(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の式(I)の化合物および/またはそのヒドロキシ酸形態および/または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩および/または該化合物もしくはそのヒドロキシ酸形態の薬学上許容可能な溶媒和物と、少なくとも1種類の薬学上許容可能なアジュバント、キャリヤーおよび/またはビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
請求項1に記載の式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩および/または該化合物もしくはそのヒドロキシ酸形態の薬学上許容可能な溶媒和物を含んでなる、医薬組成物。
薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態、上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩および/または該化合物もしくはそのヒドロキシ酸形態の薬学上許容可能な溶媒和物の使用。
セラジン−1/DHCR24遺伝子発現を増加させる薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態、上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩および/または該化合物もしくはそのヒドロキシ酸形態の薬学上許容可能な溶媒和物の使用。
セラジン−1/DHCR24遺伝子に関連した疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態、上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩および/または該化合物もしくはそのヒドロキシ酸形態の薬学上許容可能な溶媒和物の使用。
【実施例】
【0076】
例1
(1S,2S,6R,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−3,7−ジメチル−8−[2−[(2R,4R)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフタレニル−2−エチル−ブチレートの合成
NST0037として同定される化合物は、類似化合物についてのHoffman, et al. (J. Med. Chem., 1986, 29, 849-852)の方法に従って調製した。
【0077】
1.1.ロバスタチンの精製
ロバスタチンは、天然起源の抽出物からヘキサンと酢酸エチルのグラディエントを溶離剤として用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0078】
1.2.モナコリンJの取得
【化2】
水酸化カリウム0.7gを水0.5mlに溶解したものを調製し、メタノール3mlを少しずつ加える。次いで、ロバスタチン0.5gを加え、溶液を21時間還流させる。反応の処理後、モナコリンJと開環生成物の50%混合物が得られる。
【0079】
1.3.保護誘導体の調製
【化3】
モナコリンJ 0.5gをジクロロメタン10mlに溶解したものを調製する。イミダゾール0.4345gを加え、溶解するまで撹拌する。次いで、ジクロロメタン5mlに溶解した塩化第三ブチルジメチルシラン0.4835gを加え、撹拌を24時間継続する。反応を、ジクロロメタン−メタノール(10:1)を溶離剤として用いてTLCによって追跡する。収率:96%。
【0080】
1.4.アセチル化誘導体の調製
【化4】
上記で得られた保護誘導体0.3gを、不活性雰囲気のフラスコ中ピリジン2mlに溶解させる。次いで、ピリジン2mlに溶解したDMAP0.06gを加える。反応フラスコを氷浴に入れ、2−エチルブチリルクロライド0.378mlを加える。次いで、それを0℃で1時間および室温で18時間撹拌する。反応を、ヘキサン−酢酸エチル(2:1)を溶離剤として用いてTLCによって追跡する。収率:95%。
【0081】
1.5.最終化合物の合成
【化5】
上記で得た誘導体0.368gを、THF2mlに溶解させる。次いで、酢酸0.16mlと1Mフッ化テトラブチルアンモニウム2.16mlの溶液を反応培地に加える。反応混合物を、室温で16時間撹拌する。反応を、ジクロロメタン−アセトン(6:1)を溶離剤として用いてTLCによって追跡する。収率:75%。
【0082】
例2
様々な攻撃、すなわち酸化ストレス、小胞体ストレスおよびアポトーシスによって誘発される神経細胞死に対するNST0037による保護
2.1.酸化ストレスによって誘発される神経細胞死に対するNST0037による保護
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0083】
酸化的損傷を生じ(過酸化水素、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルのようなフリーラジカルを生じ)、これが細胞死を誘発するキサンチン/キサンチンオキシダーゼの投与によって引き起こされる細胞死の化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0084】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO):培地+10μMキサンチン/60mU/mlキサンチンオキシダーゼ、細胞の50%の死を引き起こす。
XXO+NST0037:培地+XXO(10μM/60mU/ml)+1、4、10、20、40または100μMのNST0037。
【0085】
細胞を、これらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞増殖の維持に必要なエネルギーを得るための細胞の能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0086】
得られた結果は、
図1に示されるように、XXOによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。死からの保護は、1〜100μMNST0037で観察され、XXOに関する差はStudentのt検定によれば評価した総ての濃度について統計学的に有意であり、20μMでは78%の最大保護に達した。これらの結果は、化合物NST0037が、酸化ストレスによって引き起こされるニューロン起源のヒト細胞の死からの保護効果を示すことを示唆している。
【0087】
2.2.小胞体ストレスによって誘発される神経細胞死からのNST0037による保護
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0088】
網様ストレス(reticular stress)を生じるツニカマイシンの投与によって引き起こされる細胞死の化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。ツニカマイシンはタンパク質N−グリコシル化の阻害薬であり、小胞体で折り重なる異常タンパク質を生じるので、上記タンパク質が蓄積してストレスを引き起こし、細胞死を生じるのである。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0089】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
ツニカマイシン(Tm):培地+24μMツニカマイシン、細胞の50%の死を引き起こす。
Tm+NST0037:培地+Tm(24μM)+1、4、10、20、40または100μMのNST0037。
【0090】
細胞を、これらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞増殖の維持に必要なエネルギーを得るための細胞の能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0091】
得られた結果は、
図2に示されるように、Tmによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。死からの保護は、1〜100μMNST0037で観察され、40μMでは55%に達した。これらの結果は、化合物NST0037が、小胞体ストレスによって引き起こされるニューロン起源のヒト細胞の死からの保護効果を示すことを示唆している。
【0092】
2.3.アポトーシスによって誘発される神経細胞死からのNST0037による保護
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0093】
細胞周期停止を生じるカンプトテシンの投与によって引き起こされる細胞死の化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。カンプトテシンはトポイソメラーゼIの阻害薬であるので、DNA複製を妨げ、細胞周期停止を引き起こし、アポトーシスによる死を生じるのである。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0094】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
カンプトテシン(CPT):培地+20nmカンプトテシン、細胞の50%の死を引き起こす。
カンプトテシン+NST0037:培地+カンプトテシン(20nm)+1、4、10、20、40または100μMのNST0037。
【0095】
細胞を、これらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞増殖の維持に必要なエネルギーを得るための細胞の能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0096】
得られた結果は、
図3に示されるように、カンプトテシンによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。死からの保護は、4〜100μMNST0037で観察され、4、10、40および100μMではそれぞれ18%、28%、27%および27%%に達した。これらの結果は、化合物NST0037が、細胞周期停止によって引き起こされるニューロン起源のヒト細胞の死からの保護効果を示すことを示唆している。
【0097】
2.4.フローサイトメトリーによるアポトーシスの阻害の測定
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0098】
DNA複製を妨げアポトーシスによる細胞死を誘発する酵素トポイソメラーゼIを阻害するカンプトテシンの投与によって引き起こされるアポトーシス(プログラミングされた細胞死)からの化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した6ウェルプレートに8x10
5個/ウェルおよび7x10
5個/ウェルの細胞濃度で前処理を有するアッセイのために播種し、プレートの2ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0099】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積2mlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
カンプトテシン:培地+50μMカンプトテシン。
カンプトテシン+Z−VAD−fmk:培地+50μMカンプトテシン+50μMZ−VAD−fmk、ポジティブ阻害コントロール。
カンプトテシン+NST0037:培地+50μMカンプトテシン+10、40または100μMのNST0037。
【0100】
前処理を有するアッセイでは、細胞を予め40μMNST0037、100μMメバロン酸塩または両方一緒で24時間処理した後、50μMカンプトテシンで処理し、手順の残りは、前処理なしのアッセイと同様であった。
【0101】
細胞を、これらの処理を用いて(37℃および5%CO
2で)6時間インキュベーションした後、培地と共に回収して、300xgで5分間遠心分離した。培地を除去し、PBSで洗浄し、細胞を70%エタノール500μlで−20℃にて2分間固定した。固定の後、細胞を400xgで5分間遠心分離し、PBSで洗浄し、サイクリング用緩衝液(0.1%クエン酸ナトリウム、0.3%NonidetP−40および0.02mg/mlRNアーゼ)で希釈した0.05mg/mlヨウ化プロピジウムを加え、37℃で1時間インキュベーションした。次いで、ヨウ化プロピジウムの蛍光をDNAの量に対して比較して、フローサイトメトリーによって分析した。アポトーシスの割合を、それぞれの条件のサブG1領域について測定した。
【0102】
得られた結果は、
図4AおよびBに見られるように、カンプトテシンによって引き起こされるアポトーシスに関するそれぞれの処理のアポトーシスの阻害率として示される。40および100μMNST0037では、18%の最大保護が観察されたので(
図4A)、この化合物は、ニューロン起源のヒト細胞におけるアポトーシスの保護効果を示す。特定のカスパーゼ阻害薬であるZ−VAD−fmkは、カンプトテシンによって引き起こされるアポトーシスを特異的に阻害した。これらの結果は、保護率を増加させる(45%にまで達する)40μMNST0037の前処理の実験によって確認された(
図4B)。その上、NST0037によって発揮される保護は、メバロン酸塩を培地に加えることによって部分的に阻害されるのであり、これはNST0037の神経保護効果がコレステロール生合成またはその経路の前駆体の1つに関係していることを示している。
【0103】
例3
興奮毒性物質によって引き起こされる海馬における神経細胞死、認識欠損および死に対するNST0037による保護
3.1.興奮毒性物質によって引き起こされる海馬の神経細胞死に対するNST0037の保護効果
例2の結果に基づいて、本発明者らは、ヒトコリン作動性ニューロンで明らかにされたNST0037の神経保護効果がカイネート(KA)の投与によるマウスの散発性アルツハイマー病のモデルで確認されるかどうかを検討することにした。
【0104】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(the Guidance on the Operarion of Animals)(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0105】
このアッセイには28匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
ii) PBS+KA+PBS方式:6匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iv) NST0037+KA+NST0037方式:6匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
v) NST0037+PBS+NST0037方式:5匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にPBSの用量を接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0106】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。ヘマトキシリンおよびエオシン染色を5μm厚さの切片に用いて、海馬の細胞構造を分析した。
【0107】
