(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス容器の表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚を非接触で測定する装置であって、前記ガラス容器に向けて光を照射する投光器およびガラス容器の前記被膜からの反射光を受光する受光器を有するヘッド部と前記受光器による反射光の受光量に応じた測定データを得る測定回路部とを含む光量測定センサと、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離を測定する距離測定センサと、前記光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み反射光の受光量を被膜の膜厚算出データに換算しかつ前記膜厚算出データが前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じて補正された値となる演算式による演算を実行する演算制御装置とから成り、前記演算制御装置は、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた複数個の前記演算式が記憶されるメモリを有し、前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式を前記メモリに記憶された複数個の演算式より選択して、その選択された演算式による演算を実行することにより前記膜厚算出データを得ることを特徴とする金属酸化物被膜の膜厚測定装置。
ガラス容器の表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚が適正であるかどうかを検査する装置であって、表面に金属酸化物被膜が形成されたガラス容器を搬送するコンベヤと、前記コンベヤ上に並ぶ複数のガラス容器について前記被膜の膜厚を非接触で測定する膜厚測定装置と、前記コンベヤに沿う膜厚測定装置の下流位置に配置され被膜の膜厚が適正でないガラス容器をコンベヤ上より排除する排出機構とを有し、前記膜厚測定装置は、コンベヤ上のガラス容器に向けて光を照射する投光器およびガラス容器の前記被膜からの反射光を受光する受光器を有するヘッド部と前記受光器による反射光の受光量に応じた測定データを得る測定回路部とを含む光量測定センサと、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離を測定する距離測定センサと、前記光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み反射光の受光量を被膜の膜厚算出データに換算しかつ前記膜厚算出データが前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じて補正された値となる演算式による演算を実行する演算制御装置とから成り、前記光量測定センサのヘッド部および距離測定センサは、前記コンベヤに沿う前記ガラス容器と対向する位置にそれぞれ配置され、前記演算制御装置は、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた複数個の前記演算式が記憶されるメモリを有し、前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式を前記メモリに記憶された複数個の演算式より選択して、その選択された演算式による演算を実行することにより前記膜厚算出データを得るとともに、前記膜厚算出データによって被膜の膜厚が適正であるかどうかを判断し、適正でないと判断したガラス容器をコンベヤ上より排除するための信号を生成して前記排出機構へ出力することを特徴とする金属酸化物被膜の膜厚検査装置。
【背景技術】
【0002】
製びん工場で製造されるガラスびんの多くは、表面が傷付くのを防ぎ、ガラスびんの強度低下を防止するために、表面に「コールドエンドコーティング」と呼ばれる潤滑性のあるコーティングが施されている。このコールドエンドコーティングを施すのに、その下地として、びん成形直後の高温な状態下で「ホットエンドコーティング」と呼ばれるコーティングが施される。この「ホットエンドコーティング」は、ナノメートルレベルの非常に薄い酸化スズ、酸化チタンの被膜である。この種の金属酸化物被膜(以下、単に「被膜」ともいう。)の膜厚は、厚すぎると、内容物を充填するラインでガラスびんをアルカリ洗浄したとき、被膜が剥離してガラスびんの表面に虹彩現象が発生するおそれがある。また、薄すぎると、ガラスびんの表面が傷付くおそれがあり、ガラスびんの強度低下を招く。
【0003】
製びん工場では、ユーザーの使用条件に合わせてガラスびんの表面に形成する酸化スズの被膜の膜厚をガラスびん毎に設定し、検査工程において、被膜の膜厚を測定して、その測定値が適正でないガラスびんを不良品として除去することにより膜厚を適正値に管理している。
【0004】
