特許第5759701号(P5759701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759701
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20150716BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20150716BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A61F13/18 360
   A61F13/18 302
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-238288(P2010-238288)
(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公開番号】特開2012-90663(P2012-90663A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 浩志
(72)【発明者】
【氏名】茂木 知之
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−136899(JP,A)
【文献】 特開2009−232959(JP,A)
【文献】 特開2010−227543(JP,A)
【文献】 特開2003−38567(JP,A)
【文献】 特開昭52−84040(JP,A)
【文献】 特開2006−16727(JP,A)
【文献】 特開2010−136900(JP,A)
【文献】 特開2006−141615(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流に乗せて供給した吸収体の原料を、回転ドラムの外周面に設けた凹部に吸引して堆積体を得ると共に、該回転ドラムの下方を走行するコンベアベルトの搬送面上に吸引して堆積体を得る堆積工程と、
前記凹部内で得られた堆積体を、前記コンベアベルトの搬送面上で得られた堆積体上に重ね合わせて重合堆積体を得る重合工程と、
前記重合堆積体を加圧し圧縮するプレス工程とを具備し、
前記凹部には、底面が多孔性プレートからなり該底面からの吸引を行う吸引部と、底面が非通気性であり該底面からの吸引を行わない非吸引部とがそれぞれ複数設けられており、該非吸引部の非通気性の底面は、該多孔性プレート上に配された非通気性部材からなり、該非吸引部の前記回転ドラムの外周面からの深さは、該吸引部のそれよりも浅く、
前記堆積工程においては、前記凹部内に前記原料を堆積させ、
前記プレス工程においては、前記重合堆積体を加圧し、密度が相異なる高密度部及び低密度部を有する吸収体を得る、吸収体の製造方法。
【請求項2】
ダクトを介して、前記原料を前記回転ドラムの外周面及び前記コンベアベルトの搬送面それぞれに供給し、該ダクト内に、該原料の供給路として、該原料の供給口から該回転ドラムの外周面に向かう供給路と該供給口から該コンベアベルトの搬送面に向かう供給路とが互いに独立して設けられている、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記重合工程の実施前に、前記コンベアベルトの搬送面上に堆積した堆積体の表面を平坦にする、請求項1又は2記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記非吸引部の回転ドラム外周面からの深さが、前記吸引部の回転ドラム外周面からの深さよりも浅い、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記吸収体が、前記吸引部に対応する部分が高密度部、前記非吸引部に対応する部分が低密度部となっている吸収体である、請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
前記凹部として、前記吸引部及び前記非吸引部がそれぞれ、前記回転ドラムの周方向に長い形状に形成され、該吸引部及び該非吸引部が、該回転ドラムの幅方向に交互に形成されたものを用いる、請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記凹部内が、前記回転ドラムの周方向及び幅方向に延びる前記非吸引部によって複数の領域に区画されており、各該領域が前記吸引部となっている請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の製造においては、空気流に乗せて供給した吸収体の原料(解繊パルプ等の繊維材料、高吸収性ポリマーの粒子等)を、回転ドラムの外周面に形成された凹部に吸引して堆積させ、該凹部内に堆積した堆積体を、そのまま、あるいは透水性のシート材で被覆して吸収体として用いることが行われている。
【0003】
吸収体の製造に関し、吸収体の原料を堆積させる凹部の底面に有孔領域と無孔領域を設け、両領域に堆積させる粉粒体の量を異ならせることによって、粉粒体の坪量が相異なる複数の領域を有する吸収体を製造する技術(特許文献1参照)や、吸収体の原料を堆積させる凹部の底面に複数の区域を設定し、区域毎に吸引力を異ならせて、吸収体における積繊量を調整する技術(特許文献2参照)が知られている。また、特許文献3には、吸収体の原料を堆積させる凹部の底面を形成する多孔性の底面板上に凸部を形成し、該凸部に対応する箇所が欠落部(非積繊部)となった吸収体を製造することが記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、回転ドラムと該回転ドラムの下方に配された無端ベルトとを備えた装置を用い、該無端ベルト上に載置された台紙上に、該ベルトの走行方向に連続する第一の繊維層を堆積・形成すると共に、該回転ドラムの外周面上に、矩形状の第二の繊維層を間欠的に堆積・形成し、該第一の繊維層上に該第二の繊維層を一定のピッチで重ね合わせて、立体的形状からなる連続的な重合繊維層を形成し、該重合繊維層を圧縮成形することにより、密度や厚さの勾配が付与された繊維層(吸収体)を得る方法が記載されている。前記第二の繊維層は、回転ドラムの外周面に設けられた矩形状の通気部上に形成されるところ、該通気部は、その全域が、吸収体の原料の吸引を行う吸引部である。そのため、前記第二の繊維層は、繊維の堆積量が略均一な1枚のシート状の繊維層となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232959号公報
