(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのセンサは、いずれも、局所的に変形しにくい硬質層を備えている。例えば、特許文献1の検出センサは、合成樹脂製の上側基板、合成樹脂製またはガラス製の下側基板を備えている。また、特許文献2のハイブリッドセンサは、絶縁樹脂フィルム製の可撓性シートを備えている。このため、指から加わった荷重が硬質層を伝わる際、荷重が面方向に分散されてしまう。したがって、指の押込に伴う押込量(ストローク量)が小さくなる。よって、操作者が、押込によるストローク感を触感的に得にくくなる。また、荷重が面方向に分散されてしまうため、指の座標の検出精度が低下してしまう。
【0006】
本発明のハイブリッドセンサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、検出対象物の接近、押込、座標を検出可能であって、操作者がストローク感を触感的に感じやすく、座標の検出精度が高いハイブリッドセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のハイブリッドセンサは、絶縁性を有しエラストマー製の第一基材と、該第一基材の表側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一表側電極と、該第一基材の裏側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一裏側電極と、複数の該第一表側電極の表側に配置され、絶縁性を有しエラストマー製の保護層と、を備え、検出対象物の接近に伴い該第一表側電極と該第一裏側電極との間の静電容量が変化することを基に、該検出対象物の接近、座標を検出する近接センサ部と、該近接センサ部の裏側に配置され、該近接センサ部を介して該検出対象物から加わる荷重を基に、該検出対象物の押込、座標を検出する荷重センサ部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、「接近」には、非接触は勿論、接触も含まれる。また、「エラストマー製」には、対象物(第一基材、第一表側電極、第一裏側電極、保護層)がエラストマー単体製の場合は勿論、対象物がエラストマー以外の含有物(例えば、対象物に導電性を付与する場合は、導電性フィラー)を有する場合も含まれる。
【0009】
本発明のハイブリッドセンサは、近接センサ部と、荷重センサ部と、を備えている。近接センサ部は、静電容量の変化を基に、検出対象物の接近を検出することができる。また、近接センサ部は、静電容量が変化した座標を基に、検出対象物の面方向の座標を検出することができる。また、荷重センサ部は、検出対象物の押込を検出することができる。このように、本発明のハイブリッドセンサによると、検出対象物の接近、押込、座標を検出することができる。
【0010】
また、近接センサ部は、表側(荷重入力側)から裏側に向かって、保護層と、第一表側電極と、第一基材と、第一裏側電極と、を備えている(ただし、隣り合う層の間に他の層が介在していてもよい)。保護層、第一表側電極、第一基材、第一裏側電極は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、近接センサ部は柔軟である。したがって、近接センサ部は、検出対象物から加わる荷重により、変形しやすい。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。また、柔軟な近接センサ部は、検出対象物から加わる荷重を、面方向に分散しにくい。このため、面方向の座標の検出精度が高い。
【0011】
なお、本発明のハイブリッドセンサの近接センサ部は、荷重センサ部と組み合わせずに、単独で用いることもできる。
【0012】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記近接センサ部は、前記検出対象物の接近に伴い前記第一表側電極と前記第一裏側電極との間の静電容量が増加することを基に、該検出対象物の接近、座標を検出する構成とする方がよい。本構成によると、自己容量型の静電容量型センサを、近接センサ部として用いることができる。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記近接センサ部は、前記検出対象物の接近に伴い前記第一表側電極と該検出対象物との間に静電容量が発生し、該第一表側電極と前記第一裏側電極との間の静電容量が減少することを基に、該検出対象物の接近、座標を検出する構成とする方がよい。本構成によると、相互容量型の静電容量型センサを、近接センサ部として用いることができる。このため、マルチタッチ(多点同時入力)に対応しやすい。
【0014】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記荷重センサ部は、絶縁性を有しエラストマー製の第二基材と、該第二基材の表側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第二表側電極と、該第二基材の裏側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第二裏側電極と、を備え、前記荷重により該第二表側電極と該第二裏側電極との間の電極間距離が短くなり、該第二表側電極と該第二裏側電極との間の静電容量が増加することを基に、前記検出対象物の押込、座標を検出する構成とする方がよい。
【0015】
本構成のハイブリッドセンサの荷重センサ部によると、静電容量の変化を基に、押込(具体的には、押込の有無、押込の程度、荷重の有無、荷重の程度、荷重の値など)を検出することができる。また、荷重センサ部は、静電容量が変化した座標を基に、検出対象物の面方向の座標を検出することができる。
【0016】
また、荷重センサ部は、表側から裏側に向かって、第二表側電極と、第二基材と、第二裏側電極と、を備えている(ただし、隣り合う層の間に他の層が介在していてもよい)。第二表側電極、第二基材、第二裏側電極は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、荷重センサ部は柔軟である。したがって、荷重センサ部は、検出対象物から加わる荷重により、変形しやすい。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。また、柔軟な荷重センサ部は、検出対象物から加わる荷重を、面方向に分散しにくい。このため、面方向の座標の検出精度が高い。
【0017】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記近接センサ部と前記荷重センサ部との間に配置され、導電性を有し柔軟で接地された中間層を備える構成とする方がよい。
【0018】
