(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配位剤Lでキレート化された造形触媒前駆体が、配位剤Lでキレート化されたフィルターケーキを有さない造形触媒前駆体よりも少なくとも25%大きい総孔容積を有する、請求項1に記載のプロセス。
酸化亜鉛、硫化亜鉛、ニオビア、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸、チタニア、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノケイ酸マグネシウム粘土、金属マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ジルコニア、カチオン性粘土及びこれらの混合物の群から選択される少なくとも1つの希釈剤を準備すること;
少なくとも1つの希釈剤を、少なくとも1つのVIB族金属前駆体MVIB及び少なくとも助金属触媒MPに添加して、触媒前駆体沈殿物を形成すること
を更に含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語は、明細書全体にわたって使用され、特に示されない限り以下の意味を有する。
【0012】
SCF/BBL(又はscf/bbl若しくはscfb若しくはSCFB)は、炭化水素供給原料の1バレル
(0.159m3)あたりのガス(N
2、H
2など)の標準立方フィート
(0.02832m3)の単位を意味する。
【0013】
LHSVは、液時空間速度を意味する。
【0014】
本明細書において参照される周期表は、IUPAC及び米国国立標準局により承認されており、例は、2001年10月のロスアラモス国立研究所の化学部門(Los Alamos National Laboratory’s Chemistry Division of October 2001)による元素周期表である。
【0015】
本明細書で使用されるとき、用語「嵩高触媒」(“bulk catalyst”:バルク触媒)は、「非支持触媒」(“unsupported catalyst”)と交換可能に使用することができ、触媒組成物が、予備成形造形触媒支持体を有し、次に含浸又は付着触媒を介して金属に装填されている従来の触媒形態ではないことを意味する。一実施態様において、嵩高触媒は、沈殿により形成される。別の実施態様において、嵩高触媒は、触媒組成物に組み込まれた結合剤を有する。なお別の実施態様において、嵩高触媒は、あらゆる結合剤を用いることなく、金属化合物から形成される。
【0016】
本明細書で使用されるとき、語句「のうちの1つ又は複数」又は「のうちの少なくとも1つ」は、X、Y及びZ又はX
1−X
n、Y
1−Y
n及びZ
1−Z
nなどの幾つかの元素又は元素の部類の後に置いて使用される場合、X又はY又はZから選択される単一の元素、同じ共通の部類から選択される元素の組み合わせ(X
1及びX
2など)、並びに異なる部類から選択される元素の組み合わせ(X
1、Y
2及びZnなど)を意味することが意図される。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「水素化変換」(“hydroconversion”:水素化転換)、又は「水素化プロセシング」(“hydroprocessing”)は、メタン化、水性ガスシフト反応、水素化、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素異性化、水素化脱ロウ及び選択的水素化分解を含む水素化分解が包含されるが、これらに限定されない水素の存在下で実施される任意のプロセスを意味する。水素化プロセシングの種類及び反応条件に応じて、水素化プロセシングの生成物は、改善された粘度、粘度指数、飽和物含有量、低温特性、揮発度及び脱分極などを示すことができる。
【0018】
本明細書で使用されるとき、700°F
(371℃)+変換率は、水素化転換プロセスにおいて700°F
(371℃)+を超える沸点を有する原料から700°F(371.℃)未満の沸点の物質への変換を意味し、(100%
*((供給原料中の700°F
(371℃)を超えて沸騰する物質の重量%−生成物中の700°F
(371℃)を超えて沸騰する物質の重量%)/供給原料中の700°F
(371℃)を超えて沸騰する物質の重量%))として計算される。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「LD50」は、一度に投与したとき、試験動物の群の50%(半分)の死亡をもたらす物質の量である。LD−50は、物質の短期中毒の可能性(急性毒性)を測定し、試験は、ラット及びマウスなどの小型動物で実施される(mg/Kg)。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「造形触媒前駆体」(“shaped catalyst precursor”)は、噴霧乾燥、ペレット化、ピリング、造粒、ビーディング、錠剤成形、ブリケッティング(bricketting)、押し出し若しくは当業界で既知の他の手段を介した圧縮の使用により又は湿潤混合物の凝集により形成(又は造形)される触媒前駆体を意味する。造形触媒前駆体は、ペレット、円柱、直線又はライフル様(ねじれ)三裂体、多孔円柱、錠剤、環、立方体、蜂巣状、星形、三葉、四葉、丸剤、顆粒などが含まれるが、これらに限定されない形態又は形状のいずれであってもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、孔は、3つの分類のサイズに従って分類される:マイクロ孔(3.5nmよりも小さい寸法)、メソ孔(3.5〜500nmの範囲の寸法)及びマクロ孔(500nmより大きい寸法)。
