(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1には、第1の実施形態に係る基板処理装置20の平面図が示されている。
図2には、基板処理装置20の正面図が示されている。
【0019】
なお、以下の説明においては、方向及び向きを示す際に、適宜図中に示すXYZ直交座標を用いる。ここで、X軸及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向(+Z側が上側、−Z側が下側)を示す。また、便宜上、Y軸方向を基板の搬送方向(+Y側が下流側、−Y側が上流側)とし、X軸方向を主走査方向(+X側、−X側)とする。
【0020】
基板処理装置20は、基板Sに対して処理液として塗布液を塗布する装置である。基板Sとしては、方形状の基板、例えば、平面表示装置用のガラス基板等が想定される。また、塗布液としては、基板Sに形成すべきパターン等の形成材料、例えば、有機EL表示装置の製造を想定した場合には、有機EL材料及びその溶媒等を含む液等が想定される。
【0021】
この基板処理装置20は、基板Sを保持する基板保持部30と、主走査機構40と、塗布液を吐出する吐出部50と、基板保持部30の外側に形成された一対の側壁部60と、を主に備えている。
【0022】
基板保持部30は、基板Sを略水平姿勢で保持可能に構成されている。ここでは、基板保持部30は、その主面を所定高さ位置で上向き略水平姿勢に配設したステージ32を有している。ステージ32の上面には複数の図示しない吸引孔が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、ステージ32上に載置された基板Sは水平姿勢に固定保持される。基板保持部は、その他、基板の周囲を把持することで当該基板を保持する構成であってもよい。なお、基板Sの主走査方向における端縁部S1,S2は、ステージ32の主走査方向における端縁部32a,32bよりも外側にはみ出している。
【0023】
また、基板保持部30の下方には、吐出部50に対して基板SをY方向(副走査方向)に沿って相対移動させる基板移動機構34が設けられている。ここでは、基板移動機構34は、上方にステージ32を支持する台部36と、一対のスライド受部37とを有している。スライド受部37は、台部36の下端部に設けられ、Y方向に沿って延びる一対の副走査方向ガイド部39上をスライド移動可能に構成されている。そして、リニアモータ等の基板移動駆動部(図示省略)からの駆動力を受けることで、基板移動機構34が、上記ステージ32及び基板Sと共に、Y方向に沿って移動する構成とされている。なお、基板SをY方向に沿って移動させる代りに、主走査機構40及び吐出部50を、基板Sに対してY方向に沿って移動させる構成であってもよい。このステージ32は、基板移動機構34に対して鉛直軸周りに回転駆動可能に構成されており、基板のアライメント調整などに利用される。
【0024】
主走査機構40は、主走査機構ガイド部42と、主走査機構ガイド部42に沿って移動するスライダ44とを有している。主走査機構ガイド部42は、基板Sの上方位置で、基板Sに対して略平行な主走査方向(X方向)に沿って延びる長尺状部材に形成されている。スライダ44は、主走査機構ガイド部42を挿通配置可能な内部空間を有する部材であり、当該主走査機構ガイド部42によってX方向に沿って移動可能に支持されている。スライダ44の外形状は、略直方体状に形成されている。
【0025】
スライダ44の内部には、主走査機構ガイド部42の外周面を、間隔を有して取り囲むことが可能な図示しない内部空間が形成されている。後述するエア供給源86からエア配管80aを介して供給されるエアの一部は、スライダ44の内周面に向けて吐出される。これによって、スライダ44は、主走査機構ガイド部42の外周面との間にエア層を介在させた状態で、X方向に沿って移動可能に支持された状態となる。
【0026】
