(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一部分または対応部分を表している。
【0022】
(第1実施形態)
まず、
図1および
図2を参照して、第1実施形態によるカードリーダの構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態によるカードリーダ1は、装置全体の動作を制御するCPUからなる制御部2と、磁気カードに記録されている磁気データを読み取る磁気情報読取部3と、磁気カードを搬送するカード搬送部4と、磁気カードを検出するカード検出センサ5と、磁気情報読取部3で読み取った磁気データを記憶するメモリ6と、上位装置(例えばATM)との接続部であるホストインターフェース7と、磁気カードの磁気ストライプを検出する磁気ストライプ検出部10と、磁気ストライプに記録されたデータの読み取りを妨げるための妨害磁界を発生する磁界発生部8とを備えている。制御部2は、本発明における「判定手段」の一例である。
【0024】
制御部2は、磁界発生部8を制御する磁界制御部9と、カード搬送部4を制御するカード搬送制御部12とを含む。磁気ストライプ検出部10および磁界発生部8は、カード挿入口ユニット24内に設置されている。磁気ストライプ検出部10は、後述する磁気ヘッド34(
図2)を含む。また、磁界発生部8は、後述するループアンテナ35(
図2)を含む。
【0025】
図2(a)に示すように、カードリーダ1の筐体100の前面には、カード挿入口ユニット24が設けられている。カード挿入口ユニット24には、磁気カード(以下、単に「カード」という。)21が挿入される挿入口22が形成されている。カード21は、
図4に示すように、磁気ストライプ21aを有している。
図4は、カード21を裏面から見た図である。挿入口22の近くには、挿入されたカード21を検出するカード挿入検出センサ23が設けられている。このカード挿入検出センサ23は、例えばマイクロスイッチからなり、挿入口22から挿入されたカード21によって押圧される位置に配置されている。カード挿入検出センサ23は、本発明における「検知手段」の一例である。また、挿入口22の近くには、磁気ストライプ検出用の磁気ヘッド34が設けられている。この磁気ヘッド34は、カード21の磁気ストライプ21aを検出する。
【0026】
カードリーダ1の筐体100の内部には、搬送ローラ25〜28、カード位置検出センサ30〜33、磁気ヘッド29が設けられている。搬送ローラ25〜28は、それぞれ搬送路Pを挟んで1対設けられており、1対のローラでカード21を挟持して搬送する。これらの搬送ローラ25〜28は、搬送ベルト(図示省略)を介して、モータ(図示省略)に連結されている。1対の搬送ローラのうち、一方はモータの回転力が伝達される駆動ローラであり、他方はこの駆動ローラに従動して回転する従動ローラである。搬送ローラ25〜28は、上記の搬送ベルトおよびモータとともに、カード搬送部4(
図1)を構成する。
【0027】
カード位置検出センサ30〜33は、透過型の光センサであり、それぞれ、搬送路Pを挟んで対向する発光部と受光部を有している。これらのセンサ30〜33の配置間隔は、磁気カード21の搬送方向の長さよりも短くなっている。センサ30は、挿入口22に最も近い搬送ローラ25にカード21が挟持されたことを検出する。センサ33は、挿入されたカード21が、カードを一時的に貯留する貯留部(図示省略)に達したことを検出する。センサ31、32は、搬送中のカード21の位置を検出する。これらのカード位置検出センサ30〜33は、前記のカード挿入検出センサ23とともに、カード検出センサ5(
図1)を構成する。
【0028】
磁気ヘッド29は、搬送ローラ26と搬送ローラ27との間で、搬送路Pの下側に設けられている。この磁気ヘッド29は、挿入されたカード21が搬送路Pを搬送される過程で、カード21の磁気ストライプ21aに記録されているデータを読み取る。前述の磁気ヘッド34が、磁気ストライプに記録されているデータの有無を検出するための磁気ヘッドであるのに対し、磁気ヘッド29は、磁気ストライプに記録されているデータそのものを再生するための磁気ヘッドである。磁気ヘッド29とセンサ33との間隔は、カード21の搬送方向の長さよりも少し長くなっている。したがって、カード21が貯留部に達した際、すなわち、カード21の先端がセンサ33の位置に達した際には、磁気ヘッド29は、カード21に記録されているデータの読み取りを完了している。
【0029】
カード挿入口ユニット24の前面近傍には、ループアンテナ35が設けられている。
図2(a)からわかるように、ループアンテナ35は、挿入口22付近において、カード21の挿入方向Aに対して、磁気ストライプ検出用の磁気ヘッド34よりも挿入口22側に設けられている。このループアンテナ35は、導体を1回または複数回ループ状に巻いたアンテナであり、
図2(b)に示すように、挿入口22を囲むように配置される。
【0030】