【0022】
一実施態様における孔多孔性(pore porosity)及び孔径分布は、ASTM標準法D4284により設計された水銀圧入ポロシメトリーを使用して測定される。別の実施態様において、孔多孔性及び孔径分布は、窒素吸着法を介して測定される。特に示されない限り、孔多孔性は、水銀圧入法を介して測定される。
【0023】
触媒生成物:
本明細書の低体積収縮率を有する水素化変換嵩高触媒は、触媒前駆体から形成される。前駆体は、硫化すると、例えば続く水素化脱硫(HDS)、水素化脱芳香族(HDA)及び水素化脱窒素(HDN)プロセスの使用によって、触媒に変換される(触媒活性になる)。出発物質、すなわち触媒前駆体は、少なくとも1つの助触媒金属前駆体及びVIB族金属前駆体から調製される、水酸化物又は酸化物の物質であってもよい。金属前駆体は、元素又は化合物形態のいずれかであってもよい。
【0024】
一実施態様において、触媒は、少なくとも1つのVIII族の非貴金属物質及び少なくとも2つのVIB族金属を含む嵩高多金属酸化物の形態の触媒前駆体から調製される。一実施態様において、VIB族金属のVIII族非貴金属に対する比は、約10:1から約1:10の範囲である。別の実施態様において、酸化物触媒前駆体は、一般式:(X)
b(Mo)
c(W)
dO
z[式中、Xは、Ni又はCoであり、b:(c+d)のモル比は0.5/1〜3/1であり、c:dのモル比は>0.01/1であり、かつ、z=[2b+6(c+d)]/2である]を有する。なお別の実施態様において、酸化物触媒前駆体は、1つ又は複数の配位剤Lを更に含む。用語「配位子」(“ligand”)は「配位剤」(“ligating agent”)、「キレート剤」又は「錯化剤」(又はキレーター若しくはキーラント)と交換可能に使用することができ、金属イオン、例えばVIB族及び/又は助触媒金属を組み合わせて、大型錯体、例えば触媒前駆体を形成する添加剤を意味する。
【0025】
別の実施態様において、触媒は、少なくとも1つのVIII族非貴金属物質及び少なくとも2つのVIB族金属を含む水酸化物の形態の触媒前駆体から調製される。一実施態様において、水酸化物化合物は、一般式:A
v[(M
P)(OH)
x(L)
ny]
z(M
VIBO
4)[式中、Aは、1つ又は複数の一価カチオン種であり、Mは、元素又は化合物形態の少なくとも1つの金属を意味し、Lは、1つ又は複数の配位剤を意味する。]で表される。
【0026】
なお別の実施態様において、触媒は、少なくとも希釈剤を含む触媒前駆体から調製され、前駆体は式:A
r[(M
IIA)
s(M
VIII)
t(Al)
u(OH)
v(L)
w]
x(Si
(1−y)Al
yO
2)
z(M
VIBO
4)[式中、Aは、1つ又は複数の一価カチオン種であり、M
IIAは、1つ又は複数のIIA族金属であり、M
VIIIは、1つ又は複数のVIII族金属であり、Alは、アルミニウムであり、Lは、1つ又は複数の配位剤であり、(Si
(1−y)Al
yO
2)は、シリカ−アルミナ部分であり、M
VIBは、1つ又は複数のVIB族金属であり、M
VIII:M
VIBの原子比は、100:1〜1:100である。]で表される。
【0027】
一実施態様において、Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンのうちの少なくとも1つである。一実施態様において、Aは、NH4+、他の第四級アンモニウムイオン、有機ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン及びこれらの組み合わせなどの一価カチオンから選択される。
【0028】
一実施態様において、Lは1つ又は複数の配位剤である。別の実施態様において、Lは、電荷中性であるか又は陰電荷n<=0を有する。別の実施態様において、Lは、500mg/Kgを超えるLD50比(ラットへの単回経口用量として)の配位剤を含有する非毒性有機酸素である。用語「電荷中性」は、触媒前駆体が正味陽又は陰電荷を担持しないという事実を意味する。一実施態様において、配位剤には、多座と共に単座の両方が含まれ、例えばNH
3と共にアルキル及びアリールアミンが含まれる。配位剤Lの他の例には、カルボキシレート、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エノレート形態のアルデヒド、エノレート形態のケトン及びヘミアセタール、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。用語「カルボキシレート」は、脱プロトン化又はプロトン化された状態のカルボキシレート又はカルボン酸基を含有する任意の化合物を意味する。別の実施態様において、Lは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、クルコン酸(cluconic acid)、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸などの有機酸付加塩、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、並びに、アリールカルボン酸;マレエート、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ジカルボキシレートなどの化合物を含有するカルボキシレート、並びにこれらの組み合わせの群から選択される。
【0029】
M
Pは、少なくとも1つの助触媒金属である。一実施態様において、M
Pは、用いられる助触媒金属(単数又は複数)に応じて、+2又は+4のいずれかの酸化状態を有する。M