なお、本実施形態では、スライダ44が移動部に相当する。移動部は、スライダに限られず、主走査機構ガイド部42に沿って移動可能な部材であればよい。なお、スライダは、主走査機構ガイド部に対してエア層を介在させた状態で移動自在に支持されている必要はない。例えば、スライダは、長尺状の主走査機構ガイド部に対して、他の低摩擦部材、転動体等を介して接触した状態で、移動自在に支持される構成であってもよい。
【0027】
また、ここでは、主走査機構ガイド部42の上方に、カウンタ用ガイド部46及びカウンタ用スライダ48が設けられている。
【0028】
カウンタ用ガイド部46は、X方向に沿って延びる長尺棒状部材に形成されている。カウンタ用スライダ48は、カウンタ用ガイド部46を挿通配置可能な内部空間を有する部材であり、当該カウンタ用ガイド部46によってX方向に沿って移動可能に支持されている。
【0029】
ここでは、カウンタ用ガイド部46は、略丸棒状に形成され、上記主走査機構ガイド部42の上方に略平行状態で2本設けられている。また、カウンタ用スライダ48の内部には、各カウンタ用ガイド部46の外周面を、間隔を有して取り囲むことが可能な図示しない内部空間が形成されている。後述するエア供給源86からエア配管80aを介して供給されるエアの一部は、カウンタ用スライダ48の内周面に向けて吐出される。これによって、カウンタ用スライダ48は、カウンタ用ガイド部46の外周面との間にエア層を介在させた状態で、X方向に沿って移動可能に支持された状態となる。
【0030】
なお、ここで、カウンタ用スライダがカウンタ用ガイド部に対して移動可能に支持される構成は、上記主走査機構40に関して述べたのと同様、種々構成を採用し得る。つまり、カウンタ用スライダは、上記のようにカウンタ用ガイド部に対してエア層を介在させた状態で移動自在に支持されている必要はない。例えば、カウンタ用スライダは、長尺状のカウンタ用ガイド部に対して、他の低摩擦部材、転動体等を介して接触した状態で、移動自在に支持される構成であってもよい。
【0031】
吐出部50は、上記スライダ44によって主走査方向に沿って移動可能に支持されるとともに、基板Sに対して塗布液を吐出可能に構成されている。特に、本実施形態における吐出部50は、主走査方向に沿って、基板Sの存在域ERを挟むようにして設定された一対の移動端の間の区間で、スライダ44の移動に伴って主走査方向に沿って移動可能である。ここでは、吐出部50は、ノズル支持部52と少なくとも一つのノズル54とを有している。
図1では、図示の都合上、ノズル54が3つ設けられているものとする。
【0032】
ノズル支持部52は、スライダ44の一側面に取付けられる基端部52aと、基端部52aの下端部より外方に向けて延出するノズル取付板部52bとを有している。そして、複数のノズル54が、X方向及びY方向に位置をずらしつつ、ノズル取付板部52bに取付固定されている。各ノズル54は、それぞれ塗布液を吐出可能な吐出口を有しており、当該吐出口をノズル取付板部52bの下向きにした姿勢で、ノズル取付板部52bに固定されている。そして、上記スライダ44をX方向に移動させつつ、各ノズル54から塗布液を吐出することで、当該塗布液がステージ32上に載置された基板Sに塗布されるようになっている。
【0033】
なお、上記スライダ44のうち吐出部50に対して反対側の側部に、ノズルカウンタ44Cが設けられている。
【0034】
一対の側壁部60は板状の部材であり、樹脂などの材料で構成されている。この一対の側壁部60は、ステージ32に載置された基板Sの端縁部S1を構成する側面Ss1及び端縁部S2を構成する側面Ss2よりも主走査方向外側にそれぞれ形成されている。以下において、基板Sの側面Ss1よりも(−X)側に形成された側壁部60を側壁部60a、基板Sの側面Ss2よりも(+X)側に形成された側壁部60を側壁部60b、側壁部60a,60bを総称した場合に側壁部60と称するものとする。
【0035】
