(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る水力発電装置について説明する。
【0015】
本発明に係る水力発電装置は、1000kW以下の小水力発電を行う。たとえば、本発明に係る水力発電装置は、大規模停電が起きて、電気が復旧しない地域などで、簡易的な発電所として機能し、周囲の住居に電気を供給することができる。以下の実施の形態では、河川に設置する場合について説明するが、本発明に係る水力発電装置は、水が流れている流路に対しても応用することができる。流路の例には、一般河川や、砂防ダム、農業用水、上水道、下水道、工場循環水、工業用水などが含まれる。
【0016】
[実施の形態1]
実施の形態1では、揚水装置が1つの水車駆動ポンプを有する水力発電装置について説明する。
【0017】
(水力発電装置の構成)
図1は、実施の形態1に係る水力発電装置100の断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る水力発電装置100は、河川に流れる水を堰き止める袋状の堰体110と、堰体110より河川の上流側の水を堰体110より河川の下流側に送る送水路120と、堰体110より河川の下流側に設けられた揚水装置130と、送水路120からの水を揚水装置130に導く第1導水路140と、揚水装置130より河川の下流側に設けられた発電装置150と、揚水装置130から揚水される水を発電装置150に導く第2導水路160とを有している。本実施の形態では、揚水装置130は、1つの水車駆動ポンプ131を有する。
【0018】
この水力発電装置100は、堰体110により河川を堰き止めて、水位を第1の高さh1まで上昇させる。次いで、第1の高さh1から第1の落差で落下した水の水力のみを利用して、揚水装置130により当該水の一部を第2の高さh2に揚水させる。次いで、第2の高さh2にある水を第2の落差で落下させることにより、発電装置150で発電を行う。第2の高さh2は、第1の高さh1より高く、第2の落差は、第1の落差より大きい。ここで、「第1の高さh1から第1の落差で落下させる」とは、
図1に示されるように、落下前の水の水位(A)と、落下後の水車駆動ポンプ131に流入するときの水の水位(B)との水位差により水を移動させることを意味する。また、「第2の高さh2から第2の落差で落下させる」とは、落下前の揚水された水の水位(C)と、落下後の発電装置150に流入するときの水の水位(D)との水位差により水を移動させることを意味する。さらに、第1の落差とは、第1の高さh1から落下した水の水力を利用して揚水する際に、水車駆動ポンプ131による揚水に実質的に寄与しうる、A−B間の総落差から損失落差を差し引いた有効落差を意味する。また、第2の落差とは、第2の高さh2から落下した水の水力を利用して発電する際に、発電装置150による発電に実質的に寄与しうる、C−D間の総落差から損失落差を差し引いた有効落差を意味する。損失落差の例には、河川の勾配や導水管の摩擦などによる損失が含まれる。
【0019】
堰体110は、河川を堰き止めて、水位を第1の高さh1に上昇させる。堰体110は、袋状に形成されており、内部に空気を入れる空気穴が形成されている。堰体110の上流側の面には、送水路120の上流端口121(取水口)が形成されている。また、堰体110の下流側の面には、送水路120の下流端口122が形成されている。第1の高さh1は、後述する水車駆動ポンプ131が第1の高さh1から第1の落差で落下した水を第2の高さh2に揚水するために最低限必要な高さより高ければ特に限定されない。第1の落差は、発電装置150が発電するために最低限必要な落差より小さくてもよいし、大きくてもよい。たとえば、第1の落差は、2m以上かつ6m未満である。
【0020】
堰体110は、空気穴を介して内部に空気を入れることによって膨張して堰として機能する。逆に、堰体110は、空気穴を介して内部から空気を抜き出すことによって収縮する。空気穴が形成される位置は、特に限定されないが、堰体110の幅方向の端部に形成されていることが好ましい。これにより、堰体110は、その内部に川岸から簡単に空気を送り込まれることができる。
【0021】
空気穴の数は、特に限定されず、幅方向の一方の端部に1つ形成されていてもよいし、幅方向の両端部に1つずつ形成されていてもよい。また、幅方向の両端部に複数個ずつ形成されていてもよい。空気穴が数多く形成されていれば、堰体110を設置および撤去する時間が短縮されうる。
【0022】
堰体110へ空気を入れる方法は、特に限定されない。堰体110へ空気を入れる方法の例には、ブロアーにより空気を入れる方法や、ポンプにより空気を入れる方法などが含まれる。これにより、堰体110は、単純な装置で膨張され、簡単に河川に設置されうる。
【0023】
