【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、バイオエタノールの製造用のプラントにおいて前処理システムの一部とすることができる装置に関する。本装置は、脱水されたバイオマスがプロセス反応器、たとえばガス化反応器に導入される前に、バイオマスの含水量を制御するようにバイオマスを送り込みかつ脱水する機能を有している。送込みプロセスおよび脱水プロセスは、反応器内部の圧力よりも高い圧力または反応器内部の圧力に等しい圧力で行われ、したがって、バックフラッシュ問題が解決され、従来技術で言及した「バイオプラグ」に対する代替物が提供される。
【0017】
送込み装置内部の圧力を反応器内部の圧力よりも高い圧力または反応器内部の圧力に等しい圧力に維持するというのは、圧力差によって引き起こされる反応器の液密封止をもたらし、それにより、バイオエタノール製造システム内への上流のいかなるバックフラッシュおよび材料の流れも回避されるという利点がある。従来技術で言及されている「バイオプラグ」システムとの主な相違は、本発明が、スチーム(steam)のバックフラッシュを物理的に防止する容易な安全システムを提供するということである。
【0018】
送込み装置の加圧のさらなる利点は、これにより、たとえばゲートシステムを不要にすることによって連続的な送り込みが容易になるということである。
【0019】
本装置のさらなる利点は、送込み時のバイオマスが、反応器に対する熱バリア、たとえばバイオガスプラントの熱的前処理を提供することができるということである。
【0020】
本装置は、バイオマスを粉砕し、浸漬する、すなわちパルプを製造する手段を含む前処理システムにより、あらかじめパルプまたはスラリーにされたバイオマスを受け取ることができる。本明細書では、粉砕を、小片または粒子にするプロセスを示すために用いる。本明細書では、パルプを、材料繊維と流体、通常は水との混合物を示すために用いる。本明細書では、スラリーを、通常は水中不溶性粒子の懸濁液を示すために用いる。
【0021】
本発明の説明はバイオマスに焦点を当てるが、本発明は、概して、液体物質と固体物質との混合物を含むスラリーまたはパルプの形態の材料に対して送込みおよび脱水プロセスを適用することにより、含水量を制御するように適用可能であり、前記材料は、通常、液体において懸濁状態であり、浸漬液を有している、ということが考えられる。
【0022】
本発明の上記目的および他のいくつかの目的は、第1の態様において、液体に含まれる材料を反応器に送り込む送込み装置を提供することによって達成され、前記送込み装置は、i)前記材料を内部に導入する材料入口と、前記材料を反応器に送り込む材料出口とを備えた容器と、ii)前記材料が容器内部にある時に加圧されるように、前記材料を加圧する加圧手段と、iii)材料を材料入口から材料出口まで輸送して前記材料を反応器に送り込む輸送手段と、iv)容器外部に液体を排出する少なくとも1つの液体出口と、を備え、加圧手段は、容器内部に、反応器内部の圧力よりも高い圧力または少なくとも反応器内部の圧力に等しい圧力を提供するように構成されている。
【0023】
本明細書では、送込みを、材料をさらに処理されるように機械に供給し、主に材料の輸送を含むが、材料の部分的処理、たとえばその液体量を低減することも含む、動作またはプロセスとして定義する。材料の輸送を、能動輸送手段または受動輸送手段によって行うことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、材料の輸送を、輸送が容器の下向きの傾斜(negative inclination)によって提供されるような受動輸送手段によって行うことができる。この場合、本発明による装置は、材料入口と材料出口との間における材料の流れの方向に対して、ある程度の下向きの傾斜があるように配置される。下向きの傾斜により、重力による材料の材料入口から材料出口に向かう流れが促進される。
【0025】
別の実施形態では、材料の輸送を、搬送スクリュー等の能動輸送手段によって行うことができる。
【0026】
搬送スクリューに対し、可変速度モータによって動力を供給することができ、搬送スクリューは、その軸に沿った回転運動により、材料を強制的に材料出口に向けて輸送する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態のうちのいくつかによる送込み装置の輸送手段は、前記材料を一定速度で輸送するように構成される。
【0028】