Pは、VIII族、IIB族、IIA族、IVA族及びこれらの組み合わせから選択される。一実施態様において、M
Pは、少なくとも1つのVIII族金属であり、M
Pは、+2の酸化状態Pを有する。別の実施態様において、M
Pは、IIB族、IVA族、及びこれらの組み合わせから選択される。一実施態様において、助触媒金属M
Pは、+2の酸化状態を有する少なくとも1つのVIII族金属であり、触媒前駆体は、(v−2+2z−x
*z+n
*y
*z)=0を有する式:A
v[(M
P)(OH)
x(L)
ny]
z(M
VIBO
4)で表される。一実施態様において、助触媒金属M
Pは、Ni及びCoなどの2つのVIII族金属の混合物である。なお別の実施態様において、M
Pは、Ni、Co及びFeなどの3つの金属の組み合わせである。一実施態様において、M
Pが、Zn及びCdなどの2つのIIB族金属の混合物である場合、電荷中性触媒前駆体は、式:A
v[(Zn
aCd
a’)(OH)
x(L)
y]
z(M
VIBO
4)で表される。なお別の実施態様において、M
Pは、Zn、Cd及びHgなどの3つの金属の組み合わせであり、触媒前駆体は、式:A
v[(Zn
aCd
a’Hg
a”)(OH)
x(L)
ny]
z(M
VIBO
4)で表される。
【0030】
一実施態様において、助触媒金属M
Pは、元素、化合物又はイオンの形態の、亜鉛、カドミウム、水銀、ゲルマニウム、スズ又は鉛及びこれらの組み合わせなどのIIB及びVIA金属の群から選択される。なお別の実施態様において、助触媒金属M
Pは、Ni、Co、Fe及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、元素、化合物又はイオンの形態で更に含む。別の実施態様において、助触媒金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム化合物の群から選択されるIIA族金属化合物であり、これらは少なくとも部分的に固体状態であり、例えば炭酸塩、水酸化物、フマル酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硫化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物又はこれらの混合物などの水不溶性化合物である。
【0031】
一実施態様において、M
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つのVIB族金属である。一実施態様において、M
P:M
VIBは、100:1〜1:100の原子比を有する。v−2+P
*z−x
*z+n
*y
*z=0;0≦y≦−P/n;0≦x≦P;0≦v≦2;0≦zである。一実施態様において、M
VIBはモリブデンである。なお別の実施態様において、M
VIBは、少なくとも2つのVIB族金属、例えばモリブデン及びタングステンの混合物である。
【0032】
触媒の作製方法:
本明細書で調製される触媒は、高い機械的強度及び改善された性能、すなわち高収率の変換を提供することに加えて、水素化プロセシング操作において低い体積収縮率を有する。低い収縮率は、触媒前駆体の制御/最適化された熱処理によってもたらされる。
【0033】
参照は
図1によってなされ、当該図は、最適な孔容積及び表面積を有する多金属触媒を作製する一般的プロセスの実施態様を概略的に説明するブロック図である。
【0034】
沈殿物又は共ゲル化物の形成:
プロセスの最初のステップ10は、沈殿又は共ゲル化ステップであり、金属前駆体11、例えば助触媒金属成分(単数又は複数)及びVIB族金属成分の混合物において反応させて、沈殿物又は共ゲル化物を得ることに関わる。用語「共ゲル化物」は、少なくとも2つの金属化合物の共沈殿物(又は沈殿物)を意味する。金属前駆体を、固体、溶液、懸濁液又はこれらの組み合わせとして反応混合物に加えることができる。可溶性塩がそのまま添加される場合、これらは反応混合物に溶解し、続いて沈殿するか若しくは共ゲル化するか又は懸濁液を形成する。溶液を、任意選択で真空下で加熱して、沈殿及び液体の蒸発を実施することができる。
【0035】
沈殿(又は共ゲル化)は、助触媒金属化合物及びVIB族金属化合物が沈殿する又は共ゲル化物を形成する温度及びpHで実施される。一実施態様において、共ゲル化物が形成される温度は、25〜350℃である。一実施態様において、触媒前駆体は、0〜3000psig
(0〜20.62MPa)の圧力で形成される。第2の実施態様では、10〜1000psig
(0.0687〜6.87MPa)である。第3の実施態様では、30〜100psig
(0.206〜0.687MPa)である。混合物のpHを変えて、生成物の所望の特性に応じて、沈殿又は共ゲル化の速度を増加又は減少することができる。一実施態様において、混合物は反応ステップ(単数又は複数)の間、中性pHで放置される。別の実施態様において、pHは、0〜12の範囲に維持される。別の実施態様において、pHは、7〜10の範囲に維持される。反応混合物に塩基若しくは酸12を添加することによって、又は温度が高くなると分解して、それぞれpHを増加若しくは減少する水酸化物イオン若しくはH
+イオンになる化合物を添加することによって、pHを変えることを実施することができる。別の実施態様において、加水分解反応において沈殿する化合物を添加することである。pH調整のために添加される化合物の例には、尿素、亜硝酸塩、水酸化アンモニウム、鉱酸、有機酸、鉱塩基及び有機塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