本構成によると、近接センサ部と荷重センサ部との間に、中間層が介在している。中間層は導電性を有している。また、中間層は接地されている。このため、近接センサ部と荷重センサ部とが、互いのノイズの悪影響を受けにくい。したがって、近接センサ部、荷重センサ部の検出精度が高くなる。
【0019】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記中間層の表裏両側のうち少なくとも一方には、絶縁性を有しエラストマー製の絶縁スペーサが配置されている構成とする方がよい。
【0020】
本構成によると、近接センサ部の第一裏側電極と、荷重センサ部の第二表側電極と、の間の表裏方向距離(電極間距離)を長くすることができる。このため、第一裏側電極と第二表側電極との間に浮遊容量が発生するのを抑制することができる。したがって、近接センサ部と荷重センサ部との相互干渉を低減させることができ、検出精度が高くなる。
【0021】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記絶縁スペーサは、前記荷重が面方向に分散するのを抑制する荷重分散抑制機構を有する構成とする方がよい。第一裏側電極と第二表側電極との間における浮遊容量の発生を抑制するためには、絶縁スペーサの表裏方向厚さは、より厚い方が好ましい。しかしながら、絶縁スペーサの表裏方向厚さを厚くすると、検出対象物から加わる荷重が、絶縁スペーサを伝達する際に、面方向(具体的には、絶縁スペーサの表裏方向に直交する方向。絶縁スペーサの表面または裏面が延在する方向)に分散されやすくなる。このため、絶縁スペーサの裏側の荷重センサにおいて、面方向の座標の検出精度が低くなってしまう。
【0022】
この点、本構成の絶縁スペーサは、荷重分散抑制機構を備えている。このため、検出対象物から加わる荷重が、絶縁スペーサを伝達する際に、面方向に分散されにくい。したがって、面方向の座標の検出精度が高くなる。また、荷重の検出精度が高くなる。
【0023】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記荷重センサ部は、表側または裏側から見て、複数の前記第二表側電極と複数の前記第二裏側電極とが重複して形成される複数の重複部を有し、前記荷重分散抑制機構は、表側または裏側から見て、面方向に隣り合う該重複部間に介在している構成とする方がよい。
【0024】
面方向に隣り合う複数の重複部(つまり荷重検出部)のうち、任意の重複部の表側から、絶縁スペーサを介して、荷重が入力される場合を想定する。本構成によると、任意の重複部と、当該重複部の隣りの重複部と、の間に、荷重分散抑制機構が介在している。このため、絶縁スペーサにおいて、荷重が面方向に分散しにくい。したがって、入力された当該荷重が、隣りの重複部に誤伝達されるのを抑制することができる。
【0025】
(8)好ましくは、上記(6)または(7)の構成において、前記荷重分散抑制機構は、前記絶縁スペーサの表面または裏面に凹設される荷重分散抑制溝である構成とする方がよい。
【0026】
絶縁スペーサにおいて荷重分散抑制溝が形成されている部分は、荷重分散抑制溝が形成されていない部分と比較して、表裏方向厚さが薄くなる。このため、面方向のばね定数が小さくなる。したがって、荷重が面方向に分散するのを抑制することができる。
【0027】
(9)好ましくは、上記(6)または(7)の構成において、前記荷重分散抑制機構は、前記絶縁スペーサを表裏方向に貫通する荷重分散抑制孔である構成とする方がよい。
【0028】
絶縁スペーサにおいて荷重分散抑制孔が形成されている部分は、荷重分散抑制孔が形成されていない部分と比較して、面方向のばね定数が小さくなる。このため、荷重が面方向に分散するのを抑制することができる。
【0029】
(10)好ましくは、上記(3)ないし(9)のいずれかの構成において、前記近接センサ部は、複数の前記第一表側電極の表側に配置されるエラストマー製の第一表側絶縁層と、複数の前記第一裏側電極の裏側に配置されるエラストマー製の第一裏側絶縁層と、を備え、前記荷重センサ部は、複数の前記第二表側電極の表側に配置されるエラストマー製の第二表側絶縁層と、複数の前記第二裏側電極の裏側に配置されるエラストマー製の第二裏側絶縁層と、を備え、下記(a)および(b)のうち、少なくとも一方を充足する構成とする方がよい。
(a)該近接センサ部において、該第一表側電極は、前記第一基材および該第一表側絶縁層のうち、少なくとも一方に印刷されていると共に、該第一裏側電極は、該第一基材および該第一裏側絶縁層のうち、少なくとも一方に印刷されている。
(b)該荷重センサ部において、該第二表側電極は、前記第二基材および該第二表側絶縁層のうち、少なくとも一方に印刷されていると共に、該第二裏側電極は、該第二基材および該第二裏側絶縁層のうち、少なくとも一方に印刷されている。
【0030】
本構成によると、第一表側電極、第一裏側電極、第二表側電極、第二裏側電極を簡単に形成することができる。また、これらの電極の形成と配置とを同時に行うことができる。また、これらの電極の形状設定の自由度が高くなる。また、これらの電極の形状の精度が高くなる。また、(a)の場合、第一表側電極と第一裏側電極との相対的な位置合わせが容易になる。同様に、(b)の場合、第二表側電極と第二裏側電極との相対的な位置合わせが容易になる。
【0031】
(11)好ましくは、上記(1)ないし(10)のいずれかの構成において、前記保護層の表面には、凸部および凹部のうち少なくとも一方が配置されている構成とする方がよい。本構成によると、操作者が、凸部や凹部を基準に、ハイブリッドセンサに対して検出対象物を近接させる位置、ハイブリッドセンサに対して検出対象物を押し込む位置、ハイブリッドセンサに対して検出対象物を摺動させる軌道などを、決定することができる。このため、主に触覚によりハイブリッドセンサを操作することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、検出対象物の接近、押込、座標を検出可能であって、操作者がストローク感を触感的に感じやすく、座標の検出精度が高いハイブリッドセンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のハイブリッドセンサの実施の形態について説明する。
【0036】
<第一実施形態>
[ハイブリッドセンサの構成]
まず、本実施形態のハイブリッドセンサの構成について説明する。
図1に、本実施形態のハイブリッドセンサの分解斜視図を示す。
図2に、同ハイブリッドセンサの近接センサ部の透過上面図を示す。
図3に、同ハイブリッドセンサの荷重センサ部の透過上面図を示す。
図4に、
図2、
図3の軸Pを経由するIV−IV方向断面図を示す。
図5に、同ハイブリッドセンサのブロック図を示す。
図1〜
