特許第5759694号(P5759694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759694
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】店頭での実演販売用食品調理装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20150716BHJP
   A47J 27/16 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A47J27/14 F
   A47J27/16 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-211334(P2010-211334)
(22)【出願日】2010年9月21日
(65)【公開番号】特開2012-65726(P2012-65726A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503070775
【氏名又は名称】株式会社群商
(74)【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】園田 豊太郎
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−128065(JP,A)
【文献】 特開平02−111316(JP,A)
【文献】 特開2007−222402(JP,A)
【文献】 実開昭56−044618(JP,U)
【文献】 特開2004−105636(JP,A)
【文献】 特開平08−238065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理のために加熱される水が貯溜される貯水槽を備えた食品調理装置において、
a)該貯水槽は、底部にドレンコックが設けられ下部にヒータが設けられヒータよりも上部に多数個の小孔を有して横方向に配設された仕切板が設けられ、貯水槽の仕切板よりも上方部分が調理材料が投入されて水の水位によって茹調理と蒸調理とが選択的に行われる調理室とされ、下方部分がヒータの周囲が容積を減縮された加熱室とされ、
b)該貯水槽の内部には、投入された調理材料の姿勢,位置を一定に保持するよう板材で格子組みされたセパレータを備え、
c)該貯水槽の上部には、水蒸気の漏出を阻止すると共に調理された食品の含水分量が過多となることがない範囲で水蒸気の一部の通過を許容する水蒸気孔が穿孔された上蓋を備え、
d)該貯水槽の直上には、上蓋の水蒸気孔を経た水蒸気が通過する多数の小孔からなる水蒸気孔が底面に穿孔され調理された食品が載せられると共に横方向へスライド可能な食品陳列棚を設けた、
ことを特徴とする店頭での実演販売用食品調理装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹調理,蒸調理からなる加熱調理に供される店頭での実演販売用食品調理装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、食品の販売を促進するために、商品が陳列されている店頭の一画で調理材料を調理して食品を提供する実演販売が行われるようになってきている。この実演販売における加熱調理としては、時間の掛かる煮込調理等ではなく比較的時間の掛からない茹調理,蒸調理が実施されることが多い。然しながら、茹調理,蒸調理の双方を店頭で選択的に実施することのできる食品調理装置が提供されていないという状況がある。このため、茹調理,蒸調理の双方を選択的に実施することができ、しかも店頭に搬入することのできるコンパクト性を備えた食品調理装置の開発が要望されている。
【0003】
従来、茹調理,蒸調理の双方を選択的に実施することのできる食品調理装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、調理のために加熱される水が貯溜される貯水槽を備え、貯水槽の湯,水蒸気を利用して茹調理,蒸調理を実施することができる食品調理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3225312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る食品調理装置では、蒸調理の際には補機としてせいろを機体の上部に設置しなければならないため、コンパクト性に欠け店頭への搬入に困難性があるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、茹調理,蒸調理の双方を店頭で選択的に実施することのできる食品調理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明に係る店頭での実演販売用食品調理装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1では、調理のために加熱される水が貯溜される貯水槽を備えた食品調理装置において、a)該貯水槽は、底部にドレンコックが設けられ下部にヒータが設けられヒータよりも上部に多数個の小孔を有して横方向に配設された仕切板が設けられ、貯水槽の仕切板よりも上方部分が調理材料が投入されて水の水位によって茹調理と蒸調理とが選択的に行われる調理室とされ、下方部分がヒータの周囲が容積を減縮された加熱室とされ、b)該貯水槽の内部には、投入された調理材料の姿勢,位置を一定に保持するよう板材で格子組みされたセパレータを備え、c)該貯水槽の上部には、水蒸気の漏出を阻止すると共に調理された食品の含水分量が過多となることがない範囲で水蒸気の一部の通過を許容する水蒸気孔が穿孔された上蓋を備え、d)該貯水槽の直上には、上蓋の水蒸気孔を経た水蒸気が通過する多数の小孔からなる水蒸気孔が底面に穿孔され調理された食品が載せられると共に横方向へスライド可能な食品陳列棚を設けた、ことを特徴とする。