堰体110に入れる空気の量は、特に限定されない。大量に堰体110内に空気を入れれば、第1の高さh1(水位)を上昇させることができ、結果的に、発電量を増大させることができる。逆に、空気の量を少なくすれば、第1の高さh1(水位)が低くなるため、発電量が低減する。すなわち、堰体110の内部の空気量を調整することによって、発電量が調整されうる。
【0024】
堰体110から空気を抜く方法は、特に限定されず、空気穴を開放する方法や、吸引ポンプにより吸引する方法が含まれる。また、空気穴の開放および吸引ポンプによる吸引を併用してもよい。空気穴を開放すると、河川の水が堰体110を押し潰すように流れるため、堰体110から空気を効率よく抜くことができる。また、吸引ポンプによる吸引を併用することで、堰体110の内部から完全に空気を抜くことができる。撤去する際も、チェーンブロックなどで吊り上げるようにすれば、簡単に河川から撤去することができる。
【0025】
膨張した堰体110の形状は、特に限定されず、設置される河川の形状に合わせて適宜設計されうる。たとえば、河川の幅方向の断面形状が台形状であった場合、膨張した堰体110の形状を台形柱状となるように形成すればよい。または、河川の幅方向の断面形状が半円状であった場合、膨張した堰体110の形状を半円柱状となるように形成すればよい。
【0026】
堰体110の水の流れ方向の長さは、河川を堰き止めることができれば特に限定されない。当該長さは、河川の水の流量や流速に応じて、適宜設定されうる。
【0027】
堰体110の断面積は、河川の断面積より大きく形成されていることが好ましい。堰体110の断面積が河川の断面積より大きく形成されていれば、堰体110が河川の形状より大きくなる。したがって、堰体110の内部に空気を入れると、堰体110は河川の底面および側面を押し付けるように膨張する。これにより、堰体110を杭などで固定することなく、河川を堰き止めることができる。
【0028】
また、堰体110の内部の底面には、水の流れ方向に並んで重り(図示省略)が入っていてもよい。重りがあることで、堰体110の設置時に、堰体110が水面に水没するため、適切に堰体110を膨張させ、河川を堰き止めることができる。また、撤去の際に堰体110が河川の水によって流されることがない。一方、重りがない場合、設置する際に堰体110が河川に浮いてしまい、適切に設置できないおそれがある。
【0029】
堰体110の素材は、特に限定されないが、耐久性および耐衝撃性の観点から、ゴム引布で構成されていることが好ましい。ゴム引布は、ゴムおよび基布を有している。ゴムの種類は、特に限定されず、クロロプレン系ゴム、EPDMエラストマー、ポリウレタンなどが含まれる。また、基布の種類は、特に限定されず、綿織布、ナイロン平織布、ポリエステル平織布などが含まれる。さらにゴム引布の厚みおよびプライ数は、特に限定されず、厚みは2〜15mm程度であればよく、プライ数は1〜3程度であればよい。
【0030】
送水路120は、堰体110より河川の上流側の水を河川の下流側に送る。送水路120は、上流端口121が堰体110の上流側の面に形成されており、下流端口122が堰体110の下流側の面に形成されている。すなわち、送水路120は、水の流れ方向に堰体110を貫通して形成されている。送水路120の下流端口122は、第1導水路140の第1上流口141と、第1接続ジョイント123を介して接続されている。
【0031】
堰体110における送水路120の上流端口121および下流端口122の位置は、特に限定されない。たとえば、上流端口121および下流端口122の中心位置は、堰体110の高さを「1」とした場合に、下端部から3/4程度の位置でればよい。これにより、例えば、洪水などで河川に材木などが流れてきた場合であっても、下流側にある揚水装置130(水車駆動ポンプ131)および発電装置150には、水しか流れ込まないため、揚水装置130および発電装置150が故障することがない。
【0032】
送水路120の径は、揚水装置130(水車駆動ポンプ131)を駆動することができれば特に限定されない。送水路120の径は、上流端口121から下流端口122まで同一の太さでもよいし、上流端口121の径が下流端口122の径より小さくてもよいし、下流端口122の径が上流端口121の径より小さくてもよい。揚水装置130(水車駆動ポンプ131)による揚水高さおよび揚水量を増大させる観点からは、送水路120の径は、揚水装置130への水量が最大量となる径であることが好ましい。送水路120の径は、河川の水量や流速によって、適宜設計されうる。なお、送水路120の上流端口121には、ゴミが送水路120内に入り込むのを防ぐためにゴミよけ網などが取付けられていてもよい。
【0033】