一実施態様において、少なくとも1つの配位剤Lを、任意選択で、助触媒金属化合物及び/又はVIB族金属化合物の沈殿又は共ゲル化の前又は後に添加することができ、すなわち配位剤Lを、反応器のうちの1つが沈殿物を形成するように金属前駆体に添加することができるか、又は沈殿物が形成された後に添加することができる。幾つかの実施態様において配位剤を組み込むことは、触媒前駆体の多孔性を有意に増加することが観察される。一実施態様において、キレート化触媒前駆体は、非キレート化触媒前駆体よりも少なくとも10%大きいマクロ孔容積を示す。第2の実施態様において、マクロ孔容積の増大は、少なくとも20%である。
【0037】
一実施態様において、配位剤Lに代わって又は加えて、触媒前駆体の総組成の5〜95重量%の量の希釈剤を、考慮される触媒用途に応じて、このステップにおいて添加することもできる。これらの物質を、金属前駆体の沈殿又は共ゲル化の前又は後に適用することができる。希釈材の例には、酸化亜鉛;硫化亜鉛;ニオビア;オルトケイ酸テトラエチル;ケイ酸;チタニア;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、ヒドロニウム−又はアンモニウム安定化シリカゾル及びこれらの組み合わせなどのケイ素成分;アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない本発明のプロセスに有用なアルミニウム成分;アルミノケイ酸マグネシウム粘土、金属マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び硝酸マグネシウムなどのマグネシウム成分;ジルコニア;サポナイト、ベントナイト、カオリン、海泡石又はハイドロタルサイトなどのカチオン性粘土又はアニオン性粘土、或いはこれらの混合物が含まれる。一実施態様において、チタニアが希釈剤として最終触媒前駆体に基づいて50重量%を超える量で(酸化物又は水酸化物として)使用される。
【0038】
液体除去:
次のステップ20において、少なくとも50重量%の液体(上澄み/水)が、当業界で既知の分離プロセス、例えば、濾過、デカント、遠心分離などを介して沈殿物(又は懸濁液)から除去される。一実施態様において、沈殿物における液体は、真空技術又は当業界で既知の装置による濾過によって除去されて、湿潤フィルターケーキを得る。湿潤フィルターケーキは、一般に、およそ10〜50重量%の液体を有するフィルターケーキとして定義され、したがって一般に水又は他の溶媒、例えばメタノールなどを含まない。
【0039】
一実施態様において、フィルターケーキの任意選択の乾燥は、大気条件下又は窒素、アルゴン若しくは真空のなどの不活性条件下、水を除去するのに十分であるが有機化合物を除去するには十分でない温度で実施される。一実施態様において、乾燥は、触媒前駆体の恒量が達成されるまで、約50〜120℃で実施される。別の実施態様において、乾燥は、50℃〜200℃の温度で、1/2時間から6時間の範囲の時間実施される。乾燥は、当業界で既知の熱乾燥技術、例えば、フラッシュ乾燥、ベルト乾燥、オーブン乾燥などを介して実施することができる。
【0040】
沈殿後配位(Post Precipitate Ligating):
一実施態様において、触媒前駆体沈殿物を、任意選択で、キレート化ステップ25において少なくとも1つの配位剤Lで処理する。一実施態様において、キレート化は、有機配位剤/溶媒蒸気をフィルターケーキの中に通過させることによって実施される。配位剤を組み込むより効果的な方法である別の実施態様では、フィルターケーキを、配位剤を含有する溶液で洗浄する。本明細書に使用される配位剤は、沈殿ステップにおける金属前駆体(試薬)に使用/組み込まれうる任意の配位剤と同一でも異なっていてもよい。
【0041】
一実施態様において、沈殿物形成後に適用される配位剤を組み込む触媒前駆体は、沈殿物を形成するプロセスにおいてキレート化された触媒前駆体よりも少なくとも25%大きな総孔容積を示し、例えば配位剤(単数又は複数)は、金属前駆体のうちの1つ又は金属前駆体の混合物に、沈殿物の形成の前又は間に添加される。第2の実施態様において、総孔容積の増大は、少なくとも40%である。第3の実施態様において、総孔容積の増大は、少なくとも50%である。
【0042】
沈殿後キレート化ステップ(前駆体沈殿物の形成後)において、配位剤は、前駆体沈殿物に、続く硫化ステップのために追加的な高い比表面積をもたらすと考えられる。また、幾つかの実施態様において、配位剤は、前駆体の表面電荷を変え、このことは、高い多孔性の触媒のために、その後の乾燥ステップにおいて粒子の分離を保持する(一緒に塊になるのが少ない)ことの一助になると考えられる。
【0043】
非凝集乾燥:
「非凝集乾燥」(“Non−Agglomerative Drying”)は、粒子凝集が実質的に防止される乾燥プロセスを意味する。例えば、湿潤遠心分離ケーキにおける触媒粒径の検査は、粒径中央値(median particle size:粒子サイズ中央値;メディアン粒子径)が1〜3μmの範囲でありうることを示す。しかし、そのようなケーキを従来の方法でオーブン乾燥又はトレー乾燥した後では、得られる粒子のサイズ中央値は、粒子が最初のサイズの40倍を超えて一緒に付着した/塊状になったままなので、はるかに大きい。トレー乾燥のいくつかの実施態様において、フィルターケーキは乾燥されて、塊又は大塊(chunks(green body:素地))を形成し、続く摩砕により前駆体の粒径を低減する必要がある。
【0044】
非凝集乾燥プロセス(ステップ26)の一実施態様において、塊になることが少ないか又は小さなサイズで塊になるので、有意な凝集は防止される。一実施態様において、非凝集乾燥は、乾燥前粒子のサイズ中央値の20倍未満のサイズ中央値を有する粒子を生成する。別の実施態様において、サイズ中央値は、乾燥前粒子のサイズ中央値の10倍未満である。第3の実施態様において、非凝集乾燥は、乾燥前粒子のサイズ中央値の5倍未満のサイズ中央値を有する粒子を生成する。
