【課題を解決するための手段】
【0010】
MRAMは、読取りワード・ラインと、書込みワード・ラインと、ビット・ラインと、それらの読取りワード・ライン、書込みワード・ライン、及びビット・ラインを介して相互接続された複数個のメモリ・ビット・セルとを含み、メモリ・ビット・セルの各々は、誘電性トンネル障壁素子によって離隔された固定強磁性層素子及び自由強磁性層素子を有する。書込みワード・ラインの各々及びそれぞれの数の自由強磁性層素子は、単一の連続的強磁性ラインとして形成される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、MRAM装置を製造するための方法が提供される。その方法は、
読取りワード・ライン、書込みワード・ライン、及びビット・ラインを設けるステップと、
複数個のメモリ・ビット・セルを設けるステップであって、前記メモリ・ビット・セルの各々は、誘電性トンネル障壁素子によって離隔された固定強磁性層素子及び自由強磁性層素子を有するように設けられ、前記書込みワード・ラインの各々及びそれぞれの数の自由強磁性層素子は単一の連続的強磁性ラインとして形成される、ステップと、
前記読取りワード・ライン、前記書込みワード・ライン、及び前記ビット・ラインを介して前記メモリ・ビット・セルを相互接続するステップと、
を含む。
【0012】
或る実施態様では、MRAM装置は、その装置がレース・トラック・メモリ及び古典的MRAMの間の混合体であるので、ハイブリッドMRAM(HMRAM)装置と呼ばれることもある。
【0013】
従って、或る実施態様によれば、本HMRAMは、ビット・セル・スイッチを使用せずに単一セル選択性及び高いパッキング密度を同時に達成するのに適している。
【0014】
更に、或る実施態様によれば、本HMRAMセルは、40F2より大きい従来のMRAMセルと比較して、4F2の曲線因子(fill factor)を達成し得る(前記非特許文献1及び2参照)。
【0015】
更に、或る実施態様によれば、それぞれの一般的なセル選択スイッチの排除は、HMRAM装置の製作を単純化し得るし、ウェイバ(waver)全体にわたってトンネル障壁の均一性を改善し、それにより、メモリ・ビット・セルを抵抗値のビット・セル変動まで減少させ得る。
【0016】
更に、或る実施態様では、自由層における準安定磁化状態が回避され、従って、それぞれのHMRAMビット・セルのメモリ・セルの形状及び磁性層構造を著しく単純化し得る。更に、所謂、ハーフ・セレクト問題が複雑なアーキテクチャなしで解決され得る。例えば、ハーフ・セレクト問題は前記非特許文献6に開示されている。
【0017】
或る実施態様によれば、二次元書込み選択方式がそれぞれのメモリ・ビット・セルの状態を読取るために使用され得る。とりわけ、この機能を達成するために、本HMRAMでは、書込みワード・ラインおよび自由層が前記1つの連続的な強磁性ラインに組み合わされる。この点に関して、MTJにおける自由層素子はビット・ラインと強磁性書込みワード・ラインとの交差領域によって定義され得る。
【0018】
更に、或る実施態様では、セル選択スイッチが、書込みワード・ラインに対して平行に配列される読取りワード・ラインによって置換され得る。
【0019】
従って、或る実施態様によれば、このメモリ・ビット・セル構成を用いると、二次元選択方式が読取りオペレーション及び書込みオペレーションの両方に対して使用され得る。
【0020】
或る実施態様によれば、CMOSテクノロジによってカバーされるチップ領域の減少のために、詳しく云えば、例えば、前記非特許文献3に記載されているように、CMOSコンポーネントにおける単純なラッチ・アップ事象は放射線環境における装置故障の主要な原因であるので、MRAM装置の放射線耐性の改良が存在する。
【0021】