磁界制御部9の制御に基づき、磁界発生部8においてループアンテナ35に駆動電流が流れると、ループアンテナ35は、挿入口22付近に磁界を発生させる。本発明では、ループアンテナ35に継続して駆動電流を流すことで、ループアンテナ35は常時磁界を発生している。この磁界は、挿入口22の前方に妨害磁界として作用し、挿入口22の前方に不正読取装置(図示省略)が取り付けられた場合に、当該装置による磁気情報の読み取りを妨害する。また、この磁界は、挿入口22の後方にある磁気ストライプ検出用の磁気ヘッド34にも妨害磁界として作用し、磁気ヘッド34における磁気情報の不正な読み取りを妨害する。
【0031】
なお、
図2(b)に示したループアンテナ35に代えて、
図3(a)に示すように、2つの独立したループアンテナ35a,35bを、挿入口22の両側に配置してもよい。あるいは、
図3(b)に示すように、1つのループアンテナ35cを、磁気ストライプ検出用の磁気ヘッド34(
図2(a))付近にのみ配置してもよい。
【0032】
次に、第1実施形態におけるスキミング対策について説明する。
図5(a)は、ループアンテナ35に流れる駆動電流の波形である。ループアンテナ35からは、この駆動電流に応じた妨害磁界が発生する。
図5(b)は、妨害磁界が存在しない場合に、磁気ストライプ検出部10から出力される検出信号の波形である。磁気ヘッド34が磁気ストライプ21a(
図4)を検出した時刻t以後に、磁気ストライプ検出部10は、磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aから読み取った磁気データに基づき、図のようなパルス状の検出信号を出力する。
図5(c)は、妨害磁界が存在する場合に、磁気ストライプ検出部10から出力される検出信号の波形である。時刻tより前においては、磁気ヘッド34に妨害磁界のみが作用するため、検出信号の波形は、
図5(a)の妨害磁界に対応した波形となる。時刻tより後においては、磁気ヘッド34に妨害磁界と、磁気ストライプ21aの磁気データによる磁界とが作用するため、検出信号の波形は、
図5(a)と
図5(b)とを合成した波形となる。
【0033】
本実施形態では、
図5(a)のように、ループアンテナ35から妨害磁界が常時発生している。しかも、この妨害磁界は、挿入口22の前方と後方に作用する。したがって、磁気ヘッドを備えた不正読取装置が挿入口22の前方に取り付けられても、当該磁気ヘッドに必ず妨害磁界が作用することになる。このため、妨害磁界の休止期間を利用してカード21の磁気データを不正に取得することが不可能となり、第1類型のスキミングを未然に防止することができる。また、妨害磁界は、磁気ヘッド34にも常時作用するので、磁気ヘッド34からリード線を介して磁気データを不正に取得することも不可能となる。このため、第2類型のスキミングも有効に防止することができる。
【0034】
一方、ループアンテナ35から発生する妨害磁界が、磁気ヘッド34に常時作用することから、磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aを読み取る際に、磁気ヘッド34から、
図5(b)の右側に示した正規の磁気ストライプ検出信号が得られなくなる。しかるに、磁気ヘッド34は、磁気ストライプ21aにおける磁気データの有無を検出できればよく、磁気データそのものを再生する必要はない。そこで、本実施形態では、磁気ストライプ検出前の検出信号のパターンと、磁気ストライプ検出後の検出信号のパターンとが異なることを利用して、磁気ストライプ21aにおける磁気データの有無を検出する。以下、これについて説明する。
【0035】
図5(c)からわかるように、磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aを検出する前(時刻t以前)の検出信号のパターン(以下、「第1パターン」という。)と、磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aを検出した後(時刻t以後)の検出信号のパターン(以下、「第2パターン」という。)とを比較した場合、両パターンは異なっている。すなわち、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入された場合、磁気ヘッド34がデータを読み取ることにより、検出信号のパターンが、第1パターンから第2パターンへ変化する。一方、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入された場合は、
図5(b)の信号が発生しないので、検出信号のパターンは第1パターンのままで変化しない。以上のことから、第1パターンと第2パターンとを比較することで、磁気ストライプ21aにおけるデータの有無を検出することができ、これによって、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたか否かの判定が可能となる。
