特許第5759703号(P5759703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759703
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20150716BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20150716BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A41B13/02 U
   A41B13/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-258500(P2010-258500)
(22)【出願日】2010年11月19日
(65)【公開番号】特開2012-105904(P2012-105904A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】森田 彩希
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−176051(JP,A)
【文献】 実開平7−39816(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0229329(US,A1)
【文献】 国際公開第97/02797(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/088345(WO,A1)
【文献】 特開2003−47631(JP,A)
【文献】 特開2002−35034(JP,A)
【文献】 米国特許第5903922(US,A)
【文献】 米国特許第4651353(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも吸収体を含む吸収性本体と、この吸収性本体と一体的に設けられた外装シートとから構成され、製品状態で前記外装シートの前身頃と後身頃とが所定の縁部において接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型吸収性物品であって、
前記外装シートは、展開状態の平面視で、前記パンツ型吸収性物品の前後方向と対応する左右一対の左右側縁と、前記パンツ型吸収性物品のウエスト周り方向と対応する前後一対の前後側縁とにより画成される略矩形状のシートに、前記前後側縁においてそれぞれ左右側縁と交差する隅部を切り欠いて切欠き部を設けるとともに、該シートを前後側縁方向に折り畳み、前記前後側縁のうち腹側に対応する前側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部と背側に対応する後側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合することにより製品状態とされ、
前記前側縁の両側に形成される切欠き部は前後側縁方向に長い切欠き形状とされ、前記後側縁の両側に形成される切欠き部は左右側縁方向に長い切欠き形状とされるとともに、切欠き線の長さがほぼ同等の長さで形成されていることを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記外装シートは、前記後側縁の両側に形成される切欠き部からそれぞれ反対側の左右側縁に至るとともに、相互に背側のウエスト周り方向中央部で交差する背側用弾性伸縮部材と、前記左右側縁のうち一方側の左右側縁から前側縁方向に延び、他方側の左右側縁に至る腹側用弾性伸縮部材とを備えている請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性本体は、前記弾性伸縮部材の収縮に応じて収縮可能とし、前記弾性伸縮部材の収縮後にほぼ方形状となるように、前記弾性伸縮部材と重なる部分が幅広に形成されている請求項記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記請求項2,3いずれかに記載のパンツ型吸収性物品の製造方法であって、
前記前後側縁間の幅寸法を有する連続シートをラインに繰り出すとともに、この連続シートに前記背側用弾性伸縮部材及び腹側用弾性伸縮部材を配置する工程と、前記切欠き部を形成する工程と、前記前側縁の両側に形成される切欠き部の縁部と後側縁の両側に形成される切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合する工程と、前記裁断予定部で裁断する工程とからなることを特徴とするパンツ型吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹側がもたつかず、背側が臀部の形状にフィットするように形成されたパンツ型吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンツ型の吸収性物品50として、図9に示されるように、透液性表面シートと防漏シートとの間に吸収体が介在された吸収性本体51と、この吸収性本体51と一体的に接合され、少なくとも前身頃と後身頃とを構成するとともに、中間両側部に夫々脚部開口を形成するための凹状の脚周りカットライン53、53が形成されることにより、全体として擬似砂時計形状を成す外装シート52とから構成され、図10に示されるように、前記外装シート52が前記吸収性本体51とともに長手方向の略中央部で折り畳まれ、外装シート52の前身頃と後身頃とが両側端のサイドシール部54、54において接合されることによりウエスト開口部55及び左右一対のレッグ開口部56、56が形成されたものが知られている。