図5に示されるように、PBS+KA+PBS投与方式は、マウスの海馬のCA1およびCA2領域に重篤なニューロン損傷を生じた。上記群の試料では、ニューロンの非存在、壊死の証拠および多数の核濃縮が観察され、神経細胞死を示している。しかしながら、NST0037+KA+NST0037群の試料は、コントロール(PBS+PBS+PBS群)と同じ細胞構造を示し、CA1およびCA2領域における細胞損傷の証拠はなかった。更に、驚くべきことには、PBS+KA+NST0037群の試料は、海馬における損傷と神経細胞死の幾つかの徴候を示した。しかしながら、PBS+KA+PBS群の試料をPBS+KA+NST0037群の試料と視覚的に比較したところ、損傷のない海馬のニューロンが多数NST0037投与群に観察され、その神経保護効果を示していた。最後に、NST0037+PBS+NST0037群の試料は、PBS+PBS+PBS群の動物で観察されたのと同じパターンを示した。
【0108】
要約すれば、NST0037(NST0037+KA+NST0037群)による前処理は、海馬のCA1およびCA2領域におけるKAによって引き起こされる神経細胞死から完全に保護した。更に、KAを接種した後のNST0037の投与開始は、この領域における神経細胞死および損傷を定性的に減少した。また、NST0037の8日間毎日投与はマウスにとって神経毒性を示さないことも明らかになった。
【0109】
3.2.興奮毒性物質によって引き起こされるマウスのエピソードタイプの記憶劣化に対するNST0037の保護効果
KAによって引き起こされる興奮毒性は、マウスにそれを接種してから数日後にエピソードタイプ記憶劣化を誘発し、一時性記憶に影響を及ぼし、重篤な空間的記憶欠損を引き起こす。その結果として、本発明者らは、NST0037の神経保護効果が興奮毒性物質の効果によって劣化する記憶の保護を伴うかどうかを検討することにした。
【0110】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0111】
このアッセイには28匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の3日間はPBSの1日量を接種した。
ii) PBS+KA+PBS方式:6匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はPBSの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iv) NST0037+KA+NST0037方式:6匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
v) NST0037+PBS+NST0037方式:5匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にPBSの用量を接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0112】
KAの接種3日後、一体化記憶試験(integral memory test)と呼ばれる対象認識試験を動物について行った。
図6は、新しい対象(一時性記憶)に比較した古い対象の検査時の関係の結果を示す。NST0037+KA+NST0037投与方式による群は、PBS+KA+PBS群のマウスと比較して一時性記憶容量の減少を防止することが観察された。更に、PBS+KA+NST0037群の動物は、PBS+KA+PBS群を投与した動物と比較して一時性記憶の状態の改善も示した。これらのデーターは、NST0037+PBS+NST0037方式によるマウスの群はPBS+PBS+PBS群と比較して一時性記憶の改善も示した。
【0113】
図7は、非置換の古い対象(空間的記憶)と比較して置換された古い対象の検査の経時的関係の結果を示している。NST0037+KA+NST0037またはNST0037+PBS+NST0037投与方式のマウスの群は、PBS+PBS+PBS群に対して差は見られなかったので、空間的記憶は損なわれていないことを示す対象の検査の関係を示した。しかしながら、PBS+KA+PBS群のマウスは、空間的記憶の重篤な劣化を示した。PBS+KA+NST0037投与群は、PBS+KA+PBS群を投与したものに比較してこのタイプの記憶の改善を示した。
【0114】
これらの検討は、興奮毒性物質による損傷の前および後(または後のみ)の化合物NST0037の投与は、興奮毒性物質の投与後に劣化するエピソード性(一時性および空間的)記憶に対して保護効果を有することを示している。
【0115】
3.3.興奮毒性物質によって引き起こされる死に対するNST0037の保護効果
動物へ興奮毒性物質を投与すると、幾つかの場合には、動物の死が誘発されることが知られている。その結果として、本発明者らは、NST0037の神経保護効果が興奮毒性物質によって引き起こされる死亡率の減少を伴うかどうかを検討することにした。
【0116】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0117】
このアッセイには28匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
vi) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の3日間はPBSの1日量を接種した。
vii) PBS+KA+PBS方式:6匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はPBSの1日量を接種した。
viii) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
ix) NST0037+KA+NST0037方式:6匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネート25mg/kgを接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
x) NST0037+PBS+NST0037方式:5匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にPBSの用量を接種し、次の3日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0118】
死を、継続したアッセイの全時間にわたって記録し、結果をKaplan−Meier生存曲線によって
図8に示す。KAによって引き起こされる死亡率の検討の結果は、NST0037+KA+NST0037投与方式による群は、興奮毒性物質によって引き起こされる損傷に関連した死から保護されることを示した。更に、一層重要なことには、PBS+KA+NST0037投与方式による群の動物の生存は、PBS+KA+PBS方式による群と比較して増加する。
【0119】
これらの検討は、興奮毒性物質による損傷の前および後(または後のみ)の化合物NST0037の投与は、興奮毒性物質の投与によって引き起こされる死亡率に対して保護効果を有することを示している。
【0120】
例4
興奮毒性物質の作用に対するNST0037の抗癲癇性効果
動物へ興奮毒性物質を投与すると、幾つかの場合には、動物に癲癇発作および痙攣が誘発されることが知られている。その結果として、本発明者らは、NST0037の神経保護効果が興奮毒性物質によって引き起こされる死亡率の減少を伴うかどうかを検討することにした。
【0121】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0122】
動物に、カイネート(KA)25mg/kgをPBSに溶解したものを腹腔内接種した。13匹の動物にKA接種の24および0.5時間前に、PBS(PBS+KA投与方式)を腹腔内投与によって前投与し、6匹にKA接種の24および0.5時間前に、NST0037を50mg/kgの用量(NST0037+KA投与方式)で腹腔内投与によって前投与した。接種後、動物をトレイに1匹ずつ収容して観察した。動物の最大癲癇レベルを、Racineスケールに従って観察中10分毎にかつ少なくとも接種後120分間(m.p.i.)記録した。
【0123】
次に、PBS(PBS+KA)とNST0037(NST0037+KA)の投与の間の癲癇誘発徴候の比較検討を行った。癲癇重積持続状態、すなわち、強直性間代性発作に入った動物の割合には差が見られ、PBS+KA投与方式群では76.9%(13匹中10匹)であったのと比較してNST0037+KA群では33.3%(6匹中2匹)であり、化合物NST0037は抗癲癇性かつ抗痙攣性であることを示している。最初の痙攣が起きた時間(潜伏期)にも差が見られ、NST0037+KA群の潜伏期(103.3±13.1分間)は、
図9に示されるように、PBS+KA投与方式によるものより大きく(74.6±8.6分間)、これは化合物NST0037の抗癲癇および抗痙攣効果を示している。これらの結果に基づいて、本発明者らは、抗癲癇および抗痙攣効果が癲癇レベルおよび症状の重篤度によって確かめられるかどうかを検討することにして、PBS+KA方式による群の動物がRacineスケールで癲癇レベル4に達したのに対して、NST0037+KA方式ではいずれの時間にも上記スケールで癲癇レベル3を生じないことが観察され、化合物NST0037が抗癲癇性および抗痙攣性であることを示していた。更に、100m.p.i.に基づいて、NST0037+KA方式は癲癇誘発症状を消失させたのに対して、PBS+KA方式は重篤な発作および痙縮を示した。
【0124】
これらの検討は、化合物NST0037が興奮毒性物質の投与による抗癲癇および抗痙攣効果を有することを示している。
【0125】
例5
マウスの内因性高脂血症モデルにおけるNST0037のHMGRの阻害活性および低コレステロール血症効果
5.1.NST0037のHMGR酵素活性に対する阻害効果
化合物の性質により、HMGR酵素は細胞のコレステロール合成および上記合成の生理学的調節に重要であるので、化合物NST0037によるHMGR酵素の阻害の程度を測定した。この化合物の効果を、HMGRに対する強力な阻害効果が既に報告されている2種類の既知スタチン類であるアトルバスタチンおよびシンバスタチンの効果と比較した。反応のため、HMGRはNADPHを還元剤として、および3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMGCoA)を基質として用い、メバロン酸、CoASHおよびNADP+を生成する。NADPH(340nm)が吸収される吸光度の減少は、HMGRの触媒活性を直接測定するものであり、様々な化合物の阻害率の計算に役立つ。HMGR阻害を測定するため、アッセイを96−ウェルプレートで総反応容量が200μlで行った。反応緩衝液(50mMKH
2PO
4、1mKCl、2mg/mlウシ血清アルブミン[BSA]および5mMDTT、pH=7.3)は、反応を行うときに調製し、37℃に保持した。下記のものが、アッセイに含まれた:
ブランク:反応についてNADPHの安定性について報告するHMGRを欠く。
コントロール:反応の総ての成分を含むが、試験化合物を欠く。
試験化合物:幾つかの濃度のNST0037、アトルバスタチン、およびシンバスタチン。この化合物の酸形態を、総ての場合に用いる。
【0126】
5つの独立した分析をNST0037で行い、4つの独立した分析をアトルバスタチンで、また6つの独立した分析をシンバスタチンで行い、阻害力をNADPHの低下の37℃における分光光度測定による50%阻害定数(IC
50)を確定できる、
図11に示される濃度範囲で測定した。340nmの吸光度の減少により、コントロールに対するHMGR酵素活性の割合を計算できる。IC
50は、Trimmed Spearman−Karber法(Version1.5)によって測定した。これらの結果は、NST0037の阻害力がより強力なスタチンであるアトルバスタチンの阻害力に驚くほど近く、シンバスタチンの7.5倍の強さであり、HMGRの明らかな阻害効果を示している。
【0127】
5.2.内因性高脂血症モデル(家族性)におけるNST0037の低コレステロール血症効果
上記点の結果に基づいて、本発明者らは、化合物NST0037によるHMGR酵素の阻害活性が、マウスの内因性高脂血症モデルにおける総コレステロールおよびその画分の変化に対応するかどうかを検討することにした。
【0128】
実験過程に含まれる総ての動物は、46週齢の雄ApoB100系であり、この系は血液からのコレステロールの除去に欠損を有し、血漿コレステロールの異常に高い増加を引き起こすものであった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0129】
絶食動物について実験を行うため、血液は眼穿刺によって抜き取った。血漿を上記血液から得て、検討中の物質を投与する前に血漿総コレステロールレベルおよびその画分のレベルを測定した。その直後に、動物に、それぞれの試験化合物50mg/kgを腹腔内に接種した。4匹の動物にビヒクルを投与して、コントロール群とした。第二群の5匹のマウスには、シンバスタチン50mg/kgを投与した。最後に、第三群の5匹のマウスに、NST0037 50mg/kgを投与した。投与の12時間後に、血液を絶食動物から採取し、上記血液から血漿を得た。
図12は、初期時間(t0)および様々なマウス群へのビヒクル、シンバスタチンまたはNST0037の投与の12時間後(t12)の血漿コレステロールレベルを示しており、両化合物は有意な低コレステロール血症効果を示している。様々なコレステロール画分に関して、両化合物は、
図13〜15に示されるように、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−c)および極低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL−c)レベルをかなり減少させたが、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−c)レベルを変化させなかった。遊離コレステロール(FC)およびエステル化コレステロール(EC)レベルに関しては、両化合物は、
図16および17に示されるように、ECレベルを同様に減少させたが、FCレベルは変化させなかった。
【0130】
この節に示されている結果は、化合物NST0037が、驚くべきことにはシンバスタチンと同様の効果を示し、TC、LDL−c、VLDL−cおよびECレベルを有意に減少させるが、HDL−cまたはFCレベルは変化させないことを示している。
【0131】
例6
マウスの誘発高脂血症モデルにおけるNST0037の低コレステロール血症効果
ApoB100動物を用いた実験で得られた結果に基づいて、本発明者らは、化合物NST0037が誘発急性高脂血症モデルにおいても低コレステロール血症効果を示すかどうかを検討することにした。
【0132】
実験過程に含まれる総ての動物は、野生型の6週齢のC57BL6系マウスであった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0133】
絶食動物について実験を行うため、血液は眼穿刺によって抜き取った。血漿を上記血液から得て、検討中の物質を投与する前に血漿総コレステロールレベルおよびその画分のレベルを測定した。その直後に、動物に、Tyloxapolとしても知られているTriton1339 500mg/kgを腹腔内に接種した。30分後に、動物に、それぞれの試験化合物50mg/kgを腹腔内に接種した。7匹の動物にビヒクルのみを投与して、コントロール群とした。第二群の6匹のマウスには、シンバスタチン50mg/kgを投与した。最後に、第三群の7匹のマウスに、NST0037 50mg/kgを投与した。投与の24時間後に、血液を絶食動物から採取し、上記血液から血漿を得た。
図18は、総コレステロールが様々な群のマウスにおいて、Triton1339に続いてビヒクル、シンバスタチンまたはNST0037の投与の24時間後に増加する倍数を示し、両試験化合物が低コレステロール血症効果を有するが、NST0037の投与の場合にのみ統計学的に有意であることを示している。様々なコレステロール画分に関しては、両化合物は低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−c)レベルを減少させたが、上記減少はNST0037の場合にのみ統計学的に有意であった。シンバスタチンだけは、