【0036】
ところで、第1実施形態では、上記の第1パターンは、
図6に示したような基準パターンとして、あらかじめメモリ6(
図1)に記憶されている。そして、
図5(c)の時刻t以後において、磁気ストライプ検出部10から出力される検出信号を解析して、当該検出信号のパターン(第2パターン)と基準パターンとの照合を行い、検出信号のパターンが基準パターンと一致するか否かの検証を行う。パターンの照合は、例えば、それぞれのパターンのサンプリング値を逐次比較することによって行うことができる。
【0037】
このようにして、第1実施形態においては、ループアンテナ35が常時発生する妨害磁界により、第1類型のスキミングと第2類型のスキミングのいずれに対しても、カード21のデータの不正取得を有効に防止することができる。また、妨害磁界が磁気ヘッド34に作用しても、磁気ストライプ21aの検出前後で検出信号のパターンが異なることを利用して、カード21におけるデータの有無を支障なく検出することができる。
【0038】
図7は、第1実施形態におけるカード挿入時の動作を表したフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて、カード21の取り込みおよび読み取りを行う場合の手順を詳細に説明する。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0039】
ステップS1では、メモリ6から第1パターン(
図6の基準パターン)が読み出される。ステップS2では、カード挿入検出センサ23がカード21の挿入を検出したか否かが判定される。カード21の挿入が検出されなければ(ステップS2;NO)、ステップS2を繰り返し実行して、カード21の挿入が検出されるまで待機する。カード21の挿入が検出されると(ステップS2;YES)、ステップS3へ進む。
【0040】
ステップS3では、磁気ストライプ検出部10の検出信号から第2パターンを抽出し、ステップS1で読み出した第1パターン(基準パターン)と比較する。そして、ステップS4で、第2パターンが第1パターンと異なるか否かを判定する。
【0041】
ステップS4での判定の結果、第2パターンが第1パターンと異なる場合は(ステップS4;YES)、磁気ストライプ21aに「データ有」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたと判断して、ステップS5へ進む。一方、ステップS4での判定の結果、第2パターンが第1パターンと同じである場合、つまり第1パターンから変化がない場合は(ステップS4;NO)、磁気ストライプ21aに「データ無」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入されたと判断し、カード21を返却した上でステップS2へ戻る。
【0042】
ステップS5では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。このとき、搬送ローラ25〜28は、挿入されたカード21を筐体100の内部に取り込む方向(以下、「正方向」という。)に回転する。これにより、カード21は搬送路Pを通って、筐体100内に取り込まれる。カード21が搬送路Pを搬送される過程で、ステップS6において、カード21の磁気ストライプ21aに記録されている磁気データが、磁気ヘッド29により読み取られる。
【0043】
ステップS7では、搬送ローラ28の隣に配置されたセンサ33がカード21の端(
図2(a)で右端)を検出したか否かが判定される。センサ33がカード端を検出してなければ(ステップS7;NO)、ステップS7を繰り返し実行する。すなわち、カード端が検出されるまで、搬送ローラ25〜28を正方向に回転させて、カード21の搬送を継続する。センサ33がカード端を検出すると(ステップS7;YES)、カード21が搬送路Pの後端へ達したと判断して、ステップS8へ進む。
【0044】
ステップS8では、カード搬送制御部12により搬送ローラ25〜28の回転が停止され、カード21の搬送が停止する。このとき、カード21は前述した貯留部(図示省略)に一時的に貯留される。以上によって、
図7の一連の処理がすべて終了する。
【0045】
図8は、カード21の返却を行う場合の手順を示している。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0046】
ステップS11では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。このとき、搬送ローラ25〜28は、挿入されたカード21を貯留部から挿入口22へ搬送する方向(以下、「逆方向」という。)に回転する。これにより、カード21は、挿入口22へ向かって搬送路Pを搬送される。
【0047】
ステップS12では、搬送ローラ25の隣に配置されたセンサ30がカード21の端(
