特許第5759241号(P5759241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759241
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】発光ダイオード装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20150716BHJP
【FI】
   H01L33/00 400
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-90386(P2011-90386)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-227177(P2012-227177A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亮介
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−294547(JP,A)
【文献】 特開2004−034741(JP,A)
【文献】 特開2008−226649(JP,A)
【文献】 特開2010−206138(JP,A)
【文献】 特開2006−108517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ダイオードを有し、2つの異なる光度を切り替えて発光可能な発光ダイオード装置であって、
前記複数の発光ダイオードのうち1以上半数以下の発光ダイオードを、前記2つの異なる光度のうち低光度で点灯するための低光度用発光ダイオードとし、
前記複数の発光ダイオードのうち前記低光度用発光ダイオード以外のダイオードを、前記2つの異なる光度のうち高光度で点灯するための高光度用発光ダイオードとし、
前記低光度で点灯するときに前記低光度用発光ダイオードに電圧を印加するための低光度用電極と、
前記高光度で点灯するときに前記高光度用発光ダイオードに電圧を印加するための高光度用電極と、
前記低光度用発光ダイオードに流れる電流を制限するために、前記低光度用電極と前記低光度用発光ダイオードとに対して直列に接続される抵抗器とを備え、
前記複数の発光ダイオード及び前記抵抗器は同一基板上にあって、各発光ダイオードは前記基板の同一面上に実装され、
前記抵抗器は、該抵抗器の発生熱が前記高光度用発光ダイオードよりも前記低光度用発光ダイオードに伝達されるように、前記複数の発光ダイオードとは反対側の面上で前記低光度用発光ダイオードと対向する位置に実装され、
前記基板は、複数の基板が積層された多層構造に形成されて、前記低光度用発光ダイオードと対向する位置に前記抵抗器を実装するためのキャビティが設けられることを特徴とする発光ダイオード装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光ダイオード装置において、
前記低光度用電極を電源に接続する低光度用配線と、前記高光度用電極を電源に接続する高光度用配線とを有し、
前記低光度用配線は、前記高光度用配線より表面積が小さく形成されていることを特徴とする発光ダイオード装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光ダイオード装置において、前記低光度で点灯するとき前記低光度用発光ダイオードの各々に流れる電流と、前記高光度で点灯するとき前記高光度用発光ダイオードの各々に流れる電流とが同じ電流値となるように、前記高光度用電極と電源との間に外部抵抗器が接続されることを特徴とする発光ダイオード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なる光度で点灯する発光ダイオード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の発光ダイオードを光源として、デイタイムランニングランプとクリアランスランプのように明るさの異なる用途に使用される車両用灯具が知られている(特許文献1)。この車両用灯具では、発光させる発光ダイオードの数を変更すると共に発光ダイオードに流れる電流値を変更することで明るさを可変にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−226649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、所定の電流値に対する光度が同じ発光ダイオードであっても、別の電流値に対する光度が同じになるとは限らない。