【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の
TIG溶接またはサブマージアーク溶接による高Cr鋼製タービンロータの
多層肉盛溶接部のうち、第1の本発明は、高Cr鋼製タービンロータの軸受接触面に形成された多層肉盛溶接部の
うち、初層溶接部が、
質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜1.5%、
Cr:4.0〜
6.7%、
Mo:0.5〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、質量%で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.2%以下、Ni:0.3%以下、Co:1.5%以下、B:0.005%以下、W:1.5%以下、Nb:0.07%以下に規制された組成を有
し、
前記初層溶接部上に形成された上盛層溶接部が、
質量%で、
C:0.05〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜2.5%、
Cr:1.0〜4.0%、
Mo:0.5〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.15%以下、Ni:0.3%以下、Nb:0.07%以下に規制された組成を有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の高Cr鋼製タービンロータの初層溶接部は、前記第1の本発明において、次の式(1)を満足することを特徴とする。
Pcr(1)=(初層溶接部中のCr量)×0.65−(高Cr鋼製タービンロータのCr量−初層溶接部中のCr量)×0.35>0.7 …(1)
【0011】
第
3の本発明の
TIG溶接またはサブマージアーク溶接による高Cr鋼製タービンロータの
多層肉盛溶接部は、前記第
1または第2の本発明において、
前記上盛層溶接部中の前記V量が、前記初層溶接部の不可避不純物中に含まれるV量よりも低く、かつ質量%で0.15%以下であることを特徴とする。
【0012】
第
4の本発明の
TIG溶接またはサブマージアーク溶接による高Cr鋼製タービンロータの
多層肉盛溶接部は、前記第
1〜第3の本発明
のいずれかにおいて、
前記上盛層溶接部が、次の式(2)を満足することを特徴とする。
Pcr(n)=(n層目上盛層溶接部中のCr量)×0.65−{(n−1)層目上盛層溶接部中のCr量−n層目上盛層溶接部中のCr量}×0.35>0.7 …(2)
ただし、多層肉盛溶接部がN層で構成されている場合、2≦n≦Nである。
【0014】
第
5の本発明の
TIG溶接またはサブマージアーク溶接による高Cr鋼製タービンロータの多層肉盛溶接部の製造方法は、高Cr鋼製タービンロータの軸受接触面に、
質量%で、
C:0.03〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜1.2%、
Cr:2.0〜5.5%、
Mo:0.1〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.1%以下に規制し、さらにNi、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上を総和で0.2%以下に規制した組成を有する初層溶接部用溶接材料によって前記
第1の発明の組成が得られる初層溶接部を
TIG溶接またはサブマージアーク溶接により形成し、
前記初層溶接部の上層に、
質量%で、
C:0.03〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜3.0%、
Cr:1.0〜2.5%、
Mo:0.1〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.1%以下に規制し、さらにNi、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上を総和で0.2%以下に規制した組成を有する上盛層溶接部用溶接材料によって前記
第1の発明の組成が得られる上盛層を
TIG溶接またはサブマージアーク溶接により形成することを特徴とする。
【0015】
以下に、本発明における初層溶接部の成分を規定した理由について説明する。なお、以下における含有量はいずれも質量%で示される。
【0016】
C:0.05〜0.2%
溶接部の引張強度を確保するという観点からはCは必要な添加元素であるため0.05%を下限とする。しかし、0.2%を超える含有は衝撃値を下げること、溶接割れ感受性が高くなることから、0.2%を上限とする。
【0017】
Si:0.1〜1.0%