【特許文献2】特開2004−222774号公報
【特許文献3】特開2008−206539号公報
【特許文献4】特開平2−111365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術においては、一枚の平板状の支持体にエッチング加工やパンチング加工により前記有孔領域及び無孔領域を形成している。そのため、有孔領域と無孔領域との境界部では繊維の堆積量がなだらかに変化する。また、特許文献2の技術においても、異なる吸引力を作用させる複数の区域を、一枚のプレート上に設けているため、隣接する区域どうしの境界部では繊維の堆積量がなだらかに変化する。従って、引用文献1及び2の技術においては、密度差の大きい高密度部及び低密度部を有する吸収体を製造することは困難である。
【0007】
また、特許文献3において、前記底面板上に凸部を設ける目的は、前述の通り、該凸部に対応する箇所に原料を堆積させないことによって、欠落部を有する吸収体を製造することにある。従って、特許文献3には、前記凸部上あるいは前記回転ドラム上に繊維を堆積させて、繊維の堆積量が異なる複数領域を有する堆積体を製造したり、それを利用して密度差の大きい高密度部及び低密度部を有する吸収体を製造することについて何ら記載されていない。
【0008】
また、特許文献4に記載の製造方法において、回転ドラム上で形成され且つ第一の繊維層上に間欠的に重ね合わされる、第二の繊維層は、前述したように、底面からの吸引を行う吸引部のみからなり、底面からの吸引を行わない非吸引部を有しない矩形状の通気部を用いて形成されるものであり、従って、第二の繊維層の形状は、厚みが略均一な矩形状に限定される。特許文献4には、第二の繊維層を厚みが均一でない任意の形状とすることやそのための具体的な手段については何ら記載されておらず、自ずと、そのような厚みが不均一な第二の繊維層その他任意の形状の第二の繊維層を利用して、密度差の大きい高密度部及び低密度部する吸収体を製造することについて何ら記載されていない。
いない。
【0009】
従って、本発明は、密度差の大きい高密度部及び低密度部を有する吸収体を効率良く製造することのできる吸収体の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空気流に乗せて供給した吸収体の原料を、回転ドラムの外周面に設けた凹部に吸引して堆積体を得ると共に、該回転ドラムの下方を走行するコンベアベルトの搬送面上に吸引して堆積体を得る堆積工程と、前記凹部内で得られた堆積体を、前記コンベアベルトの搬送面上で得られた堆積体上に重ね合わせて重合堆積体を得る重合工程と、前記重合堆積体を加圧し圧縮するプレス工程とを具備し、前記堆積工程においては、底面が多孔性プレートからなり該底面からの吸引を行う吸引部と底面が非通気性であり該底面からの吸引を行わない非吸引部とをそれぞれ複数有する、凹部内に、前記原料を堆積させ、前記プレス工程においては、前記重合堆積体を加圧し、密度が相異なる高密度部及び低密度部を有する吸収体を得る、吸収体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収体の製造方法によれば、密度差の大きい高密度部及び低密度部を有する吸収体を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の吸収体の製造方法の実施に用い得る吸収体の製造装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す装置の要部の模式図である。
図3図3は、図1に示す装置における回転ドラムの外周部の分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す装置における回転ドラムの外周部の一部を示す図であり、図4(a)は、外周部の展開図であり、図4(b)は、図4(a)のI−I線断面図である。
図5図5は、繊維材料を堆積させた凹部の断面を示す断面図〔図4(b)対応図〕である。
図6図6(a)は、本発明で得られる重合堆積体を示す斜視図であり、図6(b)は、該重合堆積体のII−II線断面図である。
図7図7(a)は、図6に示す堆積体を加圧圧縮して得られる吸収体の一例を示す斜視図であり、図7(b)は、該吸収体のIII−III線断面図である。
図8図8(a)は、本発明で得られる一吸収体の拡散方向制御能を説明する説明図であり、図8(b)は、拡散方向制御能を有しない従来の吸収体の場合を示す図である。
図9図9は、本発明の他の実施態様を示す図であり、図9(a)は、該実施態様における凹部及びその周辺を示す斜視図、図9(b)は、該凹部を用いて得られた重合堆積体の重合部を示す斜視図、図9(c)は、該重合部の長手方向中央における幅方向断面を示す断面図、図9(d)は、図9(b)に示す重合部を加圧圧縮して得られる吸収体を示す斜視図、図9(e)は、該吸収体の長手方向中央における幅方向断面を示す断面図である。