このため、選定時の電流値と大きく異なる電流値を発光ダイオードに流した場合には、光度が変わる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、発光ダイオードに流れる電流値を一定に保ちつつ、発光ダイオードの光度を変更できる発光ダイオード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光ダイオード装置は、複数の発光ダイオードを有し、2つの異なる光度を切り替えて発光可能な発光ダイオード装置であって、前記複数の発光ダイオードのうち1以上半数以下の発光ダイオードを、前記2つの異なる光度のうち低光度で点灯するための低光度用発光ダイオードとし、前記複数の発光ダイオードのうち前記低光度用発光ダイオード以外のダイオードを、前記2つの異なる光度のうち高光度で点灯するための高光度用発光ダイオードとし、前記低光度で点灯するときに前記低光度用発光ダイオードに電圧を印加するための低光度用電極と、前記高光度で点灯するときに前記高光度用発光ダイオードに電圧を印加するための高光度用電極と、前記低光度用発光ダイオードに流れる電流を制限するために、前記低光度用電極と前記低光度用発光ダイオードとに対して直列に接続される抵抗器とを備え、前記複数の発光ダイオード及び前記抵抗器は同一基板上にあって、各発光ダイオードは前記基板の同一面上に実装され、前記抵抗器は、該抵抗器の発生熱が前記高光度用発光ダイオードよりも前記低光度用発光ダイオードに伝達されるように、前記複数の発光ダイオードとは反対側の面上で前記低光度用発光ダイオードと対向する位置に実装され、前記基板は、複数の基板が積層された多層構造に形成されて、前記低光度用発光ダイオードと対向する位置に前記抵抗器を実装するためのキャビティが設けられることを特徴とする。
【0007】
一般に、発光ダイオードはそれ自体の熱が増大すると光度が下がるという性質を有する。本発明によれば、低光度用発光ダイオードには、これに直列接続した抵抗器の発生熱が伝達されるので、低光度用発光ダイオードは、熱の増大に伴って光度が低下し、高光度用発光ダイオードに比べて光度を下げることができる。このように、熱による光度の低下を利用することで、低光度用発光ダイオードに流れる電流を一定に保ったまま低光度用発光ダイオードの光度を低下させることができる。従って、電流の変更をすることなく、発光ダイオード装置の光度を、高光度用発光ダイオードと低光度用発光ダイオードとによる2つの異なる光度に変更できる。
【0008】
また、低光度用発光ダイオードの数が高光度用発光ダイオードの数より少ないことによる光度の差に、熱の増大による光度の低下が加わって、より効果的に光度の差を設けることができる。この場合には、抵抗の熱を伝達しない場合に比べて高光度用発光ダイオードの数を少なくできる。
【0009】
本発明によれば、複数の発光ダイオード及び抵抗器は同一基板上にあって、各発光ダイオードは基板の同一面上に実装され、抵抗器は、複数の発光ダイオードとは反対側の面上で低光度用発光ダイオードと対向する位置に実装されるので、低光度用発光ダイオードに抵抗器の熱が伝達されやすく、低光度用発光ダイオードの熱を効率よく増大させることができる。
【0010】
また、基板は、複数の基板が積層された多層構造に形成されて、抵抗器を実装するためのキャビティが設けられることで、低光度用発光ダイオードの基板を介した放熱経路が短くなるので、低光度用発光ダイオードの放熱性能が低くなり、低光度用発光ダイオードの更なる熱の増大を促進できる。
【0011】
本発明において、低光度用電極を電源に接続する低光度用配線と、高光度用電極を電源に接続する高光度用配線とを有し、低光度用配線は、高光度用配線より表面積が小さく形成されていることが好ましい。これにより、低光度用電極の放熱性能は、高光度用電極の放熱性能に比べて低くなる。従って、低光度用発光ダイオードの更なる熱の増加を促進できる。
【0012】
本発明において、低光度で点灯するとき低光度用発光ダイオードの各々に流れる電流と、高光度で点灯するとき高光度用発光ダイオードの各々に流れる電流とが同じ電流値となるように、高光度用電極と電源との間に外部抵抗器が接続されることが好ましい。これにより、低光度用発光ダイオードと高光度用発光ダイオードとで、発光ダイオードの選定時の特性又は仕様が同じ発光ダイオードを使用することができる。このため、光度の異なる発光ダイオードを使用する場合に比べ、発光ダイオードを調達するコストが下がり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は実施形態の発光ダイオード装置の平面図、(b)は底面図。