Siは、脱酸剤として、あるいは強度確保のために必要な元素であるため0.1%を下限とする。しかし、過剰な含有は応力除去焼鈍割れ等の割れを助長し、また靭性の低下を招くので1.0%を上限とする。なお、同様の理由で下限を0.25%、上限を0.7%とするのが望ましい。
【0018】
Mn:0.3〜1.5%
MnはSiと同様に脱酸剤として、あるいは強度確保のために必要な元素であるため0.3%を下限とする。しかし、過剰な含有は靭性の低下を招くので1.5%を上限とする。なお、同様の理由で上限を1.2%とするのが望ましく、さらに上限を1.0%とするのが一層望ましい。
【0019】
Cr:4.0〜
6.7%
Crは強度と靭性を確保する上で重要な元素であり、初層へのひずみの集中を抑えかつ母材とのCr差を抑えフェライトの生成を防ぐため、4.0%を下限とする。しかし、過剰の含有は焼入れ性を高め、溶接割れ感受性が高くなることから、
6.7%を上限とす
る。
【0020】
Mo:0.5〜1.5%
Moは応力除去焼鈍中に炭化物として析出し、焼戻し軟化抵抗を高めるため、応力除去焼鈍後の強度を得る上で重要な元素であり、応力除去焼鈍時のひずみの集中を抑制するために0.5%を下限とする。しかし、過剰な含有は割れ性を高め、また靭性の低下を招くため1.5%を上限とする。なお、同様の理由で上限を1.0%とするのが望ましい。
【0021】
初層溶接部の必須構成元素は上記の通りである。また、残部は実質的にFeおよび母材からの希釈などによる不可避不純物として、質量%で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.2%以下、Ni:0.3%以下、Co:1.5%以下、B:0.005%以下、W:1.5%以下、Nb:0.07%以下を含み得る。以下、その理由を説明する。
【0022】
P:0.015%以下
Pは金属材料を溶製する際に原料などから混入してくる不純物元素であり、靱性を低下させる可能性があるので、可能な限り低減することが望ましい。したがって、Pの含有量は0.015%以下とする。
【0023】
S:0.015%以下
Sも金属材料を溶製する際に原料などから混入してくる不純物元素であり、靱性を低下させる可能性があるので、可能な限り低減することが望ましい。したがって、Sの含有量は0.015%以下とする。
【0024】
Cu:0.2%以下
Cuは溶接部の靭性を低下させる可能性があり、上限を0.2%以下とする。
【0025】
V:0.2%以下
Vは焼戻し軟化抵抗性を上げ、応力除去焼鈍後の強度を得るための元素であるが、応力除去焼鈍割れ感受性を極端に上昇させるため、0.2%を上限とする。なお、同様の理由で上限を0.1%とするのが望ましい。
【0026】
Ni:0.3%以下
Niの過度の含有は焼戻し脆化を起こす可能性があり、0.3%を上限とする。
【0027】
Co:1.5%以下
母材にCoが含まれる場合、母材からの希釈/融合による上昇分に留め、Coの上限を1.5%とする。
【0028】
B:0.005%以下
W:1.5%以下
Nb:0.07%以下
これら成分は、一般に応力除去焼鈍時の焼戻し軟化抵抗性を向上させ、室温強度を確保する元素であるが、過度に含有すると靭性が低下し、また溶接性も劣化する可能性があるので、本発明では上限をそれぞれ上記に定める。
【0029】
Pcr(1)=(初層溶接部中のCr量)×0.65−(高Cr鋼製タービンロータのCr量−初層溶接部中のCr量)×0.35>0.7 …(1)
初層溶接部のCr含有量が多く、かつ高Cr鋼製タービンロータのCr量との差が小さいほど応力除去焼鈍時のフェライト生成が抑制される。以上のことより、上記Pcr(1)値を0.7を超える値にすることで、母材−初層溶接部境界のフェライト生成が抑制される。なお、上記式中のCr量はいずれも質量%で示される。
【0030】
初層溶接部用溶接材料の説明
上記初層溶接部を得る溶接材料は、母材上に肉盛溶接した際に母材との間で成分の希釈が生じ、また、上層に溶接される上盛層による成分の希釈も生じる。成分の希釈は、隣接する層同士が溶接に際し一部が融合し、成分濃度が濃い層から成分濃度の低い層に成分が移動することによって生じる。なお、母材には一般的に火力発電用タービンロータに使用される高Cr鋼、特に12Cr鋼が想定される。更に、その中で、W、Co、Bが添加されている新12Cr鋼と呼ばれるものが想定される。
初層溶接部用溶接材料は、これらを考慮して、上記初層溶接部組成を得るために規定されるものである。これにより上記初層溶接部の作用効果を発揮することが出来る。
この溶接材料を高Crロータ基材における肉盛初層として使用することにより、母材と肉盛初層間、あるいはそれ以降の肉盛層における強度段差を実用上問題のない程度に抑え、初層での応力除去焼鈍割れを抑えることが出来る。かつ、母材と初層溶接金属とのCr含有量差を抑えることにより、フェライトの生成を抑制することができる。
