特許第5759568号(P5759568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5759568-RET阻害剤 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759568
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】RET阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20150716BHJP
   A61P 5/16 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20150716BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20150716BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A61K31/5377ZNA
   A61P5/16
   A61P11/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   G01N33/50 P
   G01N33/68
【請求項の数】26
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-548647(P2013-548647)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2013075621
(87)【国際公開番号】WO2014050781
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-211040(P2012-211040)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 達史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋
(72)【発明者】
【氏名】塚口 敏之
【審査官】 加藤 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/143664(WO,A1)
【文献】 Sakamoto H et al.,CH5424802, a selective ALK inhibitor capable of blocking the resistant gatekeeper mutant.,Cancer Cell.,2011年 5月17日,Vol.19 No.5,pp.679-690
【文献】 Mologni L,Development of RET kinase inhibitors for targeted cancer therapy.,Curr Med Chem.,2011年,Vol.18 No.2,pp.162-175
【文献】 Nature,2012年,Vol.486,p.400-406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5377
A61P 5/16
A61P 11/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 35/04
G01N 33/50
G01N 33/68
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質を有する腫瘍、および前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
【化1】

(式中、Rはエチル基である。)
【請求項2】
前記腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、神経膠腫、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌、皮膚癌、悪性黒色腫、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌、および該腫瘍から転移した腫瘍からなる群より選択される、請求項1に記載の治療および/または予防剤。
【請求項3】
前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である、請求項1に記載の治療および/または予防剤。
【請求項4】
前記腫瘍が甲状腺髄様癌または非小細胞肺癌である、請求項1に記載の治療および/または予防剤。
【請求項5】
式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質の融合タンパク質を有する患者に使用する、腫瘍、および前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
【化2】

(式中、Rはエチル基である。)
【請求項6】
前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である、請求項5に記載の治療および/または予防剤。
【請求項7】
前記化合物が塩酸塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の治療および/または予防剤。
【請求項8】
式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対する患者から得られた試料の感受性を予測する方法であって、以下の工程;
(1)患者から得られた試料におけるRETの変異の有無を確認する工程、
(2)RETの変異が存在する場合、式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対し、該患者から得られた試料が感受性を有すると決定する工程、
を含み、前記RETの変異が、RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成である、前記方法。
【化3】

(式中、Rはエチル基である。)
【請求項9】
式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対して感受性のある患者を決定あるいは同定するために、RETにおける変異の存在に関する情報を提供する方法であって、
患者から得られた試料中のRETにおける変異の存在を検出する工程を含み、前記RETにおける変異が、RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成である、前記方法。
【化4】

(式中、Rはエチル基である。)
【請求項10】
前記RETにおける変異が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子およびRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、請求項8、9または11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が甲状腺癌または肺癌の患者である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が甲状腺髄様癌または非小細胞肺癌の患者である、請求項8〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍が、腫瘍組織においてRETチロシンキナーゼの活性化が確認された腫瘍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の治療および/または予防剤。
【請求項16】
前記腫瘍が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異を有する腫瘍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の治療および/または予防剤。
【請求項17】
他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33の遺伝子およびタンパク質である、請求項1に記載の治療および/または予防剤。
【請求項18】
前記融合遺伝子およびタンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、請求項1または17に記載の治療および/または予防剤。
【請求項19】
式(I)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質を有する、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、神経膠腫、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌、皮膚癌、悪性黒色腫、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌、および該腫瘍から転移した腫瘍からなる群より選択される腫瘍、ならびに前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
【化5】

(式中、R1はエチルである。)
【請求項20】
前記患者が、腫瘍組織におけるRETチロシンキナーゼの活性化が確認された患者である、請求項5または6に記載の治療および/または予防剤。
【請求項21】
前記患者が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異を有する患者である、請求項5または6に記載の治療および/または予防剤。
【請求項22】
前記他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33である、請求項5に記載の治療および/または予防剤。
【請求項23】
前記融合遺伝子および融合タンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、請求項5または22に記載の治療および/または予防剤。
【請求項24】
式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質を有する患者に使用する、甲状腺癌または肺癌である腫瘍、および前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
【化6】

(式中、Rはエチルである。)
【請求項25】
RETを選択的に阻害する、請求項1〜7および16〜24のいずれか1項に記載の治療および/または予防剤。
【請求項26】
式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が選択的にRETを阻害する、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4環性化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を含む、RET阻害剤、RETチロシンキナーゼの阻害剤、RETに変異を有する癌、癌転移を含む疾患の予防または治療剤、その対象患者の同定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
Reaaranged during transfection(RET)は、カドヘリンスーパーファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼの一つである(Surgery,2007年,141巻,p.96−99)。RETチロシンキナーゼは、中央部に細胞膜貫通領域を有し、そのカルボキシル末端側にチロシンキナーゼ領域、アミノ末端側に細胞外領域を有する。カルボキシル末端のスプライシングの違いにより3種類のタンパク質が存在することが知られている(TRENDS in Genetics,2006年,22巻,p.627−636:文献a)。RETは、リガンド/GFR複合体を介して二量体を形成することで、自己のチロシンをリン酸化し活性化する(文献a)。
RET遺伝子に異常(点変異、染色体転座、染色体逆位、遺伝子増幅)が生じた結果、癌化に関与することが報告されている。例えば、甲状腺髄様癌では、RET遺伝子に点変異が生じることにより、癌化能を持ったRETチロシンキナーゼが発現していることが報告されている(文献a)。また、甲状腺乳頭癌では、RET遺伝子が染色体逆位もしくは染色体転座により他の遺伝子(coiled−coildomain containing 6(CCDC6)遺伝子やnuclear receptor coactivator 4(NCOA4)遺伝子など)と融合し、癌化能を持った融合型チロシンキナーゼRET/PTCが発現していることが報告されている(European journal of endocrinology,2006年,155巻,p.645−653)。さらに、非小細胞肺癌では、RETが細胞内の微小管輸送に関わるモーター蛋白質複合体の構成分子の一つであるkinesin family protein 5B(KIF5B)遺伝子やCCDC6遺伝子と融合し、癌化能を持った融合型チロシンキナーゼKIF5B−RETあるいはCCDC6−RETの恒常的なチロシンキナーゼ活性により非小細胞肺癌を引き起こすことが報告されている(Nature Medicine.2012年,18,p.378−381、WO2012/014795)。また、非小細胞肺癌の患者においてRET遺伝子がNCOA4遺伝子やTRIM33(tripartite motif−containing 33)遺伝子と融合した融合型チロシンキナーゼNCOA4−RET、TRIM33−RETが存在することが報告されている(J Clin Oncol,30(35),Dec 10,2012,p.4352−9、Cancer Discov 2013 Jun,3(6),Jun 2013,p.630−5)。
従って、RETチロシンキナーゼの阻害作用を有する化合物は癌の予防および治療に極めて有用である。
RETチロシンキナーゼ阻害物質としては、Sorafenib、Sunitinib、XL184、Vandetanib、PonatinibといったマルチキナーゼインヒビターがKIF5B−RETを発現する細胞株に対して細胞増殖阻害作用を示すことが報告されている(非特許文献1:J Clin Oncol 30, 2012, suppl; Abstract no: 7510)。また、マルチキナーゼインヒビターであるCabozantinibがRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者2人に対して部分奏功を示したことが報告されている(非特許文献2:Cancer Discov,3(6),Jun 2013,p.630−5)。
一方、インスリン受容体ファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼのAnaplastic Lymphoma Kinase(ALK)の阻害剤として以下の一般式を有する4環性化合物が報告されている(特許文献1:WO2010/143664、特許文献2:WO2012/023597、特許文献3:特開2012−126711)。当該化合物はALK遺伝子に変異を有する腫瘍の治療剤および/または予防剤として有用である。
【化1】

(置換基等は上記公報を参照)
また、以下の化合物が、Ambit Kinase Screening試験において高濃度(1,000nM)ではRETを含む多数のキナーゼを阻害することが報告されている(非特許文献3:Cancer cell,19(5),p.679−690,2011,Supplemental Information)。
【化2】

しかしながら、特許文献1および非特許文献3に記載の4環性化合物がRETに変異を有する癌の治療または予防剤として有用であることは報告されていない。
また、ALK阻害剤であるCrizotinibについては、KIF5B−RET発現細胞に対して細胞増殖阻害活性を有さないことが報告されている(非特許文献4:Nature Medicine.2012年,18,p.378−381)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/143664
【特許文献2】WO2012/023597
【特許文献3】特開2012−126711
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J Clin Oncol 30, 2012, suppl; Abstract no: 7510
【非特許文献2】Cancer Discov,3(6),Jun 2013,p.630−5
【非特許文献3】Cancer cell,19(5),p.679−690,2011,Supplemental Information
【非特許文献4】Nature Medicine.2012年,18,p.378−381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ALK遺伝子の変異により引き起こされる癌とRET遺伝子の変異により引き起こされる癌では、癌の発生機序、それぞれのキナーゼのタンパク質立体構造等が異なり、それぞれの癌に対して特定の治療および/または予防方法が必要とされている。肺癌において、ALK遺伝子に変異を有する患者群とRETに変異を有する患者群は重複しないことが報告されており(Nat Med,2012 Feb 12,18(3),375−7)、両患者群は治療上明確に区別され、それぞれの患者に対して特定の治療および/または予防方法が必要とされる。