揚水装置130は、第1の高さh1から第1の落差で落下した水の水力を利用して、当該水の一部を第2の高さh2に揚水する。本実施の形態では、揚水装置130は、1つの水車駆動ポンプ131を有する。揚水装置130は、堰体110より河川の下流側に設けられ、かつ送水路120よりも低い位置に配設されている。第1の高さh1から落下した水が水車駆動ポンプ131の水車を回し、水車駆動ポンプ131が駆動される。また、第2の高さh2は、第1の高さh1よりも高く、かつ発電装置150の水の水力を利用した発電に最低限必要な高さよりも高い。第2の落差は、例えば、6m以上かつ80m以下である。
【0034】
水車駆動ポンプ131の種類は、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。水車駆動ポンプ131は、水車と、水車に接続されたポンプとを有している。水車に接続されるポンプの例には、遠心ポンプ、多段ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどが含まれる。水車駆動ポンプ131の第1排水口132は、外部と連通している。揚水されなかった水は、第1排水口132から河川に排水される。
【0035】
第1導水路140は、送水路120からの水を揚水装置130(水車駆動ポンプ131)に導く。より具体的には、第1導水路140は、送水路120からの水を水車駆動ポンプ131の水車に導く。第1導水路140は、送水路120の下流端口122と、水車駆動ポンプ131の第1流入口133とを繋いでいる。第1導水路140の第1上流口141は、送水路120の下流端口122と、第1接続ジョイント123を介して接続されている。また、前述のとおり、第1導水路140の第1下流口142は、水車駆動ポンプ131の第1流入口133と、第2接続ジョイント135を介して接続されている。これにより、水力発電装置100を簡単に組み立てることができると共に、水車駆動ポンプ131に送られる水のロスをなくすことができる。
【0036】
第1導水路140の第1上流口141および第1下流口142は、同一形状に形成されている。すなわち、送水路120の下流端口122および水車駆動ポンプ131の第1流入口133は、同一形状に形成されている。これにより、水力発電装置100を組み立てる際に、第1導水路140の接続方向を間違えることがない。
【0037】
第1導水路140の素材は特に限定されないが、耐久性および耐衝撃性の観点から、ゴム引布で構成されていることが好ましい。前述のとおり、ゴム引布は、ゴムと基布を有している。ゴムの素材は、特に限定されず、クロロプレン系ゴム、EPDMエラストマー、ポリウレタンなどが含まれる。また、基布の素材は、特に限定されず、綿織布、ナイロン平織布、ポリエステル平織布などが含まれる。さらにゴム引布の厚みおよびプライ数は、特に限定されず、厚みは2〜15mm程度であればよく、プライ数は1〜3程度であればよい。
【0038】
なお、送水路120の下流端口122および第1導水路140の第1上流口141が接着されていてもよい。すなわち、堰体110および導水路140が一体に形成されていてもよい。これにより、さらに水力発電装置100を簡単に組み立てることができると共に、水力発電装置100の構成要素を減らすことができる。
【0039】
発電装置150は、揚水装置130(水車駆動ポンプ131)により揚水された水が第2の高さh2から第2の落差で落下したときの当該水の水力を利用して発電する。これにより、発電装置150は、水力を電力に変換する。発電装置150は、揚水装置130より河川の下流側に設けられている。発電装置150の種類は、水力により発電することができれば、特に限定されない。発電装置150は、タービンと、タービンに接続された発電機とを有している発電装置が含まれる。このような発電装置150の種類の例には、フランシス型、プロペラ型、チューブラ型、ペルトン型、ターゴ型、クロスフロー型、開放ホイール型などが含まれる。発電装置150の種類は、流量および第2の落差に応じて適宜選択されうる。なお、発電装置150は、漏電防止の観点から、支持台151により支持されている。
【0040】
発電装置150の第2流入口152は、第2導水路160の第2下流口162と、第3接続ジョイント154を介して接続されている。前述したような発電装置150の場合、第2導水路160の第2下流口162は、タービンに接続されている。発電装置150の第2排水口153は、外部と連通している。発電に使用された水は、第2排水口153から河川に排水される。このとき、水車駆動ポンプ131により揚水される水量と、発電装置150の第2排水口153から排出される水量とを同程度にすることにより、河川の水位が一定に保たれうる。
【0041】
