(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759368
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】駐車スペースへの自動車の駐車時に運転支援システムを作動させる方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20150716BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/00 628D
B60R21/00 630G
B60R21/00 621E
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-509891(P2011-509891)
(86)(22)【出願日】2009年5月19日
(65)【公表番号】特表2011-523124(P2011-523124A)
(43)【公表日】2011年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2009003589
(87)【国際公開番号】WO2009141133
(87)【国際公開日】20091126
【審査請求日】2012年4月12日
(31)【優先権主張番号】102008024964.5
(32)【優先日】2008年5月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100086726
【弁理士】
【氏名又は名称】森 浩之
(72)【発明者】
【氏名】イェンス バマート
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ホフソマー
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン コッスマン
(72)【発明者】
【氏名】フセフォロド フォフクシェフスキー
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−313775(JP,A)
【文献】
特開2000−134608(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/006605(WO,A1)
【文献】
特開2006−244395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道脇の駐車スペース(02)への自動車(01)の駐車時に、運転支援システムを作動させる方法であって、特定の起動速度未満において駐車スペースの検出について、測定検出手段が、駐車の可能な駐車スペース(02)を測定し、前記自動車(01)にとって十分な長さの駐車スペース(02)の場合、通知手段が、適切な駐車スペース(02)が見出されたことを指示する情報アイテムを、運転者に出力する方法において、駐車スペースの検出について、前記自動車(01)の速度が、前記起動速度を下回っているときに、前記測定検出手段が、前記自動車(01)の後方領域(03)をモニタし、また後方領域(03)に後続車両(05)が存在しているときに、前記通知手段が、前記自動車(01)の運転者に、突然のブレーキ操作を行うと衝突事故の発生する可能性があることを警告し、
前記自動車(01)の後方に、後続車両(05)が識別された場合に、突然のブレーキ操作を行うと衝突事故が発生する可能性があることの警告と、1つの適切な駐車スペース(02)を、運転者に通知することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自動車(01)の後方に、後続車両(05)が識別されなかった場合に、全ての適切な駐車スペース(02)を通知することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自動車(01)の後方に、後続車両(05)が識別された場合に、適切な駐車スペース(02)を実際に通知する前に、後続車両(05)に対して、ブレーキ操作が緊急に行われる可能性があることについて通知することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブレーキ操作が緊急になされる可能性があることに関する前記通知は、適切な駐車スペース(02)が識別された直後に、前記自動車(01)のブレーキ灯を点灯することによってなされることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ブレーキ操作が緊急になされる可能性があることに関する前記通知は、前記後続車両(05)に対する車両間通信によってなされることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記後方領域(03)に何もない場合と、何かある場合とで、見出された駐車スペース(02)に対して、異なる表示を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
