特許第5759591号(P5759591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5759591
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20150716BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A61B8/06
   A61B8/14
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-92525(P2014-92525)
(22)【出願日】2014年4月28日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029791
【氏名又は名称】日立アロカメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 鑑
(72)【発明者】
【氏名】板谷 慶一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 肇
(72)【発明者】
【氏名】西山 知秀
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−244835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受するプローブと、
プローブを送信制御して生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、
超音波の受信信号に基づいて生体内のドプラ情報を得るドプラ処理部と、
生体内のドプラ情報に基づいて血流の速度情報を得る速度情報生成部と、
超音波の受信信号に基づいて生体内の画像データを得る画像形成処理部と、
画像データ内において心臓内腔に対応した関心領域を設定する関心領域設定部と、
心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出するエネルギー演算部と、
算出されたエネルギーの損失量を示す表示画像を形成する表示処理部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記エネルギー演算部は、心臓内腔に対応した関心領域内の複数サンプル点について、各サンプル点ごとに前記損失量を算出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記表示処理部は、生体内の画像データに対して、関心領域内の前記各サンプル点ごとに当該サンプル点の前記損失量に応じた表示処理を施すことにより、心臓内腔における前記損失量の分布状態を示した表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波診断装置において、
前記エネルギー演算部は、心臓内腔に対応した関心領域内の複数サンプル点における前記損失量に基づいて、当該関心領域内における前記損失量の総和を算出し、
前記表示処理部は、各時相ごとに算出される前記損失量の総和を複数時相に亘って示したグラフを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記関心領域設定部は、画像データ内において心臓内腔の外縁として設定された内腔ラインにより囲まれた領域を前記関心領域とする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記関心領域設定部は、画像データ内において、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインと、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインと、心臓内腔の外縁として設定された前記内腔ラインと、により囲まれた領域を前記関心領域とする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記エネルギー演算部は、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔へ流入する血流の運動エネルギーである流入エネルギーを算出し、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔から流出する血流の運動エネルギーである流出エネルギーを算出し、
前記表示処理部は、各時相ごとに算出される流入エネルギーと流出エネルギーの少なくとも一方を複数時相に亘って示したグラフを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記速度情報生成部は、生体内のドプラ情報と画像データの少なくとも一方に基づいて、心臓内腔の外縁として設定された内腔ライン上における血流と心筋の少なくとも一方の速度情報を生成し、
前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーを算出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波診断装置において、