一方、多数のキナーゼを同時に阻害する化合物は、その有効治療域が狭いことが原因で治療効果が低くなる場合があることが知られている。したがって、少数のキナーゼを選択的に阻害する薬物は治療効果の観点からも望ましい性質を有するといえ、このような薬物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、下記式(I)で表される4環性化合物、その塩、それらの溶媒和物が、ALK阻害活性の他、優れたRET阻害活性を有し、選択的にRETを阻害し、RETに変異を有する癌、癌転移を含む疾患の治療および予防に有用であり、かつこれらの疾患に対し優れた薬効を有することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【化3】
(I)
(式中、RはC1−6アルキル基である)
すなわち、本発明の1つの側面によれば、本発明は、以下に示す、4環性化合物またはその塩等を含有する、RETに変異を有する癌、癌転移等の治療または予防剤である。また、本発明の他の側面によれば、上記化合物等による治療が効果的な癌や対象患者の同定方法を提供する。
【0007】
具体的には、以下のとおりである。
[1] 式(I)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RETに変異を有する腫瘍、または前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
【化4】
(I)
(式中、RはC1−6のアルキル基である。)
[2] 前記腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、神経膠腫、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌、皮膚癌、悪性黒色腫、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌、および該腫瘍から転移した腫瘍からなる群より選択される、[1]に記載の治療および/または予防剤。
[3] 前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である、[1]〜[2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[4] 前記腫瘍が甲状腺髄様癌または非小細胞肺癌である、[1]〜[3]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[4−1]前記腫瘍が、腫瘍組織においてRETチロシンキナーゼの活性化が確認された腫瘍である、[1]〜[4]に記載の治療および/または予防剤。
[4−2]前記腫瘍が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異を有する腫瘍である、[1]〜[4]に記載の治療および/または予防剤。
[4−2−1]前記腫瘍が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質、を有する腫瘍である[1]〜[4−2]に記載の治療および/または予防剤。
[4−2−2]前記腫瘍が、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質を有する腫瘍である、[1]〜[4−2]に記載の治療および/または予防剤。
[4−2−3]前記腫瘍が、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RET、またはTRIM33−RETを有する腫瘍である、[1]〜[4−2]、または[4−2−2]に記載の治療および/または予防剤。
[4−3]前記腫瘍が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質、を有する腫瘍である、[1]〜[4−2]に記載の治療および/または予防剤。
【0008】
[5] 前記腫瘍がRET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質を有する腫瘍である、[1]〜[4−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[5−1]他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33の遺伝子およびタンパク質である、[5]に記載の治療および/または予防剤。
[5−2]前記融合遺伝子およびタンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、[5]または[5−1]に記載の治療および/または予防剤。
[5−2−1]RETタンパク質およびRET遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[5]〜[5−2]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:3または4で表されるアミノ酸からなるポリペプチド
(b)配列番号:3または4で表されるポリペプチドにおいて1または複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号:3または4で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチド
[5−2−2]KIF5B、CCDC6、NCOA4およびTRIM33のタンパク質および遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドのそれぞれが、以下に記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[5−1]または[5−2−1]に記載の治療および/または予防剤:
(1)KIF5Bのタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:30で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:30で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:30で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(2)CCDC6のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:31で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:31で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:31で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(3)NCOA4のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(4)TRIM33のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
[5−2−3]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[4−2−2]、[5]または[5−2]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列おいて、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド
(d)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(f)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド
[5−2−4]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[4−2−2]、[5]または[5−2]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、かつチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(d)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列を含み、かつRETチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(f)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
[5−3]前記融合遺伝子が、以下(a)〜(d)のいずれかである、[5−2]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列のポリヌクレオチドを含む融合遺伝子
(b)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる融合遺伝子
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子、または
(d)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドにおいて、1または複数(例えば、数十個、1−10個、1−5個、1−3個)のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたポリペプチドで、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子。
【0009】
[6] 前記腫瘍がRET遺伝子および/またはタンパク質に点変異を有する腫瘍である、[1]〜[4−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[6−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861T、または2943Tの塩基における変異である、[6]に記載の治療および/または予防剤。
[6−1−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、または2861Tの塩基における変異である、[6]または[6−1]に記載の治療および/または予防剤。
[6−2]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2494G、2600G、または2943Tの塩基における変異である、[6]または[6−1]に記載の治療および/または予防剤。
[6−3]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>Gまたは2943T>Cである、[6]または[6−1]に記載の治療および/または予防剤。
[6−3−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、または2861T>Gである、[6]、[6−1]または[6−3]に記載の治療および/または予防剤。
[6−4]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2494G>C、2600G>Aまたは2943T>Cである、[6]、[6−1]、[6−2]または[6−3]に記載の治療および/または予防剤。
[6−5]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[6]に記載の治療および/または予防剤。
[6−5−1] 前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、S891、またはA883のアミノ酸における変異である、[6]または[6−5]に記載の治療および/または予防剤。
[6−6]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、E768、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[6]または[6−5]に記載の治療および/または予防剤。
[6−7]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、V804M、V804L、S891AまたはM918Tである、[6]または[6−5]に記載の治療および/または予防剤。
[6−7−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、またはS891Aである、[6]、[6−5]、または[6−7]に記載の治療および/または予防剤。
[6−8]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、E768D、V804M、またはM918Tである、[6]または[6−6]に記載の治療および/または予防剤。
【0010】
[7] 式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RETに変異を有する患者に使用する、腫瘍、または前記腫瘍の転移の治療および/または予防剤。
[8] 前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である、[7]に記載の治療および/または予防剤。
[8−1]前記患者が、腫瘍組織におけるRETチロシンキナーゼの活性化が確認された患者である、[7]または[8]に記載の治療および/または予防剤。
[8−2]前記患者が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異を有する患者である、[7]または[8]に記載の治療および/または予防剤。
[8−2−1]前記患者が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質、を有する患者である[7]〜[8−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[8−2−2]前記患者が、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質を有する患者である、[7]〜[8−2−1]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[8−2−3]前記患者が、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RET、またはTRIM33−RETを有する患者である、[7]〜[8−2]、[8−2−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[8−3]前記患者が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質、を有する患者である、[7]〜[8−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[9] 前記患者がRET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質を有する患者である、[7]または[8]に記載の治療および/または予防剤。
[9−1]前記他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33である、[8−3]または[9]に記載の治療および/または予防剤。
[9−2]前記融合遺伝子および融合タンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、[9]または[9−1]に記載の治療および/または予防剤。
[9−2−1]RETタンパク質およびRET遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[9]〜[9−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:3または4で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号:3または4で表されるポリペプチドにおいて1または複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:3または4で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[9−2−2]KIF5B、CCDC6、NCOA4およびTRIM33のタンパク質および遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドのそれぞれが、以下に記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[9−1]に記載の治療および/または予防剤:
(1)KIF5Bのタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:30で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:30で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(c)配列番号:30で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(2)CCDC6のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:31で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:31で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:31で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(3)NCOA4のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(4)TRIM33のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