図2図1のII−II線で切断した端面図。
図3】外部回路用基板の説明図。
図4】実施形態の発光ダイオード装置、外部回路及び外部電源の等価回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図4を参照して、本発明の実施形態の発光ダイオード装置の構成について説明する。
【0015】
本実施形態の発光ダイオード装置1は、2つの異なる光度で点灯可能な車両用の装置である。発光ダイオード装置1は、例えば、昼間に点灯して自車の位置を周囲に知らせるためのデイタイムランニングランプ(高光度)と、車両の幅を知らせるための車幅灯(低光度)とを兼用できるように構成される。
【0016】
発光ダイオード装置1は、複数の発光ダイオード2,3と、低光度用抵抗器4と、多層基板5とを備える。
【0017】
複数の発光ダイオード2,3は、電流が加えられることで白色に発光する複数の発光ダイオードからなり、発光ダイオード装置1を高光度で点灯するときに用いられる4つの高光度用発光ダイオード2と、発光ダイオード装置1を低光度で点灯するときに用いられる1つの低光度用発光ダイオード3とに分けられる。
【0018】
これらの複数の発光ダイオード2,3は、実使用で用いられる電流値(例えば、0.1[A])付近の電流を流したときの光度が互いに同等になるように選定されている。これによって、各発光ダイオードの光度の差を小さくしている。
【0019】
低光度用抵抗器4は、面実装タイプの抵抗器で構成されており、電流が流れることで熱が発生する。
【0020】
多層基板5は、セラミックで形成された基板(セラミック基板)を積層して多層構造に形成されている。セラミックの材料は、酸化アルミニウムAl又は窒化アルミニウムAlNが使用される。多層基板5は、中間層51と上部層52と下部層53とで構成される。
【0021】
中間層51は、下部層53の上側(図2の上方向)に積層されており、中間層51の上側の面(以下、「中間層上面」という)51aには上部層52が積層されている。
【0022】
中間層51には、高光度用発光ダイオード2、低光度用発光ダイオード3及び低光度用抵抗器4が実装される。詳細には、高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3は、中間層上面51aにワイヤーボンディングにより実装される。低光度用抵抗器4は、中間層51の下側の面(以下、「中間層下面」という)51bで、低光度用発光ダイオード3と対向する位置にハンダにより実装されている。ハンダの材料としては、AuSnやSnAgCuのように熱伝導率の高い材料を用いている。このように、高光度用発光ダイオード2と低光度用発光ダイオード3とは同一面上に実装される。
【0023】
上部層52には、中間層上面51a上に実装される高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3を避けるようにキャビティ(空間)52aが形成されている。詳細には、高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3の全ての発光ダイオードを配置できるようにキャビティ52aが形成されている。下部層53には、中間層下面51b上に実装される低光度用抵抗器4を避けるようにキャビティ53aが形成されている。
【0024】
また、下部層53の下側表面には、高光度用アノード61と低光度用アノード62と共通カソード63とが接着されている。詳細には、高光度用アノード61と共通カソード63との間に電圧を印加することで、発光ダイオード装置1を高光度で点灯し、低光度用アノード62と共通カソード63との間に電圧を印加することで、発光ダイオード装置1を低光度で点灯するように構成されている。高光度用アノード61,低光度用アノード62及び共通カソード63と、高光度用発光ダイオード2,低光度用発光ダイオード3及び低光度用抵抗器4との配線は省略する。
【0025】
低光度用抵抗器4が本発明における抵抗器に相当する。多層基板5が本発明における基板に相当する。高光度用アノード61及び共通カソード63が本発明における高光度用電極に相当する。低光度用アノード62及び共通カソード63が本発明における低光度用電極に相当する。
【0026】
