特許第5759311号(P5759311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759311
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】単一モータタイプ電動コラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20150716BHJP
   B62D 1/187 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B62D1/181
   B62D1/187
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-185912(P2011-185912)
(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2012-121554(P2012-121554A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0123777
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】511210073
【氏名又は名称】南陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 東 翰
(72)【発明者】
【氏名】尹 祥 圭
(72)【発明者】
【氏名】洪 聖 鍾
(72)【発明者】
【氏名】具 尚 チョル
【審査官】 柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0032121(US,A1)
【文献】 米国特許第06079743(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0161930(US,A1)
【文献】 特開平05−229375(JP,A)
【文献】 特開2005−247020(JP,A)
【文献】 特開2007−090977(JP,A)
【文献】 特開平07−081585(JP,A)
【文献】 特開2009−209776(JP,A)
【文献】 特開昭63−265766(JP,A)
【文献】 特開2008−143229(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/110054(WO,A2)
【文献】 仏国特許出願公開第02881097(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/181
B62D 1/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられたマウンティングブラケットと結合され、ステアリング軸を囲むコラムチューブに取り付けられ、統合モータエンジンコントロールユニット(ECU)によって制御される動力源である1つの統合モータと、
前記コラムチューブに少なくとも1ケ所以上の位置において支持され、前記統合モータに結合された減速器を介して回転すると共に直進移動するムービングロッドと、
前記統合モータエンジンコントロールユニット(ECU)の制御によって、前記ムービングロッドの回転力をチルト動きの直進移動力に転換させるチルトクラッチを備えたチルト機構と、
前記統合モータエンジンコントロールユニット(ECU)の制御によって、前記ムービングロッドの回転力をテレスコーピング動きの直進移動力に転換させるテレスコーピングクラッチを備えたテレスコーピング機構と、
前記チルト機構のチルト動きと前記テレスコーピング機構のテレスコーピング動きを感知して前記統合モータエンジンコントロールユニット(ECU)に伝送するチルト・テレスコーピングセンサと、を含んで構成される単一モータタイプ電動コラム装置であって、
前記チルト機構は、前記チルトクラッチが、前記ムービングロッドが貫通したムービングブロックを収容したブロックハウジングの外部に結合され、前記ブロックハウジングに形成された開口溝に引き込まれて前記ムービングブロックを拘束して直線移動させる、または引き出されて前記ムービングブロックの拘束を解除してその場で回転させるプラグロッドを備え、前記ブロックハウジングは、下端ヒンジ軸によって前記ブロックハウジングとヒンジ固定され、上端ヒンジ軸によって前記マウンティングブラケットとヒンジ固定されたチルトブラケットで構成され、
前記ブロックハウジングの内部には、前記ムービングブロックの左右両側に1対のインナーリングが位置し、前記ブロックハウジングの外側にはアウターリングが位置することを特徴とする単一モータタイプ電動コラム装置。
【請求項2】
前記ムービングロッドは、その全体長さに沿って外周面にスクリューが形成され、前記コラムチューブに結合された支持ブラケットによってその一端部位が支持され、前記コラムチューブを囲むテレスコーピングチューブによってその中間部位が支持されることを特徴とする請求項1に記載の単一モータタイプ電動コラム装置。