前記速度情報生成部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点について、各サンプル点ごとに血流または心筋の速度情報を生成し、
前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーの総量を算出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項9に記載の超音波診断装置において、
前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点における速度情報から、心臓内腔の内側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量と、心臓内腔の外側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量を算出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
超音波を利用して得られた生体内のドプラ情報に基づいて、血流の速度情報を得る速度情報生成部と、
超音波を利用して得られた生体に係る画像データ内において、心臓内腔に対応した関心領域を設定する関心領域設定部と、
心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出するエネルギー演算部と、
を有する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、心臓の診断情報を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血流などの流体に超音波を送受して得られる受信信号から流体に係る診断情報を得る技術が知られている。例えば、特許文献1には、生体内の流体に対して超音波を送受して得られる受信信号(エコーデータ)に基づいて、観測面内の複数点において流体に関する2次元の速度ベクトルを得る技術が記載されている。観測面内の複数点における2次元の速度ベクトルの分布から、流体の流れを示す流線などの診断情報を得ることが可能になり、例えば、心臓等の診断への応用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−192643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、超音波を利用して心臓の診断情報を得る技術について研究開発を重ねてきた。
【0005】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波を利用して心臓の診断情報を得る改良技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、超音波を送受するプローブと、プローブを送信制御して生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、超音波の受信信号に基づいて生体内のドプラ情報を得るドプラ処理部と、生体内のドプラ情報に基づいて血流の速度情報を得る速度情報生成部と、超音波の受信信号に基づいて生体内の画像データを得る画像形成処理部と、画像データ内において心臓内腔に対応した関心領域を設定する関心領域設定部と、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出するエネルギー演算部と、算出されたエネルギーの損失量を示す表示画像を形成する表示処理部と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記装置において、血流の速度情報とは、血流についての部分的な又は全体的な運動に関する情報であり、具体的には、血流内の各箇所における速度と方向を示す速度ベクトルや、各箇所における移動量と方向を示す移動ベクトルなどが含まれる。なお、血流の速度ベクトルや移動ベクトルの導出には、例えば、特許文献1に記載された技術(2次元の速度ベクトルの分布)を利用することが望ましいものの、他の公知の技術を利用して速度ベクトル等を得るようにしてもよい。
【0008】
また、血流内で失われたエネルギーの損失量とは、例えば、血流内における摩擦等により熱エネルギー等に変換されて失われた運動エネルギー等の損失量であり、心臓や血管の機能を評価する際の一つの評価値となることが期待される。例えば、心臓内腔の血流内で失われるエネルギーの損失量だけ、心臓内腔における血流の運動エネルギーが低下してしまうため、血流の流量を維持するために、心臓から血流に大きな運動エネルギーを与えることとなり、心臓の負担(心負荷)が大きいことが予想できる。また、心臓内腔に流入する血流の運動エネルギーや心臓内腔から流出する血流の運動エネルギーが小さいと、血流の流量が維持できていないことが予想される。
【0009】
上記装置によれば、心臓内腔の血流内で失われるエネルギーの損失量が算出され、心臓や血管の機能を評価する際の一つの評価値とすることができる。そのため、エネルギーの損失量に基づいて心臓や血管の機能を評価することが可能になり、さらに好適には、心臓内腔に流入する血流の運動エネルギーや心臓内腔から流出する血流の運動エネルギー等を評価値に加えることにより、心臓や血管の機能について、複数の評価値に基づいた総合的な診断が可能になる。