図3は、発光ダイオード装置1に電力を供給すると共に高光度用発光ダイオード2に流れる電流を制限するための外部回路が実装された基板(以下、「外部回路用基板」という)7の説明図を示す。外部回路用基板7には、ガラスエポキシ基板を用いている。発光ダイオード装置1は、図3の破線で示されるように、外部回路用基板7上の所定の位置に配置される。
【0027】
外部回路用基板7の表面上には、銅箔をエッチング加工した複数のパターン配線が配置されている。複数のパターン配線は、高光度用第1パターン配線81と高光度用第2パターン配線82と低光度用パターン配線83とグランド用パターン配線84とで構成される。
【0028】
高光度用第1パターン配線81は、一端に、スイッチSWを介して外部電源VSのプラス端子に導線等によって電気的に接続される電源側接続部81aを備える。高光度用第2パターン配線82は、一端に多層基板5の高光度用アノード61にハンダによって電気的に接続される素子側接続部82bを備える。本実施形態では、多層基板5のときと同様に、ハンダの材料としてAuSnやSnAgCuのように熱伝導率の高い材料を用いている。高光度用第1パターン配線81の他端(電源側接続部81aとは反対側の端)と高光度用第2パターン配線82の他端(素子側接続部82bとは反対側の端)とは、高光度用抵抗器9を介して電気的に接続されている。高光度用抵抗器9は低光度用抵抗器4と同様に面実装タイプの抵抗器で構成されている。高光度用抵抗器9は面実装タイプの抵抗器に限らず、リード線を有するタイプの抵抗器であってもよい。
【0029】
低光度用パターン配線83は、一端に、スイッチSWを介して外部電源VSのプラス端子に導線等によって電気的に接続される電源側接続部83aと、他端に多層基板5の低光度用アノード62にハンダによって電気的に接続される素子側接続部83bとを備える。グランド用パターン配線84は、一端に外部電源VSのマイナス端子(グランド)に導線等によって電気的に接続される電源側接続部84aと他端に多層基板5の共通カソード63にハンダによって電気的に接続される素子側接続部84bとを備える。
【0030】
低光度用パターン配線83の幅83wは、高光度用第2パターン配線82の幅82wより狭く形成されている。これによって、低光度用パターン配線83のパターン配線の表面積を高光度用第2パターン配線82の表面積に比べて小さくしている。
【0031】
高光度用第1パターン配線81及び高光度用第2パターン配線82が本発明における高光度用配線に相当する。低光度用パターン配線83が本発明における低光度用配線に相当する。高光度用抵抗器9が本発明における外部抵抗器に相当する。外部電源VSが本発明における電源に相当する。
【0032】
図4は、発光ダイオード装置1、外部回路用基板7及び外部電源VSの等価回路を示す。本実施形態の外部電源VSは、13.5[V]の直流電源を使用している。スイッチSWは、接点SWH及び接点SWLのいずれか1つの接点を選択する選択状態と、いずれの接点も選択していない非選択状態とを有する。スイッチSWが接点SWHを選択している選択状態(以下、「高光度選択状態」という)において、外部電源VSと高光度用抵抗器9とは電気的に接続される(導通状態)。スイッチSWが接点SWLを選択している選択状態(以下、「低光度選択状態」という)において、外部電源VSと低光度用抵抗器4とは電気的に接続される(導通状態)。スイッチSWが非選択状態において、外部電源VSと高光度用抵抗器9及び低光度用抵抗器4とは電気的に開放される(非導通状態)。
【0033】
4つの高光度用発光ダイオード2のそれぞれは、外部電源VSに対して並列に接続されている。また、4つの高光度用発光ダイオード2と外部電源VSとの間に、高光度用抵抗器9が直列に接続されている。高光度用抵抗器9は、4つの高光度用発光ダイオード2のそれぞれに流れる電流値を制限するための抵抗器として機能している。
【0034】
また、外部電源VSと低光度用発光ダイオード3との間に、低光度用抵抗器4が直列に接続されている。低光度用抵抗器4は、低光度用発光ダイオード3に流れる電流値を制限するための抵抗器として機能している。
【0035】
本実施形態では、4つの高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3の5つの発光ダイオードのそれぞれは、3.5[V]の電圧を印加したときに、0.1[A]の電流が流れるような発光ダイオードを選択している。上述したように外部電源VSは13.5[V]であるので、低光度用抵抗器4は抵抗値が100[Ω]のものを使用し、高光度用抵抗器9は抵抗値が25[Ω]のものを使用している。これによって、4つの高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3の5つの発光ダイオードのそれぞれには、3.5[V]の電圧が印加され、0.1[A]の電流が流れる。