本HMRAMビット・セルは、強磁性体の単一の連続的小片を形成するように書込みワード・ラインに組み合わされる自由層素子設計の際の一般的なMRAMビット・セルとは異なり得る。形状異方性のために、書込みワード・ラインにおける磁化は、書込みワード・ラインの軸に対して平行であり、セルの下部の強磁性部分における固定磁化に対して平行又は逆平行であってもよい。例えば、書込みワード・ラインが並行方向に起動される場合、その結果生じるトンネル磁気抵抗は低い。高い抵抗状態に切り換えるために、ビット・ラインの下の磁化は、ビット・ライン内を流れる電流パルスによって生成される磁界と整列するように180度だけ回転しなければならないことがある。単一セルの選択性を得るために、電流パルスによって引き起こされた磁界は、ビット・ラインの下の磁化を回転させるに十分ではないこともある。書込みワード・ライン内を流れる第2の電流パルスは電力消費によって強磁性体を加熱することもある。従って、磁化を得るための閾値磁界が低下することもある。磁化が磁界と整列するように書込みワード・ライン及びビット・ラインの交差領域にあるメモリ・ビット・セルだけが高温と磁界の結合効果を受けることがある。直交するワード・ライン及びビット・ラインによって生成された2つの磁界のベクトル和によって、磁界の切り換えが得られる。本方式は、従来の書込み方式と比べて、切り替る磁界が広がることが不可避であるために同じライン上のセルが切り替わり易いという上記のハーフ・セレクト問題を回避し得る。
【0022】
磁化は回転するので、2つの磁壁はビット・ラインの端部で一体化(nucleate)され、ピン留めされる。磁壁は、書込みワード・ラインの締め付け(constriction)の際にピン留めされ得る。本HMRAM装置の形状は、十分なピン留め電位が磁壁に与えられるような形状であってもよいが、磁壁は逆磁界においても再びピン留めを外し得るような形状でもあってもよい。
【0023】
或る実施態様では、2つのビット・ラインの間の最小距離が磁壁幅の少なくとも二倍になるように与えられ得る。パーマロイのような軟磁性材では、平衡磁壁幅は数100nmくらいの大きさになり得るが、前記非特許文献5を参照すると、拘束された磁壁は、その締め付けの幾何学的な幅に関する独特の猶予幅を持ち得る。更に、高抵抗性状態から低抵抗性状態への推移は、ビット・ライン内を流れる電流パルスが逆極性を持ち得ることを除けば、同様の方法で達成され得る。
【0024】
或る実施例では、MRAMは、更に、誘電層素子を持ち得るし、その誘電層素子の各々は、容量性素子を形成するためにビット・ライン及び連続的な強磁性ラインのそれぞれの線の間に配列される。
【0025】
更なる実施例では、前記容量性素子は、書込みオペレーションにおいて絶縁体を形成するように構成され得る。
【0026】
従って、その容量性素子は、書込みオペレーションにおいて絶縁体を形成し得るので、都合がよいことに、書込みオペレーションではビット・ラインと書込みワード・ラインとの間で電流は流れ得ない。
【0027】
更なる実施例では、前記容量性素子は、読取りオペレーションにおいて導電体を形成するように構成され得る。
【0028】
容量性素子は読取りオペレーションにおいて導電体を形成し得るので、ビット・ラインからワード書込みライン及び選択されたメモリ・ビット・セルを介して読取りワード・ラインに電流が流れ得る。従って、その選択されたメモリ・セルは読取られ得る。
【0029】
更なる実施例では、前記容量性素子は、書込みオペレーションでは絶縁体を形成し、読取りオペレーションでは導電体を形成するように構成され得る。
【0030】
従って、前記容量性素子は、オペレーション、即ち、読取りオペレーション又は書込みオペレーションに依存して2つの機能を持ち得る。
【0031】