[9−2−3]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[8−2−2]または[9]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列おいて、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド
(d)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(f)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド。
[9−2−4]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[8−2−2]または[9]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、かつチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(d)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列を含み、かつRETチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(f)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド。
[9−3]前記融合遺伝子が、以下(a)〜(d)のいずれかである、[9]または[9−2]に記載の治療および/または予防剤:
(a)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列のポリヌクレオチドを含む融合遺伝子
(b)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる融合遺伝子
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子、または
(d)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドにおいて、1または複数(例えば、数十個、1−10個、1−5個、1−3個)のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたポリペプチドで、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子。
【0011】
[10] 前記患者がRET遺伝子および/またはタンパク質に点変異を有する患者である、[7]または[8]に記載の治療および/または予防剤。
[10−1]前記RETにおける点変異が、RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける点変異またはチロシンキナーゼドメインにおける点変異である、[10]に記載の治療および/または治療剤。
[10−2]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861Tまたは2943Tである、[10]または[10−1]に記載の治療および/または予防剤。
[10−2−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、または2861Tの塩基における変異である、[10]〜[10−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[10−3]前記RETにおける点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2494G、2600G、または2943Tの塩基における変異である、[10]〜[10−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[10−4]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>Gまたは2943T>Cである、[10]〜[10−2]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[10−4−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、または2861T>Gである、[10]〜[10−2]または[10−4]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[10−5]前記RETにおける点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2494G>C、2600G>A、または2943T>Cである、[10]〜[10−2]、[10−4]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[10−6]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[10]または[10−1]に記載の治療および/または予防剤。
[10−6−1] 前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、S891、またはA883のアミノ酸における変異である、[10]、[10−1]または[10−6]に記載の治療および/または予防剤。
[10−7]前記RETにおける点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、E768、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[10]、[10−1]または[10−6]に記載の治療および/または予防剤。
[10−8]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、V804M、V804L、S891AまたはM918Tである、[10]、[10−1]または[10−6]に記載の治療および/または予防剤。
[10−8−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、またはS891Aである、[10]、[10−1]、[10−6]または[10−8]に記載の治療および/または予防剤。
[10−9]前記RETにおける点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634Y、E768D、V804M、またはM918Tである、[10]、[10−1]または[10−6]〜[10−8]のいずれかに記載の治療および/または治療剤。
[10−10]前記患者が、サンガーシーケンス法またはFISH法によりRETにおける変異の存在を検出した患者である、[10]〜[10−9]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
【0012】
[11] Rがエチルである、[1]〜[10−10]のいずれかに記載の治療および/または予防剤。
[11−1]前記化合物が塩酸塩である、[1]〜[11]に記載の治療および/または予防剤。
[11−2]RETを選択的に阻害する、[1]〜[11−1]に記載の治療および/または予防剤。
[12] 式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、RET阻害剤。
[12−1]RETを阻害するための、式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の使用。
[12−2]式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の有効治療量を患者に投与することを含む、RETに変異を有する腫瘍、および前記腫瘍の転移を予防および/または治療する方法。
[12−3]RETに変異を有する腫瘍、および前記腫瘍の転移を予防および/または治療するための、式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の使用。
[12−3−1]前記RETにおける変異が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質、の形成である[12−3]に記載の使用。
[12−3−2]前記RETにおける変異が、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質の形成である、[12−3]または[12−3−1]に記載の使用。
[12−3−3]前記RETの変異が、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RET、またはTRIM33−RETの形成である、[12]〜[12−2−2]のいずれか1項に記載の使用。
[12−3−4]式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が選択的にRETを阻害する、[12−3]〜[12−3−3]のいずれかに記載の使用。
[12−3−5]Rがエチルである、[12−3]〜[12−3−4]のいずれかに記載の使用。
[12−3−6]前記化合物が、塩酸塩である、[12−3]〜[12−3−5]のいずれかに記載の使用。
[12−3−7]前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である、[12−3]〜[12−3−6]のいずれかに記載の使用。
【0013】
[13] 式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の投与対象を同定するための方法であって、前記対象由来の組織においてRETの変異を検出する工程を含む方法。
[13−1]前記組織がRETチロシンキナーゼの活性化を確認した組織である[13]に記載の方法。
[13−2]前記組織がRETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異を有する[13]に記載の方法。
[13−2−1]前記RETにおける変異が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質の形成である[13]〜[13−2]のいずれか1項に記載の方法。
[13−2−2]前記RETにおける変異が、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質の形成である、[13]〜[13−2−1]のいずれかに記載の方法。
[13−2−3]前記RETの変異が、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RET、またはTRIM33−RETの形成である、[13]〜[13−2−2]のいずれかに記載の方法。
[13−3]前記組織が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質を有する、[13]〜[13−2]のいずれかに記載の方法。
[13−4]RETの変異がRET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパクの形成である、[13]〜[13−3]のいずれかに記載の方法。
[13−5]他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33である、[13−4]に記載の方法。
[13−6]前記融合遺伝子および融合タンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、[13−5]に記載の方法。
[13−6−1]RETタンパク質およびRET遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[13−4]〜[13−6]のいずれかに記載の方法。
(a)配列番号:3または4で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号:3または4で表されるポリペプチドにおいて1または複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:3または4で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[13−6−2]KIF5B、CCDC6、NCOA4およびTRIM33のタンパク質および遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドのそれぞれが、以下に記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[13−5]に記載の方法:
(1)KIF5Bのタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:30で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:30で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:30で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(2)CCDC6のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:31で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:31で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:31で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(3)NCOA4のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(4)TRIM33のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
[13−6−3]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[13−2−1]、[13−2−2]、[13−3]または[13−4]に記載の方法:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列おいて、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド
(d)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(f)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド。
[13−6−4]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[13−2−1]、[13−2−2]、[13−3]、[13−4]または[13−6−3]に記載の方法:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、かつチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(d)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列を含み、かつRETチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(f)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド。
[13−7]前記融合遺伝子が、以下(a)〜(d)のいずれかである、[13−6]に記載の方法:
(a)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列のポリヌクレオチドを含む融合遺伝子
(b)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる融合遺伝子
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子または
(d)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペオプチドにおいて、1または複数(例えば、数十個、1−10個、1−5個、1−3個)のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたポリペプチドで、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子。
[13−8]前記組織がRETに点変異を有する、[13]〜[13−2]に記載の方法。
[13−9]前記組織がRETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインまたはチロシンキナーゼドメインに点変異を有する、[13−8]に記載の方法。
【0014】
[13−10]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861T、または2943Tの塩基における変異である、[13−8]または[13−9]に記載の方法。
[13−10−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、または2861Tの塩基における変異である、[13−8]〜[13−10]のいずれかに記載の方法。
[13−11]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2494G、2600Gまたは2943Tにおける塩基の変異である、[13−8]〜[13−10]のいずれかに記載の方法。