【0031】
具体的には、初層溶接部用溶接材料は、
質量%で、
C:0.03〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜1.2%、
Cr:2.0〜5.5%、
Mo:0.1〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.1%以下、Ni、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上の総和が0.2%以下からなる組成を有するのが望ましい。
以下、各成分について具体的に説明する。
【0032】
C:0.03〜0.2%
本発明で規定する初層溶接部のC含有量の範囲は0.05〜0.2%であり、母材成分は前記初層溶接部のC含有量範囲の上限を超える場合がある。母材成分との希釈/融合を考慮すると、初層溶接部の成分範囲を得るためには、溶接材料におけるC含有量の下限を0.03%、上限は溶接作業性等を考慮し0.2%とするのが望ましい。
【0033】
Si:0.1〜1.0%
本発明で規定する初層溶接部のSi含有量の範囲は0.1〜1.0%であり、母材成分との希釈/融合を考慮すると、初層溶接部の成分範囲を得るためには、溶接材料におけるSi含有量は0.1〜1.0%の範囲とするのが望ましい。
【0034】
Mn:0.3〜1.2%
本発明で規定する初層溶接部のMn含有量の範囲は0.3〜1.5%であり、母材成分は前記初層溶接部のMn含有量範囲の上限を超える場合がある。母材成分との希釈/融合を考慮すると、溶接材料におけるMn含有量の下限は脱酸材としての効果を確保するために0.3%、上限は初層溶接部の成分範囲上限を超えないように1.2%が望ましい。
【0035】
Cr:2.0〜5.5%
本発明で規定する初層溶接部のCr含有量の範囲は4.0〜
6.7%であり、Cr含有量が高い母材成分との希釈/融合を考慮すると、初層溶接部の成分範囲を得るためには、溶接材料におけるCr含有量は2.0〜5.5%の範囲が望ましい。
【0036】
Mo:0.1〜1.5%
本発明で規定する初層溶接部のMo含有量範囲は0.5〜1.5%であり、母材成分との希釈/融合を考慮すると、初層溶接部の成分範囲を得るためには溶接材料におけるMo含有量は0.5〜1.5%の範囲が望ましい。
【0037】
不純物:P、S、Cu、V、Ni,Nb、Ti、W、Co、B
【0038】
本発明で規定する初層溶接部の不純物として、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下が許容されている。これらは、溶接部、母材を含めて、機械的性質や溶接性を悪化させる成分であり、初層用溶接材料においても初層溶接部と同じ成分範囲が望ましい。
【0039】
V:0.1%以下
Vは母材に含まれる成分であるが、本発明で規定する初層溶接部の範囲0.2%以下を得るためには溶接材料におけるV含有量は0.1%以下であることが望ましい。
【0040】
Ni、Nb、Tiの一種以上の総和が0.2%以下
Ni、Nbは母材に含まれる元素であるが、本発明で規定する初層溶接部の範囲であるNi:0.3%以下、Nb:0.07%以下を得るためには、溶接材料における含有量は出来るだけ低い方が望ましい。
また、Tiは通常母材にはほとんど含まれないが溶接部に残留すると非金属介在物の生成を増加させるため、溶接材料における含有量は出来るだけ低い方が望ましい。そのため、Ni、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上の総和は0.2%以下が望ましい。
【0041】
W、Co、Bは母材に含まれ得る成分であるが、本発明で規定する初層溶接部の範囲であるW:1.5%以下、Co:1.5%以下、B:0.005%以下を得るためには、通常の溶接材料の製造方法により不可避的に含まれる範囲内で極力低い方が望ましい。
【0042】
以下に、本発明の上盛層溶接部の成分を規定した理由について説明する。なお、以下における含有量はいずれも質量%で示される。
【0043】
C:0.05〜0.2%
軸受面に必要な強度を与える上でCは必要な添加元素であるため0.05%を下限とした。しかし、0.2%を超える含有は衝撃値を下げること、溶接割れ感受性が高くなることから、0.2%を上限とする。
【0044】
Si:0.1〜1.0%
初層肉盛溶接金属で示したのと同様にSiは脱酸剤として、あるいは強度確保のために必要な元素であるため0.1%を下限とする。しかし、過剰な含有は応力除去焼鈍割れ等の割れを助長し、また靭性の低下を招くので1.0%を上限とする。なお、同様の理由で下限を0.3%、上限を0.7%とするのが望ましい。
【0045】
