【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面では、磁気共鳴撮像システムにおいて使用可能なオブジェクトにエネルギーを加えるためのカテーテルが提供される。ここで、前記カテーテルは:
・オブジェクトにエネルギーを加えるためのエネルギー印加要素と、
・そこから磁気共鳴信号を受信できるような磁気共鳴流体を提供するための空洞であって、該空洞は、前記エネルギー印加要素を冷却するための冷却流体を前記磁気共鳴流体として提供するよう適応されている、空洞と、
・前記磁気共鳴流体から磁気共鳴信号を受信するよう適応された、前記カテーテルを追跡するための追跡コイルとを有
し、前記空洞は前記追跡コイル内に位置されている。
【0007】
前記カテーテルは、磁気共鳴信号の発信源となる磁気共鳴流体を提供するための空洞を有し、前記カテーテルは、前記磁気共鳴流体から磁気共鳴信号を受信するよう適応された、前記カテーテルを追跡するための追跡コイルを有するので、空洞自身が磁気共鳴流体を含むことができ、前記磁気共鳴流体は、カテーテルの外側において磁気共鳴流体が存在していなくても磁気共鳴信号を生成することを許容する。さらに、磁気共鳴流体は、所望される強さをもつ磁気共鳴信号を生成するよう適応されることができる。よって、磁気共鳴流体は、磁気共鳴信号の強さが、よって磁気共鳴信号の強さに基づく磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性が最適化されるよう、適応されて使われることができる。これは、磁気共鳴撮像システム内におけるカテーテルの位置特定の信頼性を改善することを許容する。さらに、磁気共鳴流体は磁気共鳴信号を生成する機能をもつだけでなく、カテーテルのエネルギー印加要素の冷却もする。すなわち、複数の種類の流体のために複数の空洞を有する必要はない。たとえば、冷却流体を提供するために第一の空洞を有し、磁気共鳴流体を提供するために第二の空洞を有することは必要ない。これは、これらの異なる機能を提供するために必要とされるスペースを削減することを許容する。
【0008】
磁気共鳴流体は、磁気共鳴撮像システムにおいて磁気共鳴信号を生成する流体である。磁気共鳴流体は好ましくは液体、さらに好ましくは水である。
【0009】
カテーテルは、一つまたは複数の追跡コイルを有することができる。
【0010】
追跡コイルは好ましくは、磁気共鳴撮像システム内の自分自身の位置を決定するための、能動的な磁気共鳴受信コイルである。
【0011】
空洞が、追跡コイルの最も敏感な領域内に位置されることが好ましい。これは、磁気共鳴撮像システム内でカテーテルを位置特定するために使われる追跡コイルの信号の強さをさらに増大させ、それにより磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性を高める。
【0012】
空洞が追跡コイル内に位置されてい
る。追跡コイル内の領域は磁気共鳴感度が高い領域なので、空洞を、よって磁気共鳴流体を追跡コイル内に位置させることによって、磁気共鳴撮像システム内でカテーテルを位置特定するために使われる追跡コイルの信号の強さがさらに増大させられる。これは、磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性をさらに改善する。
【0013】
追跡コイルが空洞を取り囲む位置において空洞が広がっていることがさらに好ましい。追跡コイルが空洞を取り囲む位置において空洞が広がっているので、追跡コイル内により多くの磁気共鳴流体が提供されることができ、磁気共鳴撮像システム内でカテーテルを位置特定するために使われる、追跡コイルによって生成される信号の強さがさらに増大する。これは、磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性をさらに改善する。
【0014】
追跡コイルは、外側カテーテル・プロファイルに加わらないよう配置されることがさらに好ましい。好ましくは、追跡コイルはカテーテルの内側に配置される。追跡コイルが外側カテーテル・プロファイルへの追加とならないので、カテーテルは人間や動物の心臓のようなオブジェクト中に簡単に導入できる。
【0015】
空洞および追跡コイルがカテーテルの遠位端に位置されることが好ましい。
【0016】
