特許第5759403号(P5759403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759403
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】振動試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   G01M7/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-55733(P2012-55733)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-190271(P2013-190271A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】原島 正吉
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−015136(JP,A)
【文献】 特開昭59−180447(JP,A)
【文献】 特開平02−019738(JP,A)
【文献】 実開平01−142835(JP,U)
【文献】 米国特許第05610330(US,A)
【文献】 特開2005−091144(JP,A)
【文献】 特開2001−83035(JP,A)
【文献】 特開平8−136392(JP,A)
【文献】 特開平7−120351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体に振動を入力する複数の加振部と、上記加振部毎に設けられてそれぞれ対応する加振部を鉛直方向へ駆動する鉛直軸アクチュエータと、各加振部を水平方向へ駆動する水平軸駆動装置とを備えた振動試験機において、上記各水平軸駆動装置は、架台と、当該架台に立てた支柱と、一端が上記架台に対して上記加振部を駆動する方向と鉛直方向とを含む基準面に沿って回転可能に取り付けられる直動型アクチュエータと、一端が上記加振部に上記基準面に沿って回転可能に取り付けられる伝達ロッドと、上記支柱と上記直動型アクチュエータの他端と上記伝達ロッドの他端のそれぞれに対して上記基準面に沿って回転可能に取り付けられて上記直動型アクチュエータの往復運動を上記加振部の駆動方向への往復運動に変換する変換リンクとを備え、各加振部を同一方向へ駆動する各水平軸駆動装置の直動型アクチュエータは、上記支柱の駆動方向両側のうちいずれか一方側に配置されることを特徴とする振動試験機。
【請求項2】
上記加振部は四つ設けられ、各加振部を長方形の頂点に配置し、上記水平軸駆動装置は、各加振部毎に二つずつ設けられて、この同一の加振部に設けた各水平軸駆動装置の一方は、当該加振部を水平横方向へ駆動するとともに、他方は、当該加振部を水平縦方向へ駆動することを特徴とする請求項1に記載の振動試験機。
【請求項3】
上記加振部は、試験体が連結或いは載置される入力部と、当該入力部の少なくとも上記水平軸駆動装置の駆動方向に一致する方向への移動を可能としつつ当該入力部を保持するテーブルとを備え、上記鉛直軸アクチュエータは上記テーブルに連結され、上記伝達ロッドを上記入力部に球面軸受を介して連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の振動試験機。
【請求項4】
上記各加振部を同一方向へ駆動する上記各水平軸駆動装置における上記変換リンクは、支柱に対し同じ向きに設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の振動試験機。
【請求項5】
各加振部を同一方向へ駆動する各水平軸駆動装置の直動型アクチュエータのストローク位置が同じであれば、各加振部における同一方向の相対位置が変化しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の振動試験機。
【請求項6】
各加振部を同一方向へ駆動する各水平軸駆動装置における上記伝達ロッドの長さおよび変換リンクのレバー比を等しくしたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の振動試験機。
【請求項7】