第2導水路160は、揚水装置130(水車駆動ポンプ131)により第2の高さh2に揚水される水を発電装置150に導く。第2導水路160は、水車駆動ポンプ131の揚水口134と発電装置150の第2流入口152をつないでいる。第2導水路160の第2上流口161は、水車駆動ポンプ131の揚水口134と、第4接続ジョイント136を介して接続されている。また、前述のとおり、第2導水路160の第2下流口162は、発電装置150の第2流入口152と、第3接続ジョイント154を介して接続されている。
【0042】
第2導水路160の構成は、揚水装置130(水車駆動ポンプ131)により第2の高さh2に揚水される水を発電装置150に導くことができれば(発電装置150に導く水の水位を第2の高さh2にすることができれば)特に限定されない。本実施の形態では、第2導水路160は、水車駆動ポンプ131で揚水される水を第2の高さh2に導く揚水管163と、第2の高さh2まで導かれ、落下させる水を一時的に貯留するための水塔164と、水塔164内の水を発電装置150に導くための導水管165とを有する。
【0043】
揚水管163は、水車駆動ポンプ131で揚水される水を第2の高さh2に導く。揚水管163の高さを変更することにより第2の高さh2を調整し、発電量を調整することができる。揚水管163の下方側開口部163a(第2導水路160の第2上流口161)は、水車駆動ポンプ131の揚水口134と、第4接続ジョイント136を介して接続されている。また、揚水管163の上方側開口部163bは、水塔164の第3流入口164aと、第5接続ジョイント166を介して接続されている。
【0044】
揚水管163の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。揚水管163の径は、河川の水量や流速に応じて、適宜設計されうる。また、揚水管163の素材は、特に限定されない。たとえば、揚水管163は、第1導水路140と同様の素材により構成される。
【0045】
水塔164は、揚水管163を介して揚水された水を一時的に貯留する。貯留された水の水位は、第2の高さh2に相当する。本実施の形態では、水塔164は、その高さ方向において異なる位置に2つの開口部を有する。2つの開口部は、第3流入口164aおよび第3排水口164bからなる。第3流入口164aは、第3排水口164bよりも上流側かつ上方側に配置されている。第3流入口164aは、揚水管163の上方側開口部163bと、第5接続ジョイント166を介して接続されている。また、第3排水口164bは、導水管165の第4流入口165aと、第6接続ジョイント167を介して接続されている。これにより、第2導水路160を簡単に組み立てることができると共に、第2導水路160を通る水のロスをなくすことができる。また、水塔164上部は、外部に開口している。
【0046】
また、水塔164は、高さ方向において異なる位置にさらに複数の開閉可能な開口部(図示省略)を有していてもよい。河川の流量の変化などに応じて、揚水管163を異なる高さの開口部につなぎ替えることにより、第2の高さh2を調整し、発電量が簡単に調整されうる。
【0047】
水塔164の形状および高さは、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、水塔164の形状は、円筒形状である。水塔164の高さは、第2の高さh2に応じて適宜設定されうる。
【0048】
水塔164の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。水塔164の径は、揚水される水の水量や流速に応じて、適宜設計されうる。また、水塔164の素材も、特に限定されない。水塔164の素材の例には、ステンレス鋼などが含まれる。
【0049】
導水管165は、水塔164内の水を発電装置150に導く。導水管165の第4流入口165aは、水塔164の第3排水口164bと、第6接続ジョイント167を介して接続されている。また、導水管165の第4排水口165b(第2導水路160の第2下流口162)は、発電装置150の第2流入口152と、第3接続ジョイント154を介して接続されている。これにより、水力発電装置100を簡単に組み立てることができると共に、発電装置150に送られる水のロスをなくすことができる。
【0050】
導水管165の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。導水管165の径は、揚水された水の水量や流量によって、適宜設計されうる。また、導水管165の素材も、特に限定されない。たとえば、導水管165は、第1導水路140と同様の素材により構成される。
【0051】
なお、第2導水路160は、水車駆動ポンプ131により過剰に揚水された水を放流するための放水管を別途有していてもよい。これにより、発電装置150に流入する水量が調節され、発電量が調整されうる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る水力発電装置100は、シンプルな構成を採る。したがって、水力発電装置100の設置、撤去およびメンテナンスは容易である。