【0010】
望ましい具体例において、前記エネルギー演算部は、心臓内腔に対応した関心領域内の複数サンプル点について、各サンプル点ごとに前記損失量を算出することを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記表示処理部は、生体内の画像データに対して、関心領域内の前記各サンプル点ごとに当該サンプル点の前記損失量に応じた表示処理を施すことにより、心臓内腔における前記損失量の分布状態を示した表示画像を形成する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記エネルギー演算部は、心臓内腔に対応した関心領域内の複数サンプル点における前記損失量に基づいて、当該関心領域内における前記損失量の総和を算出し、前記表示処理部は、各時相ごとに算出される前記損失量の総和を複数時相に亘って示したグラフを形成する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記関心領域設定部は、画像データ内において心臓内腔の外縁として設定された内腔ラインにより囲まれた領域を前記関心領域とする、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記関心領域設定部は、画像データ内において、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインと、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインと、心臓内腔の外縁として設定された前記内腔ラインと、により囲まれた領域を前記関心領域とする、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記エネルギー演算部は、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔へ流入する血流の運動エネルギーである流入エネルギーを算出し、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔から流出する血流の運動エネルギーである流出エネルギーを算出し、前記表示処理部は、各時相ごとに算出される流入エネルギーと流出エネルギーの少なくとも一方を複数時相に亘って示したグラフを形成する、ことを特徴とする。
【0016】
望ましい具体例において、前記速度情報生成部は、生体内のドプラ情報と画像データの少なくとも一方に基づいて、心臓内腔の外縁として設定された内腔ライン上における血流と心筋の少なくとも一方の速度情報を生成し、前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーを算出する、ことを特徴とする。
【0017】
望ましい具体例において、前記速度情報生成部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点について、各サンプル点ごとに血流または心筋の速度情報を生成し、前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーの総量を算出する、ことを特徴とする。
【0018】
望ましい具体例において、前記エネルギー演算部は、前記内腔ライン上の複数サンプル点における速度情報から、心臓内腔の内側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量と、心臓内腔の外側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量を算出する、ことを特徴とする。
【0019】
また、上記目的にかなう好適な情報処理装置は、超音波を利用して得られた生体内のドプラ情報に基づいて、血流の速度情報を得る速度情報生成部と、超音波を利用して得られた生体に係る画像データ内において、心臓内腔に対応した関心領域を設定する関心領域設定部と、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出するエネルギー演算部と、を有することを特徴とする。
【0020】
上記情報処理装置は、コンピュータ等により実現することができる。例えば、超音波を利用して得られた生体内のドプラ情報に基づいて、血流の速度情報を得る速度情報生成機能と、超音波を利用して得られた生体に係る画像データ内において、心臓内腔に対応した関心領域を設定する関心領域設定機能と、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出するエネルギー演算機能と、をコンピュータに実現させるプログラムにより、コンピュータを上記情報処理装置として機能させることができる。