【請求項3】
前記テレスコーピング機構は、前記テレスコーピングクラッチが、前記ムービングロッドが貫通したムービングブロックを収容したブロックハウジングの外部に結合され、前記ブロックハウジングに形成された開口溝に引き込まれて前記ムービングブロックを拘束して直線移動させる、または引き出されて前記ムービングブロックの拘束を解除してその場で回転させるプラグロッドを備え、前記ブロックハウジングが、前記コラムチューブによって支持されたテレスコーピングロッドに固定されて移動でき、前記コラムチューブを囲んだテレスコーピングチューブに固定されて移動がガイドされることを特徴とする請求項1に記載の単一モータタイプ電動コラム装置。
【請求項4】
前記ブロックハウジングには、前記テレスコーピングセンサが固定されて設けられることを特徴とする請求項に記載の単一モータタイプ電動コラム装置。
【請求項5】
前記テレスコーピングセンサは、前記ブロックハウジングに固定された移動ノブと、前記移動ノブの位置で前記テレスコーピングチューブと水平に設けられて、前記移動ノブのテレスコーピング動きに応じた位置変化を感知するポテンショメータから構成されることを特徴とする請求項に記載の単一モータタイプ電動コラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動コラム装置に関し、特にチルト(Tilt)とテレスコーピング(Telescoping)の動きを1つのモータで実現した単一モータタイプ電動コラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に電動ステアリング装置であるモーター駆動パワーステアリング〔Motor Driven Power Steering、以降「MDPS」と記す。〕は、油圧を利用せずにモータ動力でステアリングパワーをアシストする方式(例えば、特許文献1、2参照)である。
【0003】
MDPSは、操舵力のアシストのためにモータで回転するウォームシャフト(Worm−Shaft)/ウォームホイール(Worm Wheel)からなる減速器が備えられ、チルトとテレスコーピング動きを各々実現するためのチルトモータとテレスコーピングモータを備えた電動コラム装置が適用されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
MDPSモータは、MDPSエンジンコントロールユニット〔以降、エンジンコントロールユニットを「ECU」と記す。〕で制御され、チルトモータとテレスコーピングモータは、別途のチルト・テレスコーピングECUで制御される。
【0005】
このようなMDPSは、主に小型車両に適用されてきたが、最近では、車両の燃費節減が強く要望されることもあって、小型車両に限らず中型から大型車両にも適用される傾向にある。
【0006】
図8には、MDPSモータと共に、チルトモータとテレスコーピングモータが備えられ、これらを制御するMDPS・ECUとチルト・テレスコーピングECUを備えた電動コラム装置を示している。
図示したように、電動コラム装置は、ステアリング軸(100a)を囲むコラムチューブ(100)に操舵力をアシストするための減速器と共に、MDPSモータ(200)が備えられ、コラムチューブ(100)をチルトアップおよびダウンさせるためのチルト機構と共に、テレスコーピング移送させるためのテレスコーピング機構が備えられている。
【0007】
このチルト機構は、動力源であるチルトモータ(300)と、モータの回転を減速し、トルクを上げる減速ギア(301)と、減速ギア(301)の出力によってチルトブラケット(303)を動かすチルトロッド(302)とから構成される。
【0008】
テレスコーピング機構は、動力源であるテレスコーピングモータ(400)と、モータの回転を減速し、トルクを上げる減速ギア(401)と、減速ギア(401)の出力によってテレスコーピングブラケット(403)を動かすテレスコーピングロッド(402)とから構成される。
【0009】
また、MDPSモータ(200)を制御するMDPS・ECU(210)と共に、チルトモータ(300)およびテレスコーピングモータ(400)を制御するチルト・テレスコーピングECU(500)が備えられ、MDPS・ECU(210)は、MDPS用モータ/角度センサの信号を受け、チルト・テレスコーピングECU(500)は、チルト用モータ/角度センサおよびテレスコーピング用モータ/角度センサの信号を受けるように構成される。
【0010】
しかし、電動コラム装置には、上記のように操舵力アシストのためのMDPSモータ(200)と共に、チルトモータ(300)を備えたチルト機構とテレスコーピングモータ(400)を備えたテレスコーピング機構がそれぞれ別個に備えられており、チルト機構とテレスコーピング機構が作動する構造が複雑となり、特に膝用のエアバックやコラム衝突吸収構造などを電動コラム装置に共に取付けようとすると、それらのパッケージの取付け空間を確保するのが非常に難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−183381号公報