更なる実施例では、メモリ・ビット・セルは、書込みワード・ラインのそれぞれの線の下に配列され得るし、前記書込みワード・ラインのそれぞれの線及びメモリ・ビット・セルの自由強磁性層素子は、或る単一の連続的強磁性ラインとして形成される。
【0032】
更なる実施例では、メモリ・ビット・セルは行及び列を有するマトリクスとして配列され、そのマトリクスでは、1つの行に配列されたメモリ・ビット・セルが1つの書込みワード・ラインに接続され得るし、前記1つの書込みワード・ライン及び前記1つの行におけるメモリ・ビット・セルの自由強磁性層素子が単一の連続的強磁性ラインとして形成される。
【0033】
更なる実施例では、各メモリ・ビット・セルのそれぞれの自由強磁性層素子は連続的強磁性ラインの一部分として形成され、その部分は、連続的強磁性ラインとそれぞれのビット・ラインとの交差領域に配列される。
【0034】
更なる実施例では、連続的強磁性ライン及びビット・ラインは相互に直行するように配列される。
【0035】
更なる実施例では、それぞれの読取りワード・ラインの各々は連続的強磁性ラインのそれぞれの1つと平行に配列され、読取りオペレーション及び書込みオペレーションに対して二次元選択方式が適用可能であるように構成され得る。
【0036】
有利なことに、読取りワード・ライン及び書込みワード・ラインの間のそのような配列が連続的強磁性ラインの一部であるので、読取りオペレーション及び書込みオペレーションの両方に対して二次元選択方式が適用可能となり得る。
【0037】
更なる実施例では、メモリ・ビット・セルは、行及び列を有する二次元配列に配置され得る。
【0038】
更なる実施例では、メモリ・ビット・セルは、メモリ・ビット・セルの複数個の二次元マトリクスを有する三次元配列に配置され、前記二次元マトリクスが相互にスタックされる。
【0039】
本HMRAMセルを使用することによって、MRAMセルの三次元配列が都合よく可能となる。
【0040】
更なる実施例では、前記固定強磁性層素子及び自由強磁性層素子は、それぞれ、強磁性材、例えば NiFe、CoFe、CoFeB、又はMnFeによって形成され得る。更に、前記強磁性材は種々の構成比で使用され得る。MnFeは、反強磁性体として多層構造で使用され得る。
【0041】
更なる実施例では、固定強磁性層素子は永久磁石として作用するように構成され得る。
【0042】
更なる実施例では、自由強磁性層素子は、外部磁界及び温度の印加のような事前定義された励起の際に修正可能であるように構成され得る。
【0043】
更なる実施例では、誘電性トンネル障壁素子はMgO又はAl
2O
3を含み得る。
【0044】
更なる実施例では、誘電性層素子は、低誘電率の誘電体、例えば、ナノポーラス・シリカ、水素化シルセスキオキサン(HSQ)、テフロンAF(ポリテトラフルオロエチレン、即ちPTFE)、シリコンオキシフロライド(FSG)、又は高誘電率の誘電体、例えば高誘電率のSiNx、Ta
2O
5、Al
2O
3、ZrO
2、及びHfO
2、PZTを含み得る。
【0045】
更なる実施例では、磁壁ピン留めサイトは、連続的強磁性ライン及びそれぞれのビット・ラインの交差領域のそれぞれの近辺に設けられる。
【0046】
更なる実施例では、それぞれの各磁壁ピン留めサイトの形状は、湾曲形又は多角形として具体化される。更に詳しく云えば、それぞれの磁壁ピン留めサイトの形は、三角形、長方形、五角形、又は放物線形であってもよい。
【0047】
更なる実施例では、それぞれの各磁壁ピン留めサイトのサイズは、連続的強磁性ラインの形状及び/又は材料に依存して構成される。磁壁の幅は、連続的強磁性ラインの材料特性並びにそれの幅及び厚さに依存し得る。特に、ピンで留めサイトのサイズは、締め付けが存在しない連続的強磁性ラインのワイヤ区域に磁壁が位置するとき、磁壁の幅に比例し得る。
【0048】
以下では、本発明の例示的な実施例が添付図面を参照して説明される。