【0010】
この手段では、調理のために加熱される水が貯溜される貯水槽の上方部分が茹調理と蒸調理とが選択的に行われる調理室とされることで、補機を設置しなくとも茹調理,蒸調理を実施することができてコンパクト性が確保される。
又、ヒータの周囲に容積が減縮された加熱室が確保されることで、特に蒸調理の際に貯水槽への熱の無駄な逃散が防止される。
又、板材で格子組みされたセパレータによって貯水槽に投入された調理材料の姿勢,位置が一定に保持される。
又、貯水槽に上蓋が設けられることで、貯水槽で発生した水蒸気の無駄な逃散が防止されると共に、一部の水蒸気の通過が許容される水蒸気孔によって、 調理された食品を含水分量過多とすることがない
又、貯水槽の直上に加熱調理された食品が載せられて水蒸気と接触される食品陳列棚が配置されることで、加熱調理された食品が保温される。
更に、食品陳列棚が横方向へスライド可能とされることで、貯水槽から食品陳列棚を退避させ貯水槽での加熱調理の邪魔になるのを避けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る食品調理装置は、調理のために加熱される水が貯溜される貯水槽の上方部分が茹調理と蒸調理とが選択的に行われる調理室とされることで、補機を設置しなくとも茹調理,蒸調理を実施することができてコンパクト性が確保されるため、茹調理,蒸調理の双方を店頭で選択的に実施することができる効果がある。
ヒータの周囲に容積が減縮された加熱室が確保されることで、特に蒸調理の際に貯水槽への熱の無駄な逃散が防止されるため、特に蒸調理の際の熱効率が良好となる効果がある。
板材で格子組みされたセパレータによって、調理材料Bの間の無用の衝突損傷が防止される。
貯水槽に上蓋が設けられることで、貯水槽で発生した水蒸気の無駄な逃散が防止されるため、効果がある
又、貯水槽に上蓋が設けられることで、貯水槽で発生した水蒸気の無駄な逃散が防止され熱効率が良好となると共に、一部の水蒸気の通過が許容される水蒸気孔によって、 調理された食品の含水分量を適切なものとすることができる。
貯水槽の直上に加熱調理された食品が載せられて水蒸気と接触される食品陳列棚が配置されることで、加熱調理された食品が保温されるため、店頭で加熱調理された食品を陳列することができる効果がある。
更に、食品陳列棚が横方向へスライド可能とされることで、貯水槽から食品陳列棚を退避させ貯水槽での加熱調理の邪魔になるのを避けることができるため、茹調理,蒸調理からなる加熱調理をスムースに実施することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る食品調理装置を実施するための形態の分解斜視図である。
図2図1の組立状態図である。
図3図2の使用状態の側面図である。
図4図3の拡大縦断面図である。
図5図4の他の使用例を示す図である。
図6図4図5の他の使用例を示す図である。
図7図4図6の他の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る食品調理装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
この形態では、走行移動性を有するものが示されている。
【0015】
この形態は、図1図2に示すように、機体1,貯水槽2,ヒータ3,仕切板4,食品陳列棚5を主要部として構成されている。
【0016】
機体1は、フレーム材1aで直方体形に形成され全体の外装を構成するもので、フレーム材1aの下半部に装飾板1bが張設され、フレーム材1aの上半部に多数個の小孔が穿孔された遮熱板1cが張設されている。機体1の下端部(底面)には、走行移動を可能にするキャスタ6が取付けられている。また、機体1の下部の前方側には、転倒防止具7が取付けられている。転倒防止具7は、機体1に固定され前方側に突出されたアングル7aと、アングル7aに螺合され設置床面Eに当接される調整ネジ7bとからなる。機体1の上端部には、食品陳列棚5をスライドさせるスライド案内機構8が取付けられている。スライド案内機構8は、レール,ベアリング等で構成され貯水槽2の上端部から少し立上げられて食品陳列棚5を前方側の横方向へスライドさせることができるように配設されている。
【0017】
貯水槽2は、機体1の上半部に内蔵された方形の空間に形成され調理のために加熱される水Wが貯溜されるもので、下部寄りに仕切板4が載せられる段部2aが設けられ、段部2aに載せられた仕切板4によって上方が調理室2bに下方が加熱室2cに区画されるようになっている。加熱室2cは、容積が減縮されて貯水槽2に溝形の底部を構成している。貯水槽2の開放された上端部は、蓋9で着脱開閉されるようになっている。上蓋9は、貯水槽2の上端部に嵌合され貯水槽2で発生した水蒸気Hの漏出を阻止する蓋板形の蓋本体9aと、蓋本体9aの中央部に取付けられ手を掛けて持上げるための取手9bと、蓋本体9aに穿孔され貯水槽2で発生した水蒸気Hの一部の通過を許容する複数個の水蒸気孔9cとからなる。さらに、貯水槽2の内部には、図1に示すように、落蓋10,セパレータ11が収容可能になっている。落蓋10は、貯水槽2の横断面形状の平板形に形成され貯水槽2に投入された調理材料Bの上に載せられる平板形の板本体10aと、板本体10aの中央部に取付けられ手を掛けて持上げるための取手10bとからなる。セパレータ11は、板材で格子組みされ貯水槽2に投入された調理材料Bの姿勢,位置を一定に保持する。さらに、貯水槽2の底部には、貯水槽2に貯溜される水Wの水位を調整するためのドレンコック12が接続されている。
