(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉱油がパラフィン油、スクアラン、プリスタン、ポリイソブテン油、水添ポリイソブテン油、ポリデセン油、ポリイソプレン油、ポリイソプロペン油およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2記載の組成物。
免疫原が、不活化口蹄疫(FMD)ウイルス、不活化ブタサーコウイルス2型(PCV-2)ウイルスまたは不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細菌である、請求項1又は2記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】試験1および2のワクチン製剤の、7、22、121、および330日目における転相温度(PIT)測定(伝導率で測定した)のグラフである(1年間の安定性試験)。PIT測定は、ワクチン製剤の安定性の1つの尺度である。
【
図2】試験3および4のワクチン製剤の、製造後複数日におけるPIT測定のグラフである(1年間の安定性試験)。
【
図3】試験5および6のワクチン製剤の、製造後複数日におけるPIT測定のグラフである(1年間の安定性試験)。
【
図4】試験7および8のワクチン製剤の、製造後複数日におけるPIT測定のグラフである(1年間の安定性試験)。
【
図5】試験9のワクチン製剤の、製造後複数日におけるPIT測定のグラフである(1年間の安定性試験)。
【
図6】本発明に従って製造し、36ヶ月間保存したワクチン製剤(試験1〜9)のPIT測定のグラフである。
【
図7】実施例6に開示された材料および方法に従って処理したブタの直腸温の時間に依存した変化を示す図である。
【
図8】実施例6に開示された材料および方法に従って処理したブタに関して観察された最大温度変化を示すグラフである。
【
図9】実施例7に開示された材料および方法に従って処理したブタのワクチンの有効性(PD50)対ペイロード(μg)を示すグラフである。
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の他の目的、特徴および側面は、以下の詳細な説明において開示され、あるいはそれらから明らかである。本説明は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明の広範な側面を限定することを意図したものではなく、その広範な側面は例示的な構成に含まれていることを当業者は理解すべきである。実際、本発明の精神から逸脱することなく本発明に種々の修飾および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示まあは説明した特徴を他の実施形態で使用して、さらに別の実施形態を生じることができる。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で生じるこのような修飾および変更を含むものとする。本願を通じて引用されたすべての引用文献、公開特許および特許の内容は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0026】
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられる若干の用語を以下にまとめる。
【0027】
本明細書において、用語“動物”は、ヒトを含むすべての脊椎動物を含む。また、この用語は、胚期および胎児期を含むすべての発育段階における個々の動物も含む。特に、用語“脊椎動物”は、限定するものではないが、ヒト、イヌ科動物(例えばイヌ)、ネコ科動物(例えばネコ);ウマ科動物(例えばウマ)、ウシ亜科動物(例えばウシ、畜牛)、ブタ系の動物(例えばブタ)ならびに鳥類における動物を含む。本明細書において、用語“ウシ”または“畜牛”は、一般に、任意の年齢のウシ起源の動物を指すために用いられる。交換可能な用語は、“ウシ亜科の動物”、“子牛”、“早期去勢牛”、“雄ウシ”、“未経産雌牛”、“ウシ”などを含む。交換可能な用語は、“子ブタ”、“雌ブタ”などを含む。本明細書において、用語“鳥類”は分類学的クラスavaの種または亜種、例えば、限定するものではないが、ニワトリ(ブリーダー、ブロイラーおよび産卵鶏)、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラスならびに、ダチョウ、エミューおよびヒクイドリを含む平胸類の鳥のことを言う。用語“ブタ”または“子ブタ”は、ブタ起源の動物を意味し、“雌ブタ”は、生殖可能年齢であり生殖能力のある雌のことを言う。
【0028】
本明細書において、用語“毒性の”は、動物宿主に感染性であるその能力を保持する分離株を意味する。
【0029】
本明細書において、用語“不活化ワクチン”は、もはや複製も増殖もできない感染性生物体または病原体を含むワクチン組成物を意味する。病原体は、細菌、ウイルス、原虫または真菌起源であることができる。不活化は、生物体の複製または増殖を防ぐのに十分であるが、その免疫原性は維持する、凍結融解、化学的処理(例えばホルマリン処理)、超音波処理、放射線、加熱または任意の他の慣用法を含む種々の方法によって達成することができる。
【0030】
本明細書において、用語“免疫原性”は、宿主動物において抗原(単数または複数)に対して免疫応答を引き起こすことができることを意味する。この免疫応答は、特定の感染性生物体に対してワクチンによって誘導される感染防御免疫の基礎を形成する。
【0031】
本明細書において、用語“免疫応答”は、動物において誘導される応答のことを言う。免疫応答は、細胞性免疫(CMI);体液性免疫を指すことができ、あるいはその両方を指すこともできる。本発明はまた、免疫系の一部に限定された応答を考える。例えば、本発明のワクチン組成物は、増強されたγインターフェロン応答を特異的に誘導することができる。
【0032】
本明細書において、用語“抗原”または“免疫原”は、宿主動物において特定の免疫応答を誘導する物質を意味する。抗原は、全生物体(死滅した生物体、弱毒化した生物体、または生きた生物体);生物体のサブユニットまたは部分;免疫原性を有するインサートを含む組換えベクター;宿主動物への提示によって免疫応答を誘導することができるDNA片またはフラグメント;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。あるいは、免疫原または抗原は毒素または抗毒素を含むことができる。
【0033】
本明細書において、用語“多価”は、同じ種(すなわち、FMDウイルス血清型の異なる分離株)または異なる種(すなわち、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella hemolytica)およびパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)の両方からの分離株)由来の2以上の抗原を含むワクチンあるいは、異なる属由来の抗原の組み合わせを含むワクチン(例えば、パスツレラ・ムルトシダ、サルモネラ(Salmonella)、エッシェリヒア・コリー(Escherichia coli)、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)およびクロストリディウム(Clostridium)由来の抗原を含むワクチン)を意味する。