さらに、以下において、側壁部60aを構成する各面のうち、(−X)側の側面を外側側面601a、ステージ32側の側面を内側側面602a、Z方向における上端部の面を上端面603aと称する。また、側壁部60bを構成する各面のうち、(+X)側の側面を外側側面601b、ステージ32側の側面を内側側面602b、Z方向における上端部の面を上端面603bと称する。
【0036】
この側壁部60は、主走査方向に直交する方向、すなわちY方向に沿うようにして配設されている。つまり、内側側面602a,602bは基板Sの側面Ss1,Ss2にそれぞれ対向している。また、側壁部60のY方向の長さは、ノズル54を支持するスライダ44が一の方向に走査することにより基板S上に形成される塗布液の領域の幅(Y方向の長さ)よりも大きくなるように構成されている。そして、側壁部60のY方向における配置位置は、スライダ44によって走査移動するノズル54の直下に相当する位置である。
【0037】
この主走査方向における側壁部60の外側に、主走査機構ガイド部42に沿って移動するスライダ44、及びスライダ44に支持された吐出部50の移動停止位置SP1,SP2が設定されている。具体的には、移動停止位置SP1は、スライダ44に支持された吐出部50の主走査の移動経路のうち、側壁部60aよりも(−X)側に位置しており、移動停止位置SP2は、側壁部60bよりも(+X)側に位置している。換言すれば、移動停止位置SP1,SP2は、主走査方向について基板Sの存在域ERを挟むように設定された一対の移動端である。
【0038】
この移動停止位置SP1,SP2は、一の方向に向かうスライダ44及びスライダ44に支持された吐出部50の主走査の開始位置と終了位置とに相当する。なお、一の方向は、主走査が行われる度に切り替わるため、移動停止位置SP1,SP2各々は開始位置と終了位置とを交互に担うことになる。ここでは、側壁部60a,60bは、主走査方向における基板Sの両側面Ss1,Ss2と、主走査方向における基板Sの外側に設定された移動停止位置SP1,SP2との間に形成されている。従って、スライダ44の走査移動に伴って移動するノズル54は、必ず一方の側壁部60を走査してから基板Sを走査することになる。
【0039】
具体的に、本実施形態では、基板Sへの塗布液の塗布処理が開始されると、ノズル54から塗布液が吐出された状態のスライダ44が、移動停止位置SP1から(+X)方向に移動し、側壁部60a、基板S、そして側壁部60bを走査してから移動停止位置SP2に到達する。移動停止位置SP2に到達したスライダ44は、一旦停止し、基板Sが搬送方向に沿って所定距離だけ搬送される間、待機した後に、(−X)方向に向けて主走査を開始する。つまり、スライダ44は(−X)方向に向けて、側壁部60b、基板S、そして側壁部60aを走査し、移動停止位置SP1で停止する。このような走査移動が繰り返し行われることによって、ノズル54から吐出された塗布液が基板S上に塗布領域を形成する。
【0040】
この側壁部60aの内側側面602aと基板Sの側面Ss1との間、側壁部60bの内側側面602bと基板Sの側面Ss2との間にはそれぞれ所定の間隔H1,H2が設けられている。この間隔H1,H2は、例えば基板保持部30に保持された基板Sのアライメント調整が行われるスペースなどに活用される。
【0041】
この間隔H1,H2が設けられている場合、側壁部60aの上端面603a及び側壁部60bの上端面603bは、塗布液が塗布される基板Sの主面Smよりも上方に位置するように構成される。この上端面603aと主面Smとの距離L1は間隔H1に基づいて設定される。また、上端面603bと主面Smとの距離L2は間隔H2に基づいて設定される。
【0042】
具体的には、間隔H1,H2が大きくなる場合には、距離L1,L2は大きく設定される必要がある。従って、側壁部60aの上端面603a、側壁部60bの上端面603bがより上方に位置するように側壁部60a,60bが形成される。一方、間隔H1,H2が小さくなる場合には、距離L1,L2は小さく設定される必要がある。従って、側壁部60aの上端面603a、側壁部60bの上端面603bが基板Sの主面Smに、より近づくように側壁部60a,60bは形成される。
【0043】