[13−12]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>Gまたは2943T>Cである、[13−8]〜[13−10]のいずれかに記載の方法。
[13−12−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、または2861T>Gである、[13〜8]〜[13−10]、[13−12]のいずれかに記載の方法。
[13−13]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける、2091G>T、2494G>C、2600G>Aまたは2943T>Cである、[13−8]〜[13−12]のいずれかに記載の方法。
[13−14]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[13−8]または[13−9]に記載の方法。
[13−14−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、S891、またはA883のアミノ酸における変異である、[13−8]、[13−9]または[13−14]に記載の方法。
[13−15]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、E768、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[13−8]、[13−9]または[13−14]に記載の方法。
[13−16]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、V804M、V804L、S891AまたはM918Tである、[13−8]、[13−9]または[13−14]に記載の方法。
[13−16−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、またはS891Aである、[13−8]、[13−9]または[13−14]に記載の方法。
[13−17]RETにおける点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634Y、E768D、V804MまたはM918Tである、[13−8]〜[13−16]のいずれかに記載の方法。
[13−18]RETに変異を有する腫瘍、または前記腫瘍の転移の治療および/または予防のための、式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の投与対象を同定する、[13]〜[13−17]のいずれかに記載の方法。
[13−19]前記腫瘍が甲状腺癌または肺癌である[13]〜[13−18]のいずれかに記載の方法。
[13−20]式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が選択的にRETを阻害する、[13]〜[13−19]のいずれかに記載の方法。
[13−21]Rがエチルである、[13]〜[13−20]のいずれかに記載の方法。[13−22]式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が、式(I)の化合物の塩酸塩である、[13]〜[13−21]のいずれかに記載の方法。
【0015】
[14] RETにおける変異を有する患者を特定し、当該患者に式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の有効治療量を患者に投与することを含む、RETに変異を有する腫瘍、および前記腫瘍の転移を予防および/または治療する方法。
[15] 式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対して感受性のある患者を同定あるいは予備的に同定する方法であって、
前記患者から得られた試料中のRETにおける変異の存在を検出する工程、および
前記腫瘍中のRETにおける変異の存在に基づき、前記患者が前記化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対して感受性を有する患者であると決定あるいは予備的に決定する工程を含む、前記方法。
[15−1]さらに、RETチロシンキナーゼの活性化を検出する工程を含む、[15]に記載の方法。
[15−2]前記RETにおける変異が、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異である、[15]に記載の方法。
[15−2−1]前記RETにおける変異が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質の形成、である[15]〜[15−2]のいずれかに記載の方法。
[15−2−2]前記RETにおける変異が、RETの融合遺伝子および/またはRETの融合タンパク質の形成である、[15]〜[15−2−1]のいずれかに記載の方法。
[15−2−3]前記RETにおける変異が、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RETまたはTRIM33−RETの形成である、[15]〜[15−2−2]に記載の方法。
[15−3]前記RETにおける変異が、(a)RETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインにおける変異、(b)RETチロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインにおける変異、または(c)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成である、[15]〜[15−2]のいずれかに記載の方法。
[15−4]前記RETにおける変異が、RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子および/またはRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成である、[15]〜[15−3]のいずれかに記載の方法。
[15−5]他の遺伝子およびタンパク質がKIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33である、[15−4]に記載の方法。
[15−6]前記RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子およびRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質が、RET遺伝子またはタンパク質のチロシンキナーゼドメイン、および他の遺伝子またはタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、[15−4]または[15−5]に記載の方法。
[15−6−1]RETタンパク質およびRET遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[15−4]〜[15−6]のいずれか1項に記載の方法:
(a)配列番号:3または4で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号:3または4で表されるポリペプチドにおいて1または複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:3または4で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[15−6−2]KIF5B、CCDC6、NCOA4およびTRIM33のタンパク質および遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドのそれぞれが、以下に記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[15−5]に記載の方法:
(1)KIF5Bのタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:30で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:30で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:30で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(2)CCDC6のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:31で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:31で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:31で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(3)NCOA4のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
(4)TRIM33のタンパク質を構成するポリペプチドは、
(a)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(c)配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
[15−6−3]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[15−2−1]、[15−2−2]、[15−3]または[15−4]に記載の方法:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列おいて、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド
(d)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(f)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸を含むポリペプチド。
[15−6−4]前記融合タンパク質および融合遺伝子を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、以下(a)〜(f)のいずれかに記載のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである、[15−2−1]、[15−2−2]、[15−3]または[15−4]に記載の方法:
(a)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、かつチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(d)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列を含み、かつRETチロシンキナーゼが活性化したポリペプチド、あるいは配列番号:27または28で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
(f)配列番号:27または28から選択されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸を含み、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド。
[15−6−5]前記融合遺伝子が、以下(a)〜(d)のいずれかである、[15−3]または[15−4]に記載の方法:
(a)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列のポリヌクレオチドを含む融合遺伝子
(b)配列番号:5〜14からなる群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる融合遺伝子
(c)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子、または
(d)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列のポリペオプチドにおいて、1または複数(例えば、数十個、1−10個、1−5個、1−3個)のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたポリペプチドで、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合遺伝子。
[15−7]前記RETにおける変異が点変異である、[15]〜[15−2]のいずれかに記載の方法。
[15−8]前記点変異がRETチロシンキナーゼのシステインリッチドメインまたはチロシンキナーゼドメインにおける点変異である、[15−7]に記載の方法。
[15−9]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861T、または2943Tの塩基における変異である、[15−7]または[15−8]に記載の方法。
[15−9−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、または2861Tの塩基における変異である、[15−7]〜[15−9]に記載の方法。
[15−10]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2494G、2600Gまたは2943Tの塩基における変異である、[15−7]〜[15−9]のいずれかに記載の方法。
[15−11]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>Gまたは2943T>Cである、[15−7]〜[15−9]のいずれかに記載の方法。
[15−11−1]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドにおける2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、または2861T>Gである、[15−7]〜[15−9−1]または[15−11]に記載の方法。
[15−12]前記点変異が、配列番号:1により表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G>T、2494G>C、2600G>Aまたは2493T>Cである、[15−7]〜[15−11]のいずれかに記載の方法。
[15−13]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、V804、S891、A883、またはM918のアミノ酸における変異である、[15−7]または[15−8]に記載の方法。
[15−13−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、S891、またはA883のアミノ酸における変異である、[15−7]、[15−8]または[15−13]に記載の方法。
[15−14]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、E768、V804、S891、A883またはM918のアミノ酸における変異である、[15−7]、[15−8]または[15−13]に記載の方法。
[15−15]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、V804M、V804L、S891AまたはM918Tである、[15−7]、[15−8]または[15−13]に記載の方法。
[15−15−1]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドにおけるC634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、またはS891Aである、[15−7]、[15−8]、[15−13]または[15−15]に記載の方法。
[15−16]前記点変異が、配列番号:3により表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC634W、C634Y、E768D、V804MまたはM918Tである、[15−7]〜[15−15]のいずれかに記載の方法。
[15−17]前記患者が甲状腺癌または肺癌の患者である、[15]〜[15−16]のいずれかに記載の方法。
[15−18]前記患者が甲状腺髄様癌または非小細胞肺癌の患者である、[15]〜[15−17]のいずれかに記載の方法。
[15−19]式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が選択的にRETを阻害する、[15]〜[15−18]のいずれかに記載の方法。
[15−20]Rがエチルである、[15]〜[15−18]のいずれかに記載の方法。
[15−21]前記化合物が塩酸塩である、[15]〜[15−19]のいずれかに記載の方法。
[16]式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対する患者の感受性を予測する方法であって、以下の工程;
(1)患者から得られた試料におけるRETの変異の有無を確認する工程、
(2)RETの変異が存在する場合、式(I)の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物に対する該患者の感受性を有すると決定あるいは予備的に決定する工程、
