(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の第1ジョイント通路を形成した第1ジョイント構成部材と複数の第2ジョイント通路を形成した第2ジョイント構成部材とを相対回転自在に連結すると共に、両ジョイント構成部材間にその相対回転軸線を中心とする同心状に3つ以上のメカニカルシールを並列配置して、両ジョイント構成部材に、各第1ジョイント通路と各第2ジョイント通路とをメカニカルシール相互間に形成された環状のシール空間を介して一連に連通接続する複数のジョイント流路が形成されるように構成された多流路形ロータリジョイントにおいて、
各第1ジョイント通路が、シール空間に連通接続された複数の分岐ジョイント通路で構成されており、
各第2ジョイント通路が、第2ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間とシール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成されており、
各ジョイント流路において、分岐ジョイント通路及び連結通路の数及び内径を全分岐ジョイント通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように且つ全連結通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように設定してあることを特徴とする多流路形ロータリジョイント。
複数の第1ジョイント通路を形成した第1ジョイント構成部材と複数の第2ジョイント通路を形成した第2ジョイント構成部材とを相対回転自在に連結すると共に、両ジョイント構成部材間にその相対回転軸線を中心とする同心状に3つ以上のメカニカルシールを並列配置して、両ジョイント構成部材に、各第1ジョイント通路と各第2ジョイント通路とをメカニカルシール相互間に形成された環状のシール空間を介して一連に連通接続する複数のジョイント流路が形成されるように構成された多流路形ロータリジョイントにおいて、
第1ジョイント構成部材に形成される第1ジョイント通路が、第1ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間とシール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成されると共に、第2ジョイント構成部材に形成される第2ジョイント通路が、第2ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間と前記シール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成されており、
各ジョイント流路において、連結通路の数及び内径を全連結通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように設定してあることを特徴とする多流路形ロータリジョイント。
相対回転部材の一方である回転側機器部材に設けた回転側機器流路と当該相対回転部材の他方である固定側機器部材に設けた固定側機器流路との間で流体を循環させるように構成された回転機器に使用される多流路形ロータリジョイントであって、回転側機器流路の上下流端と固定側機器流路の上下流端とを夫々接続する第1及び第2ジョイント流路を有するものであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する多流路形ロータリジョイント。
回転側機器流路が複数の分岐機器流路で構成されており且つ固定側機器流路が単一の流路である回転機器に使用される多流路形ロータリジョイントであって、回転側機器部材に取り付けられる第1ジョイント構成部材における第1ジョイント通路の各分岐ジョイント通路が各分岐機器流路に接続されると共に、固定側機器部材に取り付けられる第2ジョイント構成部材における第2ジョイント通路が固定側機器流路に接続されるように構成したことを特徴とする、請求項1及び請求項3に記載する多流路形ロータリジョイント。
各ジョイント流路における分岐ジョイント通路及び連結通路が、シール空間の周状に配置された複数個所において、当該シール空間に接続されていることを特徴とする、請求項1、請求項1及び請求項3、又は請求項4に記載する多流路形ロータリジョイント。
【背景技術】
【0002】
この種の多流路形ロータリジョイントとしては、例えば特許文献1に開示される如く、複数の第1ジョイント通路を形成した第1ジョイント構成部材と複数の第2ジョイント通路を形成した第2ジョイント構成部材とを相対回転自在に連結し、両ジョイント構成部材間に複数対のメカニカルシールを両ジョイント構成部材の相対回転軸線方向に縦列配置して、両ジョイント構成部材に、各第1ジョイント通路と各第2ジョイント通路とを一対のメカニカル間に形成された環状のシール空間を介して一連に連通接続させてなる複数のジョイント流路を形成したもの(以下「シリアル形ロータリジョイント」という)と、例えば特許文献2に開示される如く、複数の第1ジョイント通路を形成した第1ジョイント構成部材と複数の第2ジョイント通路を形成した第2ジョイント構成部材とを相対回転自在に連結し、両ジョイント構成部材間に3個以上のメカニカルシールを両ジョイント構成部材の相対回転軸線を中心とする同心状に並列配置して、両ジョイント構成部材に、各第1ジョイント通路と各第2ジョイント通路とをメカニカルシール相互間に形成された環状のシール空間を介して一連に連通接続させてなる複数のジョイント流路を形成したもの(以下「パラレル形ロータリジョイント」という)とが公知である。
【0003】
このようなロータリジョイントによれば、シリアル形及びパラレル形の何れにおいても、回転機器の相対回転部材の一方である回転側機器部材に形成された複数の回転側機器側流路と当該相対回転部材の他方である固定側機器部材に形成された複数の固定側流路とをジョイント流路により相対回転自在に連結することができ、両機器部材間で複数の異種流体又は同種流体を混在させることなく各別のルートで流動させることができる。
【0004】
而して、ロータリジョイントは、両ジョイント構成部材の相対回転軸線(以下「ジョイント軸線」という)を回転機器の相対回転部材の相対回転軸線(以下「機器軸線」という)と一致させた状態で当該相対回転部材間(回転機器部材とその回転支持手段及び回転駆動手段等を有する固定機器部材との間)に装着されるが、回転機器には、一般に、相対回転部材間に大きな機器軸線方向のスペース(以下「軸線方向スペース」という)を確保できないものが多い。なお、以下の説明においては、両ジョイント構成部材の相対回転軸線と回転機器の相対回転部材の相対回転軸線とを区別する必要がある場合は前者を「ジョイント軸線」といい後者を「機器軸線」というものとし、両相対回転軸線を区別する必要のない場合には両相対回転軸線を単に「軸線」ということとする。
【0005】
