(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平坦部が長手方向に延びている管状の密閉容器と、前記密閉容器の内部に封入された作動流体と、毛管力によって作動液を流動させるウイックとを備え、前記密閉容器の長手方向で一方端側が前記作動液を蒸発させる蒸発部となり、前記密閉容器の長手方向で他端側が前記作動流体を凝縮させる凝縮部となるように構成された扁平ヒートパイプにおいて、
前記密閉容器は、上壁部および下壁部が前記平坦部に形成され、
前記ウイックは、
前記密閉容器の長手方向に沿って延びるように形成され、前記凝縮部で凝縮された作動液を毛管力によって前記蒸発部へ還流させる細線束もしくは多孔質体からなる還流用ウイックと、
前記還流用ウイックによって前記蒸発部に還流された前記作動液を、毛管力によって前記蒸発部内に拡散させる微細溝からなる液拡散用ウイックとを含み、
前記還流用ウイックは、前記上壁部と前記下壁部とのうち少なくともいずれか一方の内壁面に前記凝縮部から前記蒸発部に到るように一連に設けられ、
前記液拡散用ウイックは、長手方向で前記蒸発部内のみに設けられ、かつ前記還流用ウイックを構成している前記微細溝は前記還流用ウイックに交差して前記密閉容器の周方向に延びているとともに、前記微細溝の長手方向での一部の開口部が前記還流用ウイックによって蓋がされて前記還流用ウイックによって覆われている部分がトンネル状に形成されている
ことを特徴とする扁平ヒートパイプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、扁平ヒートパイプは、密閉容器が平坦部を含む管状に形成されている。扁平ヒートパイプが薄型に形成された場合、密閉容器の内部空間は厚さ方向に狭くなるものの、幅方向に確保された内部空間を蒸気流路として利用することになる。その場合、扁平型かつ薄型の密閉容器では内容積が小さいため、作動流体の流動性能を向上させることが難しい。
【0007】
例えば、作動液の還流性能を向上させるために、密閉容器内部に大きなウイック構造体を設けた場合、ウイック構造体が内部空間の大部分を占め、蒸気流路となる内部空間を確保することが困難になる。一方、作動液の還流性能が低いと、蒸発部で作動液が不足してドライアウトが生じてしまう。
【0008】
特許文献1に記載のヒートパイプは、密閉容器内壁面に微細溝が設けられている。そのため、特許文献1に記載された構成を扁平ヒートパイプに適用した場合、蒸気流路となる内部空間は確保できる。
【0009】
しかしながら、その扁平ヒートパイプでは、凝縮部で凝縮した作動液を重力によって蒸発部へ還流させるため、扁平ヒートパイプの姿勢と重力方向との関係によって還流特性が大きく変化してしまう。例えば、その扁平ヒートパイプを水平に配置した場合、密閉容器が薄型であるため、微細溝内の作動液に重力が作用しても、蒸発部側へ向けて流動する作動液はごく一部になってしまう。つまり、作動流体の流動性能が損なわれて熱輸送性能が低下する。
【0010】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、容易に作製できるとともに、密閉容器の内部空間が非常に狭い場合でも、熱輸送性能を向上させることができる扁平ヒートパイプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明は、平坦部が長手方向に延びている管状の密閉容器と、前記密閉容器の内部に封入された作動流体と、毛管力によって作動液を流動させるウイックとを備え、前記密閉容器の長手方向で一方端側が前記作動液を蒸発させる蒸発部となり、前記密閉容器の長手方向で他端側が前記作動流体を凝縮させる凝縮部となるように構成された扁平ヒートパイプにおいて、前記密閉容器は、上壁部および下壁部が前記平坦部に形成され、前記ウイックは、前記密閉容器の長手方向に沿って延びるように形成され、前記凝縮部で凝縮された作動液を毛管力によって前記蒸発部へ還流させ
る細線束もしくは多孔質体からなる還流用ウイックと、前記還流用ウイックによって前記蒸発部に還流された前記作動液を、毛管力によって前記蒸発部内に拡散させ
る微細溝からなる液拡散用ウイックとを含み、前記還流用ウイックは、前記上壁部と前記下壁部とのうち少なくともいずれか一方の内壁面