基台と、基台上に水平X軸方向およびY軸方向へ駆動可能であって上記各加振部が一つずつ設けられる四つの架台とを備え、各水平軸駆動装置は、対応する加振部が設けられる架台上であって各加振部間の範囲より外側に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の振動試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動試験機としては、たとえば、車両等の車軸にXYZ軸方向の振動を与えて試験することができるものがある。このような振動試験機は、具体的には、四輪自動車を対象として、四輪の車軸を保持するハウジングと、ハウジングに対してX軸、Y軸およびZ軸方向の振動を与える各アクチュエータを備えている。
【0003】
そして、鉛直方向に直交して車両の横方向をX軸方向とすると、X軸方向のアクチュエータは、基台に対してX軸とZ軸とを含むXZ平面に沿って回転自在であって基台に対して鉛直に向く姿勢で取り付けられており、このアクチュエータの伸縮による往復運動をX軸方向へ変換してハウジングに伝達するようにしている。
【0004】
より詳しくは、基台に支柱を立て、三角形状であって一つの頂点を支柱に対してXZ平面に沿って回転自在に取り付けたリンクを設け、このリンクの他の頂点を上記のX軸のアクチュエータにXZ平面に沿って回転自在に取り付け、さらに、リンクの最後の頂点に球面軸受を介して操作リンクを取り付け、この操作リンクを球面軸受を介してハウジングに取り付けている。
【0005】
したがって、X軸のアクチュエータを伸縮させると、三角形状のリンクが支柱に取り付けた頂点を中心として揺動し、この三角形状のリンクの揺動が操作リンクを介してハウジングのX軸方向の往復運動として伝達される。このようなX軸のアクチュエータは各ハウジングに対してそれぞれ一つずつ設けられており、車両に対して横方向の振動を与えることができるようになっている。
【0006】
なお、車両の前後方向をY軸方向とすると、Y軸のアクチュエータもまた、X軸のアクチュエータと同様に構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−91144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の振動試験機は、たとえば、車両の前側の左右輪を保持するハウジングを考えると、これらハウジングを横方向に駆動するのは、先ほど述べたX軸のアクチュエータである。図4に示すように、これらハウジングH1,H2を駆動するX軸のアクチュエータA1,A2は、双方とも鉛直方向を向く姿勢で支柱P1,P2に対してハウジングH1,H2側に設置されている。
【0009】
したがって、これらX軸のアクチュエータA1,A2で車両を左側へ駆動する場合、図4中で左側のアクチュエータA1は伸長作動する必要があるが、図4中で右側のアクチュエータA2は収縮作動する必要がある。
【0010】
つまり、X軸方向に並べて配置されるハウジングH1,H2を同方向に駆動する場合、アクチュエータA1,A2は互いに反対の作動をしなくてはならない。
【0011】
したがって、Z軸のアクチュエータZ1,Z2を駆動して車両を上下方向のみで振動させる場合、アクチュエータA1,A2の一方については変位制御することができるが、アクチュエータA1,A2の他方については、たとえば、操作リンクに作用する荷重を監視し、荷重が0となるようにアクチュエータの発生荷重を制御するといった荷重制御を実施しなくてはならず、また、車両を加振中立点へ移動させるまでは、すべてのアクチュエータA1,A2を変位制御することになるが、振動試験を行う場合には、一方のアクチュエータの制御を荷重制御へバンプレスに切り換える必要があり、二つの制御を上手に使い分けしなくては車両へ望む振動を与えることができないので、制御が煩雑となる問題があるとともにロードセルや歪センサ等の設置が不可欠でコスト面での問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記不具合を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、制御が容易でコスト面でも有利な振動試験機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、試験体に振動を入力する複数