定量的には、間隔H1,H2と距離L1,L2とは、吐出部50からの塗布液の流下速度をU、主走査時の吐出部50の水平移動速度をVとしたとき、おおむね、
L1:(H1+ΔH)=L2:(H2+ΔH)=U:V …(式1)
の条件を満たすように決定しておく。このうち、ΔH(図示せず)は、基板Sの主面のうち側面Ss1,Ss2から基板Sの中心側に向けて計ったマージン幅であり、このマージン幅の領域には塗布液が塗布されなくてもかまわないとされる幅である。
【0044】
上記の式1は、重力加速度や空気抵抗などを考慮せずに、塗布液が等速で斜め落下するという近似で得られる条件式ではあるが、装置のフットプリントを減少させる目的で、間隔H1,H2は可能な限り小さな値とすることが好ましいため、間隔H1,H2は比較的短い距離とされる。したがって、等速条件での近似で得られる式1でも、おおよその評価は可能である。微調整は実験的に行えばよい。
【0045】
なお、側壁部60と基板Sとが接触した状態、つまり側壁部60aの内側側面602aと基板Sの側面Ss1との間、及び側壁部60bの内側側面602bと基板Sの側面Ss2との間に隙間が形成されていない場合には、距離L1,L2についても設定される必要はない。つまり、側壁部60a,60bの上端面603a,603bは、基板Sの主面Smと同等の高さ位置に形成されていればよい。また、この実施形態のように吐出部50が主走査方向(水平方向)に移動するだけの自由度を持つ場合には、吐出部50と側壁部60a,60bとが干渉しないように、上端面603a,603bは、吐出部50の設置高さよりも低い高さとされる。吐出部50が上方に待避する自由度も持つ場合には、上端面603a,603bが吐出部50の主走査の移動経路よりも若干高くても、側壁部60a,60bの付近で吐出部50の上方に待避させることによって干渉を防ぐことが可能である。
【0046】
このような側壁部60は、それぞれ受液部63の内部に固定設置されている。つまり、受液部63は、側壁部60aが設置されている受液部63aと、側壁部60bが設置されている受液部63bと、を備える。以下において、受液部63aと受液部63bとを総称する場合には受液部63と称するものとする。
【0047】
受液部63は、上面が開放された槽形状を有しており、平面視で矩形状である。この受液部63の内部には、吸着材631が充たされている。従って、塗布液のうち側壁部60に付着、すなわち捕集され、側壁部60に沿って流下した塗布液は、この受液部63内に収集され、吸着材631に吸着される。このような吸着材631には、例えばポリプロピレン繊維等の吸蔵型の有機系油吸着材(吸油性ポリマー)が用いられる。なお、受液部63の内部は必ずしも吸着材631に充たされていなくても構わない。
【0048】
この受液部63のステージ32側の側面とステージ32の側面との間には、主走査方向に沿って所定の隙間が形成されている。そして、受液部63は、ステージ32の側面から一部がはみ出すように載置された基板Sの端縁部S1,S2に対して、平面視で重なるようにして設置されている。つまり、ステージ32の側面からはみ出している部分の基板Sの下面よりも下方に受液部63の側端部が位置している。従って、基板Sの側面Ss1,Ss2の直下には、受液部63の上面が位置している。
【0049】
また、ステージ32からはみ出している基板Sの部分の下面と、受液部63の上面との間には所定の隙間が設けられている。つまり、ステージ32の主面と受液部63の上面との間には間隔が設けられている。このため、基板Sが搬送される際に、受液部63が基板Sに干渉することを抑えられる。
【0050】
また、受液部63の側面のうち、ステージ32側の側面に対向する側面は、移動停止位置SP1よりも(−X)方向の外側、移動停止位置SP2よりも(+X)方向の外側にそれぞれ配置されている。従って、スライダ44に支持された吐出部50が基板Sの存在域ER以外の範囲を走査する際に、ノズル54から吐出される塗布液は確実に受液部63内に流下する。
【0051】