上記した酸化スズの被膜の膜厚を測定するのに、従来よりアメリカングラスリサーチ社製(以下「AGR社製」という。)の膜厚測定装置が広く用いられている。このAGR社製の膜厚測定装置は、屈折率がガラスに近い液体(これを「インデックス液」という。)をガラスびんの表面に塗布したうえで、ガラスびんの表面に向けて光を当てて、被膜の表面での屈折光と被膜とガラスびんの界面の屈折光とを測定し、その差より膜厚を測定するものである(特許文献1の「従来の技術」の欄を参照)。この測定は手作業により行われるもので、
図7に示すように、回転可能なテーブル90上にガラスびんGを載せてクランプ機構91により回動自由に支持し、ヘッド部92をガラスびんGの表面に当てて、ヘッド部92とガラスびんGとをインデックス液を介して光学的に結合させる。モータ駆動部93によりテーブル90を回転させて測定を開始すると、ヘッド部92によりガラスびんGの外周の所定の測定点において被膜の膜厚が測定される。なお、測定結果はAGR社独自の光学単位であるCTU(Coating Thickness Units)により出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したAGR社製の膜厚測定装置9では、ガラスびんGの表面にインデックス液が塗布されるので、ガラスびんGが汚れるという問題がある。インデックス液を使用しないタイプの膜厚測定装置も提案されているが(特許文献1参照)、その提案された膜厚測定装置は抵抗測定用の端子を、AGR社製の膜厚測定装置9はヘッド部92を、それぞれガラスびんGの表面に接触させるので、ガラスびんGが傷付けられるおそれがある。
【0007】
上記した接触タイプに代えて非接触の膜厚測定装置も考えられるが、ヘッド部をガラスびんの表面から離して固定した場合、ガラスびんの胴部公差や偏芯によってヘッド部とガラスびんとの距離が変動するため、膜厚の測定値が距離に応じて変動することになり、膜厚の測定結果に信頼性が得られない。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、ガラス容器の表面に形成された酸化スズなどの金属酸化物被膜の膜厚を非接触で測定でき、しかも、ガラス容器の胴径公差や偏芯などに影響されずに被膜の膜厚を正確に測定できる金属酸化物被膜の膜厚測定装置を提供することを目的とする。
また、この発明が他に目的とするところは、上記の膜厚測定装置をガラス容器の外周面に形成された金属酸化物被膜の膜厚検査に用い、被膜の膜厚が不適正なガラス容器を検出して排除することにより、被膜の膜厚を適正値に管理することができる金属酸化物被膜の膜厚検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による金属酸化物被膜の膜厚測定装置は、ガラス容器の表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚を非接触で測定するものであって、前記ガラス容器に向けて光を照射する投光器およびガラス容器の前記被膜からの反射光を受光する受光器を有するヘッド部と前記受光器による反射光の受光量に応じた測定データを得る測定回路部とを含む光量測定センサと、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離を測定する距離測定センサと、前記光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み反射光の受光量を被膜の
膜厚算出データに換算
しかつ前記膜厚算出データが前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じて補正された値となる演算式による演算を実行する演算制御装置とから成る。前記演算制御装置は、
前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた複数個の前記演算式が記憶されるメモリを有し、前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式を前記メモリに記憶された複数個の演算式より選択して、その選択された演算式による演算を実行することにより前記膜厚算出データを得ることを特徴とする。
【0010】
上記した構成の膜厚測定装置により例えばガラスびんの表面に形成された酸化スズなどの金属酸化物被膜の膜厚を測定するには、光量測定センサのヘッド部をガラスびんと対向する位置に配置し、ヘッド部の投光器よりガラスびんに向けて光を照射する。その照射光はガラスびんの前記被膜で反射され、その反射光はヘッド部の受光器で受光されるとともに、測定回路部により反射光の受光量に応じた測定データが取得される。反射光の受光量は被膜の膜厚が大きければ増加し、小さければ減少するもので、演算制御装置は光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み、反射光の受光量を被膜の膜厚に換算する演算を実行することにより膜厚算出データを得る。
この場合、被膜の膜厚が同じガラスびんであっても、ヘッド部とガラスびんとの距離が大きいと反射光の受光量は減少し、小さいと増加するので、光量測定センサのヘッド部とガラスびんとの距離を距離測定センサにより測定するとともに、前記演算制御装置は、