図2(a)で右端)を検出したか否かが判定される。センサ30がカード端を検出してなければ(ステップS12;NO)、ステップS12を繰り返し実行する。すなわち、カード端が検出されるまで、搬送ローラ25〜28を逆方向に回転させて、カード21の搬送を継続する。センサ30がカード端を検出すると(ステップS12;YES)、搬送されたカード21が挿入口22へ返却されたと判断して、ステップS13へ進む。
【0048】
ステップS13では、カード搬送制御部12により搬送ローラ25〜28の回転が停止され、カード21の搬送が停止する。このとき、カード21は、
図2(a)のように上下の搬送ローラ25で挟持されており、また、カードの先端部分が挿入口22から外部に突出している。このため、利用者は、挿入口22から突出しているカード21の先端部分を把持して、カード21を抜き取ることができる。
【0049】
ステップS14では、カード挿入検出センサ23がカード21の抜き取り検出したか否かが判定される。カード挿入検出センサ23がカードを検出している状態にあるときは、カード21が抜き取られていないと判断して(ステップS14;NO)、ステップS14を繰り返し実行し、カード21が抜き取られるのを待つ。カード挿入検出センサ23が、カードを検出している状態からカードを検出していない状態に変化すると、カード21が抜き取られたと判断し(ステップS14;YES)、処理を終了する。以上によって、
図8の一連の処理がすべて終了する。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態におけるカードリーダの構成については、
図1および
図2と同じであるので、説明を省略する。
【0051】
前記の第1実施形態では、第1パターン(基準パターン)は、あらかじめメモリ6に記憶されていた。これに対して、第2実施形態では、実際の検出信号から第1パターンを取得し、これを基準パターンとする。以下、
図9を参照して具体的に説明する。
【0052】
図9の各波形は、
図5の各波形と同じものである。
図9(c)のt1は、カード挿入検出センサ23がカード21を検出した時刻、t2は磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aを検出した時刻を表している。すなわち、カード21が
図10(a)のようにA方向に挿入されてゆくと、
図10(b)のように、まず、カード挿入検出センサ23(マイクロスイッチ)がカード21を検出する。この時刻が、
図9(c)のt1である。その後、カード21がさらにA方向に挿入されてゆくと、
図10(c)のように、磁気ヘッド34が磁気ストライプ21aの読み取りを開始する。この時刻が、
図9(c)のt2である。
【0053】
第2実施形態においては、
図9(c)に示すように、カード21が検出された時刻t1の直前の、一定期間の検出信号を基準パターン(第1パターン)として抽出する。抽出された基準パターンは、メモリ6に一時的に記憶される。そして、磁気ストライプ21aが検出された時刻t2以後において、磁気ストライプ検出部10から出力される検出信号を解析して、当該検出信号のパターン(第2パターン)と基準パターンとの照合を行い、検出信号のパターンが基準パターンと一致するか否かの検証を行う。パターンの照合は、例えば、それぞれのパターンのサンプリング値を逐次比較することによって行うことができる。
【0054】
第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、ループアンテナ35が常時発生する妨害磁界により、第1類型のスキミングと第2類型のスキミングのいずれに対しても、カード21のデータの不正取得を有効に防止することができる。また、妨害磁界が磁気ヘッド34に作用しても、磁気ストライプ21aの検出前後で検出信号のパターンが異なることを利用して、カード21におけるデータの有無を支障なく検出することができる。
【0055】
また、第2実施形態では、カード21が検出された直前の、実際の検出信号から基準パターン(第1パターン)を取得するので、温度や外来ノイズなどの環境変化を反映した基準パターンを生成することができる。このため、第1実施形態のように固定した基準パターンを用いる場合に比べて、基準パターンの精度が上がり、カード21におけるデータ有無の検出精度が向上する。
【0056】
図11は、第2実施形態におけるカード挿入時の動作を表したフローチャートである。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0057】
ステップS1aでは、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、所定期間において第1パターンを抽出し、抽出した第1パターンをメモリ6に記憶する。
【0058】