図5に示すように、本実施形態のハイブリッドセンサ1は、センサ積層体6と、制御ユニット7と、を備えている。
【0037】
{センサ積層体6}
センサ積層体6は、近接センサ部2と、荷重センサ部3と、中間層4と、を備えている。
【0038】
(近接センサ部2)
近接センサ部2は、上側(表側)から下側(裏側)に向かって、保護層21と、第一表側絶縁層22と、8つの第一表側電極X1〜X8と、第一基材20と、8つの第一裏側電極Y1〜Y8と、第一裏側絶縁層23と、が積層されることにより、形成されている。第一裏側絶縁層23は、本発明の「絶縁スペーサ」の概念に含まれる。
【0039】
第一基材20は、ウレタンゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第一基材20は、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0040】
8つの第一表側電極X1〜X8は、各々、左右方向に長い帯状を呈している。8つの第一表側電極X1〜X8は、第一基材20の上面(表面)に、前後方向に、平行に並んで配置されている。8つの第一表側電極X1〜X8は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。8つの第一表側電極X1〜X8は、各々、第一基材20の上面に、スクリーン印刷されている。8つの第一表側電極X1〜X8は、各々、柔軟であり、導電性を有している。
【0041】
図2に示すように、第一表側電極X1には、短手方向幅が広い広幅部X1aと、短手方向幅が狭い狭幅部X1bと、が交互に並んで配置されている。広幅部X1aは、菱形状を呈している。狭幅部X1bは、長方形状を呈している。第一表側電極X2〜X8にも、第一表側電極X1と同様に、広幅部と狭幅部とが配置されている。
【0042】
8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、各々、前後方向に長い帯状を呈している。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、第一基材20の下面(裏面)に、左右方向に、平行に並んで配置されている。8つの第一裏側電極Y1〜Y8の構成、第一基材20下面に対する配置方法は、8つの第一表側電極X1〜X8の構成、第一基材20上面に対する配置方法と、同様である。上側または下側から見て、第一表側電極X1〜X8の広幅部と第一裏側電極Y1〜Y8の広幅部とは、水平方向(面方向)に並んでいる。隣接する広幅部間には、電界Bが形成されている。
【0043】
第一表側絶縁層22は、アクリルゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第一表側絶縁層22は、柔軟であり、絶縁性を有している。第一表側絶縁層22は、8つの第一表側電極X1〜X8の上方に配置されている。
【0044】
保護層21は、シリコーンゴム製であって、正方形状シート状を呈している。保護層21は、柔軟であり、絶縁性を有している。保護層21は、第一表側絶縁層22の上方に配置されている。保護層21の上面には、凸部210が配置されている。凸部210は、正方形枠状を呈している。凸部210は、後述する指(検出対象物)が触覚で認識できる程度の、高さを有している。保護層21を介して、操作者からセンサ積層体6に、様々なコマンドが入力される。
【0045】
第一裏側絶縁層23は、アクリルゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第一裏側絶縁層23は、柔軟であり、絶縁性を有している。第一裏側絶縁層23は、8つの第一裏側電極Y1〜Y8の下方に配置されている。
【0046】
(中間層4)
中間層4は、外面に金属がコーティングされたポリエステル繊維からなる布製であって、正方形状布状を呈している。中間層4は、柔軟であり、導電性を有している。中間層4は、近接センサ部2の下方に配置されている。中間層4は、アース(接地)されている。
【0047】
(荷重センサ部3)
荷重センサ部3は、上側から下側に向かって、第二表側絶縁層32と、8つの第二表側電極x1〜x8と、第二基材30と、8つの第二裏側電極y1〜y8と、第二裏側絶縁層33と、下敷層34と、が積層されることにより、形成されている。第二表側絶縁層32は、本発明の「絶縁スペーサ」の概念に含まれる。
【0048】
第二基材30は、ウレタンゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第二基材30は、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0049】
8つの第二表側電極x1〜x8は、各々、左右方向に長い帯状を呈している。8つの第二表側電極x1〜x8は、第二基材30の上面に、前後方向に、平行に並んで配置されている。8つの第二表側電極x1〜x8は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。8つの第二表側電極x1〜x8は、各々、第二基材30の上面に、スクリーン印刷されている。8つの第二表側電極x1〜x8は、各々、柔軟であり、導電性を有している。
【0050】
8つの第二裏側電極y1〜y8は、各々、前後方向に長い帯状を呈している。8つの第二裏側電極y1〜y8は、第二基材30の下面に、左右方向に、平行に並んで配置されている。8つの第二裏側電極y1〜y8の構成、第二基材30下面に対する配置方法は、8つの第二表側電極x1〜x8の構成、第二基材30上面に対する配置方法と、同様である。上側または下側から見て、第二表側電極x1〜x8と第二裏側電極y1〜y8とは、上下方向(表裏方向。荷重伝達方向)に重複している。すなわち、第二表側電極x1〜x8と第二裏側電極y1〜y8との間には、重複部Aが形成されている。
【0051】
第二表側絶縁層32は、アクリルゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第二表側絶縁層32は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二表側絶縁層32は、中間層4と、8つの第二表側電極x1〜x8と、の間に配置されている。
【0052】
第二裏側絶縁層33は、アクリルゴム製であって、正方形状シート状を呈している。第二裏側絶縁層33は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二裏側絶縁層33は、8つの第二裏側電極y1〜y8の下方に配置されている。
【0053】
下敷層34は、ポリウレタン発泡体製であって、正方形状板状を呈している。下敷層34は、柔軟であり、絶縁性を有している。下敷層34は、第二裏側絶縁層33の下方に配置されている。
【0054】
{制御ユニット7}