図10図10は、本発明の更に他の実施態様を示す図であり、図10(a)は、該実施態様における凹部及びその周辺を示す斜視図、図10(b)は、該凹部を用いて得られた重合堆積体の重合部を示す斜視図、図10(c)は、該重合部の長手方向中央における幅方向断面を示す断面図、図10(d)は、図10(b)に示す重合部を加圧圧縮して得られる吸収体を示す斜視図、図10(e)は、同吸収体の長手方向中央における幅方向断面を示す断面図である。
図11図11は、図1に示す装置における平坦化ロールの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2に本発明の吸収体の製造方法の実施に用い得る製造装置の一例を示す。図1及び図2に示す吸収体の製造装置1は、矢印方向R2に回転駆動される回転ドラム2と、回転ドラム2の下方を走行するコンベアベルト43を備えたバキュームコンベア4と、回転ドラム2の外周面21及びコンベアベルト43の搬送面43aそれぞれに吸収体の原料である繊維材料30を供給するダクト5と、ダクト5に繊維材料30を供給する繊維材料供給部6と、プレス装置7と、切断装置8とを備えている。
【0014】
回転ドラム2は、図1及び図2に示すように、円筒状をなし、モータ等の原動機からの動力を受けてその外周面21を形成する部材(後述するパターン形成プレート27)が水平軸回りを回転する。外周面21を形成する部材よりも内側に位置するドラム本体(後述するフレーム体25及び多孔性プレート26)は固定されていて回転しない。回転ドラム2は、図4に示すように、その外周面21に、吸収体の原料としての繊維材料30を堆積させる複数の凹部22を有している。回転ドラム2の凹部22は、回転ドラム2の周方向(2X方向)に所定の間隔で複数形成されている。図4中、2X方向が回転ドラム2の周方向、2Y方向が回転ドラム2の幅方向(回転ドラム2の回転軸と平行な方向)である。
【0015】
回転ドラム2は、図3及び図4に示すように、金属製の剛体からなる円筒状のフレーム体25と、フレーム体25の外面側に重ねて固定された多孔性プレート26と、多孔性プレート26の外面側に重ねて固定されたパターン形成プレート27を有する。図3に示すように、回転ドラム2は、4枚のパターン形成プレート27を有しており、各パターン形成プレート27は、回転ドラム2の周方向(2X方向)に一定の間隔を置いて配されている。多孔性プレート26及びパターン形成プレート27等の固定手段としては、ボルトや接着剤等の各種公知の固定方法を特に制限なく用いることができる。
【0016】
フレーム体25の外面部における凹部22に対応する部分には、該部分を厚み方向に貫通する図示しない連通孔が形成されている。多孔性プレート26は、多数の細孔を有し、空気流に乗せて供給された吸収体の原料としての繊維材料30を透過させずに空気のみを透過させる得るものである。多孔性プレート26としては、この種の積繊装置に従来用いられるものを特に制限なく使用することができ、例えば、金属又は樹脂製のメッシュプレートや、金属又は樹脂製の板にエッチングやパンチングで多数の細孔を形成したもの等を用いることができる。パターン形成プレート27は、回転ドラム2の外周面21を形成する外面27aと、回転ドラム2の回転軸側に向けられる内面27bとを有し、外面27aと内面27bとの間に、凹部22内の立体形状に対応する形状の空間を有している。
【0017】
凹部22には、図4(b)に示すように、底面23aが多孔性プレート26からなり、凹部22が後述する空間B上を通過している間、該底面23aからの吸引が行われる吸引部23と、底面24aが非通気性であり、凹部22が後述する空間B上を通過している間であっても該底面24aからの吸引が行われない非吸引部24とが設けられている。より具体的には、図4(a)に示すように、吸引部23及び非吸引部24は、それぞれ、回転ドラムの周方向(2X)に長い形状に形成されており、該吸引部23及び該非吸引部24は、それぞれ複数設けられている。また、吸引部23及び非吸引部24は、回転ドラムの幅方向(2Y)に交互に形成されている。また、非吸引部24の底面24aは、図4(b)に示すように、多孔性プレート26上に配置された非通気性の部材28からなり、該底面24aからの吸引は行われない。
【0018】
本実施形態においては、凹部22は、吸引部23と非吸引部24とで、回転ドラム2の外周面21からの深さが異なっている。即ち、吸引部23の深さd1は、図4(b)に示すように、パターン形成プレート27の厚みと同じであるのに対して、非吸引部24の深さd2は、パターン形成プレート27の厚みから非通気性の部材28の厚みtの分を差し引いた深さ(d1−t)となっている。吸引部23の深さd1及び非吸引部24の深さd2は、回転ドラム2の外周面21から各部23,24における底面23a,24aまでの距離を、回転ドラム2の回転軸(中心線)に直交する直線に沿って測定する。非通気性部材28の厚みtも同様にして測定する。
【0019】
このように、吸収体の原料としての繊維材料を堆積させる凹部22に、吸引部23と、非通気性部材28を配した非吸引部24とを設け、非吸引部24の深さd2を吸引部23の深さd1よりも浅くすることで、吸引部23及び非吸引部24の両者に繊維材料を堆積させつつ、吸引部23に堆積する繊維材料の量と非吸引部24に堆積する量との間に大きな差を設けることが容易となる。
【0020】
尚、非吸引部24の深さd2はゼロであっても良い。即ち、非吸引部24を構成する非通気性部材28の厚みtを、パターン形成プレート27の厚みと同じとし、非吸引部24の底面24aが、回転ドラム2の外周面21を形成する、パターン形成プレート27の外面27aと面一の面を形成するようになされていても良い。非吸引部24の深さd2がゼロであると、後述する堆積工程において該非吸引部24に繊維材料が堆積しないため、堆積工程後に凹部22内から離型して得られる堆積体は、該非吸引部24に対応する部分(後述する部分34)を有しておらず、吸引部23に対応する部分(後述する部分33)のみを複数有する堆積体である。