【0036】
スイッチSWが高光度選択状態である場合には、4つの高光度用発光ダイオード2が点灯する。スイッチSWが低光度選択状態である場合には、低光度用発光ダイオード3が点灯する。スイッチSWが非選択状態である場合には、高光度用発光ダイオード2及び低光度用発光ダイオード3のいずれも消灯する。
【0037】
次に、上記の構成の発光ダイオード装置1、及び発光ダイオード装置1の実装基板である外部回路用基板7の構成における熱の伝達について説明する。
【0038】
スイッチSWが低光度選択状態となり、低光度用発光ダイオード3が点灯する場合には、低光度用抵抗器4にも電流が流れ、低光度用抵抗器4は発熱する。
【0039】
図1及び図2に示されるように、低光度用抵抗器4は、低光度用発光ダイオード3とは反対側の面上で、低光度用発光ダイオード3と対向する位置に配置(実装)されている。このため、低光度用抵抗器4の発生熱は、中間層51を介して低光度用発光ダイオード3に伝達されやすい構造になっている。低光度用抵抗器4から低光度用発光ダイオード3の間の熱抵抗は、図2に示されるRth(4−51a)となる。
【0040】
また、通常、発光ダイオードは温度が高くなると光度が低下する。このため、低光度用抵抗器4の発生熱が低光度用発光ダイオード3に伝達されることで低光度用発光ダイオード3の光度が低下する。更に、多層基板は、熱伝導率の高いセラミック基板で構成しているため、低光度用発光ダイオード3に熱がより伝達されやすくなっている。これによって、更に低光度用発光ダイオード3の温度が高くなる。
【0041】
また、発光ダイオード自体も点灯のために電流が流れることで熱が発生する。低光度用発光ダイオード3に発生した熱は、多層基板5の下部層53の下面に向かって放熱される。低光度用発光ダイオード3と下部層53の下面との間の熱抵抗は、図2に示されるRth(3−53)となる。
【0042】
高光度用発光ダイオード2が点灯するときも、低光度用発光ダイオード3と同様に、多層基板5の下部層53の下面に向かって放熱される。高光度用発光ダイオード2と下部層53の下面との間の熱抵抗は、図2に示されるRth(2−53)となる。熱抵抗Rth(2−53)は、図2に1つだけ示されている高光度用発光ダイオード2以外の3つの高光度用発光ダイオード2のそれぞれと下部層53の下面との間も同等の熱抵抗となる。
【0043】
多層基板5の下部層53には、低光度用発光ダイオード3を避けるようにキャビティ53aが設けられている。従って、低光度用発光ダイオード3の放熱経路が短くなり、放熱性能が低くなる。このため、熱抵抗Rth(3−53)は、熱抵抗Rth(2−53)に比べて大きくなり、低光度用発光ダイオード3の方が高光度用発光ダイオード2に比べて放熱しづらいことで温度が高くなる。これによって、低光度用発光ダイオード3の光度が更に低下する。
【0044】
このような熱抵抗Rth(4−51a),Rth(3−53),Rth(2−53)は、使用する素材や厚さ、放熱経路等によって決定される。発光ダイオード装置1の用途、すなわち、高光度で点灯するときの光度と低光度で点灯するときの光度とで必要になる光度差に応じて適宜選択すればよい。このとき、高光度用の発光ダイオードの数(本実施形態では4つ)も適宜変更すればよい。
【0045】
また、外部回路用基板7は、上述したように、低光度用パターン配線83の幅83wが高光度用第2パターン配線82の幅82wより狭く形成されている。これによって、低光度用パターン配線83の表面積が高光度用第2パターン配線82の表面積に比べて小さくなる。高光度用第2パターン配線82は、多層基板5の高光度用アノード61から伝達される熱を放熱しやすくするために、広めに形成されている。低光度用パターン配線83は、発光ダイオード装置1に電力を供給するために必要充分な幅に設定されており、多層基板5の低光度用アノード62から伝達される熱は、高光度用第2パターン配線82に比べて表面積が小さくなるため放熱しづらい。
【0046】
これによって、低光度用発光ダイオード3の点灯時に発生する熱は、高光度用発光ダイオード2の点灯時に発生する熱に比べて低減されにくくなり、低光度用発光ダイオード3の光度を更に低下できる。
【0047】
以上のように、本実施形態の発光ダイオード装置1では、低光度用発光ダイオード3と対向する位置に低光度用抵抗器4を配置しているため、低光度用発光ダイオード3に低光度用抵抗器4の熱が伝達されやすくなり、低光度用発光ダイオード3の光度を低下できる。