【0003】
また、下記特許文献1では、横向きに寝た状態での腰脇部分からの横漏れを広範囲で確実に防止するため、前腹部を股部とほぼ同幅にするとともに、後背部の両側を広幅にして両側部とし、この広幅の両側部を前腹部に廻し込んで、両側部の側縁と前腹部の側縁とが接合され、股部の両側に脚穴部が形成されるとともに、上記前腹部と後背部とに跨る左右の腰脇部分以外の部分で前腹部と後背部とが接合された使い捨てパンツ型おむつが開示されている。
【0004】
さらに、下記特許文献2では、前身頃及び後身頃からなる使い捨て吸収性パンツにおいて、前身頃及び後身頃の下端中央部に股下凹欠部を形成し、該股下凹欠部の頂部である股下基底面から下方向へ延出する脚挿入部を有する使い捨て吸収性パンツが開示されている。かかる使い捨て吸収性パンツでは、股下基底面及び脚挿入部にも吸液性パネルが位置することにより、これら域でも尿を十分に吸収することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−142556号公報
【特許文献2】実開平6−16404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9及びず10に示される従来のパンツ型の吸収性物品50は、外装シート52の長手方向の略中央部で長手方向に折り畳まれて、前身頃と後身頃がほぼ同一の形状に形成されるため、前身頃の面積が大きすぎることによって腹側がもたついてモコモコし、逆に後身頃の面積が小さいことによって背側が臀部の出っ張りで引っ張られて窮屈となるなど、身体の形状に適合するものではなかった。このように従来の吸収性物品50では、股上の長さ及びウエスト周りが腹側と背側でほぼ同じに形成されているため、腹側のモコモコ感を軽減しようと前身頃を小さい面積で形成した場合には同時に後身頃も小さい面積となってしまい臀部の出っ張りを覆う十分な面積が確保できず、これとは逆に背側の窮屈感を軽減しようとすると腹側のモコモコ感が助長されるという問題が生じていた。
【0007】
また、上記特許文献1記載の使い捨て吸収性パンツも同様に、前身頃及び後身頃がほぼ同一の形状で形成されているため、装着時に腹側がもたついたり背側が臀部の出っ張りにより引っ張られたりと身体の形状に適合するものではなかった。
【0008】
一方、上記特許文献2記載の使い捨てパンツ型おむつでは、後背部とその両側の両側部からなる横長の部分と、この部分の幅方向中央部から前側に延在する股部と前腹部とからなる縦長の部分とによって平面視略T字状に形成されているため、連続する資材から切り取る部分が多くなり、資材ロスが大きかった。
【0009】
また、上記特許文献2記載の使い捨て吸収性パンツの製造においては、前身頃と後身頃をそれぞれ製造した後接合する工程では、製造スピードが遅く、高速製造に不向きであった。
【0010】
そこで本発明の第1の課題は、腹側がもたつかず、背側が臀部の形状にフィットするパンツ型吸収性物品を提供することにある。また第2の課題は、資材ロスが少なく、高速製造が可能なパンツ型吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも吸収体を含む吸収性本体と、この吸収性本体と一体的に設けられた外装シートとから構成され、製品状態で前記外装シートの前身頃と後身頃とが所定の縁部において接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型吸収性物品であって、
前記外装シートは、展開状態の平面視で、前記パンツ型吸収性物品の前後方向と対応する左右一対の左右側縁と、前記パンツ型吸収性物品のウエスト周り方向と対応する前後一対の前後側縁とにより画成される略矩形状のシートに、前記前後側縁においてそれぞれ左右側縁と交差する隅部を切り欠いて切欠き部を設けるとともに、該シートを前後側縁方向に折り畳み、前記前後側縁のうち腹側に対応する前側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部と背側に対応する後側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合することにより製品状態とされ、