【特許文献2】特開2004−291792号公報
【特許文献3】特開平10−167082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような点を考慮してなされた本発明は、チルト動きの動力源とテレスコーピング動きの動力源を1つのモータに統合することにより、チルト構造とテレスコーピング構造をより単純にし、膝用のエアバックおよびコラム衝突吸収構造のパッケージ取付け空間を確保できる単一モータタイプ電動コラム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するためになされた本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置は、車体に取り付けられたマウンティングブラケットと結合され、ステアリング軸を囲むコラムチューブに取り付けられ、統合モータECUによって制御される動力源である1つの統合モータと、コラムチューブに少なくとも1ケ所以上の位置において支持され、統合モータに結合された減速器を介して回転すると共に直進移動するムービングロッドと、統合モータECUの制御によって、ムービングロッドの回転力をチルト動きの直進移動力に転換させるチルトクラッチを備えたチルト機構と、統合モータECUの制御によって、ムービングロッドの回転力をテレスコーピング動きの直進移動力に転換させるテレスコーピングクラッチを備えたテレスコーピング機構と、チルト機構のチルト動きとテレスコーピング機構のテレスコーピング動きを感知して統合モータECUに伝送するチルト・テレスコーピングセンサと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0014】
ムービングロッドは、その全体長さに沿って外周面にスクリューが形成され、コラムチューブに結合された支持ブラケットによってその一端部位が支持され、コラムチューブを囲むテレスコーピングチューブによってその中間部位が支持される。テレスコーピング機構は、チルト機構の内側に位置する。
【0015】
チルト機構のチルトクラッチが、ムービングロッドが貫通したムービングブロックを収容したブロックハウジングの外部に結合され、ブロックハウジングに形成された開口溝に引き込まれてムービングブロックを拘束して直線移動させる、または引き出されてムービングブロックの拘束を解除してその場で回転させるプラグロッドを備え、ブロックハウジングは、下端ヒンジ軸によってブロックハウジングとヒンジ固定され、上端ヒンジ軸によってマウンティングブラケットとヒンジ固定されたチルトブラケットで構成される。
【0016】
チルトブラケットの内側には、ブロックハウジングに固定され、チルトセンサが設けられる。チルトセンサは、ブロックハウジングに垂直に固定された移動ノブと、移動ノブの位置に水平に設けられて、移動ノブのチルト動きに応じた位置変化を感知するポテンショメータとから構成される
【0017】
テレスコーピング機構のテレスコーピングクラッチが、ムービングロッドが貫通したムービングブロックを収容したブロックハウジングの外部に結合され、ブロックハウジングに形成された開口溝に引き込まれてムービングブロックを拘束して直線移動させる、または引き出されてムービングブロックの拘束を解除してその場で回転させるプラグロッドを備え、ブロックハウジングが、コラムチューブによって支持されたテレスコーピングロッドに固定されて移動でき、コラムチューブを囲んだテレスコーピングチューブに固定される。
【0018】
ブロックハウジングには、テレスコーピングセンサが固定されて設けられる。
テレスコーピングセンサは、ブロックハウジングに垂直に固定された移動ノブと、移動ノブの位置でテレスコーピングチューブと水平に設けられて、移動ノブのテレスコーピング動きに応じた位置変化を感知するポテンショメータから構成される。
【0019】
ブロックハウジングの内部には、ムービングブロックの左右両側に1対のインナーリングが位置し、ブロックハウジングの外側にはアウターリングが位置する。
【発明の効果】
【0020】
このような本発明に係る電動コラム装置は、チルト動きとテレスコーピング動きを実現するための動力源であるモータを統合することによってチルト構造とテレスコーピング構造をより単純にすることができ、膝用のエアバックおよびコラム衝突吸収構造などのパッケージを取付けるのが容易になることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置の構成図である。
図2】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のチルトクラッチおよびテレスコーピングクラッチの構成図である。