【0034】
本明細書において、用語“アジュバント”は、ワクチンの免疫原性を増強するためにワクチンに加える物質を意味する。アジュバントが機能する機構は、完全には知られていない。抗原をゆっくり放出することによって免疫応答を増強すると考えられているアジュバントもあるし、それ自身が強力な免疫原性を有し、相乗的に機能すると考えられている他のアジュバントもある。公知のワクチンアジュバントは、限定するものではないが、油水乳剤(例えば、完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette Guerin)、水酸化アルミニウム、グルカン、デキストラン硫酸、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、バクトアジュバント(Bacto-Adjubant)、ポリアミノ酸およびアミノ酸コポリマーなどのいくつかの合成ポリマー、サポニン、"REGRESSIN"(Vetrepharm社、ジョージア州アセンズ)、"AVRIDINE"(N,N-ジオクタデシル-N',N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン)、パラフィン油、ムラミルジペプチドなどを含む。
【0035】
本明細書において、用語“乳剤”は、第1物質が第2物質中に分散されており、その中で第1物質が不溶性である、少なくとも2つの物質の組み合わせのことを言う。本発明の乳剤の1例は、水相に分散された油相である。
【0036】
本明細書において、用語“不完全乳剤”は、“完全乳剤”を製造するために少なくとも1つのさらなる成分を加えなければならない組成物のことを言う。本明細書において、用語“完全乳剤”は、本発明の“すぐに使用できる(ready to use)”免疫組成物の等価物と考えることができる。完全乳剤の例は、本発明の方法に従って動物にすぐに投与できる本発明による免疫組成物である。
【0037】
本明細書において、用語“薬学的に許容される担体”および“薬学的に許容されるビヒクル”は交換可能であり、副作用なしに宿主に注射できるワクチン抗原を含むための流体ビヒクルを指す。当該技術分野で公知の適切な薬学的に許容される担体は、限定するものではないが、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースまたは緩衝液を含む。担体は、限定するものではないが、希釈剤、安定剤(すなわち、糖およびアミノ酸)、防腐薬、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤、増粘剤、着色剤などを含む助剤を含むことができる。
【0038】
本明細書において、用語“ワクチン組成物”は、宿主において免疫応答を誘導するのに有用な薬学的に許容されるビヒクル中に少なくとも1つの抗原または免疫原を含む。ワクチン組成物は、レシピエント動物の年齢、性別、体重、種および状態ならびに投与経路などの要素を考慮に入れて、医学または獣医学分野の当業者に公知の用量および技術によって投与することができる。投与経路は、経皮経路、粘膜投与経路(例えば経口、経鼻、経肛門、膣内)または非経口経路(皮内、筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内)であることができる。ワクチン組成物は、単独で投与することもできるし、あるいは他の治療薬または療法とともに同時または順次に投与することもできる。投与形態は、懸濁液、シロップもしくはエリキシル剤および非経口、皮下、皮内、筋肉内もしくは静注(例えば注射投与)のための製剤、例えば滅菌懸濁液もしくは乳剤を含むことができる。ワクチン組成物は、スプレーで投与することもできるし、食物および/または水に混合することもできるし、適切な担体、希釈剤または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコースなどと混合して送達することもできる。組成物は、投与経路および所望の製剤に応じて、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤、アジュバント、ゲル化剤もしくは増粘剤、防腐薬、風味剤、着色剤などの補助物質を含むことができる。過度の実験を要することなく、標準的な製薬学のテキスト、例えば“Remington's Pharmaceutical Sciences,”1990 を参照して適切な製剤を製造することができる。
【0039】
用語“精製された”は、本明細書においては、絶対的な純度を要求するものではなく、むしろ相対的な用語を意図したものである。従って、例えば、精製免疫原製剤、例えばタンパク質または不活化ウイルスは、免疫原がその自然環境にある場合よりも免疫原がより富化されているものである。本明細書において、製剤の全免疫原含有量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%に免疫原が相当する場合に、免疫原製剤はおおまかに“精製された”と呼ばれる。最も低い精製度に相当する“粗製剤”は、免疫原性成分を60%未満、20%未満、未満10%、未満5%または1%未満含むことができる。
【0040】
本明細書において、用語“高度に精製された”は、用語“中程度に精製された”と比較して“より高い純度”を示唆するものとする。この“より高い純度”は、限定するものではないが、“中程度に精製された”免疫学的製剤に対して、“高度に精製された”免疫学的製剤において不純物の百分率が低いことを含むことができる。本明細書で述べたように、“高度に精製された”免疫学的製剤は、所望の免疫応答の低下、望ましくない免疫応答の増強(例えば過敏症反応)または製剤の安定性の低下を引き起こす恐れのある不純物の百分率が検出できないまでに低い。同様に、“中程度に精製された”免疫学的製剤は、“最小限に精製された”免疫学的製剤に対して、比較的低下した不純物の百分率を含み、これは、同様に、“粗製剤”で示される製剤に対して、低下した不純物の百分率を有する。
【0041】
免疫学的製剤における不純物は、限定するものではないが、本発明による免疫組成物に対して悪影響を及ぼす物質を含むことができる。悪影響を及ぼす不純物のいくつかの例の1つは、動物において免疫応答を誘導する本発明の免疫組成物の能力を低下させる不純物である。
【0042】
種々のレベルの純度(例えば“高度に精製された”、“中程度に精製された”など)は、種々の方法を用いて達成することができる。例えば、クロマトグラフィーおよびサイズ排除ゲル濾過の組み合わせによって、“高度に精製された”または"中程度に精製された"免疫学的製剤を得ることができる。免疫原の供給源/型における差異および精製方法におけるわずかな変化は、免疫原の最終純度に有意に影響することができる。一般に、本明細書において、最低から最高までの不純物の百分率を有する免疫学的製剤は、それぞれ、1)“高度に精製された、2)“中程度に精製された”、3)“最小限に精製された”、4)“粗製剤”と記述することができる。“高度に精製された”製剤は、不純物のすべてのタイプにわたって最低レベルを有する。“中程度に精製された”製剤は、大部分のタイプの不純物を比較的低レベルで有するが、類似する“高度に精製された”製剤に関して観察される場合よりもより高い存在量で1つのタイプの不純物を有することができる。同様に、“最小限に精製された製剤”は、いくつかのタイプの不純物を比較的低レベルで有するが、類似する“中程度に精製された”製剤よりも、より高い存在量で2以上のタイプの不純物を有することができる。予想されるように、本明細書に記載されている他の種類の製剤と比較して、“粗製剤”は、すべての不純物タイプにわたって最も高いレベルの不純物を有する。