Mn:0.3〜2.5%
MnはSiと同様に脱酸剤として、あるいは強度確保のために必要な元素であるため0.3%を下限とする。しかし、過剰な含有は靭性の低下を招くので2.5%を上限とする。なお、同様の理由で下限を0.7%、上限を2.0%とするのが望ましく、さらに下限を1.0%とするのが一層望ましい。
【0046】
Cr:1.0〜4.0%
Crは強度と靭性を確保する上で重要な元素であり、かつ初層とのCr差を抑えフェライトの生成を防ぐため、1.0%を下限とする。しかし、4.0%を超えると強度が高くなりすぎ初層にひずみが集積し、応力除去焼鈍時に割れが発生することがあるため上限を4.0%とする。
【0047】
Mo:0.5〜1.5%
Moは応力除去焼鈍中に炭化物として析出し、焼戻し軟化抵抗を高めるため、応力除去焼鈍後の強度を得る上で重要な元素であり、応力除去焼鈍時のひずみの集中を抑制するために0.5%を下限とする。しかし、過剰な含有は応力除去焼鈍割れ感受性を高め、また靭性の低下を招くため1.5%を上限とする。
【0048】
上盛層溶接部の必須構成元素は上記の通りであり、残部は実質的にFeからなるが、これらには上記の特性を阻害しない範囲で微量のS、P、Ni等の不可避不純物が含まれていても構わない。高Crロータ基材における肉盛上盛層として使用することにより、耐焼付き性が優れ、かつ、初層と上盛層溶接部とのCr含有量差を抑えることにより、フェライトの生成を抑制することができる。
なお、不可避不純物の規定について以下に説明する。
【0049】
P:0.015%以下
Pは金属材料を溶製する際に原料などから混入してくる不純物元素であり、靱性を低下させる可能性があるので、可能な限り低減することが望ましい。したがって、Pの含有量は0.015%以下とする。
【0050】
S:0.015%以下
Sも金属材料を溶製する際に原料などから混入してくる不純物元素であり、靱性を低下させる可能性があるので、可能な限り低減することが望ましい。したがって、Sの含有量は0.015%以下とする。
【0051】
Cu:0.2%以下
Cuは溶接部の靭性を低下させる可能性があり、上限を0.2%以下とする。
【0052】
V:0.15%以下
応力焼鈍割れ防止を重視する場合、Vの含有を制限する。Vは焼き戻し軟化抵抗性を上げるため初層へのひずみ集中が起こり、応力焼鈍時に割れが発生する場合がある。それを回避するためにV含有量を0.15%以下とする。
なお、上盛層1層目にV含有量の低い溶接材料を使用して当該溶接部のV含有量を0.15%以下にして応力焼鈍割れを回避し、上盛層2層目以降、あるいは少なくとも製品表層部の溶接部はVを添加した溶接材料を使用して当該溶接部のV含有量を0.15〜0.3%にする等、溶接材料を組み合わせて使用することでもよい。その場合、製品表層部の溶接部のCr含有量は、焼き付きを防止するために2.5%以下が望ましい。
【0053】
Ni:0.3%以下
Niの過度の含有は焼戻し脆化を起こす可能性があり、0.3%を上限とする。
【0054】
Nb:0.07%以下
Nbは、一般に応力除去焼鈍時の焼戻し軟化抵抗性を向上させ、室温強度を確保する元素であるが、過度に含有すると靭性が低下し、また溶接性も劣化する可能性があるので、本発明では上限を0.07%に定める。
【0055】
Pcr(n)=(n層目上盛層溶接部中のCr量)×0.65−{(n−1)層目上盛層溶接部中のCr量−n層目上盛層溶接部中のCr量}×0.35>0.7 …(2)
ただし、多層肉盛溶接部がN層で構成されている場合、2≦n≦Nである。
前記規定により、n層目上盛層溶接部中のCr量と(n−1)層目上盛層溶接部中のCr量の差を考慮し、Pcr(n)を0.7を超える値にすることで、各層境界のフェライト生成が抑制される。なお、Pcr(2)は、2層目(1層目は初層溶接部)にある上盛層(上盛層のうち1層目)の計算値であり、この場合(n−1)層目上盛溶接部には、初層溶接部が相当する。なお、上記式中のCr量はいずれも質量%で示される。
【0056】
上盛層溶接部用溶接材料
上記上盛層溶接部を得る溶接材料は、初層上に上盛溶接した際に初層との間で成分の希釈が生じることによる組成変動を考慮して、上記上盛層溶接部組成を得るために規定されたものであり、これにより上記上盛層溶接部の作用効果を発揮することが出来る。
【0057】
具体的には上盛層溶接部用溶接材料は、
質量%で、
C:0.03〜0.2%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜3.0%、
Cr:1.0〜2.5%、