【0045】
非凝集乾燥法の例には、含水率を15%未満に低減する、フラッシュ乾燥、凍結乾燥及び流動床乾燥が含まれるが、これらに限定されない。一実施態様において、含水率は10%未満に低減される。第3の実施態様では、5%未満である。第4の実施態様では、2%未満である。一実施態様において、非凝集乾燥の後、乾燥触媒前駆体は、40μm未満の粒径中央値を有する。
【0046】
一実施態様において、相当量の液体が沈殿物から除去されて、湿潤フィルターケーキを生じ、湿潤フィルターケーキは、フラッシュ乾燥法により非凝集乾燥26を受ける。別の実施態様において(点線で示されているように)、湿潤フィルターケーキは、非凝集乾燥ステップの前に最初にキレート化される。一実施態様において、フィルターケーキは、70℃〜250℃の温度で60秒未満の時間、空気(又は窒素)によりフラッシュ乾燥される。別の実施態様において、湿潤フィルターケーキは流動床乾燥を受け、ここで粒子表面積は大容量の空気流に曝露され、熱は対流により短時間で生成物表面に移転され、粒子凝集を少なくする。流動床乾燥はフラッシュ乾燥よりも長い時間がかかるが、それでも前駆体粒子が、トレー乾燥又はオーブン乾燥のように数時間ではなくほんの数分で乾燥することを可能にし、実質的に塊になることが少ない。
【0047】
トレー乾燥試料(150°F
(65.56℃)で2〜4時間)とフラッシュ乾燥試料の比較試験において、フラッシュ乾燥前駆体は、トレー乾燥前駆体の少なくとも2倍の総孔容積(水銀多孔度測定器による)を有することが見出されている。別の実施態様において、フラッシュ乾燥前駆体は、トレー乾燥前駆体の少なくとも3倍の総孔容積を有する。
【0048】
造形用の触媒前駆体ミックスの形成:
このステップ30において、乾燥フィルターケーキは、水、並びに造形助剤32、解膠剤、孔形成剤及び希釈物質13が含まれるが、これらに限定されない他の任意選択の物質と一緒に混合される。一実施態様において、前の操作からのフィルターケーキ物質、前駆体物質の押出軟塊及び/又は乾燥粒子/断片の形態の再処理物質を、物質群に任意選択で含めて、触媒前駆体ミックスの新たなバッチを形成することができる。
【0049】
前駆体バッチ混合物を十分な時間混合して、実質的に均一又は均質の混合物を得る。混合時間は、混合技術、例えば摩砕、混練、スラリー混合、乾式若しくは湿式混合又はこれらの組み合わせ、並びに使用される混合装置、例えば混和機、ブレンダー、二本腕混練混合機、回転子固定子混合機又は混合粉砕機の種類及び効率によって決まる。一実施態様において、混合時間は、0.1〜10時間の範囲である。
【0050】
一実施態様において、造形助剤は、100:1〜10:1(触媒前駆体の重量%対造形助剤の重量%)の比で添加される。一実施態様において、造形助剤は、セルロースエーテル型及び/又は誘導体の有機結合剤から選択される。例には、メチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロブチル(hydrobutyl)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びこれらの混合物が含まれる。別の実施態様において、造形助剤は、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリアルキレングリコールである。なお別の実施態様において、造形助剤は、飽和若しくは不飽和脂肪酸(ポリト酸(politic acid)、サチル酸(satiric acid)若しくはオレイン酸など)又はその塩、多糖類由来酸又はその塩、グラファイト、デンプン、アルカリステアリン酸塩、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸、鉱油及びこれらの組み合わせから選択される。
【0051】
一実施態様において、解膠剤を混合物に加えることができる。解膠剤は、アルカリ又は酸であってもよく、例えば、アンモニア、ギ酸、クエン酸、硝酸、カルボン酸などである。一実施態様において、触媒前駆体物質が噴霧乾燥されるかにかかわらず、10〜28%強度のアンモニア溶液を、噴霧乾燥物質100gあたり50〜150mlの量で加えることができる。別の実施態様において、酸を、2〜4%の強度の水溶液の形態により、噴霧乾燥物質100gあたり10〜20mlの量で用いることができる。
【0052】
別の実施態様において、孔形成剤も再処理物に伴って混合物に添加される。孔形成剤の例には、加熱により分解する、鉱油、ステリン酸(steric acid)、ポリエチレングルコールポリマー、炭水化物ポリマー、メタクリレート、セルロースポリマー及びカルボキシレートが含まれるが、これらに限定されない。市販のセルロース系孔形成剤の例には、Methocel(商標)(Dow Chemical Companyより入手可能)、Avicel(商標)(FMC Biopolymerより入手可能)、Morwet(商標)(Witcoより入手可能)及びPorocel(商標)(Porocelより入手可能)が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
なお別の実施態様において、希釈材を添加することができる。このステップにおいて添加される希釈材は、上記の金属前駆体から沈殿物を形成するステップにおいて添加されうる任意の希釈材と同一でも異なっていてもよい。
【0054】