【0043】
本発明は、
(1)宿主において免疫応答を誘導することができるワクチン抗原または免疫原を含む水溶液;
(2)イオン性界面活性剤を含む水溶液;
(3)親水性非イオン性界面活性剤;
(4)鉱油;
を含む新規水中油型(O/W)乳剤を提供する。
【0044】
一実施形態において、新規水中油型(O/W)乳剤は、
(1)宿主において免疫応答を誘導することができるワクチン抗原または免疫原を含む水溶液;
(2)イオン性界面活性剤、例えばサポニンを含む水溶液;
(3)13を超え40未満の親水性親油性バランス(HLB)値を有する(HLB>13であり、特にHLB≧13.5であり、好ましくはHLB≧14である)親水性非イオン性界面活性剤;
(4)鉱油;
(5)親油性非イオン性界面活性剤;および
(6)低HLB値(HLB値9〜13)を有する親水性非イオン性界面活性剤
を含む。
【0045】
他の実施形態において、本発明は、
(1)宿主における免疫応答を誘導することができるワクチン抗原または免疫原を含む水溶液;
(2)イオン性界面活性剤、例えばサポニンを含む水溶液
(3)任意選択の水酸化アルミニウム含有水溶液
(4)13を超え40未満の親水性親油性バランス(HLB)値を有する(HLB>13であり、特にHLB≧13.5であり、好ましくはHLB≧14である)親水性非イオン性界面活性剤;
(5)鉱油;
(6)親油性非イオン性界面活性剤;および
(7)低HLB値(HLB値9〜13)を有する親水性非イオン性界面活性剤
を含む新規水中油型(O/W)乳剤を提供する。
【0046】
本発明に従って製造される乳剤の一部は、界面活性剤の4つの異なる群のメンバーから選択される少なくとも4つの(4)界面活性剤の組み合わせに基づき、各群に属する1以上の界面活性剤を使用することができる。これらの群の3つ(3)は、非イオン性界面活性剤を含み、これらの群の1つ(1)は、イオン性界面活性剤、例えばサポニンを含む。
【0047】
いくつかの実施形態の1つにおいて、乳剤(本明細書においては、特記しない限り、これはすべての成分を含む最終乳剤を意味する)中のイオン性界面活性剤(2)の濃度は、約0.01%〜約10%である。
【0048】
いくつかの実施形態の1つにおいて、乳剤(本明細書においては、これは、特記しない限りすべての成分を含む最終乳剤を意味する)中の親水性非イオン性界面活性剤(7)の濃度は、
質量/
乳剤の容量(w/v)百分率で表して、1%〜8%であり、特に1.5%〜6%であり、好ましくは2%〜5%であり、より好ましくは2.5%〜4%である。
【0049】
この群の界面活性剤は、低HLB値(HLB値9〜13)を有する親水性非イオン性界面活性剤を含む。この群は、限定するものではないが、エトキシル化脂肪酸ソルビタンモノエステル(特にエトキシル基5個)(例えばエトキシル化ソルビタンモノオレアート、例えばツイーン81(登録商標)、エトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステル、エトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステル(特にエトキシル基20個)(例えばエトキシル化ソルビタントリオレアート、例えばツイーン85(登録商標))、エトキシル化ソルビタントリステアラート、例えばツイーン65(登録商標)、エトキシル化脂肪アルコール(特にエトキシル基5〜10個)(例えばBRIJ 76(登録商標)、BRIJ 56(登録商標)、BRIJ 96(登録商標))、エトキシル化脂肪酸(特に5〜10エトキシル基)(例えばSimulsol 2599(登録商標)、MYRJ 45(登録商標))、エトキシル化ひまし油(特にエトキシル基25〜35個)(例えばARLATONE 650(登録商標)、ARLATONE G(登録商標))、およびそれらの組み合わせを含む。
【0050】
エトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステルおよびエトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステルは、両方の種の組み合わせと同様に好ましい。脂肪酸は、好ましくは、オレアート、パルミタート、ステアラート、イソステアラート、ラウラートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましいエトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステルは、エトキシル化ソルビタントリオレアート、例えばツイーン85(登録商標))またはエトキシル化ソルビタントリステアラート、例えばツイーン65(登録商標)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態の1つにおいて、親水性非イオン性界面活性剤(4)の濃度は、一般に、
質量/
乳剤の容量(w/v)百分率で表して、0.1%〜1.5%であり、特に0.2%〜1.4%であり、好ましくは0.3%〜1.3%であり、より好ましくは0.4%〜1.2%である。
【0052】
界面活性剤のこの第2群は、高い親水性親油性バランス(HLB)値(HLB>13であり、特にHLB≧13.5であり、好ましくはHLB≧14である)を有する親水性非イオン性界面活性剤を含む。この群は、エトキシル化ソルビタン脂肪酸モノエステル(特にエトキシル基20個)(例えばエトキシル化ソルビタンモノラウラート、例えばツイーン20(登録商標)、エトキシル化ソルビタンモノパルミタート、例えばツイーン40(登録商標)、エトキシル化ソルビタンモノステアラート(例えばツイーン60(登録商標)、エトキシル化ソルビタンモノオレアート、例えばツイーン80(登録商標)、エトキシル化脂肪アルコール(特にエトキシル基15〜30個)(例えばBRIJ 78(登録商標)、BRIJ 98(登録商標)、BRIJ 721(登録商標))、エトキシル化脂肪酸(特にエトキシル基15〜30個)(例えばMYRJ 49(登録商標)、MYRJ 51(登録商標)、MYRJ 52(登録商標)、MYRJ 53(登録商標))、非イオン性ブロックコポリマー(例えばポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー(POE-POP)、例えばLUTROL F127(登録商標)、LUTROL F68(登録商標))およびそれらの組み合わせを含む。
【0053】
非イオン性ブロックコポリマーに関しては、百分率はより低くすることができ、特に0.1%〜0.5%であり、より具体的には0.2%〜0.4%(