【0021】
図3及び図4に示す例では、非吸引部24を形成するための非通気性部材28が、パターン形成プレート27の一部を構成している。より具体的には、合成樹脂製のパターン形成プレート27の内面27bと面一の面を形成するように、断面矩形の非通気性部材28が一体成形されている。本実施形態における非通気性部材28は、非通気性部材28と一体となっているパターン形成プレート27がフレーム体25及び/又は多孔性プレート26上に固定されることによって、多孔性プレート26上に間接的に固定されているが、非通気性部材28の下面が、多孔性プレート26上に直接固定されていても良い。
【0022】
回転ドラム2の内側(回転軸側)に位置するドラム本体には、相互間が仕切られた空間B、C及びDが形成されている。空間Bには、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、該空間B内を負圧に維持可能である。前述したように、ドラム本体(フレーム体25及び多孔性プレート26)は固定されており、回転ドラム2の外周面21を形成するパターン形成プレート27が回転しても、空間B、C及びDの位置は変わらない。個々の凹部22が、負圧に維持された空間B上を通過している間、各凹部22の底面23aを形成する多孔性プレート26の細孔が吸引孔として機能する。尚、回転ドラム2は、その回転軸の軸長方向の一端が回転ドラム2と一体的に回転する板で封鎖されており、他端が、回転しない板で気密に封鎖されている。また、前記の空間B〜Dどうし間は、回転ドラム2の回転軸側から回転ドラム2の内面に向かって設けられたプレートにより仕切られている。
【0023】
バキュームコンベア4は、図2に示すように、駆動ロール41及び従動ロール42に架け渡された無端状の通気性のコンベアベルト43と、コンベアベルト43を挟んで回転ドラム2と対向する位置に配されたバキュームボックス44とを備えている。コンベアベルト43は、網目を有する帯状の通気性ベルトが無端状に連結されたものであり、ロール41,42に案内されて所定の経路を連続的に移動する。繊維材料が供給され堆積体が形成される、コンベアベルト43の搬送面43aは実質的に平坦である。バキュームボックス44は、上下面、左右の両側面及び背面を有する箱状の形状を有し、該上面に、上方(回転ドラム2方向)に向かって開口する開口部(図示せず)を有している。バキュームボックス44は、回転ドラム2の下方(真下)から、図中Aで示す方向(コンベアベルト43の走行方向)及び方向Aとは逆方向にそれぞれ延在している。バキュームボックス44には、図示しない排気管等を介して、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置の作動により、バキュームボックス44内を負圧に維持可能である。
【0024】
ダクト5は、図1及び図2に示すように、回転ドラム2の外周面21の一部(前記空間B上に位置する部分)及びコンベアベルト43の搬送面43aの一部(回転ドラム2に対してコンベアベルト43の走行方向Aの上流側に位置する部分)を覆う一端部51と、繊維材料供給部6に接続され吸収体の原料(繊維材料)の供給口として機能する他端部52とを有しており、空間B上に位置する凹部22の底面23a及びコンベアベルト43の搬送面43aからの吸引により、ダクト5内に、回転ドラム2の外周面21及びコンベアベルト43の搬送面43aに向けて流れる空気流が生じるように構成されている。
【0025】
ダクト5内には、吸収体の原料(繊維材料)の供給路として、他端部52(原料の供給口)から回転ドラム2の外周面21に向かう供給路5Aと他端部52からコンベアベルト43の搬送面43aに向かう供給路5Bとが互いに独立して設けられている。より具体的には、ダクト5内には、図1及び図2に示すように、他端部52側に配された繊維材料供給部6の近傍から回転ドラム2の外周面21の近傍に向かって斜め下方に延び且つダクト5の全幅(回転ドラム2の幅方向2Yの全長)に亘る、平板状の隔壁53が設けられており、該隔壁53により、ダクト5内が上層と下層とに分け隔てられている。該上層が供給路5A、該下層が供給路5Bである。隔壁53は、合成樹脂や金属からなり、非通気性部材である。
【0026】
繊維材料供給部6は、解繊機61を備えており、パルプシート等のシート状の原料(図示せず)を解繊機61に導入し、解繊された繊維材料30をダクト5内の供給路5A,5Bそれぞれに供給するように構成されている。尚、ダクト5の途中に、供給路5A,5Bそれぞれに吸水性ポリマーの粒子を導入する吸水性ポリマー導入部を設けることもできる。
【0027】
ダクト5内には、図2に示すように、コンベアベルト43の搬送面43a上に堆積した堆積体32の表面32aを平坦にする平坦化ロール55が設けられている。平坦化ロール55は、回転ドラム2に対して堆積体32の搬送方向(コンベアベルト43の走行方向)Aの上流側で且つコンベアベルト43の上方に配されており、外周面が平滑な円筒状をなし、モータ等の原動機からの動力を受けて水平軸回りを矢印R5方向に回転する。平坦化ロール55の外周面とコンベアベルト43の搬送面43aとの間には、所定の隙間が形成されている。この隙間を調整することにより、後述する重合工程の実施直前の堆積体32の厚みを調整することが可能である。平坦化ロール55の外径は、回転ドラム2よりも小さく、また、平坦化ロール55の幅方向の長さ(搬送方向Aと直交する方向の長さ)は、平坦化ロール55によって平坦化される堆積体32の幅方向の長さ(搬送方向Aと直交する方向の長さ)よりも長く、堆積体32の表面32aの全域に平坦化ロール55の外周面が接触可能になされている。
【0028】