なお、そのプログラムは、例えば、ディスクやメモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供されてもよいし、インターネットなどの電気通信回線を介してコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、超音波を利用して心臓の診断情報を得る改良技術が提供される。例えば本発明の好適な態様によれば、心臓内腔の血流内で失われるエネルギーの損失量が算出され、心臓や血管の機能を評価する際の一つの評価値とすることができる。そのため、エネルギーの損失量に基づいて心臓や血管の機能を評価することが可能になり、さらに好適には、心臓内腔に流入する血流の運動エネルギーや心臓内腔から流出する血流の運動エネルギー等を評価値に加えることにより、心臓や血管の機能について、複数の評価値に基づいた総合的な診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成図である。
図2】心臓内腔に対応した関心領域の具体例を示す図である。
図3】流入エネルギーと流出エネルギーの算出例を説明するための図である。
図4】エネルギー損失等の時間的な変化を示すグラフの具体例を示す図である。
図5】エネルギー損失の分布に係る表示画像の具体例を示す図である。
図6】内腔ラインから運動エネルギーを算出する具体例を示す図である。
図7】運動エネルギー総量の時間的な変化を示すグラフの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成図である。図1の超音波診断装置は、心臓に係る診断情報を生成する機能を備えており、特に、心臓内腔の血流内で失われるエネルギーの損失量等を算出することができる。
【0024】
プローブ10は、生体内の心臓を含む領域に超音波を送受波する超音波探触子である。プローブ10は、複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が電子的に走査制御されて、心臓を含む空間内で超音波ビームが走査される。プローブ10は、例えば、医師等のユーザ(検査者)に把持されて被検者の体表面上に当接して用いられる。なお、プローブ10は、被検者の体腔内に挿入して用いられるものであってもよいし、電子的な走査と機械的な走査とを組み合わせた探触子であってもよい。
【0025】
送受信部12は、送信ビームフォーマーおよび受信ビームフォーマーとしての機能を備えている。つまり、送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力することにより送信ビームを形成し、さらに、複数の振動素子から得られる複数の受波信号に対して整相加算処理などを施して受信ビームを形成する。これにより、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)が走査面内において走査され、超音波ビームに沿って受信信号が形成される。なお、超音波の受信信号を得るにあたって、超音波ビームが三次空間内で立体的に走査されてもよいし、送信開口合成等の技術が利用されてもよい。
【0026】
画像形成処理部20は、走査面内から得られる超音波の受信信号に基づいて、超音波画像用のデータ(画像データ)を形成する。画像形成処理部20は、例えば、超音波の受信信号に対して、検波処理やフィルタ処理やAD変換処理等を施すことにより、Bモード画像用のフレームデータを形成する。もちろん、Bモード画像以外の公知の超音波画像に係る画像データが形成されてもよい。
【0027】
ドプラ処理部30は、超音波ビームに沿って得られる受信信号に含まれるドプラシフト量を計測する。ドプラ処理部30は、例えば公知のドプラ処理により、血流によって超音波の受信信号内に生じるドプラシフトを計測し、血流についての超音波ビーム方向の速度情報を得る。
【0028】
速度ベクトル演算部40は、血流についての超音波ビーム方向の速度情報から、走査面内における2次元の速度ベクトルの分布を形成する。速度ベクトル演算部40は、例えば特許文献1(特開2013−192643号公報)に説明されるように、血流についての超音波ビーム方向の速度情報に加えて、心臓壁の運動情報を利用して、走査面内の各位置における血流の2次元速度ベクトルを得る。
【0029】
なお、超音波ビーム方向に沿った1次元の速度情報から、走査面内における2次元の速度ベクトルの分布を形成するにあたっては、公知の様々な手法を利用することができる。もちろん、互いに方向が異なる2本の超音波ビームを形成して、2本の超音波ビームの各々から速度情報を得て、2次元の速度ベクトルを形成するようにしてもよい。
【0030】
速度ベクトル演算部40は、超音波が送受される空間に対応した演算用座標系において複数のサンプル点について、各サンプル点ごとに速度ベクトルを得る。例えば、演算用座標系をxyz直交座標系で表し、超音波の走査面に対応したxy平面内で、各サンプル点ごとに速度ベクトルを得て2次元の速度ベクトルの分布を形成する。なお、超音波の走査に対応した走査座標系、例えばビームの深さ方向rとビームの走査方向θによるrθ座標系において2次元の速度ベクトルの分布が形成されてもよい。
【0031】