の加振部と、上記加振部毎に設けられてそれぞれ対応する加振部を鉛直方向へ駆動する鉛直軸アクチュエータと、各加振部を水平方向へ駆動する水平軸駆動装置とを備えた振動試験機において、上記各水平軸駆動装置は、架台と、当該架台に立てた支柱と、一端が上記架台に対して上記加振部を駆動する方向と鉛直方向とを含む基準面に沿って回転可能に取り付けられる直動型アクチュエータと、一端が上記加振部に上記基準面に沿って回転可能に取り付けられる伝達ロッドと、上記支柱と上記直動型アクチュエータの他端と上記伝達ロッドの他端のそれぞれに対して上記基準面に沿って回転可能に取り付けられて上記直動型アクチュエータの往復運動を上記加振部の駆動方向への往復運動に変換する変換リンクとを備え、各加振部を同一方向へ駆動する各水平軸駆動装置の直動型アクチュエータは、上記支柱の駆動方向両側のうちいずれか一方側に配置されることを特徴とする。
【0014】
各加振部を同一方向へ駆動する各水平軸駆動装置の直動型アクチュエータは、上記支柱の駆動方向両側のうちいずれか一方側に配置されているため、各直動型アクチュエータを変位制御することで、試験体に荷重を作用させずに振動のみを作用させることもできるし、試験体に荷重を作用させることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の振動試験機によれば、制御が容易でコスト面でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態における振動試験機の平面図である。
図2】一実施の形態における振動試験機の鳥瞰図である。
図3】一実施の形態における振動試験機の水平軸駆動装置の動作を説明する図である。
図4】従来の振動試験機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における振動試験機Tは、図1および図2に示すように、基台Bと、図示しない試験体に振動を入力する四つの加振部2A,2B,2C,2Dと、加振部毎に設けられてそれぞれ対応する加振部2A,2B,2C,2Dを鉛直方向へ駆動する鉛直軸アクチュエータZと、各加振部2A,2B,2C,2Dを水平方向へ駆動する水平軸駆動装置X,Yとを備えて構成されている。
【0018】
振動試験機Tは、鉛直軸アクチュエータZで各加振部2A,2B,2C,2Dを図1中で紙面を貫く方向である上下方向(Z軸方向)へ駆動することができ、水平軸駆動装置Xで各加振部2A,2B,2C,2Dを水平横方向(X軸方向)である図1中左右方向へ駆動することができ、また、水平軸駆動装置Yで各加振部2A,2B,2C,2Dを鉛直軸アクチュエータZおよび水平横方向に直行する水平縦方向(Y軸方向)である図1中上下方向へ駆動することができるようになっている。
【0019】
そして、試験体を四輪車両として振動試験を行いたい場合、たとえば、車両の車輪を取り付けるブラケットを加振部2A,2B,2C,2Dに連結し、鉛直軸アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yで各加振部2A,2B,2C,2Dを駆動することで、四輪車両へ振動を与えることができるようになっている。なお、加振部2A,2B,2C,2Dに車輪を取り付けた四輪車両を乗せるようにして加振部2A,2B,2C,2Dを駆動することで振動試験を行うことも可能である。
【0020】
以下、一実施の形態の振動試験機Tの各部について詳細に説明する。各加振部2A,2B,2C,2Dは、この場合、図1に示すように、図1中左右方向に一致する水平横方向、つまりX軸方向であって同一線上に二つの加振部2A,2Bが、また、これに平行なX軸方向であって他の同一線上に二つの加振部2C,2Dが配置され、さらに、図1中上下方向に一致する水平縦方向、つまりY軸方向であって同一線上に二つの加振部2A,2Cが配置され、これに平行なY軸方向であって他の同一線上に二つの加振部2B,2Dが配置されている。なお、図1は、振動試験機Tを上方から見ており、紙面を貫く方向が鉛直方向であるから、図1中で左右方向と上下方向は、振動試験機Tの水平方向となる。
【0021】
なお、加振部2A,2B,2C,2Dが取付けられる試験体の取付部位によっては、必ずしも加振部2A,2B,2C,2Dが二つずつ同一線上に配置されるような関係に無くとも良く、たとえば、加振部2A,2B,2C,2Dを台形や平行四辺形の頂点に配置することもできる。また、加振部の設置数は2つ以上であればよい。