一実施態様において、触媒前駆体がペレット化、押し出し又は加圧により造形される場合、バッチ粘度を、可塑化及び造形に、すなわち軟塊混合物の稠度に好都合なレベルに調整するために、十分な量の水が混合バッチに添加される。一実施態様において、混合物が50〜90%の固形分(LOI)を有するために、十分な量の水が添加される。別の実施態様では、60〜70%の固形分(LOI)である。
【0055】
造形プロセス:
このステップにおいて、触媒前駆体ミックスは、ペレット化、押し出し、錠剤化、成形、混転(tumbling:タンブリング)、加圧、噴霧及び噴霧乾燥を含む当業界で既知の方法のいずれかを使用して、形成粒子、例えば長球、丸剤、錠剤、円柱、不規則押出物、単にゆるく結合した凝集体又は集合体などに造形される。
【0056】
一実施態様において、造形触媒前駆体は、当該技術に既知の押出装置、例えば一軸押出機、ラム押出機、二軸押出機などを使用する押し出しを介して形成される。別の実施態様において、造形は、100℃〜320℃の範囲の出口温度で噴霧乾燥を介して実施される。一実施態様において、造形触媒前駆体は、1インチ
(0.0254m)の約1/16〜1/6の直径を有する押出物へと押し出し成形される。押し出しの後、押出物を、適切な長さ、例えば1/16インチ
(1.588×10−3m)から5/16インチ
(7.94×10−3m)に切断して円柱ペレットを製造することができる。
【0057】
熱処理:
一実施態様において、造形触媒前駆体は、直接又は間接加熱オーブン、トレー乾燥機又はベルト乾燥機により約50℃〜325℃で約15分間から24時間空気(又は窒素)乾燥され、ここで温度は、1分あたり1〜50℃の速度で室温から乾燥温度である。一実施態様において、温度は、1分あたり1〜2℃のゆっくりとした速度で昇温される。第2の実施態様において、空気乾燥は、1分あたり少なくとも25℃の大きな昇温速度で実施される。
【0058】
一実施態様において、熱処理の後、造形触媒を、適切な雰囲気下、例えば窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガス又は蒸気において、約350℃〜750℃の範囲の温度で任意選択でか焼することができる。なお別の実施態様において、か焼は350℃〜600℃の温度で実施される。か焼プロセスにおいて、触媒前駆体は酸化物に変換される。
【0059】
硫化ステップ:
再処理物質61を含有する造形触媒前駆体を、元素硫黄それ自体;優勢な条件下で分解して硫化水素になる硫黄含有化合物;H
2Sそれ自体又は任意の不活性若しくは還元条件下のH
2S、例えばH
2の群から選択される、少なくとも1つの硫化剤62の使用により硫化して、活性触媒を形成することができる。硫化剤の例には、硫化アンモニウム、ポリ硫化アンモニウム((NH
4)
2S
x)、チオ硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
3)、チオ硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
3)、チオ尿素(CSN
2H
4)、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、硫化ジメチル(DMS)、ジブチルポリスルフィド(DBPS)、メルカプタン、第三級ブチルポリスルフィド(PSTB)、第三級ノニルポリスルフィド(PSTN)などが含まれる。一実施態様において、炭化水素原料が、触媒前駆体の硫化を実施するための硫黄供給源として使用される。
【0060】
硫化ステップにおいて、造形触媒前駆体は、硫化剤と、70℃〜500℃の範囲の温度で10分間から15日間、H
2含有ガス圧下で接触させることにより、活性触媒に変換される。
【0061】
一実施態様において、硫化ステップの際の総圧力は、大気圧から約10bar(1MPa)の範囲であってもよい。硫化温度が硫化剤の沸点未満の場合、プロセスは、一般に大気圧で実施される。硫化剤/任意選択の成分(ある場合)の沸騰温度を超えるとき、反応は、一般に、増大された圧力下で実施される。
【0062】
触媒の使用:
触媒前駆体は、時々、その場で(in−situで)、例えば水素化処理の際に同じ水素化処理反応器において硫化されうるので、触媒性能は、硫化前の触媒前駆体の特性により特徴付けることができる。
【0063】
一実施態様において、触媒前駆体は、相当な割合の孔がマクロ孔である本質的に単峰性の孔径分布を有することによって特徴付けられる。本明細書で使用されるとき、本質的に単峰性の孔径分布とは、90%を超える孔がマクロ孔であり、10%未満がメソ孔であることを意味する。一実施態様において、触媒前駆体は、95%を超える孔容積がマクロ孔として存在するような孔分布を有する。別の実施態様において、97%を超える孔容積がマクロ孔として存在する。なお別の実施態様において、99%を超える孔がマクロ孔である。存在する場合、メソ孔は、0.005〜0.01cc/g
(0.005〜0.01cm3/g)の範囲の孔容積を有する。一実施態様において、触媒前駆体は、0.08〜2.0cc/g
(0.08〜2.0cm3/g)の範囲の総孔容積を有することによって特徴付けられる。別の実施態様において、総孔容積は0.10〜1cc/g
(0.10〜1cm3/g)の範囲である。第3の実施態様において、総孔容積は少なくとも0.12cc/g
(0.12cm3/g)である。沈殿後に配位された触媒前駆体の第4の実施態様において、総孔容積は少なくとも0.15cc/g
(0.15cm3/g)である。
【0064】
触媒前駆体及びそれから形成された硫化嵩高金属触媒は、重油供給物の拡散限界を克服するのに十分なマクロ孔部位及び大きな孔容積を有するので、一実施態様における嵩高金属触媒は、343℃(650°F)〜454℃(850°F)の範囲、特に371℃(700°F)を超える常圧残油(AR)沸点を有する重油供給原料を、200〜450℃の温度、15〜300bar