関心領域設定部50は、画像形成処理部20による処理で得られた画像データ内において、心臓内腔に対応した関心領域を設定する。関心領域設定部50は、画像データ内において、心臓内腔の外縁として設定された内腔ラインと、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインと、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインにより囲まれた領域を関心領域とする。関心領域設定部50における処理と関心領域の具体例については後に詳述する。
【0032】
内腔ライン速度演算部60は、画像形成処理部20において形成された画像データに基づいて、内腔ライン上における心筋(心臓壁)の速度情報を生成する。内腔ライン速度演算部60は、内腔ライン上の複数サンプル点について、各サンプル点ごとに心筋の速度情報を生成する。
【0033】
内腔ライン速度演算部60は、例えば、複数フレームに亘って得られる画像データのフレーム間において、画像データの画素値(輝度値等)に基づく相関演算等を利用したパターンマッチングにより、内腔ライン上の各サンプル点ごとに、複数フレームに亘ってそのサンプル点の移動位置を2次元平面内で追跡する。これにより、各サンプル点ごとに、2次元的な移動情報が得られ、例えば、フレーム間における移動量とフレーム間の時間に基づいて、2次元の速度ベクトルが算出される。画像データがxy直交座標系に対応したデータであれば、xy直交座標系における速度ベクトルが算出され、画像データがrθ座標系に対応したデータであれば、rθ座標系における速度ベクトルが算出される。
【0034】
なお、速度ベクトル演算部40において、特許文献1に説明される手法により血流の2次元速度ベクトルを得る場合には、心臓壁の運動情報を利用するが、この場合には、心臓壁の運動情報として、内腔ライン速度演算部60において算出された内腔ライン上の各サンプル点における速度ベクトルを利用してもよい。
【0035】
このように、速度ベクトル演算部40と内腔ライン速度演算部60が速度情報生成部として機能し、心臓心腔内における血流の速度情報(速度ベクトル)や心筋(心臓壁)の速度情報(速度ベクトル)が生成される。
【0036】
エネルギー演算部70は、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出する。また、エネルギー演算部70は、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔へ流入する血流の運動エネルギーである流入エネルギーを算出し、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ラインに対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔から流出する血流の運動エネルギーである流出エネルギーを算出する。さらに、エネルギー演算部70は、内腔ライン上における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーを算出する。エネルギー演算部70における処理の具体例については後に詳述する。
【0037】
表示処理部80は、画像形成処理部20から得られる超音波画像の画像データと、エネルギー演算部70から得られるエネルギーに係る算出値などに基づいて、表示画像を形成する。表示処理部80において形成された表示画像は表示部82に表示される。
【0038】
制御部90は、図1に示す超音波診断装置内を全体的に制御する。なお、図1の超音波診断装置は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、ジョイスティック等の操作デバイスを備えていることが望ましい。そして、制御部90による全体的な制御には、操作デバイス等を介してユーザから受け付けた指示も反映される。
【0039】
図1に示す構成(符号を付した各部)のうち、送受信部12,画像形成処理部20,ドプラ処理部30,速度ベクトル演算部40,関心領域設定部50,内腔ライン速度演算部60,エネルギー演算部70,表示処理部80の各部は、例えば電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、上記各部に対応した機能が、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現されてもよい。表示部82の好適な具体例は液晶ディスプレイ等である。制御部90は、例えば、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現することができる。
【0040】
図1の超音波診断装置の概要は以上のとおりである。次に、図1の超音波診断装置により実現される機能の具体例について詳述する。なお、図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
【0041】
図2は、心臓内腔に対応した関心領域の具体例を示す図である。図2には、画像形成処理部20において得られる画像データ22の具体例が図示されており、図2の画像データ22内には、周囲を心筋や弁によって囲まれた心臓内腔が含まれている。
【0042】