【0022】
そして、加振部2A,2B,2C,2Dは、図2に示すように、四つとも同様の構成を備えており、図示しない試験体が連結或いは載置される入力部3と、当該入力部3の各水平軸駆動装置X,Yの駆動方向に一致する方向への移動を可能としつつ当該入力部3を保持するテーブル4とを備えている。
【0023】
入力部3は、この実施の形態の場合、台状とされていて、試験体や試験体を連結するための部品を固定できるように、上端に開口するボルト孔(符示せず)が多数設けられている。したがって、たとえば、この入力部3に試験体を固定したい場合、ボルト止め可能であれば直接に試験体を固定してもよいし、たとえば、試験体が車両であれば上記ブラケットに連結可能な部品を介し入力部3と車両とを連結するようにしてもよい。なお、入力部3の形状や構造は、試験体に応じて適するように適宜設計変更することが可能である。
【0024】
入力部3とテーブル4との間には、テーブル4に対する入力部3のX軸方向への移動と、テーブル4に対する入力部3のY軸方向への移動とを許容する二軸スライド機構5が介装されている。
【0025】
鉛直軸アクチュエータZは、加振部毎に一つずつ設けられていて、この例では、テレスコピック型の油圧サーボシリンダとされており、図外の油圧源からの圧油の給排により伸縮作動するようになっており、一端が上記した加振部2A,2B,2C,2Dのテーブル4に連結され他端が架台1に固定される。この例では、架台1は、加振部2A,2B,2C,2D毎に設けられていて、うち二つの架台1が基台Bに対してX軸方向へ移動可能に取り付けた可動台20にY軸方向へ移動可能に取り付けられ、残りの二つの架台1が基台Bに対してX軸方向へ移動可能に取り付けた可動台21にY軸方向へ移動可能に取り付けられ、各架台1は、基台Bに対してXY軸方向へ移動可能とされている。したがって、架台1を基台B上の任意の位置に移動させることで、加振部2A,2B,2C,2Dの位置を試験体に適する位置に位置決める事ができる。
【0026】
戻って、鉛直軸アクチュエータZは、架台1に対して鉛直方向に起立されていて、この鉛直軸アクチュエータZを伸縮作動することで、対応する加振部2A,2B,2C,2Dを上下方向へ駆動させることができる。
【0027】
各水平軸駆動装置Xは、架台1に立てた支柱6と、一端が架台1に対して加振部2A,2B,2C,2Dを駆動する方向であるX軸方向と、対応する加振部2A,2B,2C,2Dの鉛直方向とを含む面を基準面とすると当該基準面に沿って回転可能に取り付けられる直動型アクチュエータ7と、一端が加振部2A,2B,2C,2Dに基準面に沿って回転可能に取り付けられる伝達ロッド8と、支柱6、直動型アクチュエータ7の他端および伝達ロッド8の他端のそれぞれに対し基準面に沿って回転可能に取り付けられて直動型アクチュエータ7の往復運動を加振部2A,2B,2C,2Dの駆動方向への往復運動に変換する変換リンク9とを備えて構成されている。なお、水平軸駆動装置Xが駆動するのが加振部2Aである場合、この加振部2Aを駆動する水平軸駆動装置Xにおける直動型アクチュエータ7、伝達ロッド8および変換リンク9における変換リンク9の回転可能な方向である基準面は、当該加振部2Aが駆動される方向であるX軸方向と当該加振部2Aの鉛直方向を含む面である。
【0028】
そして、各加振部2A,2B,2C,2Dを同一方向であるX軸方向へ駆動する各水平軸駆動装置Xにおける各直動型アクチュエータ7は、全て支柱6の駆動方向であるX軸方向の両側のうち一方側、つまり、図1中で支柱6の右側に配置される。なお、各水平軸駆動装置Xにおける各直動型アクチュエータ7を支柱6の駆動方向両側のうち上記とは反対側の図1中左側に配置するようにしてもよい。
【0029】
支柱6は、架台1に起立しており、その先端には、略三角形状の変換リンク9が回転可能に取り付けられている。変換リンク9は、この場合、その一頂点の近傍を支柱6にヒンジ結合することによって支柱6に連結されていて、支柱6に対して基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられている。
【0030】