別の実施形態では、本発明による送込み装置の輸送手段は、プログレッシブキャビティポンプ(progressive cavity pump)である、またはプログレッシブキャビティポンプを含む。プログレッシブキャビティポンプの使用により、送られた材料の予熱を、送込み装置において、浸漬水を材料から押し出した後に行うことができるため、本装置に対して利益をもたらすことができる。送込み装置は、大気圧を上回る圧力下とすることができるため、この予熱は、過熱水、すなわちその沸点より高い温度、たとえば140℃まで加熱された水を用いて実現することができる。過熱水は、本来廃棄される熱を用いることにより、たとえば、バイオエタノール製造プラントにおける下流の発熱加水分解プロセスによって生成される熱を利用することによって製造することができる。
【0029】
本発明によるいくつかの好ましい実施形態では、輸送手段は、スクリュープレス等の脱水手段である、または脱水手段を含む。
【0030】
この場合、材料の輸送および脱水は、たとえばスクリュープレスによって同時に行われる。スクリュープレスの移動により、材料の液体量が低減し、同時に材料が材料出口に向けて輸送される。
【0031】
別の実施形態では、輸送および脱水は分離され、2つの異なる装置、たとえば、材料入口の後に(after the material inlet)材料から液体を圧搾し絞り出すスクリュープレスと、脱水された材料を材料出口に向けて輸送する搬送スクリューとによって、それぞれ行われる。
【0032】
他の実施形態では、本発明の第1の態様による送込み装置は、前記容器内部に、前記反応器に送られる材料を脱水する手段をさらに備える。
【0033】
挿入された材料の脱水を、上述したようにその輸送と組み合わせて、または別個に行うことができる。脱水手段は、たとえば回転ウォームコンベアであるまたは該回転ウォームコンベアを含む。回転ウォームコンベアは、圧搾された液体が、排出される容器の領域内に脱水されるように材料を圧縮する。
【0034】
別の実施形態では、脱水手段は、往復動(reciprocal)ピストンである、または往復動ピストンを含む。この実施形態では、ピストンの動きは、材料入口からの材料の導入と同期する。導入後、ピストンの往復移動は、さらなる材料を導入するための空間を残す前に、材料を圧縮して水を押し出す。
【0035】
さらなる実施形態では、脱水手段は、脈動圧縮スクリューであるまたは脈動圧縮スクリューを含む。スクリューによって生じる圧縮中の脈動運動の組合せにより、材料の脱水がより効率的になり、それが、強度の高い圧縮がより強度の低い圧縮に続く場合に達成される効果を利用することになる。
【0036】
さらなる実施形態では、脱水を、フィルタベルトコンベアで行うことができ、そこで、ベルトの2つの対向面間の圧力の差により、ベルト上に残っている材料の固形分と、フィルタの他方側において収集される、材料に含まれる液体とを分離することができる。
【0037】
脱水のさらなる実施例は、回転分離器、たとえば遠心分離器であってもよい。
【0038】
概して、脱水手段は、前記材料の含水量等の溶剤含有量(solvent content)を60%、より好ましくは40%、さらにより好ましくは10%のwt%まで低減する。
【0039】
本明細書で用いる含水量を、材料の重量に対する水の重量、すなわちwt/wt%として、重量パーセント、すなわち単にwt%として定義する。たとえば、60%含水量は、材料の60%が水であり、残りの40%が乾燥物質であることを意味する。
【0040】
他の実施形態では、脱水手段は、材料の含水量等の溶剤含有量を90%、より好ましくは85%、さらにより好ましくは80%のwt%まで低減する。特定の用途に対して、たとえばガス化反応器の送りの場合、より含水量が高い方が有利である可能性がある。
実施形態では、前記脱水手段の動作により、前記材料の含水量等の溶剤含有量が75%まで低減する。
【0041】
本装置はまた、乾燥固形分が0〜100%である材料で動作することも可能である。
【0042】
乾燥物質は溶解していてもよく、または溶解しておらず、すなわち、溶剤中懸濁状態であり、たとえば油中で懸濁する繊維であってもよい。
【0043】
さらなる実施形態では、本発明による送込み装置は、好ましくは、前記容器の内壁に沿った複数の穿孔と、前記液体出口に前記穿孔を連結する通路手段と、を備えることができる。これら穿孔は、形状およびサイズが異なっていてもよく、容器内部に材料を保持しながら水を外側へ拡散することができる、材料を通さない格子の形態であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明による送込み装置は、好ましくは再循環ループを備えることができ、それにより、前記液体出口を通って排出される液体が、材料の送込み前処理(pre-in-feed treatment)において再利用される。