関心領域設定部50は、画像データ22内において、心臓内腔の外縁として設定された内腔ライン52と、心臓内腔へ流入する血流の流路に設定された流入ライン54と、心臓内腔から流出する血流の流路に設定された流出ライン56により囲まれた領域を関心領域とする。
【0043】
内腔ライン52は、心臓内腔の外縁に対応した複数のトレースポイントに基づいて形成される。例えば、画像データ22に対応した表示画像が表示部82に表示され、医師等のユーザがその表示画像を見ながら操作デバイス等を利用して、心臓内腔と心筋の境界上または境界付近に複数のトレースポイントを設定する。そして、ユーザによって設定された複数のトレースポイントに基づいて、例えば補間処理等により複数のトレースポイントを結ぶように、内腔ライン52が形成される。なお、画像データ22に対する二値化処理等の画像処理により、心臓内腔と心筋の境界が特定され、その境界に沿って内腔ライン52が形成されてもよい。
【0044】
流入ライン54と流出ライン56は、医師等のユーザにより設定される。例えば、画像データ22に対応した表示画像を見ながら、医師等のユーザが、始点Sと終点Eの位置を指定することにより、流入ライン54と流出ライン56を設定する。
【0045】
ユーザにより流入ライン54と流出ライン56が初期設定されると、関心領域設定部50は、内腔ライン52と流入ライン54を接続するように流入ライン54を修正し、内腔ライン52と流出ライン56を接続するように流出ライン56を修正し、さらに、流入ライン54と流出ライン56とを接続する。
【0046】
例えば、関心領域設定部50は、流入ライン54の始点Sを、その始点Sに最も近い内腔ライン52上のサンプル点の位置に移動する。また、関心領域設定部50は、流出ライン56の終点Eを、その終点Eに最も近い内腔ライン52上のサンプル点の位置に移動する。さらに、関心領域設定部50は、流入ライン54の終点Eと流出ライン56の始点Sとを結ぶ直線または曲線を形成する。
【0047】
こうして、関心領域設定部50は、内腔ライン52と流入ライン54と流出ライン56によって囲まれた領域を形成し、その領域を関心領域として設定する。
【0048】
心臓内腔に対応した関心領域が設定されると、エネルギー演算部70は、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出する。
【0049】
エネルギー演算部70は、関心領域内の複数サンプル点について、次式に基づいて、各サンプル点ごとにエネルギー損失を算出し、さらに、関心領域内の複数サンプル点におけるエネルギー損失の総和を算出する。
【0050】
【数1】
【0051】
xy座標系を利用した演算であれば、数1式において、例えばi方向がx方向となりj方向がy方向となる。また、rθ座標系を利用した演算であれば、例えばi方向がr方向となりj方向がθ方向となる。なお、rθ座標系を利用した演算においては、数1式がrθ座標系に適した数式に変更されてもよい。
【0052】
エネルギー演算部70は、例えば数1式に基づいて、複数時相に亘って各時相ごとにエネルギー損失の総和を算出する。
【0053】
また、エネルギー演算部70は、流入ライン54に対応した血流の速度情報に基づいて心臓内腔へ流入する血流の運動エネルギーである流入エネルギーを算出し、流出ライン56に対応した血流の速度情報に基づいて、心臓内腔から流出する血流の運動エネルギーである流出エネルギーを算出する。
【0054】
図3は、流入エネルギーと流出エネルギーの算出例を説明するための図である。流入エネルギーを算出するにあたり、エネルギー演算部70は、まず、流入ライン54を複数のサンプル直線(長さdL)に分割する。各サンプル直線の長さdLは、例えば、画像データの1ピクセル程度の大きさが望ましい。
【0055】
次に、エネルギー演算部70は、各サンプル直線ごとに、そのサンプル直線上の速度ベクトルVを得る。例えば、各サンプル直線上における1つのサンプル点、例えばサンプル直線の中心点における速度ベクトルVが、そのサンプル直線の速度ベクトルVとされる。もちろん、各サンプル直線上における複数サンプル点に基づいて、例えば複数サンプル点における速度ベクトルVのベクトル平均が、そのサンプル直線の速度ベクトルVとされてもよい。
【0056】
さらに、エネルギー演算部70は、各サンプル直線ごとに、そのサンプル直線の速度ベクトルVに基づいて、次式により、運動エネルギーを算出する。
【0057】
【数2】
【0058】
そして、エネルギー演算部70は、流入ライン54を構成する複数のサンプル直線についての運動エネルギーの総和を算出し、その総和を流入エネルギーとする。エネルギー演算部70は、複数時相に亘って各時相ごとに流入エネルギーを算出する。
【0059】
また、エネルギー演算部70は、流出エネルギーを算出するにあたり、流出ライン56を複数のサンプル直線(長さdL)に分割し、流入エネルギーの場合と同様な処理により流出エネルギーを算出する。つまり、エネルギー演算部70は、流出ライン56の各サンプル直線ごとに、数2式により運動エネルギーを算出し、流出ライン56を構成する複数のサンプル直線についての運動エネルギーの総和を算出し、その総和を流出エネルギーとする。エネルギー演算部70は、複数時相に亘って各時相ごとに流出エネルギーを算出する。