図19〜21に示されるように、極低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL−c)レベルを減少させたが、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−c)レベルはこれらの2化合物のいずれでも変化しなかった。シンバスタチンと異なり、NST0037は、
図22に示されるように、エステル化コレステロール(EC)レベルを減少させた。遊離コレステロール(FC)レベルに関しては、両化合物は、
図23に示されるように、この画分のレベルを同様に減少させた。
【0134】
この節で示された結果は、驚くべきことには化合物NST0037がシンバスタチンと同じかまたはより大きい低コレステロール血症効果を有し、TCおよびLDL−cレベル統計学的に有意に減少させることを示している。これらの結果から、apoB100マウスモデルで観察されたNST0037の低コレステロール血症効果が確かめられる。
【0135】
例7
ゼブラフィッシュ胚におけるNST0037の生物安全性
7.1.シンバスタチンと比較した化合物NST0037の生存率の分析
化合物NST0037の生物安全性を評価するため、ゼブラフィッシュ胚モデルについてのその毒物学的効果をOECD C15プロトコルの安全性パラメーターを測定することによって分析した。
【0136】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従って、pHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0137】
発生の最初期段階で確実に暴露するため、卵(条件当たり最低50個)を、試験を行う化合物の溶液を入れた別のペトリ皿に速やかに移した。続いて、受精卵のみ(実験条件当たり10個)を、ピペットでペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)へ移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。胚を、更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)、および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0138】
検討は、受精後全部で9日間行い、処理は毎日更新し、半静的アッセイを行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した10匹のコントロール動物。
希釈水で希釈した化合物NST0037を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
希釈水で希釈した化合物シンバスタチンを、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0139】
胚−幼生の死亡率をアッセイの全期間について記録し、結果をKaplan−Meier曲線によって
図24および25に示した。検討中の2種類の物質によって誘発された死亡率の検討結果は、化合物NST0037が、評価した用量ではシンバスタチンより驚くほど安全であり、生存率曲線は両処理を比較したところ、統計学的に異なっていた。
【0140】
7.2.シンバスタチンと比較した化合物NST0037の経時的半数致死量の分析
前節の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が半数致死量(LD
50)の経時的分析によって確認されるかどうかを検討することにした。
【0141】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従って、pHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0142】
発生の最初期段階で確実に暴露するため、卵(条件当たり最低50個)を、試験を行う化合物の溶液を入れた別のペトリ皿に速やかに移した。続いて、受精卵のみ(実験条件当たり10個)を、ピペットでペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)へ移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。胚を、更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)、および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0143】
検討は、受精後全部で9日間行い、処理は毎日更新し、半静的アッセイを行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した10匹のコントロール動物。
希釈水で希釈した化合物NST0037を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
希釈水で希釈した化合物シンバスタチンを、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0144】
検討の期間中、死亡した胚/幼生の数を24時間間隔で記録し、
図26に示されるように、LD
50を実験の各時点で計算した。結果は、投与後の最初の数日間(2日まで)に、両化合物のLD
50は評価した最大用量を上回ることを示している。しかしながら、3日目から実験の終了まで、シンバスタチンは化合物NST0037より低いLD
50を示し、その毒性が一層高いことを示している。投与の2日後には、両化合物のLD
50は実験全体を通じて次第に減少したが、シンバスタチンのLD
50は常に化合物NST0037より低く、NST0037はシンバスタチンより高い生物安全性を有することを示していた。
【0145】
7.3.シンバスタチンと経時的に比較した化合物NST0037の実験終了時の健康な幼生の割合の分析
前節の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が実験の終了時の健康な幼生の割合の分析によって確認されるかどうかを検討することにした。
【0146】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従って、pHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0147】
発生の最初期段階で確実に暴露するため、卵(条件当たり最低50個)を、試験を行う化合物の溶液を入れた別のペトリ皿に速やかに移した。続いて、受精卵のみ(実験条件当たり10個)を、ピペットでペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)へ移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。胚を、更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)、および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0148】
検討は、受精後全部で9日間行い、処理は毎日更新し、半静的アッセイを行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した10匹のコントロール動物。
希釈水で希釈した化合物NST0037を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
希釈水で希釈した化合物シンバスタチンを、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0149】
実験終了時の結果により、実験の終点に達し、生きている幼生の数として定義され、かつ外部の生理病理学的異常(形態学的および/または行動的)の症状がない健康な幼生の割合であって、検討中の物質の生物安全性を測定するパラメーターであるものを集めることができ、生存率およびLD
50にとって補完的なものである。
図27に示されるように、検討中の一層高い用量(0.06および0.2mg/l)で評価される2種類の投与の間の健康な幼生の割合には明らかな差が見られ、一層健康な幼生はNST0037投与により実験の終点に達し、その生物安全性が一層高いことを示している。
【0150】
7.4.シンバスタチンと経時的に比較した化合物NST0037の実験終了時の奇形または異常外観を有する幼生の割合の分析
前節の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が、奇形または異常外観を有する幼生の割合を分析し、身体的および/または色素異常並びに卵黄嚢再吸収期を示す幼生の数を適当な間隔(24時間毎)で集めることによって確認されるかどうかを検討することにした。検討で記録された異常を、以下に示す。
頭蓋内血栓症:血管、この場合には任意の大脳血管内部の血塊。
心臓血栓症:心臓血管に発生。
心臓浮腫(または水腫):細胞内組織空間および臓器の腔部における流体の蓄積。心臓の場合には、心膜における流体の蓄積を引き起こす。
奇形:問題になっている部分の平均形状と比較して、身体または身体の一部または身体(内部または外部)の器官の形状における顕著な差。この検討で見られる奇形は、通常は卵黄嚢のものである。
【0151】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従って、pHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0152】
発生の最初期段階で確実に暴露するため、卵(条件当たり最低50個)を、試験を行う化合物の溶液を入れた別のペトリ皿に速やかに移した。続いて、受精卵のみ(実験条件当たり10個)を、ピペットでペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)へ移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。胚を、更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)、および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0153】
検討は、受精後全部で9日間行い、処理は毎日更新し、半静的アッセイを行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した10匹のコントロール動物。
希釈水で希釈した化合物NST0037を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
希釈水で希釈した化合物シンバスタチンを、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0154】
結果は、奇形または異常外観を有する幼生の割合が、
図28に示されるように、時間および処理によって変化し、評価用量(0.2mg/l)では、シンバスタチンは胚−幼生に有意な割合の異常または毒物学的問題を引き起こすが、化合物NST0037は有意な毒物学的効果を示さず、生物安全性が一層高いことを示している。シンバスタチンの投与は、頭蓋内および心臓血栓症および心膜浮腫を引き起こした。チャートのデータは、動物がシンバスタチンによって誘発された問題から経時的に回復したことも示しており、この物質0.2mg/lの投与は動物の死を誘発するのに十分なほどの毒性ではなく、上記動物はその後改善することを示している。
【0155】
これらの結果は、シンバスタチンが有意に高い割合の更に重篤な毒物学的問題を引き起こすので、化合物NST0037がシンバスタチンより安全であることを示している。
【0156】
7.5.用量によって変化するシンバスタチンと比較した化合物NST0037の心臓毒性の変化の分析
前節の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が様々な化合物を様々な用量で投与した後の心臓毒性の分析によって確認されるかどうかを検討することにした。このパラメーター(心臓毒性)の検討は、動物の心臓律動を決定するだけでなく、心拍数の変調(頻脈、徐脈など)または心臓発達異常(心膜炎、萎縮、肥大など)を観察することもできる。
【0157】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従って、pHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0158】
発生の最初期段階で確実に暴露するため、卵(条件当たり最低50個)を、試験を行う化合物の溶液を入れた別のペトリ皿に速やかに移した。続いて、受精卵のみ(実験条件当たり10個)を、ピペットでペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)へ移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。胚を、更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)、および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0159】
検討は、受精後全部で9日間行い、処理は毎日更新し、半静的アッセイを行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した10匹のコントロール動物。
希釈水で希釈した化合物NST0037を、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
希釈水で希釈した化合物シンバスタチンを、アッセイが継続した9日間毎日取り替えながら投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0160】
ゼブラフィッシュ胚−幼生の心臓律動は、立体顕微鏡での視覚分析によって測定し、心拍数を手動カウンターによって1分間について測定した。投与量が異なると、
図29に示されるように、動物の心臓律動が変化し、シンバスタチンを投与した幼生は、コントロールに対して0.06mg/lを投与した後には統計学的に有意な減少を示し、これは2mg/lの投与したときにはきわめて明確になった。対照的に、化合物NST0037による心臓律動の減少は、コントロールと比較して2mg/lの用量のときのみ統計学的に有意であったが、低めの濃度では、コントロールとの差は見られなかった。更に、両化合物の最大使用用量(2mg/l)では、シンバスタチンを投与した動物の心臓律動はNST0037を投与したものより統計学的に低く、これもまた化合物NST0037がシンバスタチンより高い生物安全性を有することを示していた。従って、NST0037はシンバスタチンより心臓に安全な化合物である。
【0161】
例8
NST0037の殺菌活性
NST0037の殺菌活性を、
Candida albicansに対するバイオアッセイによって分析した。NST0037のβ−ヒドロキシ酸形態、ロバスタチン、アトルバスタチンおよびシンバスタチンの溶液を、この目的のために調製した。アッセイ濃度は、以下の通りであった:2、1.5、1、0.5、0.25、0.125、0.06、0.025および0.01mM。