しかし、シリアル形ロータリジョイントは、複数対のメカニカルシールをジョイント軸線方向に縦列させるものであるから、どうしてもジョイントの軸線方向寸法が長大となり、相対回転部材間に大きな軸線方向スペースを確保し得ない回転機器には使用できない。
【0006】
すなわち、メカニカルシールはジョイント流路の相対回転接続部分(第1ジョイント通路と第2ジョイント通路との接続部分であるシール空間)のシール手段として極めて優れたものであるが、一方のジョイント構成部材に固定された固定密封環と他方のジョイント構成部材に軸線方向移動自在に保持された可動密封環とがコイルスプリングにより押圧接触された状態で相対回転するように構成されたものであり、両密封環の設置スペースに加えて可動密封環の移動スペース及びコイルスプリングの設置スペースが必要となるものである。したがって、複数対のメカニカルシールをジョイント軸線方向に縦列配置するシリアル形ロータリジョイントにおいては、メカニカルシール数が多くなるに従い、つまりジョイント流路数が多くなるに従い、軸線方向におけるメカニカルシール設置スペースがジョイント流路数に比例して増大することになり、ロータリジョイントの軸線方向寸法が長大となる。なお、メカニカルシールによるシール機能が良好に発揮されるためには、固定密封環と可動密封環とが適正に接触する必要があり、両ジョイント構成部材間における振動や軸振れの発生を確実に防止しておく必要があることから、両ジョイント構成部材を相対回転自在に連結するベアリングを、少なくとも、メカニカルシール群の両側つまり軸線方向の2箇所に設けておくことが必要となり(メカニカルシール数が多くなれば、ベアリングをメカニカルシール群の両側に配置しておくだけでは軸触れ等を確実に防止することができず、メカニカルシール群の中間部分にもベアリングを配置する必要が生じる)、ベアリング設置スペースを確保するためにロータリジョイントの軸線方向寸法が更に長大化することになる。
【0007】
一方、パラレル形ロータリジョイントでは、複数のメカニカルシールが軸線に直交する同一平面上に同心状に並列配置される(以下、この配置形態を「PCD配置」という)ことから、必要とされるメカニカルシール数(ジョイント流路数)に拘らず、軸線方向寸法は1つのメカニカルシールを組み込んだ場合と同一となる。また、メカニカルシール数の多少に拘らず、両ジョイント構成部材を連結するベアリングもジョイント軸線方向の一箇所に設けておけばよく、ベアリング設置スペースによるロータリジョイントの軸線方向寸法の長大化は生じない。したがって、ジョイント流路数(メカニカルシール数)に拘らず、ロータリジョイントの軸線方向寸法をシリアル形ロータリジョイントに比して大幅に短尺化することができるから、上記したような問題は生じず、相対回転部材間に大きな軸線方向設置スペースをとることができない回転機器にも好適に使用することができる。
【0008】
ところで、ロータリジョイントは回転機器の付属部品に過ぎないものであるから当然に大型化することは回避すべきであり、可及的に小型化しておくことが好ましい。しかも、回転機器の相対回転部材間には、軸線方向スペースは勿論、機器軸線方向に直交する方向のスペース(以下「径方向スペース」という)も無制限に大きくとれる訳ではないから、ロータリジョイントの径方向寸法も可及的に小さくしておくことが好ましい。
【0009】
したがって、軸線方向寸法を小さくできるパラレル形ロータリジョイントにあっては、径方向寸法を可及的に小さくして全体的に小型化することが強く要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、パラレル形ロータリジョイントにあって径方向寸法を小さくするためには、各メカニカルシールとこれに隣接するメカニカルシールとの間隔つまり各シール空間の径方向幅を小さくして最外周側のメカニカルシールの径が可及的に小さくなるようにすることが必要であるが、このようなシール空間の径方向幅の縮小は、ジョイント流路における圧力損失の増大化やジョイント流路を介して流動させ得る流量の大幅な制限を招くことになるため、従来のパラレル形ロータリジョイントでは十分な小型化を図り得ないのが実情である。
【0012】
すなわち、パラレル形ロータリジョイントにあっては、一般に、各ジョイント流路の第1及び第2ジョイント通路が夫々一つの断面円形の貫通孔(キリ孔)で形成されており、各ジョイント通路がシール空間の軸線方向端部に接続されていることから、各ジョイント通路の内径寸法はシール空間の径方向幅以下となるように設定しておく必要がある。
【0013】
したがって、シール空間の径方向幅を小さくすると、これに伴って各ジョイント通路の内径寸法も小さくなり、各ジョイント通路が回転機器の各機器流路より狭隘となる(流体の流動方向に直交する断面の面積が狭小となる)場合がある。かかる場合、両機器流路間をジョイント流路で接続してなる流動ルートにおいて局部的な狭隘部分(各ジョイント流路における第1及び第2ジョイント通路で構成される部分)が存在することになり、この狭隘部分において激しい流量変化や圧力損失が生じて、当該流動ルートによる流体移送が円滑に行われず、回転機器自体の機能にも大きな悪影響を及ぼす虞れがある。
【0014】
特に、回転側機器流路と固定側機器流路との両端部間を2つのジョイント流路により接続してなる両端閉塞形の循環流動ルートにおいては、両機器流路をジョイント流路で直線状に連結して下流端が大気に開放される一端開放型の流動ルートに比して、狭隘部分の存在による流量変化や圧力損失による悪影響は極めて大きく、回転機器に重大な機能障害をもたらす原因となる。
【0015】
例えば、CMP装置(CMP(Chemical Mechanical Polishing)法による半導体ウエハの表面研摩処理装置)は、半導体ウエハを、ターンテーブル上に貼設した研摩パッドと研摩ヘッドとの間に挟圧させた状態で、ターンテーブルと研摩ヘッドとを独立して回転させることにより、表面研摩処理するように構成されているが、研摩の摩擦熱によるウエハ温度の上昇を防止するために、一般に、ターンテーブルに冷却流体(例えば、冷却水等の冷却液)を循環供給して研摩パッドを冷却するように工夫されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0016】
すなわち、ターンテーブル(回転側機器部材)に設けた冷却流路(回転側機器流路)の上下流端(流出入口)とターンテーブルを回転自在に支持する支持手段及びターンテーブルを回転駆動する駆動手段等を有するCMP装置本体(固定側機器部材)に設けた冷却流体供給路(固定側機器流路)の上下流端(流出入口)とをロータリジョイントの2つのジョイント流路(冷却流路の流入口(上流端)と冷却流体供給路の流出口(下流端)とを接続するジョイント流路及び冷却流路の流出口(下流端)と冷却流体供給路の流入口(上流端)とを接続するジョイント流路)で連通接続して、冷却流体供給路に配設した循環ポンプ等の強制循環手段により冷却液を冷却流体供給路から冷却流路へと供給させると共に、冷却流路を通過した冷却液を冷却流体供給路に配設したクーラ等の冷却手段で冷却した上で冷却流路に循環させることにより、ターンテーブルつまり研摩パッドを冷却するようになっている。