車道脇の駐車スペース(02)を測定して検出する手段と、自動車(01)の後方領域(03)における後続車両(05)を検出する手段と、これらの手段に接続されており、かつ測定されて検出された駐車スペースが前記自動車(01)に適切であるか否か、および突然のブレーキ操作によって、後続車両(05)との衝突事故が発生する危険性が迫るか否かを算定するための、メモリ手段と組み合わされたマイクロプロセッサと、適切な駐車スペースに関する情報、および前記自動車(01)の後方に、後続車両(05)が識別された場合に、突然のブレーキ操作を行った場合に衝突事故が発生する可能性に関する情報を、前記自動車(01)の運転者に通知する手段とを備えていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法を実行するための運転支援装置。
【請求項8】
駐車スペースからの誘導付きの離脱、または駐車スペースからの半自動的な離脱、または駐車スペースからの全自動的な離脱を可能にするようになっていることを特徴とする、請求項4に記載の方法を実行するための運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短距離同定の分野、または自動車の周囲環境検出の分野に関する。具体的には、本発明は、請求項1の上位概念による、駐車スペースへの自動車の駐車時に運転支援システムを作動させる方法、請求項9の上位概念による運転支援装置、および請求項11の上位概念によるコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車時に自動車の運転者を支援するための公知の運転支援装置(以下駐車システムとも略称する)は、運転者が、車道に沿った駐車スペースに駐車することを能動的に支援する。このような状況下において、駐車システムは、例えば自動車の側面に取り付けられたセンサ〔例えば超音波センサ(超音波駐車支援センサ、すなわちUPAセンサ)〕を用いて、駐車可能な駐車スペースを判別し、その駐車スペースデータから駐車行路を計算し、例えば操舵への能動的な介在によって、または運転者への運転指示によって、駐車スペース内に自動車を導く。駐車動作中または駐車時に、駐車スペースを区画している物体までの距離が、超音波センサによってモニタされる。
【0003】
車道に沿って駐車されている車両のそばを走行していくときに、所望の測定精度が失われないように、測定中の自動車は、駐車スペースを測定している間、または駐車スペースを探している間、特定の最高速度を超過してはならない。この最高速度は、通常、幹線道路または主要道路における許容最高速度未満である。しかしながら、駐車スペースを探している自動車の後方を走行している車両は、互いに非常に接近し合っており、この最高速度においては、前方の自動車が突然のブレーキ操作を行った場合には、驚愕して、すぐにブレーキをかけることができなくなるという危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、駐車スペースを探している間の衝突事故を避けることを可能にする方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、車道脇の駐車スペースへの自動車の駐車時に、運転支援システムを作動させる方法であって、特定の起動速度以下で駐車スペースを探している間に、駐車が可能である駐車スペースを判別し、適切または有効な駐車スペースが見出されたことを指示する情報アイテムを、この自動車にとって十分な長さの駐車スペースを探している、この自動車の運転者に対して出力させる方法を提供するものである。このような本発明の方法において、駐車スペースを探している間に、自動車の速度が起動速度を下回っているときに、自動車の後方領域がモニタされ、また接近してくる、例えば後方領域を走行している後続車両が存在しているときに、自動車の運転者は、突然にブレーキ操作を行うと、衝突事故の発生する可能性があることが警告される。
【0006】
適切な駐車スペースが、自動車の運転者に通知され、かつ自動車の後方領域に障害物が存在していない場合には、自動車の運転者は、速やかにブレーキ操作を行なって、所望のとおりに減速を行うことができる。しかし、適切な駐車スペースを見付け、かつ自動車の後方領域に障害物が存在している場合には、自動車の運転者は、ブレーキ操作について、早めに警告される。そのため、自動車の運転者は、慎重にブレーキ操作を開始することとなる。
【0007】
本発明の利点は、駐車支援システムまたは駐車システムが作動しているかぎり、突然のブレーキ操作による衝突事故の危険性を減少させることである。
【0008】