ステップS2aでは、カード挿入検出センサ23がカード21の挿入を検出したか否かが判定される。カード21の挿入が検出されなければ(ステップS2a;NO)、ステップS1aへ戻り、次の期間において第1パターンの抽出・記憶を行う。この場合、メモリ6では、第1パターンが上書きされて更新される。カード21の挿入が検出されるまでは、ステップS1a、S2aが繰り返し実行される。そして、カード21の挿入が検出されると(ステップS2a;YES)、ステップS3aへ進む。
【0059】
ステップS3aでは、磁気ストライプ検出部10の検出信号から第2パターンを抽出し、メモリ6に記憶されているカード検出直前の第1パターン(基準パターン)と比較する。そして、ステップS4aで、第2パターンが第1パターンと異なるか否かを判定する。
【0060】
ステップS4aでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと異なる場合には(ステップS4a;YES)、磁気ストライプ21aに「データ有」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたと判断して、ステップS5へ進む。一方、ステップS4aでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと同じである場合、つまり第1パターンから変化がない場合には(ステップS4a;NO)、磁気ストライプ21aに「データ無」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入されたと判断し、カード21を返却した上でステップS1aへ戻る。
【0061】
ステップS5では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。ステップS5〜S8の手順については、
図7におけるステップS5〜S8の手順と同じであるので、説明を省略する。また、カード21の返却を行う場合の手順については、
図8の手順と同じであるので、これについても説明を省略する。
【0062】
上述した第2実施形態では、
図9(c)に示したように、カード検出直前の一定期間における検出信号を基準パターン(第1パターン)として抽出した。これに代えて、カード検出直前の一定期間より前の期間における検出信号を基準パターンとして抽出してもよい。また、1つの期間から基準パターンを抽出するのではなく、複数の期間から抽出したパターンを平均したものを基準パターンとしてもよい。要は、カード検出時点から遡った任意の一定期間におけるパターンに基づいて、基準パターンを設定すればよい。さらに、一定期間に含まれる信号の全部ではなく一部を用いて、基準パターンを設定してもよい。
【0063】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態におけるカードリーダの構成については、
図1および
図2と同じであるので、説明を省略する。
【0064】
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、実際の検出信号から第1パターンを取得し、これを基準パターンとする。但し、第2実施形態の場合は、カード検出直前の一定期間の検出信号を基準パターンとしたのに対し、第3実施形態の場合は、
図12(c)に示すように、カード21が検出された時刻t1の直後の、一定期間の検出信号を基準パターン(第1パターン)として抽出する。
【0065】
抽出された基準パターンは、メモリ6に一時的に記憶される。そして、磁気ストライプ21aが検出された時刻t2以後において、磁気ストライプ検出部10から出力される検出信号を解析して、当該検出信号のパターン(第2パターン)と基準パターンとの照合を行い、検出信号のパターンが基準パターンと一致するか否かの検証を行う。パターンの照合は、例えば、それぞれのパターンのサンプリング値を逐次比較することによって行うことができる。
【0066】
第3実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、ループアンテナ35が常時発生する妨害磁界により、第1類型のスキミングと第2類型のスキミングのいずれに対しても、カード21のデータの不正取得を有効に防止することができる。また、妨害磁界が磁気ヘッド34に作用しても、磁気ストライプ21aの検出前後で検出信号のパターンが異なることを利用して、カード21におけるデータの有無を支障なく検出することができる。
【0067】
また、第3実施形態では、カード21が検出された直後の、実際の検出信号から基準パターン(第1パターン)を取得するので、温度や外来ノイズなどの環境変化を反映した基準パターンを生成することができる。このため、第2実施形態と同様に、基準パターンの精度が上がり、カード21におけるデータ有無の検出精度が向上する。
【0068】
図13は、第3実施形態におけるカード挿入時の動作を表したフローチャートである。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0069】