に前記凝縮部から前記蒸発部に到るように一連に設けられ、前記液拡散用ウイックは、長手方向で前記蒸発部内のみに設けられ、かつ前記還流用ウイッ
クを構成している前記微細溝は前記還流用ウイックに交差して前記密閉容器の周方向に延びているとともに、前
記微細溝の長手方向での一部の開口部が前記還流用ウイックによって蓋がされて前記還流用ウイックによっ
て覆われている部分がトンネル状に形成さ
れていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明は、上記の発明において、前記液拡散用ウイックは、前記蒸発部において、周方向で前記密閉容器の内面の全周に亘って設けられていることを特徴とする扁平ヒートパイプである。
【0013】
この発明は、上記の発明において、前記液拡散用ウイックは、前記蒸発部内で前記還流用ウイックが設けられている前記平坦部のみに設けられていることを特徴とする扁平ヒートパイプである。
【0014】
この発明は、上記の発明において、前
記微細溝は、前記還流用ウイックが設けられている前記平坦部のうち当該還流用ウイックとは非接触の内壁面から窪んで周方向に延びている部分
を有していることを特徴とする扁平ヒートパイプである。
【0015】
この発明は、上記の発明において
、前記多孔
質体は、金属粉末の焼結体によって形成され、前
記微細溝は、幅方向で、前記還流用ウイックが設けられている前記平坦部のうち当該還流用ウイックとは非接触の内壁面に設けられていることを特徴とする扁平ヒートパイプである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、周方向に延びる溝ウイックが蒸発部に設けられていることにより、蒸発部でのぬれ性が良くなり熱抵抗を低減できるとともに、蒸発部での液拡散性能が向上するので蒸発性能を向上させることができる。さらに、還流用ウイックによって作動液の還流性能が向上する。したがって、熱抵抗を抑制し、かつ作動液の流動性能を向上させることができるので、熱輸送性能が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の一例における扁平ヒートパイプについて具体的に説明する。
【0019】
図1は、この具体例の扁平ヒートパイプを模式的に示した図である。扁平ヒートパイプ1は、密閉容器2内に封入された図示しない作動流体の潜熱を利用する熱輸送素子である。作動流体は、扁平ヒートパイプ1の熱輸送媒体であり、周知の相変化物質によって構成されている。
【0020】
密閉容器2は、長手方向の両端が封止された管状の中空構造に形成され、かつ長手方向に沿って延びる平坦部を有する扁平型に形成されている。
図1に示すように、直線状に延びる密閉容器2において、長手方向で一方端側に形成された蒸発部3と、長手方向で蒸発部3とは反対側の他端部分に形成された凝縮部4と、蒸発部3と凝縮部4とを接続する断熱部5とを備えている。
【0021】
蒸発部3は、図示しない発熱体と接触して、発熱体で生じた熱を受け取るように構成されている。蒸発部3では、発熱体の熱によって液相の作動流体(以下「作動液」という)が蒸発する。例えば、扁平ヒートパイプ1は、密閉容器2の長さのうち三分の一程度が蒸発部3として構成されている。
【0022】
凝縮部4は、作動流体の熱を密閉容器
2の外部へ放熱するように構成されている。つまり、凝縮部4は蒸発部3で生じた蒸気を凝縮させる構成である。例えば、凝縮部4において、密閉容器2の外面に図示しない放熱フィンなどの放熱部材が設けられてよい。また、断熱部5は密閉容器2内を長手方向に連通させる流体流路を形成する。
【0023】
扁平ヒートパイプ1において、密閉容器2内には、毛管力によって作動液を流動させるウイックが設けられている。この具体例のウイックには、それぞれに作動液の流動方向および機能が異なる還流用ウイック11と液拡散用ウイック12とが含まれる。
【0024】
還流用ウイック11とは、毛管力によって凝縮部4で凝縮した作動液を蒸発部3に還流させるためのウイックである。この具体例の還流用ウイック11は、複数本の銅細線からなる金属製の細線束によって形成された線条ウイックである。束状に形成された還流用ウイック11の内部には、銅細線同士の間に長手方向に延びる隙間が形成されている。その隙間が毛管力によって作動液を還流させる液体流路(還流路)となる。密閉容器2内の蒸発部3と凝縮部4と断熱部5とにおいて、還流用ウイック11は、幅方向で中央部分に配置され、かつ長手方向に延びて凝縮部4から断熱部5を介して蒸発部3に到るように一連に形成されている。