図3】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のチルトセンサおよびテレスコーピングセンサの構成図である。
図4】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のチルト作動図である。
図5】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のチルト作動図である。
図6】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のテレスコーピング作動図である。
図7】本発明に係る単一モータタイプ電動コラム装置のテレスコーピング作動図である。
図8】従来の電動コラム装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明の一例であって、当業者であればその他種々の形態で実現することができるものであり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明による単一モータタイプ電動コラム装置の実施形態を示す構成図である。電動コラム装置は、車体に取り付けられたマウンティングブラケット(2)と結合され、ステアリング軸(1a)を囲むコラムチューブ(1)と、MDPSモータECU(3a)によって制御され、コラムチューブ(1)に設けられたMDPSモータ(3)と、統合モータECU(4)によって制御され、ステアリング軸(1a)のチルト動きとテレスコーピング動きの動力を発生し、コラムチューブ(1)に設けられた統合モータ(5)と、統合モータ(5)の回転を減速し、トルク出力を増す減速器(6)と、コラムチューブ(1)の軸線方向に沿って配列され、減速器(6)によって直線移動するムービングロッド(7)を有して構成される。
【0024】
減速器(6)とムービングロッド(7)は、減速器(6)の回転をムービングロッド(7)の前後直線移動に転換させるスクリューおよびナット構造で連結される。そして、ムービングロッド(7)は、その全体長さに沿って外周面にスクリューが形成される。
【0025】
ムービングロッド(7)は、少なくとも1ケ所以上の位置において支持され、このために支持ブラケット(8)が、コラムチューブ(1)に結合され、ムービングロッド(7)の一端部位を支持すると共に、コラムチューブ(1)を囲むテレスコーピングチューブ(30)に一体に形成されたロッド支持端(31)が、ムービングロッド(7)の中間部位を支持している。
【0026】
これと共に、電動コラム装置には、ムービングロッド(7)の直線移動によりチルト動きを実現するようにムービングロッド(7)に結合されたチルト機構(10)と、ムービングロッド(7)の直線移動によりテレスコーピング動きを実現するようにチルト機構(10)の内側においてムービングロッド(7)に結合されたテレスコーピング機構(20)と、チルト機構(10)の動きとテレスコーピング機構(20)の動きを感知してそれぞれ統合モータECU(4)に伝送するチルトセンサ(40)およびテレスコーピングセンサ(50)とから構成される。
【0027】
図2は、本実施形態によるチルト機構とテレスコーピング機構をなすクラッチの内部構成を示している。図2(A)に示したチルト機構(10)は、統合モータECU(4)によって制御され、引き出しおよび引き込まれ可能なプラグロッド(12)を備えたチルトクラッチ(11)と、ムービングロッド(7)が貫通し、プラグロッド(12)が引き出しおよび引き込まれる開口溝(13a)が形成されたブロックハウジング(13)と、ブロックハウジング(13)に収容され、スクリュー結合されたムービングロッド(7)が貫通し、プラグロッド(12)により拘束あるいは拘束解除されるムービングブロック(14)と、コラムチューブ(1)をチルトするようブロックハウジング(13)からマウンティングブラケット(2)に連結されたチルトブラケット(18)とから構成される。
【0028】
ムービングブロック(14)は、チルトクラッチ(11)のプラグロッド(12)によって拘束されなければ、ムービングロッド(7)を介してその場で回転し、プラグロッド(12)によって拘束されれば、ムービングロッド(7)を介して直線移動する。このようなムービングブロック(14)の直線移動によりチルト動きが実現される。
【0029】
また、ブロックハウジング(13)の内部には、ムービングブロック(14)の左右両側に1対のインナーリング(15、16)が位置し、ブロックハウジング(13)の外側にはアウターリング(17)が位置する。
【0030】
チルトブラケット(18)は、図3(A)に示すように、ブロックハウジング(13)の結合部位を下端ヒンジ軸(19a)によってヒンジ固定し、マウンティングブラケット(2)の結合部位を上端ヒンジ軸(19b)によってヒンジ固定する。
【0031】
上記のようにチルトブラケット(18)を2点ヒンジ構造にすることにより、チルト時に下端ヒンジ軸(19a)部位は押されながら回転し、上端ヒンジ軸(19b)部位はチルトブラケット(18)の回転中心として作用する。