ステップS1bでは、カード挿入検出センサ23がカード21の挿入を検出したか否かが判定される。カード21の挿入が検出されなければ(ステップS1b;NO)、ステップS1bを繰り返し実行して、カード21の挿入が検出されるまで待機する。カード21の挿入が検出されると(ステップS1b;YES)、ステップS2bへ進む。
【0070】
ステップS2bでは、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、カード検出直後の所定期間における第1パターンを抽出し、これを基準パターンとしてメモリ6に記憶する。
【0071】
ステップS3bでは、磁気ストライプ検出後に、磁気ストライプ検出部10の検出信号から第2パターンを抽出し、メモリ6に記憶されている第1パターン(基準パターン)と比較する。そして、ステップS4bで、第2パターンが第1パターンと異なるか否かを判定する。
【0072】
ステップS4bでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと異なる場合には(ステップS4b;YES)、磁気ストライプ21aに「データ有」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたと判断して、ステップS5へ進む。一方、ステップS4bでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと同じである場合、つまり第1パターンから変化がない場合には(ステップS4b;NO)、磁気ストライプ21aに「データ無」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入されたと判断し、カード21を返却した上でステップS1bへ戻る。
【0073】
ステップS5では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。ステップS5〜S8の手順については、
図7におけるステップS5〜S8の手順と同じであるので、説明を省略する。また、カード21の返却を行う場合の手順については、
図8の手順と同じであるので、これについても説明を省略する。
【0074】
上述した第3実施形態では、
図12(c)に示したように、カード検出直後の一定期間における検出信号を基準パターン(第1パターン)として抽出した。これに代えて、カード検出時刻t1から磁気ストライプ検出時刻t2までに余裕がある場合は、t1〜t2の間において、カード検出直後の一定期間より後の期間における検出信号を基準パターンとして抽出してもよい。また、1つの期間から基準パターンを抽出するのではなく、複数の期間から抽出したパターンを平均したものを基準パターンとしてもよい。要は、カード検出時点以後の任意の一定期間におけるパターンに基づいて、基準パターンを設定すればよい。さらに、一定期間に含まれる信号の全部ではなく一部を用いて、基準パターンを設定してもよい。
【0075】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態におけるカードリーダの構成については、
図1および
図2と同じであるので、説明を省略する。
【0076】
前記の第1ないし第3実施形態では、第1パターン(基準パターン)と第2パターンとの照合を、検出信号の波形同士を比較することにより行った。これに対して、第4実施形態では、検出信号の所定期間におけるサンプリング値の総和を比較することで照合を行う。以下、
図14を参照して具体的に説明する。
【0077】
図14(a)の波形は、
図9(c)の波形と同じものである。
図14(b)は、
図14(a)の期間T1におけるサンプリングの様子を模式的に示した図である。第4実施形態においては、磁気ストライプ検出前の検出信号をサンプリングし、所定期間T1におけるサンプリング値の総和を算出する。そして、この総和を第1パターンとしてメモリ6に記憶する。また、磁気ストライプ検出時刻t2より後の検出信号をサンプリングし(図示省略)、所定期間T2におけるサンプリング値の総和を算出する。そして、この総和を第2パターンとする。
【0078】
図14(a)では、期間T1は、カード検出時刻t1の直前の期間となっているが、それより前の期間であってもよい。また、期間T2も、磁気ストライプ検出時刻t2の直後の期間であってもよく、図示の期間より後の期間であってもよい。なお、期間T1のスタート時点と、期間T2のスタート時点とは、同期がとれている。
【0079】
前述したように、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入された場合は、磁気ストライプ検出前の検出信号のパターンと、磁気ストライプ検出後の検出信号のパターンとが異なるので、期間T1と期間T2における各検出信号のサンプリング値の総和も異なったものとなる。したがって、それぞれの総和を第1パターンおよび第2パターンとし、これらを比較することで、磁気ストライプ21aにおけるデータの有無を検出することができる。