空洞は好ましくは、磁気共鳴流体がカテーテル内を流れることを許容する、特に、磁気共鳴流体を追跡コイルに案内するための流体チャネルである。これは、磁気共鳴流体のフレッシュなスピンを追跡コイルに案内することを許容する。これは、磁気共鳴撮像システム内でカテーテルを位置特定するために使われる、追跡コイルによって生成される信号の強さをさらに増大させる。これは、磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性をさらに高める。流体チャネルはカテーテルの管腔であってもよいし、好ましくはカテーテルの管腔内に位置する管であってもよい。
【0017】
エネルギー印加要素は好ましくは心臓、特に心臓壁の心臓組織のようなオブジェクトをアブレーションするためのアブレーション要素である。アブレーション要素を有するそのようなカテーテルはアブレーション・カテーテルと見なされることができる。ここで、このアブレーション・カテーテルの位置は磁気共鳴撮像システム内で決定されることができる。これは、エネルギーが加えられる、特にアブレーションが実行される位置を決定することを許容する。磁気共鳴流体を提供するための前記空洞、前記追跡コイルおよび前記エネルギー印加要素を有する前記カテーテルは、好ましくは、特に患者の心臓における電気生理学的手術のために使われる。好ましくは、前記エネルギー印加要素、前記追跡コイルおよび前記空洞は前記カテーテルの先端に位置される。
【0018】
前記エネルギー印加要素は好ましくは、電気エネルギーを加えるための電極または光エネルギーを加えるための光学要素または凍結アブレーションのための低温要素または超音波アブレーションのための超音波トランスデューサである。
【0019】
好ましくは、前記空洞の少なくとも一部は、前記エネルギー印加要素を冷却するために前記磁気共鳴流体を前記エネルギー印加要素を通じて案内するために、前記エネルギー印加要素内に配置される。たとえば、前記エネルギー印加要素は、前記空洞の第一の部分をなすフィードスルーおよび前記空洞の第二の部分として設けられることのできる冷却管を有することができる。ここで、前記冷却管は、前記磁気共鳴流体が前記エネルギー印加要素を冷却するために前記エネルギー印加要素を通じて流れることを許容するために前記フィードスルーに接続される。
【0020】
前記空洞が、前記磁気共鳴流体が前記カテーテルを出ることを許容するよう適応されていることがさらに好ましい。ここで、前記追跡コイルは、前記磁気共鳴流体の磁気共鳴の可視性が高められるよう、前記磁気共鳴流体内の磁化を励起するよう適応される。磁気共鳴流体は灌注(irrigation)のために前記カテーテルを出ることができる。さらに、前記追跡コイルは、前記追跡コイルを使った高周波(RF: radio frequency)の「送信」によって磁気共鳴流体の磁化を励起、飽和または準備することができる。この目的のため、RFパルスがカテーテルの接続ケーブルに与えられ、追跡コイルによって送信されることができる。好ましくは、撮像のために使われるいかなる選択勾配にも関わりなく磁化を励起することができるよう、広い帯域幅のRFパルスが使われる。追跡コイルの局所的な感度のため、磁気共鳴流体は選択的に励起され、よって選択的に磁気共鳴撮像によって、特にリアルタイムで、追跡されることができる。ある実施形態では、磁気共鳴(MR)撮像の間のスピン励起のために、追跡コイルだけが使われ、磁気共鳴撮像システムのボディRFコイルは使われない。この結果、カテーテルを励起する磁気共鳴流体だけが陽のコントラストをもって見え、カテーテル先端およびそのさらなる経路のまわりの磁気共鳴流体の流れを視覚化することになる。スピン励起のためにボディRFコイルが使われる通常の解剖学的撮像と組み合わされ、たとえばインターリーブされて、磁気共鳴流体および組織およびカテーテルの空間的関係が視覚化できる。あるいはまた、磁気共鳴流体の選択的な励起および撮像に向け、撮像の間の信号ボイドとして磁気共鳴流体を視覚化するよう、磁気共鳴流体は飽和させられることができる。あるいはまた、反転パルスとしての磁化準備のためのRFパルスが追跡コイルを用いて印加されてもよい。これらの概念は、磁気共鳴流体の流れを視覚化および測定するために使われることができる。これはまた、適正なカテーテル接触およびカテーテル冷却効率、特に適正なカテーテル先端接触およびカテーテル先端冷却効率を視覚化および検証するためにも使われてもよい。
【0021】
カテーテルは好ましくは、追跡コイルによって受信される磁気共鳴信号に基づいてカテーテルの位置を決定するためのカテーテル位置決定ユニットに接続可能である。
【0022】