前記前側縁の両側に形成される切欠き部は前後側縁方向に長い切欠き形状とされ、前記後側縁の両側に形成される切欠き部は左右側縁方向に長い切欠き形状とされるとともに、切欠き線の長さがほぼ同等の長さで形成されていることを特徴とするパンツ型吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、外装シートとして、展開状態の平面視で、前記パンツ型吸収性物品の前後方向と対応する左右一対の左右側縁と、前記パンツ型吸収性物品のウエスト周り方向と対応する前後一対の前後側縁とにより画成される略矩形状のシートに、前記前後側縁においてそれぞれ左右側縁と交差する隅部を切り欠いて切欠き部を設けるとともに、該シートを前後側縁方向に折り畳み、前記前後側縁のうち腹側に対応する前側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部と背側に対応する後側縁の両側に形成される前記切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合することにより製品状態としている。そして、前記前側縁の両側に形成される切欠き部は前後側縁方向(ウエスト周り方向)に長い切欠き形状とされ、前記後側縁の両側に形成される切欠き部は左右側縁方向(上下方向)に長い切欠き形状とされるとともに、切欠き線の長さがほぼ同等の長さで形成されている。すなわち、前側縁の切欠き部を前身頃の面積が小さくなるような形状で形成し、後側縁の切欠き部を後身頃の面積が大きくなるような形状で形成することによって、立体裁断状に臀部当接部が丸く盛り上がるとともに、腹部当接部が引き締まった製品形状とすることができ、腹側がもたついてモコモコしたり、背側が臀部の出っ張りで引っ張られて窮屈になったりするのが防止できる。このため、身体の形状にフィットし体液の漏れも防止できる。
【0013】
また、外装シートは、略矩形状のシートの四隅に所定の切欠き部を設けた形状とされるため、切り取り部分が少なく、資材ロスを低減することができる。
【0014】
請求項に係る本発明として、前記外装シートは、前記後側縁の両側に形成される切欠き部からそれぞれ反対側の左右側縁に至るとともに、相互に背側のウエスト周り方向中央部で交差する背側用弾性伸縮部材と、前記左右側縁のうち一方側の左右側縁から前側縁方向に延び、他方側の左右側縁に至る腹側用弾性伸縮部材とを備えている請求項1記載のパンツ型吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項記載の発明では、前記外装シートに、前記後側縁の両側に形成される切欠き部からそれぞれ反対側の左右側縁に至るとともに、相互に背側のウエスト周り方向中央部で交差する背側用弾性伸縮部材と、前記左右側縁のうち一方側の左右側縁から前側縁方向に延び、他方側の左右側縁に至る腹側用弾性伸縮部材とを備えるようにしたものである。前記背側用弾性伸縮部材によって、背側の外装シートが持ち上げられ、臀部の丸みにフィットするとともに、相互に背側のウエスト周り方向中央部で交差しているため、この中央部を臀部の溝にくい込ませてフィットさせることができるようになる。また前記腹側用弾性伸縮部材によって、腹回りにフィットするため腹側のもたつき感がより軽減できる。
【0016】
請求項に係る本発明として、前記吸収性本体は、前記弾性伸縮部材の収縮に応じて収縮可能とし、前記弾性伸縮部材の収縮後にほぼ方形状となるように、前記弾性伸縮部材と重なる部分が幅広に形成されている請求項記載のパンツ型吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項記載の発明では、吸収性本体を弾性伸縮部材の収縮に応じて収縮可能とし、弾性伸縮部材の伸張状態で外装シートと一体化し、この弾性伸縮部材の収縮後にほぼ方形状となるように、前記弾性伸縮部材と重なる部分を幅広に形成することによって、外装シートの伸縮状態に合わせて吸収性本体も伸縮するため身体の動きに追従し、もたつき感やつっぱり感を軽減することができるようになる。
【0018】
請求項に係る本発明として、前記請求項2,3いずれかに記載のパンツ型吸収性物品の製造方法であって、
前記前後側縁間の幅寸法を有する連続シートをラインに繰り出すとともに、この連続シートに前記背側用弾性伸縮部材及び腹側用弾性伸縮部材を配置する工程と、前記切欠き部を形成する工程と、前記前側縁の両側に形成される切欠き部の縁部と後側縁の両側に形成される切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合する工程と、前記裁断予定部で裁断する工程とからなることを特徴とするパンツ型吸収性物品の製造方法が提供される。
【0019】
上記請求項記載の発明では、前後側縁間の幅寸法を有する連続シートをラインに繰り出すとともに、この連続シートに前記背側用弾性伸縮部材及び腹側用弾性伸縮部材を配置する工程と、前記切欠き部を形成する工程と、前記前側縁の両側に形成される切欠き部の縁部と後側縁の両側に形成される切欠き部の縁部とをそれぞれ該縁部に沿って接合する工程と、前記裁断予定部で裁断する工程とから構成することにより、外装シートの資材ロスが少なく、且つライン生産による高速製造が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、腹側がもたつかず、背側が臀部の形状にフィットするパンツ型吸収性物品が提供できるようになる。また、資材ロスが少なく、高速製造が可能なパンツ型吸収性物品の製造方法が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るパンツ型ナプキン1を示す展開状態の平面図である。