【0025】
液拡散用ウイック12とは、還流用ウイック11によって蒸発部3内に還流された作動液を、毛管力によって周方向に流動(液拡散)させるためのウイックである。この具体例の液拡散用ウイック12は、長手方向では蒸発部3内のみに設けられ、かつ周方向では密閉容器2内の全周に亘って延びる螺旋状に形成された溝ウイックにより構成されている。したがって、液拡散用ウイック12は、溝内の作動液を毛管力によって蒸発部3内で周方向へ流動(液拡散)させるように機能する。
【0026】
ここで、
図2,
図3を参照して、扁平ヒートパイプ1の内部構造について詳細に説明する。
図2は、密閉容器2の斜視図である。
図3(a)は、
図1のA−A断面を示し、蒸発部3において扁平ヒートパイプ1を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図3(b)は、
図1のB−B断面を示し、蒸発部3と断熱部5との境界部分において幅方向中央で扁平ヒートパイプ1を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
図3(c)は、密閉容器2内における還流用ウイック11と液拡散用ウイック12との幅方向での位置関係を模式的に示した説明図である。なお、
図3(c)には、還流用ウイック11の下側を延びている液拡散用ウイック12を点線で示してある。
【0027】
図2に示すように、密閉容器2は、扁平型に形成された金属管であり、壁部のうち下壁部21と上壁部22とが平坦部に形成されている。下壁部21および上壁部22は、所定幅で長手方向に延びる平坦部として、蒸発部3から凝縮部4に到る長手方向全域に亘って形成されている。例えば、丸型に形成された金属管をプレスすることにより平坦部の下壁部21および上壁部22が形成されて密閉容器2は扁平型に形成される。
【0028】
図3(a)に示すように、密閉容器2の内面2aは、周方向で異なる箇所を形成する、平坦面に形成された下壁部21の内壁面(以下「第一内面」という)21aと、同じく平坦面に形成された上壁部22の内壁面(以下「第二内面」という)22aとを含む。
図3(b)に示すように、凝縮部4および断熱部5(図示せず)の内面2aは、長手方向に沿って滑らかな面に形成されている。一方、蒸発部3の内面2aは、
図2,
図3(b),
図3(c)に示すように、液拡散用ウイック12が周方向に延びる螺旋状に形成されていることにより、長手方向で凹凸面に形成されている。密閉容器2の内部空間は、内面2aによって区画され、幅方向の寸法が厚さ方向の寸法よりも大きく形成されている。
【0029】
液拡散用ウイック12は、密閉容器2の内面2aから窪んでいる微細溝に形成され、かつ周方向に延びる螺旋状に形成されている。蒸発部3内において、周方向で内面2aの全周に亘り液拡散用ウイック12が形成されている。
【0030】
また、液拡散用ウイック12は、螺旋状に繋がっている一本の微細溝のみによって形成されてもよく、あるいは独立した螺旋状の微細溝を複数本有するように形成されてもよい。要するに、液拡散用ウイック12内の作動液は、液拡散用ウイック12の毛管力により蒸発部3内で周方向および長手方向に流動することになる。
【0031】
還流用ウイック11は、所定の厚さで長手方向に延びており、下端部分11aが下壁部21の第一内面21aと接触している。すなわち、第一内面21aは還流用ウイック11が設けられた設置面となる。下壁部21に設けられている還流用ウイック11は、幅方向で中央部分が両端側よりも厚くなる山状に形成され、かつ第二内面22aとは非接触である。例えば、銅製の密閉容器2の場合、第一内面21a上に複数本の銅細線からなる金属製の細線束を配置して焼結することにより、下端部分11aの銅細線が第一内面21aと一体化(接合)した還流用ウイック11が形成される。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、蒸発部3内において還流用ウイック11の下側には第一内面21aから窪んでいる液拡散用ウイック12が周方向に延びているので、還流用ウイック11の下端部分11aは、周方向で第一内面21aと接触する部分と、厚さ方向で液拡散用ウイック12上に設けられて還流路を第一内面21aに長手方向に架け渡す部分(以下「蓋部分」という)11bとが、長手方向で交互に連続することになる。要するに、液拡散用ウイック12のうち第一内面21aに形成された部分には、