平坦化ロール55が矢印R5で示す方向に回転することにより、該平坦化ロール55の平滑な外周面が、凹凸を有する堆積体32の表面32aに接触して該凹凸をならし、これにより該表面32aが平坦になる。こうして平坦化された表面32aには、後述する重合工程において、回転ドラム2の凹部22内で得られた堆積体31が重ね合わされる。このように、コンベアベルト43の搬送面43a上の堆積体32における、別の堆積体31が重ね合わされる表面32aを、該別の堆積体31が重ね合わされる前に平坦にしておくことにより、重ね合わされる該別の堆積体31の形状が複雑なものであっても安定して転写ができるという効果が奏される。
【0029】
プレス装置7は、表面平滑な一対のロール71,72を備え、ロール71,72間に導入された被加圧物を上下面から加圧して厚み方向に圧縮可能に構成されている。プレス装置7としては、表面平滑な一対のロール71,72を備えたものに代えて、一方又は双方のロールの周面にエンボス用の凸部が形成された一対のエンボスロールを備えたものを用いることも、吸収体にエンボスによる低密度部と高密度部を形成し、吸収性能を向上させることができる点から好ましい。
【0030】
切断装置8としては、生理用ナプキンや吸収性物品の製造において、吸収体連続体の切断に従来使用されているもの等を特に制限なく使用することができる。図1に示した切断装置8は、周面に切断刃81を備えたカッターロール82と、切断刃を受ける周面平滑なアンビルロール83とを備えている。
【0031】
次に、前述した吸収体の製造装置1を用いて吸収体3を連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の一実施態様について説明する。吸収体の製造装置1を用いて吸収体3を製造するためには、回転ドラム2内の空間B及びバキュームボックス44内を、それぞれに接続された排気装置を作動させて負圧にする。主として空間B内を負圧にすることで、ダクト5内の供給路5A内に、吸収体の原料を回転ドラム2の外周面21に搬送する空気流が生じ、また、主としてバキュームボックス44内を負圧にすることで、ダクト5内の供給路5B内に、該原料をコンベアベルト43の搬送面43aに搬送する空気流が生じる。また、回転ドラム2を方向R2に回転させ、コンベアベルト43を方向Aに走行させる。
【0032】
そして、繊維材料供給部6を作動させて、ダクト5の他端部52(供給口)からダクト5内に繊維材料30を供給すると、繊維材料30の一部は、ダクト5内の供給路5Aを流れる空気流に乗り、飛散状態となって回転ドラム2の外周面21に向けて供給され、また、繊維材料30の残りは、ダクト5内の供給路5Bを流れる空気流に乗り、飛散状態となってコンベアベルト43の搬送面43aに向けて供給される。
【0033】
供給路5A内を搬送された繊維材料30は、図5に示すように、回転ドラム2の凹部22に吸引されて堆積する。本実施態様においては、図5に示すように、底面23aからの吸引が行われる吸引部23のみならず、底面24aからの吸引が行われない非吸引部24にも繊維材料30を堆積させる。好ましくは、図5に示すように、凹部22に堆積した堆積体31の上面31aが平坦になるように繊維材料30を堆積させる。また、図5に示すように、吸引部23及び非吸引部24の何れにおいても堆積した堆積体31の上面31aの位置が外周面21の位置に略一致するように堆積させることが好ましい。尚、吸引部23及び/又は非吸引部24に、外周面21の位置を超える過剰量の繊維材料30を堆積させた後、スカッフィングロール等で、その過剰量の繊維材料30を除去しても良い。
【0034】
非吸引部24に所望の量の繊維材料30を堆積させたり、繊維材料30を前述した好ましい状態等に堆積させるためには、吸引部23の底面23aに吸引される繊維材料30との絡み合いや底面23aに吸入される空気の流れの影響によって、非吸引部24にも所望の量の繊維材料30が堆積するようにする。例えば、非吸引部24の幅W2や、吸引部23の幅W1に対する非吸引部W2の幅の比(W1/W2)を調整したり、それらの幅W2や比(W1/W2)等に応じて吸引部23の底面23aに生じさせる吸引力や、吸引部23の深さd1に対する非吸引部24の深さd2の比(d2/d1)を調整したりする。
【0035】
凹部22からの堆積体31の離型性、また、離型後の堆積体31(特に吸引部23に対応する部分33)のプレス工程までの形状維持の観点から、吸引部23の幅W1は、3〜30mmであることが好ましく、より好ましくは5〜20mmである。また、繊維材料が外周面21と略同じ高さまで十分に堆積することができる観点から、非吸引部24の幅W2は、3〜30mmであることが好ましく、より好ましくは5〜20mmである。吸引部23の幅W1と非吸引部24の幅W2の比(W1/W2)は、0.1〜10であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5である。
【0036】
また、凹部22からの堆積体31の離型性、また、離型後の堆積物31(特に吸引部23に対応する部分33)のプレス工程までの形状維持の観点から、吸引部23の深さd1は、1〜30mm、特に3〜20mmであることが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。また、吸引部23の深さd1に対する非吸引部24の深さd2の比(d2/d1)は、0.05〜0.95であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.9である。また、非吸引部24の幅W2と深さd2の比(幅W2/深さd2)は、0.1〜10であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5である。
【0037】