【0017】
而して、このような冷却液の循環流動ルートを構成するためにパラレル形ロータリジョイントを使用した場合においては、循環流動ルートに存在する狭隘部分で生じる大きな流量変化や圧力損失によって冷却液の流動形態が不安定となって、ターンテーブル(研摩パッド)の冷却を良好に行い得ない。
【0018】
特に、上記したCMP装置におけるターンテーブルの冷却システムにおいては、冷却流路(回転側機器流路)をターンテーブルの横断面上に均等配置した複数の分岐冷却流路(分岐機器流路)で構成することによりターンテーブルの全面を均等に冷却できるように配慮されていることが多く、従来のパラレル形ロータリジョイントを使用する場合には、全分岐冷却流路の上流端及び下流端を夫々集合させて、これらの集合部と冷却液供給流路の上下流端とを夫々一つのジョイント流路で接続するようにしているが、このように冷却流路を複数の分岐冷却流路で構成した場合においては半導体ウエハの表面研摩処理に大きな弊害をもたらす。
【0019】
すなわち、各ジョイント流路の狭隘部分である第1及び第2ジョイント通路において上記したような流量変化や圧力損失が生じると、全分岐流路における冷却流体の流動形態が同一となり難く、各分岐冷却流路と他の分岐冷却流路とで冷却流体の流動形態が大きく異なることになる。したがって、ターンテーブルの冷却温度にバラツキが生じて、ターンテーブルの全面を均等に冷却することができない。その結果、半導体ウエハの表面研摩処理が不良ないし不完全となり、半導体ウエハの品質低下を招く虞れがある。
【0020】
したがって、従来のパラレル型ロータリジョイントでは、上記したような弊害を回避するためには、第1及び第2ジョイント通路を回転機器の回転側機器流路及び固定側機器流路に比して極端に狭隘とならないような断面径のものにしておく必要があり、その結果、第1及び第2ジョイント通路が接続されるシール空間の径方向幅はこれを一定以上に小さくことができない。このように、従来のパラレル型ロータリジョイントでは、シール空間の径方向幅に大きな制約があり、ロータリジョイントの径方向寸法を可及的に小さくして全体としての小型化を図ることができないでいたのが実情である。
【0021】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、パラレル形ロータリジョイントの径方向寸法を圧力損失等の問題を生じることなく可及的に小さくすることができ、メカニカルシール数ないしジョイント流路数が同一である従来のバラレル形ロータリジョイントに比して大幅な小型化(特に径方向寸法の小型化)を実現した多流路形ロータリジョイントを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、複数の第1ジョイント通路を形成した第1ジョイント構成部材と複数の第2ジョイント通路を形成した第2ジョイント構成部材とを相対回転自在に連結すると共に、両ジョイント構成部材間にその相対回転軸線を中心とする同心状に3つ以上のメカニカルシールを並列配置して、両ジョイント構成部材に、各第1ジョイント通路と各第2ジョイント通路とをメカニカルシール相互間に形成された環状のシール空間を介して一連に連通接続する複数のジョイント流路が形成されるように構成されたパラレル形ロータリジョイントにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、次のように構成しておくことを提案するものである。
【0023】
すなわち、第1発明は、上記パラレル形ロータリジョイントにおいて、各第1ジョイント通路が、シール空間に連通接続された複数の分岐ジョイント通路で構成されており、各第2ジョイント通路が、第2ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間とシール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成されており、各ジョイント流路において、分岐ジョイント通路及び連結通路の数及び内径を全分岐ジョイント通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように且つ全連結通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように設定してあることを特徴とする多流路形ロータリジョイントを提案する。
【0024】
また、第2発明においては、上記パラレル形ロータリジョイントにおいて、
第1ジョイント構成部材に形成される各第1ジョイント通路が、
第1ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間とシール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成され
ると共に、第2ジョイント構成部材に形成される各第2ジョイント通路が、第2ジョイント構成部材に前記相対回転軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間の一つと、当該ヘッダ空間と前記シール空間とを連通接続する複数の連結通路と、当該ヘッダ空間に連通接続された一つの幹通路とで構成されており、各ジョイント流路において、連結通路の数及び内径を全連結通路の合計断面積が幹通路の断面積と同一又はこれより若干大きくなるように設定してあることを特徴とする多流路形ロータリジョイントを提案する。
【0025】
而して、第1及び第2発明の好ましい実施の形態にあって、多流路形ロータリジョイントは、相対回転部材の一方である回転側機器部材に設けられた回転側機器流路と当該相対回転部材の他方である固定側機器部材に設けられた固定側機器流路との間で流体を強制循環させるように構成された回転機器に使用されるものであり、回転側機器流路の上下流端と固定側機器流路の上下流端とを接続する第1及び第2ジョイント流路を有する。この場合において、回転側機器流路が複数の分岐機器流路で構成され且つ固定側機器流路が単一の流路で構成される回転機器に使用されるときは、第1発明の多流路形ロータリジョイントにおいて、回転側機器部材に取り付けられる第1ジョイント構成部材における第1ジョイント通路の各分岐ジョイント通路が各分岐流路に接続されると共に、固定側機器部材に取り付けられる第2ジョイント構成部材における第2ジョイント通路が固定側機器流路に接続されるように構成しておくことが好ましい。
【0026】
また、第
1発明の多流路形ロータリジョイントにおいては、各ジョイント流路における分岐ジョイント通路及び
連結通路が、また第2発明の多流路形ロータリジョイントにおいては連結通路が、夫々、シール空間の周状に配置された複数個所において、当該シール空間に接続されていることが好まし