【0018】
ヒータ3は、貯水槽2に貯溜されている水Wを通電により加熱する電熱ヒータからなるもので、貯水槽2の外部から加熱室2cに突出して内蔵される格好で設けられている。このヒータ3には、通電制御を行うコントローラ(図示せず)が接続されている。なお、コントローラは、貯水槽2に設けられた温度センサ等(図示せず)と連係するように接続されている。
【0019】
仕切板4は、貯水槽2の横断面形状の平板形に形成され貯水槽2の段部2aに載せられる板本体4aと、板本体4aの全面に水W,水蒸気Hの通過を許容し調理材料Bの落下を阻止する大きさに穿孔された多数個の小孔4bと、板本体4aの中央部に取付けられ手を掛けて持上げるための取手4cとからなる。
【0020】
食品陳列棚5は、機体1の上部の前方側の大部分を覆う面積の底面5aの後方側を除く3辺に側面5bが立上げられた棚形に形成されている。底面5aには、貯水槽2で発生し上蓋9の水蒸気孔9cを通過した水蒸気Hが通過する多数個の小孔からなる水蒸気孔5cが穿孔されている。底面5aの後方側の辺には、手を掛けてスライドさせるための取手5dが取付けられている。この食品陳列棚5は、後方側へのスライドで貯水槽2の直上に位置され、前方側へのスライドで貯水槽2の上端部を開放するように設定されている。
【0021】
この形態を使用するには、食品陳列棚5を前方側にスライドさせ貯水槽2から上蓋9,落蓋10,セパレータ11を取外した状態としておき、貯水槽2の内部に水Wを注入し調理材料Bを投入することになる。
【0022】
この後、図2に示すように、貯水槽2に上蓋9を被せて水Wをヒータ3で加熱することにより、調理材料Bを加熱調理する。この加熱調理では、図4に示すように、貯水槽2における水Wの水位を仕切板4よりも高くして調理材料Bを水Wに沈漬させることで、茹調理を選択実施することができる。また、図5に示すように、貯水槽2における水Wの水位を仕切板4よりも低くして調理材料Bを水Wに沈漬させないようにすることで、蒸調理を選択実施することができる。
【0023】
貯水槽2で加熱調理された食品Fについては、食品陳列棚5を前方側にスライドさせ貯水槽2から上蓋9を取外した状態とすることで、貯水槽2から取出して容易に食品陳列棚5の底面5aに載せることができる。なお、食品陳列棚5が前方側にスライドされた状態で加熱調理された食品Fが載せられると、全体の重量バランスが変化することになるが、転倒防止具7によって転倒が防止される。
【0024】
食品陳列棚5の底面5aに載せられた食品Fは、図3図5に示すように、続いて行われる加熱調理で貯水槽2から発生し上蓋9の水蒸気孔9cを通過した水蒸気Hが底面5aに穿孔された水蒸気孔5cを通過することで、水蒸気Hとの接触で保温されることになる。この保温では、上蓋9の水蒸気孔9cの構造から食品Fへの水蒸気の接触量が制約されているため、食品Fの含水分量が過多になることがない。また、図3図5に示す状態では、食品陳列棚5が貯水槽2の直上に位置されるため、水蒸気Hの拡散が少なく効率的な食品Fの保温を期待することができる。
【0025】
さらに、この形態では、図6に示すように、茹調理の際に調理材料Bの上に落蓋10を載せることで、調理材用Bの無用の揺動を防止することができる。なお、落蓋10を蒸調理に使用すると、水蒸気Hの上昇を抑制して蒸効果を高めることもできる。また、図7に示すように、茹調理,蒸調理の際に調理材料Bの間にセパレータ11を介装しておくと、調理材料Bの間の無用の衝突損傷が防止される。
【0026】
この形態によると、調理のために加熱される水Wが貯溜される貯水槽2の上方部分が茹調理と蒸調理とが選択的に行われる調理室2bとされることで、補機を設置しなくとも茹調理,蒸調理を実施することができてコンパクト性が確保される。このため、店頭に搬入して、茹調理,蒸調理の双方を店頭で選択的に実施することができる。
【0027】
さらに、調理の際に水蒸気Hが発生する調理槽2等の調理装置部分と加熱調理された食品Fが載せられる食品陳列棚5とを一体化させ、調理装置部分で発生した水蒸気Hを食品陳列棚5での食品Fの保温の熱源としている。そして、食品陳列棚5を横方向へスライド可能にして調理装置部分の使用の邪魔になるのを避けることができるようして、一体化の不利が改善されている。従って、設置スペースを小さくすることができ、茹調理,蒸調理の双方を店頭で選択的に実施することに加えて、加熱調理された食品Fを店頭で簡単に保温することができる。
【0028】
以上、図示した形態の外に、食品陳列棚5を他の構造のものとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る食品調理装置は、実演販売以外にパーティー会場等での小規模の調理,保温に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 機体
2 貯水槽
3 ヒータ
4 仕切板
5 食品陳列棚
12 ドレンコック
F 食品
H 水蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7