図5に示すように、制御ユニット7は、制御部70と、送信部71と、受信部72と、コンピュータ73と、を備えている。
【0055】
(制御部70)
制御部70は、DSP(Digital Signal Processor)700と、SRAM(Static Random Access Memory)701と、を備えている。DSP700は、マイコン(演算部)として用いられる。SRAM701は、記憶部として用いられる。SRAM701には、接近、小荷重、大荷重を判別するためのしきい値(接近しきい値、小荷重しきい値、大荷重しきい値)が格納されている。また、SRAM701には、近接センサ部2における指(検出対象物)の水平方向の座標(左右方向位置、前後方向位置)と、荷重センサ部3における指の水平方向の座標と、を共通の座標系で評価するための、マップが格納されている。SRAM701は、DSP700に、電気的に接続されている。
【0056】
(送信部71)
送信部71は、DAC(Digital−Analog Converter)710と、DDS(Direct Digital Synthesizer)711と、4つのマルチプレクサ712と、8つのオペアンプ713と、を備えている。
【0057】
DAC710は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。DAC710は、DSP700に電気的に接続されている。DDS711は、正弦波発振器として用いられる。DDS711は、DAC710に電気的に接続されている。4つのアナログのマルチプレクサ712は、各々、DDS711に電気的に接続されている。4つのマルチプレクサ712は、正弦波電流を、8つのオペアンプ713に、順次切り替えながら、走査的に出力する。8つのオペアンプ713は、各々、マルチプレクサ712から入力された電流を、電圧に変換している。すなわち、8つのオペアンプ713は、各々、電流−電圧変換器として用いられる。8つのオペアンプ713は、8つの第一表側電極X1〜X8に電気的に接続されている。
【0058】
(受信部72)
受信部72は、4つのADC(Analog−Digital Converter)720と、4つのローパスフィルタ721と、4つのマルチプレクサ722と、8つのオペアンプ723と、を備えている。
【0059】
8つのオペアンプ723は、8つの第一裏側電極Y1〜Y8に電気的に接続されている。8つのオペアンプ723は、各々、電流−電圧変換器として用いられる。4つのアナログのマルチプレクサ722は、8つのオペアンプ723に電気的に接続されている。4つのマルチプレクサ722は、8つのオペアンプ723に、順次切り替えられながら、接続される。4つのローパスフィルタ721は、各々、電圧の高周波成分をカットしている。4つのローパスフィルタ721は、4つのマルチプレクサ722に電気的に接続されている。4つのADC720は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。4つのADC720は、4つのローパスフィルタ721に電気的に接続されている。また、4つのADC720は、DSP700に電気的に接続されている。
【0060】
(コンピュータ73)
コンピュータ73は、DSP700に電気的に接続されている。コンピュータ73は、アクチュエータ(図略)に、操作者の操作(接近、摺動、小荷重入力、大荷重入力など)に応じたコマンドを送信する。
【0061】
なお、制御ユニット7は、
図5に示す近接センサ部2同様に、
図3に示す荷重センサ部3にも、電気的に接続されている。すなわち、荷重センサ部3の第二表側電極x1〜x8には、マルチプレクサを介して、順次、走査的に電圧が供給される。第二裏側電極y1〜y8からは、電流が出力される。
【0062】
[ハイブリッドセンサ1の近接センサ部2の動き]
次に、本実施形態のハイブリッドセンサ1の近接センサ部2の動きについて説明する。
図6(a)に、
図4の枠VI内の、指が接近していない状態における拡大図を示す。
図6(b)に、
図4の枠VI内の、指が接近している状態における拡大図を示す。
図6(a)に示すように、第一表側電極X2と第一裏側電極Y6との間には、
図5に示す送信部71から供給される電圧により、静電容量Caが発生する。
【0063】
図6(b)に示すように、指(検出対象物。導電性を有し、人体を介してアースされている。)9が保護層21に接近すると、第一表側電極X2と指9との間に、静電容量Cbが発生する。このため、指9が接近していない状態(
図6(a))と比較して、指9が接近している状態(
図6(b))の方が、
図5に示すオペアンプ723に入力される電流が小さくなる。この電流の変化を基に、DSP700は、第一表側電極X2と第一裏側電極Y6との間の、静電容量の変化量を算出する。
【0064】
[ハイブリッドセンサ1の荷重センサ部3の動き]
次に、本実施形態のハイブリッドセンサ1の荷重センサ部3の動きについて説明する。
図7(a)に、
図4の枠VII内の、指が押し込まれていない状態における拡大図を示す。
図7(b)に、
図4の枠VII内の、指が押し込まれている状態における拡大図を示す。
図7(a)に示すように、指が押し込まれていない状態においては、誘電層である第二基材30に、荷重が加わっていない。第二基材30の上下方向厚さは、第二表側電極x1と第二裏側電極y1との間の、電極間距離dに相当する。
【0065】
ここで、
図4に示すように、近接センサ部2を構成する部材、中間層4は、いずれの柔軟である。このため、指9が押し込まれると、近接センサ部2を構成する部材、中間層4のうち、指9に押圧された部分は、局所的に下方に没入する。すなわち、近接センサ部2や中間層4が、全面的に下方に変位することはない。
【0066】
図7(b)に示すように、指9が押し込まれると、上方から加わる荷重Fにより、第二基材30が局所的に圧縮される。このため、第二表側電極x1と第二裏側電極y1との間の、電極間距離dが短くなる。この電極間距離dの変化を基に、DSP700は、第二表側電極x1と第二裏側電極y1との間の、静電容量の変化量を算出する。
【0067】
[ハイブリッドセンサ1の接近、小荷重、大荷重の判別方法]
次に、本実施形態のハイブリッドセンサ1の接近、小荷重、大荷重の判別方法について説明する。
図8に、本実施形態のハイブリッドセンサの制御ユニットが実行するフローチャートを示す。
【0068】
図5に示すように、制御ユニット7は、所定のサンプリング周期で、近接センサ部2の静電容量、荷重センサ部3の静電容量を監視している。すなわち、
図5に示すDSP700は、所定のサンプリング周期で、SRAM701に格納されている小荷重しきい値th1と、荷重センサ部3の静電容量の変化量ΔC2と、を比較している(
図8のS1、S2)。
【0069】