【0060】
なお、流入ライン54のみが設定されて流入エネルギーのみが算出されてもよいし、流出ライン56のみが設定されて流出エネルギーのみが算出されてもよい。
【0061】
エネルギー演算部70において、エネルギー損失と流入エネルギーと流出エネルギーの算出値が得られると、表示処理部80は、それらの算出値を示す表示画像を形成する。表示処理部80は、表示画像として、例えばエネルギー損失等の時間的な変化を示すグラフを形成する。
【0062】
図4は、エネルギー損失等の時間的な変化を示すグラフの具体例を示す図である。図4には、横軸を時間軸として縦軸に算出値を示したグラフが図示されている。
【0063】
表示処理部80は、各時相ごとに算出されるエネルギー損失の算出値(関心領域内における総和)を複数時相に亘って示したグラフを形成する。これにより、図4に実線で示すエネルギー損失の波形が得られる。
【0064】
また、表示処理部80は、各時相ごとに算出される流入エネルギーの算出値(流入ライン上における総和)を複数時相に亘って示したグラフと、各時相ごとに算出される流出エネルギーの算出値(流出ライン上における総和)を複数時相に亘って示したグラフを形成する。これにより、図4に一点鎖線で示す流入エネルギーの波形と破線で示す流出エネルギーの波形が得られる。
【0065】
なお、流入エネルギーと流出エネルギーとエネルギー損失の波形は、互いに時間軸を揃えて、つまり互いに同じ時相に対応した算出値を同じ時相に対応付けて表示されることが望ましい。もちろん、流入エネルギーと流出エネルギーとエネルギー損失の波形が、それぞれ個別に表示されてもよい。
【0066】
また、表示処理部80は、心臓内腔に関する超音波画像の画像データに対して、関心領域内の各サンプル点ごとに、そのサンプル点のエネルギー損失に応じた表示処理を施すことにより、心臓内腔におけるエネルギー損失の分布状態を示した表示画像を形成してもよい。
【0067】
図5は、エネルギー損失の分布に係る表示画像の具体例を示す図である。図5<A>には、関心領域が設定された心臓内腔に関する超音波画像(Bモード画像)に対して、関心領域内の複数サンプル点について、各サンプル点ごとにそのサンプル点におけるエネルギー損失値に応じた色相により色付け処理を施した表示画像が図示されている。
【0068】
表示処理部80は、例えば、エネルギー損失値が比較的大きな各サンプル点の画像部分に黄色を基調とした色づけ処理を施し、エネルギー損失値が比較的小さな各サンプル点の画像部分に赤色を基調とした色づけ処理を施すことにより、図5<A>の表示画像を形成する。もちろん、黄色と赤色とは異なる色を基調としてエネルギー損失値の大きさが表現されてもよいし、輝度の大きさや模様の変化等によりエネルギー損失値の大きさが表現されてもよい。
【0069】
また、表示処理部80は、関心領域内の複数サンプル点における速度ベクトルに基づいて、血流の流れを示す流線を形成し、図5<A>に示す画像上に、流線を重ねて表示することにより、図5<B>に示す表示画像を形成してもよい。
【0070】
なお、流線は、例えば、複数の開始点について、各開始点ごとにその開始点を起点として2次元の速度ベクトルの分布に従って血流の流れを追跡することにより得ることができる。例えば、各開始点から、その開始点の位置における血流の速度ベクトルの方向に進んで追跡点が探索され、さらに、その追跡点の位置における血流の速度ベクトルが参照されて、その速度ベクトルの方向に進んで次の追跡点が探索される。こうして、各開始点ごとに血流の速度ベクトルの分布に従って次々に追跡点TPが探索され、血流の流線が形成される。これにより、図5<B>に示すように複数の開始点に対応した複数の流線を形成することができる。
【0071】
次に、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーについて説明する。エネルギー演算部70は、内腔ライン上における速度情報に基づいて、心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーを算出する。
【0072】
図6は、内腔ライン52から運動エネルギーを算出する具体例を示す図である。運動エネルギーの算出には内腔ライン52上の複数のトレースポイントPが利用される。また、互いに隣接する2つのトレースポイント(P1,P2)を結ぶ直線が演算ラインとされ、演算ラインの中点(xh,yh)を始点として、演算ラインに対して直交する法線ベクトル(xd,yd)が設定される。そして、各演算ラインごとに、次式により、運動エネルギーが算出される。
【0073】
【数3】
【0074】
数3式では、演算ライン上における複数サンプル点について、各サンプル点ごとに速度ベクトル(U,V)に基づいて運動エネルギーが算出され、演算ライン上における複数サンプル点についての運動エネルギーの総和をサンプル総数で割り算し、さらに面積変化Qを乗算している。面積変化Qは、演算ライン上の中点における流速ベクトル(wU,wV)と法線ベクトル(xd,yd)の内積((xd×wU)+(yd×wV))により得られる。
【0075】