質量/
乳剤の容量(w/v)
)であることができる。
【0054】
好ましい界面活性剤(4)は、エトキシル化ソルビタン脂肪酸モノエステル、例えば前述のものを含む。
【0055】
いくつかの実施形態の1つにおいて、親油性非イオン性界面活性剤(6)の濃度は、
質量/
乳剤の容量(w/v)百分率で表して、0.1%〜2.5%であり、特に0.2%〜2%であり、好ましくは0.2%〜1.5%であり、より好ましくは0.2%〜1.2%である。
【0056】
この群の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばソルビタンモノラウラート、例えばスパン20(登録商標)、ソルビタンモノパルミタート、例えばスパン40(登録商標)、ソルビタンモノステアラート、例えばスパン60(登録商標)、ソルビタントリステアラート、例えばスパン65(登録商標)、ソルビタンモノオレアート、例えばスパン80(登録商標)、ソルビタントリオレアート、例えばスパン85(登録商標)、ソルビタンモノイソステアラート、例えばARLACEL 987(登録商標)、ソルビタンイソステアラート、例えばCRILL 6(登録商標))、マンニド脂肪酸エステル(例えばモンタニド80(登録商標)、マンニドモノオレアート(例えばARLACEL A(登録商標))、マンニドジオレアート、マンニドトリオレアート、マンニドテトラオレアート)、エトキシル化マンニド脂肪酸エステル(2、3または4エトキシル基)(例えばモンタニド888(登録商標)、モンタニド103(登録商標)、エトキシル化マンニドモノオレアート、エトキシル化マンニドジオレアート、エトキシル化マンニドトリオレアート、エトキシル化マンニドテトラオレアート)およびそれらの組み合わせを含む。
【0057】
脂肪酸は、好ましくは、オレアート、パルミタート、ステアラート、イソステアラート、ラウラートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
好ましい界面活性剤(6)はソルビタン脂肪酸エステルを含み、特に前述のものおよびそれらの組み合わせを含む。
【0059】
本発明の界面活性剤は、動物起源または植物起源由来の脂肪酸を有することができる。1つの起源から他の起源への変更(例えば動物ツイーン80(登録商標)から植物ツイーン80(登録商標)への)は、単に、乳剤の製剤における微調整によって行うことができる。
【0060】
本発明による乳剤は、
質量/
乳剤の容量で、1.2%〜10%の、特に2%〜8%の、好ましくは3%〜7%の、より好ましくは4%〜6%の界面活性剤の合計濃度を有することができる。
【0061】
一般に、本発明による乳剤は、≧33℃、特に33℃〜65℃、より具体的には36℃〜60℃、好ましくは37℃〜55℃、より好ましくは38℃〜50℃である転相温度(PIT)を有することができる。
【0062】
PITは、油中水型乳剤が水中油型乳剤に変化するか、あるいは脱相する(乳剤が破壊され、2層が分離する)温度である。PIT値は、種々の手段、例えば視覚的外観(例えば実施例2参照)または伝導率によって測定することができる。乳剤のPITより下の温度、例えば約25℃で水浴中に乳剤を入れる。温度を徐々に上げる。対照乳剤と比較して、乳剤の視覚的外観の変化、特に流動性、粘度、2相の分離、表面への油相の移動による表面の外観の変化を観察する。視覚的外観のこの変化が観察された温度が乳剤のPIT値である。あるいは、PITは、乳剤の表面付近にプローブを設置することによって測定するとき、伝導率値が約5〜8ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)(水中油型乳剤)から約0mS/cmの値(油中水型乳剤)に迅速に推移することによって測定される。移行が観察された温度が乳剤のPIT値である。当業者は、過度の実験を要することなく、本発明による乳剤、特に上記で定義された範囲内のPIT値を有する乳剤を製造するために、それぞれの濃度を含めて界面活性剤および油の組み合わせを決定できるであろう。
【0063】
一般に、本発明による乳剤は、乳剤の容量対容量で、3%〜55%の油、特に5%〜50%の油、好ましくは10%〜40%の油、より好ましくは、20%〜40%の油を含むことができる。定義により、本明細書における値の範囲は、特記しない限り、常に範囲の境界を含む。
【0064】
使用する油は、限定するものではないが、パラフィン油、例えばイソパラフィン油および/またはナフテン油、スクアラン、プリスタン、ポリイソブテン油、水添ポリイソブテン油、ポリデセン油、ポリイソプレン油、ポリイソプロペン油などを含む鉱油であることができる。本発明に有用な有利な鉱油の1つは、15を超える炭素原子数、好ましくは15〜32の炭素原子数を有し、芳香族化合物を含まない直鎖または分枝鎖の炭素鎖を含む油を含むことができる。このような油は、例えば、"MARCOL 52(登録商標)"または“MARCOL 82(登録商標)”(Esso社製、フランス)または"DRAKEOL 6VR(登録商標)"または"DRAKEOL 5(登録商標)""DRAKEOL 7(登録商標)"(Penreco社製、USA)、“CLEAROL(登録商標)“(Sonneborn社製、USA)、“パラフィン油Codex AAB2(登録商標)”(Aiglon社製、フランス)、BLANDOL(Sonneborn社製、米国)、ONDINA 915(Shell社製、イギリス)の名称で市販されているものであることができる。
【0065】
また、油は、ここで説明する油の中から選択された少なくとも2つの油を任意の割合で含む油の混合物であることができる。また、油の混合物は、前述の油の中から選択された少なくとも1つの油および少なくとも1つの植物油を含むことができ、この植物油は、油相の約0.1%〜約33%v/v、好ましくは約10%〜約25%v/vに相当する。これらの植物油は、好ましくは、保存温度(約+4℃)で液体であるか、あるいは、少なくともこの温度で液体である乳剤を生じるのを可能にする生体内分解性であるオレイン酸に富む不飽和油である。例えば、この植物油は、ラッカセイ油、ナッツ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ダイズ油、オナガー油などであることができる。
【0066】
いくつかの実施形態の1つにおいて、親水性界面活性剤(4)および(7)は、好ましくは、同じ分子の親水性部分を有する界面活性剤を含む。例えば、親水性界面活性剤(4)および(7)に関して、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステルを使用する。例えば、低HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤としてツイーン85(登録商標)が選択される場合、高HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤は、好都合には、エトキシル化ソルビタン、例えばツイーン80(登録商標)で構成される親水性部分を有する。
【0067】