本発明のあるさらなる側面によれば、そこから磁気共鳴信号が受信できるような磁気共鳴流体が提供される。該磁気共鳴流体はオブジェクトにエネルギーを加えるためのカテーテルのエネルギー印加要素を冷却するための冷却流体であり、カテーテルの空洞によって提供され、カテーテルの追跡コイルによって検出可能な磁気共鳴信号の生成を許容するよう適応される。ここで、該磁気共鳴流体は磁気共鳴造影剤を含む。これは、追跡コイルによって生成される信号をさらに増大させ、よって磁気共鳴撮像システム内のカテーテルの位置特定の信頼性をさらに高める。
【0023】
さらに、磁気共鳴流体がカテーテルのチャネルを通じてカテーテルの遠位端まで、特に冷却管によって、案内される場合、検出可能であってもよい遠位端のようなカテーテルの一部分、あるいはカテーテルの全長が、磁気造影剤の存在のため、磁気共鳴画像において視覚化されうる。さらに、たとえば灌注目的のために磁気共鳴流体がカテーテルを出る場合、磁気共鳴造影剤を有する磁気共鳴流体は、アブレーション部位に造影剤をドープすることによってアブレーション部位をマークするために使うことができる。たとえば、磁気共鳴流体は、組織がアブレーションされるため、より簡単にアブレーションされる組織にはいってもよい。よって、アブレーション手順が例えば心臓の壁の組織に適用される場合、アブレーションされる組織は、アブレーションされない組織と比較して、マークされることができる。
【0024】
本発明のあるさらなる側面では、カテーテルを位置特定するための磁気共鳴撮像システムが提供される。ここで、カテーテルは、オブジェクトにエネルギーを加えるためのエネルギー印加要素と、そこから磁気共鳴信号を受信できるような磁気共鳴流体として前記エネルギー印加要素を冷却するための冷却流体を提供するための空洞と、前記磁気共鳴流体から磁気共鳴信号を受信するよう適応された、前記カテーテルを追跡するための追跡コイルとを有する。ここで、前記磁気共鳴撮像システムは、カテーテルの空洞内に存在する磁気共鳴流体中に磁気共鳴信号を生成して、生成された磁気共鳴信号が追跡コイルによって受信できるようにするよう適応される。ここで、前記磁気共鳴撮像システムは、追跡コイルによって受信される磁気共鳴信号に基づいてカテーテルの位置を決定するためのカテーテル位置決定ユニットを有
し、前記空洞は前記追跡コイル内に位置される。
【0025】
本発明のあるさらなる側面では、請求項1で定義されるカテーテルおよび請求項9で定義される磁気共鳴撮像システムを使うことによってオブジェクトにエネルギーを加える方法が提供される。本方法は:
・前記カテーテルの前記エネルギー印加要素によって前記オブジェクトにエネルギーを加える段階と、
・前記カテーテルの前記空洞内の磁気共鳴流体として、前記エネルギー印加要素を冷却するための冷却流体を提供する段階と、
・前記カテーテルの前記空洞内に存在する前記磁気共鳴流体中に磁気共鳴信号を生成して、生成された磁気共鳴信号が追跡コイルによって受信できるようにする段階と、
・生成された磁気共鳴信号を追跡コイルによって受信する段階と、
・前記カテーテル位置決定ユニットによって、受信された磁気共鳴信号に基づいて前記カテーテルの位置を決定する段階とを含む。
【0026】
前記オブジェクトにエネルギーを加える段階は、前記冷却流体が提供され、前記カテーテルの位置が決定される前、その間またはその後に実行されることができることを注意しておくべきである。
【0027】
本発明のあるさらなる側面では、請求項1で定義されるカテーテルを製造する方法が提供される。本方法は:
a)カテーテルを提供する段階と;
b)前記カテーテルに、オブジェクトにエネルギーを加えるためのエネルギー印加要素を設ける段階と;
c)前記カテーテルに、そこから磁気共鳴信号を受信できるような磁気共鳴流体として前記エネルギー印加要素を冷却するための冷却流体を提供するための空洞を設ける段階と、
d)前記カテーテルに、前記磁気共鳴流体から磁気共鳴信号を受信するよう適応された、前記カテーテルを追跡するための追跡コイルを設ける段階とを含
み、前記カテーテルは、前記空洞が前記追跡コイル内に位置されるよう、前記空洞および前記追跡コイルを設けられる。
【0028】
段階c)およびd)が次の段階:
・前記追跡コイルを前記空洞のまわりに配置する段階と、
・前記追跡コイルをもつ前記空洞を前記カテーテル内に配置する段階とを有することがさらに好ましい。
【0029】
好ましくは、前記追跡コイルは、好ましくは流体チャネルである前記空洞のまわりに配置される。これは、冷却管であってもよい前記空洞のまわりに前記追跡コイルをあらかじめマウントすることを許容し、それによりカテーテル製造のために必要とされる工程数を減らす。
【0030】
前記追跡コイルを前記空洞のまわりに配置した後、次の段階:
・前記追跡コイルを同調〔チューニング〕および整合〔マッチング〕ネットワークと接続する段階と、
・前記空洞に、前記磁気共鳴流体である前記冷却流体を充填する段階と、
・前記同調および整合ネットワークを前記追跡コイルのために適応させる段階と、
・前記同調および整合ネットワークを、該同調および整合ネットワークを磁気共鳴受信器と接続するための接続要素と接続する段階、
が実行されることがさらに好ましい。
【0031】
前記接続要素は好ましくは接続ケーブルである。前記同調および整合ネットワークは好ましくはキャパシタンスを含み、前記同調および整合ネットワークのキャパシタンスは前記追跡コイルのために適応されている。たとえば、前記同調および整合ネットワークは、該同調および整合ネットワークの近位端に加えられる信号の反射が最小にされるよう適応される。これは、前記同調および整合ネットワークを、散乱パラメータS11が最小にされるよう適応させることによって達成できる。
【0032】
追跡コイルは好ましくは、最適な信号受信のために、任意の通常のMR受信コイルのような接続ケーブルに同調および整合させられる。これは、好ましくは、キャパシタを有する前記同調および整合ネットワークによって達成される。前記同調および整合ネットワークは好ましくはミニチュア同調および整合ネットワークである。最も単純なネットワークは追跡コイルと直列の一つのキャパシタおよび並列の一つのキャパシタからなる。キャパシタンスは、追跡コイルの同調および整合のために適応される必要があり、コイルのインピーダンスに敏感に依存する。追跡コイルは、コイル負荷(空洞中の磁気共鳴流体、たとえば水の存在)にも影響されるインピーダンスにおける何らかの公差をもってしか製造できないので、キャパシタンスは、負荷を付けた条件下の追跡コイルについて適応させられる。外部コイルについては、これは、キャパシタンスの適応の間、水中に浸されなければならないことを意味し、これは、コイルを密封した後でしかできず、その一方、キャパシタンスへのアクセスは引き続き提供されなければならないので、これは実際上は達成するのが非常に困難である。逆に、内部追跡コイルは、磁気共鳴流体を満たされた、すなわち負荷を付けられた条件の空洞で用意されることができ、ネットワーク上のキャパシタンスが適応されることができ、接続ケーブルが接続されることができ、このサブアセンブリーがカテーテル中に挿入されることができる。追跡サブシステムのこの別個の用意は、カテーテル製造を著しく簡略化する。
【0033】
本発明のあるさらなる側面では、請求項1で定義されるカテーテルおよび請求項9で定義される磁気共鳴撮像システムを使うことによってオブジェクトにエネルギーを加えるためのコンピュータ・プログラムが提供される。前記コンピュータ・プログラムは、前記コンピュータ・プログラムが前記カテーテルおよび前記磁気共鳴撮像システムを制御するコンピュータ上で実行されるとき、前記カテーテルおよび前記磁気共鳴撮像システムに
次の段階
、すなわち:
・前記エネルギー印加要素によって前記オブジェクトにエネルギーを加える段階と、
・前記カテーテルの前記空洞内の磁気共鳴流体として、前記エネルギー印加要素を冷却するための冷却流体を提供する段階と、
・前記カテーテルの前記空洞内に存在する前記磁気共鳴流体中に磁気共鳴信号を生成して、生成された磁気共鳴信号が前記追跡コイルによって受信できるようにする段階と、
・生成された磁気共鳴信号を前記追跡コイルによって受信する段階と、
・前記カテーテル位置決定ユニットによって、受信された磁気共鳴信号に基づいて前記カテーテルの位置を決定する段階とを実行させるためのプログラム・コード手段を有
し、前記冷却流体は、前記カテーテルの前記追跡コイル内に位置される前記空洞内において提供され、前記磁気共鳴信号は前記追跡コイル内に位置される前記空洞内に存在している前記磁気共鳴流体内において生成される。
【0034】
請求項1のカテーテル、請求項8の磁気共鳴流体、請求項9の磁気共鳴撮像システム、請求項10のオブジェクトにエネルギーを加える方法、請求項11のカテーテルを製造する方法および請求項14のコンピュータ・プログラムが、従属請求項で定義される同様のおよび/または同一の好ましい実施形態をもつことは理解しておくものとする。
【0035】
本発明のある好ましい実施形態は、それぞれの独立請求項と従属請求項の任意の組み合わせであることもできることは理解しておくものとする。
【0036】
本発明のこれらおよびその他の側面は、以下に記載される実施形態から明白となり、これを参照することで明快にされるであろう。