を含む前記方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の治療剤および/または予防剤は、優れたRET阻害作用、特にRETチロシンキナーゼ阻害作用を有し、増殖性疾患の予防剤または治療剤(特に治療剤)として有用である。また、本発明の有効成分は、白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など)、脳腫瘍、神経芽細胞腫、神経膠腫、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌、皮膚癌、悪性黒色腫、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌のような種々の癌などの疾患の予防剤または治療剤(特に治療剤)として有用である。さらに本発明の有効成分は、固形癌の浸潤・転移の予防剤または治療剤(特に治療剤)として有用である。
また、本発明によれば、RETに変異を有する癌または患者を同定することができ、そのような患者に対し、式(I)で示される化合物等により効果的に治療等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はCCDC6-RET融合遺伝子を有するゼノグラフトマウスモデルを用いた化合物1の抗腫瘍活性を示す(実施例6)。
【本発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の治療または予防剤、その製法等について説明する。
定義
本発明において、「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状および分枝鎖状の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基である。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2,3−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。好ましくはC1−6アルキル基であり、より好ましくはC1−5アルキル基であり、より好ましくはC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはC1−3アルキル基である。
【0019】
本発明において、「RETに変異を有する」、「RETにおける変異」、「RETの変異」とは、RET遺伝子および/またはRETタンパク質に変異が生じていることを意味する。本発明において、用語「RETに変異を有する」、「RETにおける変異」には、RET遺伝子および/またはRETタンパク質に点変異、欠失変異、挿入変異が生じていること、RET遺伝子が転座・逆位により他の遺伝子と融合していること、およびRETタンパク質が他のタンパク質と融合し、融合タンパク質が形成されていることが含まれる。さらに、用語「RETに変異を有する」、「RETにおける変異」、「RETの変異」には、RET遺伝子の切断および再結合、RET遺伝子の修復機能の破壊等により正常の状態よりゲノム上のDNA領域が増え、RET遺伝子の増幅および/またはRETタンパク質の増幅が引き起こされることが含まれる。
本発明において、「RET遺伝子」は、RET(Rearranged during transfenction)チロシンキナーゼをコードする遺伝子を意味する。本発明のRET遺伝子は、如何なる由来のRET遺伝子を意味する。具体的には、配列番号:1または2により表される塩基配列からなるポリヌクレオチドから構成される遺伝子、配列番号:3または4により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがあげられるが、これらに限定されない
【0020】
本発明において、「RETタンパク質」は、RETチロシンキナーゼを構成するアミノ酸からなるタンパク質を意味する。本発明のRETタンパク質は、如何なる由来のRETタンパク質を意味する。具体的には、配列番号:3または4により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成されるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。RETチロシンキナーゼには、カルボキシル末端のスプライシングの違いによりRET9、RET43、RET51の3種類のタンパク質が存在することが知られている(TRENDS in Genetics, 2006年,22巻,p.627−636)が、これら3種類のタンパク質を構成するアミノ酸からなるポリペプチドも、「RETタンパク質」に含まれる。
【0021】
さらに、本発明において、RET遺伝子およびRETタンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
・配列番号:3または4で表されるポリペプチドにおいて1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個のアミノ酸)アミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
・配列番号:3または4で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
本発明において、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、特定のポリペプチドをコードし得るいかなるポリヌクレオチドをも包含し、ゲノミックDNAまたはcDNAのいずれをも包含する。また、該ポリヌクレオチドは、同一のアミノ酸をコードするコドンであればどのようなコドンから構成される縮重ポリヌクレオチドをも含む。
【0022】
本発明において、アミノ酸配列の同一性は、比較対象の少なくとも2つの配列を適切に整列させ、それぞれの配列に存在する同一のアミノ酸残基を決定して、適合部位の数を決定し、ついで、比較対象の配列領域内の残基の総数で、前記適合部位の数を割、得られた数値に100をかけることにより算出することができる。例えば、配列番号:3により表されるアミノ酸配列と特定のアミノ酸配列の同一性を算出する場合、配列番号:3により表されるアミノ酸配列と該特定のアミノ酸配列との2つの配列について、前記の方法により適合部位の数を決定し、ついで、配列番号:3により表されるアミノ酸配列の残基の総数で、前記適合部位の数を割、得られた数値に100をかけることにより算出することができる。
【0023】
また、アミノ酸配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:5873-7)によっても決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al.,J.Mol.Biol.(1990)215:403-10)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(NCBI (National Center for Biotechnology Information)の BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)のウェブサイトの情報を参照することができる)。
【0024】
本発明において、「ハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな条件下で標的DNA、ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを意味する。ストリンジェントな条件は、常法に従って複合体を形成する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。具体的には、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/ml鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件である。よりストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/ml鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件である。
【0025】
用語「RETに変異を有する」、「RETにおける変異」、「RETの変異」には、RET遺伝子および/またはRETタンパク質において、RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異が生じていること、RETチロシンキナーゼを活性化させ、癌化(例えば甲状腺癌、肺癌)を誘発する変異が生じていること、が含まれる。RETチロシンキナーゼの活性化は、腫瘍組織におけるリン酸化RETを抗リン酸化RET抗体による免疫染色などで検出することにより確認することができる。
本発明において、用語「RETチロシンキナーゼの活性化」、「RETチロシンキナーゼが活性化していること」とは、RETチロシンキナーゼに含まれるアミノ酸残基、例えばチロシン残基がリン酸化されていることを意味し、被験者(例えば被験者から採取した試料)におけるリン酸化RETチロシンキナーゼタンパク質の量が(例えば健常者と比較して)増大することが含まれる。さらに、用語「RETチロシンキナーゼの活性化」、「RETチロシンキナーゼが活性化していること」には、RETチロシンキナーゼのリン酸化によりRETチロシンキナーゼが標的とするタンパク質(以下標的タンパク質)がリン酸化されることが含まれる。用語「RETチロシンキナーゼの活性化」、「RETチロシンキナーゼが活性化していること」には、リン酸化RETチロシンキナーゼタンパク質の他、リン酸化された前記標的タンパク質の量が増大することが含まれる。
本発明において、「チロシンキナーゼ活性を有する」とは、チロシンキナーゼに含まれるアミノ酸残基、例えばチロシン残基をリン酸化する酵素としての活性を有することを意味する。RETタンパク質を構成するポリペプチドがチロシンキナーゼ活性を有することは、例えば、前述の方法により確認することができる。さらに、用語「チロシンキナーゼ活性を有する」には、標的とするタンパク質のアミノ酸残基をリン酸化する酵素としての活性を有することが含まれる。
【0026】
RETチロシンキナーゼの活性化を引き起こす変異として、(1)RETのシステインリッチドメインにおける変異、(2)RETのチロシンキナーゼドメインにおける変異、(3)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子やRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成、が報告されている(TRENDS in Genetics, 2006年,22巻,p.627−636)。ヒトのRET遺伝子は10番染色体(10q11.2)に位置し、21個のエキソンからなる。「RETのシステインリッチドメイン」とは、RETチロシンキナーゼにおけるシステインに富む領域であり、当該ドメインをコードするポリヌクレオチドはエキソン10および11に位置する。「RETのチロシンキナーゼドメイン」とは、RETチロシンキナーゼにおけるチロシンキナーゼ活性を有する領域であり、当該ドメインをコードするポリヌクレオチドはエキソン12〜18に位置する(TRENDS in Genetics, 2006年,22巻,p.627−636)。
【0027】
前記(1)〜(3)の変異の具体例としては、以下のものがあげられる。本発明において、用語「RETに変異を有する」、「RETにおける変異」には、RET遺伝子および/またはRETタンパク質においてこれら(1)〜(3)に記載のいずれかの変異が生じていることが含まれる。
(1)システインリッチドメインの変異
配列番号:3により表されるアミノ酸配列のC609、C611、C618、C620、C630、C634等における変異(例えば、C634W、C634Y)
(2)チロシンキナーゼドメインの変異
配列番号:3により表されるアミノ酸配列のE768、V804、S891、A883、M918等における変異(例えば、E768D、V804M、V804L、M918T)
(3)RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子やRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質の形成
・KIF5BのコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むKIF5B−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・CCDC6のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むCCDC6−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・NCOA4のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むNCOA4−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・TRIM33のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むTRIM33−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
【0028】
本発明において「KIF5Bの遺伝子」、「KIF5B遺伝子」はKIF5B(Kinesin family protein 5B)をコードする遺伝子を、「KIF5Bのタンパク質」、「KIF5Bタンパク質」はKIF5Bを構成するアミノ酸からなるタンパク質を意味し、如何なる由来のKIF5Bの遺伝子、タンパク質を意味する。KIF5Bの遺伝子、およびタンパク質を構成するポリヌクレオチド、ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:29により表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:30により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、KIF5B遺伝子およびKIF5Bタンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
・配列番号:30で表されるアミノ酸配列において1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
・配列番号:30で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸配列からなるポリペプチド
【0029】
ヒトのKIF5B遺伝子は染色体10番染色体に位置し26個のエキソンからなる。KIF5B−RET融合遺伝子の塩基配列としては、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14により表されるものがあげられるが、これらに限定されない。KIF5B−RET融合タンパク質のアミノ酸配列としては、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24により表されるものがあげられるが、これらに限定されない。これらのKIF5B−RET融合遺伝子および融合タンパク質は、KIF5BのコイルドコイルドメインおよびRETのキナーゼドメインを含むことが報告されている(Nature Medicine.2012年,18,p.378−381、Nature Medicine.2012年,18,p.382−384)。本発明において、KIF5B−RET融合遺伝子および融合タンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、上記の他、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
(i)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列おいて、1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(ii)配列番号:15〜24からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸を含むポリペプチド
(iii)(i)または(ii)に記載のポリペプチドであって、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
【0030】
本発明において、「CCDC6の遺伝子」、「CCDC6遺伝子」はCCDC6(coiled−coil domain containing 6)をコードする遺伝子を、「CCDC6のタンパク質」、「CCDC6タンパク質」はCCDC6を構成するアミノ酸からなるタンパク質を意味し、如何なる由来のCCDC6の遺伝子、タンパク質を意味する。CCDC6の遺伝子、およびタンパク質を構成するポリヌクレオチド、ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:31により表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:32により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、CCDC6遺伝子およびCCDC6タンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
・配列番号:31で表されるアミノ酸配列において1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
・配列番号:31で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
ヒトのCCDC6は10番染色体に位置し、9個のエキソンからなる。