一方、供給路5B内を搬送された繊維材料30は、図2に示すように、コンベアベルト43の搬送面43aに吸引されて、搬送面4a上に配されたコアラップシート37上に堆積し、コンベアベルト43の走行方向Aに連続する帯状の堆積体32を形成する。本実施態様においては、図1に示すように、堆積体32が形成される前のコンベアベルト43の搬送面43a上に、ティッシュペーパー又は透液性の不織布等からなる帯状のコアラップシート37が導入され、そのコアラップシート37上に帯状の堆積体32が形成される。
【0038】
帯状の堆積体32は、コンベアベルト43によって回転ドラム2の下方(真下)へ向けて搬送され、回転ドラム2よりも搬送方向Aの上流側に配された平坦化ロール55によって、その表面32aが平坦化される。
【0039】
前述した堆積工程を経て得られた堆積体31,32は、続く重合工程において、互いに重ね合わされて重合堆積体39とされる。即ち、ダクト5内の供給路5Aにおいて回転ドラム2の凹部22に堆積した堆積体31は、回転ドラム2の方向R2への更なる回転により、該凹部22に堆積したままの状態でコンベアベルト43上の堆積体32との対向位置(回転ドラム2の最下点位置)に搬送され、該対向位置にて、バキュームボックス44からの吸引及び自重により、堆積体32の平坦化された表面32a上へ移行し、凹部22内から離型される。こうして、回転ドラム2の複数の凹部22で形成された複数の堆積体31が、帯状の堆積体32の表面32a上に間欠的に順次一定のピッチで重ね合わされて、複数の堆積体31と帯状の堆積体32とからなる2層構造の帯状の重合堆積体39が形成される。
【0040】
本実施態様においては、図1及び図2に示すように、帯状の重合堆積体39は、コンベアベルト43の搬送面43a上に導入されたコアラップシート37上に形成される。前述した重合工程の実施後、回転ドラム2よりも搬送方向Aの下流側にてコアラップシート37の両側部が折り返され、重合堆積体39の上下両面がコアラップシート37で被覆される。そして、コアラップシート37で被覆された状態の重合堆積体39が、プレス装置7の一対のロール71,72間に導入されて厚み方向に圧縮され、プレス工程が実施される。
【0041】
図6には、前記重合工程の実施直後(前記プレス工程の実施前)の帯状の重合堆積体39が示されている。プレス装置7による加圧前の重合堆積体39は、図6に示すように、堆積体32上に堆積体31が重ね合わされてなる重合部38Aと、堆積体31が重ね合わされていない(堆積体32のみからなる)非重合部38Bとを有し、重合部38Aと非重合部38Bとが重合堆積体39の長さ方向(搬送方向A)に交互に配されている。重合部38Aにおいて、吸引部23に対応する部分33が肉厚、非吸引部24に対応する部分34が肉薄となっている。また、この重合堆積体39の一方の面(コンベアベルト43との対向面)39aが略平坦である一方、他方の面39bは、重合部38Aにおいては、起伏の大きな凹凸面となっている。尚、他方の面39bは、非重合部38Bにおいては、前述した平坦化ロール55による平坦化処理により略平坦である。重合部38Aにおける凹凸面39bには、図6に示すように、凸部と溝部が、それぞれ、回転ドラム2の周方向に対応する方向(3X方向)に延びて形成されている。図6(b)に示すように、凸部は吸引部23に対応する部分33であり、溝部は非吸引部24に対応する部分34である。
【0042】
本実施態様においては、このような形態の重合堆積体39を、プレス装置7により加圧して、吸引部23に対応する部分33の厚みを積極的に減少させる。これにより、両部分33の厚み差及び/又は厚み比が減少して、吸引部23に対応する部分33が高密度部35、非吸引部24に対応する部分34が低密度部36となった、図7に示す帯状の吸収体3が得られる。本実施態様で得られた吸収体3には、図7に示すように、高密度部35及び低密度部36が、それぞれ、回転ドラム2の周方向に対応する方向(3X方向)に延びて形成されている。プレス装置7による加圧圧縮は、ロール71,72の一方又は双方を加熱して行っても良く、加熱しなくても良い。加熱して加圧圧縮する場合には、ロール71,72の一方又は双方を100℃程度に加熱して加圧圧縮を行うことが好ましい。
【0043】
プレス装置7によるプレス工程の実施後、帯状の吸収体3は、図1に示すように、コアラップシート37で被覆された状態のまま、切断装置8によって非重合部38Bで切断され、吸収性物品一個分の長さとされる。
【0044】
本実施態様の吸収体の製造方法によれば、このようにして、密度差の大きな高密度部35及び低密度部36を有する吸収体3を効率良く製造することができる。本実施態様の吸収体の製造方法は、新たな大型設備の導入や既存の設備の大幅改造を必要とせず、既存の設備を利用して、吸収体3を効率良く製造することが可能である。
【0045】
吸収体3は、高密度部35と低密度部36とで厚みがほぼ同じであることが好ましい。吸収体3の厚みが、高密度部35と低密度部36とでほぼ同じとは、下記〔測定片の厚みの測定〕によって測定した、高密度部35の厚みT5と低密度部36の厚みT6との比(T5/T6)が1.2以下であることをいう。高密度部35と低密度部36の密度差を大きくして後述する拡散方向制御能が効率良く発現するようにする観点や、吸収体3を生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込んだときに該吸収性物品の着用者に違和感を与えることを防止する観点等から、前記比(T5/T6)は、1.0〜1.2であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.1である。
【0046】
〔測定片の厚みの測定〕