Candida albicans CECT(スパニッシュ・タイプ−カルチャー・コレクション)1002の培養物を予め接種したMA培地のプレート(1リットル当たり、20g麦芽エキス、20gグルコース、1gマイコペプトンおよび10g寒天を含む)を調製した。ダイ(直径6mm)の助けによって、上記溶液40μlを入れた様々なウェルを調製した。検討は3回行い、それぞれのプレートに、それぞれの化合物および濃度について3つずつ含まれていた。プレートを4℃に1時間保持した後、28℃で一晩インキュベーションした。抗真菌活性の存在は、C.albicansの増殖阻止円の形成によって測定した。
【0162】
得られた結果は、化合物NST0037が、アッセイに含まれていたスタチン類より高い抗真菌活性を有することを示していた。
図30に示されるように、この挙動は、全濃度範囲に対して観察された。一層高い濃度(2〜0.25mM)の場合には、化合物NST0037は、最高の殺菌活性を示したスタチンであるシンバスタチンより若干大きな値を示した。しかしながら、低めの濃度(0.06および0.025mM)を用いたときには、化合物NST0037は、阻止円を生じ得る唯一のものであった。
【0163】
例9
NST0037の投与による24−デヒドロコレステロールレダクターゼ遺伝子(セラジン−1/DHCR24)の細胞発現の誘発
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0164】
セラジン−1/DHCR24遺伝子(NCBI Reference Sequence:NM_014762.3)を、メマンチン(アルツハイマー病の治療に普通に用いられる薬剤)と比較してリアルタイム定量RT−PCRによって分析した。SK−N−MC細胞を、1、4、10または40μMのNST0037またはメマンチンの非存在下(コントロール)または存在下にて24時間処理した。総RNAをHigh Pure RNA Isolationキット(Roche)によって抽出し、RNAの量および質を分光光度法(Infinite 200 NanoQuant、Tecan)および電気泳動による18Sおよび28Sバンドの観察によって分析した。RT−PCRは2段階で行い、最初にmRNAをRNA to cDNAキット(Applied Biosystem)を用いてcDNAに変化させ、次いで、遺伝子発現を7500 Fast Real−Time PCR System装置(Applied Biosystem)で検証済プローブであるセラジン−1/DHCR24についてのHs00207388_m1および18S(結果の規格化に使用)についてのHs99999901_s1を用いるTaqManプローブによって分析した。2つの独立した分析は、3回ずつ行った。遺伝子発現の相対量を、SDS v2.1.1ソフトウェア(Applied Biosystem)を用いるΔΔCt法によって測定し、18Sの発現を用いて測定を規格化した。
【0165】
得られた結果は、
図31に示されるように、NST0037の投与では分析した濃度でセラジン−1/DHCR24遺伝子発現の増加を示したが、メマンチンの投与では増加を示さず、これは、NST0037の投与が、コレステロール生合成およびカスパーゼ3の阻害による抗アポトーシス能に関係しているセラジン−1/DHCR24遺伝子発現の特定な増加を引き起こすことを示している。
【0166】
例10
プロテインホスファターゼ1(PP1)の阻害によって誘発される神経細胞死からのNST0037による保護
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0167】
プロテインホスファターゼ1(PP1)の活性を阻害するオカダ酸(OA)の投与によって引き起こされる細胞死の化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。OAは、ADの病因および進行に関与しているτタンパク質のホスホリル化機構の検討に最も多く用いられる薬剤の1つである。PP1の阻害は、細胞骨格の変質とミトコンドリアの損傷を生じる。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0168】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
オカダ酸(OA):培地+20μMOA、細胞の50%の死を引き起こす。
OA+NST0037:培地+OA(20μM)+1、4、10、40または100μMのNST0037。
【0169】
細胞を、これらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞増殖の維持に必要なエネルギーを得るための細胞の能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0170】
得られた結果は、
図32に示されるように、OAによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。死からの保護は、NST0037 4−40μMで観察され、40μMでは57%に達した。これらの結果は、化合物NST0037が、PP1の阻害によって引き起こされるニューロン起源のヒト細胞の死からの保護効果を示すことを示唆している。
【0171】
例11
スクシネートデヒドロゲナーゼの阻害によって誘発される神経細胞死からのNST0037による保護
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0172】
3−ニトロプロピオン酸(3−NP)の投与によって引き起こされる細胞死の化合物NST0037によって引き起こされる阻害を分析した。3−NPは、動物モデルで線条における酸化ストレスとアポトーシスによる細胞死を引き起こす、ハンチントン病(HD)に関連した神経化学的および解剖学的変化を模倣するスクシネートデヒドロゲナーゼ酵素の不可逆性阻害薬である。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0173】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
3−ニトロプロピオン酸(3−NP):培地+30μM3−NP、細胞の50%の死を引き起こす。
3−NP+NST0037:培地+3−NP(30μM)+0.1、1、4、10、40、100または200μMのNST0037。
【0174】
細胞を、これらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞増殖の維持に必要なエネルギーを得るための細胞の能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0175】
得られた結果は、
図33に示されるように、3−NPによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。死からの保護は、NST0037 1〜100μMで観察され、40μMでは41%に達した。これらの結果は、化合物NST0037が、スクシネートデヒドロゲナーゼ酵素の阻害によって引き起こされるニューロン起源のヒト細胞の死からの保護効果を示すことを示唆している。
【0176】
例12
細胞アポトーシスモデルにおけるカスパーゼ3/7の活性化のNST0037による阻害
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0177】
培養細胞についてのアポトーシスは、細胞アポトーシスを活性化するカンプトテシン(CPT)とインキュベーションすることによって誘発される。アポトーシスは、エフェクターカスパーゼであるカスパーゼ3またはカスパーゼ7の活性化の測定によって決定され、これには、活性カスパーゼ3/7の蛍光検出用キット(Apo−ONE
(商標) Homogeneous Caspase−3/7, Promega)を用いた。細胞の活性カスパーゼ3または7は基質の破断を引き起こし、これによって蛍光が放出され、フルオロメーターによって読み取られる。SK−N−MC細胞でカンプトテシン(CPT)50μMによって引き起こされるカスパーゼ3/7の活性化に対する10および40μMの化合物NST0037の前処理の効果を、このようにして分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、10および40μMのNST0037による前処理を行った。
【0178】
24時間後に、細胞処理を総容積100μlで下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
カンプトテシン(CPT):50μMのCPTを含む培地
カンプトテシン(CPT):NST0037(10または40μM)および/またはメバロン酸塩(MEV;100μM)またはZ−VAD−fmk(50μM)による様々な前処理を行った50μMのCPTを含む培地。
【0179】
細胞をこれらの処理と共に(37℃および5%CO
2で)6時間インキュベーションした後、細胞溶解緩衝液およびカスパーゼ基質を製造業者が指定した濃度で加え、それらを室温で30分間インキュベーションした後、−20℃で一晩冷凍した。翌日、蛍光を測定した(499/521nm,Exci/Emi)。
【0180】
図34は、様々な処理のコントロール細胞に対するカスパーゼ3/7の活性化率を示す。NST0037 10および40μMでは、カンプトテシンに関するカスパーゼ3/7の阻害はそれぞれ26および33%であり、この化合物の機能的な抗アポトーシス効果を示している。その上、メバロン酸塩はこの阻害を逆戻りさせ、従ってNST0037のカスパーゼ3/7に対する効果はコレステロール生合成またはその生合成経路の前駆体の1つの生合成に関係することを示している。カスパーゼ阻害薬としてのZ−VAD−fmkは、カスパーゼ3/7の活性化を完全に阻害した。
【0181】
例13
化合物NST0037は細胞モデルにおけるβ−アミロイドペプチドの産生を減少させる
アッセイは、ニューロンで発現される最もよくみられる変異体であるアイソフォーム695のAPP遺伝子(β−アミロイド前駆体タンパク質、GeneID:351)により保持されている構築体で安定にトランスフェクションされた、APPタンパク質が過剰発現されるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行った。総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持し、APPの発現は、0.16mg/ml抗生物質ハイグロマイシンBを添加して選択した。
【0182】
15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した6ウェルプレートに8x10
5個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの2ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積2mlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
NST0037:培地+1、4、10または40μMのNST0037。
【0183】
これらの細胞を、これらの処理を行いながら(37℃および5%CO
2にて)48時間インキュベーションした後、条件培地500μlを回収して測定を行った。細胞残渣を条件培地から300xgにて遠心分離によって取り除いた後、プロテアーゼ阻害薬(Mini EDTA−free, Roche)を加えた。2種類の最もよく見られるAβ種である1−40および1−42を測定した。Aβ(1−42)については、Amicon Ultra濾過装置(Millipore)を用いて培地を5倍に濃縮して測定する必要があった。条件培地のAβ(1−40)およびAβ(1−42)の量は、それぞれの処理について「βアミロイド40 ELISA」および「βアミロイド42 ELISA」キット(Biosource)を用いるELISA(酵素結合免疫吸着測定法)によって製造業者の推奨に従って分析した。結果は、合成ペプチドを用いる増加濃度曲線を用いて定量した。これらの細胞における分泌されたAβのベースライン値は、Aβ(1−40)については1340±141pg/mlであり、Aβ(1−42)については20+3pg/mlである。
【0184】
処理について得られた結果は、
図35に示されており、48時間後のコントロール細胞に関するAβ(1−40)(A)およびAβ(1−42)(B)の割合を示している。Aβ(1−40)については、10、40および100μMのNST0037の投与後に減少が見られる。Aβ(1−42)については、10および40μMのNST0037のいずれでも減少が見られる。
【0185】
これらの結果から、NST0037は、APPを過剰発現するヒト神経芽細胞腫細胞におけるAβの分泌を減少させると結論される。Aβの産生はインビトロおよびインビボのいずれでも細胞死に関係しており、更にアルツハイマー病の患者に見られる老人斑とも関連している。
【0186】
例14
酸化ストレスによって誘発される神経細胞死からのNST0037による保護に対するメバロン酸塩の効果
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から培養したヒト神経芽細胞腫SK−N−MC細胞で行い、総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、以下の培地、すなわち1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0187】
酸化的損傷および細胞死を生じるキサンチン/キサンチンオキシダーゼでの処理によって引き起こされる細胞死から化合物NST0037による保護についてのメバロン酸塩の効果を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、接着細胞用に処理した96ウェルプレートに5x10
4個/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルをアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0188】
37℃および5%CO
2で24時間細胞インキュベーションした後、細胞処理を総容積100μlで、下記の条件について行った:
コントロール:培養基(培地)
キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO):培地+10μMキサンチン/60mU/mlキサンチンオキシダーゼ、細胞の50%の死を引き起こす。
XXO+NST0037:培地+XXO(10μM/60mU/ml)+40μMのNST0037。
XXO+メバロン酸塩:培地+XXO(10μM/60mU/ml)+10、40または100μMのメバロン酸塩。
XXO+NST0037+メバロン酸塩:培地+XXO(10μM/60mU/ml)+40μMのNST0037+10、40または100nmのメバロン酸塩。
【0189】
細胞を、処理を行いながら(37℃および5%CO
2にて)22時間インキュベーションした後、WST−1試薬(Roche)を加えた。WST−1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、細胞の代謝機能および細胞増殖を維持するのに必要なエネルギーを得る能力の喪失を引き起こすので、代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート−テトラゾリウムレダクターゼ系によりテトラゾリウム塩をホルマザンへ還元する。形成されるホルマザンは440nmに吸光度を有するので、比色法によって検出することができる。読み取りは、試薬を加えてから2時間後に440nmでプレートリーダーを用いて行った。
【0190】
得られた結果は、