比較(以下、「第一の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC2が小荷重しきい値th1よりも小さい場合は、DSP700は、荷重センサ部3に荷重が加わっていないと判別する(
図8のS3)。この場合、
図5に示すDSP700は、SRAM701に格納されている接近しきい値th3と、近接センサ部2の静電容量の変化量ΔC1と、を比較する(
図8のS4、S5)。
【0070】
比較(以下、「第二の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC1が接近しきい値th3以上の場合は、DSP700は、近接センサ部2に指9が接近(接触を含む)していると判別する(
図8のS6)。また、DSP700は、指9が接近している座標を特定する。DSP700は、指9の接近、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。一方、第二の比較の結果、変化量ΔC1が接近しきい値th3未満の場合は、DSP700は、近接センサ部2に指9が接近していないと判別する(
図8のS10)。
【0071】
一方、第一の比較(
図8のS2)の結果、変化量ΔC2が小荷重しきい値th1以上の場合は、
図5に示すDSP700は、SRAM701に格納されている大荷重しきい値th2と、変化量ΔC2と、を比較する(
図8のS7)。
【0072】
比較(以下、「第三の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC2が大荷重しきい値th2未満の場合は、DSP700は、指9により小荷重が入力されたと判別する(
図8のS8)。また、DSP700は、指9が押し込まれている座標を特定する。DSP700は、指9の小荷重、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。一方、第三の比較の結果、変化量ΔC2が大荷重しきい値th2以上の場合は、DSP700は、指9により大荷重が入力されたと判別する(
図8のS9)。また、DSP700は、指9が押し込まれている座標を特定する。DSP700は、指9の大荷重、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。
【0073】
このように、本実施形態のハイブリッドセンサ1は、ハイブリッドセンサ1に対する指9の状態に応じて、「ハイブリッドセンサ1から指9が離間していること」、「ハイブリッドセンサ1に指9が接近していること、および接近座標」、「ハイブリッドセンサ1に指9から小荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」、「ハイブリッドセンサ1に指9から大荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」を、判別することができる。
【0074】
[作用効果]
次に、本実施形態のハイブリッドセンサ1の作用効果について説明する。本実施形態のハイブリッドセンサ1は、近接センサ部2と、荷重センサ部3と、を備えている。近接センサ部2は、静電容量の変化を基に、指9の接近を検出することができる。また、近接センサ部2は、静電容量が変化した座標を基に、指9の面方向の座標を検出することができる。また、荷重センサ部3は、指9の押込を検出することができる。このように、本実施形態のハイブリッドセンサ1によると、指9の接近、押込、座標を検出することができる。
【0075】
また、近接センサ部2の保護層21、第一表側絶縁層22、第一表側電極X1〜X8、第一基材20、第一裏側電極Y1〜Y8、第一裏側絶縁層23は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、近接センサ部2は柔軟である。したがって、近接センサ部2は、指9から加わる荷重により、変形しやすい。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。また、柔軟な近接センサ部2は、指9から加わる荷重を、面方向に分散しにくい。このため、面方向の座標の検出精度が高い。なお、近接センサ部2は、荷重センサ部3と組み合わせずに、単独で用いることもできる。
【0076】
また、本実施形態のハイブリッドセンサ1の荷重センサ部3によると、静電容量の変化を基に、荷重の程度(小荷重、大荷重)を検出することができる。また、荷重センサ部3は、静電容量が変化した座標を基に、指9の面方向の座標を検出することができる。
【0077】
また、荷重センサ部3の第二表側絶縁層32、第二表側電極x1〜x8、第二基材30、第二裏側電極y1〜y8、第二裏側絶縁層33は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、荷重センサ部3は柔軟である。したがって、荷重センサ部3は、指9から加わる荷重により、変形しやすい。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。また、柔軟な荷重センサ部3は、指9から加わる荷重を、面方向に分散しにくい。このため、面方向の座標の検出精度が高い。
【0078】
また、本実施形態のハイブリッドセンサ1の中間層4は、導電性を有している。また、中間層4はアースされている。このため、近接センサ部2と荷重センサ部3とが、互いのノイズの悪影響を受けにくい。したがって、近接センサ部2、荷重センサ部3の検出精度が高くなる。
【0079】
また、中間層4は、樹脂と比較して柔軟(例えば、樹脂よりもヤング率が小さい。または、樹脂製の中間層4よりも上下方向、水平方向のばね定数が小さい。)な、布(織物)製である。布(織物)は、構造的な伸縮自由度を有しているため、中間層4は、指9から加わる荷重により、伸縮変形が可能である。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。また、柔軟な中間層4は、指9から加わる荷重を、面方向に分散しにくい。このため、面方向の座標の検出精度が高い。
【0080】
また、中間層4の上下両側には、第一裏側絶縁層23、第二表側絶縁層32が配置されている。このため、近接センサ部2の第一裏側電極Y1〜Y8と、荷重センサ部3の第二表側電極x1〜x8と、の間の上下方向距離(電極間距離)を長くすることができる。したがって、第一裏側電極Y1〜Y8と第二表側電極x1〜x8との間の浮遊容量の発生を抑制し、近接センサ部2と荷重センサ部3との相互干渉を低減することができる。よって、近接センサ部2、荷重センサ部3の検出精度が高くなる。
【0081】