【0053】
(水力発電装置の水力発電特性)
次に、本実施の形態で使用する水力発電装置100の水力発電特性について説明する。まず、本実施の形態で使用する発電装置150について説明する。本実施の形態では、発電装置150として、水中タービンおよび発電機を有する発電装置を使用する。
図2は、発電装置150の水力−電力変換特性の一例を示すグラフである。
図2において、横軸は、水の流量(m
3/s)を示し、縦軸は、水の有効落差(m)を示している。実線は、水中タービンおよび発電機を有する発電装置150による発電に適用可能な、流量の範囲および有効落差の範囲を示している。また、破線は、水流および有効落差と、発電装置150による発電量との関係を示している。
【0054】
図2から、この発電装置150は、流量が0.40〜10.00(m
3/s)の範囲内にあり、かつ有効落差が2.8〜20.0(m)の範囲内(実線で囲まれた範囲内)にある場合おいて、10〜500(kW)の電力を発電できることがわかる。
【0055】
その一方で、発電装置150は、水の流量が発電のために十分であったとしても(0.40〜10.00(m
3/s))、有効落差が不十分なとき(2.8mより小さいとき)は発電することができないこともわかる(例えば、
図2のA点参照)。そこで、本実施の形態に係る水力発電装置100では、揚水装置130の水車駆動ポンプ131が、河川の水の一部を第1の高さh1から第2の高さh2に揚水する。これにより、発電に使用される水の流量は減少するものの、発電のために必要な有効落差は増大する(
図2のB点参照)。結果として、水力発電装置100は、適切に発電することができる。このとき、水車駆動ポンプ131は、第1の高さh1から第1の落差で落下する水の水力のみにより駆動される。このため、水力発電装置100は、外部から化石燃料や電気などによるエネルギーを供給することなく、水を揚水し、発電に必要な落差を得ることができる。
【0056】
本実施の形態に係る水力発電装置100では、揚水装置130の水車駆動ポンプ131は、水の水力のみを利用して駆動されるため、外部からエネルギーを別途供給する必要がない。このため、本実施の形態に係る水力発電装置100は、発電のために不十分な低落差しか得られない場所であっても、水力のみを利用して適切に発電することができる。また、前述のとおり、本実施の形態に係る水力発電装置100では、水量および有効落差の調整が可能なため、発電装置150の選択の幅を広げることもできる。
【0057】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る水力発電装置100は、1)簡単に河川を堰き止めることができると共に、2)容易に設置および撤去を行うことができる。また、本実施の形態に係る水力発電装置100は、3)揚水のために化石燃料や電気などにより、別途エネルギーを供給する必要がなく、4)発電のために十分な落差を得られない場所であったとしても、必要とされる場所において、必要な時期のみ水力発電装置を配設して、水力発電を行うことができる。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態2では、揚水装置が2つの水車駆動ポンプを有する水力発電装置について説明する。
【0059】
(水力発電装置の構成)
図3は、実施の形態2に係る水力発電装置200の断面図である。
図3に示されるように、本実施の形態に係る水力発電装置200は、堰体110と、送水路120と、堰体110より河川の下流側に設けられた揚水装置230と、送水路120からの水を第1水車駆動ポンプ131に導く第1導水路140と、揚水装置230より河川の下流側に設けられた発電装置150と、揚水装置230から揚水される水を発電装置150に導く第2導水路160とを有している。本実施の形態では、揚水装置230は、2つの水車駆動ポンプ(第1水車駆動ポンプ131および第2水車駆動ポンプ231)と、第1水車駆動ポンプ131から揚水される水を第2水車駆動ポンプ231に導く第3導水路260とを有する。なお、実施の形態1に係る水力発電装置100と同じ構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0060】