一般に、本発明は、限定するものではないが、滅菌水、生理食塩水、グルコース、緩衝液などを含む、適切な獣医学的または薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤または希釈剤を含む水溶液を使用することを考える。また、ビヒクル、賦形剤または希釈剤は、ポリオール、糖質またはpH緩衝化剤を含むことができる。また、ビヒクル、賦形剤または希釈剤は、例えばアミノ酸、ペプチド、抗酸化剤、殺菌剤、および静菌性化合物を含むことができる。油および界面活性剤に、本発明による乳剤の容量が100%になるような量で水溶液を加える。
【0068】
乳剤の親水性親油性バランス(HLB)によって、界面活性剤の親水力または親油力を推定することが可能である。両親媒性分子のHLBは、一般に、次のように算出される:
HLB=(20×親水性部分の質量)/(両親媒性分子の質量)
【0069】
HLBは、0(大部分の親油性分子に関して)〜20(大部分の親水性分子に関して)の範囲の値をとることができる。界面活性剤の化学組成(特に、例えばエトキシル基またはアルケンオキシドの添加)に従ってこの推定値は変化することができ、HLB値の変域は上昇しうる(例えばLUTROL F68(登録商標)のHLBは29である)。界面活性剤の混合物に関しては、混合物のHLBは、その質量比によって重みづけした各界面活性剤のHLBの加算値である。
HLB=(界面活性剤XのHLB×界面活性剤Xの質量)+(界面活性剤YのHLB×界面活性剤Yの質量)/(界面活性剤Xの質量+界面活性剤Yの質量)
【0070】
本発明に従って製造した乳剤の一実施形態において、乳剤の最終HLBは、約9〜約12であり、好ましくは約9.5〜約11.5であり、より好ましくは約10〜約11.5である。
【0071】
本発明は、パラフィン油(特に、
容量
/乳剤の容量(v/v)で表して、約10%〜約40%の濃度、好ましくは約20%〜約40%の濃度);ソルビタン脂肪酸モノエステル(親油性非イオン性界面活性剤として)、エトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステル(低HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤として);およびエトキシル化脂肪酸ソルビタンモノエステル(高HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤として)を含む乳剤を考える。特に、ソルビタン脂肪酸モノエステルはソルビタンモノオレアート(特に、
質量
/乳剤の容量(w/v)で表して0.2%〜1.5%の濃度、好ましくは0.2%〜1.2%の濃度)であり、エトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステルはエトキシル化ソルビタントリオレアート(特に、2%〜5%w/vの濃度、好ましくは2.5%〜4%w/vの濃度)であり、エトキシル化脂肪酸ソルビタンモノエステルはエトキシル化ソルビタンモノオレアート(特に、0.3%〜1.3%w/vの濃度、好ましくは0.4%〜1.2%w/vの濃度)である。例えば、この乳剤は、
容量
/乳剤の容量で約29.3%のパラフィン油、質量
/乳剤の容量で0.6%のソルビタンモノオレアート、
質量
/乳剤の容量で3.4%のエトキシル化ソルビタントリオレアートおよび、
質量
/乳剤の容量で0.75%のエトキシル化ソルビタンモノオレアートを含む。
【0072】
本発明による第2の実施形態において、乳剤は、パラフィン油(特に、10%〜40%v/vの濃度、好ましくは20%〜40%v/vの濃度)、ソルビタン脂肪酸モノエステル(親油性非イオン性界面活性剤として)、エトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステル(低HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤として)および非イオン性ブロックコポリマー(高HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤として)を含む。特に、ソルビタン脂肪酸モノエステルはソルビタンモノオレアート(特に、0.2%〜1.5%w/vの濃度、好ましくは0.2%〜1.2%w/vの濃度)であり、エトキシル化ソルビタン脂肪酸トリエステルはエトキシル化ソルビタントリオレアート(特に、2%〜5%w/vの濃度、好ましくは2.5%〜4%w/vの濃度)であり、非イオン性ブロックコポリマーはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンポリマー(POE-POP)(特に、0.1%〜0.5%w/vの濃度、好ましくは0.2%〜0.4%w/vの濃度)である。例えば、この乳剤は、約29.3%v/vのパラフィン油、0.6%w/vのソルビタンモノオレアート、3.4%w/vのエトキシル化ソルビタントリオレアートおよび0.25%w/vのエトキシル化ソルビタンモノオレアートを含む。
【0073】
特定の実施形態において、本発明は、
(1)薬物または免疫原などの活性成分、好ましくは免疫原を含む水溶液;
(2)サポニンを含む水溶液
(3)鉱油;
(4)親油性非イオン性界面活性剤;および
(5)エトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステル(HLB値11〜13を有することができる)を含む、低HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤
を含む注射用水中油型(O/W)乳剤を考える。
【0074】
他の特定の実施形態において、本発明は、
(1)薬物または免疫原などの活性成分、好ましくは免疫原を含む水溶液;
(2)サポニンを含む水溶液
(3)水酸化アルミニウム含有水溶液
(4)鉱油;
(5)親油性非イオン性界面活性剤;および
(6)エトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステル(HLB値11〜13を有することができる)を含む、低HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤
を含む注射用水中油型(O/W)乳剤を考える。
【0075】
この実施形態による乳剤は、最大20個のエトキシ基を含むことができるエトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステルを含む。脂肪酸は動物起源または植物起源であることができ、オレアート、パルミタート、ステアラート、イソステアラート、ラウラートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。一実施形態において、エトキシル化脂肪酸は、好ましくはオレアートである。他の成分および、PITなどの乳剤の一般的特性は、前述のものと同じ特徴を有することができる。
【0076】
好ましくは、界面活性剤(6)は、エトキシル化ソルビタン脂肪酸ジエステル、例えばエトキシル化ソルビタンジオレアート、エトキシル化ソルビタンジステアラートまたはエトキシル化ソルビタンジイソステアラート、エトキシル化ソルビタンジパルミタート、エトキシル化ソルビタンジラウラートおよびそれらの組み合わせを含む。
【0077】