い。また第1及び第2発明の多流路形ロータリジョイントにおいては、ヘッダ空間が形成されるジョイント構成部材が、複数のジョイント構成部分を連結してなる複合構造物に構成されており、当該ヘッダ空間がジョイント構成部分間に形成されていることが好ましい。
【0027】
さらに、第1及び第2発明の多流路形ロータリジョイントにおいては、両ジョイント構成部材に、最小径のメカニカルシールの内周側領域を通過する貫通孔を形成することができ、この貫通孔を、ジョイント流路以外の流体流動路或いは特許文献2に開示されるような電線挿通路として利用することも可能である。
【発明の効果】
【0028】
第
1発明の多流路形ロータリジョイントにあっては、第1及び第2ジョイント通路におけるシール空間との接続部分が複数の分岐ジョイント通路及
び連結通路で構成されていることから、分岐ジョイント通路及び連結通路の数及び孔径を上記した如く設定しておくことにより、
また第2発明の多流路形ロータリジョイントにあっては、各ジョイント通路におけるシール空間との接続部分が複数の連結通路で構成されていることから、連結通路の数及び孔径を上記した如く設定しておくことにより、ジョイント流路の何れの箇所においてもジョイント流路によって接続される回転機器の回転側機器流路及び固定側機器流路と同等の流量を確保しつつ、シール空間の径方向幅を大幅に小さくすることができる。したがって、第1及び第2発明によれば、冒頭で述べたCMP装置におけるターンテーブルの冷却システムのように両端閉塞形の循環流動ルートを構築する場合にも、各ジョイント通路が単一の通路で構成される従来のパラレル形ロータリジョイントに比して、大幅な小型化を可能としつつ回転機器の両機器流路間での流体流動を円滑且つ良好に行うことができ、極めて実用性に富む多流路形ロータリジョイントを提供することができる。
【0029】
さらに、第1発明の多流路形ロータリジョイントによれば、両機器流路の一方が複数の分岐機器流路で構成されている回転機器(例えば、冒頭で述べた冷却システムを有するCMP装置)に使用する場合にも、従来のパラレル形ロータリジョイントのように全分岐機器流路の端部をヘッダ等で集合させた上でジョイント通路に接続させるといった複雑な構造を必要とすることなく、各分岐機器流路を第1ジョイント通路の各分岐ジョイント通路に直結させておくことができ、回転機器における当該ロータリジョイントとの連結部分(特に、回転側機器部材における第1ジョイント構成部材との連結部分)における構造の簡略化及び流体流動の円滑化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0032】
図1〜
図5は第1発明に係る多流路形ロータリジョイントの一例を示すもので、
図1は当該ロータリジョイントの縦断正面図(断面は
図5のI−I線に沿う)であり、
図2は
図1と異なる断面を示す当該ロータリジョイントの縦断面図(断面は
図5のII−II線に沿う)であり、
図3は
図1の要部を拡大して示す詳細図であり、
図4は当該ロータリジョイントの平面図であり、
図5は
図1のV−V線に沿う横断平面図である。また、
図6は第2発明に係る多流路形ロータリジョイントの一例を示す縦断正面図である。なお、以下の説明において、上下とは
図1、
図2及び
図6における上下をいうものとする。
【0033】
図1及び
図2に示す多流路形ロータリジョイント(以下「第1発明ジョイント」という)は、冒頭で述べたターンテーブルの冷却システムのように回転側機器部材1に設けられた回転側機器流路11と固定側機器部材2に設けられた固定側機器流路21とで両端閉塞形の循環流動ルートが構成される回転機器であって、回転側機器流路11が複数の分岐機器流路11a…で構成され且つ固定側機器流路21が単一の流路で構成されているCMP装置等の回転機器に使用されるパラレル形ロータリジョイントに第1発明を適用したものであり、複数の第1ジョイント通路31,32を形成した第1ジョイント構成部材3と複数の第2ジョイント通路41,42を形成した第2ジョイント構成部材4とを相対回転自在に連結すると共に、両ジョイント構成部材3,4間にその相対回転軸線(ジョイント軸線)を中心とする同心状に3つ以上のメカニカルシール5a,5b,5cを並列配置して、両ジョイント構成部材3,4に、各第1ジョイント通路31,32と各第2ジョイント通路41,42とをメカニカルシール5a,5b,5c相互間に形成された環状のシール空間6a,6bを介して一連に連通接続する複数のジョイント流路7,8を形成したものである。なお、回転側機器流路11を構成する分岐機器流路11aの数及び内径(断面径)は、全分岐機器流路11aの合計断面積が固定側機器流路21の断面積と同一となるように、つまり両機器流路11,21が同等の流量を確保できるように設定されている。
【0034】
第1ジョイント構成部材3は、
図1及び
図2に示す如く、円柱状の一体構造物であって回転側機器部材1に取り付けられる。第2ジョイント構成部材4は、
図1及び
図2に示す如く、複数のジョイント構成部分43,44,45,46に分割された複合構造物であって、円筒状の第1ジョイント構成部分43と、その下端に連結された円盤状の第2ジョイント構成部分44と、これと同一径の円盤状をなして第2ジョイント構成部分44の下端に連結された第3ジョイント構成部分45と、第2及び第3ジョイント構成部分44,45間にジョイント軸線と同心をなして連結された円筒状の第4ジョイント構成部分46とからなる有底円筒体に組み立てたものであり、固定側機器部材2に取り付けられる。
【0035】
両ジョイント構成部材3,4は、
図1及び
図2に示す如く、上下方向(ジョイント軸線方向)の一箇所において上下一対のベアリング9,9により相対回転自在に且つジョイント軸線方向に相対移動不能に連結されている。すなわち、両ジョイント構成部材3,4は、第2ジョイント構成部材4の第1ジョイント構成部分43の内周部と第1ジョイント構成部材3の外周部との間にベアリング9,9を介装することにより、第1ジョイント構成部材3の下端部と第2ジョイント構成部材4の第2ジョイント構成部分44の上端部とが対向する状態で相対回転自在に連結されている。なお、第1ジョイント構成部材3の回転側機器部材1への取り付け及び第2ジョイント構成部材4の回転側機器部材2への取り付けは、両ジョイント構成部材3,4の相対回転軸線(ジョイント軸線)が両機器部材1,2の相対回転軸線(機器軸線)に一致するように行われる。
【0036】
メカニカルシール5a,5b,5cは、
図1及び