図2】展開状態での組み立て図である。
図3】吸収性本体10の一部破断平面図である。
図4】パンツ型ナプキン1を示す製品状態の斜視図である。
図5】人体の腰回りの側面図である。
図6】外装シート20の組立て要領を示す、(A)は模式図、(B)はその要部平面図である。
図7】外装シート20の製造工程(その1)を示す平面図である。
図8】外装シート20の製造工程(その2)を示す平面図である。
図9】従来の吸収性物品50を示す展開状態の平面図である。
図10】従来の吸収性物品50を示す製品状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
図1及び図2に示されるように、本パンツ型ナプキン1は、少なくとも綿状パルプなどの吸収体13を含む吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に一体的に設けられた外装シート20とからなり、製品状態で前記外装シート20の前身頃と後身頃とが所定の縁部において接合されることによりウエスト開口部W及び左右一対のレッグ開口部L、Lが形成された構造のパンツ型である。
【0024】
以下、前記吸収性本体10、外装シート20及びパンツ型ナプキン1の製造方法の順で説明する。
【0025】
(吸収性本体10の構造)
先ず最初に、吸収性本体10の構造の一例について図3に基づいて詳述する。吸収性本体10は、体液を吸収保持するものであり、不織布などからなる透液性表面シート11とポリエチレン等からなる防漏シート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造のものを用いることができる。
【0026】
前記吸収性本体10は、平面内に伸縮性を有するものが好適に用いられる。後段で詳述するように吸収性本体10が一体的に接合される外装シート20が伸縮性を有しているため、非伸縮性の吸収性本体を取り付けた場合、身体の動きに追従しにくく、吸収性本体がモコモコしてもたつき感が生じ漏れの原因にもなるが、伸縮性の吸収性本体10を取り付けることにより、身体に追従してもたつき感や漏れが防止できるようになる。このような伸縮性を有する吸収性本体10としては、伸縮可能な2枚のシートの間に捲縮させた親水性の長繊維を介在させたもの(特開2006−198396号公報)、伸縮性を有する基盤シートに独立した多数の吸収部を個々に固定したもの(特開2009−136498号公報)、或いは適当な間隔で線状に接合した2枚の伸縮性シート間の非接合部分に吸収材を介在させたもの(特開平6−209966号公報)などを用いることができる。
【0027】
前記吸収性本体10は、後段で詳述する外装シート20の弾性伸縮部材30、31の収縮後にほぼ方形状となるように、弾性伸縮部材30、31と重なる部分を幅広に形成することが好ましい。図示例では、背側用弾性伸縮部材30が横断し吸収性本体10との重なり部分で交差する背側の両側が大きく湾曲して幅広に形成されるとともに、腹側用弾性伸縮部材31の一部が横断する腹側の両側が若干湾曲して幅広に形成されている。
【0028】
前記透液性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどの伸縮性を有するものが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0029】
前記防漏シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの伸縮性を有する不透液性プラスチックシートが好適に用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0030】
(外装シート20の構造)
次いで外装シート20は、図に示されるように、上層不織布21及び下層不織布22からなる2層構造の不織布シートとされ、前記上層不織布21と下層不織布22との間に弾性伸縮部材が配設され、伸縮性が付与されている。
【0031】
本発明に係る外装シート20は、展開状態の平面視で、パンツ型ナプキン1の前後方向と対応する左右一対の左右側縁23、23と、パンツ型ナプキン1のウエスト周り方向と対応する前後一対の前後側縁(前側縁24及び後側縁25)とにより画成される略矩形状のシートに、前記前後側縁24、25においてそれぞれ左右側縁23、23と交差する隅部を切り欠いて切欠き部26、27を設けた構造である。また、図4に示されるように、前記外装シート20を前記切欠き部26,27が形成されていない左右側縁23,23のほぼ中央位置で前後側縁方向に折り畳み、前記前側縁24の両側に形成される切欠き部26、26の縁部と後側縁25の両側に形成される切欠き部27、27の縁部とをそれぞれ縁部に沿って接合することにより製品状態とされている。このとき、前側縁24の両側に形成される切欠き部26、26と後側縁25の両側に形成される切欠き部27、27とが異なる形状で形成されるとともに、切欠き線の長さ(切欠き部を形成している縁長さ)がほぼ同等の長さで形成されているため、製品状態としたときに、図4に示されるように、腹側の面積が小さく、背側の面積が大きく形成されるようにすることができるので、腹側がもたついてモコモコしたり、背側が臀部の出っ張りで引っ張られて窮屈になったりするのが防止でき、腹側及び背側が身体の形状にフィットする。このため、体液の漏れも防止できるようになる。
