定時間経過した時点で、グリルバーナの火力を、上バーナ火力=弱、下バーナ火力=弱に切り替えるように構成して、被調理物34の焦げの程度を程よいものとなるように構成してもよい。
【0108】
前記実施形態では、グリル扉開閉検出手段12を備え、グリル扉31が閉じられた状態における電源スイッチ15の投入、または、電源スイッチ15が投入されている状態におけるグリル扉31が閉じたことの検出により実際の基準値を測定記憶するように構成(
図4のステップS1〜S7)してあるが、例えば、グリル扉開閉検出手段12に換えて、実際の基準値測定記憶用スイッチを具備しておき、この実際の基準値測定記憶用スイッチの操作により実際の基準値を測定記憶するように構成してもよい。
【0109】
また、前記実施形態では、『ダッチオーブン』モードにおける切替温度Tsはハイカット温度THに応じたTsを設定したが、他の実施形態として、温度勾配αtや重量勾配αvに応じた切替温度Tsの補正処理を行うようにしてもよい。その一例として、制御部10に、予め定めた「専用鍋用仮の基準値」と「専用鍋用許容値」とをそれぞれ記憶しておき、専用鍋がグリル庫30に収容されたことを検出する専用鍋検出手段を設けるか、または、専用鍋を使用することを手動で選択入力する専用鍋選択入力部を設ける。そして、専用鍋がグリル庫30に収容されたことを専用鍋検出手段が検出した場合や専用鍋を使用することを専用鍋選択部において入力された場合には、前記記憶した「専用鍋用仮の基準値」を、
図4のステップS5の仮の基準値(Vs)として用いるようにし、前記記憶した「専用鍋用許容値」を
図4のステップS6の所定の許容値(α)として用いるように構成してもよい。「専用鍋用仮の基準値」とは、専用鍋に被調理物34が入っていない状態で記憶された重量値である。なお「専用鍋用許容値」は必ずしも「所定の許容値α」と異なる値とする必要はなく、「所定の許容値α」と同じ値に設定してもよい。
【0110】
このようにダッチオーブン料理においても、専用鍋の使用に対応した基準値を用いて、専用鍋の使用や不使用に応じた適正な重量の検出を行うことにより、他の『手動』及び『オート』のモードを選択した場合と同様に、調理の失敗を防ぐことができる。
【0111】
本発明の加熱調理器は、機器の前面から被調理物34の出し入れを行うグリル3である必要はなく、被調理物34の温度の上昇に伴い上昇する加熱温度を検出する温度センサ19、および、被調理物34の重量を検出する重量センサ13を備える構造であればどのような形態の調理器であってもよい。
【0112】
また、ガスを加熱用のエネルギー源とする場合に限らず、電気その他のエネルギーを加熱用のエネルギー源として用いるものであってもよい。