図2に示す如く、ジョイント軸線を中心とする同心状をなして、ジョイント軸線方向における両ジョイント構成部材3,4の対向端面部間つまり第1ジョイント構成部材3の下端部と第2構成部材4の第2ジョイント構成部分44の上端部との間に並列配置されていて、当該両ジョイント構成部材3,4の対向端面部間の空間を同心状をなす複数の環状のシール空間6a,6bに区画している。この例では、両ジョイント構成部材3,4の対向端面部間に、異なる3つのメカニカルシール5a,5b,5cを同心状に並列配置して、最小径の第1メカニカルシール5aと中間径の第2メカニカルシール5bとでシールされた小径の第1シール空間6a及び第2メカニカルシール5bと最大径の第3メカニカルシール5cとでシールされた大径の第2シール空間6bが形成されている。なお、各シール空間6a,6bは単一管路の接続部或いは複数管路の集合部として使用される一般的なヘッダと同一機能を発揮させるものであるから、その大きさ(容積)つまり各シール空間6a,6bの径方向寸法(メカニカルシール5a,5b,5cの径方向における相互間隔)は機器流路11,21と同等又はそれ以上の流量を確保しうるように設定される。
【0037】
各メカニカルシール5a,5b,5cは、
図1〜
図3に示す如く、第1ジョイント構成部材3の下端部に固定された固定密封環51a,51b,51cと、これに上下方向に直対向して、第2ジョイント構成部材4の第2ジョイント構成部分44の上端部に上下方向(ジョイント軸線方向)に移動可能に保持された可動密封環52a,52b,52cと、可動密封環52a,52b,52cを固定密封環51a,51b,51cへと押圧接触させるべく上方に附勢する複数のコイルスプリング(一つのみ図示)53a…,53b…,53c…とを具備するものであり、固定密封環51a,51b,51cと可動密封環52a,52b,52cとの対向端面たる密封端面の相対回転摺接作用によりシール機能を発揮する端面接触形のものである。
【0038】
固定密封環51a,51b,51cは、
図3に示す如く、夫々、第1ジョイント構成部材3の下端部にジョイント軸線を中心とする同心状に突設された円筒状突起3a,3b,3cに外嵌固定されている。
【0039】
可動密封環52a,52b,52cは、
図1〜
図3に示す如く、第2ジョイント構成部材4の第2ジョイント構成部分44の上端部にジョイント軸線を中心とする同心状に突設された円筒状突起44a,44b,44cに内嵌保持されている。すなわち、各可動密封環52a,52b,52cは、
図3に示す如く、円筒状突起44a,44b,44cの内周部にOリング54a,54b,54cを介してジョイント軸線方向に移動可能に嵌合保持されている。各可動密封環52a,52b,52cは、上記円筒状突起44a,44b,44cの上端部に突設したドライブピン55a,55b,55cを係合させることにより(可動密封環52aについては後述するスプリングリテーナ57aにドライブピン55aを係合させることにより)、上下方向移動を所定範囲で許容された状態で第2ジョイント構成部材4に対する相対回転が阻止されるようになっている。なお、最小径の第1メカニカルシール5aにおいては、固定密封環51a及び可動密封環52aが他のメカニカルシール5b,5cの固定密封環51b,51c及び可動密封環52b,52cと若干形状が異なっている。すなわち、
図3に示す如く、固定密封環51aの外周部には補強リング56aが、また可動密封環52aの外周部には円盤状のスプリングリテーナ57aが、夫々焼き嵌め固定されており、更に可動密封環52aの先端部分の内周面が密封端面に向かって先拡がりのテーパ面58aに形成されている。また、可動密封環52aを押圧附勢するコイルスプリング53aは、
図3に示す如く、スプリングリテーナ56aと前記円筒状突起44aとの間に介装されている。
【0040】
而して、両ジョイント構成部材3,4には複数のジョイント流路7,8が形成されるが、この例では、2つのジョイント流路、つまり回転側機器流路11の上流端(流入口)と固定側機器流路21の下流端(流出口)とを接続する第1ジョイント流路7及び回転側機器流路11の下流端(流出口)と固定側機器流路21の上流端(流入口)とを接続する第2ジョイント流路8が形成されている。
【0041】
各ジョイント流路7,8は、
図1及び
図2に示す如く、第1ジョイント構成部材3に形成した第1ジョイント通路31,32と第2ジョイント構成部材4に形成した第2ジョイント通路41,42とをシール空間6a,6bで相対回転自在に連通接続してなる一連のものである。
【0042】
第1ジョイント流路7の第1ジョイント通路31は、
図1〜
図5に示す如く、ジョイント軸線を中心とする第1円環状領域においてその周方向に等間隔を隔てて上下方向に延びる複数の第1分岐ジョイント通路31a…で構成されている。また、第2ジョイント流路8の第1ジョイント通路32は、
図1〜
図5に示す如く、第1円環状領域と同心をなし且つ第1円環状領域より大径をなす第2円環状領域においてその周方向に等間隔を隔てて上下方向に延びる複数の第2分岐ジョイント通路32a…で構成されている。
【0043】
これらの分岐ジョイント通路31a…,32a…は、
図1〜
図5に示す如く、断面一様の円形孔(キリ孔)であり、その内径(断面径)及び数は回転側機器流路11の分岐機器流路11a…の内径及び数と同一である。すなわち、各分岐ジョイント通路31a,32aは各分岐機器流路11aと同一流量を確保できるものであり、各分岐ジョイント通路群31a…,32a…の合計流量は、回転側機器流路11の流量(分岐機器流路群11a…の合計流量)と同一である。
【0044】
各分岐ジョイント通路31a,32aの一端は、
図1及び
図2に示す如く、第1ジョイント構成部材3の上端部に開口されていて、各分岐機器流路11aに接続されるようになっている。すなわち、各第1分岐ジョイント通路31aの一端は各分岐機器流路11aの上流端に接続され、各第2分岐ジョイント通路32aの一端は各分岐機器流路11aの下流端に接続されるようになっている。
【0045】
各分岐ジョイント通路31a,32aの他端は、
図1及び
図2に示す如く、シール空間6a,6bの上端部に開口されている。すなわち、第1分岐ジョイント通路31a…の他端は第1シール空間6aにその周方向に等間隔を隔てて連通接続されており、第2分岐ジョイント通路32a…の他端は第2シール空間6bにその周方向に等間隔を隔てて連通接続されている。
【0046】
各第2ジョイント通路41,42は、
図1及び
図2に示す如く、第2ジョイント構成部材4にジョイント軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間41a,42aの一つと、当該ヘッダ空間41a,42aとシール空間6a,6bとを連通接続する複数の連結通路41b…,42b…と、当該ヘッダ空間41a,42aに連通接続された一つの幹通路41c,42cとで構成されている。
【0047】
ヘッダ空間41a,42aは、第2ジョイント構成部材4を構成するジョイント構成部分間に形成されている。すなわち、
図1及び