直動型アクチュエータ7は、この例では、テレスコピック型の油圧サーボシリンダとされており、図外の油圧源からの圧油の給排により伸縮作動するようになっており、一端が上記した架台1にヒンジ結合することによって当該架台1に連結されており、架台1に対して基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられている。また、直動型アクチュエータ7の他端は、架台1にヒンジ結合することによって当該架台1に連結されており、変換リンク9が連結される頂点以外の一頂点近傍にヒンジ結合されていて、直動型アクチュエータ7は変換リンク9に対しても基準面に沿う回転のみが許容される。
【0031】
伝達ロッド8は、棒状であって、その一端が変換リンク9の支柱6、直動型アクチュエータ7が連結されていない、残りの頂点の近傍に球面軸受10を介して連結されており、球面軸受10を中心として基準面に沿っての回転のみならず首振りも可能に取り付けられている。また、伝達ロッド8の他端は、加振部2A,2B,2C,2Dの二軸スライド機構5のうちX軸方向へ移動可能な部分に球面軸受11を介して連結されており、球面軸受11を中心として基準面に沿っての回転のみならず首振りも可能に取り付けられている。このように、伝達ロッド8が加振部2A,2B,2C,2Dと変換リンク9に球面軸受10,11を介して連結されているのは、この実施の形態では、加振部2A,2B,2C,2Dを水平軸駆動装置YでY軸方向へも駆動するようになっているため、伝達ロッド8を加振部2A,2B,2C,2Dと変換リンク9に対し首振り可能としてY軸方向の駆動を許容するためであるが、水平軸駆動装置Yを設けない場合には、伝達ロッド8を加振部2A,2B,2C,2Dと変換リンク9にヒンジ結合して基準面に沿う回転のみを許容するようにしてもよい。
【0032】
このように構成された水平軸駆動装置Xは、図3にて、直動型アクチュエータ7を伸長させると、これによって変換リンク9が支柱6へのヒンジ結合点にて反時計回りに回転し伝達ロッド8が左方へ引っ張られるので、加振部2Aの入力部3を図3中左方向へ駆動することができ、反対に、直動型アクチュエータ7を収縮させると、これによって変換リンク9が支柱6へのヒンジ結合点にて時計回りに回転し伝達ロッド8が右方へ押されるので、加振部2Aの入力部3を図3中右方向へ駆動することができる。つまり、この水平軸駆動装置Xは、変換リンク9と支柱6とでベルクランク機構を構成し、直動型アクチュエータ7の伸縮運動をX軸方向の運動へ変換して加振部2A,2B,2C,2Dへ伝達することができる。なお、各水平軸駆動装置Xにおける各変換リンク9は、支柱6の右方へ配置される各直動型アクチュエータ7の伸縮運動を伝達ロッド8を介して各加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向の運動へ変換するので、全て支柱6に対して同じ向きに取り付けられている。また、変換リンク9は、強度面で有利なために三角形状とされているが、上記したように、直動型アクチュエータ7の伸縮運動を加振部2Aにおける入力部3のX軸方向の運動にできればよいのでL字状等の三角形状以外の形状とされてもよい。
【0033】
また、この実施の形態では、各水平軸駆動装置Xにおける各直動型アクチュエータ7の仕様は同じとされていて、伝達ロッド8の長さ、変換リンク9の直動アクチュエータ7の伸縮運動を加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向の運動へ変換する際のレバー比が等しくなっており、各水平軸駆動装置Xにおける直動型アクチュエータ7のストローク位置が同じ位置にある場合に各加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向の相対位置が変化しないように配慮されている。したがって、直動型アクチュエータ7がオフされて最収縮状態となっても、加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向の相対位置が変化しない。
【0034】