【0080】
第4実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、ループアンテナ35が常時発生する妨害磁界により、第1類型のスキミングと第2類型のスキミングのいずれに対しても、カード21のデータの不正取得を有効に防止することができる。また、妨害磁界が磁気ヘッド34に作用しても、磁気ストライプ21aの検出前後で検出信号のサンプリング値の総和が異なることを利用して、カード21におけるデータの有無を支障なく検出することができる。
【0081】
図15は、第4実施形態におけるカード挿入時の動作を表したフローチャートである。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0082】
ステップS1cでは、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、第1パターン(所定期間におけるサンプリング値の総和)を演算し、メモリ6に記憶する。
【0083】
ステップS2cでは、カード挿入検出センサ23がカード21の挿入を検出したか否かが判定される。カード21の挿入が検出されなければ(ステップS2c;NO)、ステップS1cへ戻り、次の期間における第1パターンの演算・記憶を行う。この場合、メモリ6では、第1パターンが上書きされて更新される。カード21の挿入が検出されるまでは、ステップS1c、S2cが繰り返し実行される。そして、カード21の挿入が検出されると(ステップS2c;YES)、ステップS3cへ進む。
【0084】
ステップS3cでは、磁気ストライプの検出後に、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、期間T2における第2パターン(サンプリング値の総和)を演算し、メモリ6に記憶されている基準パターン、すなわちカード検出直前の期間T1における第1パターン(サンプリング値の総和)と比較する。続いて、ステップS4cで、第2パターンが第1パターンと異なるか否かを判定する。
【0085】
ステップS4cでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと異なる場合には(ステップS4c;YES)、磁気ストライプ21aに「データ有」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたと判断して、ステップS5へ進む。一方、ステップS4cでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと同じである場合、つまり第1パターンから変化がない場合には(ステップS4c;NO)、磁気ストライプ21aに「データ無」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入されたと判断し、カード21を返却した上でステップS1cへ戻る。
【0086】
ステップS5では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。ステップS5〜S8の手順については、
図7におけるステップS5〜S8の手順と同じであるので、説明を省略する。また、カード21の返却を行う場合の手順については、
図8の手順と同じであるので、これについても説明を省略する。
【0087】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態におけるカードリーダの構成については、
図1および
図2と同じであるので、説明を省略する。
【0088】
第5実施形態では、第4実施形態と同様に、検出信号の所定期間におけるサンプリング値の総和を比較することで照合を行う。但し、第4実施形態の場合は、カード検出直前の所定期間T1におけるサンプリング値の総和を基準パターンとしたのに対し、第5実施形態の場合は、
図16に示すように、カード検出直後の所定期間T1’におけるサンプリング値の総和を基準パターンとする。第5実施形態におけるパターンの照合に関しては、第4実施形態と実質的に同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0089】
第5実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、ループアンテナ35が常時発生する妨害磁界により、第1類型のスキミングと第2類型のスキミングのいずれに対しても、カード21のデータの不正取得を有効に防止することができる。また、妨害磁界が磁気ヘッド34に作用しても、磁気ストライプ21aの検出前後で検出信号のサンプリング値の総和が異なることを利用して、カード21におけるデータの有無を支障なく検出することができる。
【0090】
図17は、第5実施形態におけるカード挿入時の動作を表したフローチャートである。各ステップの処理は、制御部2によって実行される。
【0091】