距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式、すなわち、前記膜厚算出データが前記距離測定センサより取り込んだ距離の測定値に応じて補正された値となる演算式
を選択して被膜の膜厚を算出する。これにより、算出される被膜の膜厚は光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた値に補正されている。
【0013】
この発明による金属酸化物被膜の膜厚検査装置は、ガラス容器の表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚が適正であるかどうかを検査するものであって、表面に金属酸化物被膜が形成されたガラス容器を搬送するコンベヤと、前記コンベヤ上に並ぶ複数のガラス容器について前記被膜の膜厚を非接触で測定する膜厚測定装置と、前記コンベヤに沿う膜厚測定装置の下流位置に配置され被膜の膜厚が適正でないガラス容器をコンベヤ上より排除する排出機構とを有している。前記膜厚測定装置は、コンベヤ上のガラス容器に向けて光を照射する投光器およびガラス容器の前記被膜からの反射光を受光する受光器を有するヘッド部と前記受光器による反射光の受光量に応じた測定データを得る測定回路部とを含む光量測定センサと、前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離を測定する距離測定センサと、前記光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み反射光の受光量を被膜の
膜厚算出データに換算
しかつ前記膜厚算出データが前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じて補正された値となる演算式による演算を実行する演算制御装置とから成る。前記光量測定センサのヘッド部および距離測定センサは、前記コンベヤに沿う前記ガラス容器と対向する位置にそれぞれ配置される。前記演算制御装置は、
前記光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた複数個の前記演算式が記憶されるメモリを有し、前記距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式を前記メモリに記憶された複数個の演算式より選択して、その選択された演算式による演算を実行することにより前記膜厚算出データを得るとともに、前記膜厚算出データによって被膜の膜厚が適正であるかどうかを判断し、適正でないと判断したガラス容器をコンベヤ上より排除するための信号を生成して前記排出機構へ出力する。
【0014】
上記した構成の膜厚検査装置により例えばガラスびんの表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚が適正であるかどうかを検査するのに、ガラスびんを搬送するコンベヤに沿うガラスびんと対向する位置に光量測定センサのヘッド部および距離測定センサがそれぞれ配置される。コンベヤにより搬送されてくるガラスびんに向けて光量測定センサのヘッド部の投光器より光を照射すると、その照射光はガラスびんの前記被膜で反射され、その反射光はヘッド部の受光器で受光されるとともに、測定回路部により反射光の受光量に応じた測定データが取得される。反射光の受光量は被膜の膜厚が大きければ増加し、小さければ減少するもので、演算制御装置は光量測定センサの測定回路部より測定データを取り込み、反射光の受光量を被膜の膜厚に換算する演算を実行することにより膜厚算出データを得る。
この場合、被膜の膜厚が同じガラスびんであっても、ヘッド部とガラスびんとの距離が大きいと反射光の受光量は減少し、小さいと増加するので、光量測定センサのヘッド部とガラスびんとの距離を距離測定センサにより測定するとともに、前記演算制御装置は、
距離測定センサで得られた距離の測定値に応じた演算式、すなわち、前記膜厚算出データが前記距離測定センサより取り込んだ距離の測定値に応じて補正された値となる演算式
を選択して被膜の膜厚を算出する。これにより、算出される被膜の膜厚は光量測定センサのヘッド部とガラス容器との距離に応じた値に補正されている。そして、演算制御装置は、膜厚測定装置により得られた
膜厚算出データによってガラスびんの膜厚が適正であるかどうかを判断し、適正でないと判断したガラスびんをコンベヤ上から排除するための信号を生成して排出機構へ出力する。排出機構は、この信号を受けて、コンベヤに沿う膜厚測定装置の下流位置において、前記演算制御装置からの信号に応動してコンベヤ上より不良品のガラスびんを排除する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ガラス容器の表面に形成された酸化スズなどの金属酸化物被膜の膜厚を非接触で測定することができ、しかも、ガラス容器の胴径公差や偏芯などに起因して光量測定センサのアンプ部とガラス容器との距離が変動しても、それに影響されずに被膜の膜厚を正確に測定することができる。