【0045】
バイオ燃料の製造で生成される流れすべての再循環および再利用は、バイオエタノールの量を最大限にし、プロセス水の廃棄を最小限にするために極めて重要である。再循環ループがあることにより、水等の排出された液体は、送込み装置に入る前に材料の第1の処理において浸漬水として使用することができるため、プロセスに再び入ることができる。
【0046】
他の実施形態では、本発明による送込み装置は、排出される液体の圧力を大気圧より高く維持する手段をさらに備える。
【0047】
液体を高圧で排出する利点を、製造プロセスへの再挿入の前に液体の浄化に用いることができる。たとえば、膜、たとえば、一方の側に溶質を保持し、純液体が他方の側を通過するのを可能にして、製造プロセスで再利用されるのに十分に浄化されるようにする、限外濾過または逆浸透膜を用いることにより、高圧を、溶液から溶質を分離する駆動力として使用することができる。
【0048】
さらなる実施形態では、本発明による送込み装置は、たとえば再循環ループに入る前に、排出される液体中の望ましくない成分を低減する濾過手段をさらに備える。
【0049】
本明細書では、濾過手段を、圧力駆動の効率的な濾過手段、たとえば逆浸透膜として、重力駆動の効率的な濾過手段、たとえばメッシュサイズの異なるふるいとして、または化学的に誘導される効率的な濾過手段、たとえばイオン交換樹脂として定義する。
【0050】
本明細書では、望ましくない成分を、材料のさらなる処理、たとえば加水分解および発酵を妨げる可能性がある、物質または元素、たとえばNa
+またはK
+のような金属イオンとして定義する。
【0051】
したがって、再循環ループに入る前に、排出された液体中の望ましくない成分を低減することは、プロセスの効率を向上させることによりバイオエタノール製造を最大限にするという利点を有する。
【0052】
さらなる実施形態では、第1の態様による送込み装置は、容器内に液体を導入する少なくとも1つの液体入口をさらに備えている。こうした液体入口があることにより、装置内に導入される材料の液体含有量の微調整が可能になる。たとえば、導入された材料の特定の性質により過度な脱水が発生する場合に、真水等の液体の調節された導入を想定することができる。この特徴により、材料から望ましくない成分を洗い出すため、または保守作業中にシステムを洗い流すためにフラッシング/洗浄液を導入することが可能になる。たとえば、望ましくない成分は、バイオマス中に存在する可能性のある塩、ケイ酸塩または他の鉱物とすることができる。この成分により、システム内の反応器の腐食がもたらされる可能性があるとともに、この成分が、システムに沿ってフィルタまたは蒸留塔に沈殿してフィルタまたは蒸留塔を塞ぐ可能性がある。フラッシング/洗浄液を導入する利点は、システムから浸漬水の大部分を除去した後に、材料、たとえばバイオマスのすすぎ/洗浄作業が可能になり、したがってバイオマスから望ましくない成分のすべてが除去される、ということである。洗浄作業があることは、たとえば燃焼発電所内に送り込まれる藁を洗浄する装置の特定の用途において有利であり得る。
【0053】
一実施形態では、本発明による送込み装置は、反応器に送り込まれる材料の湿度(moisture)を監視する監視手段をさらに備える。
【0054】
監視手段は、たとえば、容器内部に位置し、材料と接触すると、その材料に含まれる水の量に関する情報を提供する電子湿度センサである。
【0055】
別の実施形態では、本発明による送込み装置は、前記液体入口を通って導入される液体の量と、前記液体出口を通って排出される液体の量とを制御する、前記監視手段の出力に応答する自動化手段をさらに備える。
【0056】
たとえば、容器内部の湿度センサによって検出された低湿度状態は、容器を通してデータを送信することにより、応答を引き起こし、それにより、液体入口を通る液体の導入が可能となる。所望の湿度状態が達成され液体がセンサによって検出されると、対応する応答が引き起こされ、液体の導入が停止する。
【0057】
本発明による別の実施形態では、加圧手段は、少なくとも1つのポンプであるまたは少なくとも1つのポンプを含む。
【0058】
容器内部の圧力を、1つまたは複数のポンプによって提供することができる。たとえば、圧力を、材料を材料入口に向かわせ容器内に押し込む、容積形ポンプまたは遠心ポンプ等のポンプによって提供することができ、このポンプを、本明細書では材料入口ポンプと呼ぶ。
【0059】
容器内部の圧力を、別個のガス圧手段により、たとえば大気圧に対して空気圧縮機によって提供してもよい。
【0060】