ステップS1dでは、カード挿入検出センサ23がカード21の挿入を検出したか否かが判定される。カード21の挿入が検出されなければ(ステップS1d;NO)、ステップS1dを繰り返し実行し、カード21が挿入されるまで待機する。そして、カード21の挿入が検出されると(ステップS1d;YES)、ステップS2dへ進む。
【0092】
ステップS2dでは、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、カード検出直後の期間T1’における第1パターン(サンプリング値の総和)を演算し、これを基準パターンとしてメモリ6に記憶する。
【0093】
ステップS3dでは、磁気ストライプの検出後に、磁気ストライプ検出部10の検出信号から、期間T2における第2パターン(サンプリング値の総和)を演算し、メモリ6に記憶されている基準パターン、すなわち期間T1’における第1パターン(サンプリング値の総和)と比較する。続いて、ステップS4dで、第2パターンが第1パターンと異なるか否かを判定する。
【0094】
ステップS4dでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと異なる場合には(ステップS4d;YES)、磁気ストライプ21aに「データ有」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されているカード21が挿入されたと判断して、ステップS5へ進む。一方、ステップS4dでの判定の結果、第2パターンが第1パターンと同じである場合、つまり第1パターンから変化がない場合には(ステップS4d;NO)、磁気ストライプ21aに「データ無」なので、磁気ストライプ21aにデータが記録されていないカード21が挿入されたと判断し、カード21を返却した上でステップS1dへ戻る。
【0095】
ステップS5では、カード搬送制御部12により、カード21の搬送が開始される。ステップS5〜S8の手順については、
図7におけるステップS5〜S8の手順と同じであるので、説明を省略する。また、カード21の返却を行う場合の手順については、
図8の手順と同じであるので、これについても説明を省略する。
【0096】
上述した第4実施形態と第5実施形態においては、1つの期間におけるサンプリング値の総和を求めたが、複数の期間のそれぞれについてサンプリング値の総和を求め、それらの平均値を求めてもよい。この場合は、磁気ストライプ検出前の検出信号をサンプリングして、複数の所定期間の各期間におけるサンプリング値の総和の平均値を第1パターンとし、磁気ストライプ検出後の検出信号をサンプリングして、複数の所定期間の各期間におけるサンプリング値の総和の平均値を第2パターンとすればよい。このようにすれば、ノイズ等の影響を受けにくくなって、各パターンの精度が向上する。さらに、一定期間に含まれる信号の全部ではなく一部を用いて、サンプリング値の総和を求めてもよい。
【0097】
以上述べた各実施形態においては、カード21が挿入される場合のスキミング対策について述べたが、ループアンテナ35から妨害磁界が常時発生していることから、カード21が返却される場合にも、スキミングを防止することができる。
【0098】
また、以上の各実施形態においては、磁気ストライプ検出用の磁気ヘッド34に対するスキミング対策について述べた。一方、カードリーダ1の筐体100内には、磁気ストライプ21aを読み取ってデータを再生するための磁気ヘッド29が存在する(
図2(a)参照)。この磁気ヘッド29に対するスキミング対策としては、例えば、磁気ヘッド29が読み取ったデータを暗号化するなどの対策がとられる。
【0099】
また、以上の各実施形態においては、
図2や
図3のループアンテナを例に挙げたが、ループアンテナはこれらに限定されるものではない。例えば、ループアンテナを3つ以上設けてもよい。この場合は、より強い妨害磁界が発生するので、スキミングを一層効果的に防止することができる。また、複数のループアンテナから、異なる周波数の妨害磁界が発生するようにしてもよい。このようにすると、不正読取装置に作用する妨害磁界が複数の周波数成分を持つことになるので、フィルタリング処理を行っても妨害磁界を取り除くことが困難になり、データの不正取得をより確実に防止することができる。
【0100】
また、ループアンテナに透磁率の高いフェライトや鉄などの金属のコアを配置することで、磁界に指向性を持たせたり、より強い妨害磁界を発生させたりすることができる。
【0101】
また、以上の各実施形態においては、磁気記録媒体として、裏面に磁気ストライプのある磁気カードを例に挙げた。しかしながら、本発明は、磁気ストライプが表面もしくは表裏両面にある磁気カードを扱う磁気記録媒体読取装置にも適用することができる。
【0102】
また、以上の各実施形態においては、磁気記録媒体として磁気カードを例に挙げた。しかしながら、本発明は、磁気カードに限らず、磁気ストライプを有する通帳のような磁気記録媒体を読み取る装置にも適用することができる。