特許第5759342号(P5759342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759342
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ハンマードリル
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/14 20060101AFI20150716BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B25D17/14
   B25D16/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-251832(P2011-251832)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2013-107142(P2013-107142A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】垣内 保広
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真司
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
(72)【発明者】
【氏名】飯田 斉
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−144595(JP,A)
【文献】 特開平09−057650(JP,A)
【文献】 実開昭48−107182(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0163793(US,A1)
【文献】 実開昭61−071379(JP,U)
【文献】 特開平06−262413(JP,A)
【文献】 米国特許第05992257(US,A)
【文献】 米国特許第04236588(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/14
B25D 16/00
B23B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けたクラッチを、前記ハウジングの外部から切替レバーによってスライド操作することで、少なくとも2つの動作モードを選択可能で、前記切替レバーを、前記ハウジングへ回転可能に保持されて前記クラッチに係合する回転部と、前記ハウジングの外側で前記回転部にその回転中心から放射方向へ連設されるつまみ部と、そのつまみ部に設けた有底孔内へ出没可能且つ前記有底孔の底面との間に設けたコイルバネによって前記つまみ部からの突出方向へ付勢されて収納され、前記ハウジングの外面に設けたガイド溝に係止するロックボタンとで形成したハンマードリルであって、
前記つまみ部に、前記有底孔を前記つまみ部の外部と連通させて前記つまみ部内に侵入した粉塵を排出可能な横断面四角形状の連通孔を、前記ロックボタンの出没方向に沿って且つ前記コイルバネを挟んで一対設けると共に、各前記連通孔を、前記有底孔との連通側が前記つまみ部の外部との連通側よりも開口が幅方向に大きくなるテーパ形状としたことを特徴とするハンマードリル。
【請求項2】
前記ガイド溝に、前記動作モードの切替位置で前記ロックボタンの係止部が前記突出方向で係止する複数の係止凹部を連設して、前記係止部と各係止凹部とを、前記突出方向へ向けて先細りとなるテーパ形状としたことを特徴とする請求項に記載のハンマードリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの動作モードを選択可能としたハンマードリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマードリルは、ハウジングに内設した回転機構と打撃機構との間に、両機構に対して選択的に連係可能なクラッチを備え、ハウジングの外部からクラッチのスライド位置を切り替えることで、ハウジングの先端に保持したビットを回転動作のみさせるドリルモードや、回転動作に加えてビットに打撃を伝達するハンマードリルモードや、ビットに打撃のみを伝達するハンマーモード等の複数の動作モードが選択可能となっている。
このクラッチのスライド位置の切り替えには、切替レバーが用いられる。この切替レバーは、例えば特許文献1に開示の如く、ハウジングへ回転可能に保持されてクラッチに係合する回転部と、ハウジングの外側で回転部にその回転中心から放射方向へ連設されるつまみ部と、そのつまみ部に設けた有底孔内へ出没可能且つつまみ部からの突出方向へ付勢されて収納され、ハウジングの外面に設けたガイド溝に係止するロックボタンとからなるものが知られている。ガイド溝には、動作モードに対応するつまみ部の切替位置でロックボタンがさらに突出して係止する係止凹部が連設されている。