図36に示されるように、XXOによって引き起こされる死に関係するそれぞれの処理についての細胞死の割合として示される。メバロン酸塩のみでは、XXOによる死から保護せず、また毒性増加も引き起こさないことが観察されたが、40μMのNST0037は死から57%保護し、この効果は10、40および100μMのメバロン酸塩を加えることによって阻害され、10および100μMについては、Studentのt検定によれば、差は統計学的に有意であった。これらの結果は、化合物NST0037で観察された保護は、コレステロール生合成またはその経路の前駆体の1つの生合成に関係していることを示唆している。
【0191】
例15
海馬における神経細胞死に関連した神経病理学的徴候のNST0037による保護
15.1.海馬における興奮毒性物質によって引き起こされる神経炎性ジストロフィーからのNST0037の保護効果
神経保護の結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与によるマウスの散発性アルツハイマー病のモデルで示された海馬におけるNST0037の神経保護効果が、神経炎性ジストロフィーのようなニューロン損傷のもう一つの徴候の保護を伴うかどうかを検討することにした。
【0192】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0193】
このアッセイには25匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
ii) NST0037+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+PBS方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
iv) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0194】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。海馬における神経炎性ジストロフィーの分析のため、微小管結合タンパク質2型(MAP2)に対する明視野免疫化学(bright field immunochemistry)を5μm厚さの冠状切片で行った。
【0195】
図37に示されるように、PBS+KA+PBS投与方式は、均一なラベリングを示すPBS+PBS+PBS投与方式と比較して、特に海馬のCA1、CA3および歯状回領域のMAP2ラベリングの減少を生じる。しかしながら、NST0037+KA+NST0037群の試料は、コントロール(PBS+PBS+PBS群)と同じ染色パターンを示し、海馬のこれらの領域における神経炎性ジストロフィーの証拠は見られなかった。更に、驚くべきことには、PBSによる前処理およびKAの接種後にNST0037を投与したところ、海馬におけるMAP2ラベリングの喪失が明らかに減少することが観察されている。
【0196】
要約すれば、KAの接種の前および後のいずれにおいても、NST0037を投与することによって、海馬においてKAによって引き起こされる神経炎性ジストロフィーから保護される。
【0197】
15.2.海馬において興奮毒性物質によって引き起こされる酸化的損傷からのNST0037の保護効果
神経変性および神経炎性ジストロフィーからの保護の結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与によるマウスの散発性アルツハイマー病のモデルで示される海馬におけるNST0037の神経保護効果が、酸化的損傷のようなニューロン損傷のもう一つの徴候からの保護を伴うかどうかを検討することにした。
【0198】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0199】
このアッセイには25匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
ii) NST0037+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+PBS方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
iv) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0200】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。海馬における脂質過酸化による酸化的損傷の分析のため、4−ヒドロキシノネナール(HNE)に対する明視野免疫化学(bright field immunochemistry)を5μm厚さの冠状切片で行った。
【0201】
図38に示されるように、PBS+KA+PBS投与方式は、この脂質過酸化ラベリングを示さないPBS+PBS+PBS投与方式と比較して、海馬のCA3領域におけるHNEシグナルを増加させる。しかしながら、NST0037+KA+NST0037群の試料は、コントロール(PBS+PBS+PBS群)と同じ染色パターンを示し、海馬のこれらの領域におけるHNE標識ニューロンは見られなかった。更に、驚くべきことには、PBSによる前処理およびKAの接種後にNST0037を投与したところ、海馬におけるHNE標識ニューロンの数が減少することが観察されている。
【0202】
要約すれば、KAの接種の前および後のいずれにおいても、NST0037を投与することによって、海馬においてKAによって引き起こされる酸化的損傷から保護される。
【0203】
15.3.海馬において興奮毒性物質によって引き起こされるアポトーシスからのNST0037の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与によるマウスの散発性アルツハイマー病のモデルで示される海馬におけるNST0037の神経保護効果が、この疾患と関連している機構であるアポトーシスによる死からの保護を伴うかどうかを検討することにした。
【0204】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0205】
このアッセイには25匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
ii) NST0037+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+PBS方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
iv) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0206】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。海馬のアポトーシスにおけるニューロンの存在を分析のため、T.U.N.E.L.(TdT依存性dUTPニック末端ラベリング)蛍光法5μm厚さの冠状切片で行った。
【0207】
PBS+KA+PBS投与方式は、海馬、特にCA1、CA3(
図38)および歯状回領域のアポトーシスによる神経細胞死を引き起こす。しかしながら、NST0037+KA+NST0037群の試料はT.U.N.E.L.に対してポジティブなニューロンを示さず、コントロール(PBS+PBS+PBS群)と同じパターンを示した。更に、PBSによる前処理およびKAの接種の後にNST0037を投与したところ、アポトーシスにおけるニューロンの数が海馬CA3領域では数個の単離細胞にまで減少することが観察されている。
【0208】
要約すれば、KAの接種の前および後のいずれにおいても、NST0037を投与することによって、海馬においてKAによって引き起こされる酸化的損傷およびアポトーシスから保護される。
【0209】
15.4.海馬で興奮毒性物質によって引き起こされるアストログリオーシスからのNST0037による保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与によるマウスの散発性アルツハイマー病のモデルで示される海馬におけるNST0037の酸化防止および抗アポトーシス効果が、アルツハイマー病患者の脳で検出される別の組織病理学的徴候である反応性アストログリオーシスの減少を伴うかどうかを検討することにした。
【0210】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄FVB/NHan系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0211】
このアッセイには25匹の動物を用い、投与は総て下記の方式に従って100μlの容量の腹腔内(i.p.)経路によって行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSを接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
ii) NST0037+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
iii) PBS+KA+PBS方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はPBSの1日量を接種した。
iv) PBS+KA+NST0037方式:7匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物にカイネートを25mg/kgの用量で接種し、次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量を接種した。
【0212】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。反応性アストログリオーシスの分析は、星状細胞に含まれているグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の5μmの厚さの冠状切片に対する明視野免疫化学によって行った。
【0213】
PBS+KA+PBS投与方式は、海馬の神経網における星状細胞の活性化および増殖の有意な増加を引き起こす(
図38)。対照的に、NST0037+KA+NST0037群の試料は、コントロール(PBS+PBS+PBS群)ときわめて類似した星状細胞パターンを示した。驚くべきことには、PBSによる前処理およびKAの接種の後にNST0037を投与したところ、海馬における星状細胞の数とGFAPラベリングの強度は減少することも観察されている。
【0214】
要約すれば、KAの接種の前および後のいずれにおいても、NST0037の投与は、酸化的損傷、アポトーシスから保護し、海馬領域でKAによって誘発される反応性アストログリオーシスを防止する。
【0215】
例16
急性的に投与されるパーキンソン神経毒によって引き起こされる臨床症状、運動欠損、神経変性および神経細胞死からのNST0037による保護
マウスの散発性アルツハイマー病モデルにおける化合物NST0037によって示される神経保護の結果に基づいて、研究者らは、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)のような神経毒性物質によって誘発されるドーパミン作動性ニューロンの死に基づくパーキンソン病のモデルにおける化合物の神経保護能を評価することにした。マウスでのMPTPの全身投与は、黒質のドーパミン作動性ニューロンの大量死を誘発し、この領域およびヒトの運動活性に高度に関連づけられている線条のような他の領域におけるドーパミンの濃度を減少させる。これらの徴候により、このモデルは、運動劣化のようなパーキンソン病の中心的事象の1つを導入するので、パーキンソン病の研究に広く用いられてきた。この例では、急性投与でのMPTPによって誘発される神経変性および症状に対するNST0037の効果の分析結果を提供する。
【0216】
16.1.ドーパミン作動性ニューロンの死を誘発する神経毒性物質の急性投与によって引き起こされる死からのNST0037の保護効果
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0217】
このアッセイには40匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って100μlの容量で行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間皮下(s.c.)経路によって投与し、2日目に動物に4用量のPBSを2時間間隔で腹腔内(i.p.)経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
ii) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間s.c.経路によって投与し、2日目に動物に4用量のMPTP 20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
iii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目に動物に4用量のMPTP 20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量をs.c.経路で投与した。
【0218】
様々な投与群における死を全実験処置中記録し、これらのデータを用いて
図39に示される対応する生存曲線を作成した。
【0219】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、マウスの死亡率に統計学的に有意な増加(p<0.05)を引き起こす。しかしながら、NST0037+MPTP+NST0037群とPBS+PBS+PBS群(p>0.05)の間には有意差が見られなかったので、NST0037の投与によりMPTPの急性投与後の動物の生存率は驚くほど増進する。
【0220】
16.2.ドーパミン作動性ニューロンの死を誘発する神経毒性物質の急性投与によって引き起こされる運動耐性の減退に対するNST0037の保護効果
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0221】
このアッセイには40匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って100μlの容量で行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間皮下(s.c.)経路によって投与し、2日目に動物に4用量のPBSを2時間間隔で腹腔内(i.p.)経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
ii) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間s.c.経路によって投与し、2日目に動物に4用量のMPTP20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
iii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目に動物に4用量のMPTP 20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量をs.c.経路で投与した。
【0222】
投与開始前および7日間の投与時間の終了時に、動物をローターロッド試験と呼ばれる運動耐性試験に2分間かけ、速度が4〜40r.p.m.まで増加する円筒上の歩行に動物が耐える時間を記録した。
図40は、様々な群の動物が円筒上を歩き続ける時間のアッセイ終了時とベースライン状態との間の比を示す。
【0223】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、ベースライン状態からMPTPの急性投与の7日後までのマウスの運動耐性の統計学的に有意な減少を引き起こす(p<0.05)。しかしながら、NST0037の投与により、動物の運動劣化は驚くほど防止され、マウスがMPTPの投与前に示したレベル(p>0.05)の耐性を維持し、パターンはMPTPを投与せずかつPBSを投与したマウスのパターンと同じである(p>0.05)。