(1,500,000〜30,000,000Pa)の水素圧、0.05〜10h
−1の液時空間速度及び35.6〜2670m
3/m
3の水素処理ガス速度(200〜15000SCF/B
(35.62〜2671.7m3/m3)−すなわち反応器への炭化水素化合物供給原料の「1バレル
(0.159m3)あたりの標準立方フィート
(0.02832m3)」)などの広範囲の反応条件下で、水素化処理するのに特に適している。
【0065】
343℃(650°F)を超える沸点を有する重油供給原料は、一般的に、相対的に高い比重、低い水素対炭素比及び高い残留炭素を有することによって特徴付けられる。これらは、大量のアスファルテン、硫黄、窒素及び金属を含有し、これらは大きな分子直径により水素化処理の困難さを増大する。主にマクロ孔の単峰性分布の一実施態様において、嵩高触媒は、0.9nm〜1.7nm(9〜17オングストローム)の範囲の平均分子直径を有する重油供給原料を水素化処理して、>99.99%のHDN変換レベル(700°F
(371℃)+変換)をもたらし、一実施態様では700°F
(371℃)を超える沸点の留分における硫黄レベルを20ppm未満に低下し、第2の実施態様では10ppm未満に低下するのに特に適している。一実施態様において、嵩高触媒は、0.9nm〜1.7nmの範囲の平均分子直径を有する重油供給原料を水素化処理するのに特に適している。なお別の実施態様において、嵩高触媒は、300〜400g/モルの範囲の平均分子量Mnを有する重油供給原料を処理するのに特に適している。
【0066】
実質的にマクロ孔の単峰性である特有の孔径分布を有する他に、触媒を形成する前駆体は、最大1.6g/cc
(1.6g/cm3)の圧縮嵩密度(compact bulk density:CBD);少なくとも約4lbs
(1.814kg)の破砕強度;及び7重量%未満の摩耗損失を含む他の望ましい特性も示す。一実施態様において、摩耗損失は5重量%未満である。第2の実施態様において、CBDは最大1.4g/cc
(1.4g/cm3)である。第3の実施態様において、CBDは最大1.2g/cc
(1.2g/cm3)である。第4の実施態様において、CBDは、1.2g/cc
(1.2g/cm3)〜1.4g/cc
(1.4g/cm3)の範囲である。
【0067】
一実施態様において、触媒前駆体は、2.5g/cc
(2.5g/cm3)以下の粒子密度を有する。別の実施態様において、粒子密度は2.2g/cc
(2.2g/cm3)以下である。
【0068】
一実施態様において、触媒前駆体は、40〜400m
2/gの範囲の、窒素を吸着質として使用するBET法により測定された表面積を有することによって特徴付けられる。第2の実施態様では、60〜300m
2/gの範囲の表面積である。第3の実施態様では、100〜250m
2/gの範囲の表面積である。一実施態様において、触媒前駆体は、高い表面積と高い孔容積との組み合わせを有し、表面積は少なくとも150m
2/gである。
【実施例】
【0069】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0070】
例1 Ni−Mo−W−マレエート触媒前駆体
式:(NH
4){[Ni
2.6(OH)
2.08(C
4H
2O
42−)
0.06](Mo
0.35W
0.65O
4)
2}の触媒前駆体を以下のように調製した:52.96gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2Oを、2.4Lの脱イオン水に室温で溶解した
。得られた溶液のpHは5〜6の範囲内であった。次に73.98gのメタタングステン酸アンモニウム粉末を上記の溶液に加え、完全に溶解するまで室温で撹拌した。90mlの濃(NH
4)OHを、常に撹拌しながら溶液に加えた。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニタリングした。溶液は、9〜10の範囲のpHを有した。150mlの脱イオン水に溶解した174.65gのNi(NO
3)
2・6H
2Oを含有する第2溶液を調製し、90℃に加熱した。次に高温ニッケル溶液を、モリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液に1時間かけてゆっくりと加えた。得られた混合物を91℃に加熱し、撹拌を30分間続けた。溶液のpHは5〜6の範囲であった。青緑色の沈殿物が形成され、沈殿物を濾過により収集した。沈殿物を、1.8LのDI水に溶解した10.54gのマレイン酸の溶液に分散し、70℃に加熱した。得られたスラリーを70℃で30分間撹拌し、濾過した。
【0071】
例2 Ni−Mo−W−触媒前駆体
式:(NH
4){[Ni
2.6(OH)
2.08](Mo
0.35W
0.65O
4)
2}の触媒前駆体を以下のように調製した:52.96gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2Oを、2.4Lの脱イオン水に室温で溶解した。得られた溶液のpHは5〜6の範囲内であった。次に73.98gのメタタングステン酸アンモニウム粉末を上記の溶液に加え、完全に溶解するまで室温で撹拌した。90mlの濃(NH
4)OHを、常に撹拌しながら溶液に加えた。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニタリングした。溶液は、9〜10の範囲のpHを有した。150mlの脱イオン水に溶解した174.65gのNi(NO
3)
2・6H