駐車スペースを探している間に、自動車の速度が起動速度を下回っているときに、衝突の可能性のある車両、すなわち接近してくる、例えば後方領域を走行している後続車両が、自動車の後方に識別されない場合には、全ての適切な駐車スペースを通知することが好ましい。その場合には、自動車の運転者は、なんらの制約なしに、必要なブレーキ操作を行うことができる。
【0009】
本発明の方法の有利な一実施形態においては、駐車スペースを探している間に、自動車の速度が起動速度を下回っているときに、衝突の可能性のある車両、すなわち接近してくる車両、例えば後方領域を走行している後続車両が、自動車の後方に識別される場合には、突然のブレーキ操作を行うと、衝突事故が発生する可能性があることが警告され、かつ1つの適切な駐車スペースが運転者に通知される。そのため、自動車の運転者は、その警告に対処しなければならず、必要なブレーキ操作を行う上で制約を受ける。
【0010】
本発明による方法の別の有利な一実施形態においては、後続している車両、すなわち、後方領域を走行している車両が存在するために、衝突の危険性が確認されるとき、すなわち、衝突の可能性のある車両、すなわち接近してくる車両、例えば後方領域を走行している車両が、自動車の後方に識別されるとき、適切な駐車スペースを通知する前に、後続車両、すなわち後方を走っている車両に対して、ブレーキ操作が緊急に行われる可能性がある旨の通知がなされる。
【0011】
この場合、ブレーキ操作が緊急に行われる可能性があることに関する通知を、適切な駐車スペースが識別された直後に、ブレーキによる減速を全く行わずに、自動車のブレーキ灯を点灯することによって行うことが考えられる。駐車スペースを探している自動車の運転者がブレーキ操作を開始するまで、ブレーキによる減速を行わないことが好ましい。
【0012】
同様に、ブレーキ操作が緊急に行われる可能性があることに関する通知を、後続車両に対する車両間通信によって行うことも考えられる。
【0013】
本発明による方法の特に有利な一実施形態においては、後続車両、すなわち後方領域を走行している車両が存在するために、衝突の危険性が確認されるとき、すなわち、衝突の可能性のある車両、すなわち接近してくる車両、例えば後方領域を走行している後続車両が、自動車の後方に識別されるときに、適切な駐車スペースは通知されない。
【0014】
本発明による方法の特に有利な一実施形態は、後方領域に障害物が存在していない場合と、存在している場合により、見出された駐車スペースに対して、異なる表示を用いることを特徴としている。
【0015】
本発明、より具体的には本発明による方法は、車道に沿った、車道脇の駐車スペースへの駐車時に、自動車の運転者を支援するための運転者支援装置を通じて適用すると有利である。
【0016】
このような駐車支援装置は、車道に沿った、車道脇の駐車スペースを判別して検出する手段と、自動車の後方領域における後続車両を検出する手段と、これらの手段に接続されており、かつ判別されて検出された駐車スペースが、その自動車に適切であるか否か、および突然のブレーキ操作によって、接近してくる車両、例えば後方領域を走行している後続車両との衝突事故が発生する危険性があるか否かを知らせるための、メモリ手段と組み合わされたマイクロプロセッサと、適切な駐車スペースに関する情報、および突然のブレーキ操作を行った場合に、衝突事故が発生する可能性に関する情報を、自動車の運転者に通知する手段とを備えていることが好ましい。
【0017】
誘導付きの駐車、または半自動的な駐車、または全自動的な駐車を可能にする運転支援装置に連動させて、本発明による方法を有利に適用することができる。
【0018】
本発明の特に有利な一実施形態は、コンピュータが使用可能な媒体に記憶されているコンピュータプログラム製品に関する。このコンピュータプログラム製品は、メモリ手段と組み合わされたマイクロプロセッサまたはコンピュータ上で実行されたときに、マイクロプロセッサまたはコンピュータに、本発明による上述の方法を実行させる、コンピュータ可読のプログラム手段を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】特定の起動速度未満で駐車スペースを探している間に、モニタされている後方領域に障害物が存在していない第1の状況を示す概略図である。
【
図2】特定の起動速度未満で駐車スペースを探している間に、モニタされている後方領域に障害物が存在している第2の状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を説明する。
【0021】
図1および
図2に示されている自動車01の速度が起動速度未満に低下すると、自動車の周囲環境を測定するためのセンサシステムにより、周囲環境の検出が開始される。そのときに、自動車01の運転者が、自動車01の駐車支援システムまたは駐車システムを起動させると、有効な駐車スペース02、すなわち自動車01にとって十分な長さの駐車スペース02に関する情報が、運転者に通知される。同時に、自動車01の後方領域03のモニタリングが開始される。