図2に示す如く、小径の第1ヘッダ空間41aは第2、第3及び第4ジョイント構成部分44,45,46で囲繞形成された断面方形の中空環状をなすものであり、大径の第2ヘッダ空間42aは第2及び第3ジョイント構成部分44,45で囲繞形成された断面方形の中空環状をなすものである。なお、各ヘッダ空間41a,42aは単一管路の接続部或いは複数管路の集合部として使用される一般的なヘッダと同一機能を発揮させるものであるから、その大きさ(容積)は、かかる一般的ヘッダと同様に、後述する幹通路41c,42cを接続するに十分なものとされ、幹通路41c,42cの流量と同等若しくはそれ以上の流量を確保できるものとされている。
【0048】
各連結通路41b,42bは、
図1及び
図2に示す如く、第2ジョイント構成部分44を上下方向に貫通する断面一様の円形孔(キリ孔)であり、シール空間6a,6bとヘッダ空間41a,42aとを連通接続している。第1シール空間6aと第1ヘッダ空間41aとを連通する第1連結通路41b…は、両空間6a,41aにその周方向に等間隔を隔てた複数個所において接続されており、第2シール空間6bと第2ヘッダ空間42aとを連通する第2連結通路42b…は、両空間6b,42aにその周方向に等間隔を隔てた複数個所において接続されている。なお、第1連結通路41b…と第2連結通路42b…とは数及び内径(断面径)を同一とするものである。
【0049】
各幹通路41c,42cは、
図1及び
図2に示す如く、一端を第2ジョイント構成部材4の表面(この例では外周面)に開口すると共に他端をヘッダ空間41a,42aに連通接続する断面一様の円形孔(キリ孔)である。すなわち、第1ヘッダ空間41aに接続される第1幹通路41cは、
図1及び
図2に示す如く、第3ジョイント構成部分45に形成されており、その一端(開口)は固定側機器流路21の下流端(流出口)に接続される。第2ヘッダ空間42aに接続される第2幹通路42cは、
図1及び
図2に示す如く、第2ジョイント構成部分44に形成されており、その一端(開口)は固定側機器流路21の上流端(流入口)に接続される。なお、各幹通路41c,42cの内径(断面径)は固定側機器流路21と同一に設定されている。すなわち、各幹通路41c,42cは固定側機器流路21と同一の流量を確保できるものとされている。
【0050】
以上のように構成された第1発明ジョイントにおいては、これをジョイント軸線を機器軸線に一致させた状態で両機器部材1,2間に装着させて、両機器流路11,21間を第1及び第2ジョイント流路7,8で接続した両端閉塞形の循環流動ルートを構築することにより、冷却液等の流体が、固定側機器流路21に設けられた循環ポンプ等の強制循環手段により、固定側機器流路21から第1ジョイント流路7つまり第1幹通路41c、第1ヘッダ空間41a、第1連結通路41b…、第1シール空間6a及び第1分岐ジョイント通路31a…を順次通過して回転側機器流路11を構成する分岐機器流路11a…に供給され、更に回転側機器流路11から第2ジョイント流路8つまり第2分岐ジョイント通路32a…、第2シール空間6b、第2連結通路42b…、第2ヘッダ空間42a及び第2幹通路42cを順次通過して固定側機器流路21へと循環されことになる。このような循環流動ルートにおいては、各分岐機器流路11aの上下流端が各分岐ジョイント通路31a,32aに直結されていることから、従来のパラレル形ロータリジョイントのように全分岐機器流路の端部をヘッダ等で集合させた上でジョイント通路に接続させるといった複雑な構造を必要とすることなく、回転機器における第1発明ジョイントとの連結部分(特に、回転側機器部材1における第1ジョイント構成部材3との連結部分)における構造の簡略化及び流体流動の円滑化を図ることができる。
【0051】
而して、各ジョイント流路7,8にあっては、第1に、分岐ジョイント通路31a,32a及び連結通路41b,42bの数及び内径を幹通路41c,42cの断面積との関係において、(1)(2)のように設定してある。
【0052】
(1)分岐ジョイント通路31a,32aの数N1及び内径D1(ないし断面積a1)を、幹通路41c,42cの断面積A2(ないし内径D2)との関係において、全分岐ジョイント通路31a…,31a…の合計断面積A1(=a1・N1)が幹通路41c,42cの断面積A2と同一又はこれより若干大きくなるように設定する。
【0053】
(2)連結通路41b,42bの数N3及び内径D3(ないし断面積a3)を、幹通路41c,42cの断面積A2(ないし内径D2)との関係において、全連結通路41b…,42b…の合計断面積A3(=a3・N3)が幹通路41c,42cの断面積A2と同一又はこれより若干大きくなるように設定する。なお、連結通路41b…,42b…の合計断面積A3は、一般には、幹通路41c,42cの断面積A2より若干大きくなるように設定しておくことが好ましい。けだし、このように設定しておくことで、シール空間6a,6bとヘッダ空間41a,42aとの間での流体移動がより円滑に行われることになるからである。なお、連結通路41b…,42b…の合計断面積を幹通路41c,42cの断面積より若干大きくしておく場合で且つ連結通路41b,42bの内径を分岐ジョイント通路31a,32aの内径より若干小さく設定しておく場合には、連結通路41b,42bの数を分岐ジョイント通路31a,32aの数より多く設定しておくことが好ましい。
【0054】
具体的には、例えば、回転側機器流路11を構成する分岐機器流路11aの数N4、内径D4及び固定側機器流路21の内径D5がN4=4、D4=8mm、D5=16mmである場合、回転側機器流路11の断面積A4(分岐機器流路11aの断面積a4(=π(D4)
2/4=16πmm
2)×N4)及び回転側機器流路21の断面積A5はA4=A5=64πmm
2となり、幹通路41c,42cの内径D2及び断面積A2は固定側機器流路21の内径D5及び各機器流路11,21の断面積A4,A5に合わせてD2=8mm、A2=64πmm
2と設定される。さらに、この幹通路41c,42cの断面積A2との関係において、分岐ジョイント通路31a,32aの数N1、内径D1、断面積a1及び第1ジョイント通路31,32の面積A1(全分岐ジョイント通路31a…,32a…の合計面積(a1×N1))はN1(=N4)=4、D1(=D4)=8mm、a1=π(D1)
2/4=16πmm
2、A1=a1・N1(=A2=A4=A5)=64πmm
2と設定され、連結通路41b,42bの数N3、内径D3、断面積a3及び全連結通路41a…,42a…の合計面積A3(=a3・N3)はN3(>N1)=8、D3(<D1)=6mm、a3(<a1)=π(D1)
2/4=9πmm
2、A3(>A1)=a1・N1=72πmm
2と設定される。
【0055】