なお、直動型アクチュエータ7が架台1に対し基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられるか、変換リンク9が支柱6に対し基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられていれば、直動型アクチュエータ7の伸縮運動を加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向への往復運動へ確実に変換することができるが、この実施の形態の場合、直動型アクチュエータ7が架台1および変換リンク9に対し基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられるとともに、変換リンク9が支柱6に対し基準面に沿う回転のみが許容される態様で取り付けられていて、ガタなく直動型アクチュエータ7の伸縮運動を加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向への往復運動へ変換することができるようになっている。
【0035】
各水平軸駆動装置Yは、水平軸駆動装置Xと同じ構成であり、架台1に立てた支柱6と、一端が架台1に対して加振部2A,2B,2C,2Dを駆動する方向であるY軸方向と鉛直方向とを含む面を基準面とすると当該基準面に沿って回転可能に取り付けられる直動型アクチュエータ7と、一端が加振部2A,2B,2C,2Dに基準面に沿って回転可能に取り付けられる伝達ロッド8と、支柱6、直動型アクチュエータ7の他端および伝達ロッド8の他端のそれぞれに対し基準面に沿って回転可能に取り付けられて直動型アクチュエータ7の往復運動を加振部2A,2B,2C,2Dの駆動方向への往復運動に変換する変換リンク9とを備えて構成されている。なお、水平軸駆動装置Yが駆動するのが加振部2Aである場合、この加振部2Aを駆動する水平軸駆動装置Yにおける直動型アクチュエータ7、伝達ロッド8および変換リンク9における直動変換リンク9の回転可能な方向である基準面は、当該加振部2Aが駆動される方向であるY軸方向と当該加振部2Aの鉛直方向を含む面である。
【0036】
そして、各加振部2A,2B,2C,2Dを同一方向であるY軸方向へ駆動する各水平軸駆動装置Yにおける各直動型アクチュエータ7は、全て支柱6の駆動方向であるY軸方向の両側のうち一方側、つまり、図1中で支柱6の下側に配置される。なお、各水平軸駆動装置Yにおける各直動型アクチュエータ7を支柱6の駆動方向両側のうち上記とは反対側の図1中上側に配置するようにしてもよい。なお、水平軸駆動装置Yの各部は、上記した水平軸駆動装置Xと同じ部品で同様に構成されているので、詳しい説明を省略する。なお、水平軸駆動装置Yにおける伝達ロッド8は、球面軸受11を介して加振部2A,2B,2C,2Dの二軸スライド機構5のうちY軸方向へ移動可能な部分に連結される。
【0037】
また、水平軸駆動装置Yにあっても、各直動型アクチュエータ7の仕様は同じとされていて、伝達ロッド8の長さ、変換リンク9の直動アクチュエータ7の伸縮運動を加振部2A,2B,2C,2DのY軸方向の運動へ変換する際のレバー比が等しくなっており、各水平軸駆動装置Yにおける直動型アクチュエータ7のストローク位置が同じ位置にある場合に各加振部2A,2B,2C,2DのX軸方向の相対位置が変化しないように配慮されている。したがって、直動型アクチュエータ7がオフされて最伸長或いは最収縮状態となっても、加振部2A,2B,2C,2DのY軸方向の相対位置が変化しない。また、各鉛直アクチュエータZも全て同じものである。よって、鉛直アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7の全てがオフされて最収縮状態となっても、全ての加振部2A,2B,2C,2Dの鉛直方向、X軸方向およびY軸方向の相対位置が変化せず、無負荷で試験体を最下方へ移動させることができ、試験体へ荷重を作用させて傷めてしまう恐れもない。
【0038】
また、この振動試験機Tの場合、全ての水平軸駆動装置X,Yが各加振部2A,2B,2C,2D間の外側に配置される、つまり、各加振部2A,2B,2C,2Dで取り囲まれた四角形の範囲よりもすべて外側に配置されているので、架台1を移動させて各加振部2A,2B,2C,2D間の距離を小さくした場合に水平軸駆動装置X,Yが邪魔になることが無く、小さな試験体の振動試験を行うことができるとともに、各水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7とその駆動に必要な機器との接続や配管等の設置が容易となる。