【0032】
前記上層不織布21及び下層不織布22は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿やパルプ等の天然繊維を含む不織布や織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れたものを用いるのがよい。また、外面側となる下層不織布22は、内面側となる上層不織布21より疎水性を高くすることが好ましい。さらに、上層不織布21及び下層不織布22は、シート自体が伸縮性又は捲縮性を有するか、テンションをかけた伸縮素材を貼り合わせたものであることが好ましい。前記伸縮素材としては、ラテックス、ウレタン、オレフィン系の繊維からなる伸縮材が好適に用いられる。また、後加工によって収縮し、伸縮可能となる素材を波状に印刷することによって伸縮性を付与してもよい。
【0033】
具体的な前記切欠き部26、27の形状は、図1に示されるように、前側縁24の両側に形成される切欠き部26、26を左右側縁方向に長い切欠き形状とし、後側縁25の両側に形成される切欠き部27、27を前後側縁方向に長い切欠き形状としてある。これにより、それぞれの切欠き部26、27の縁部同士を接合した製品状態では、腹側では前側縁24が相対的に短く形成されるとともに切欠き部26の内側への切れ込みが浅いためウエスト周り方向及び前後方向に狭い面積で形成される一方、背側では後側縁25が相対的に長く形成されるとともに切欠き部27の内側への切れ込みが深いためウエスト周り方向及び前後方向に広い面積で形成されるようになる。図1に示される例では、前側縁24の両側に形成される切欠き部26は、前後側縁方向(ウエスト周り方向)が長軸となる楕円の1/4外形線によって内側に凸の曲線で形成され、後側縁25の両側に形成される切欠き部27は、前記切欠き部26と同形状の楕円を左右側縁方向(上下方向)が長軸となるように配向した1/4外形線によって内側に凸の曲線で形成されている。なお、前記切欠き部は、腹側又は背側のいずれか一方を直線状に形成してもよい。
【0034】
前記切欠き部26、27の縁部同士を接合することにより、前側縁24と後側縁25とによってウエスト開口部Wが形成されるとともに、左右側縁23、23によって左右一対のレッグ開口部Lが形成されている。前記外装シート20は、左右側縁23、23のほぼ中央部を通る折り線Sで前後方向に折り畳まれる。このときの各部の長さ1a〜1fは、展開状態(図1)と製品状態(図4)とで各図の記号の通り対応している。
【0035】
本パンツ型ナプキン1は、図5に示される人体の股下部分の前後方向中心線Cと、前記折り線Sとをほぼ一致させた状態で装着することにより、折り線Sから前側縁24までの長さ1f<折り線Sから後側縁25までの長さ1e、前側縁24の長さ1c<後側縁25の長さ1a、の関係となり、それぞれ図5に示される人体の各長さ1f、1e、1a、1cに対応する関係となっている。このため、常に身体にフィットした状態で装着できる。
【0036】
続いて上層不織布21と下層不織布22との間に配設される弾性伸縮部材について説明する。前記外装シート20には、後側縁25の両側に形成される切欠き部27、27からそれぞれ反対側の左右側縁23に至るとともに、相互に背側のウエスト周り方向中央部で交差する背側用弾性伸縮部材30と、左右側縁23、23のうち一方側の左右側縁23から前側縁24方向に延び、他方側の左右側縁23に至る腹側用弾性伸縮部材31と、前側縁24及び後側縁25のウエスト周り方向に配設されるウエスト周り用弾性伸縮部材32とが備えられている。同方向に配設される弾性伸縮部材は間隔をおいて複数本の糸ゴムが配置されている。また前記弾性伸縮部材は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0037】
前記背側用弾性伸縮部材30は、後側縁25の両側に形成される切欠き部27、27のうち、一方側の切欠き部27の概ね背側寄りの範囲から反対側の左右側縁23の腹側寄りの範囲に向けて、背側に凸の曲線から腹側に凸の曲線に変曲する滑らかな曲線形状で配置される第1の背側用弾性伸縮部材30Aと、同様に他方側の切欠き部27の概ね背側寄りの範囲から反対側の左右側縁23の腹側寄りの範囲に向けて、背側に凸の曲線から腹側に凸の曲線に変曲する滑らかな曲線形状で配置される第2の背側用弾性伸縮部材30Bとから構成され、前記第1の背側用弾性伸縮部材30A及び第2の背側用弾性伸縮部材30Bが背側をウエスト周りから脚周りまでX状に覆うように配設されている。前記第1の背側用弾性伸縮部材30A及び第2の背側用弾性伸縮部材30Bは、背側のウエスト周り方向中央部で交差しているため、背側中央部の引き上げ力が大きくなり、吸収性本体10を臀部の溝にくい込ませることができるようになる。前記背側用弾性伸縮部材30は、左右側縁23にまで配設されているため、脚周りを縦横に伸縮可能とし、パンツ型ナプキン1の着脱性やフィット性が向上する。