CCDC6−RET融合遺伝子の塩基配列としては、配列番号:25および26により表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。CCDC6−RET融合タンパク質のアミノ酸配列としては、配列番号:27および28により表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。これらのCCDC6−RET融合遺伝子および融合タンパク質は、CCDC6のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むことが報告されている(Nat Med.2012 Feb 12;18(3):378−81)。
上記の他、CCDC6−RET融合遺伝子および融合タンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
(i)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは、配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列おいて、1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が、置換、欠失または挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
(ii)配列番号:27または28により表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸を含むポリペプチド
(iii)(i)または(ii)に記載のポリペプチドであって、チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド
【0031】
本発明において、「NCOA4の遺伝子」、「NCOA4遺伝子」はNCOA4(nuclear receptor coactivator 4)をコードする遺伝子を、「NCOA4のタンパク質」、「NCOA4タンパク質」はNCOA4を構成するアミノ酸からなるタンパク質を意味し、如何なる由来のNCOA4の遺伝子、タンパク質を意味する。NCOA4の遺伝子、およびタンパク質を構成するポリヌクレオチド、ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:33〜37からなる群より選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、NCOA4の遺伝子およびタンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
・配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
・配列番号:38〜42からなる群より選択されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸配列からなるポリペプチド
ヒトのNCOA4は10番染色体に位置する。NCOA4−RET融合遺伝子として、NCOA4のエキソン6がRETのエキソン12と融合した遺伝子が報告されている。この融合遺伝子および融合タンパク質は、NCOA4のコイルドコイルドメインとRETのチロシンキナーゼドメインを含むことが報告されている(J Clin Oncol,30(35),Dec 10,2012,p.4352−9)。
【0032】
本発明において、「TRIM33の遺伝子」、「TRIM33遺伝子」はTRIM33(tripartite motif−containing 33)をコードする遺伝子を、「TRIM33のタンパク質」、「TRIM33タンパク質」はTRIM33を構成するアミノ酸からなるタンパク質を意味し、如何なる由来のTRIM33の遺伝子、タンパク質を意味する。TRIM33の遺伝子、およびタンパク質を構成するポリヌクレオチド、ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:43または44により表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:45または46により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、TRIM33の遺伝子およびタンパク質を構成するポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、以下のポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
・配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列において1または複数の(好ましくは1〜10個のアミノ酸、特に好ましくは1〜5個の)アミノ酸が置換、欠失若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
・配列番号:45または46で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であるアミノ酸配列からなるポリペプチド
【0033】
ヒトのTRIM33は1番染色体に位置する。TRIM33−RET融合遺伝子として、TRIM33のエキソン14がRETのエキソン12と融合した遺伝子が報告されている。この融合遺伝子および融合タンパク質は、TRIM33のコイルドコイルドメインとRETのチロシンキナーゼドメインを含むことが報告されている(Cancer Discov,3(6),Jun 2013,p.630−5)。
コイルドコイルドメインは、タンパク質の二量体形成に関わるドメインである。そのため、KIF5B−RET、CCDC6−RET、NCOA4−RET、TRIM33−RETは、それらのコイルドコイルドメインにより二量体形成すると考えられている。これらのタンパク質は、それらのコイルドコイルドメイン間の二量体形成により、RETチロシンキナーゼの異常な活性化を引き起こし、癌化を誘発すると考えられている(Nature Medicine.2012年,18,p.378−381、Nature Medicine.2012年,18,p.382−384、J Clin Oncol,30(35),Dec 10,2012,p.4352−9、Cancer Discov 2013 Jun,3(6),Jun 2013,p.630−5)。
【0034】
甲状腺癌(例えば甲状腺髄様癌)におけるRETタンパク質の変異の例としては、配列番号:3により表されるアミノ酸配列(RETのアミノ酸配列)におけるC634W、C634Y、E768D、V804M、V804L、M918Tの変異があげられる。ここで、「C634W」、「C634Y」、「E768D」、「V804M」、「V804L」、「M918T」は、特定の位置を表す数字の前後に変異前と変異後のアミノ酸の一文字記号を並べた、アミノ酸の変異を表す表現である。例えば、「C634W」は、特定のアミノ酸配列のN末端から634番目のアミノ酸がCysからTrpへ置換されていることを意味する。すなわち、数字は特定のアミノ酸配列のN末端から数えたアミノ酸の位置を表し、その前に記載されるアミノ酸の一文字記号は置換前のアミノ酸、そのあとに記載されるアミノ酸の一文字記号は置換後のアミノ酸を表す。
【0035】
前記変異に対応するRET遺伝子の変異としては、配列番号:1により表される塩基配列(RETの塩基配列)における2091G>T、2494G>C、2600G>A、2600G>C、2943T>Cの変異があげられる。ここで、「2091G>T」、「2494G>C」、「2600G>A」、「2600G>C」、「2943T>C」は、特定の位置を表す数字の後に変異前と変異後の塩基を並べた、ヌクレオチドの変異を表す表現である。例えば、「2091G>T」は、特定の塩基配列の5’末端から2091番目の塩基がGからTへ置換されていることを意味する。すなわち、数字は特定の塩基配列の5’末端から数えた塩基の位置を示し、当該数字の後ろかつ記号「>」の前に記載された塩基は置換前の塩基、記号「>」のあとに記載される塩基は置換後の塩基を表す。
肺癌(例えば非小細胞肺癌)における、RETにおける変異の例としては、KIF5B−RET融合遺伝子および/またはタンパク質、CCDC6−RET融合遺伝子および/またはタンパク質、NCOA4−RET融合遺伝子および/またはタンパク質、TRIM33−RET融合遺伝子および/またはタンパク質の形成、等があげられる。具体的には以下のものがあげられるが、これらに限定されない。
・KIF5BのコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むKIF5B−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・CCDC6のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むCCDC6−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・NCOA4のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むNCOA4−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
・TRIM33のコイルドコイルドメインおよびRETのチロシンキナーゼドメインを含むTRIM33−RET融合遺伝子および/または融合タンパク質の形成
【0036】
本発明において、「RETの融合遺伝子」、「RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子」とは、RET遺伝子の全部又は一部と他の遺伝子(例えば、KIF5B遺伝子、CCDC6遺伝子、NCOA4遺伝子)の全部又は一部とが融合した遺伝子のことをいう。
本発明において、「KIF5B−RET融合遺伝子」とはRET遺伝子の全部又は一部とKIF5B遺伝子の全部又は一部とが融合した遺伝子のことを、「CCDC6−RET融合遺伝子」とはRET遺伝子の全部又は一部とCCDC6遺伝子の全部又は一部とが融合した遺伝子のことを、「NCOA4−RET融合遺伝子」とは、RET遺伝子の全部又は一部とNCOA4遺伝子の全部又は一部とが融合した遺伝子のことを、「TRIM33−RET融合遺伝子」とはRET遺伝子の全部又は一部とTRIM33遺伝子の全部又は一部とが融合した遺伝子のことをいう。
本発明において、「RETの融合タンパク質」、「RETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質」とは、RETタンパク質の全部又は一部と他のタンパク質(例えば、KIF5Bタンパク質、CCDC6タンパク質、NCOA4タンパク質、TRIM33タンパク質)の全部又は一部とが融合したタンパク質のことをいう。
【0037】
本発明において、「KIF5B−RET融合タンパク質」とはRETタンパク質の全部又は一部とKIF5Bタンパク質の全部又は一部とが融合したタンパク質のことを、「CCDC6−RET融合タンパク質」とはRETタンパク質の全部又は一部とCCDC6タンパク質の全部又は一部とが融合したタンパク質のことを、「NCOA4−RET融合タンパク質」とはRETタンパク質の全部又は一部とNCOA4タンパク質の全部又は一部とが融合したタンパク質のことを、「TRIM33−RET融合タンパク質」とは、RETタンパク質の全部又は一部とTRIM33タンパク質の全部又は一部とが融合したタンパク質のことをいう。
本発明において、「KIF5B−RET」とはKIF5B−RET融合遺伝子および/またはKIF5B−RET融合タンパク質を、「CCDC6−RET」とはCCDC6−RET融合遺伝子、および/またはCCDC6−RET融合タンパク質を、「NCOA4−RET」とはNCOA4−RET融合遺伝子および/またはNCOA4−RET融合タンパク質を、「TRIM33−RET」とはTRIM33−RET融合遺伝子および/またはTRIM33−RET融合タンパク質を、意味する。
「RETに変異を有する腫瘍」とは、腫瘍細胞中のRET遺伝子および/またはタンパク質に変異を有する腫瘍を意味する。
【0038】
「治療剤」とは、対象疾患に対し、対象疾患を直接的・間接的に改善あるいは悪化を防止する薬剤を意味する。具体的には、腫瘍組織の増殖抑制、縮小効果、転移の抑制、腫瘍マーカーの減少、患者の全身症状の改善、生存期間の延長等に用いられる薬剤を意味する。
「予防剤」とは、対象疾患に罹患する可能性のある患者に、対象疾患を発症しないように予め処置するために用いられる薬剤を意味する。
「当該腫瘍の転移」とは、当該原発腫瘍が他の組織に転移することを意味する。「当該腫瘍の転移」の治療剤とは、当該腫瘍の転移を阻害・抑制する薬剤、または転移により再発した腫瘍の増殖を抑制、縮小する薬剤を意味する。「当該腫瘍の転移」の予防剤とは、当該腫瘍が転移あるいは転移して再発しないように予め処置するために用いられる薬剤を意味する。
【0039】
「腫瘍から転移した腫瘍」とは、原発腫瘍として列挙された腫瘍が、他の組織に転移して発現する腫瘍を意味する。
「投与対象」とは、薬剤の作用機序に基づき、当該薬剤による治療効果が期待できる対象を意味する。具体的には、増殖性疾患を有する患者における、腫瘍組織の増殖抑制、縮小効果、転移の抑制、腫瘍マーカーの減少、患者の全身症状の改善等が期待できる患者を意味する。
「対象由来の組織」とは、患者などの対象から採取した血液、肺胞、生検された試料、喀痰試料などに含まれる組織を意味する。
「RETに変異を有する患者」とは、患者から採取された腫瘍または、非腫瘍組織のいずれかに、RET遺伝子および/またはタンパク質に変異を有することを意味する。
【0040】
「RET阻害剤」とは、RETキナーゼの活性を阻害する薬剤を意味し、好ましくはRETキナーゼに結合し、当該活性を阻害する作用を有する薬剤である。
「RETを選択的に阻害する」とは、ALKを除く他の多数のキナーゼ(例えば、ABL、EGFR、FGFR2、HER2、IGF1R、JAK1、KIT、MET、AKT1、MEK1)に対する阻害活性とRETチロシンキナーゼに対する阻害活性についてIC50値で比較した際に、RETチロシンキナーゼに対する阻害活性が高いことを意味する。
「予備的に決定」、「予備的に同定」とは、感受性のある患者を決定あるいは同定するために、RETにおける変異の存在に関する情報を提供することを意味する。
【0041】
本発明において、式(I)で表される化合物の塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩、または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。好ましくは塩酸塩、メタンスルホン酸塩、が挙げられ、より好ましくは塩酸塩である。
これらの塩は、当該化合物と、医薬品の製造に使用可能である酸または塩基とを接触させることにより製造される。
本発明において式(I)で表される化合物またはその塩は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。ここでいう「溶媒和」とは、溶液中で溶質分子あるいはイオンがそれに隣接している溶媒分子を強く引き付け、一つの分子集団をつくる現象をいい、例えば溶媒が水であれば水和という。溶媒和物は水和物、非水和物のいずれであってもよい。非水和物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。
【0042】
また本発明に用いられる化合物およびその塩には、いくつかの互変異性形態、例えばエノール及びイミン形態、ケト及びエナミン形態、並びにそれらの混合物で存在することができる。互変異性体は、溶液中で、互変異性セットの混合物として存在する。固体の形態では、通常、一方の互変異性体が優勢である。一方の互変異性体を記載することがあるが、本発明には、本発明に用いられる化合物の全ての互変異性体が含まれる。
本発明には、式(I)で表される化合物の全ての立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー(シス及びトランス幾何異性体を含む。))、前記異性体のラセミ体、およびその他の混合物が含まれる。例えば、本発明に用いられる化合物は、式(I)は1以上の不斉点を有していてもよく、本発明には、そのような化合物のラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、およびエナンチオマーが含まれる。
本発明に係る化合物がフリー体として得られる場合、当該化合物が形成していてもよい塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物の状態に、常法に従って変換することができる。
また、本発明に係る化合物が、当該化合物の塩、水和物、または溶媒和物として得られる場合、化合物のフリー体に常法に従って変換することができる。
【0043】
また、本発明に用いられる物質には、式(I)の化合物のプロドラッグも含まれる。ここで、「プロドラッグ」とは、投与後に、生理条件下、酵素的または非酵素的分解によって、式(I)の化合物または製薬上許容されうるそれらの塩に変換される、式(I)の化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、患者に投与されたときには不活性であってもよいが、生体内では活性のある式(I)の化合物に変換されて存在するものである。
例えば、プロドラッグは、特定のpHになった時、あるいは酵素の作用によって所望の薬物形態に転化する。
【0044】
代表的製造方法
本発明の治療または予防剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、国際公開WO2010/143664号パンフレットに記載の方法に従って製造することができるが、式(I)で表せる化合物の製造方法はこれらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の治療および/または予防剤