場合により、限定するものではないが、アラム;CpGオリゴヌクレオチド(ODN)、特にODN 2006、2007、2059または2135(Pontarollo R.A. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2002, 84: 43-59; Wernette C.M. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2002, 84: 223-236; Mutwiri G. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2003, 91: 89-103); ポリA-ポリU (“Vaccine Design The Subunit and Adjuvant Approach”, edited by Michael F. Powell and Mark J. Newman, Pharmaceutical Biotechnology, 6: 03);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA) (“Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach”, edited by Michael F. Powell and Mark J. Newman, Pharmaceutical Biotechnology, volume 6: 157)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(例えばAVRIDINE(登録商標))(同書、p.148)、カルボマー、キトサン(例えば米国特許出願第5,980.912号を参照のこと)を含む他の化合物を乳剤にコアジュバントとして加えることができる。
【0078】
また、本発明は、少なくとも1つの抗原または免疫原組成物および本発明に従って製造したアジュバントまたは乳剤を含むワクチン組成物または免疫組成物の製造方法を提供する。抗原または免疫原組成物は、乳剤の調製中に組み込むこともでき、あるいは、別の実施形態において、好ましくはさらにサポニンを含み、場合によりさらに水酸化アルミニウムを含む抗原または免疫原組成物は、後に、例えば使用直前に乳剤に加えることもできる。
【0079】
最初に製造される乳剤中に、使用する水溶液の全量が存在することができる。あるいは、乳剤の製造のためにこの水溶液の一部のみを用い、免疫原の組み込み後に水溶液の残りの量を加えることもできる。免疫原または抗原は、乾燥形またはなんらかの他の適切な固形で存在していることができ、次いで乳剤と混合され、あるいは、抗原は、溶液中、特に水溶液中に存在することができ、この溶液は乳剤と混合される。
【0080】
界面活性剤は、好ましくは、その溶解性に応じて油または水溶液のいずれかに加えられる。例えば、本発明によれば、親油性非イオン性界面活性剤は油に加えられ、高HLB値を有する親水性非イオン性界面活性剤は水溶液に加えられる。
【0081】
乳化は、当業者に公知の慣用法に従って行うことができる。例えば、本発明の一実施形態において、乳剤のPITより低い温度で、特に室温で、例えば約25℃で乳剤を製造することができる。水相と油相は、例えば、高いせん断力を生じることができるローター・ステーターを備えたタービンを用いる機械撹拌によって混合される。好ましくは、撹拌は、低い回転速度で開始され、一般に、油中に水溶液を徐々に加えるとともにゆっくりと速められる。好ましくは、水溶液は油に徐々に加えらえる。油/水溶液の比は、油中水型(W/O)乳剤を得るように適合されることができ、例えば油の約40%〜約55%の濃度(v/v)であることができる。撹拌を停止させると、乳剤は徐々にO/W乳剤に変化する(転相)。転相後、必要に応じて、水溶液を加えて乳剤を希釈して、油を所望の濃度にして最終乳剤にする。この乳剤は約5℃で保存できる。
【0082】
他の実施形態において、乳剤のPITよりも高い温度で乳剤を製造できる。第1段階において、乳剤のPITよりも高い温度で水相と油相を混合する。好ましくは、水溶液は油に徐々に加えられる。油/水溶液の比は、油中水型(W/O)乳剤を得るように適合されることができ、例えば油の約40%〜約55%の濃度(v/v)であることができる。乳化は、低いせん断力で、またはせん断力を加えないで撹拌することによって行うことができ、例えばスタティックミキサーまたはマリンヘリックス(marine helix)を用いて、あるいは大変低い回転速度でタービンを用いて行うことができる。得られる乳剤は油中水型(W/O)乳剤である。第2段階において、乳剤を徐々にPITより低く冷却する。この段階の間に、乳剤はO/W乳剤に変化する(転相)。転相後、必要に応じて、乳剤に水溶液を加えることによって希釈して油を所望の濃度にして最終乳剤にする。この乳剤は約5℃で保存することができる。
【0083】
乳剤における液滴のサイズは約100nm〜約500nmであることができる。この乳剤は、例えば、ワクチン組成物または医薬組成物を調剤するためのアジュバントとして使用できる。また、この乳剤は、乾燥された製品、特に例えば、弱毒微生物または生きた組換えベクターを含む乾燥品を溶解するための溶媒として使用できる。
【0084】
特定の実施形態において、水溶液の一部のみを用いてプレ乳剤が製造される。このプレ乳剤は、活性成分、例えば薬物または免疫原、好ましくは免疫原の懸濁液を加えることによって希釈して最終組成物を得ることができる。あるいは、水溶液を用いてプレ乳剤を希釈して、乾燥された製品、例えば乾燥品を溶解するために使用することができる。
【0085】
本発明に使用するのに適した免疫原または抗原は、不活化病原体、弱毒化病原体、免疫原性サブユニット(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン)または、免疫原性インサートを有するプラスミドを含む組換え発現ベクターからなる群から選択されることができる。本発明の一実施形態において、免疫原は不活化または死滅微生物である。本発明の他の実施形態において、ワクチン組成物は、限定するものではないが、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella Typhimurium)、サルモネラ・エンテリティデス(Salmonella enteritidis)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)(Infectious Bronchochitis virus)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)(Newcastle Disease virus)、産卵低下症候群ウイルス(EDS)(egg drop syndrome virus)または伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)(Infectious Bursal Disease virus)、トリインフルエンザウイルスなどおよびそれらの組み合わせを含むトリ病原体の群から選択される免疫原を含む。
【0086】