この受液部63の底面には、排出配管64が流路接続されている。側壁部60に付着した塗布液は、受液部63の吸着材631に吸着され、排出配管64を介して装置外部に設置された図示しない排液タンクに排出される。換言すれば、受液部63は、側壁部60に付設されて、この側壁部60で捕集された塗布液部分を捕集する捕集部となっている。
【0052】
なお、排出配管64には、吸引機構300が設けられている。吸引機構300には、例えばファン、ブロワなどの送風機、真空モータなどが使用可能である。この吸引機構300が駆動することによって、吸着材631に吸着された塗布液は吸引され、排出配管64を流れて、受液部63外に排出される。
【0053】
また、この受液部63には移動機構350が設けられている。移動機構350としては、例えばエアシリンダ、又はモータなどが使用される。受液部63は、この移動機構350の動作によって、主走査方向に沿って移動可能である。従って、基板Sのサイズに応じて、より具体的にはステージ32からはみ出す基板Sの部分の長さに応じて、基板Sの側面Ss1,Ss2が確実に受液部63の直下に位置するように、移動機構350が受液部63の位置調整を行う。
【0054】
配管80は、エア配管80aと、塗布液配管80bとを含んでいる。各配管80a、80bは、エア又は塗布液の送り方向上流側でエア供給源86或は塗布液供給源88に接続されるとともに、本基板処理装置20の上方で吊すように支持されている。以下の説明において、両配管を区別する場合には、エア配管80a或は塗布液配管80bといい、総称する場合には配管80という場合がある。
【0055】
エア配管80aは、エア供給源86からのエアを導く、可撓性を有する樹脂などの管によって構成されており、ここでは、1つのエア配管80aを有している。エア配管80aの一端部はエア供給源86に接続されている。また、エア配管80aの他端部はスライダ44にエア供給可能に接続されている。
【0056】
塗布液配管80bは、塗布液供給源88からの塗布液を導く、可撓性を有する樹脂などの管によって構成されており、ノズル54と同数設けられている。各塗布液配管80bの一端部はそれぞれ塗布液供給源88に接続されており、他端部はそれぞれノズル54に塗布液を供給可能に接続されている。
【0057】
この基板処理装置20は、X方向に沿って、スライダ44を駆動させるスライダ駆動機構72を備えている。
【0058】
スライダ駆動機構72は、主走査機構ガイド部42の両端部に設けられた一対のプーリ体73、73と、一対のプーリ体73、73に巻掛けられた駆動ベルト74と、一方のプーリ体73を正逆両方向に回転駆動可能なモータ75とを有している。一対のプーリ体73、73間を走行する2経路の駆動ベルト74のうち一方側(下側)には、上記スライダ44が連結固定されている。また、一対のプーリ体73、73間を走行する2経路の駆動ベルト74のうち他方側(上側)には、上記カウンタ用スライダ48が連結固定されている。なお、カウンタ用スライダ48は、スライダ44の往復移動範囲の中央位置(通常は、一対のプーリ体73、73の中央位置)を挟んでスライダ44と略対称位置に配設されるように、駆動ベルト74に連結固定されている。そして、回転方向及び回転速度、回転量等を制御しつつモータ75を回転駆動することで、スライダ44及び吐出部50がX方向に沿って往復移動駆動される。また、この際、カウンタ用スライダ48は、スライダ44に対して、一対のプーリ体73、73の中央位置を挟んで対称位置を保ちつつ、X方向に沿って往復移動するようになっている。
【0059】
ハードウェアとしての構成は、一般的なコンピュータと同様である。即ち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるRОM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェア、又はデータなどを記憶しておく磁気ディスク、キーボード及びマウスなどの入力部をバスラインに接続して構成されている。このような制御部90に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って基板処理装置20の動作制御が行われる。バスラインには、塗布液供給源88、エア供給源86、モータ75が接続されている。制御部90は、エア供給源86にエアを供給させ、これと共に、塗布液供給源88に塗布液を供給させた状態、つまり各ノズル54から塗布液を吐出させた状態で、モータ75を駆動制御してスライダ44を移動させる処理を行うように構成されている。