また、この発明によれば、被膜の膜厚が不適正なガラス容器を検出して排除することができるので、被膜の膜厚を適正値に管理できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、この発明の一実施例である金属酸化物被膜の膜厚検査装置1の概略構成と、その膜厚検査装置1をガラスびんGの検査に実施した状態とを示している。図示例の膜厚検査装置1は、ガラスびんGの表面に形成された金属酸化物被膜の膜厚を測定し、その膜厚が適正であるかどうかを検査するものである。なお、検査の対象はガラスびんに限らず、その他のガラス容器であってもよい。検査の対象のガラスびんGは、表面にコールドエンドコーティングが施され、その下地としてホットエンドコーティングが施されている。膜厚測定装置3はホットエンドコーティングにより少なくともガラスびんGの胴部の表面に形成された酸化スズの被膜の膜厚を胴部の上部位置で測定しかつその膜厚の測定値が規格内であるかどうかにより膜厚の適否を判断する。なお、金属酸化物被膜は酸化スズの被膜に限らず、例えば酸化チタンの被膜であってもよい。また、実施に際しては、胴部の上部位置と下部位置の2箇所について膜厚測定を行って膜厚の適否を判断するのが望ましく、この場合は、後述する光量測定センサ4と距離測定センサ5との組を2組用意して上下の各位置にそれぞれ配置する。
【0018】
ガラスびんGは、図示しない製びん機により成形された直後の高温な状態下で、前記のホットエンドコーティングが施されて主に胴部の表面全体に酸化スズの被膜が形成される。その後、徐冷工程を経た後に前記のコールドエンドコーティングが施される。これらのコーティング処理が施されたガラスびんGは、
図1に示すコンベヤ2によって検査工程に送られてくる。検査工程ではガラスびんGの欠陥の有無などが検査されるもので、膜厚検査装置1が設置されている検査ステーションでは、全てのガラスびんGを対象として各ガラスびんGの表面に形成されたホットエンドコーティングによる被膜の膜厚が測定され、かつその膜厚が規格内であるかどうかによって適否が判断される。
【0019】
膜厚検査装置1は、複数個のガラスびんGを起立した姿勢で搬送する前記のコンベヤ2と、コンベヤ2上にほぼ一定間隔で並んだ複数のガラス容器Gについて前記ホットエンドコーティングによる酸化スズの被膜の膜厚を非接触で測定する膜厚測定装置3と、コンベヤ2に沿う膜厚測定装置3の下流位置に配置され酸化スズの被膜の膜厚が適正でないと判断されたガラス容器Gを不良品としてコンベヤ2上より受皿70上へ排除する排出機構7とを有している。
【0020】
コンベヤ2には、ガラスびんGを1列に整列させて搬送するための左右のガイド21,22が設けられており、コンベヤ2による搬送経路の途中に膜厚測定装置3が、その下流のガイド21,22が途切れた箇所に不良品の排出機構7および受皿70が、それぞれ配備されている。排出機構7は、不良と判定されたガラスびんGに向けてエアを吹き付けることによりそのガラスびんGを受皿70上へ押し出して、コンベヤ2上から排除する。なお、排出機構7は、図示例のような非接触式のものに限らず、押圧板を往復動させる接触式のものであってもよい。
【0021】
膜厚測定装置3は、光量測定センサ4と距離測定センサ5と演算制御装置6とからなるもので、光量測定センサ4の上流位置にはびん検知センサ8が配置されている。びん検知センサ8は例えば光電センサにより構成され、ガラスびんGが通過して膜厚の検査領域に入ったことを検出し、演算制御装置6へびん検出信号iを出力する。
【0022】
光量測定センサ4は、
図2に示すように、ヘッド部41と測定回路部40とから成る。ヘッド部41は、コンベヤ2上のガラスびんGに向けて単一波長の均質な光を照射する投光器42と、ガラスびんGの酸化スズの被膜10からの反射光を受光して受光信号を得る受光器43とを有している。測定回路部40は増幅回路やA/D変換器などの回路を含み、受光器43で得られた受光信号を入力して増幅した後、増幅された信号をデジタル量に変換し、反射光の受光量に応じた測定データを得る。ガラスびんGの被膜10からの反射光の光量は被膜10の膜厚が大きくなるにしたがって増すもので、したがって、受光器43による反射光の受光量も被膜10の膜厚が大きくなるにしたがって増す。前記演算制御装置6は、マイクロコンピュータにより構成されており、制御、演算の主体であるCPUは、測定回路部40より測定データを取り込み、反射光の受光量を被膜10の膜厚に換算する演算を実行することにより膜厚算出データを得る。この演算の詳細は後述するが、図示しないメモリに記憶させた複数個の演算式(後述する回帰式)より選択されたいずれかの演算式を用いて実行される。
【0023】
なお、
図1の実施例では、光量測定センサ4のヘッド部41と対向するガラスびんGの外周面上の1点について被膜10の膜厚を測定しているが、
図3に示す実施例のように、間欠回動するスターホイール22によって各検査ステーションへガラスびんGを導く方式のものでは、検査ステーションに設けられた回転テーブル23の回転中心上にガラスびんGを導入し、回転テーブル23を回動させることにより被膜の膜厚をガラスびんGの外周面の複数点で測定することが可能である。