このように設定することにより、各ジョイント流路7,8の何れの箇所においても断面積が大きく変化することがなく、局部的に流量が大きく減少するようなことがないから、(1)(2)のように設定された第1発明ジョイントを使用することにより両機器流路11,21間での流動を円滑に行うことができる。すなわち、幹通路41c,42cの断面積A1を回転側機器流路11の断面積A4(分岐機器流路11a…の合計断面積)及び固定側機器流路21の断面積A5と同一に設定しておくことにより、両機器流路1,2を第1及び第2ジョイント流路7,8で接続することによって構築される両端閉塞形の循環流動ルートにおいて、両機器流路11,21の接続部分である各ジョイント流路7,8において大きな流量変化や圧力損失が生じることがなく、当該循環流動ルートにおける流体流動を円滑且つ良好に行うことができる。その結果、循環流動ルートにおいて圧力損失等に起因する流動形態が不安定となるようなことがなく、流動形態が不安定となることによる回転機器の機能障害はこれを確実に防止することができる。
【0056】
例えば、冒頭で述べたCMP装置におけるターンテーブルの冷却システムに第1発明ジョイントを使用した場合、冷却流体(冷却水等)が、CMP装置本体(固定側機器部材)2の冷却流体供給路(固定側機器流路)21からこれに設けた循環ポンプ等の強制循環手段により第1ジョイント流路7を経てターンテーブル(回転側機器部材)1に均等配置された複数の分岐冷却流路(分岐機器流路)11a…に供給されてターンテーブル1を冷却する。そして、分岐冷却流路11a…を通過した冷却流体は、第2ジョイント流路8を経て冷却流体供給路21に返戻されて当該供給路21に設けられたクーラ等の冷却手段により再度冷却された上で、第1ジョイント流路7を経て分岐冷却流路11a…へと循環される。このとき、各ジョイント流路7,8の何れの箇所においても断面積が極端に減少することがなく、しかも各分岐冷却流路11aと各ジョイント通路31a,32aとが直結されていることから、各分岐冷却流路11aと他の分岐冷却流路11aとで冷却流体の流動形態が大きく異なることがなく、冷却流体は分岐冷却流路11a…を均等且つ安定した状態で流動されることになる。したがって、ターンテーブル1の冷却温度にバラツキが生じることがなく、ターンテーブル1の全面を均等に冷却することができる。その結果、半導体ウエハの表面研摩処理を良好に行うことができ、半導体ウエハの品質低下を招く虞れがない。
【0057】
また、各ジョイント流路7,8にあっては、第2に、シール空間6a,6bの径方向幅を分岐ジョイント通路31a,32a及び連結通路41b,42bとの関係において(3)のように設定してある。
【0058】
(3)シール空間6a,6bの径方向幅(メカニカルシール5a,5b,5c相互の径方向間隔)を、各分岐ジョイント通路31a,32a及び各連結通路41b,42bを連通接続しうるに必要最小限の大きさに設定してある。
【0059】
このように設定しておくことにより、単一の第1及び第2ジョイント通路をシール空間に接続するようにした従来のパラレル形ロータリジョイントに比して、シール空間6a,6bの径方向幅が小さくなり、第1発明ジョイントの径方向寸法を大幅に縮小でき、軸線方向寸法も含めた第1発明ジョイントの小型化を実現することができる。
【0060】
すなわち、各ジョイント流路7,8は上記した如く機器流路11,21と同一流量を確保できる断面積のものとされているが、各ジョイント流路7,8において、第1ジョイント通路31,32及び第2ジョイント通路41,42のシール空間6a,6bへの接続が複数箇所に分散させていて、その個々の接続部分における断面積つまり各分岐ジョイント通路31a,32a及び連結通路41b,42bの断面積a1,a3は単一の幹通路41c,42cの断面積A2より極めて小さくなっており、その内径D1,D3も幹通路41c,42cの内径D2より極めて小さい。つまり、分岐ジョイント通路31a,32aの内径D1及びは連結通路41b,42bの内径D3は、幹通路D41c,42cの内径D2を分岐ジョイント通路数N1又は連結通路数N3の平方根で除した寸法となっている(D1=D2/(N1)
1/2、D3=D2/(N3)
1/2)。
【0061】
したがって、シール空間6a,6bの径方向幅は、分岐ジョイント通路31a,32a及び連結通路41b,42bを接続しうるに必要最小限の寸法、つまりこれらの通路径D1,D3と同程度の寸法に設定しておくことができる。なお、連結通路41b,42bの内径D3はその数N3に応じて分岐ジョイント通路31a,32aの内径D1と同程度又はこれより小さくなることから、実質的に、シール空間6a,6bの径方向幅は分岐ジョイント通路31a,32aの内径D1と同程度の寸法に設定しておけばよい。
【0062】
このようにシール空間6a,6bの径方向幅を分岐ジョイント通路31a,32aの内径D1(ないし連結通路41b,42bの内径D3)と同程度の寸法に設定しておくことにより、幹通路41c,42cのような単一の通路をシール空間6a,6bに接続した場合と同等の流量を確保しながらも、かかる場合よりシール空間6a,6bの径方向寸法を大幅に小さくすることができ、第1発明ジョイントの径方向寸法の縮小ひいては第1発明ジョイント全体の小型化を実現できるのである。
【0063】
ところで、この例では、
図1及び
図2に示す如く、両ジョイント構成部材3,4に、最小径の第1メカニカルシール5aの内周側領域を通過する貫通孔10が形成されており、この貫通孔10をジョイント流路7,8と異なる流体を流動させる流路として使用するように構成してある。
【0064】
すなわち、貫通孔10は、
図1及び
図2に示す如く、ジョイント軸線上を通過して第1ジョイント構成部3の中心部を固定密封環51aの内周部へと貫通する断面一様の円形孔である第1貫通路10aと、可動密封環52aの内周部から第2ジョイント構成部材4における第2ジョイント構成部分44の円筒状突起44a、第4ジョイント構成部分46を通過して第3ジョイント構成部分45をその外周部へと貫通する第2貫通路10bとを構成する。第1貫通路10aの開口端は回転側機器部材1に設けられた回転側機器流路12(例えば、CMP装置における研摩液の注入路等)に接続されると共に第2貫通路10bの開口端は固定側機器部材2の固定側機器流路22(例えば、CMP装置における研摩液の供給路等)に接続される。この貫通孔10によって、流体を固定側機器流路22から回転側機器流路12へと流動させる(例えば、CMP装置のターンテーブル上に研摩液の注入させる)ことができ、逆に流体を回転側機器流路12から固定側機器流路22へと流動させる(例えば、CMP装置のターンテーブル上の研摩残渣を真空吸引により排出させる)ことができる。なお、貫通孔10は、このような流路として使用せず、特許文献2に開示されるような電線挿通路として使用することもできる。
【0065】
また、
図6は第2発明に係る多流路形ロータリジョイントの一例を示す縦断正面図であるが、この多流路形ロータリジョイント(以下「第2発明ジョイント」という)は、第1ジョイント構成部材3及びこれに形成される第1ジョイント通路35,36の構成を除いて、上記した第1発明ジョイントと同一構成をなすものであるから、第1発明ジョイントと同一構成部分については、
図6において、
図1〜
図5に示す符号と同一の符号を付することにより、その詳細な説明は省略する。
【0066】
すなわち、第2発明ジョイントにおいては、