【0060】
以下において、このような基板処理装置20を用いた処理の流れについて説明する。
図3には、処理の流れを表すフローチャートが示されている。また、
図4には基板処理装置20の主要部の状態の遷移が示されている。
【0061】
はじめに、前工程にて処理が施された基板Sが基板保持部30のステージ32上に保持された状態で搬送され、塗布処理が実施される塗布位置に配置される(ステップS1)。制御部90は塗布液供給源88に信号を送信し、塗布液Lnの供給を開始させる。これによって、ノズル54から塗布液Lnが吐出され、塗布液Lnの液柱が形成される(ステップS2、ステートST1)。なお、塗布処理が開始されるまでの間に、基板Sのアライメント調整、又はノズル54の位置調整などが行われてもよい。
【0062】
制御部90は、主走査機構40の駆動機構であるモータ75に信号を送信する。これによって、移動停止位置SP1で停止していたスライダ44は、ノズル54から塗布液Lnが吐出された状態を維持しつつ、(+X)方向に向けて主走査を開始する。
【0063】
はじめに、スライダ44は一方の側壁部60aを走査する。ノズル54から吐出されている塗布液Lnの液柱が、側壁部60aの外側側面601a及び上端面603aに接触し、塗布液Lnが側壁部60aの外側側面601aと上端面603aとに塗布される(ステップS3)。
【0064】
そして、スライダ44は、側壁部60aの内側側面602aと基板Sの側面Ss1との間を走査してから基板Sの端縁部S1上に到達する(ステートST2)。このとき、塗布液Lnが上端面603aから基板Sの主面Sm上に鉛直方向に沿って流下する間に、スライダ44に支持されるとともに上端面603aの上方に位置していた吐出部50は、(+X)方向に移動し、基板Sの端縁部S1の上方に到達する。換言すれば、塗布液Lnの液柱が基板Sの側面Ss1の側方に達するまでの間に、吐出部50は基板Sの上方に移動している。従って、塗布液Lnの液柱が基板Sの側面Ss1に接触することはないため、基板Sの側面Ss1に塗布液Lnが付着することを抑制できる。このように、塗布液Lnの液柱は、側壁部60aの外側側面601a及び上端面603aに遮られ、当該部分で塗布液Lnが捕集される。側壁部60aで捕集された塗布液は、側壁部60aの表面を流下して、受液部63a内の吸着材631に吸着される。
【0065】
基板Sの端縁部S1に到達したスライダ44は基板S上を走査移動する。これによって、基板Sの主面Smに塗布液Lnが吐出され、基板S上に塗布液Lnの塗布領域が形成される(ステップS4、ステートST3)。
【0066】
そして、スライダ44は、基板Sの端縁部S2から他方の側壁部60bに走査移動し、折返し位置である移動停止位置SP2で一旦停止する(ステートST4)。このとき、塗布液Lnの液柱は基板Sの側壁部60b側の側面Ss2に接触することはないため、側壁部60b側の基板Sの側面Ss2に塗布液が付着することを抑制できる。基板Sの主面Smよりも側壁部60bの上端面603bは上方に位置しているため、塗布液Lnの液柱は、側壁部60bの内側側面602b及び上端面603bに付着し、当該部分で塗布液Lnが捕集される(ステップS5)。側壁部60bで捕集された塗布液は、側壁部60bの表面を流下して、受液部63b内の吸着材631に吸着される。
【0067】
塗布処理を続けるか否かが制御部90によって判断される(ステップS6)。塗布処理を続行する場合には、スライダ44が移動停止位置SP2で一旦停止する間に、基板Sは所定距離だけ搬送される(ステップS7)。これによって、塗布液Lnの塗布領域が未形成の領域がノズル54の移動範囲の下方に配置される。