あるいは、ワクチン組成物は、例えば、限定するものではないが、ネコヘルペスウイルス(FHV)、ネコカリシウイルス(FCV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、狂犬病ウイルスなどおよびそれらの組み合わせなどのネコ病原体から選択される免疫原を含む。
【0087】
さらに他の実施形態において、本発明のワクチン組成物は、限定するものではないが、狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス(CHV)、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohaemorragiae)、レプトスピラ・グリポチフォサ(Leptospira grippotyphosa)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテラ・ブロンキセプティカ(Bordetella bronchiseptica)などおよびそれらの組み合わせを含むイヌ病原体から選択された免疫原を含む。
【0088】
本発明のさらに他の実施形態において、組成物は、ウマ病原体、例えばウマヘルペスウイルス(1型または4型)、ウマインフルエンザウイルス、強縮、ウエストナイルウイルスなどまたはそれらの組み合わせから選択される免疫原を含む。
【0089】
本発明のさらに他の実施形態において、組成物は、ウシ病原体、例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)、狂犬病ウイルス、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザ3型ウイルス(bPIV-3)、ウシコロナウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウシRSウイルス(BRSV)、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(IBR)、エッシェリヒア・コリー、パスツレラ・ムルトシダ、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)などおよびそれらの組み合わせから選択される免疫原を含む。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態において、組成物は、ブタ病原体、例えば、限定するものではないが、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタサーコウイルス2型(PCV-2)、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタパルボウイルス(PPV)、FMDV、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyoneumoniae)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パスツレラ・ムルトシダ、ボルデテラ・ブロンキセプティカ(Bordetella bronchiseptica)、エッシェリヒア・コリーなどおよびそれらの組み合わせから選択される免疫原を含む。
【0091】
本発明の他の実施形態は、薬学的に許容されるビヒクル中に少なくとも1つの免疫原および乳剤を含むワクチン組成物を提供する。ウイルス、細菌、真菌などを含む免疫原は、適切な培地または宿主細胞株および当業者に公知の慣用法を用いるin vitro培養方法によって製造できる。例えば、PRRSは適切な細胞株、例えばMA-104細胞株で培養できる(特に、米国特許シリアル番号第5,587,164号;第5,866,401号;第5,840,563号;第6,251,404号を参照のこと)。同様にして、PCV-2はPK-15細胞株を用いて培養でき(米国特許出願番号第6,391,314号を参照のこと);SIVは卵で培養でき(米国特許出願番号第6.048.537号);マイコプラズマ・ハイオニューモニエは適切な培地中で培養できる(米国特許シリアル番号第5,968,525号;米国特許第5.338.543号; Ross R. F. et al., Am. J. Vet. Res., 1984, 45: 1899-1905)。
【0092】
不活化した免疫組成物またはワクチン組成物を得るために、病原体は、好ましくは採取後に不活化され、場合により、例えば、ホルマリンもしくはホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、エチレンイミン、バイナリーエチレンイミン(BEI)用いる化学的処理および/または物理的処理(例えば熱処理または超音波処理)によって清浄化する。不活化の方法は当業者には公知である。例えば、FMDウイルスは、エチレンイミン(Cunliffe, HR, Applied Microbiology, 1973, p. 747-750)または高圧 (Ishimaru et al., Vaccine 22 (2004) 2334-2339)によって不活化でき、PRRSウイルスは、β-プロピオラクトン処理(Plana-Duran et al., Vet. Microbiol., 1997, 55: 361-370)またはBEI処理(米国特許出願番号第5,587,164号)によって不活化でき;PCV-2ウイルスの不活化は、エチレンイミン処理またはβ-プロピオラクトン処理(米国特許出願番号第6,391,314号)を用いて達成でき、ブタインフルエンザウイルスは、トリトンなどの洗剤またはホルムアルデヒド処理(米国特許出願番号第6,048,537号)を用いて不活化でき;マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細菌は、ホルムアルデヒド処理(前出のRoss R.F.)、エチレンイミンまたはBEI処理(WO91/18627参照)によって不活化することができる。
【0093】
不活化病原体は、従来の濃縮技術、特に限外濾過によって濃縮することができ、かつ/または従来の精製手段、特に、限定するものではないが、ゲル濾過を含むクロマトグラフィー技術、ショ糖勾配超遠心分離または、特にポリエチレングリコール(PEG)の存在下での選択的沈殿によって精製することができる。
【0094】
また、本発明によるワクチン組成物に有用な免疫原は、発現ベクターを含む。このようなベクターは、限定するものではないが、in vivo組換え発現ベクター、例えばポリヌクレオチドベクターもしくはプラスミド(EP-A2-1001025;Chaudhuri P, Res. Vet. Sci. 2001, 70: 255-6)、ウイルスベクター、例えば、限定するものではないが、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター例えば鶏痘(米国特許シリアル番号第5,174,993号;第5,505,941号;および第5,766,599号)もしくはキャナリーポックスベクター(米国特許出願番号第5,756,103号)または細菌ベクター(エッシェリヒア・コリーもしくはサルモネラ種)を含む。
【0095】