図6に示す如く、第1ジョイント構成部材3が第2ジョイント構成部材4と同様の複合構造物とされている。第1ジョイント構成部材3は、実質的に第1発明ジョイントの第1ジョイント構成部材3と同様の円柱状をなすものであるが、第2発明ジョイントにおいては、
図6に示す如く、第1ジョイント構成部分33とその下端部に取り付けられる第2ジョイント構成部分34とに上下2分割された構造をなしている。そして、両ジョイント構成部材3,4は、第1ジョイント構成部材3の第2ジョイント構成部分34の外周部と第2ジョイント構成部材4の第1ジョイント構成部分43の内周部との間に介装したベアリング9,9により相対回転自在に連結されている。
【0067】
また、第2発明ジョイントにおいては、第1ジョイント流路7の第1ジョイント通路35及び第2ジョイント流路8の第1ジョイント通路36が夫々第2ジョイント通路41,42と同様に実質的な単一通路構造をなしている。
【0068】
すなわち、各第1ジョイント通路35,36は、
図6に示す如く、第1ジョイント構成部材3にジョイント軸線を中心として同心状に形成された複数の中空環状のヘッダ空間35a,36aの一つと、当該ヘッダ空間35a,36aとシール空間6a,6bとを連通接続する複数の連結通路35b…,36b…と、当該ヘッダ空間35a,36aに連通接続された一つの幹通路35c,36cとで構成されている。
【0069】
ヘッダ空間35a,36aは、
図6に示す如く、第1ジョイント構成部材3を構成するジョイント構成部分33,34間に形成されており、第1ジョイント構成部分33の下端部にジョイント軸線を中心として同心状に形成された環状溝を第2ジョイント構成部分34で閉塞することにより構成されている。なお、各ヘッダ空間35a,36aの径方向(ジョイント軸線方向に直交する方向)断面積は、第2ジョイント通路41,42のヘッダ空間41b,42bと同様に、後述する幹通路35c,36cを接続するに十分なものとされ、幹通路35c,36cの流量と同等又はそれ以上の流量を確保できるものとされている。
【0070】
各連結通路35b,36bは、
図6に示す如く、第2ジョイント構成部分34を上下方向に貫通する断面一様の円形孔(キリ孔)であり、シール空間6a,6bとヘッダ空間35a,36aとを連通接続している。シール空間6aとヘッダ空間35aとを連通する連結通路35b…は、両空間6a,35aにその周方向に等間隔を隔てた複数個所において接続されており、シール空間6bとヘッダ空間36aとを連通する連結通路36b…は、両空間6b,36aにその周方向に等間隔を隔てた複数個所において接続されている。なお、連結通路35b,36bの数及び内径(断面径)は、第2ジョイント通路41,42の連結通路41b,42bと同一に設定されている。
【0071】
各幹通路35c,36cは、
図6に示す如く、第1ジョイント構成部分33を上下方向に貫通してヘッダ空間35a,36aに連通接続する断面一様の円形孔(キリ孔)である。第1ジョイント流路7の幹通路35cは回転側機器流路11の上流端(流入口)に接続され、第2ジョイント流路8の幹通路36cは回転側機器流路11の下流端(流出口)に接続されている。なお、回転側機器流路11が前記した如く複数の分岐機器流路11a…で構成されている場合には、分岐機器流路群11a…の上流端及び下流端を夫々集合させて、その集合部が幹通路35c,36cに接続される。また、幹通路35c,36cの内径(断面径)は、第2ジョイント通路41,42の幹通路41c,42cと同一に設定されている。
【0072】
而して、第2発明ジョイントにおいては、前記(2)と同様に、連結通路35b,36b及び連結通路41b,42bの数N3及び内径D3(ないし断面積a3)は、幹通路35c,36c及び41c,42cの断面積A2(ないし内径D2)との関係において、全連結通路35b…,36b…及び41b…,42b…の合計断面積A3(=a3・N3)が幹通路35c,36c及び41c,42cの断面積A2(=A7)と同一又はこれより若干大きくなるように設定される。また、シール空間6a,6bの径方向幅(メカニカルシール5a,5b,5c相互の径方向間隔)は、前記(3)と同様に、各連結通路35b,36b及び41b,42bを連通接続しうるに必要最小限の大きさ、つまり連結通路35b,36b及び41b,42bの内径D3と同等の寸法に設定されている。
【0073】
したがって、上記のように構成された第2発明ジョイントにあっても、第1発明ジョイントと同様に、両機器流路11,21を第1及び第2ジョイント流路7,8で接続することによって構築される両端閉塞形の循環流動ルートにおいて、両機器流路11,21の接続部分である各ジョイント流路7,8において大きな流量変化や圧力損失が生じることがなく、当該循環流動ルートにおける流体流動を円滑且つ良好に行うことができる。その結果、循環流動ルートにおいて圧力損失等に起因する流動形態が不安定となるようなことがなく、流動形態が不安定となることによる回転機器の機能障害はこれを確実に防止することができる。
【0074】
しかも、シール空間6a,6bの径方向幅を連結通路35b,36b,41b,42bの内径D3と同程度の寸法に設定しておくことにより、幹通路35c,36c,41c,42cのような単一の通路をシール空間6a,6bに接続した場合と同等の流量を確保しながらも、かかる場合よりシール空間6a,6bの径方向寸法を大幅に小さくすることができ、第2発明ジョイントの径方向寸法の縮小ひいては第2発明ジョイント全体の小型化を実現できる。
【0075】
なお、第1及び第2発明の構成は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0076】
例えば、第1及び第2発明に係る多流路ロータリジョイントにおけるジョイント流路7,8の数、分岐ジョイント通路31a,32a及び連結通路35b,36b,41b,42b、…の数及び内径(断面径)並びに幹通路35c,36c,41c,42cの内径(断面径)は、当該ロータリジョイントを使用する回転機器の形態ないし用途に応じて適宜に設定することができる。また、上記した第1及び第2発明ジョイントにおいては、ヘッダ空間35a,36a,41a,42aを形成するために、これが形成されるジョイント構成部材を複数のジョイント構成部分33,34,43,44,45,46に分割された複合構造物としたが、当該ジョイント構成部材はこれをプラスチック製の一体構造物とすることも可能である。また、第1及び第2発明に係る多流路ロータリジョイントは、CMP装置のターンテーブル冷却システムにおける如き両端閉塞形の循環流動ルートを構築する場合の他、一端開放形の流動ルートを構築する場合にも使用することができ、上記した第1及び第2発明ジョイントと同様の作用効果を奏しうる。また、第1及び第2発明に係る多流路形ロータリジョイントは、第1ジョイント構成部材3を固定側機器部材に取り付け且つ第2ジョイント構成部材4を回転側機器部材に取り付けるような形態で使用することも可能である。