【0224】
要約すれば、NST0037を投与すると、MPTPの急性投与によって誘発される耐性の喪失から保護される。
【0225】
16.2.ドーパミン作動性ニューロンの死を誘発する神経毒性物質の急性投与によって引き起こされる強度の減少に対するNST0037の保護効果
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0226】
このアッセイには40匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って100μlの容量で行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間皮下(s.c.)経路によって投与し、2日目に動物に4用量のPBSを2時間間隔で腹腔内(i.p.)経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
ii) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間s.c.経路によって投与し、2日目に動物に4用量のMPTP 20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
iii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目に動物に4用量のMPTP 20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量をs.c.経路で投与した。
【0227】
投与開始前および7日間の投与時間の終了時に、動物をいわゆる握力試験における強度試験にかけ、動物が前肢で加えるバーを握る力をグラム数で表したものを、3回ずつ記録した。
図41は、ベースライン状態の動物によって示される力に対するアッセイ終了時の力との間の比を示す。
【0228】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、ベースライン状態からMPTPの急性投与の7日後までのマウスの前肢で握るときに加えられる力の統計学的に有意な減少を引き起こす(p<0.05)。更に、NST0037の投与により、MPTPによって誘発される力の喪失は防止され、投与の7日後には、NST0037+MPTP+NST0037群のマウスはMPTPの投与前と同じレベルの力を示し(p>0.05)、パターンはMPTPを投与せずかつPBSを投与したマウスのパターンときわめて類似している(p>0.05)。
【0229】
要約すれば、NST0037を投与すると、MPTPの急性投与によって誘発される耐性および力の喪失から保護される。
【0230】
16.3.ドーパミン作動性ニューロンの死を誘発する神経毒性物質の急性投与によって引き起こされる神経変性に対するNST0037の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、MPTPによって引き起こされる精神運動状態の劣化に対する化合物NST0037によって示される保護は、運動活性に関与しかつ黒質および線条のようなパーキンソン病に関係した脳領域の神経変性を伴うかどうかを決定しようとした。
【0231】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0232】
このアッセイには40匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って100μlの容量で行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間皮下(s.c.)経路によって投与し、2日目に動物に4用量のPBSを2時間間隔で腹腔内(i.p.)経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
ii) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間s.c.経路によって投与し、2日目に動物に4用量のMPTP20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
iii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目に動物に4用量のMPTP20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量をs.c.経路で投与した。
【0233】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。黒質および線条の神経変性の分析のため、蛍光性のFluoroJade B(FJB)染色を、5μmの厚さの矢状切片で行った。
図42は、それぞれの群および検討中の両領域の典型的な写真を示す。
【0234】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、PBS+PBS+PBS群の試料と比較して黒質および線条のいずれにおいてもFJBにポジティブな細胞の明らかな増加を引き起こす。対照的に、NST0037+MPTP+NST0037群の試料は、変性しかつFJBについてPBS+MPTP+PBS群より有意に低いポジティブの多数の細胞を有していた。
【0235】
要約すれば、NST0037を投与すると、黒質並びに線条を活性化する神経末端のドーパミン作動性ニューロンにおけるMPTPの急性投与によって誘発される精神運動劣化および神経変性から保護される。
【0236】
16.4.神経毒性物質の急性投与によるドーパミン作動性ニューロンの喪失に対するNST0037の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、MPTPによって引き起こされる神経変性に対する化合物NST0037によって示される保護は、黒質および線条のようなパーキンソン病における劣化した脳領域におけるドーパミン作動性ニューロンの保護を伴うかどうかを決定しようとした。
【0237】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0238】
このアッセイには40匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って100μlの容量で行った:
i) PBS+PBS+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間皮下(s.c.)経路によって投与し、2日目に動物に4用量のPBSを2時間間隔で腹腔内(i.p.)経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
ii) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間s.c.経路によって投与し、2日目に動物に4用量のMPTP20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はPBSの1日量をs.c.経路によって投与した。
iii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目に動物に4用量のMPTP20mg/kgを2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の7日間はNST0037 50mg/kgの1日量をs.c.経路で投与した。
【0239】
7日間の処理時間が終了した後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。黒質および線条のドーパミン作動性ニューロンの存在を分析するため、チロシン−ヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質に対する免疫組織化学を、5μmの厚さの矢状切片で行った。
図43は、それぞれの群および検討中の両領域の典型的な写真を示す。
【0240】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、黒質のニューロン体(neuron bodies)および線条の神経伸張部のいずれにおいても、PBS+PBS+PBS群と比較してTHラベリングが存在しないことが明らかに観察されているので、ドーパミン作動性ニューロンの量の明らかな減少を引き起こす。対照的に、NST0037+MPTP+NST0037群の試料は、PBS+MPTP+PBS群の試料よりも多数の黒質におけるTHポジティブ細胞並びに線条における一層高いラベリング強度を有していた。
【0241】
要約すれば、NST0037の投与は、黒質および線条における神経変性およびMPTPの急性投与によって誘発される神経細胞死の他にマウスの精神運動劣化から保護する。
【0242】
例17
亜慢性的に投与されたパーキンソン症候群神経毒によって引き起こされる運動欠損、神経細胞死および酸化的損傷からのNST0037による保護
例16で得られて提示された結果により、本発明者らは、マウスでのMPTPの亜慢性投与により黒質に誘発される臨床症状および神経病理学に対するNST0037の効果を分析することにした。
【0243】
17.1.ドーパミン作動性ニューロンの死を誘発する神経毒性物質の亜慢性投与によって引き起こされる運動耐性の低下に対するNST0037の保護効果
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0244】
このアッセイには20匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って腹腔内(i.p.)経路で100μlの容量で行った:
i) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はPBSの3週間量を投与した。
ii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はNST0037 50mg/kgの3週間量を投与した。
【0245】
投与開始の7日前、およびMPTPの接種の7、14および21日後に、動物をローターロッド試験と呼ばれる運動耐性試験に2分間かけ、速度が4〜40r.p.m.まで増加する円筒上の歩行に動物が耐える時間を記録した。
図44は、様々な群の動物が円筒上を歩き続ける時間のアッセイの様々な時点とベースライン状態との間の比を示す。
【0246】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、MPTPの亜慢性投与の14日後から開始するベースライン状態からマウスの運動耐性の統計学的に有意な減少を引き起こす(p<0.05)。しかしながら、NST0037の投与により、動物の運動劣化は驚くほど防止され、マウスがMPTPの投与前に示したレベル(p>0.05)の耐性を維持している(p>0.05)。
【0247】
要約すれば、NST0037の投与により、MPTPの亜慢性投与によって誘発される耐性の喪失から保護される。
【0248】
17.2.神経毒性物質の亜慢性投与によるドーパミン作動性ニューロンの喪失に対するNST0037の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、MPTPによって引き起こされる精神運動状態の劣化に対して化合物NST0037によって示される保護は、黒質のようなパーキンソン病に関与するきわめて重要な脳領域の1つにおける神経変性を伴うかどうかを決定しようとした。
【0249】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0250】
このアッセイには20匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って腹腔内(i.p.)経路で100μlの容量で行った:
i) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はPBSの3週間量を投与した。
ii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はNST0037 50mg/kgの3週間量を投与した。
【0251】
21日間の投与時間の終了後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの存在を分析するため、チロシン−ヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質に対する免疫組織化学を5μmの厚さの矢状切片で行った。
図45は、それぞれの群の典型的な写真を示す。
【0252】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、幾つかの黒質領域においてTHラベリングが存在しないことが明らかに観察されているので、ドーパミン作動性ニューロンの明らかな喪失を引き起こす。対照的に、NST0037+MPTP+NST0037群の試料は、同じ黒質領域に一層多数のTHポジティブ細胞を有していた。
【0253】
要約すれば、NST0037の投与により、MPTPの亜慢性投与によって黒質に誘発された神経細胞死の他にマウスの精神運動劣化から保護される。
【0254】
17.3.ドーパミン作動性ニューロンへの神経毒性物質の亜慢性投与によって誘発される酸化的損傷に対するNST0037の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、黒質でMPTPによって引き起こされる神経変性に対して化合物NST0037によって示される神経保護は、酸化的損傷のようなニューロン損傷のもう一つの組織病理学的徴候の減少を伴うかどうかを決定しようとした。
【0255】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雄CD1系であった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0256】
このアッセイには20匹の動物を用い、投与は下記の方式に従って腹腔内(i.p.)経路で100μlの容量で行った:
i) PBS+MPTP+PBS方式:10匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はPBSの3週間量を投与した。
ii) NST0037+MPTP+NST0037方式:10匹の動物に最初にNST0037 50mg/kgの1日量を2日間投与し、2日目以降は動物にMPTP30mg/kgの1日量を5日間2時間間隔でi.p.経路によって接種した。次の21日間はNST0037 50mg/kgの3週間量を投与した。
【0257】
21日間の投与時間の終了後、動物を屠殺し、脳を切開した。脳試料を処理し、パラフィンで包んだ。黒質のニューロンにおける脂質過酸化の分析のため、4−ヒドロキシノネナール(HNE)に対する明視野免疫組織化学を5μmの厚さの矢状切片で行った。
図45は、それぞれの群の写真を示す。
【0258】
PBS+MPTP+PBS投与方式は、黒質の多数のニューロンにおけるHNEに対するラベリングの存在を誘発する。対照的に、NST0037+MPTP+NST0037群の試料は、黒質にHNEポジティブラベリングを有する余り多くない数の単離ニューロンを有する。
【0259】
要約すれば、NST0037の投与は、MPTPの亜慢性投与による黒質に誘発された脂質過酸化による神経細胞死および酸化的損傷の他に、マウスの精神運動劣化から保護する。
【0260】
例18
インビトロアッセイ(PAMPA)におけるNST0037の酸形態の血液−脳関門通過の研究