図3(a),(b)に示すように、還流用ウイック11の蓋部分11bによって溝開口部(上方開口部)が蓋をされてトンネル状になる部分(以下「トンネル部分」という)12aが含まれる。トンネル部分12aの溝開口部は、下端部分11aの蓋部分11bを介して還流用ウイック11内の隙間と厚さ方向で連通しているため、液拡散用ウイック12により生じる毛管力をトンネル部分12aから還流用ウイック11に作用させることができる。
図3(c)にはトンネル部分12aを点線で示してある。さらに、液拡散用ウイック12には、
図3(c)に実線で示すように、トンネル部分12aの両端口から幅方向で還流用ウイック11の両側の第一内面21a(第一内面21aのうち還流用ウイック11とは非接触の面)に延び、かつ密閉容器2の内部空間に露出している部分(以下「露出部分」という)12bが含まれる。例えば、トンネル部分12aは液拡散用ウイック12の毛管力によって還流用ウイック11内の作動液を液拡散用ウイック12の溝内に吸引するように機能する。露出部分12bは、トンネル部分12aで吸引した作動液を周方向へ拡散させる液体流路(液拡散路)として機能するとともに、溝内で作動液が蒸発する場合には蒸気を密閉容器2の内部空間へ放出する開口部として機能する。
【0033】
ここで、扁平ヒートパイプ1による熱輸送サイクルについて説明する。扁平ヒートパイプ1の作動時、蒸発部3が図示しない発熱体で生じた熱を受け取ることによって、蒸発部3の内部で作動液が蒸発する。蒸発部3で生じた蒸気は、断熱部5を介して蒸発部3よりも圧力および温度が低い凝縮部4へ向けて流動する。蒸発部3から凝縮部4に到達した蒸気は、凝縮部4で放熱されて凝縮する。凝縮部4で凝縮した作動液は、密閉容器2の内部に設けられた還流用ウイック11によって、凝縮部4から断熱部5を介して蒸発部3へ還流される。蒸発部3に還流した作動液は、蒸発部3内に設けられた液拡散用ウイック12によって蒸発部3内に拡散される。そして、蒸発部3内に拡散された作動液が発熱体の熱によって再び蒸発し、上述した熱輸送サイクルを繰り返すことになる。
【0034】
特に、蒸発部3に作動液が還流する際、還流用ウイック11内を長手方向へ流動する作動液は、下端部分11aと液拡散用ウイック12とが長手方向で断続的に連通していることにより、スムーズに液拡散用ウイック12内へ流入できる。さらに、扁平ヒートパイプ1では、蒸発部3に液拡散用ウイック12が設けられていることにより、蒸発部3内で内面2aの表面粗さが増し、内面2aでのぬれ性が良くなる。これにより、蒸発部3での熱抵抗を低減することができる。ひいては、扁平ヒートパイプ1全体での熱抵抗を低減できる。また、
図3(c)に示すように、液拡散用ウイック12は長手方向に対し傾斜(直交を含む)して延びているので、長手方向に沿って延びる還流用ウイック11の銅細線が液拡散用ウイック12の溝内に落ち込まない構造となっている。
【0035】
次に、
図4,
図5を参照して、熱輸送性能の試験結果について説明する。この試験では、実施例と比較例とで、外径寸法は同じであるが内部構造が異なるヒートパイプを用いた。なお、この説明では、「長手方向長さ」を単に「長さ」と記載する。
【0036】
実施例とは、上述した具体例の扁平ヒートパイプ1と同様の構成を備え、下記の寸法に形成されたヒートパイプである。比較例は、扁平ヒートパイプ1とは異なり液拡散用ウイック12が形成されていない場合の構成を備える扁平ヒートパイプ100のことである。
図4(a),(b)に示すように、実施例および比較例において、密閉容器2の外形寸法は、長さが150mm、厚さが1.0mm、幅が9.1mmである。プレス加工前の外径が6.0mmの丸管(素形材)を用いて密閉容器2を作製した。また、実施例の液拡散用ウイック12は、溝幅0.15mm、溝深さ0.02mmに形成された細線溝がピッチ(溝同士の間隔)0.45mmで複数本形成されている。
【0037】