【0038】
前記腹側用弾性伸縮部材31は、一方側の左右側縁23の背側寄りの範囲から前側縁24方向に延び、前側縁24の近傍で湾曲して他方側の左右側縁23の背側寄りの範囲まで連続する滑らかな曲線形状で配置されている。前記腹側用弾性伸縮部材31は、主に着用者の腹側のフィット性を良好にし、腹側のもたつき感を防止するためのものである。また、左右側縁23にまで配設することにより脚周りを縦横に伸縮可能とし、パンツ型ナプキン1の着脱性やフィット性が向上するとともに、脚の付け根部分に対応する領域で前記背側用弾性伸縮部材30と交差して配設されているため、脚の付け根部分のフィット性が向上し、漏れを防止することができる。
【0039】
前記ウエスト周り用弾性伸縮部材32は、前側の切欠き部26、26の縁部間に上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設されるとともに、後側の切欠き部27、27の縁部間に上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設されている。
【0040】
(パンツ型ナプキン1の製造方法)
次に、パンツ型ナプキン1の製造方法について図6図8に基づいて説明する。先ず、図6に示されるように、それぞれ前後側縁24、25間の幅寸法を有する上層不織布21の連続シート及び下層不織布22の連続シートがそれぞれニップローラ部40の上側及び下側に供給され、かつこれら連続シート間に前記背側用弾性伸縮部材30、腹側用弾性伸縮部材31及びウエスト周り用弾性伸縮部材32が供給され、上層不織布21と下層不織布22とが連続的に接合される。
【0041】
ここで、前記ウエスト周り用弾性伸縮部材32は連続シートの両側にライン方向に沿って直線的に導入されるのに対して、前記背側用弾性伸縮部材30及び腹側用弾性伸縮部材31は、公知のトラバース装置41によって曲線状に蛇行させながらニップローラ部40に導入される。前記トラバース装置41は、先端部分に背側用弾性伸縮部材30及び腹側用弾性伸縮部材31の保持部を有し、連続シートの幅方向への進退を計算された速度で行わしめることにより、各弾性伸縮部材30、31を所定の湾曲形状に配置するようにしたものである。
【0042】
前記背側用弾性伸縮部材30は、外装シート20の裁断予定線K、K間において、連続シートの一方側幅方向端の近傍から幅方向中間部まで延びる第1の背側用弾性伸縮部材30Aと、連続シートの幅方向中間部から一方側幅方向端の近傍まで延びる第2の背側用弾性伸縮部材30Bとが配置されている。前記弾性伸縮部材30A、30Bはそれぞれ、裁断予定線K、K間を1/2周期とする連続波状に配置されている。即ち、2つの弾性伸縮部材30A、30Bは、周期及び振幅が同一で、位相を180°ずらした波状曲線で配置されている。
【0043】
前記腹側用弾性伸縮部材31は、外装シート20の裁断予定線K、K間において、連続シートの幅方向中間部から他方側幅方向端の近傍に延び、湾曲して再び幅方向中間部に至り、これを1周期として連続シートに繰り返される連続波状に配置されている。
【0044】
前記背側用弾性伸縮部材30、腹側用弾性伸縮部材31及びウエスト周り用弾性伸縮部材32の連続シートへの固着は、周面塗布装置42により各弾性伸縮部材30、31、32の周面にホットメルト接着剤が塗布され、ニップローラ部40に供給される。
【0045】
続いて、上層不織布21と下層不織布22とを接合した連続シートを製造したならば、上層不織布21の上面側の所定の位置に吸収性本体10を接合した後、図8に示されるように、外装シート20の四隅に切欠き部26、27を形成する。前記切欠き部26、27は、連続する前後の切欠き部と一体化された形状で裁断予定線Kに跨って切断される。
【0046】
その後、連続シートをライン幅方向に折り返して、対向する切欠き部26、27の縁部同士をそれぞれ該縁部に沿って超音波接合やヒートシール接合によって接合する。
【0047】
しかる後、裁断予定線Kで裁断し、製品状態のパンツ型ナプキン1が完成する。
【符号の説明】
【0048】
1…パンツ型ナプキン、10…吸収性本体、11…透液性表面シート、12…防漏シート、13…吸収体、20…外装シート、21…上層不織布、22…下層不織布、23…左右側縁、24…前側縁、25…後側縁、26・27…切欠き部、30…背側用弾性伸縮部材、31…腹側用弾性伸縮部材、32…ウエスト周り用弾性伸縮部材
図1
図2
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図8
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図10