本発明はまた、多価免疫組成物または混合ワクチン組成物の製剤を含む。例えば、本発明により製造される混合ウシバクテリンに有用な抗原は、限定するものではないが、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)、パスツレラ(Pasteurella)種、特にP.ムルトシダ(P. multosida)およびP.ヘモリチカ(P. haemolytica)、ヘモフィルス(Haemophilus)種、特にH.ソムナス(H. somnus)、クロストリディウム種、サルモネラ、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス、モラクセラ(Moraxella)、E.コリー(E. coli)などを含む。
【0096】
本発明は、さらに、本発明による免疫組成物またはワクチン組成物を宿主に投与することを含む、宿主、例えば動物における免疫応答を誘導する方法を提供する。このように誘導される免疫応答は、特に抗体応答および/または細胞性免疫応答であり、特にγ-インターフェロン応答である。
【0097】
特に、本発明は、病原性生物による動物の感染(例えば、ウイルス、細菌、真菌または寄生原虫による感染)に対して免疫性を与え、またはそれによって引き起こされる症状を予防もしくは軽減する方法を提供する。本発明の方法は、限定するものではないが、ヒト、イヌ科の動物(例えば、イヌ)、ネコ科の動物(例えば、ネコ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、ウシ亜科の動物(例えばウシ)およびブタ系の動物(例えばブタ)ならびに、限定するものではないが、ニワトリ、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラスならびに平胸類の鳥(ダチョウ、エミュー、ヒクイドリなど)を含む鳥類を含む脊椎動物に有用である。
【0098】
本発明の特定の側面において、これらの方法は、本発明により製造されるワクチン組成物を投与することによる出産前の妊娠雌のワクチン接種からなる。これらの方法は、さらに、ワクチン接種プロトコルにより誘導される防御抗体の誘導およびワクチン接種された妊娠雌からその子孫へのこれらの防御抗体の移行を含む。このような移行抗体の移行により、その後、疾患から子孫が保護される。
【0099】
本発明により製造されるワクチン組成物の用量は、ワクチン接種される動物の種、品種、年齢、サイズ、ワクチン接種歴および健康状態に左右される。抗原濃度、さらなるワクチン成分および投与経路(すなわち、皮下、皮内、経口、筋肉内または静注)などの他の要素もまた有効量に影響を及ぼす。投与するワクチンの用量は、ワクチンの抗原濃度、投与経路ならびにワクチン接種される動物の年齢および状態に基づいて容易に決定できる。抗原の各バッチは、個別に測定することができる。あるいは、過度の実験を要することなく、種々の用量の系統的な免疫原性試験ならびにLD
50試験および他のスクリーニング法を用いて本発明によるワクチン組成物の有効量を決定することができる。ここで説明するワクチン組成物に使用するためにおよそどのような用量およびどのような容量が適切であるかは、以下に示す実施例から容易に明らかになるであろう。重要な要素は、その用量が、自然感染に対して少なくとも部分的には感染防御効果をもたらすということであり、これは、自然感染に付随する死亡率および罹患率の低下によって証明される。同様に、適切な容量は、当業者によって容易に確認される。例えば、鳥類においては、投与容量は約0.1ml〜約0.5mlであることができ、好都合には、約0.3ml〜約0.5mlであることができる。ネコ、イヌおよびウマ種では、投与容量は約0.2ml〜約3.0mlであることができ、好都合には約0.3ml〜約2.0mlであることができ、さらに好都合には約0.5ml〜約1.0mlであることができる。ウシおよびブタ種では、約0.2ml〜約5.0mlであることができ、好都合には約0.3ml〜約3.0mlであることができ、さらに好都合には0.5ml〜約2.0mlであることができる。
【0100】
最初に、または最後の投与から長時間が経過しているときに免疫応答を増強させるためには、定期的な時間間隔でワクチンの反復接種を行うことが好ましい場合がある。本発明の一実施形態において、ワクチン組成物は注射剤で(すなわち、皮下、皮内または筋肉内に)投与される。組成物は、1回の投与で投与することもできるし、あるいは代替実施形態において、約2〜約6週間、好ましくは約2〜約5週間の間隔で約2〜約5回投与する反復投与で投与することもできる。しかしながら、投与回数およびワクチン接種間の時間間隔は、限定するものではないが、ワクチン接種される動物の年齢、動物の状態、免疫経路、1回当たり利用可能な抗原量を含むいくつかの因子に左右されることは、当業者には明らかであろう。初回のワクチン接種に関しては、期間は一般に1週間より長く、好ましくは約2〜約5週間である。以前にワクチン接種をしたことのある動物の場合は、妊娠前または妊娠中に約1年の間隔でブースターワクチン接種を行うことができる。
【0101】
本発明はまた、無針式注射器、例えばPIGJETR、AVIJET(登録商標)、DERMOJET(登録商標)またはBIOJECTOR(登録商標)(Bioject社、オレゴン州、米国)を用いてワクチン組成物を投与することを考える。当業者は、必要に応じて、過度の実験を要することなく、例えばワクチン接種される動物の種、その動物の年齢および体重などの要素に応じて、注射器の仕様を調節することができる。
【0102】
本発明の一実施形態において、この方法は、本発明による乳剤で調剤したワクチン組成物の単回投与を含む。例えば、一実施形態において、ワクチン組成物は不活化FMDウイルス組成物であり、代替実施形態は、不活化PCV2ウイルス組成物を含むワクチンを提供する。限定するものではないが、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、PRRSおよびSIVを含む他の免疫組成物またはワクチンは、単回投与レジメンに使用するのに適している。
【0103】
本発明はさらに、本発明に従って製造した医薬組成物を宿主に投与することを含み、かつ、タンパク質もしくはペプチド、不活化もしくは弱毒ウイルス、抗体、アレルゲン、CpG ODN、増殖因子、サイトカインまたは抗生物質および特にCpG ODNもしくはサイトカインからなる群から選択される少なくとも1つの免疫原を含む、宿主、例えば動物の治療方法に関する。ニワトリ、ブタ、ウシまたは畜牛などの動物において、発育成績を改善するために、これらの医薬組成物を使用することができる。
【0104】
本発明はさらに、本発明に従って製造した乳剤と混合した精製免疫原などの成分を含む単一のバイアルを含むキットに関する。あるいは、キットは、サポニンおよび水酸化アルミニウムと混合した免疫原または医薬組成物などの成分を含む第1バイアルならびに本発明に従って製造した乳剤を含む第2バイアルを含むことができる。免疫原は、本明細書に記載されるように、乾燥形であることもでき、乾燥された形態であることもでき、あるいは水溶液であることもできる。
【0105】
ここで、限定するものではない以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。