なお、演算ライン上における各サンプル点の速度ベクトル(U,V)は、演算ライン上(内腔ライン52上)の画像データを利用したパターンマッチングにより算出されてもよいし、演算ライン上の近傍における血流の速度ベクトルに基づいて算出されてもよい。
【0076】
エネルギー演算部70は、内腔ライン52内における複数の演算ラインについて、各演算ラインごとに、数3式に基づいて運動エネルギーを算出する。そして、例えば複数の演算ライン(望ましくは全ての演算ライン)から得られる運動エネルギーの総和を算出し、その総和を心臓内腔に及ぼされる運動エネルギーの総量とする。エネルギー演算部70は複数時相に亘って各時相ごとに運動エネルギーの総量を算出する。
【0077】
図7は、運動エネルギー総量の時間的な変化を示すグラフの具体例を示す図である。図7には、横軸を時間軸として縦軸に算出値を示したグラフが図示されている。
【0078】
表示処理部80は、各時相ごとに算出される運動エネルギーの総量を複数時相に亘って示したグラフを形成する。これにより、図7に破線で示す運動エネルギーの波形が得られる。なお、表示処理部80は、各時相ごとに算出されるエネルギー損失の算出値を複数時相に亘って示したグラフを形成し、図7に示すように、運動エネルギーの波形(破線)と共にエネルギー損失の波形(実線)を表示させてもよい。もちろん、運動エネルギーの波形のみを個別に表示させてもよい。また、エネルギー損失と運動エネルギーの比率(エネルギー損失/運動エネルギー)が算出され、心臓の負荷状態を評価する指標値として表示されてもよい
【0079】
図6に戻り、エネルギー演算部70は、運動エネルギーの総量を算出するにあたり、心臓内腔の内側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量と、心臓内腔の外側に向かう速度情報に基づく運動エネルギーの総量を算出してもよい。
【0080】
例えば、数3式において、面積変化Qが正(プラス)となる複数の演算ラインについての運動エネルギーの総和と、面積変化Qが負(マイナス)となる複数の演算ラインについての運動エネルギーの総和が、別々に算出されてもよい。また、運動エネルギーの波形を形成する際に、各時相ごとに、面積変化Qが正となる運動エネルギーの総和と、面積変化Qが負となる運動エネルギーの総和のうち、絶対値の大きい方を選択して、複数時相に亘る運動エネルギー波形を形成してもよい。もちろん、各時相ごとに、面積変化Qが正となる運動エネルギーの総和と、面積変化Qが負となる運動エネルギーの総和について、2つの総和の合計値や差分値を算出し、合計値や差分値の波形を形成してもよい。
【0081】
図1の超音波診断装置を利用することにより、例えば、流入エネルギーと流出エネルギーに基づいて血流の流量が十分か否かを診断し、さらに、エネルギー損失に基づいて心臓の負担(心負荷)が大きいか否かを診断すること等が可能になる。
【0082】
例えば、流入エネルギーや流出エネルギーが比較的大きければ、例えば基準値よりも大きければ、被検体の体内において十分な血流の流量を維持できていることが予想される。また、十分な血流の流量が維持できているうえに、心臓内腔の血流内におけるエネルギー損失が比較的小さければ、例えば基準値よりも小さければ、心臓が正常である可能性が高い。しかし、十分な血流の流量が維持できていたとしても、心臓内腔の血流内におけるエネルギー損失が大きいと、例えば基準値よりも大きいと、十分な血流の流量を維持するために、心臓が血流に大きな運動エネルギーを与えることとなり、心臓の負担(心負荷)が大きいことが予想される。
【0083】
なお、上記診断例はあくまでも一例に過ぎない。また、図1の超音波診断装置を利用した診断は、医師等の専門家による指導に基づいて、慎重に行われるべきことは言うまでもない。
【0084】
以上、本発明の実施において好適な超音波診断装置について説明したが、例えば、図1に示した速度ベクトル演算部40と関心領域設定部50と内腔ライン速度演算部60とエネルギー演算部70と表示処理部80のうちの少なくとも一つをコンピュータにより実現し、そのコンピュータを本発明に係る情報処理装置として機能させてもよい。
【0085】
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0086】
10 プローブ、12 送受信部、20 画像形成処理部、30 ドプラ処理部、40 速度ベクトル演算部、50 関心領域設定部、60 内腔ライン速度演算部、70 エネルギー演算部、80 表示処理部、82 表示部、90 制御部。
【要約】
【課題】超音波を利用して心臓の診断情報を得る改良技術を提供する。
【解決手段】画像形成処理部20は、超音波の受信信号に基づいて生体内の画像データを形成する。ドプラ処理部30は、超音波の受信信号に基づいて生体内のドプラ情報を生成する。速度ベクトル演算部40は、生体内のドプラ情報に基づいて血流の速度情報(速度ベクトル)を生成する。関心領域設定部50は、画像データ内において心臓内腔に対応した関心領域を設定する。エネルギー演算部70は、心臓内腔に対応した関心領域内における血流の速度情報に基づいて、心臓内腔の血流内で失われたエネルギーの損失量を算出する。
【選択図】図1
図6
図7
図1
図2
図3
図4
図5