Mo:0.1〜1.5%、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物中で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下、V:0.1%以下に規制し、さらにNi、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上を総和で0.2%以下に規制した組成を有しているのが望ましい。
以下、上記成分について具体的に説明する。
【0058】
C:0.03〜0.2%
本発明で規定する上盛層溶接部の範囲は0.05〜0.2%であり、本発明で規定するC含有量を有する初層溶接部との希釈/融合を考慮すると、上盛層溶接部の成分範囲の上限を超えないために、溶接材料におけるC含有量は下限を0.03%、溶接作業性を考慮すると上限を0.2%とするのが望ましい。
【0059】
Si:0.1〜1.0%
本発明で規定する上盛層溶接部の範囲は0.1〜1.0%であり、本発明で規定するSi含有量を有する初層溶接部との希釈/融合を考慮すると、上盛層溶接部の成分範囲を得るためには溶接材料におけるSi含有量は0.1〜1.0%の範囲が望ましい。
【0060】
Mn:0.3〜3.0%
本発明で規定する上盛層溶接部の請求範囲は0.3〜2.5%であり、本発明で規定するMn含有量を有する初層溶接部との希釈/融合を考慮すると、上盛層溶接部の成分範囲を得るためには溶接材料中のMn含有量は0.3〜3.0%の範囲が望ましい。
【0061】
Cr:1.0%〜2.5%
本発明で規定する上盛層溶接部の請求範囲は1.0〜4.0%であり、本発明で規定するCr含有量を有する初層溶接部との希釈/融合を考慮すると、上盛層溶接部の成分範囲を得るために、溶接材料におけるCr含有量の下限は、前記上盛層溶接部のCr含有量下限を下回らないように1.0%、上限は前記上盛層溶接部のCr含有量上限を超えないように2.5%が望ましい。また、製品表層部となる上盛溶接部のCr含有量は焼き付きを防止するために2.5%以下が望ましく、同様に溶接材料の上限も2.5%が望ましい。
【0062】
Mo:0.5〜1.5%
本発明で規定する上盛層溶接部の範囲は0.5〜1.5%であり、本発明で規定するMo含有量を有する初層溶接部との希釈/融合を考慮すると、上盛層溶接部の成分範囲を得るためには、溶接材料におけるMo含有量は0.5〜1.5%の範囲が望ましい。
【0063】
不純物:P、S、Cu、V、Ni、Nb、Ti、W、Co、B
不純物として、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.2%以下が許容される。これらは、機械的性質や溶接性を悪化させる成分であり、本発明で規定する上盛層溶接部と同じ成分範囲が望ましい。
【0064】
V:0.1%以下
Vは母材からの希釈/融合により初層溶接部には0.2%以下のVが含まれ得る。そのため、本発明で規定する上盛層溶接部のV含有量の範囲0.15%以下を得るためには、溶接材料におけるV含有量は0.1%以下であることが望ましい。
【0065】
Ni、Nb、Tiの一種以上の総和が0.2%以下
Ni、Nbは母材に含まれ得る元素であるが、本発明で規定する上盛層溶接部の範囲であるNi:0.3%以下、Nb:0.07%以下を得るためには、溶接材料におけるNi、Nbの含有量は出来るだけ低い方が望ましい。
またTiは、通常、母材にはほとんど含まれないが溶接部に残留すると非金属介在物の生成を増加させるため、同じく溶接材料における含有量は低い方が望ましい。そのため、Ni、NbおよびTiよりなる群から選択される1種以上の総和は0.2%以下が望ましい。
【0066】
W、Co、Bは母材からの希釈/融合により、初層溶接部にはW:1.5%以下、Co:1.5%以下、B:0.005%以下の範囲で含有され得る。しかし、上盛層溶接部にはこれらの成分を含む必要はなくコスト面から通常の溶接材料の製造方法により不可避的に含まれる範囲内であればよい。
【0067】
なお溶接部の組成は、一般的に溶接される材料が20〜40%程度溶かされ溶接材料と希釈/融合されると言われており、溶接材料はこの希釈/融合を加味して成分を決定しても良い。
【0068】
高Cr鋼製タービンロータ
本願発明では、高Cr鋼製タービンロータを肉盛の対象とするものである。高Cr鋼製タービンロータは高Cr鋼で構成されており、例えば、8〜13%のCrを含有する鋼が例示される。本発明としては、該タービンロータの組成は特定のものに限定されるものでなく、タービンロータに使用可能な高Cr鋼であればよい。
なお、代表的なタービンロータ組成を以下に例示する。
C:0.05〜0.25%、
Si:1.0%以下、
Mn:1.5%以下、
Ni:1.0%以下、
Cr:8〜13%、
Mo:2.0%以下、
V:0.05〜0.4%、
Nb:0.01〜0.1%、
N:0.01〜0.05%、
W:0.05〜5.0%、
Co:0.05〜5.0%、
B:0.015%以下
残部がFeおよびその他の不純物。