【0068】
そして、スライダ44は(−X)方向に向けて走査移動を開始する。スライダ44は側壁部60bを走査するため、ノズル54から吐出された塗布液は側壁部60bで遮られ、この側壁部60bで捕集される(ステップS8)。続いて、スライダ44は基板Sを走査し、ノズル54から吐出された塗布液Lnは基板Sに塗布領域を形成する(ステップS9)。その後、スライダ44は、側壁部60aを走査し、ノズル54から吐出された塗布液Lnは側壁部60aに付着し、捕集される(ステップS10)。そして、スライダ44は折返し位置(移動停止位置SP1)で停止する。このような(−X)方向へのスライダ44の走査移動によって、上述の(+X)方向へのスライダ44の走査移動時とは反対向きに同様の作用が生じるため、基板Sの側面Ss1,Ss2に塗布液Lnが付着することを抑制できる。
【0069】
塗布処理を続けるか否かが制御部90によって判断される(ステップS11)。塗布処理を続行する場合には、スライダ44が折返し位置で一旦停止する間に、基板Sは所定距離だけ搬送される(ステップS12)。そして、再び(+X)方向へのスライダ44の走査移動が実施される。
【0070】
以上のように、基板処理装置20では、側壁部60a,60bが主走査方向における基板Sの存在域ER(具体的には存在域ERを規定する基板Sの側面Ss1,Ss2)と、主走査方向における基板Sの側面Ss1,Ss2外側に設定されたスライダ44の移動停止位置SP1,SP2と、の間のそれぞれの空間に設置されている。このため、スライダ44によって主走査方向に沿って移動する吐出部50は、側壁部60a、又は側壁部60bに塗布液を吐出した後で基板Sに塗布液を吐出することになる。つまり、側壁部60a,60bが基板Sの側面Ss1,Ss2に向かう塗布液を遮るため、基板Sの側面Ss1,Ss2に塗布液が付着することを抑制できる。
【0071】
従って、基板の側面に付着した塗布液が乾燥し、基板処理装置の内部でパーティクルとして飛散することを抑制できる。また、側面に塗布液が付着した状態の基板が搬送されることによって、周囲の装置に塗布液を飛散させて汚染を引き起こすことを抑制できる。
【0072】
また、側壁部60a,60bと基板Sとの間には所定の間隔H1,H2が設けられており、側壁部60a,60bの上端面603a,603bと基板Sの主面Smとの距離L1,L2はその間隔H1,H2に応じて設定される。このため、側壁部60a,60bと基板Sとの間にスペースが形成されている場合であっても、基板Sの側面Ss1,Ss2に塗布液が付着することをを抑制できる。
【0073】
<第2の実施形態>
図5には、第2の実施形態に係る基板処理装置20bの主要部に関する概略正面図が示されている。第2の実施形態に係る基板処理装置20bでは、一対の側壁部65,65が多孔質材料で形成されている。多孔質材料として、例えば樹脂、又はセラミックなどを加工した加工部材を採用することが可能である。また、特定の基材を芯材として、当該基材の周囲が不織布のような柔性を有する多孔質材料で覆われた部材が採用されても構わない。
【0074】
このような構成の側壁部65が使用されることによって、側壁部65の外側の面に塗布された塗布液は、側壁部65に複数形成された孔の部分を介して側壁部65の内部に染みこむ。従って、塗布液が側壁部65の外側部分に塗布された状態が維持されることはない。このため、乾燥した処理液が基板処理装置20bの内部にパーティクルとして飛散することを抑制できる。
【0075】
特に、側壁部65の側面650a,650bに付着した塗布液は重力によって下方に流下するため、側壁部65に付着した状態は元々維持されにくい。しかしながら、側壁部65の上端面650cに付着した塗布液はそのままの状態で維持されやすい。従って、側壁部65は、少なくともその上端面650cを含む上部が多孔質材料で形成されていることが望ましい。
【0076】