図4(a)に示すように、この試験では、発熱体として、長さ15mm、幅15mmに形成された電気ヒータHを用いた。つまり、電気ヒータHに通電した際の電力量に基づいて、電気ヒータHからヒートパイプへ入力される熱量(以下「入熱量」という)Q[W]が決まる。また、放熱部材として、長さ50mm、幅50mmに形成された金属製の放熱板Sを用いた。
【0038】
図4(b)に示すように、蒸発部3内の下壁部21の外面に電気ヒータHを面接触させ、かつ凝縮部4内の下壁部21の外面に放熱板Sを面接触させている。また、密閉容器2は長手方向が直角状に曲がるように形成されている。実施例および比較例のヒートパイプは、下壁部21を水平方向と平行にして試験装置に取り付けられ、複数点で温度を測定する。
【0039】
温度測定には周知の熱電対温度計を使用した。熱電対温度計による測定点は、電気ヒータHの表面温度Th[℃]、凝縮部4の表面温度Tc[℃]、断熱部5の表面温度Ta[℃]を測定対象とする三点である。
【0040】
例えば、
図4(a),(b)に示すように、電気ヒータHの表面温度Th[℃]について、電気ヒータHの外面うち下壁部21の外面と接触する部分を測定対象とする。凝縮部4の表面温度Tc[℃]については、凝縮部4内の上壁部22の外面を測定対象とする。断熱部5の表面温度Ta[℃]については、断熱部5内の上壁部22の外面を測定対象とする。
【0041】
室温の条件下で、電気ヒータHに通電することにより蒸発部3を加熱し、その際の入熱量Q[W]と、電気ヒータHの表面温度Th[℃]と、凝縮部4の表面温度Tc[℃]と、断熱部5の表面温度Ta[℃]とを測定した。その測定方法は、異なる入熱量Q[W]に対して各測定点の温度を測定した。所定の入熱量Q[W]を変化させた際、断熱部5の表面温度Taが60℃で一定になってから、電気ヒータHの表面温度Th[℃]と凝縮部4の表面温度Tc[℃]を測定する。
【0042】
そして、上述した各測定値に基づいて、実施例の熱抵抗R[℃/W]と、比較例の熱抵抗R[℃/W]とをそれぞれに求める。熱抵抗Rは、「R=(Th−Tc)/Q」の式によって求まる。その結果を
図5に示してある。
図5には、実施例による試験結果を丸プロットを通過する実線で示し、比較例による試験結果を一点鎖線で示してある。
【0043】
図5に示すように、実施例では、熱抵抗Rが0.50[℃/W]、最大熱輸送量QMAXが22Wとなる。比較例では、熱抵抗Rが0.58[℃/W]、最大熱輸送量QMAXが16[W]となる。最大熱輸送量QMAX[W]とは、ヒートパイプが正常に作動することができる入熱量Q[W]の最大値である。
【0044】
例えば、入熱量Q[W]が最大熱輸送量QMAX[W]より大きい場合、蒸発部3でドライアウトが生じてしまう。この場合、ドライアウトが生じたことによって熱抵抗R[℃/W]が急激に増大し始める。そのため、入熱量Q[W]を増大し続けた試験結果から、熱抵抗R[℃/W]が急激に増大し始める際の入熱量Q[W]を最大熱輸送量QMAX[W]とすることができる。したがって、最大熱輸送量QMAX[W]が大きいほど高性能なヒートパイプと言える。
【0045】
図5に示す実施例の試験結果から、入熱量Qが22Wを超えると熱抵抗R[℃/W]が急増することが分かる。つまり、実施例のヒートパイプでは、入熱量Qが22Wよりも大きいとドライアウトを生じてしまうので、最大熱輸送量QMAX[W]が22Wとなる。
【0046】
比較して説明すると、実施例は比較例より
も熱抵抗R[℃/W]が小さい。また、最大熱輸送量QMAX[W]は、実施例のほうが比較例よりも大きい。以上の試験結果から、実施例のほうが、比較例よりもヒートパイプとしての性能が優れていることを確認できた。
【0047】
以上説明した通り、この具体例の扁平ヒートパイプによれば、蒸発部に液拡散用ウイックとして機能する溝ウイックが設けられていることにより、蒸発部でのぬれ性が良くなり、熱抵抗を低減することができる。したがって、熱輸送効率を向上させることができる。
【0048】
なお、この発明に係る扁平ヒートパイプは、上述した具体例に限定されず、この発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0049】