また、近接センサ部2の保護層21は、凸部210を有している。このため、操作者が、凸部210を基準に、ハイブリッドセンサ1に対して指9を近接させる位置、ハイブリッドセンサ1に対して指9を押し込む位置、ハイブリッドセンサ1に対して指9を摺動させる軌道などを、目視確認することなく、決定することができる。したがって、操作者は、触覚により、ハイブリッドセンサ1を操作しやすい。また、保護層21はエラストマー製である。このため、射出成形などにより、保護層21に、凸部210を簡単に形成することができる。
【0082】
また、荷重センサ部3の下敷層34は、樹脂と比較して柔軟な、発泡体製である。このため、下敷層34は、指9から加わる荷重により、変形しやすい。よって、操作者がストローク感を触感的に得やすい。
【0083】
また、近接センサ部2、荷重センサ部3は、共に、マルチタッチ(多点同時入力)に対応可能である。このため、操作者によるコマンドのバリエーションが多くなる。
【0084】
<第二実施形態>
本実施形態のハイブリッドセンサと、第一実施形態のハイブリッドセンサとの相違点は、制御ユニットが、送信側結合部と受信側結合部とを備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0085】
図9に、本実施形態のハイブリッドセンサの分離状態におけるブロック図を示す。
図10に、同ハイブリッドセンサの結合状態におけるブロック図を示す。なお、これらの図において、
図5と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0086】
図9、
図10に示すように、送信側結合部74は、送信部71と、第一表側電極X1〜X8と、の間に、介装されている。送信側結合部74は、4つのスイッチ740a〜740dを備えている。スイッチ740aは、第一表側電極X1と第一表側電極X2とを、分離、結合可能である。スイッチ740bは、第一表側電極X3と第一表側電極X4とを、分離、結合可能である。スイッチ740cは、第一表側電極X5と第一表側電極X6とを、分離、結合可能である。スイッチ740dは、第一表側電極X7と第一表側電極X8とを、分離、結合可能である。
【0087】
受信側結合部75は、受信部72と、第一裏側電極Y1〜Y8と、の間に、介装されている。受信側結合部75は、4つのスイッチ750a〜750dを備えている。スイッチ750aは、第一裏側電極Y1と第一裏側電極Y2とを、分離、結合可能である。スイッチ750bは、第一裏側電極Y3と第一裏側電極Y4とを、分離、結合可能である。スイッチ750cは、第一裏側電極Y5と第一裏側電極Y6とを、分離、結合可能である。スイッチ750dは、第一裏側電極Y7と第一裏側電極Y8とを、分離、結合可能である。
【0088】
本実施形態のハイブリッドセンサ1と、第一実施形態のハイブリッドセンサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、
図9に示すように、分離状態においては、全てのスイッチ740a〜740d、750a〜750dが、いずれも開成されている。このため、第一表側電極X1〜X8に、順次、走査的に電圧が供給される。したがって、指の座標に対する検出精度が向上する。
【0089】
一方、
図10に示すように、結合状態においては、全てのスイッチ740a〜740d、750a〜750dが、いずれも閉成されている。このため、第一表側電極X1〜X8のうち、隣り合う一対の第一表側電極X1〜X8が、スイッチ740a〜740dにより、結合されている。同様に、第一裏側電極Y1〜Y8のうち、隣り合う一対の第一裏側電極Y1〜Y8が、スイッチ750a〜750dにより、結合されている。このため、第一表側電極X1〜X8に対しては、二つずつ、順次、走査的に電圧が供給される。したがって、初期(検出対象物が接近していない状態)の静電容量を大きくすることができる。
【0090】
すなわち、
図9に示すように、分離状態においては、第一表側電極X1〜X8に、個別に電圧が供給されている。また、第一裏側電極Y1〜Y8から、個別に電流が出力されている。例えば、ハッチングで示すように、第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間に電圧が印加されている場合、1箇所だけに電界Bが発生する。
【0091】
これに対して、
図10に示すように、結合状態においては、第一表側電極X1〜X8に、二つずつ電圧が供給されている。また、第一裏側電極Y1〜Y8から、二つずつ電流が出力されている。例えば、ハッチングで示すように、第一表側電極X1、X2と第一裏側電極Y1、Y2との間に電圧が印加されている場合、合計9箇所に電界Bが発生する。このため、結合状態においては、初期の静電容量を大きくすることができる。したがって、指の接近に対する検出精度が向上する。
【0092】
<第三実施形態>
本実施形態のハイブリッドセンサと、第一実施形態のハイブリッドセンサとの相違点は、中間層の上下両側に、荷重分散抑制溝を有する絶縁スペーサが配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0093】
図11に、本実施形態のハイブリッドセンサの分解斜視図を示す。なお、
図1と対応する部位については、同じ符号で示す。
図12に、同ハイブリッドセンサの一対の絶縁スペーサ以下部分の透過上面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、荷重分散抑制溝250、350にハッチングを施す。
図13に、
図12のXIII−XIII方向断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0094】
図11〜
図13に示すように、中間層4の上下両側には、絶縁スペーサ25、35が配置されている。絶縁スペーサ25、35は、各々、アクリルゴム製であって、正方形状シート状を呈している。絶縁スペーサ25、35は、各々、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0095】
絶縁スペーサ25は、中間層4の上側に配置されている。絶縁スペーサ25の下面には、複数の荷重分散抑制溝250が凹設されている。複数の荷重分散抑制溝250は、重複部Aを囲むように、格子状に配置されている。すなわち、荷重分散抑制溝250は、上側または下側から見て、水平方向に隣り合う重複部A間に介在している。絶縁スペーサ25の上面は平面状を呈している。絶縁スペーサ25の上面には、第一裏側電極Y1〜Y8が印刷(例えばスクリーン印刷)されている。
【0096】
絶縁スペーサ35は、中間層4の下側に配置されている。絶縁スペーサ35の上面には、複数の荷重分散抑制溝350が凹設されている。複数の荷重分散抑制溝350は、重複部Aを囲むように、格子状に配置されている。すなわち、荷重分散抑制溝350は、上側または下側から見て、水平方向に隣り合う重複部A間に介在している。絶縁スペーサ35の下面は平面状を呈している。絶縁スペーサ35の下面には、第二表側電極x1〜x8が印刷(例えばスクリーン印刷)されている。