本発明でいう「治療および/または予防剤」とは、治療、予防、又は治療及び予防のために用いられる薬剤を指し、具体的には前記対象疾患の治療、予防、病態の進展抑制(悪化防止や現状維持)等のために用いられる薬剤をいう。
本発明の治療および/または予防剤は、本発明のために有用な選択された化合物に加えて、薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物として用いることができる。
本明細書において、「薬学的に許容される担体」という用語は、一種以上の適合性の固体または液体の賦形希釈剤またはカプセル化材料であって、哺乳類への投与に適したものを意味する。本明細書において、「許容される」という用語は、通常の使用条件下で組成物の医薬的な有効性を実質的に減少させるような反応をお互いに起こすことがないような方法で、組成物中の成分と対象化合物とが混合されうることを意味する。薬学的に許容される担体は、当然、処置されようとする、好ましくは動物、より好ましくは哺乳類への投与に適するように、十分に高い純度と十分に低い毒性を有していなければならない。
【0046】
薬学的に許容される担体として用いられうる材料の例としては、乳糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖類;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンなどのデンプン類;セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロースなどの誘導体;トラガカントガム粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸やステアリン酸マグネシウムなどの固形潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、カカオ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどの多価アルコール;アルギン酸;TWEENのような乳化剤;レシチンのような湿潤剤;着色剤;香料;錠剤化剤(tabletingagent);安定化剤;坑酸化剤;防腐剤;パイロジェンフリー水;等張塩水溶液;及びリン酸緩衝液などがあげられる。
本発明の治療剤および/または予防剤の投与方法は、経口的、直腸的、非経口的(静脈内的、筋肉内的、皮下的)、槽内的、膣内的、腹腔内的、膀胱内的、局所的(点滴、散剤、軟膏、ゲルまたはクリーム)投与および吸入(口腔内または鼻スプレー)などが挙げられる。その投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、水性および非水性の経口用溶液および懸濁液、および個々の投与量に小分けするのに適応した容器に充填した非経口用溶液などの液剤、用時溶解して用いることができる凍結乾燥性剤などが挙げられる。また投与形態は、皮下移植のような調節された放出処方物を包含する種々の投与方法に適応させることもできる。
【0047】
上記の製剤は、賦形剤、滑沢剤(コーティング剤)、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造される。
例えば、賦形剤としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
コーティング剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。
結合剤としては、例えばポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
安定剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。
矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
また、液剤を製造するための溶媒としては、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができる。
界面活性剤又は乳化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
【0048】
本発明の予防剤および/または治療剤の使用量は、症状、年齢、体重、相対的健康状態、他の投薬の存在、投与方法等により異なる。例えば、患者(温血動物、特に人間)に対して、一般に有効な量は、有効成分(式(I)で表される化合物)として、経口剤の場合、一日につき体重1kg当たり好ましくは0.001〜3000mg、さらに好ましくは体重1kg当たり0.01〜300mgであり、一日当たりの使用量は、普通の体重の成人患者に対しては、好ましくは1〜800mgの範囲にある。非経口剤の場合、一日につき体重1kg当たり好ましくは0.001〜1000mg、さらに好ましくは体重1kg当たり0.01〜300mgである。これを1日1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが望ましい。
本発明の予防剤および/または治療剤は、国際公開公報WO2012/023597に記載の方法により製剤化することもできる。
【0049】
また、本発明の治療剤および/または予防剤は、他の化学療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤または分子標的薬などから選ばれる1種以上の薬剤(以下、併用薬剤と略記することがある)と組み合わせて用いてもよい。これらの活性成分は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、抗体であるか、あるいはワクチン等であってもよい。また、活性成分は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
例えば、該「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。「白金製剤」としては、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンなどが挙げられる。「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフールなど)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカンなど)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサンなど)、「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アントラサイクリン系抗癌薬(塩酸ドキソルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシンなど)、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。「植物由来抗癌剤」としては、例えば、ビンカアルカロイド系抗癌薬(硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシンなど)、タキサン系抗癌薬(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、ビノレルビンなどが挙げられる。
【0050】
該「ホルモン療法剤」としては、例えば、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)が挙げられ、なかでもプレドニゾロンが好ましい。
該「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
該「分子標的薬」は「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」等を含み、「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)など〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin-like growth factor)−1、IGF−2など〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF-10など〕、(4)VEGF(vascular endothelial growth factor)、(5)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factorβ)、HGF(hepatocyte growth factor)、など]などがあげられる。
該「細胞増殖因子の受容体」としては、上記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1またはFGF受容体−2、HGF受容体(c−met)、VEGF受容体、SCF受容体(c−kit)などがあげられる。該「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、ハーセプチン(HER2抗体)、GLEEVEC(c−kit、abl阻害薬)、Tarceva(EGF受容体阻害薬)などがあげられる。
また、一つの薬剤で複数の細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤や、細胞増殖因子よって発せられる細胞内の情報を遮断する薬剤も含まれる。
【0051】
前記の薬剤の他に、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類など)、血管新生阻害薬、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシンなど)なども用いることができる。
上記した中でも、併用薬としては、白金錯体(例、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例、ゲムシタビン、ペメトレキセドなど)、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカンなど)、植物由来抗癌剤(タキサン系薬剤(例、パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン)、抗癌性抗生物質(例、マイトマイシンC)等、さらに、ホルモン療法剤(例、プレドニゾロン)、免疫療法剤(例、ピシバニール、クレスチンなど)、分子標的薬(例、ベバシズマブ等抗VEGF抗体、エルロチニブ等EGFR阻害剤、スニチニブ等VEGFR阻害剤)などが好ましい。さらに、シスプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ベバシズマブなどが好ましい。また、これら薬剤の併用療法と併用して用いることもできる。例えば、シスプラチンとビンブラスチンとマイトマイシンC、シスプラチンとビノレルビン、シスプラチンとパクリタキセル、シスプラチンとゲムシタビン、カルボプラチンとパクリタキセル、ペメトレキセドとシスプラチン、ベバシズマブとシスプラチンとペメトレキセド等の併用療法に組み合わせた併用が挙げられる。
【0052】
本発明において、本発明の有効成分および併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、本発明の有効成分および併用薬剤を、これらを含む単一の製剤として投与対象に投与してもよい。例えば、3〜6ヵ月にわたり、複数の薬を組み合わせて点滴注射する多剤併用療法や、約2年間にわたって経口剤を服用する方法などがある。
また、既に拡散している腫瘍(癌)細胞を抑え、転移による再発を防ぐためや、手術範囲を小さくする目的で、手術施行前に「化学療法」などの術前補助療法を行うこともある。
さらには、手術や放射線などの局所的治療により除去されなかった腫瘍(癌)細胞の発育を抑え、転移による再発を防ぐために、「化学療法」などの術後補助療法が行われることもある。
さらには、併用する抗癌剤は、癌細胞と同時に正常な細胞にも作用し、それが副作用となって現れる場合がある。代表的な副作用には、消化器粘膜の障害による吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢あるいは便秘、味覚異常、骨髄の障害による白血球・赤血球・血小板の減少・脱毛、免疫力の低下などがあり、これらを抑制するための副作用軽減薬を併用することもできる。例えば、吐き気を効果的に抑える制吐剤(例、グラニセトロン塩酸塩)や、骨髄障害の回復を早める薬(例えば、エリスロポイエチン、G−CSF、GM−CSF)等が挙げられる。
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明の有効成分と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、本発明の有効成分を含む製剤100重量部に対し、併用薬剤を0.01ないし100重量部用いればよい。
【0053】
RETの変異を検出する方法
また、本願発明の治療剤および/または予防剤は、RETに変異を有することを検出した被験者に対して投与することにより、治療および/または予防の有効性が期待される。すなわち、RETに変異を有することを検出した患者は本願発明の治療剤および/または予防剤に対して感受性を有することが考えられる。本発明において、RETにおける変異を検出する方法には、RET遺伝子の変異を検出する方法、およびRETタンパク質の変異を検出する方法が含まれる。
RET遺伝子の変異を検出する方法は、被験者から得た試料中の、以下に示すRET遺伝子に関連する特定のポリヌクレオチドの存在および特定のポリヌクレオチドの増幅を検出する工程を含む。
具体的には、以下(1)〜(3)の工程を含む。
(1)被験者の試料(血液、肺胞、生検された試料、喀痰試料等)を採取する。
(2)試料からゲノムDNAやその転写物(例えばmRNA、cDNA、タンパク質)を抽出する。ゲノムDNAの抽出は公知の方法で行うことができ、市販のDNA抽出キットを用いて簡便に行うことができる。
(3)抽出されたゲノムDNAやその転写物(例えばmRNA、cDNA、タンパク質)中の特定のポリヌクレオチドの存在および特定のポリヌクレオチドの増幅の有無を検出する。
上記特定のポリヌクレオチドの存在の検出は、公知の遺伝子解析法(例えば、PCR法、逆転写PCR法、サンガーシーケンス法、インサイチュー・ハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ法などの方法)を単独、または組み合わせて行うことができる。
mRNAを用いて特定のポリヌクレオチドの存在を検出する場合、検出対象ポリヌクレオチドの配列を特異的に増幅できるように設計したプライマーを用いて逆転写PCRなどの遺伝子増幅反応を行う。プライマーの設計は、プライマー設計ソフトウェア(例えば、Primer Express; PE Biosystems)などを利用して行うことができる。
さらに、逆転写PCR法およびPCR法等により得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色等を行うことによって、目的とするサイズの増幅断片が得られたか否かを確認することができる。目的とするサイズの増幅断片が得られた場合は、被験者から得た試料において、特定のポリヌクレオチドが存在することとなる。
RET遺伝子の点変異、欠失変異または挿入変異の検出は、前述の逆転写PCR法とサンガーシーケンス法を組み合わせた方法や公知の一塩基伸長反応法などを用いて特定のポリヌクレオチドの存在を検出することにより、行うことができる。
【0054】
RET遺伝子と他の遺伝子との融合遺伝子の検出方法には、前述の逆転写PCR法とサンガーシーケンス法を組み合わせた方法に加えて、インサイチュー・ハイブリダイゼーション技術を利用し、特定のポリヌクレオチドの存在を検出する方法がある。インサイチュー・ハイブリダイゼーション技術を利用した検出は、例えば、公知のフルオレッセント・インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)法、クロモジェニック・インサイチュー・ハイブリダイゼーション(CISH)法、シルバー・インサイチュー・ハイブリダイゼーション(SISH)法により行うことができる。
ハイブリダイゼーションに用いるプローブとしては、特定のポリヌクレオチド又はそれらの相補鎖にストリンジェントな条件下で(好ましくはよりストリンジェントな条件下で)ハイブリダイズする、連続した少なくとも32塩基(融合点を中心にその上流及び下流にそれぞれ16塩基)の核酸分子を使用することができるが、これに限定されない。配列番号:5〜14、25および26からなる群より選ばれる塩基配列のポリヌクレオチドの特定の部分の配列又はそれらの相補鎖を含むプローブも、用いることができる。
ストリンジェントな条件は、常法に従って複合体を形成する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。具体的には、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/ml鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件である。よりストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/ml鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件である。
【0055】
RET遺伝子の増幅の検出は,前述のインサイチュー・ハイブリダイゼーション技術に加えて,ゲノムDNAを用いたコンパラティブ・ゲノミック・ハイブリダイゼーション(CGH)法により、特定のポリヌクレオチドの増幅を検出することで、行うことができる。