【0039】
つづいて、図3を用いて上記した振動試験機Tの動作を説明する。まず、加振部2A,2Bを左方向へ同期させて移動させる場合、各直動型アクチュエータ7が支柱6の駆動方向両側のうち一方側に配置されているため、加振部2A側の直動型アクチュエータ7と加振部2B側の直動型アクチュエータ7とを同じ量だけ伸長側にストロークすればよく、反対に、加振部2A,2Bを右方向へ同期させて移動させる場合、加振部2A側の直動型アクチュエータ7と加振部2B側の直動型アクチュエータ7とを同じ量だけ収縮側にストロークすればよい。
【0040】
さらに、加振部2A,2BのX軸方向の距離を変えたい場合、加振部2A側の直動型アクチュエータ7と加振部2B側の直動型アクチュエータ7のストローク量を違えればよく、各直動型アクチュエータ7のストローク量を制御することで試験体に荷重を作用させることができる。
【0041】
また、各鉛直アクチュエータZを上下方向へ伸縮させて加振部2A,2Bを上下方向へ駆動する場合、双方の直動型アクチュエータ7を同期させて伸縮させることで、加振部2A,2Bを左右方向であるX軸方向に対して無負荷状態としつつ、加振部2A,2Bを上下動させることができる。
【0042】
このように各直動型アクチュエータ7を変位制御することで、試験体に荷重を作用させずに振動のみを作用させることもできるし、試験体に荷重を作用させることもできる。このことは、全ての水平軸駆動装置X、全ての水平軸駆動装置Yの直動型アクチュエータ7が支柱6の駆動方向両側のうち一方側に配置されているため、全ての水平軸駆動装置X、全ての水平軸駆動装置Yについても上記と同様のことが言える。
【0043】
よって、この振動試験機Tによれば、伝達ロッド8等に作用している荷重を監視し、これをフィードバックする荷重制御を実施する必要が無く、直動型アクチュエータ7を変位制御すれば足りるので、制御を変位制御から荷重制御へバンプレスに切り換える必要もなく制御が容易で、ロードセルや歪センサ等の設置が不要となるからコスト面でも有利となる。
【0044】
さらに、鉛直アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7の油圧を全てオフした状態として、これら鉛直アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7が最収縮状態とする場合、水平軸駆動装置X,Yの加振部2A,2B,2C,2Dの直動型アクチュエータ7同士が互いに押しあったり引きあったりすることが無いから、試験体の着脱作業を安全に行うことができる。また、失陥によって鉛直アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7が全てオフされても、直動型アクチュエータ7同士が相手の動きに干渉しないので試験体を最下方へ速やかに移動させることができる。さらに、試験体を加振部2A,2B,2C,2Dに取り付けた後に、加振部2A,2B,2C,2Dを加振中立点へ移動させる、つまり、鉛直アクチュエータZおよび水平軸駆動装置X,Yの直動型アクチュエータ7の全てがストローク中心までストロークする場合にあっても、各アクチュエータZ,7を変位制御すれば足りる。
【0045】
なお、上記したところでは、四つの加振部2A,2B,2C,2Dを備えてX軸方向へ駆動する水平軸駆動装置XとY軸方向へ駆動する水平軸駆動装置Yとを備えているが、たとえば、図1,2中から加振部2C,2Dを取り除いて加振部2A,2Bのみを水平軸駆動装置X,YでX軸およびY軸方向に駆動するようにしてもよい。この場合、たとえば、Y軸方向に駆動する水平軸駆動装置Yを省略してもよい。さらに、この例では、水平軸駆動装置Xで加振部2A,2B,2C,2Dを水平横方向へ駆動し、水平軸駆動装置Yで加振部2A,2B,2C,2Dを水平縦方向へ駆動しているが、水平軸駆動装置Xと水平軸駆動装置Yの駆動方向が直交する方向でなくともよい。
【0046】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 架台
2A,2B,2C,2D 加振部
3 入力部
4 テーブル
6 支柱
7 直動型アクチュエータ
8 伝達ロッド
9 変換リンク
T 振動試験機
X,Y 水平軸駆動装置
Z 鉛直軸アクチュエータ
図1
図2
図3
図4