実施の形態2に係る水力発電装置200は、堰体110により水位を第1の高さh1まで上昇させる。次いで、第1の高さh1から第1の落差で落下した水の水力のみを利用して、揚水装置230により当該水の一部を第2の高さh2に揚水させる。具体的には、第1の高さh1から第1の落差で落下した水の水力のみを利用して、第1水車駆動ポンプ131により当該水の一部を第3の高さh3に揚水させる。次いで、第3の高さh3にある水を第3の落差で落下した水の水力のみを利用して、第2水車駆動ポンプ231により当該水の一部を第2の高さh2に揚水させる。次いで、第2の高さh2にある水を第2の落差で落下させることにより、発電装置150で発電を行う。第2の高さh2は、第3の高さh3より高く、第3の高さh3は、第1の高さh1より高い。第2の落差は、第3の落差より大きく、第3の落差は、第1の落差より大きい。ここで、本実施の形態では、「第1の高さh1から第1の落差で落下させる」とは、
図3に示されるように、落下前の水の水位(A)と、落下後の第1水車駆動ポンプ131に流入するときの水の水位(B)との水位差により水を移動させることを意味する。また、「第3の高さh3から第3の落差で落下させる」とは、落下前の揚水された水の水位(C)と、落下後の第2水車駆動ポンプ231に流入するときの水の水位(D)との水位差により水を移動させることを意味する。また、「第2の高さh2から第2の落差で落下させる」とは、落下前の第2水車駆動ポンプ231により揚水された水の水位(E)と、落下後の発電装置150に流入するときの水の水位(F)との水位差により水を移動させることを意味する。さらに、第1の落差とは、第1の高さh1から落下した水の水力を利用して揚水する際に、第1水車駆動ポンプ131による揚水に実質的に寄与しうる、A−B間の総落差から損失落差を差し引いた有効落差を意味する。また、第3の落差とは、第3の高さh3から落下した水の水力を利用して揚水する際に、第2水車駆動ポンプ231による揚水に実質的に寄与しうる、C−D間の総落差から損失落差を差し引いた有効落差を意味する。さらに、第2の落差とは、第2の高さh2から落下した水の水力を利用して発電する際に、発電装置150による発電に実質的に寄与しうる、E−F間の総落差から損失落差を差し引いた有効落差を意味する。
【0061】
第1水車駆動ポンプ131は、第1の高さh1から第1の落差で落下した水の水力を利用して、当該水の一部を第3の高さh3に揚水すること以外は、実施の形態1における水車駆動ポンプ131と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態では、第1の落差は、例えば、2m以上かつ6m未満である。
【0062】
第2水車駆動ポンプ231は、第3の高さh3から第3の落差で落下した水の水力を利用して、第3の落差から落下した水の一部を第2の高さh2に揚水する。第3の落差は、例えば、6m以上かつ80m未満である。第2水車駆動ポンプ231は、第1水車駆動ポンプ131より河川の下流側に設けられている。第2水車駆動ポンプ231の種類は、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。第2水車駆動ポンプ231の種類は、例えば、第1水車駆動ポンプ131と同じである。第2水車駆動ポンプ231の第5排水口232は、外部と連通している。第2水車駆動ポンプ231で揚水されなかった水は、第5排水口232から河川に排水される。
【0063】
第3導水路260は、第1水車駆動ポンプ131により第3の高さh3に揚水される水を第2水車駆動ポンプ231に導く。第3導水路260は、第1水車駆動ポンプ131の第1揚水口134と第2水車駆動ポンプ231の第5流入口233をつないでいる。第3導水路260の第3下流口262は、第2水車駆動ポンプ231の第5流入口233と、第7接続ジョイント235を介して接続されている。第3導水路260の第3上流口261は、第1水車駆動ポンプ131の第1揚水口134と、第4接続ジョイント136を介して接続されている。また、第3導水路260の第3下流口262は、第2水車駆動ポンプ231の第5流入口233と、第8接続ジョイント236を介して接続されている。
【0064】
第3導水路260の構成は、第1水車駆動ポンプ131で第3の高さh3に揚水される水を第2水車駆動ポンプ231に導くことができれば(第2水車駆動ポンプ231に導く水の水位を第3の高さh3にすることができれば)特に限定されない。本実施の形態では、第2揚水管263と、第3の高さh3まで導かれ、落下させる水を一時的に貯留するための第2水塔264と、第2水塔264内の水を第2水車駆動ポンプ231に導くための第2導水管265とを有する。
【0065】
第2揚水管263は、第1水車駆動ポンプ131で揚水される水を第3の高さh3に導く。第2揚水管263の高さを変更することにより第3の高さh3を調整し、発電量を調整することができる。第2揚水管263の第2下方側開口部263a(第3導水路260の第3上流口261)は、第1水車駆動ポンプ131の第1揚水口134と、第4接続ジョイント136を介して接続されている。また、第2揚水管263の第2上方側開口部263bは、第2水塔264の第6流入口264aと、第9接続ジョイント266を介して接続されている。