【0024】
図4に示すグラフは、反射光量をガラスびんGの被膜10の膜厚に換算するための近似曲線とその近似曲線を表す二次関数の数式とを示している。同図のグラフにおいて、横軸xはガラスびんGの表面に光量測定センサ4の投光器42より光を照射しガラスびんGからの反射光を受光器43で受光することにより得られた測定データを、縦軸yはガラスびんGの表面に形成された酸化スズの被膜の膜厚を、それぞれ示しており、前記被膜の膜厚にバラツキのある多数本のガラスびんGのサンプルについて得られた反射光の受光量の測定データと前記したAGR社製の膜厚測定装置により測定された酸化スズの被膜の膜厚の測定値との組がxy座標平面上にプロットされている。なお、反射光の受光量の測定は、光量測定センサ4のヘッド部41をガラスびんGの表面に当接させた状態で行われたものである。
同図において、Pは上記の点の分布をよく近似する近似曲線であり、矩形枠R内の数式S1はこの近似曲線Pを2次関数で表した回帰式、数式S2は相関係数である。
【0025】
図4に示す近似曲線Pによると、酸化スズの被膜の膜厚と反射光の受光量との関係は、被膜の膜厚が増すにしたがって反射光の受光量が増すという関係にあることがわかる。酸化スズの被膜に光が当たると、被膜に存在する自由電子などが光のエネルギーを吸収して共鳴振動を起こし、その振動のエネルギーを反射光として放出するものと考えられ、その反射光量は被膜の奥行き方向の自由電子の分布、すなわち、被膜の膜厚に応じて増加してゆくものと推測される。
【0026】
以上のことから、光量測定センサ4のヘッド部41をガラスびんGの表面に当接させた状態で投光および受光を行って反射光の受光量の測定データを取得したとき、
図4に示す近似曲線Pまたは数式S1の回帰式によってそのガラスびんGの被膜の膜厚を取得できるが、光量測定センサ4のヘッド部41をガラスびんGの表面に接触させずに両者間に間隔を設けた場合、その距離が大きくなるにしたがって受光器43での反射光の受光量は次第に減少し、受光量の測定データは小さな値になるので、
図4に示した数式S1の回帰式を用いて被膜の膜厚を算出しても、その算出値は適正な値ではなく、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離に応じた補正処理が必要である。
【0027】
図1に戻って、膜厚測定装置3では光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離を測定するために距離測定センサ5が用いられており、この距離測定センサ5による距離の測定データが前記演算制御装置6に取り込まれる。光量測定センサ4のヘッド部41と距離測定センサ5のヘッド部は、コンベヤ2上のガラスびんGと対向するようにコンベヤ2に沿って横並びの状態で配置されており、したがって、距離測定センサ5により測定された距離は距離測定センサ5のヘッド部とガラスびんGとの間の距離でもあり、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの間の距離でもある。なお、距離測定センサ5として、この実施例では、ヘッド部に同軸共焦点光学系が組み込まれたオムロン株式会社製の変位センサ(商品型番:「ZWシリーズ」)を用いているが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0028】
光量測定センサ4のヘッド部41と距離測定センサ5のヘッド部は、コンベヤ2によるガラスびんGの搬送方向(
図1において矢印で示す。)に対して直角をなす方向を向いており、通過するガラスびんGと同じ距離となるように位置決め固定されている。ガラスびんGには胴部公差や偏芯があり、また、各ガラスびんGを整列させてもコンベヤ2上の位置がばらつくため、光量測定センサのヘッド部41とガラスびんGとの距離は一定ではなく変動する。ガラスびんGの被膜10の膜厚の測定値がヘッド部41とガラスびんGとの間の距離に応じて変動することから、前記演算制御装置6は、被膜10の膜厚の算出データが距離測定センサ5による距離の測定値に応じて補正された値となる演算式による演算を実行するものである。
【0029】
具体的には、光量測定センサ4による反射光の受光量を被膜の膜厚に換算する演算を実行するための回帰式を記憶するためのメモリ(図示せず)に、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離に応じた回帰式を複数記憶させておき、演算制御装置6は、距離測定センサ5で得られた距離の測定データに応じて回帰式を選択して、その選択された回帰式による演算を実行するようにしている。
【0030】
図5(1)〜(5)は、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離が0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmの各場合において、反射光の受光量をガラスびんGの被膜10の膜厚に換算するための近似曲線とその近似曲線を表す二次関数の数式とをそれぞれ示している。