2Oを含有する第2溶液を調製し、90℃に加熱した。次に高温ニッケル溶液を、モリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液に1時間かけてゆっくりと加えた。得られた混合物を91℃に加熱し、撹拌を30分間続けた。溶液のpHは5〜6の範囲であった。青緑の沈殿物が形成され、沈殿物を濾過により収集し、フィルターケーキを得た。
【0072】
例3 Ni−Mo−W−マレエート触媒前駆体−沈殿後キレート化
例2の沈殿物を、1.8LのDI水に溶解した10.54gのマレイン酸の溶液に分散し、70℃に加熱した。得られたスラリーを70℃で30分間撹拌し、次に濾過した。
【0073】
例4 フィルターケーキの凝集乾燥と非凝集乾燥との対比
フィルターケーキ(約50%の水分、平均1.66μm D50及び最大7.5μmの粒径を有する)の形態の例1〜3の触媒前駆体を、600°F
(315.56℃)の入口温度及び220〜325°F
(104.4〜162.8℃)の出口温度、1分未満の滞留時間である2”ThermaJet乾燥機によりフラッシュ乾燥して、約8〜10%の水分を有する粉末を得た。例2のNi−Mo−W前駆体も、約150°F
(65.56℃)で2〜4時間トレー乾燥した。表1は、例2のNi−Mo−W前駆体のトレー乾燥をフラッシュ乾燥と比較した結果を含む。
【表1】
【0074】
例5 造形触媒前駆体の形成
この例では、40gの、例1〜3と同様に調製した乾燥触媒前駆体を、0.8gのメトセル(Dow Chemical Companyから市販されているメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー)と混合し、およそ7gのDI水を加えた。別の7gの水を、混合物が押し出し可能な稠度になるまで、ゆっくりと加えた。27 1/2インチ
(0.6985m)の軸、33 1/2インチ
(0.8509m)の全長及び1/16インチ
(1.588×10−3m)のダイを有する任意の二重バレルWolf押出機を使用して、混合物を押し出した。押出物を切断して、約1/8インチ
(3.175×10−3m)〜1/2インチ
(0.0127m)の長さのペレットにした。
【0075】
押し出しの後、触媒前駆体ペレット(Ni−Mo−W及びNi−Mo−W−マレエート)をN
2下、120℃で乾燥し、孔容積及び表面積を測定した。結果を以下の表2に表す。
【表2】
【0076】
例6 DMDSガス相による硫化
例5の造形触媒前駆体の試料を管型反応器の中に入れた。温度を、8ft
3/時間のN
2(g)下、100°F
(37.78℃)/時間の速度で450°F
(232℃)に上昇させた。反応を1時間続け、その時間の後、N
2を、8ft
3(0.2265m3)/時間及び100psig
(0.687MPa)で1時間のH
2に代えた。次にH
2圧力を300psig
(0.206MPa)に増大させ、1時間未満維持し、その時間の後、ジメチルジスルフィド(DMDS)を4cc
(4cm3)/時間の速度で加え、次に反応を4時間進行させた。次に触媒前駆体を600°F
(315.6℃)に加熱し、DMDS添加速度を8cc
(8cm3)/時間に増大させた。温度を600°F
(315.6℃)で2時間維持し、その時間の後、硫化が完了した。
【0077】
例7 水素化プロセシング法
例6の試料を過酷な水素化プロセシング条件下で試験し、水素化分解、HDS及びHDN活性に関する活性を、体積収縮率と共に評価した。重油原料は、700°F
(371℃)を超える沸点、31135ppmの硫黄含量、31230ppmの窒素含量及び表3に表されている他の特性を有する重油供給原料であった。反応器の条件には、2300psi
(15860000Pa)の圧力、5000SCFB
(890m3/m3)のH
2ガス速度及び0.75のLHSVが含まれる。
【表3】
【0078】
操作で得られた結果には、少なくとも40%の700°F
(371℃)+変換、ストリッパー底部における10ppm未満への硫黄減少、ストリッパー底部における25ppm未満のN
2レベルが含まれた。
【0079】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的において、特に示されない限り、量、率又は割合を表す全ての数字、並びに明細書及び特許請求の範囲に使用されている他の数値は、全ての場合において用語「約」により修正されることが理解されるべきである。したがって、特に指示のない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる望ましい特性に応じて変わりうる近似値である。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、1つの対象に明白及び明確に限定される場合を除いて、複数対象を含むことが留意される。本明細書で使用されるとき、用語「含む」及びその文法的変形は、リストにおける物品の列挙が、提示された物品に代わりうる又は追加されうる他の同様の物品の除外ではないように、非限定的であることが意図される。
【0080】
この書面による記載は、最良の形態を含む本発明を開示するため、またあらゆる当業者が本発明を実施及び使用することができるため、例を使用する。特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に生じる他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字どおりの言語と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文字どおりの言語と実質的ではない差を有する同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書において参照される全ての引用は、参照として本明細書に明白に組み込まれる。