本実施形態では上述のように、塗布液の吸引機構300が排出配管64に接続されている。このため側壁部65に付着した塗布液は、吸引機構300の駆動により効果的に吸引される。吸引機構300については、上記同様の構成が採用可能である。吸引機構300によって形成される吸引圧力が、側壁部60bの外側の部分に付着した塗布液をより内部に染みこませるため、側壁部65の外側の面に塗布液が残存した状態は速やかに解消される。側壁部65の内部に染みこんだ塗布液は、側壁部65の下端から吸着材631、そして排出配管64に流れ出る。従って、乾燥した処理液が基板処理装置20bの内部にパーティクルとして飛散することをより確実に抑制できる。
【0077】
なお、吸引機構300は、受液部63から延び出た排出配管64ではなく、側壁部65に直接接続された配管に設置されていてもよい。つまり、吸引機構300が駆動することによって、側壁部65の内部に吸引された塗布液が、側壁部65に直接接続された配管を介して装置外部に排出される構成であってもよい。この場合、吸引機構300が側壁部65で捕集された塗布液部分を捕集する捕集部として機能する。
【0078】
なお、上述の吸引機構300とは別個の吸引機構が側壁部65の下面に接続されている構成であってもよい。
【0079】
<第3の実施形態>
図6には、第3の実施形態に係る基板処理装置の主要部の処理の様子を示す平面図が示されている。第3の実施形態では、一対の側壁部69a,69bが、樹脂などの弾性材料で形成されているとともに、基板Sの側面Ss1,Ss2を挟み込む方向に側壁部69a,69b各々を移動させる駆動機構150を備える。駆動機構150は制御部90に対して電気的に接続されており、制御部90からの信号により駆動可能である。駆動機構150は、例えばエアシリンダ、又はモータなど種々の部材を使用することが可能である。また、
図6に示されるように、側壁部69a,69bは、平面視で円孤形状に形成されている。
【0080】
このため、
図6の一点鎖線で示されるように、斜め方向を向いて搬送されてきた基板Sの側面Ss1,Ss2は、側壁部69a,69bの内側側面609a,609bによって挟み込まれ、
図6の実線で示されるように、搬送方向に沿う姿勢に配置される。
【0081】
側壁部69a,69bにより基板Sが挟み込まれた状態で、第1の実施形態と同様にスライダ44による走査移動が行われる。このとき、スライダ44は、側壁部69a,69bが基板Sの端縁部S1,S2に接触している箇所の上方を移動し、ノズル54は基板S上に塗布液を吐出する。この場合、基板Sの側面Ss1,Ss2は、側壁部69a,69bに接触しているため、基板Sの側面Ss1,Ss2に塗布液が付着することは確実に抑制できる。また、側壁部69a,69bの上端高さを、基板Sの主面とほぼ同じ高さにすることができる。
【0082】
また、側壁部69a,69bは、弾性材料で形成されているため、側壁部69a,69bが基板Sを挟み込んでいる状態であっても、基板Sは搬送方向に沿って移動可能である。従って、側壁部69a,69bが基板Sを挟み込んだ状態が維持されながら、塗布液を主走査方向に沿って繰り返し基板S上に塗布させることが可能となる。
【0083】
このように、第3の実施形態に係る基板処理装置では、側壁部69a,69bが基板Sの側面Ss1,Ss2に接触した状態でスライダ44の走査移動を行うことが可能であるため、基板Sの側面Ss1,Ss2に塗布液が付着することを確実に抑制できる。
【0084】
<変形例>
以下において、変形例について説明する。
【0085】
スライダが基板の搬送方向に沿って移動可能な機構を有していてもよい。この場合、固定設置された基板に対して、搬送方向及び主走査方向にスライダが移動し、その結果ノズルから吐出された塗布液が基板の領域に塗布される。このとき側壁部は、基板の側面全体と同等の長さを有する。そして、受液部も搬送方向における基板の長さよりも長くなるように形成される。
【0086】
また、この発明は、一般に、塗布液のみならず、略水平姿勢の基板に処理液を付与する基板処理装置および基板処理方法に適用可能である。