高密度部及び低密度部を含む測定片の全体としての厚みを測定する。厚み測定はJIS−P8118:1998に準じる。但し、測定には、2つの平行な加圧面(固定加圧面と可動加圧面)を持つマイクロメーターであるピーコック式精密測定器(型式R1−C)を用い、測定子可動加圧面の直径は5mm、圧力は2.0N以下で測定した。測定用試験片の大きさは、下記プレートの大きさ以上とする。試験片上に20mm×20mmのプレート(重量5.4g)を置き、測定子可動加圧面を3mm/s以下の速度で操作し、該プレートに当て、安定直後の値を読み取る。加圧面間(試験片に加わる圧力)の圧力は2kPa以下になる。
【0047】
本実施態様の吸収体の製造方法によれば、密度差の大きい高密度部35及び低密度部36を有する吸収体を容易に製造することができる。また、高密度部35と低密度部36との境界部で、密度差が明瞭な吸収体を製造することも容易である。本発明で製造する吸収体は、例えば、低密度部36の坪量が、50〜300g/cm2、特に100〜200g/cm2であることが好ましく、高密度部35の密度と低密度部36の密度との比(前者/後者)が1.1〜5.0、特に1.5〜3.0であることが好ましい。尚、高密度部35と低密度部36の好ましい幅(3Y方向の幅)や該幅の比は、前述した吸引部23及び非吸引部24の好ましい幅や比と同様である。高密度部及び低密度部の密度は次のようにして測定される。
【0048】
〔高密度部及び低密度部それぞれの密度の測定〕
高密度部35及び低密度部36の密度は、JIS−P8118:1998に準じて測定する。具体的には、D(密度:g/cm3)=W(坪量:g/m2)/T(厚み:mm)で算出する。坪量はJIS−P8124に記載されており、裁断機又はカッターによって試験片をカットし、はかりによって重量を測定する。測定した重量を面積で除して坪量を算出する。厚みは前記〔測定片の厚みの測定〕で、高密度部と低密度部とを含む測定片の全体としての厚みを測定する。本願の坪量測定においては、高密度部、低密度部をそれぞれ加工寸法に合わせて一定の面積にカットし重量を測定して坪量を算出する。
【0049】
本発明で製造する好ましい吸収体3は、密度差の大きい高密度部35及び低密度部36を有することで、図8(a)に示すように、拡散方向制御能が効率良く発現する。即ち、吸収体3上に供給された経血や尿等の液は、低密度部36が延びる方向に良好に拡散する一方、低密度部36が延びる方向と直交する方向への拡散は抑制される。低密度部36に沿って拡散した液は、各部において隣接する高密度部35に確実に吸収・保持される。そのため、低密度部36と交差する方向への液の拡散を抑制して該方向の両端からの液漏れを防止しつつ、低密度部36が延びる方向においては、吸収体の吸収容量の有効活用を図ることができる。
【0050】
例えば、図8(a)に示す吸収体は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込む際に、高密度部35及び低密度部36が延びる方向を、着用者の前後方向に一致させることにより、漏れ防止性能に優れ、吸収体の吸収容量を有効活用できる吸収性物品を得ることができる。尚、本発明で製造する吸収体は、高密度部35及び低密度部36がそれぞれ吸収体の幅方向(3X方向と直交する方向)に延びているものであっても良い。そのような吸収体は、高密度部35及び低密度部36を交互に有する領域を、着用者の前後方向の前端及び/又は後端近傍に配することにより、吸収性物品の前後方向からの液漏れ防止性に優れた吸収性物品を得ることができる。
【0051】
図8(b)は、密度が全域において同じ従来の吸収体に図8(a)と同量の液を供給した場合の液の拡散状態を示すものである。そのような吸収体においては、液が全方位に同程度に拡散するため、液が寸法の小さい幅方向の両端に容易に達するため、該両端から液が漏れ出し易い。
【0052】
以下、本発明の他の実施態様について図9及び図10を参照して説明する。後述する他の実施態様については、前述した実施態様と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述した実施態様についての説明が適宜適用される。
【0053】
図9(a)は、本発明の他の実施態様における凹部22Aを示す斜視図である。凹部22A内は、回転ドラムの周方向(図4中の2X)及び幅方向(図4中の2Y)に延びる非吸引部24によって複数の領域に区画されており、各該領域が吸引部23となっている。より具体的には、凹部22Aは、パターン形成プレート27Aによって形成される断面長円形状の空間の内部に、回転ドラムの外周面21に達しない高さの仕切り部材9Aを配置してなる。仕切り部材9Aは、回転ドラム2の周方向に延びる複数本の第1仕切り壁91と、回転ドラム2の幅方向に延び、第1仕切り壁91どうし間又は第1仕切り壁91とパターン形成プレート27Aの内周面との間を連結する第2仕切り壁92とからなる。仕切り部材9Aは、合成樹脂や金属からなり、非通気性部材である。この仕切り部材9Aにより、凹部22A内に、底面が多孔性プレート(図示せず)からなり該底面からの吸引が行われる多数の吸引部23と、底面が仕切り部材9Aの上端からなり、底面からの吸引が行われない非吸引部24とが形成されている。
【0054】
図9(b)及び図9(c)には、前記凹部22Aを用い且つ前述した実施態様に従って得られた、帯状の重合堆積体39Aにおける重合部38A1(2つの堆積体が重ね合わされた部分)が示されている。重合部38A1は、凹部22A内に吸収体の原料としての繊維材料(解繊パルプ等)を堆積させて得た堆積体(図示せず)と、コンベアベルト43の搬送面43a上に形成された前記堆積体32とを重合させて得られたものである。重合部38A1は、一面が平坦である一方、他面は、ブロック状の凸部39A’が多数形成された凹凸面となっている。この重合部38A1を、プレス装置で加圧し厚み方向に圧縮することにより、高密度部35と低密度部36が、図9(d)及び図9(e)に示すように配置された吸収体3Aが得られる。
【0055】