例えば、
図5(1)のグラフは、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離が0.5mmである場合に、酸化スズの被膜の膜厚にバラツキのある多数本のガラスびんGのサンプルについて得られた反射光の受光量の測定データと前記したAGR社製の膜厚測定装置により測定された酸化スズの被膜の膜厚の測定値との組がxy座標平面上にプロットされたものである。同図において、P1は上記の点の分布をよく近似する近似曲線であり、矩形枠R1内の数式S1はこの近似曲線P1を2次関数で表した回帰式、数式S2は相関係数である。
同様に、
図5(2)〜(5)の各グラフは、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離が1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmである場合のものであり、P2〜P5はxy座標平面上の点の分布をよく近似する近似曲線であり、矩形枠R2〜R5内の各数式S1はこの近似曲線P2〜P5を2次関数で表した回帰式、各数式S2は相関係数である。
【0031】
以上のことから、光量測定センサ4のヘッド部41をガラスびんGの表面から離した状態で投光および受光を行って反射光の受光量の測定データを取得したとき、距離測定センサ5による距離の測定データに応じて
図5(1)〜(5)に示す回帰式のいずれかを選択し、その選択された回帰式による演算を実行することによりガラスびんGの被膜の膜厚を算出する。
なお、上記は説明の便宜上、距離の測定値が0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmのいずれかになると仮定しているが、距離の測定値が例えば、0.5mmと1.0mmとの中間の値(例えば0,6mm)である場合は、
図5(1)に示す回帰式と
図5(2)に示す回帰式とを選択し、
図5(1)に示す回帰式による演算を実行して得られた値に、各回帰式による演算を実行して得られた値の差を比例配分(この例では5分の1)して得られた値を加算してガラスびんGの被膜の膜厚を算出する。
【0032】
また、この実施例では、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離が0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmである場合の近似曲線P1〜P5と回帰式を求めているが、より小さな単位(例えば0.1mm単位)で異なった距離についての近似曲線と回帰式を求めることにより、上記した比例配分による値の加算演算を省略することができる。
【0033】
図6は、
図1に示す膜厚検査装置1によりガラスびんGの被膜の膜厚を検査するときの演算制御装置6のCPUによる制御の流れを示している。なお、図中、「ST」(「STEP」の略)は制御の流れにおける各手順を示している。
同図のST1では、演算制御装置6はびん検知センサ8よりびん検出信号iが送られてくるのに待機している。コンベヤ2上のガラスびんGがびん検知センサ8の位置を通過すると、ST1の判定が「YES」となり、演算制御装置6は光量測定センサ4および距離測定センサ5に対して測定開始信号を出力する(ST2)。光量測定センサ4は測定開始信号を受けてヘッド部41の投光器42より光を照射して測定回路部40で反射光の受光量の測定データを取得し、一方、距離測定センサ5は測定開始信号を受けて投光動作を行いガラスびんGとの間の距離、すなわち、光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離を測定して測定データを取得する。演算制御装置6は、光量測定センサ4および距離測定センサ5よりそれぞれの測定データを一定周期でサンプリングして取り込みメモリに記憶させる(ST3)。
【0034】
ガラスびんGが光量測定センサ4および距離測定センサ5の前を通り過ぎたとき、演算制御装置6は光量測定センサ4および距離測定センサ5に対して測定終了信号を出力し、反射光の受光量の測定および距離の測定の各動作を停止させる(ST4)。演算制御装置6は、つぎのST5で反射光の受光量の測定データの最大値を反射光の受光量として特定し、続くST6で距離の測定データの最小値を光量測定センサ4のヘッド部41とガラスびんGとの距離として特定した後、距離の測定データの最小値に応じた回帰式を選択するとともに、選択された回帰式によって反射光の受光量の測定データの最大値からガラスびんGの被膜の膜厚を算出する(ST7)。
【0035】
つぎのST8では、演算制御装置6は、被膜の膜厚の算出値が規格内であるかどうかを判断する(ST8)。その判定が「NO」であれば、演算制御装置6は、コンベヤ2上から該当するガラスびんGを排除するための排出信号jを生成して排出機構7へ出力する(ST9)。排出機構7はこの排出信号jを受けてガラスびんGに対してエアを吹き付けてコンベヤ2上より受皿70上へ不良品のガラスびんGを排出させる。