このアッセイの目的は、化合物NST0037が、シンバスタチンおよびアトルバスタチンと比較して、その活性形態で血液−脳関門(BBB)であって、細胞を用いることなく化合物を評価することができるインビトロシステムで模した上記関門を通過することができるかどうかを予測することであった。その目的のため、PAMPA(平行人工膜透過分析法)と呼ばれ、受動拡散により化合物を通過させるサンドイッチシステムを用いるアッセイを行った。高透過性を有する化合物であるベラパミルをポジティブコントロールとして用い、BBBを通過しない化合物であるテオフィリンをネガティブコントロールとして用いた。
【0261】
BBBを模倣するため、関門を形成するものに非常に類似しているリン脂質の組成を有するブタ脳由来でありかつPBL(ブタ極性脳脂質)と呼ばれる市販の脂質混合物を用いた。ベラパミル、テオフィリンおよびアトルバスタチンをDMSO中で10mMに調製し、NST0037およびシンバスタチンは水で調製して、0.1N NaOHで4℃にて12時間活性化した。
【0262】
アッセイ時に、評価を行う化合物およびコントロール1.5mlを、総ての場合に、一塩基性リン酸ナトリウム(0.41m)と二塩基性リン酸カリウム(0.287m)とを含むリン酸緩衝液、pH7.4のストックから100μMに調製した。その目的のため、化合物の100倍希釈を、総ての場合にDMSO含量を1%と等しくして行った。
【0263】
PVDF膜を有し、細孔径が45μmの96−ウェルフィルタープレート(MAIPN4550、Millipore)に、20μg/mlのPBL5μlを加えた。2分後、化合物の希釈に用いるリン酸緩衝液300μlを加えた。このプレートをアクセプタープレートと考え、サンドイッチの上部に置いた。前記のもので完全に組み立てたもう一つの96−ウェルプレート(MATRNP550、Millipore)に、100μMの化合物300μlを3個ずつ加えた。更に、使用したリン酸緩衝液に1%DMSOのみを含むブランクを含めた。このプレートをドナープレートと読んだ。アクセプタープレートを注意しながらドナープレート上に置き、サンドイッチシステムを形成した。検討目的の化合物は、ドナープレートのウェルからアクセプタープレートの対応するウェルへ、システムが完全なままの18時間中に拡散した。調製した残っている化合物は、プレートによって形成されたサンドイッチシステムと同じ湿度、温度および暗さの条件で保存した。ドナープレートとアクセプタープレートのウェルの100μlを、UV読み取りのための特殊な96−ウェルプレートに移した。更に、アッセイを行う目的で調製した化合物100μlを3つずつ、プレートと同じ方法で移して保存した(ベースラインウェル)。UVプレートを分光光度計に導入して、走査を230〜498nmのUVで行い、4nm毎に読み取った。分光光度計のデータに基づいて、関門通過率並びに有効透過率(P
e)を計算した。下式をP
eの計算に用いた:
【数1】
上記式中、
【数2】
[薬剤]
アクセプター=アクセプターウェルの吸光度
[薬剤]
平衡=ベースラインウェル/2の平均値の吸光度
V
A=アクセプターウェルの体積=0.3cm
3
V
D=ドナーウェルの体積=0.3cm
3
面積=0.24cm
2
時間=64.000秒
【0264】
化合物の親油性の理論的計算は、cLogPによって与えられるオクタノール/水分配係数の対数を計算することによって得ることができる。cLogPは、化学構造をソフトウェアに入れたCLOGPプログラム(OSIRIS Property Explorer)によって理論的に計算した。それぞれの化合物についてのnは、アッセイで得られた値の平均値±SDの計算結果と共に表に示されている。
【0265】
【表1】
【0266】
表Iおよび
図46で見られるように、両シンバスタチンおよびNST0037はきわめて類似したBBB通過レベルを有していた。いずれの場合にも、これらの化合物には、ベラパミル(P
e=10±2x10
−6cm/s)とテオフィリン(P
e=0.2±0.1x10
−6cm/s)との中間のBBB通過が予想される。これらのBBB通過データは、両化合物によって示されかつきわめて類似したcLogPを有する親油性範囲によって確かめられる。しかしながら、アトルバスタチンは、cLogPが高いにも拘わらず、ほとんどBBBを通過せず、ネガティブコントロールのテオフィリンと同じ範囲である。
【0267】
例19
ヒト肝臓およびニューロン細胞系における細胞内総コレステロールレベルに対するNST0037の効果
このアッセイの目的は、化合物NST0037がシンバスタチンと比較して、ニューロンおよび肝臓由来の細胞系における総コレステロールレベルをどの程度まで変更することができるかを決定することであった。このアッセイを行うため、ラクトン形態が完全に開くまで化合物をNaOHで活性化した。
【0268】
HepG2(ヒト肝癌)系およびSK−N−MC(ヒト神経芽細胞腫)系は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから得た(それぞれ、ATCCno.HB−8065およびHTB−10)。総ての場合に、無菌の厳格な規則に従い、操作は欧州スタンダードEN12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。継代保持した(maintained in passage)細胞を、10%FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸および0.05mg/mlゲンタマイシンを補足したMEM中で96−ウェルプレートに播種した。HepG2の場合には、4x10
4個/ウェル、SK−N−MCの場合には、5x10
4個/ウェルを播種した。播種から24時間経過後、細胞にFBSを8時間与えなかった。次いで、細胞を様々な濃度の投与と共に20時間インキュベーションした。インキュベーション期間の後、細胞をPBSで洗浄し、0.5%TritonX−100を含むリン酸緩衝液で溶解した。溶解(lysis)は、2回の凍結−融解によって完了した。
【0269】
総コレステロールは、酵素および蛍光法によって定量した。それぞれの溶解生成物25μlを、10μg/ml〜0.08μg/mlまでの標準コレステロール曲線と共に96−ウェルプレートに移した。コレステロールオキシダーゼ(0.5U/ml)、コレステロールエステラーゼ(0.8U/ml)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(4U/ml)およびampliflu red(20μg/ml)を含む0.05M MES(pH6.5)を基剤として調製した反応性混合物75μlを試料に加え、インキュベーションを37℃で15分間行った。蛍光強度を、フルオロメーターによって励起を530nmおよび放射の580nmで測定した。結果をBCA法によって測定されたタンパク質によって規格化した。
【0270】
図47は、NST0037が両細胞型でどのような低コレステロール血症効果を有するかを示しているが、これはニューロン細胞においてであり、コレステロールの減少は一層劇的であった。HepG2の場合には、NST0037はシンバスタチンより強力であったが、SK−N−MCでは、両化合物によるコレステロールの減少は同様であった。
【0271】
例20
内因性高脂血症モデル(家族性)に28日間経口投与したNST0037の低コレステロール血症効果
化合物NST0037の低コレステロール血症特性について上記で示された結果に基づいて、研究者らは、例5.2.で用いた家族性内因性高脂血症モデル(apoB100マウス)におけるNST0037の経時的経口投与の効果を評価することにした。この新たな研究の目的は、長期間の経口投与がコレステロールレベル経時的に減少させるのに有効であるかどうかを分析することであった。
【0272】
実験過程に含まれる総ての動物は、12週齢の雌マウスであった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0273】
マウスを、コントロール群(n=8)、シンバスタチン群(n=8)、NST0037群(n=8)の3群に分けた。食餌に対するコンディショニングの後、シンバスタチンまたはNST0037(そのラクトン形態)50mg/kgをマウスに同じ時間(15.00〜18.00時)に28日間連続して、いずれの場合にも0.25%カルボキシメチルセルロース水溶液をビヒクルとして用いて投与した。コントロール群には、この同じビヒクルを投与した。投与開始前、および投与開始の7、21および28日後に、16時間の絶食の後に後眼窩から採血を行った。血漿を上記血液から得て、総コレステロール(TC)、遊離コレステロール(FC)、コレステロール(EC)、HDL−c、LDL−c、VLDL−cおよびapoB100レベルを酵素および分光光度法によって評価した。酸化ストレスの変化に関与する脂質レベルの効果をチェックするため、得られた血漿のレドックス状態を更にTEAC(トロロックス抗酸化能アッセイ)法によって評価した。この手法は、インビトロでの酸化防止能を決定するものであり、電子移動による吸収能力によって分析された試料のレドックス状態の観念を与える。反応の様々な成分であるミオグロビン、ABTS(2,2−アジノ−ビス−(3−エチルベンズチアゾリン−スルホン酸))、過酸化水素およびH
2O
2を、96−ウェルプレートにてPBS(10μl)で10倍に希釈した血漿に加えた。3分間インキュベーションの後、吸光度を405nmで(600nmの参照波長で)測定した。
【0274】
図48は、いずれの投与も血漿総コレステロールレベルを有意に減少させることができることを示している。この事実は、LDLの僅かな増加に加えて、VLDLおよびHDLの減少によって主として示される。更に、アポリポタンパク質B(apoB)レベルは、投与によって明らかに減少した。
図49は、更にシンバスタチンと比較して化合物NST0037の投与後のFCおよびECレベルの減少も示しており、この減少は、投与の21日後に一層顕著となった。
図50に示されるように、NST0037およびシンバスタチンの投与は、動物の血漿のレドックス状態を減少させることも明らかになった。
【0275】
要約すれば、NST0037を先天性高脂血症マウスに28日間経口投与すると、動物の総コレステロール、エステル化コレステロール、遊離コレステロールレベル、コレステロールと関連したリポタンパク質画分、ApoBレベルおよびレドックス状態が減少する。
【0276】
例21
内因性高脂血症モデル(家族性)で3ヶ月間経口投与したNST0037の低コレステロール血症効果
化合物NST0037の低コレステロール血症特性について上記で示された結果に基づいて、研究者らは、同じ家族性内因性高脂血症モデル(apoB100マウス)におけるNST0037の3ヶ月間の経口投与の効果を評価することにした。
【0277】
実験過程に含まれる総ての動物は、6月齢の雌マウスであった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0278】
マウスを、コントロール群(n=8)、シンバスタチン群(n=6)、NST0037群(n=8)の3群に分けた。食餌に対するコンディショニングの後、NST0021またはNST0037 50mg/kgをマウスに週3回で3ヶ月間、いずれの場合にも0.25%カルボキシメチルセルロースの生理食塩水をビヒクルとして用いて経口投与した。コントロール群には、この同じビヒクルを投与した。投与開始前、および投与開始の1、2および3ヶ月後に、16時間の絶食の後に後眼窩から採血を行った。血漿を上記血液から得て、総コレステロール(TC)、遊離コレステロール(FC)、コレステロール(EC)、HDL−c、LDL−c、VLDL−cレベルを酵素および分光光度法によって評価した。
【0279】
図51は、両方の投与物がどのように様々なコレステロール画分を減少させるのかを示している。しかしながら、NST0037は驚くべきことにはLDL−cレベルを大幅に減少させ、HDL−cレベルを増加させ、これによりシンバスタチンより良好な心保臓護プロフィールを示している。これらの結果は、FCおよびECレベルに対する投与の効果と相関しており(
図52)、NST0037はFCおよびECのいずれをも有意に減少させることが分かった。
【0280】
要約すれば、先天性高脂血症マウスにNST0037を3ヶ月間経口投与すると、総コレステロール、エステル化コレステロール、遊離コレステロールレベルの減少を引き起こし、並びにLDL−cレベルの減少およびHDL−cの増加を引き起こし、このことは、その心臓保護力を明らかにしている。
【0281】
例22
遺伝的肥満ZuckerラットにおけるNST0037の脂質低下効果
マウスにおける化合物NST0037の低コレステロール血症特性について上記で示された結果に基づいて、研究者らは、異常に高い脂質レベルを有する遺伝的肥満Zuckerラットの内因性高脂血症モデルにおけるNST0037の7日間の経口投与の効果を評価することにした。
【0282】
実験過程に含まれる総ての動物は、11週齢の雄Zuckerラットであった。実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。動物はそれぞれの検疫期間を有し、接種および取り扱いには汚染の可能性を最小限にするために最大限の注意を持って処理した。
【0283】
マウスを、コントロール群(n=7)、シンバスタチン群(n=7)、NST0037群(n=7)の3群に分けた。食餌に対するコンディショニングの後、NST0021またはNST0037 50mg/kgをマウスに同じ時間(15.00〜18.00時)に連続7日間、いずれの場合にも0.5%カルボキシメチルセルロースの水溶液をビヒクルとして用いて経口投与した。コントロール群には、この同じビヒクルを投与した。投与開始前、および投与開始の7日後に、16時間の絶食の後に麻酔下にて舌穿刺によって採血を行った。血漿を上記血液から得て、総コレステロール、HDL−c、LDL−c、VLDL−cおよびトリグリセリド(TG)レベルを酵素および分光光度法によって評価した。酸化ストレスの変化に関与する脂質レベルの効果をチェックするため、得られた血漿のレドックス状態を更にTEAC(トロロックス抗酸化能アッセイ)法によって評価した。この手法は、インビトロでの酸化防止能を決定するものであり、電子移動による吸収能力によって分析された試料のレドックス状態の観念を与える。反応の様々な成分であるミオグロビン、ABTS(2,2−アジノ−ビス−(3−エチルベンズチアゾリン−スルホン酸))および過酸化水素を、96−ウェルプレートにてPBS(10μl)で10倍に希釈した血漿に加えた。3分間インキュベーションの後、吸光度を405nmで(600nmの参照波長で)測定した。
【0284】
図53は、シンバスタチンおよびNST0037はいずれも血漿LDLレベルを同等に減少させることができることを示しており、この事実は、LDL受容体発現の増加を生じるHMGR活性の阻害に直接関係していた。この場合には、NST0037の効果は、統計学的有意性に達した。更に、両化合物は、HDLの増加を引き起こし、心臓保護効果を伴っている。
図54は、化合物が低トリグリセリド血症効果を示唆する血漿トリグリセリドレベルを減少させるやり方を示している。更に、コントロールラットでは、TEACによる血漿中のレドックス状態によって測定された酸化ストレスが増加したが(
図55)、シンバスタチンおよびNST0037を投与したラットでは、劇的な減少が見られ、酸化防止効果を示唆していた。この場合には、結果は、NST0037の場合にのみ統計学的に有意であった。
【0285】
要約すれば、NST0037を内因性高脂血症の遺伝的肥満Zuckerラットに7日間経口投与したところ、LDL−cレベル、トリグリセリドおよびレドックス状態が減少し、これは、その心臓保護力を示していた。
【0286】
例23
野生型マウスにおける24−デヒドロコレステロールレダクターゼ(セラジン−1/DHCR24)遺伝子の発現に対するNST0037の効果
ヒトニューロン系におけるセラジン−1/DHCR24遺伝子の誘発についての例9に示された結果に基づいて、研究者らは、NST0037が、この化合物を投与したマウスの脳における上記遺伝子を変更するかどうかを分析することにした。