【0048】
また、本実施形態では、低光度用発光ダイオード3と低光度用抵抗器4とが実装される基板は熱伝導率の高いセラミック基板を用いているため、より効果的に低光度用抵抗器4の熱を低光度用発光ダイオード3に伝達できる。
【0049】
また、本実施形態では、多層基板5の下部層53にキャビティ53aが設けられている。このキャビティ53aは、低光度用発光ダイオード3と対向する位置に設けられており、4つの高光度用発光ダイオード2と対向する位置にはキャビティは設けられていない。キャビティ53aにより放熱経路が短くなるので、低光度用発光ダイオード3から多層基板5の下面の間の熱抵抗Rth(3−53)は、高光度用発光ダイオード2から多層基板5の下面の間の熱抵抗Rth(2−53)に比べて大きくなる。従って、低光度用発光ダイオード3の温度が高光度用発光ダイオード2に比べて減少しづらくなり、高光度発光ダイオード2と低光度用発光ダイオード3との光度差をより大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、外部回路用基板7上に設けられた低光度用パターン配線83が、高光度用第2パターン配線82に比べて表面積が小さく形成されている。これによって、低光度用発光ダイオード3の温度が高光度用発光ダイオード2に比べて減少しづらくなり、高光度発光ダイオード2と低光度用発光ダイオード3との光度差をより大きくすることができる。
【0051】
また、低光度時と高光度時の光度差を得る実験を行なったところ、熱による光度の低下をしない場合に、低光度時の発光ダイオードの数に比べて高光度時では発光ダイオードの数が20倍必要だったが、本実施形態の発光ダイオード装置1及び外部回路用基板7を使用することで、熱による光度の低下により低光度時の発光ダイオードの数に比べて高光度時では発光ダイオードの数が5倍で済んだ。これによって、発光ダイオードの素子数を減らすことができ、製造コストを低減できる。
【0052】
また、本実施形態では、低光度用抵抗器4及び高光度用抵抗器9によって、4つの高光度用発光ダイオード2と低光度用発光ダイオード3との全ての発光ダイオードに0.1[A]の電流が流れるように回路を構成している。このため、同じ特性の発光ダイオードを使用することができ、発光ダイオードの選定時とは異なる電流値で使用することを防止できると共に、調達コストの低減による製造コストの低減ができる。
【0053】
なお、本実施形態では、発光ダイオード装置1をデイタイムランニングランプ(高光度)と車幅灯(低光度)とを兼用できるように構成したがこれに限らない。例えば、車両のブレーキが作動したときに点灯するストップランプ(高光度)と、後続車両に自車の位置を知らせるために点灯するテールランプ(低光度)とを兼用できるように発光ダイオード装置を構成してもよい。この場合に、複数の発光ダイオード2,3を、赤色に発光する発光ダイオードを用いてもよい。このとき、発光ダイオードの発光素子はAlGaInPを使用するとよい。これによって、発光ダイオードの光度が100°程度になると常温時に比べて30%程度まで減少するため、低光度用抵抗器4の発生熱を低光度用発光ダイオード3に伝達することで、低光度で点灯するときの光度を低くし、高光度で点灯するときの光度との光度差が得られやすくなる。
【0054】
また、本実施形態では、多層基板5の上部層52のキャビティ52aを1つ形成しているがこれに限らない。例えば、各発光ダイオード毎にキャビティを設けてもよい。これによって、キャビティの内壁に蛍光体を塗布することで、各発光ダイオードの固体差による明るさや色度のバラツキを低減しやすくなる。
【0055】
また、本実施形態では、発光ダイオード装置1を車両に搭載しているが、車両に搭載されるものに限らず、高光度と低光度とを切り替える必要のある灯具であれば、本発明の発光ダイオード装置を適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1…発光ダイオード装置、2…高光度用発光ダイオード、3…低光度用発光ダイオード、4…低光度用抵抗器(抵抗器)、5…多層基板(基板)、61…高光度用アノード(高光度用電極)、62…低光度用アノード(低光度用電極)、63…共通カソード(高光度用電極,低光度用電極)、81…高光度用第1パターン配線(高光度用配線)、82…高光度用第2パターン配線(高光度用配線)、83…低光度用パターン配線(低光度用配線)、9…高光度用抵抗器(外部抵抗器)、VS…外部電源(電源)。
図1
図2
図3
図4