【0022】
有効な駐車スペース02が、自動車01の運転者に通知され、かつ自動車01の後方領域03に障害物が存在していない場合には、自動車01の運転者は、直ちにブレーキ操作を行なって、所望のとおりに減速を行うことができる(
図1)。しかしながら、有効な駐車スペース02が、自動車01の運転者に通知され、かつ自動車01の後方領域03に障害物が存在している場合には、自動車01の運転者は、突然のブレーキ操作について、早めに警告される。その結果、自動車01の運転者は、慎重にブレーキ操作を開始せざるを得ない。
【0023】
本発明の利点は、特に、駐車支援システムまたは駐車システムが作動しているかぎり、突然のブレーキ操作による衝突事故の危険性を減少させることである。
【0024】
図1は、駐車スペース02を探している自動車01の後方領域03に障害物が存在していない状況、すなわち自動車01の後続車両04が、自動車01の後方領域03のモニタリングに用いられているセンサシステムの検出範囲外にあるか、または自動車01から十分に隔たっている状況を示している。
図1に示す状況において、駐車支援システムまたは駐車システムは、既に起動している。これは、駐車スペースの判別作業および後方のモニタリングが開始されていることを意味している。この場合には、自動車01の速度は、許容最高速度未満である。
【0025】
駐車システムが、自動車01の後方に、衝突の可能性のある車両を識別しなかった場合には、駐車システムは、全ての有効な駐車スペース02を通知し、自動車01の運転者は、何らの制約なしに必要なブレーキ操作を行うことができる。
【0026】
図2は、駐車スペース02を探している自動車01の後方領域03に障害物が存在している状況、すなわち自動車01の後続車両04が、自動車01の後方領域03のモニタリングに用いられているセンサシステムの検出範囲内にあるか、または自動車01から最少距離未満にある状況を示している。
図2に示す状況において、駐車支援システムまたは駐車システムは既に起動している。これは、駐車スペースの判別作業および後方のモニタリングが開始されていることを意味している。自動車01の速度は、許容最高速度未満である。
【0027】
駐車システムが、自動車01の後方に、衝突の可能性のある車両05を識別した場合には、駐車システムは、有効な駐車スペース02を通知し、同時に、突然すぎるブレーキ操作について、自動車01の運転者に警告する。したがって、自動車01の運転者は、その警告に対処しなければならず、制約なしに必要なブレーキ操作を行うことはできない。
【0028】
例えば駐車スペースを探している間に、本発明による方法を遂行している駐車支援装置または駐車システムが、後続車両05の存在によって、衝突の危険性を確認したときに、有効な駐車スペース02の通知を実際になす前に、例えば有効な駐車スペース02が識別された直後にブレーキ灯を点灯する(しかし、ブレーキによる減速を行わない)ことによって、後方を走行している後続車両05に、緊急のブレーキ操作について通知することが考えられる。駐車スペース02を探している自動車01の運転者がブレーキ操作を開始するまで、ブレーキによる減速は行われない。
【0029】
同様に、駐車システムが、車両間通信を用いて、後方を走っている後続車両04、05に、駐車支援システムまたは駐車システムが作動しているという状況について通知し、それによって、後続車両04、05の運転者に、ブレーキ操作の可能性について通知するか、または少なくともあらかじめ警告することも考えられる。
【0030】
さらに、自動車01の後方領域03に障害物が存在している場合には、駐車システムは、有効な駐車スペース02について通知しないということも考えられる。
【0031】
さらに、後方領域03に障害物が存在していない場合と、存在している場合とで、見出された駐車スペース02に対して、異なる表示を行わせることも考えられる。
【0032】
自動車01の後方領域03のモニタリングに供される装置は、例えば現存する任意の駐車支援装置の一部として、自動車01のリアフェンダー上に配置される超音波センサから成る構成体であってもよい。このような超音波センサは、通常は、自動車01のバックギアがいれられているときにしか起動されない。この場合には、本発明による方法は、駐車スペースの判別作業が実際に開始されたときに、これらの超音波センサが起動することができるように設定される。
【0033】
さらに、自動車01の死角モニタリング装置のレーダセンサを、後方領域03のモニタリングのために供することもできる。これらのレーダセンサは、それぞれ自動車の側壁上、特にリアフェンダーのすみ領域に配置され、少なくとも、自動車01の後方領域03の裏側の側部領域をカバーするモニタリング領域を有する。
【符号の説明】
【0034】
01 自動車
02 駐車スペース
03 後方領域
04、05 後続車両