【0032】
これにより、チルトブラケット(18)は、上端ヒンジ軸(19b)部位の移動なしに下端ヒンジ軸(19a)部位の移動によってコラムチューブ(1)をチルトさせることができる。
【0033】
チルトアップ(Up)は、チルトブラケット(18)の反時計方向の回転で実現され、チルトダウン(Down)は、チルトブラケット(18)の時計方向の回転で実現される。
【0034】
図2(B)に示したテレスコーピング機構(20)は、統合モータECU(4)によって制御され、引き出しおよび引き込まれ可能なプラグロッド(22)を備えたテレスコーピングクラッチ(21)と、ムービングロッド(7)が貫通し、プラグロッド(22)が引き出しおよび引き込まれる開口溝(23a)が形成されたブロックハウジング(23)と、ブロックハウジング(23)に収容され、スクリュー結合されたムービングロッド(7)が貫通し、プラグロッド(22)により拘束されるか拘束解除されるムービングブロック(24)と、ブロックハウジング(23)に固定され、ブロックハウジング(23)の移動をガイドするテレスコーピングロッド(28)と、テレスコーピング移動するようにブロックハウジング(23)に固定され、コラムチューブ(1)を囲むテレスコーピングチューブ(30)とから構成される。
【0035】
ムービングブロック(24)は、テレスコーピングクラッチ(21)のプラグロッド(22)によって拘束されなければ、ムービングロッド(7)を介してその場で回転し、プラグロッド(22)によって拘束されれば、ムービングロッド(7)を介して直線移動する。このようなムービングブロック(24)の直線移動によりテレスコーピング動きが実現される。
【0036】
また、ブロックハウジング(23)の内部には、ムービングブロック(24)の左右両側に1対のインナーリング(25,26)が位置し、ブロックハウジング(23)の外側にはアウターリング(27)が位置する。
【0037】
本実施形態において、テレスコーピングチューブ(30)は、前述したようにムービングロッド(7)の中間部位を支持するロッド支持端(31)が一体に形成される。
【0038】
図3は、本実施形態による単一モータタイプ電動コラム装置のチルトセンサおよびテレスコーピングセンサの構成を示している。図3(A)に示すように、チルトセンサ(40)は、チルト動きに従うようにチルトブラケット(18)の内側においてブロックハウジング(13)に垂直に固定された移動ノブ(41)と、移動ノブ(41)の位置に水平に設けられて、移動ノブ(41)のチルト動きに応じた位置変化を感知するポテンショメータ(42)とから構成される。この実施形態においては、チルトセンサ(40)は、感知されたチルト動きを統合モータECU(4)に伝送する。
【0039】
図3(B)に示すように、テレスコーピングセンサ(50)は、テレスコーピング動きに従うようにブロックハウジング(23)に垂直に固定された移動ノブ(51)と、移動ノブ(51)の位置に水平に設けられて、移動ノブ(51)のテレスコーピング動きに応じた位置変化を感知するようにたポテンショメータ(52)とから構成される。そして、この実施形態では、テレスコーピングセンサ(50)は、感知されたテレスコーピング動きを統合モータECU(4)に伝送する。
【0040】
図4は、本実施形態による単一モータタイプ電動コラム装置のチルト作動状態を示している。チルトが実現されると、統合モータECU(4)の制御によって駆動された統合モータ(5)の回転は、減速器(6)によって減速された後、ムービングロッド(7)を回転させながら前進移動(チルトアップと仮定する)させる運動に転換される。
【0041】
これと同時に、統合モータECU(4)は、チルト機構(10)のチルトクラッチ(11)とテレスコーピング機構(20)のテレクラッチ(21)をそれぞれ別個に制御することにより、テレスコーピング機構(20)により干渉されないでチルト機構(10)が作動され、チルト動きが実現できる。
すなわち、チルト時には、統合モータECU(4)は、チルトクラッチ(11)のプラグロッド(12)をブロックハウジング(13)の開口溝(13a)に引き込ませるが、テレスコーピングクラッチ(21)のプラグロッド(22)をブロックハウジング(23)の開口溝(23a)から引き出すようにする。
【0042】
これにより、チルト機構(10)のムービングブロック(14)はプラグロッド(12)によって拘束(Ka)されるが、テレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)はプラグロッド(22)から拘束解除(Kb)されることにより、チルト機構(10)のムービングブロック(14)は回転なしにムービングロッド(7)に沿って前進移動し、テレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)はムービングロッド(7)を従う前進移動なしにその場で回転だけをする。