上述した具体例では、液拡散用ウイック12が螺旋状に形成されているが、この発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、液拡散用ウイック12は周方向に沿って延びる円環状に形成されてもよい。この場合、液拡散用ウイック12は、円環状に複数本形成され、一本の微細溝が独立しており、他の微細溝とは繋がらないように構成されている。
【0050】
さらに、液拡散用ウイック12が周方向で内面2aの全周に形成された例について説明したが、この発明はこれに限定されない。つまり、液拡散用ウイック12は、少なくとも還流用ウイック11が設けられた壁部に形成されていればよい。
【0051】
例えば、上述した扁平ヒートパイプ1のように還流用ウイック11が下壁部21に設けられている場合、
図7(a)に示すように、液拡散用ウイック12は、密閉容器2の内面2aのうち、第一内面21aのみに形成された変形例を構成することができる。つまり、その変形例の一例として、蒸発部3の第一内面21aには、長手方向に対して直交する液拡散用ウイック12が幅方向に沿って延びている扁平ヒートパイプ1であってよい。この場合、幅方向においてトンネル部分12aの両側に露出部分12bが繋がっている。
【0052】
あるいは、その変形例の他の例として、
図7(b)に示すように、上述した円環状の液拡散用ウイック12が第一内面21aのみに形成される構成であってもよい。その液拡散用ウイック12は、溝開口部(上方開口部)のうち幅方向で両側が還流用ウイック11とは非接触の露出部分12bとなる。すなわち、液拡散用ウイック12は、露出部分12bがトンネル部分12aから幅方向に延び、還流用ウイック11(蓋部分11b)よりも幅方向で外側に延びていることになる。
【0053】
また、この発明における還流用ウイックは、毛管力によって長手方向に作動液を還流させる線条ウイックであればよく、上述した具体例のように銅細線のみからなる金属製の細線束に限定されない。つまり、線条ウイックは、細線束によって形成されてもよく、金属粉末の焼結体である多孔質ウイックによって形成されてもよい。
【0054】
例えば、還流用ウイック11が細線束によって形成された場合、極細線としては、銅細線の他に、カーボンファイバなどがある。したがって、還流用ウイック11として、銅細線のみからなる細線束や、銅細線とカーボンファイバとの両方を含む細線束などを採用できる。この場合、極細線によって長手方向に熱伝導するため熱抵抗を抑制できる。なお、この具体例の還流用ウイック11は、銅細線のみからなる金属製の細線束に形成された線条ウイックである。
【0055】
あるいは、還流用ウイック11が金属粉末の焼結体(多孔質ウイック)によって形成された場合、多孔質ウイックによって大きな毛管力を作動液に作用させることができるようになる。つまり、多孔質ウイックによれば作動液を吸引させ易くすることができる。
【0056】
さらに、上述した具体例では、還流用ウイック11が下壁部21のみに設けられていたが、この発明はこれに限定されない。例えば、
図8(a)に示すように、上述した還流用ウイック11に加え、幅方向で中央部分に配置され、かつ第二内面22aに接触するように設けられた第二の還流用ウイック13を備えていてもよい。もしくは、
図8(b)に示すように、還流用ウイック11と第二の還流用ウイック13とが幅方向で異なる位置に配置されてもよい。それら
図8(a),(b)に示す場合、還流用ウイック11,13同士は非接触である。これにより、幅方向に連通する蒸気流路を確保できる。さらに、扁平ヒートパイプ1を上下方向で逆にして発熱体に接触させても、同様の熱輸送性能を発揮することができる。あるいは、還流用ウイックの幅方向断面は、上述した山状に限定されない。例えば、
図8(c)に示す還流用ウイック11のように、第一内面21aおよび第二内面22aと接触する構成であってもよい。なお、第二の還流用ウイック13の構成要素は、上述した還流用ウイック11と同様であってよい。
【解決手段】扁平ヒートパイプ1は、作動流体が封入されている密閉容器2内に、凝縮部4で凝縮された作動液を毛管力によって蒸発部3へ還流させる還流用ウイック11と、還流用ウイック11によって蒸発部3に還流された作動液を、毛管力によって蒸発部3内に拡散させる液拡散用ウイック12とを備え、液拡散用ウイック12は、蒸発部3内のみに設けられ、かつ還流用ウイック11が設けられている内壁面から窪み密閉容器2の周方向に延びていることを特徴とする。