【0287】
この検討を行うため、3月齢の雄C57BL6マウス(n=3/群)にシンバスタチンまたはNST0037 50mg/kgを経口投与した。コントロール群には、0.25%カルボキシメチルセルロースの生理食塩水溶液からなるビヒクルのみを投与した。経口投与の4時間後、動物をイソフルランによるガス麻酔下で屠殺し、PBSを予め灌流させた脳を取り出した直後、液体窒素で凍結させた。その後、脳の総RNAをHigh Pure RNA Isolationキット(Roche)によって抽出し、RNAの量および質を分光光度法(Infinite 200 with NanoQuant, Tecan)によって分析し、電気泳動法によって18Sおよび28Sバンドを検査した。RT−PCRを、最初にRNA to cDNAキット(Applied Biosystem)を用いてmRNAをcDNAに変化させ、次いで遺伝子発現を、7500 Fast Real−Time PCR System装置(Applied Biosystem)でセラジン−1/DHCR24についてはMn00519071_m1および18S(結果の規格化に使用)についてはHs99999901_s1の検証済プローブを用いるTaqManプローブによって分析した。遺伝子発現の相対量を、SDSv2.1.1ソフトウェア(Applied Biosystem)を用いるΔΔCt法によって測定し、18Sの発現を用いて測定を規格化した。
【0288】
図56は、シンバスタチンおよびNST0037がいずれもその投与の4時間後に遺伝子発現を同程度まで増加したことを示している。これらの結果はヒトニューロンにおける上記データを確認するものであり、NST0037の神経保護機構としてのセラジン−1発現の増加が観察された。更に、これらの結果から、上記例において示された血液−脳関門通過が確かめられた。
【0289】
要約すれば、野生型マウスにおけるNST0037の経口投与は、セラジン−1/DHCR24神経保護遺伝子を増加させ、更にこの化合物が血液−脳関門を通過することが確かめられる。
【0290】
例24
ゼブラフィッシュ幼生での2種類の化合物の生存率の比較分析
24.1.ゼブラフィッシュ幼生でのシンバスタチンと比較した化合物NST0037の生存率の分析。急性毒性分析
化合物NST0037の生物安全性を評価するため、ゼブラフィッシュ幼生モデルに対するその毒物学的効果を、OECD C15プロトコルの安全性パラメーターを測定することによって分析した。
【0291】
受精卵を、ゼブラフィッシュ(
Danio rerio,AB系)の自然交配によって得た。それぞれの交配には全部で8〜10対を用い、総数が200〜250個の卵が対当たり平均して生まれた。卵を産卵直後に集め、EC Regulation 440/2008、方法C.1に従ってpHを7.8±0.2に調整した希釈水(CaCl
2・2H
2O
2 0.29g/l、MgSO
4・7H
2O
2 0.12g/l、NaHCO
3 0.065g/l、KCl 0.006g/l)で洗浄し、ペトリ皿に置いた。
【0292】
胚は、受精後96時間までそれらの増殖培地で普通に発育させた。上記時点で、幼生をペトリ皿から暴露チャンバー(M24マイクロタイタープレート)にピペットで移し、試験を行う物質(NST0037またはシンバスタチン)に希釈水(コントロール)または様々な濃度の投与物と共に暴露した。幼生を更にエアレーションすることなく、適当な温度(25±1℃)および12時間明/12時間暗の方式でインキュベーションした。それぞれの実験は、3回ずつ行った。
【0293】
検討は、24時間投与を行うことによって、急性毒性分析を行った。処理は、下記の方式に従って行った:
希釈水を24時間投与した10匹のコントロール動物。
24時間希釈水中で希釈した化合物NST0037を投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
24時間希釈水中で希釈した化合物シンバスタチンを投与した30匹の動物(10個の胚、3組)。
【0294】
検討中の物質の暴露時間の後、幼生の死亡率の記録を測定した。表IIは、ゼブラフィッシュ幼生におけるシンバスタチンと比較した化合物NST0037の生存率の分析を示す。この表は、実験に用いた幼生の数、mg/kg(動物の体重)での用量、処理時間、および総数に対する死亡した幼生の数を示す。
【0295】
【表2】
【0296】
検討の結果は、両化合物は、ゼブラフィッシュ幼生の死亡を誘発するパラメーターに関して同様の毒物学的プロフィールを有し、用いた用量のいずれにおいても死は観察されないことを示していた。
【0297】
24.2.幼生におけるシンバスタチンと比較した化合物NST0037の暴露後の健康な幼生の割合の分析。急性毒性アッセイ
上記結果に基づいて、本発明者らは、化合物NST0037によって記録された死亡率が見られないことが、シンバスタチンによる処理と同じまたはそれ未満の健康な幼生の割合と関連しているかどうかを決定しようとした。健康な幼生の割合は、外部の生理病理学的異常(形態および/または行動)の症状のない、生きている幼生の数として定義され、後者は検討中の物質の生物安全性を決定するパラメーターであり、生存率およびLD
50に相補的である。
図58に示されるように、最高の検討用量(1000mg/kg)で評価した2つの処理の間には、健康な幼生の割合の差が観察され、化合物NST0037については67.9±3.3に達し、シンバスタチンについては53.3±8.8であり、これは、驚くべきことにはゼブラフィッシュ幼生モデルでの化合物NST0037の生物安全性が一層高いことを示している。
【0298】
24.3.幼生におけるシンバスタチンと比較した化合物NST0037の暴露後の異常外観(総合的症状)を有する幼生の割合の分析。急性毒性アッセイ
上記節の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が、奇形または異常外観を有する幼生の割合の分析によって身体的および/または色素異常を示す幼生の割合を集めて確認されるかどうかを検討することにした。この検討で記録された異常は、下記の通りである:
卵黄嚢における血栓症:血管、この場合には卵黄を灌注する任意の血管内の凝塊。
心臓血栓症:心臓血管で起こる。
心臓浮腫(または水症):細胞内組織空間および臓器の腔部における流体の蓄積。心臓の場合には、心膜での流体の蓄積を生じる。
【0299】
結果は、奇形または異常外観を有する幼生の割合が両化合物間できわめて類似しているが、
図58に示されるように、驚くべきことには、シンバスタチンは化合物NST0037より高い毒物学的総合的症状を有する幼生の割合を誘発することを明らかにし、これは、後者の生物安全性の方が高いことを示している。
【0300】
要約すれば、ゼブラフィッシュ幼生にNST0037を広い濃度範囲で投与しても、死亡率は全く生ぜず、その上、シンバスタチンより高い割合の健康な幼生および少数の奇形または異常外観を有する幼生を提供する。
【0301】
例25
25.1.シンバスタチンと比較して化合物NST0037を水中で暴露することによる単回投与の毒性分析(24時間)における成熟ゼブラフィッシュの体重の変化の検討
上記例の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が、欧州医薬品庁(EMEA)に包含される単回投与分析による成熟ゼブラフィッシュの体重変化の分析によって確認されるかどうかを検討することにした。このEMEAの検討は、時間に関する、物質または物質の組み合わせの単回投与によって引き起こされる毒性現象の性質および量についてである。これらの検討は、ヒトで起こる過量の可能な効果の情報について記載しており、治療薬の投与の繰り返し投与が必要な毒性研究のデザインに用いることができる。
【0302】
実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。展開したアッセイは、下記の検討パラメーターを有する:
投与期間:水中で暴露により24時間。
投与後時間:14日間。
動物数:濃度当たり7匹。
アッセイ容器:9リットルの容積を有する魚用タンクであって、濾過ラック再循環水5リットルでその容積を満たす。
動物荷重:魚の平均重量、0.54〜0.60g。
アッセイ濃度:2000mg/kg。
明るさ:12/12時間の明/暗の光周期。
温度:25±1℃。
食物:動物には、投与前24時間またはアッセイを継続する24時間は食物を与えなかった。その後、動物の休養のように食物を与えた。
動物の重量:時間0(投与前)、投与の7および14日後に体重測定した。
【0303】
この場合には、投与開始前(0dpt)、投与の7日後および投与の14日後の3つの確定時間の様々な検討群の動物の重量を、毒性パラメーターとして用いた。
図59は、投与および物質の暴露後時間による動物の重量の平均値を示す。この結果は、投与なしの魚の重量は検討を通して増加したが、シンバスタチンを投与した魚の重量は有意に減少することを示していた。次には、NST0037の投与は、驚くべきことには、アッセイ中重量を変更せず、これはシンバスタチンより良好な安全性プロフィールを有することを示している。
【0304】
25.2.シンバスタチンと比較した化合物NST0037の水中での暴露による単回投与による毒性分析(24時間)後の成熟ゼブラフィッシュでの組織病理学的検討
上記検討の結果に基づいて、本発明者らは、ヘマトキシリン−エオシンで試料を染色することによって様々な投与群の組織病理学的検討に差があるかどうかを検討することにし、これは、検討を行っている動物の臓器または組織における病理学的徴候を識別することができる。その目的のため、魚を、投与14日後に(予め麻酔して)屠殺し、試料(魚全体)をパラフィンで包んだ。次いで、ヘマトキシリン−エオシン染色を行い、組織病理学的検討を行い、動物当たり最低6枚の縦断面を得て、同一臓器の様々な検討領域を集めた。下記の臓器を検討した:脳、腎臓、膵臓、腸、目、鰓、卵巣、精巣、筋肉および肝臓。
図60は、2000mg/kgの用量を投与した動物で行った組織病理学的検討の典型的な画像を示す。検討を行った総ての臓器の中で、識別可能な病理学的特徴を有するものは、腸および卵巣であった。腸絨毛での萎縮の徴候は腸で検出されるが、NST0037を投与した動物よりはシンバスタチンを投与したもので一層顕著であった。シンバスタチンを投与した雌の卵巣では、萎縮は第三次卵母細胞で検出された。更に、両化合物を投与した動物の肝臓は、離散性炎症(discrete inflammation)領域を有していた。
【0305】
要約すれば、成熟ゼブラフィッシュでのNST0037の投与は、14日の実験中その重量を変化させなかったが、シンバスタチンの投与は、動物の重量の有意な減少を検出させた。更に、シンバスタチンはNST0037より大きな組織病理学的効果を生じ、後者の化合物が一層安全であることを示している。
【0306】
例26
26.1.成熟ゼブラフィッシュにおいて、シンバスタチンと比較してNST0037の水中での恒常的暴露(4日間)による致死率の検討
上記例の結果に基づいて、本発明者らは、シンバスタチンと比較して化合物NST0037の一層高い生物安全性が、OECDの魚についての急性毒性試験(改訂指針案203)に従って4日間水中での恒常的暴露による致死率の分析によって確認されるかどうかを検討することにした。このアッセイの目的は、淡水魚についての物質の急性致死毒性を決定することである。急性毒性は、所定の物質に短期間(数日間)暴露した結果として生体に誘発される識別可能な有害効果である。本アッセイでは、急性毒性は、平均致死用量(LD
50)、すなわち、水中で継続的暴露期間アッセイに付されたバッチの魚の50%に死を引き起こす用量として表される。
【0307】
実験は、動物の操作指針(Scientific Procedures, Act.1986)に厳密に従って行った。展開したアッセイは、下記の検討パラメーターを有する:
静的方法:毒性分析は、その間分析溶液を取り替えることなく、行った。
コントロール(またはチェック試料)は、実際の分析濃度の他に分析物質なしで作成する。
期間:4日間。
投与後時間:14日間。
動物数:濃度当たり7匹。
容器:9リットルタンクであって、濾過ラック再循環水5リットルでその容積を満たす。
荷重:魚の平均重量、0.46g±0.03、荷重は0.49g/リットル。
アッセイ濃度:5段階濃度(1、3.2、10、32および100mg/kg)。
明るさ:12/12時間の明/暗の光周期。
温度:25±1℃。
食物:なし。
【0308】
全分析時間中の検討を行っている動物の死は、毒性パラメーターとして記録した。
【0309】
表IIIは、水中で化合物を4日間投与した成熟ゼブラフィッシュでシンバスタチンと比較した化合物NST0037の生存率の分析を示す。この表は、実験に用いた動物数、mg/kg(動物の体重)での用量、処理時間、および総数に対する死亡した動物数を示す。
【0310】
【表3】
【0311】
表IIIに示されるように、この急性毒性アッセイにおいて両化合物によって引き起こされる死亡率は、驚くべきことには、投与4日後には、NST0037を投与した動物の14%(1/7)が死亡し、シンバスタチンを投与した群について観察された死亡率は86%(6/7)であったので、シンバスタチンは化合物NST0037より毒性が有意に高かった(χ
2、p値<0.001)。この検討で観察されることによれば、化合物NST0037のLD
50は、この化合物の連続投与の4日後には100mg/kgより高かった。シンバスタチンのLD
50は、4dpt後には60.55mg/kgであり、シンバスタチンはNST0037より少ない用量でかつ同じ時間でLD
50に達したので、化合物NST0037より毒性が驚くほど高かった。
【0312】
26.2.成熟ゼブラフィッシュにおいてシンバスタチンと比較したNST0037の水中での恒常的暴露(4日間)による致死率分析後の成熟ゼブラフィッシュの組織病理学的検討
上記検討の結果に基づいて、本発明者らは、様々な投与群の試料をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって組織病理学的検討に差があるかどうかを検討することにより、検討を行っている動物の臓器または組織における病理学的徴候を識別できるかどうかを検討することにした。その目的のため、投与の後に生き残った魚を、投与の4日後に(予め麻酔して)屠殺し、試料(魚全体)をパラフィンで包んだ。次いで、ヘマトキシリン−エオシン染色を行い、組織病理学的検討を行い、動物当たり最低6枚の縦断面を得て、同一臓器の様々な検討領域を集めた。下記の臓器を検討した:脳、腎臓、膵臓、腸、目、鰓、卵巣、精巣、筋肉および肝臓。
【0313】
図61は、投与した動物で行った組織病理学的検討の典型的な画像を示す。それは、検討を行った病理学的研究の典型的な画像を示している。毒性学的問題を誘発した用量は、32および100mg/kgの用量のみであり、病理学的変化は卵巣に限定されていた。雌のコントロールは様々な成熟段階で正常な卵胞を示し、両化合物を100mg/kg投与した雌は卵巣の損傷を示し、間質変化に加えて第二次および第三次卵母細胞のかなりの変性が観察された。更に、シンバスタチンを投与した雌の群でも、卵巣に組織病理学的損傷を示したが、驚くべきことには、これは、同じ用量の化合物NST0037を投与した雌の群では観察されず、化合物NST0037はこの実験モデルではシンバスタチンより安全であることを示している。
【0314】
要約すれば、成熟ゼブラフィッシュでのNST0037 100mg/kgの4日間の投与は、残留死亡(residual mortality)を示し、これは同一条件ではシンバスタチンにもみられた。さらに、見出された組織病理学的損傷は動物の卵巣に限定されており、シンバスタチンの32および100mg/kgの用量では検出されたが、NST0037では、卵巣損傷は最高用量で検出されただけであり、このことは、後者の化合物が一層安全であることを示している。