【0066】
第2揚水管263の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。第2揚水管263の径は、河川の水量や流速に応じて、適宜設計されうる。また、第2揚水管263の素材は、特に限定されない。たとえば、第2揚水管263は、第1導水路140と同様の素材により構成される。
【0067】
第2水塔264は、第2揚水管263を介して揚水された水を一時的に貯留する。貯留された水の水位は、第3の高さh3に相当する。本実施の形態では、第2水塔264は、その高さ方向において異なる位置に2つの開口部を有する。2つの開口部は、第6流入口264aおよび第6排水口264bからなる。第6流入口264aは、第6排水口264bよりも上流側かつ上方側に配置されている。前述のとおり、第6流入口264aは、第2揚水管263の第2上方側開口部263bと、第9接続ジョイント266を介して接続されている。また、第6排水口264bは、第2導水管265の第7流入口265aと、第10接続ジョイント267を介して接続されている。これにより、第3導水路260を簡単に組み立てることができると共に、第3導水路260を通る水のロスをなくすことができる。また、第2水塔264の上部は、外部に開口している。
【0068】
また、第2水塔264は、高さ方向において異なる位置にさらに複数の開閉可能な開口部(図示省略)を有していてもよい。河川の流量の変化などに応じて、第2揚水管263を異なる高さの開口部につなぎ替えることにより、第3の高さh3を調整し、発電量が簡単に調整されうる。
【0069】
第2水塔264の形状および高さは、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、第2水塔264の形状は、円筒形状である。第2水塔264の高さは、第3の高さh3に応じて適宜設定されうる。
【0070】
第2水塔264の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。第2水塔264の径は、揚水される水の水量や流速に応じて、適宜設計されうる。また、第2水塔264の素材も、特に限定されない。第2水塔264の素材の例には、ステンレス鋼などが含まれる。
【0071】
第2導水管265は、第2水塔264内の水を第2水車駆動ポンプ231に導く。第2導水管265の第7流入口265aは、第2水塔264の第6排水口264bと、第10接続ジョイント267を介して接続されている。また、第2導水管265の第7排水口265b(第3導水路260の第3下流口262)は、第2水車駆動ポンプ231の第5流入口233と、第7接続ジョイント235を介して接続されている。これにより、水力発電装置200を簡単に組み立てることができると共に、第2水車駆動ポンプ231に送られる水のロスをなくすことができる。
【0072】
第2導水管265の径は、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。第2導水管265の径は、揚水された水の水量や流量によって、適宜設計されうる。また、第2導水管265の素材も、特に限定されない。たとえば、第2導水管265は、第1導水路140と同様の素材により構成される。
【0073】
なお、第3導水路260は、第1水車駆動ポンプ131により過剰に揚水された水を放流するための放水管を別途有していてもよい。これにより、第2水車駆動ポンプ231に流入する水量が調節され、発電量が調整されうる。
【0074】
本実施の形態では、発電装置150は、第2水車駆動ポンプ231により揚水された水が第2の高さh2から第2の落差で落下したときの当該水の水力を利用して発電すること以外は、実施の形態1の発電装置150と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態では、第2の落差は、例えば、80m以上かつ200m以下である。
【0075】
本実施の形態では、第2導水路160は、第2水車駆動ポンプ231の第2揚水口234と、発電装置150の第2流入口152とをつなぐ以外は、実施の形態1の第2導水路160と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
以上のように、本実施の形態に係る水力発電装置200は、河川の水を二段階で揚水し、発電のために十分な落差を得ることができる。したがって、水力発電装置200は、適切に発電することができる。
【0077】
(水力発電装置の水力発電特性)
次に、本実施の形態で使用する水力発電装置200の水力発電特性について説明する。まず、本実施の形態で使用する発電装置150について説明する。本実施の形態では、発電装置150として、クロスフロー水車および発電機を有する発電装置を使用する。