【0043】
上記したようにチルト機構(10)のムービングブロック(14)が前進移動すれば、ムービングブロック(14)の前進移動力はインナーリング(16)を介してブロックハウジング(13)を押す力に転換される。
すなわち、チルトが実現されれば、回転しながら前進移動するムービングロッド(7)に沿ってチルト機構(10)のムービングブロック(14)が前進移動してブロックハウジング(13)を押し、ブロックハウジング(13)が押されることによりチルトブラケット(18)を回転させながら上側に引き上げることによってコラムチューブ(1)のチルトアップを実現する。
【0044】
チルトブラケット(18)のチルトアップ動きは、チルトブラケット(18)の2点ヒンジ構造である下端ヒンジ軸(19a)と上端ヒンジ軸(19b)の作用によって実現される。
すなわち、チルトブラケット(18)がブロックハウジング(13)によって押される力を受けると、チルトブラケット(18)の下端ヒンジ軸(19a)部位は押されながら回転し、上端ヒンジ軸(19b)部位はチルトブラケット(18)の回転中心に作用することにより、チルトブラケット(18)は、上端ヒンジ軸(19b)部位の移動なしに下端ヒンジ軸(19a)部位の移動によってコラムチューブ(1)をチルトアップする。
【0045】
本実施形態においては、統合モータECU(4)による統合モータ(5)の逆回転(チルトアップ時の正回転)によってムービングロッド(7)が逆回転して後退移動することにより、チルトブラケット(18)が時計方向に回転する時にチルトダウン(Down)が実現される。チルトダウン(Down)は、前述したチルトアップ(Up)時とは作動方向が逆であるが、作動過程は同じである。
【0046】
図5は、本実施形態によるチルト時のチルト動きが検出される作動状態を示している。チルトが実現されると、チルト機構(10)において、チルトブラケット(18)を押したり引っ張ったりするようにムービングブロック(14)を介してブロックハウジング(13)が押されるか引っ張られ、このようなブロックハウジング(13)の動きはブロックハウジング(13)に垂直に固定された移動ノブ(41)を同じ方向に移動させる。
【0047】
この移動ノブ(41)の位置変化を伴う動きは、ポテンショメータ(42)に伝えられ、ポテンショメータ(42)は、移動ノブ(41)の位置変化に相応した電気信号を統合モータECU(4)に伝送する。
【0048】
従って、統合モータECU(4)は、チルト動きを正確に認識することができ、これにより、統合モータECU(4)は、大幅に正確度を高めてチルト動きを制御することができる。
【0049】
図6は、本実施形態による単一モータタイプ電動コラム装置のテレスコーピング作動状態を示している。テレスコーピングが実現されると、統合モータECU(4)の制御によって駆動された統合モータ(5)の回転は、減速器(6)によって減速された後、ムービングロッド(7)を回転させながら前進移動(テレスコーピングアップと仮定する)させる運動に転換される。
【0050】
これと同時に、統合モータECU(4)は、チルト機構(10)のチルトクラッチ(11)とテレスコーピング機構(20)のテレスコーピングクラッチ(21)をそれぞれ別個に制御することにより、チルト機構(10)により干渉されないでテレスコーピング機構(20)が作動され、テレスコーピングを実現することができる。
すなわち、テレスコーピング時、統合モータECU(4)は、チルトクラッチ(11)のプラグロッド(12)をブロックハウジング(13)の開口溝(13a)から引き出す反面、テレスコーピングクラッチ(21)のプラグロッド(22)をブロックハウジング(23)の開口溝(23a)に引き込ませる。
【0051】
これにより、テレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)はプラグロッド(22)によって拘束(Kc)されるが、チルト機構(10)のムービングブロック(14)はプラグロッド(12)から拘束解除(Kd)されることにより、テレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)は回転なしにムービングロッド(7)に沿って前進移動する反面、チルト機構(10)のムービングブロック(14)はムービングロッド(7)を従う前進移動なしにその場で回転だけをする。
【0052】
上記のように、テレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)が前進移動すれば、ムービングブロック(24)の前進移動力はインナーリング(26)を介してブロックハウジング(23)を押す力に転換される。
すなわち、テレスコーピングが実現されると、回転しながら前進移動するムービングロッド(7)に沿ってテレスコーピング機構(20)のムービングブロック(24)が前進移動してブロックハウジング(23)を押し、これにより、ブロックハウジング(23)はテレスコーピングロッド(28)に沿って押されると同時にテレスコーピングチューブ(30)を押すようになる。