容器に、反応器内部の圧力よりも高い圧力を供給することにより、反応器の下流のより効率的な熱分離を提供するという利点もまた得られる。
【0061】
他の実施形態では、本発明による送込み装置は、前記送込み装置の外部ハウジングを備える。
【0062】
外部ハウジングは、バイオエタノール製造システム内への上流のいかなるバックフラッシュおよび材料の流れも回避する追加の安全性を提供することができる。
【0063】
他の実施形態では、加圧手段は、反応器内部の圧力よりも高いまたは少なくとも反応器内部の圧力に等しい、前記外部ハウジング内部の圧力を提供する、少なくとも1つのポンプであるまたは少なくとも1つのポンプを含む。
【0064】
反応器と送込み装置との圧力差を、送込み装置の外部ハウジングの圧力を反応器内部の圧力よりも高いかまたは少なくとも反応器内部の圧力に等しいように維持する空気圧縮機等のポンプによって維持することも可能であり、それにより反応器の液密封止が提供される。
【0065】
いくつかの実施形態では、加圧手段は、反応器内部の圧力よりも高いかまたは少なくとも反応器内部の圧力に等しい、前記容器内部の圧力を提供する、少なくとも1つのポンプであるかまたは少なくとも1つのポンプを含む。
【0066】
容器内部の圧力を、材料入口ポンプおよび/または1つまたは複数の二次ポンプによって提供することができる。
【0067】
さらなる実施形態では、加圧手段は、前記容器内部に反応器内部の圧力よりも高いかまたは少なくとも反応器内部の圧力に等しい圧力を提供する、少なくとも1つのポンプと、前記外部ハウジング内部に反応器内部の圧力よりも高いかまたは少なくとも反応器内部の圧力に等しい圧力を提供する、少なくとも1つのポンプとを備える。
【0068】
送込み装置と反応器との主な圧力差を、容器内部の圧力を提供する加圧手段によって提供することができ、一方で、外部ハウジングを、反応器内部の圧力よりも高いかまたは反応器内部の圧力に等しい圧力で維持することにより、いかなるバックフラッシュも回避する補助的な安全性を提供することができる。
【0069】
さらなる実施形態では、送込み装置の材料入口は逆止弁等の弁を備える。
【0070】
弁があることにより、装置内部の圧力の制御が可能になる。装置内部のバイオマスの加圧を、たとえばバイオプラグの形成を通じて脱水手段により部分的に提供することも可能である。したがって、脱水プロセスは、反応器内に送り込まれるバイオマスの加圧に寄与することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明による送込み装置は、脱水された材料に化学剤を追加する手段を備える。
【0072】
他の実施形態では、本発明による送込み装置は、材料の酸性度を変化させるように化学剤を追加する手段をさらに備える。
【0073】
本発明の上記目的および他のいくつかの目的は、第2の態様において、バイオマスからバイオ製品を製造するシステムによって達成され、本システムは、i)材料を収集し、輸送し、パルプにし、粉砕し、送込み装置に送り出す前処理サブシステムと、ii)先行する請求項のいずれかによる前記送込み装置と、iii)前記材料の化学的構造および/または物理的構造を変化させる反応器と、を備えている。
【0074】
本発明の第2の態様による一実施形態は、バイオエタノールを製造するシステムである。
【0075】
第3の態様では、本発明の上記目的および他のいくつかの目的は、反応器内に送り込まれる材料の含水量を低減する方法によって達成され、前記方法は、先行する請求項のいずれかによる送込み装置を利用する。
【0076】
第4の態様では、本発明の上記目的および他のいくつかの目的は、反応器内に材料を連続的に送り込む方法によって達成され、前記方法は、先行する請求項のいずれかによる送込み装置を利用する。
【0077】
本発明の第1、第2、第3および第4の態様の各々を、他の態様のうちの任意のものと組み合わせることができる。本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に述べる実施形態から明らかとなり、上記態様を、それらの実施態様に関連して説明する。
【0078】
本文脈において、複数の用語を、当業者に一般的な方法で用いる。しかしながら、用語のうちのいくつかに含まれる特徴を特定するために、用語のうちのいくつかに関する一般的な定義については後述する。
【0079】
ここで、本発明による物質のプロセス反応器への送込み方法および装置について、添付図面を参照してより詳細に説明する。図面は、本発明を実施する一方法を示し、添付の特許請求の範囲の組の範囲にある他のあり得る実施形態に対して限定するものと解釈されるべきではない。