【0097】
本実施形態のハイブリッドセンサ1と、第一実施形態のハイブリッドセンサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、中間層4の上下両側には、絶縁スペーサ25、35が配置されている。このため、近接センサ部2の第一裏側電極Y1〜Y8と、荷重センサ部3の第二表側電極x1〜x8と、の間の上下方向距離(電極間距離)を長くすることができる。したがって、第一裏側電極Y1〜Y8と第二表側電極x1〜x8との間に浮遊容量が発生するのを抑制することができる。よって、近接センサ部2、荷重センサ部3の検出精度が高くなる。
【0098】
また、絶縁スペーサ25、35は、荷重分散抑制溝250、350を備えている。荷重分散抑制溝250、350は、上側または下側から見て、水平方向に隣り合う重複部A間に介在している。絶縁スペーサ25、35において荷重分散抑制溝250、350が形成されている部分は、荷重分散抑制溝250、350が形成されていない部分と比較して、上下方向厚さが薄くなる。このため、水平方向のばね定数が小さくなる。したがって、荷重が水平方向に分散するのを抑制することができる。よって、水平方向の座標の検出精度が高くなる。また、荷重の検出精度が高くなる。
【0099】
また、絶縁スペーサ25の上面には、第一裏側電極Y1〜Y8が印刷されている。また、絶縁スペーサ35の下面には、第二表側電極x1〜x8が印刷されている。このため、本実施形態のハイブリッドセンサ1は組付が容易である。
【0100】
<その他>
以上、本発明のハイブリッドセンサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0101】
例えば、荷重センサ部3の種類は特に限定しない。電気抵抗の変化(増加、減少)を基に押込を検出する抵抗変化型センサ、ロードセル(歪みゲージ)、導通の有無を基に押込を検出するメンブレンスイッチなどであってもよい。
【0102】
近接センサ部2としては、上述した相互容量型(検出対象物の接近に伴い第一表側電極X1〜X8と第一裏側電極Y1〜Y8との間の静電容量が減少するタイプ)の静電容量型センサを用いることができる。また、自己容量型(検出対象物の接近に伴い第一表側電極X1〜X8と第一裏側電極Y1〜Y8との間の静電容量が増加するタイプ)の静電容量型センサを用いることができる。
【0103】
検出対象物の種類は特に限定しない。掌、足の指、顎、肘、膝、踵、静電ペン、手袋、靴下などであってもよい。本発明のハイブリッドセンサは柔軟である。このため、手の指9以外の体の部位を用いてコマンドを入力する場合に好適である。
【0104】
上記実施形態においては、
図8に示すように、ハイブリッドセンサ1に対する指9の状態に応じて、DSP700が、「ハイブリッドセンサ1に指9から小荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」、「ハイブリッドセンサ1に指9から大荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」を、判別した。しかしながら、荷重の値そのものを、DSP700が算出してもよい。
【0105】
第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8の配置パターンは特に限定しない。
図2に示すように、上側または下側から見て、互いの広幅部X1a同士が、面方向に並んでいればよい。広幅部X1aは、六角形状、八角形状などの多角形状、円形状などであってもよい。
【0106】
第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8の配置パターンは特に限定しない。
図3に示すように、上側または下側から見て、第二表側電極x1〜x8と第二裏側電極y1〜y8との間に、重複部Aが形成できればよい。例えば、第二表側電極x1〜x8および第二裏側電極y1〜y8のうち、一方を、同心円状に配置してもよい。並びに、他方を、一方と同心の放射状に配置してもよい。この場合であっても、上側または下側から見て、第二表側電極x1〜x8と第二裏側電極y1〜y8との間に、重複部Aを形成することができる。
【0107】
保護層21の凸部210の配置パターンは特に限定しない。円形枠状、矩形枠状、直線状、曲線状、点状などであってもよい。また凸部210に限らず、内部を窪ませる凹部としてもよい。
【0108】
上記実施形態においては、第一基材20に第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8をスクリーン印刷した。また、第二基材30に第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8をスクリーン印刷した。しかしながら、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、パッド印刷方法、リソグラフィー、ディスペンサー印刷方法など、他の印刷方法により、第一基材20に第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8を、第二基材30に第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8を、配置してもよい。また、接着、貼着、成形など、他の配置方法により、第一基材20に第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8を、第二基材30に第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8を、配置してもよい。
【0109】
また、第一表側電極X1〜X8を第一表側絶縁層22に印刷し、第一裏側電極Y1〜Y8を第一裏側絶縁層23に印刷し、第一表側絶縁層22と第一基材20と第一裏側絶縁層23とを接合、貼り合わせてもよい。この方法は、第一表側電極X1〜X8および第一裏側電極Y1〜Y8を第一基材20に印刷できない場合(例えば、第一基材20が発泡体製の場合)に有効である。同様に、第二表側電極x1〜x8を第二表側絶縁層32に印刷し、第二裏側電極y1〜y8を第二裏側絶縁層33に印刷し、第二表側絶縁層32と第二基材30と第二裏側絶縁層33とを接合、貼り合わせてもよい。この方法は、第二表側電極x1〜x8および第二裏側電極y1〜y8を第二基材30に印刷できない場合(例えば、第二基材30が発泡体製の場合)に有効である。
【0110】
第三実施形態の絶縁スペーサ25、35における荷重分散抑制溝250、350の位置、配置数、溝深さは特に限定しない。
図14に、その他の実施形態(その1)のハイブリッドセンサの絶縁スペーサの上面図を示す。なお、