図10(a)は、更に他の実施態様における凹部22Bを示す斜視図である。凹部22Bは、パターン形成プレート27Aによって形成される断面長円形状の空間の内部に仕切り部材9Bを配置してなる。仕切り部材9Bは、回転ドラム2の回転方向R2の前後及び左右に、回転ドラム2の外周面21に達する高さの第1及び第2の仕切り壁91,92を有し、中央部に、回転ドラム2の外周面21に達しない高さの3本の非通気性部材83を備えている。この仕切り部材9Bにより、凹部22B内の中央部に、底面が多孔性プレート(図示せず)からなり該底面からの吸引が行われる多数の吸引部23と、底面が非通気性部材83からなり、該底面からの吸引が行われない非吸引部24とが形成されている。
【0056】
図10(b)及び図10(c)には、前記凹部22Bを用い且つ前述した実施態様に従って得られた、帯状の重合堆積体39Bにおける重合部38A2(2つの堆積体が重ね合わされた部分)が示されている。重合部38A2は、その中央部に、一面が平坦で他面が凹凸面の中央堆積体39B’を有し、該中央堆積体39B’の周囲に、該中央堆積体39B’とは分離された複数の外周部堆積体39B”を有している。この重合部38A2を、プレス装置で加圧し厚み方向に圧縮することにより、中央部に、高密度部35と低密度部36が、図10(d)及び図10(e)に示すように配された吸収体3Bが得られる。
【0057】
吸収体の原料としての繊維材料としては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、解繊パルプ等のパルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、吸収体3の原料として、ダクト5内に、繊維材料と共に、吸水性ポリマーを導入しても良いし、更に、繊維材料等と共に、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じて供給することもできる。
【0058】
以上、本発明の吸収体の製造方法のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されず、それぞれ適宜変更可能である。例えば、平坦化ロールとして、周面が平滑な平坦化ロール55(図2参照)に代えて、図11に示す如き、周面に多数の突起を備えた平坦化ロール56を用いることができる。平坦化ロール56は、円柱状のロール本体56Aと、ロール本体56Aの外周面に立設された掻き取り用の多数の突起56Bとを備えており、一方向に回転しながら、多数の突起56Bの先端で、コンベアベルト43上の堆積体32の表面32aをならして平坦にする。突起56Bは、例えばブラシから構成することができる。また、平坦化ロールは無くても良い。
【0059】
また、凹部は、吸引部23及び非吸引部24がそれぞれ帯状に形成され、吸引部23及び非吸引部24がそれぞれ回転ドラム2の幅方向2Y(回転ドラム2の回転軸方向)に延びているものであっても良い。また、帯状に形成した吸引部23及び非吸引部24のそれぞれの本数は、例えば、2〜10本とすることができる。吸引部23と非吸引部24とで本数は同じであっても異なっていても良い。
【0060】
また、本発明で製造する吸収体は、上下面を一枚のコアラップシートで被覆されているものに限られず、上下面を2枚の別々のコアラップシートによって被覆されているものであっても良いし、上下面のいずれもコアラップシートに被覆されていないものであっても良い。また、本発明で製造する吸収体は、長手方向の中央部又は長手方向の前方若しくは後方に、帯状の高密度部及び低密度部がストライプ状に配された領域を有し、該領域の前方及び/又は後方に、該領域から分離した吸収体を備えたものであっても良い。また、幅方向の中央部に、帯状の高密度部及び低密度部がストライプ状に配された領域を有し、該領域を挟む両側の一方又は双方に、該領域から分離した吸収体を備えたものであっても良い。
【0061】
本発明で製造する吸収体は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿や経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0062】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収体は、上下面が一枚又は複数枚のコアラップシートに被覆されていても良い。裏面シートは水蒸気透過性を有していても有しなくても良い。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していても良い。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、吸収体の起立した両側部の更に外側に、一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0063】
前述した一の実施態様における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 吸収体の製造装置
2 回転ドラム
21 回転ドラムの外周面
22,22A,22B 凹部
23 吸引部
24 非吸引部
28 非通気性部材
3,3A,3B 吸収体
30 繊維材料(吸収体の原料)
31,32 堆積体
35 高密度部
36 低密度部
37 コアラップシート
38A,38A1,38A2 重合部
38B 非重合部
39,39A,39B 重合堆積体
4 バキュームコンベア
43 コンベアベルト
43a コンベアベルトの搬送面
44 バキュームボックス
5 ダクト
53 隔壁
55,56 平坦化ロール
6 繊維材料供給部
7 プレス装置
8 切断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11