検出対象となる特定のポリヌクレオチドとは、RET遺伝子を構成するポリヌクレオチド中の塩基が点変異、欠失変異、挿入変異により変化したポリヌクレオチド、およびRET遺伝子と他の遺伝子(例えば、KIF5B遺伝子、CCDC6遺伝子、NCOA4遺伝子、TRIM33遺伝子)との融合遺伝子を構成するポリヌクレオチド,および増幅したRET遺伝子を構成するポリヌクレオチドのことをいう。このようなポリヌクレオチドとしては、以下に記載のポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド(特にチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)があげられるが、これらに限定されない。
(1)RET遺伝子とKIF5B遺伝子との融合遺伝子を構成するポリヌクレオチド:
・配列番号:5で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:6で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:7で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:8で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:9で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:10で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:11で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:12で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:13で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:14で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
(2)RET遺伝子とCCDC6遺伝子との融合遺伝子を構成するポリヌクレオチド
・配列番号:25で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:26で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
(3)RET遺伝子を構成するポリヌクレオチド:
・配列番号:1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
・配列番号:2で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド
(4)RET遺伝子を構成するポリヌクレオチド中の塩基が点変異、欠失変異、挿入変異により変化したポリヌクレオチド:
配列番号:1で表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861T、2943Tの塩基における変異(例えば、2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>G、2943T>Cの変異)を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド
配列番号:3で表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、E768、V804、S891、A883、M918のアミノ酸における変異(例えば、C634W、C634Y、E768D、V804M、V804L、M918Tの変異)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド
【0056】
RETの変異を検出する方法は、前述の方法の他、RETタンパク質における変異を検出する方法を含む。
RETタンパク質における変異を検出する方法は、被験者から得た試料における、特定のポリペプチド(以下、検出対象ポリペプチドと称する)の存在を検出する工程を含む。被験者から得た試料(例えば、被験者から得た癌組織や細胞)由来の可溶化液を調製し、その中に含まれる検出対象ポリペプチドを検出する。
検出対象ポリペプチドがRETタンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質である場合、KIF5B、CCDC6、NCOA4またはTRIM33などに対する抗体と、抗RET抗体とを組み合わせることによる免疫学的測定法又は酵素活性測定法等により検出対象ポリペプチドの存在を検出することができる。好ましくは、検出対象ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いた、酵素免疫測定法、2抗体サンドイッチELISA法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、ウエスタンブロッティング法等の手法を用いることができる。その他、RETタンパク質における変異(点変異、欠失変異、挿入変異を含む)の検出は、ウエスタンブロッティング法、質量分析法などを用いて検出対象ポリペプチドの存在を検出することにより、行うことができる。
【0057】
検出対象ポリペプチドとしては、以下に記載のポリペプチド、およびこれらのポリペプチドにおいて、1または複数のアミノ酸(例えば、1−10個、1−5個、1−3個のアミノ酸)が欠失、置換及び/若しくは挿入されたポリペプチド(特にチロシンキナーゼ活性を有するポリペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)RETタンパク質とKIF5Bタンパク質との融合タンパク質を構成するポリペプチド:
配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:16で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:18で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:19で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:20で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:21で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:23で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:24で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(2)RETタンパク質とCCDC6タンパク質との融合タンパク質を構成するポリペプチド:
配列番号:27で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:28で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(3)RETタンパク質を構成するポリペプチド:
配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(4)RETタンパク質を構成するポリペプチドにおいて点変異を有するポリペプチド
・配列番号:1で表される塩基配列のポリヌクレオチドの2091G、2261G、2494G、2562A、2600G、2861T、2943Tの塩基における変異(例えば、2091G>T、2261G>A、2494G>C、2562A>T、2600G>A、2600G>C、2861T>G、2943T>Cの変異)を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド
・配列番号:3で表されるアミノ酸配列のポリペプチドのC609、C611、C618、C620、C630、C634、G691、E768、Y791、V804、S891、A883、M918のアミノ酸における変異(例えば、C634W、C634Y、G691S、E768D、Y791F、V804M、V804L、S891A、M918Tの変異)を有するポリペプチド
【0058】
上記の他、国際公開WO2012/014795号パンフレット、Nature Medicine.2012年,18,p.378−381、J Clin Oncol,30(35),Dec 10,2012,p.4352−9、Cancer Discov 2013 Jun,3(6),Jun 2013,p.630−5等に記載の方法により、RET遺伝子とKIF5B遺伝子との融合遺伝子、およびその他の融合遺伝子の存在を検出することができる。
上述の方法に加えてRETチロシンキナーゼの活性化を検出してもよい。RETチロシンキナーゼの活性化は、腫瘍組織におけるリン酸化RETを抗リン酸化RET抗体による免疫染色などで検出することにより確認することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
式IIにより示される化合物1(9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル、または9−エチル−6,6−ジメチル−8−[4−(モルホリン−4−イル)ピペリジン−1−イル]−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリルとも称される。)(WO2010/143664の実施例366に記載の化合物)に対して、実施例1〜6に記載の薬理学的試験を行った。
【化5】
(II)
【0060】
実施例1
RETキナーゼ阻害活性及び結合親和性の評価
化合物1のRETキナーゼ阻害活性の評価は,RETキナーゼドメイン (Carna Biosciences) のN末端にGSTタグを付加したRETキナーゼを用い、ビオチン化ペプチド(EGPWLEEEEEAYGWMDF) のリン酸化反応の阻害活性を指標に行った。リン酸化ビオチン化ペプチドの検出は,Europiumラベルを結合させた抗リン酸化抗体を用いたTR-FRET (time-resolved fluorescence resonance energy transfer) 法により行った。50%阻害濃度(IC50値) をロジスティック回帰法により算出したところ,化合物1はRETキナーゼに対してIC50値4.8 nMの強い阻害活性を示した。
また,RETキナーゼに対する解離定数 (Kd値) をKINOMESCANTM (DiscoveRx) により測定したところ,化合物1はKd値7.6 nMの結合親和性を示した。
【0061】
実施例2
KIF5B-RET発現細胞の樹立及び当細胞を用いた細胞増殖阻害活性の評価
KIF5B-RET variant 1 (KIF5BのCDSのN末端からExon15とRETのCDSのExon12からC末端までが融合した遺伝子) (配列番号:5) を組み込んだ発現プラスミドCS-GS104J-M67 (GeneCopoeia) をマウスリンパ球細胞Ba/F3 (RIKEN Cell Bank) にエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。遺伝子導入後,10% FBS (Bovogen Biologicals) 及び 1 ng/mL recombinant mouse IL-3 (R&D systems) を含むRPMI-1640 Medium(Sigma-Aldrich)で終夜培養した。その後,培養上清を10% FBS を含むRPMI-1640 Mediumに交換し,限界希釈法により96ウェルプレートに播種した。約2週間後に,ウエスタンブロッティング法により、IL-3非存在下で成育した細胞におけるリン酸化RETの発現を検出し、これを指標にKIF5B-RETを安定的に発現する細胞株Ba/F3 KIF5B-RETを樹立した。
96ウェルプレートに,Ba/F3 KIF5B-RET細胞を1ウェル当り2,500細胞となるように10%FBSを含むRPMI-1640培地で播種した。化合物1の塩酸塩をジメチルスルホキシドにより最終濃度が1 nMから10 μMとなるよう希釈し、96ウェルプレートに添加した。陰性対照としてジメチルスルホキシドを添加した。37℃,5% CO2存在下で2日間培養後,細胞数測定試薬CellTiter-Glo(R) Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation) を添加し撹拌後,発光測定装置Envision (PerkinElmer) を用いて,発光強度を測定した。培地のみのウェルでの測定値を生存率0%,ジメチルスルホキシド添加ウェルでの測定値を生存率100%として化合物1の各濃度におけるBa/F3 KIF5B-RET細胞の生存率を算出し,これらの値からロジスティック回帰法によりIC50値を求めた。その結果,化合物1はBa/F3 KIF5B-RET細胞に対してIC50値86 nMの細胞増殖阻害活性を示した。
以上の結果から,化合物1はRETのキナーゼ活性を阻害し,KIF5B-RETを発現する細胞株に対して細胞増殖を阻害できることが示された。
【0062】
実施例3
甲状腺髄様癌細胞株 TTを用いた細胞増殖阻害活性の測定
RETキナーゼ活性化変異(C634W) を有する甲状腺髄様癌細胞株 TT (American Type Culture Collection) の細胞増殖阻害活性の測定を行った。
96ウェルプレートに, TT細胞を1ウェル当り5,000細胞となるように10% FBSを含むF-12K Nutrient Mixture (Life Technologies Corporation) で播種し,37℃,5% CO2存在下で終夜培養した。その後,化合物1の塩酸塩をジメチルスルホキシドにより最終濃度1 nMから10 μMとなるよう希釈し、96ウェルプレートに添加した。陰性対照としてジメチルスルホキシドを添加した。37℃,5% CO2存在下で5日間培養した後に,細胞数測定試薬CellTiter-Glo(R) Luminescent Cell Viability Assay を添加し撹拌後,発光測定装置Envisionを用いて,発光強度を測定した。培地のみのウェルでの測定値を生存率0%,ジメチルスルホキシド添加ウェルでの測定値を生存率100%として化合物1の各濃度におけるTT細胞の生存率を算出し,これらの値からロジスティック回帰法によりIC50値を求めた。その結果,化合物1はTT細胞に対してIC50値190 nMの細胞増殖阻害活性を示した。
【0063】
実施例4
RET変異体キナーゼ阻害活性
化合物1のRET変異体キナーゼ阻害活性の評価は,RETキナーゼドメイン (Carna Biosciences, Millipore) のN末端にGSTタグを付加したRET変異体キナーゼを用い,ビオチン化ペプチド (EGPWLEEEEEAYGWMDF) のリン酸化反応の阻害活性を指標に行った。リン酸化ビオチン化ペプチドの検出は,Europiumラベルを結合させた抗リン酸化抗体を用いたTR-FRET法により行った。IC50値をロジスティック回帰法により算出した。試験結果を表1に示す。化合物1は、ゲートキーパー残基での変異 (V804L, V804M) を含むRETキナーゼの各変異体に対して阻害活性を示した。
【表1】
【0064】
実施例5
非小細胞肺癌細胞株 LC-2/adを用いた細胞増殖阻害活性の測定
CCDC6-RET融合遺伝子を有する非小細胞肺癌細胞株 LC-2/ad (RIKEN、J Thorac Oncol.2012 Dec,7(12),1872−6) の細胞増殖阻害活性の測定を行った。
96ウェルプレートに,LC-2/ad細胞を1ウェル当り2,000細胞となるように15% FBS及び25 mM HEPESを含むRPMI-1640とHamを1:1の割合で混合させた培地で播種し,37℃,5% CO2存在下で終夜培養した。その後,化合物1の塩酸塩をジメチルスルホキシドにより最終濃度1 nMから1 μMとなるよう希釈し,96ウェルプレートに添加した。陰性対照としてジメチルスルホキシドを添加した。37℃,5% CO2存在下で5日間培養した後に,細胞数測定試薬CellTiter-Glo(R) Luminescent Cell Viability Assayを添加し撹拌後,発光測定装置Envisionを用いて,発光強度を測定した。培地のみのウェルでの測定値を生存率0%,ジメチルスルホキシド添加ウェルでの測定値を生存率100%として化合物1の各濃度におけるLC-2/ad細胞の生存率を算出し,これらの値からロジスティック回帰法によりIC50値を求めた。その結果,化合物1はLC-2/ad細胞に対してIC50値190 nMの細胞増殖阻害活性を示した。
【0065】
実施例6
CCDC6-RET融合遺伝子を有するゼノグラフトマウスモデルを用いた抗腫瘍活性の評価
化合物1のin vivoにおける抗腫瘍活性を,非小細胞肺癌細胞株LC-2/adを移植したマウスモデルを用いて評価した。LC-2/adをSCIDマウスの皮下に移植し,腫瘍の大きさが200〜350 mm3に到達した後にランダマイズし,化合物の投与を開始した。化合物を溶解するための溶媒(最終濃度)は,0.02N HCl, 10% ジメチルスルホキシド, 10%Cremophor EL, 15% PEG400, 及び15% HPCD (2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin) を用いた。20 mg/kg及び60 mg/kgの化合物1を1日1回14日間経口投与した。その結果,いずれの腫瘍に対しても,用量依存的な腫瘍増殖抑制効果と腫瘍の退縮が認められた。また,この試験時におけるマウスの有意な体重減少はいずれの用量においても認められなかった。抗腫瘍効果の結果を図1に示した。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]