図12と対応する部位については、同じ符号で示す。太線で示すのは、溝深さが深い荷重分散抑制溝250、350である。一方、細線で示すのは、溝深さが浅い荷重分散抑制溝250、350である。
図14に示すように、合計64個の重複部Aを、16個ずつ四等分するように、溝深さが深い荷重分散抑制溝250、350を配置してもよい。溝深さが深いほど、荷重分散抑制溝250、350が形成されている部分の上下方向厚さが薄くなる。このため、水平方向のばね定数が小さくなる。したがって、荷重が水平方向に分散するのを抑制することができる。
【0111】
図15に、その他の実施形態(その2)のハイブリッドセンサの絶縁スペーサの上面図を示す。
図16に、その他の実施形態(その3)のハイブリッドセンサの絶縁スペーサの上面図を示す。なお、これらの図において、
図12と対応する部位については、同じ符号で示す。
図15、
図16にハッチングで示すように、荷重分散抑制溝の代わりに、荷重分散抑制孔251、351を配置してもよい。荷重分散抑制孔251、351は、長孔状を呈している。また、荷重分散抑制孔251、351は、絶縁スペーサ25、35を、上下方向に貫通している。絶縁スペーサ25、35において荷重分散抑制孔251、351が形成されている部分は、荷重分散抑制孔251、351が形成されていない部分と比較して、水平方向のばね定数が小さくなる。このため、荷重が水平方向に分散するのを抑制することができる。
【0112】
また、
図12、
図14に示す荷重分散抑制溝250、350と、
図15、
図16に示す荷重分散抑制孔251、351と、を並置してもよい。例えば、隣り合う荷重分散抑制孔251、351間に荷重分散抑制溝250、350を介在させてもよい。また、荷重分散抑制溝250、350は、絶縁スペーサ25、35の上面および下面のうち、少なくとも一方に配置すればよい。また、
図12に示す荷重分散抑制溝250、350に沿って、絶縁スペーサ25、35を個片状に分割してもよい。
【0113】
また、荷重分散抑制溝250、350、荷重分散抑制孔251、351は、複数の重複部Aをまとめて仕切るように配置してもよい。例えば、
図14に太線で示すように、16個の重複部Aをまとめて仕切る荷重分散抑制溝250、350だけを配置してもよい。
【0114】
第一基材20、第二基材30に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムから選ばれる一種以上を含んでいてもよい。こうすると、第一基材20、第二基材30の比誘電率が高くなる。このため、静電容量を大きくすることができる。
【0115】
第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどを含んでいてもよい。
【0116】
第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、ハイブリッドセンサ1の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、ハイブリッドセンサ1の製造コストを削減することができる。
【0117】
保護層21、第一表側絶縁層22、第一裏側絶縁層23、第二表側絶縁層32、第二裏側絶縁層33に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴムなどを含んでいてもよい。
【0118】
下敷層34の材質は、特に限定しない。エラストマーの場合は、エチレン−プロピレン共重合ゴムなどにオイルを多量に充填させた配合物を用いてもよい。発泡体の場合は、ポリエチレン発泡体、ポリスチレン発泡体を用いてもよい。繊維の立体編物の場合は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの繊維を使って立体的に編んだものや、短繊維を立体的に布に熱融着させたものを用いてもよい。
【0119】
また、下敷層34の材質として、ゲルエラストマーを用いてもよい。ゲルエラストマーは、非常に柔軟である。加えて、応力−歪み曲線におけるヒステリシスが小さい。このため、元の形状への復元が速い。したがって、一つの入力動作に要する時間が短くて済む。また、ゲルエラストマーのタック力は大きい。このため、下敷層34と第二裏側絶縁層33とを積層させるだけで、両部材を貼着することができる。
【0120】
下敷層34用のゲルエラストマーとしては、シリコーンゲル、ウレタンゲル、およびオイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上を用いてもよい。こうすると、所望の軟らかさ、復元性を有する下敷層34を作製しやすい。
【0121】
ここで、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーとしては、全体質量を100質量%とした場合に、オイル成分が70質量%以上含有されているものが望ましい。熱可塑性エラストマーとしては、A−B−Aの三部構造を有するものが望ましい。ここで、Aは剛直性ポリマー(ポリスチレン、官能基ポリマー等)、Bはエラストマー性ポリマー(ポリブチレン、ポリエチレン、ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)、水素化ポリ(イソプレン、ブタジエン、イソプレン−ブタジエン)、ポリ(エチレン/ブチレン+エチレン/プロピレン))である。なかでも、超高分子のポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレン構造をもつものが好適である。また、オイル成分としては、パラフィン性白ミネラルオイル、パラフィン、イソパラフィン、ナフテンオイル、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリテルペン、ポリ−β−ピネン、水素化ポリブタン、ポリブタン(ポリブタンポリマーの一端にエポキシド基を有する)等が挙げられる。
【0122】
また、中間層4用の導電性繊維としては、前記導電性フィラーを含む繊維を用いてもよい。また、中間層4は、織布製、編布製、不織布製、エラストマー製などであってもよく、これらの外面に導電性塗料を塗布したものでもよい。
【0123】
また、中間層4自体が、例えば第一表側電極X1〜X8、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極x1〜x8、第二裏側電極y1〜y8などに用いられるような、導電性塗料製であってもよい。この場合、中間層4を、第一裏側絶縁層23、第二表側絶縁層32、絶縁スペーサ25、絶縁スペーサ35に、塗布(例えばスクリーン印刷など)してもよい。
【0124】
本発明のハイブリッドセンサは、スマートフォン、パソコン、携帯電話、ゲームなどのタッチパネル、タッチスクリーン、入力インターフェイス装置などとして利用することができる。