【0053】
前記のようにテレスコーピングチューブ(30)が押されると、テレスコーピングチューブ(30)で囲まれたコラムチューブ(1)を押してステアリングホイールを運転者側にさらに近接させるテレフォワード(Tele Forward)移動を実現する。
この時、チルト機構(10)は、前述したように、ムービングロッド(7)の前進移動に応じたチルト動きが全く発生しない。
【0054】
本実施形態においては、統合モータECU(4)による統合モータ(5)の逆回転(テレフォワード時の正回転)によってムービングロッド(7)が逆回転して後退移動することにより、テレスコーピングチューブ(30)が引っ張られる時にテレバックワード(Tele Backward)が実現される。テレバックワードは、前述したテレフォワード時とは作動方向が逆であるが、作動過程は同じである。
【0055】
図7は、本実施形態によるテレスコーピング時にテレスコーピング動きが検出される作動状態を示すものであり、テレスコーピングが実現されると、テレスコーピング機構(20)において、テレスコーピングチューブ(30)を押したり引っ張ったりするようにムービングブロック(24)を介してブロックハウジング(23)が押されるか引っ張られ、このようなブロックハウジング(23)の動きは、ブロックハウジング(23)に垂直に固定された移動ノブ(51)を同じ方向に移動させる。
【0056】
移動ノブ(51)の位置変化を伴う動きは、ポテンショメータ(52)に伝えられ、ポテンショメータ(52)は、移動ノブ(51)の位置変化に相応した電気信号を統合モータECU(4)に伝送する。
従って、統合モータECU(4)は進行しているテレスコーピング動き正確に認識することができ、これにより、統合モータECU(4)はテレスコーピング動きの正確度を大幅に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明による電動コラム装置は、1つの統合モータ(5)を介して移動するムービングロッド(7)の回転力をチルト動きのための直進移動力に転換させるチルトクラッチ(11)を備えたチルト機構(10)と、ムービングロッド(7)の回転力をテレスコーピング動きのための直進移動力に転換させるテレスコーピングクラッチ(21)を備えたテレスコーピング機構(20)とから構成しており、1つの統合モータ(5)により単純化した構成で、膝用のエアバックおよびコラム衝突吸収構造などのパッケージの取付け場所の確保が容易となる。
【0058】
また、本発明による電動コラム装置は、チルト動きとテレスコーピング動きを感知して統合モータECU(4)に伝送するポテンショメータ(42,52)が備えられることにより、チルト動きとテレスコーピング動きの正確度が高くなり、信頼性を大きく向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1;コラムチューブ
1a;ステアリング軸
2;マウンティングブラケット
3;MDPSモータ
3a;MDPSモータECU
4;統合モータECU
5;統合モータ
6;減速器
7;ムービングロッド
8;支持ブラケット
10;チルト機構
11;チルトクラッチ
12;(チルト機構の)プラグロッド
13;(チルト機構の)ブロックハウジング
13a、(チルト機構のブロックハウジングに設けられた)開口溝
14;(チルト機構の)ムービングブロック
15、16;(チルト機構の)インナーリング
17;(チルト機構の)アウターリング
18;チルトブラケット
19a;下端ヒンジ軸
19b;上端ヒンジ軸
20;テレスコーピング機構
21;テレスコーピングクラッチ
22;(テレスコーピング機構の)プラグロッド
23;(テレスコーピング機構の)ブロックハウジング
23a;(テレスコーピング機構のブロックハウジングに設けられた)開口溝
24;(テレスコーピング機構の)ムービングブロック
25、26;(テレスコーピング機構の)インナーリング
27;(テレスコーピング機構の)アウターリング
28;テレスコーピングロッド
30;テレスコーピングチューブ
31;ロッド支持端
40;チルトセンサ
41;(チルトセンサの)移動ノブ
42(チルトセンサの)ポテンショメータ
50;テレスコーピングセンサ
51;(テレスコーピングセンサの)移動ノブ
52;(チルトセンサの)ポテンショメータ
100;コラムチューブ
100a;ステアリング軸
200;MDPSモータ
210;MDPS・ECU
300;チルトモータ
301;(チルトモータの)減速ギア
302;チルトロッド
303;チルトブラケット
400;テレスコーピングモータ
401;(テレスコーピングモータの)減速ギア
402;テレスコーピングロッド
403;テレスコーピングブラケット
500;チルト・テレスコーピングECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8