図4は、発電装置150の水力−電力変換特性の一例を示すグラフである。
図4において、横軸は、水の流量(m
3/s)を示し、縦軸は、水の有効落差(m)を示している。実線は、クロスフロー水車および発電機を有する発電装置150による発電に適用可能な、流量の範囲および有効落差の範囲を示している。また、破線は、水流および有効落差と、発電装置150による発電量との関係を示している。
【0078】
図4から、この発電装置150は、流量が0.10〜8.00(m
3/s)の範囲内にあり、かつ有効落差が5.0〜200.0(m)の範囲内(実線で囲まれた範囲内)にある場合おいて、10〜1000(kW)の電力を発電できることがわかる。
【0079】
その一方で、発電装置150は、水の流量が発電のために十分であったとしても(0.10〜8.00(m
3/s))、有効落差が不十分なとき(5.0mより小さいとき)は発電することができないこともわかる(例えば、
図4のA点参照)。そこで、本実施の形態に係る水力発電装置200では、第1水車駆動ポンプ131が、河川の水の一部を第1の高さh1から第3の高さh3に揚水する。これにより、発電に使用される水の流量は減少するものの、有効落差は増大する(
図4のB点参照)。さらに本実施の形態に係る水力発電装置200では、第2水車駆動ポンプ231が、第1水車駆動ポンプ131により揚水された水の一部を第3の高さh3から第2の高さh2に揚水する。これにより、発電に使用される水の流量は、さらに減少するものの、発電のために必要な有効落差は、さらに増大する(
図4のC点参照)。水力発電装置200では、河川の水の落差が小さい場合であっても、第1水車駆動ポンプ131によって第2水車駆動ポンプ231を駆動するための十分な高さをあらかじめ得ることができる。このため、本実施の形態に係る水力発電装置200は、第2水車駆動ポンプ231によって、発電のために必要な落差を十分に得ることができ、適切に発電することができる。
【0080】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る水力発電装置200は、実施の形態1に係る水力発電装置100の効果に加えて、さらに十分な落差を得て発電することができる。
【0081】
なお、上記各実施の形態では、堰体110に空気を入れて膨張させる例を示した。しかし、堰体110には、堰体110を膨張させることができれば、空気以外の流体を入れてもよい。たとえば、空気以外の気体、または水などの液体が堰体110に入れられてもよい。
【0082】
また、上記各実施の形態では、堰体110を有する水力発電装置100、200について説明したが、本発明に係る水力発電装置は、堰体110以外により揚水に必要な落差を形成してもよい。たとえば、コンクリートなどの堰堤により落差を形成してもよい。または、水力発電装置を設置する河川などにおいて、水車駆動ポンプによる揚水に必要な落差を有する段差などがあれば、堰体を有していなくてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態1では、水塔164を有する水力発電装置100について説明したが、本発明に係る水力発電装置は、水塔164を有していなくてもよい。この場合、揚水された水は、発電装置150に第2流入口152から直接流入する。
【0084】
また、上記実施の形態2では、第2水塔264を有する水力発電装置200について説明したが、本発明に係る水力発電装置は、第2水塔264を有していなくてもよい。この場合、第2揚水管263の第2上方側開口部263bは、第2導水管265の第7流入口265aに直接接続される。
【0085】
また、上記各実施の形態では、河川を流れる水を1段階または2段階で揚水する場合について説明した。しかし、本発明に係る水力発電装置は、3段階以上で揚水してもよい。この場合、揚水装置は、3つ以上の水車駆動ポンプを有する。
【0086】
また、送水路120および第1導水路140は兼用されていてもよい。具体的には、堰体110の上流側の面の上方に上流端口121を形成し、堰体110の下流側の面の下方に下流端口122を形成する。そして、下流端口122を(第1)水車駆動ポンプ131の第1流入口133に接続する。これにより、装置の構成要素を減らすことができる。
【解決手段】水力発電装置は、1つまたは2つ以上の水車駆動ポンプを有する揚水装置と、発電装置とを有する。揚水装置は、第1の高さから第1の落差で落下した水の水力を利用して、水の一部を第2の高さに揚水する。発電装置は、揚水された水が第2の高さから第2の落差で落下したときの水の水力を利用して発電する。第2の高さは、第1の高さより高く、第2の落差は、第1の落差より大きい。