よって、動作モードを切り替える際には、ロックボタンをつまみ部内に押し込んで当該位置での係止凹部との係止を解除し、そのままつまみ部を所望の動作モードに対応する切替位置へ回転操作することになる。対応する切替位置では、再びロックボタンが突出して係止凹部に係止して当該動作モードが維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の切替機構においては、ロックボタンをつまみ部に収納して出没させる構造上、ロックボタンとつまみ部との間から有底孔内に粉塵が侵入することがある。この粉塵が有底孔内に溜まると、ロックボタンの摺動性が悪くなり、ロックボタンを押し込みにくくなったり、係止凹部の位置でロックボタンが完全に突出しなかったりする不具合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、つまみ部内に粉塵が侵入することがあっても、ロックボタンの摺動性を維持できて使い勝手を損なうことがないハンマードリルを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、つまみ部に、コイルバネで突出付勢されるロックボタンを収容する有底孔をつまみ部の外部と連通させてつまみ部内に侵入した粉塵を排出可能な横断面四角形状の連通孔を、ロックボタンの出没方向に沿って且つコイルバネを挟んで一対設けると共に、各連通孔を、有底孔との連通側がつまみ部の外部との連通側よりも開口が幅方向に大きくなるテーパ形状としたことを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、ガイド溝に、動作モードの切替位置でロックボタンの係止部が突出方向で係止する複数の係止凹部を連設して、係止部と各係止凹部とを、突出方向へ向けて先細りとなるテーパ形状としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、切替レバーのつまみ部に、侵入した粉塵を排出可能な連通孔を設けたことで、ロックボタンとつまみ部との間からつまみ部内に粉塵が侵入することがあっても、ロックボタンの摺動性を維持できて使い勝手に優れたものとなる。
また、つまみ部内に侵入した粉塵がロックボタンの押し込み動作によって連通孔側へ導かれることとなり、連通孔による粉塵の排出効果をより高めることができる。
さらに、連通孔を一対設けたことで、粉塵をむらなく且つ効率良く排出可能となる。
そして、連通孔は有底孔側の開口が広いため、粉塵は連通孔へ導かれやすくなり、有底孔内への貯留が効果的に抑制される。
請求項に記載の発明によれば、請求項の効果に加えて、動作モードの切替位置でのロックボタンのがたつきが抑えられ、つまみ部を確実に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ハンマードリルの側面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ハンマードリルの一例を示す全体図、図2はそのA−A線断面図で、ハンマードリル1は、図示しないモータを収容したハウジング2の前方(図1の左側)に、ビットを着脱するチャック4を備えたツールホルダ3を突出し、ハウジング2内に、ツールホルダ3への回転機構とビットへの打撃機構とを内設した周知の構成である。5は、ハウジング2の後方に形成されてスイッチレバー6を有するハンドル、7は、ハンドル5の下部に装着されて電源となるバッテリーパックである。
【0010】
回転機構は、ツールホルダ3の下方へ平行に配設されてモータから回転伝達される中間軸8に、ツールホルダ3に設けたギヤと噛合するギヤを回転可能に外装した構造となっている。また、打撃機構は、ギヤの後方で中間軸8に外装したボススリーブに、スワッシュベアリングを介してアームを連結し、そのアームをツールホルダ3に内挿されるピストンシリンダ9に連結している。ピストンシリンダ9の内部には、空気室を介してストライカが前後移動可能に外装されており、その前方に設けたインパクトボルトを打撃可能としている。これらの回転機構及び打撃機構も周知である。
【0011】
さらに、中間軸8において、ギヤとボススリーブとの間には、両端にギヤ及びスリーブとの係止爪を備えたクラッチ10が、中間軸8に沿ってスライド可能に外装されている。このクラッチ10のスライド位置の選択により、各動作モードが選択可能となる。すなわち、クラッチ10がギヤのみと係合する前進位置、ボススリーブのみと係合する後退位置、ギヤ及びボススリーブと同時に係合する中間位置の何れかを選択することで、ギヤを介してツールホルダ3が回転してビットを回転させるドリルモード、アームの揺動によってピストンシリンダ9を往復動させ、連動するストライカによってインパクトボルトを介してビットを打撃するハンマーモード、ツールホルダ3の回転とインパクトボルトの打撃とを同時に行うハンマードリルモードの選択が可能となる。
【0012】
このクラッチ10のスライド位置は、ハウジング2に設けた切替レバー11によって選択できる。切替レバー11は、ハウジング2へ回転可能に嵌着される回転部12と、その回転部12の外側(ハウジング2の外側)でその回転中心から放射方向へ連設されるつまみ部13とを有し、回転部12には、ハウジング2の内側へコイルバネ15によって突出付勢されてクラッチ10に係合する係合ピン14が、回転中心からの偏心位置に設けられている。すなわち、回転部12の回転に伴う係合ピン14の偏心運動でクラッチ10を左右にスライドさせるものである。
【0013】
一方、つまみ部13には、一端を開口させた有底孔16が形成されて、この有底孔16内にロックボタン17が設けられている。このロックボタン17は、図3にも示すように、有底孔16に嵌合して有底孔16に沿ってスライド可能に設けられると共に、ロックボタン17と有底孔16の底面との間に設けたコイルバネ18により、つまみ部13からの突出方向へ付勢されている。
【0014】
但し、ロックボタン17におけるハウジング2側の外面には、ハウジング2の外面で回転部12を中心に形成された円弧状のガイド溝20に係止する係止部19が突設されて、ロックボタン17の突出位置を規制している。また、ガイド溝20の外周側(ロックボタン17の突出方向側)には、各動作モードの切替位置で係止部19が係止してつまみ部13の回転を規制する3つの係止凹部21〜23が、それぞれガイド溝20から連続状に突出形成されている。ここでは係止凹部21がドリルモードの切替位置、係止凹部22がハンマードリルモードの切替位置、係止凹部23がハンマーモードの切替位置となっている。
【0015】
なお、ハンマーモードでは、ハウジング2内に設けたロック部材24が中間軸8上のギヤに係合して当該ギヤの回転を規制することで、ツールホルダ3及びビットの回転はロックされるが、ハンマーモードとハンマードリルモードとの間の切替位置では、回転部12に設けた図示しない押圧部がロック部材24をギヤから離間させることで、ツールホルダ3及びビットの回転がフリーとなるニュートラルモードとなる。
【0016】
ここで、各係止凹部21〜23は、ガイド溝20との連続側から突出側へ行くに従って左右幅が徐々に狭くなるテーパ形状となっており、これに係止する係止部19も、係止凹部21〜23に合わせて突出方向へ行くに従って左右幅が徐々に狭くなるテーパ形状となっている。
そして、つまみ部13において、有底孔16の底面側の側面には、有底孔16をつまみ部13の外部と連通させる連通孔としての一対のスリット25,25が貫通形成されている。このスリット25は、横断面が細長四角形状で、コイルバネ18を挟んだ左右両側でロックボタン17の出没方向と平行に形成されるが、有底孔16との連通側がつまみ部13の外部との連通側よりも開口が幅方向に大きくなるテーパ形状となっている。
【0017】
以上の如く構成されたハンマードリル1においては、例えば図3に示すハンマードリルモードから他の動作モードを選択する際には、ロックボタン17をコイルバネ18の付勢に抗して有底孔16内へ押し込めば、係止部19が係止凹部22から離間してガイド溝20に沿って回転が許容される。よって、そのままつまみ部13を係止凹部21又は23の位置へ回転させることができる。係止凹部21又は23の位置に達すると、ロックボタン17がコイルバネ18の付勢によって突出し、係止部19が係止凹部21又は23に係止するため、当該動作モードが維持される。
このとき、係止部19と係止凹部21又は23とは、左右がテーパ形状同士の嵌合となるため、ロックボタン17の突出付勢と相俟ってロックボタン17が回転方向にがたつくことがなく、つまみ部13の確実な保持が可能となる。
【0018】
そして、作業中に生じた粉塵がつまみ部13とロックボタン17との隙間から有底孔16内に侵入することがあっても、つまみ部13には有底孔16の底部を外部と連通させるスリット25,25が設けられているため、例えばロックボタン17を押し込む動作に応じて粉塵がスリット25,25を介してつまみ部13の外部へ排出される。よって、粉塵が有底孔16内に貯留しにくくなり、ロックボタン17が押し込みにくくなったり、係止凹部21〜23の位置でロックボタン17が完全に突出しなかったりする不具合が生じない。特に、スリット25は有底孔16側の開口が広いため、粉塵はスリット25へ導かれやすくなり、有底孔16内への貯留が効果的に抑制される。
【0019】
このように、上記形態のハンマードリル1によれば、つまみ部13に、有底孔16をつまみ部13の外部と連通させてつまみ部13内に侵入した粉塵を排出可能なスリット25,25を設けたことで、ロックボタン17と切替レバー11のつまみ部13との間からつまみ部13内に粉塵が侵入することがあっても、ロックボタン17の摺動性を維持できて使い勝手に優れたものとなる。
特にここでは、スリット25,25を、ロックボタン17の出没方向に沿って形成しているので、つまみ部13内に侵入した粉塵がロックボタン17の押し込み動作によってスリット25,25側へ導かれることとなり、スリット25による粉塵の排出効果をより高めることができる。
【0020】
また、スリット25,25を一対形成したことで、粉塵をむらなく且つ効率良く排出可能となる。
さらに、ガイド溝20に、動作モードの切替位置でロックボタン17の係止部19が突出方向で係止する複数の係止凹部21〜23を連設して、係止部19と各係止凹部21〜23とを、突出方向へ向けて先細りとなるテーパ形状としたことで、動作モードの切替位置でのロックボタン17のがたつきが抑えられ、つまみ部13を確実に位置決めすることができる。
【0021】
なお、連通孔は、一対のものに限らず、3つ以上であってもよいし、逆に1つであってもよい。また、テーパ形状とせずに有底孔側と外部側との開口を同じ大きさとしても差し支えない。
さらに、連通孔は、横断面が細長四角形状となるスリットに限らず、例えば横断面円形や長円形、正方形とする等、適宜変更可能である。
加えて、連通孔を設ける位置も、つまみ部における有底孔の底面側の側面に限らず、ロックボタンの出没方向と直交する側面とすることもできるし、複数の側面に設けることもできる。
【0022】
一方、ロックボタンの係止部及び係止凹部のテーパ形状は必須ではないし、動作モードも、上記形態のようなニュートラルモードを含めた4つの動作モードを選択可能としたものに限らない。例えば、ニュートラルモードのない3つの動作モード等、少なくとも2つの動作モードを選択可能なハンマードリルであれば、本発明は適用可能である。勿論回転機構や打撃機構も上記形態に限定されない。
【符号の説明】
【0023】
1・・ハンマードリル、2・・ハウジング、3・・ツールホルダ、8・・中間軸、10・・クラッチ、11・・切替レバー、12・・回転部、13・・つまみ部、14・・係合ピン、15,18・・コイルバネ、16・・有底孔、17・・ロックボタン、19・・係止部、20・・ガイド溝、21〜23・・係止凹部、25・・スリット。
図1
図2
図3