(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759712
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】鉄道車両の内装品取付構造
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20150716BHJP
B61D 17/12 20060101ALI20150716BHJP
B61D 17/18 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
B61D37/00 Z
B61D17/12
B61D17/18
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-277578(P2010-277578)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2012-126185(P2012-126185A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】三谷 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−063564(JP,A)
【文献】
米国特許第6196136(US,B1)
【文献】
特開平10−175543(JP,A)
【文献】
特開2005−125998(JP,A)
【文献】
実開昭53−110219(JP,U)
【文献】
特開平04−126660(JP,A)
【文献】
特開2001−171516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B61D 17/12 − 17/18
B61D 29/00
B60Q 3/02
B64D 11/00
B64D 47/02
E04B 9/00
F16B 5/02
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の屋根構体に取り付け可能であって、水平方向に延在する一端部と、鉛直方向に延在し、上下方向に延在する貫通穴が形成された他端部とを有する第1取付部材と、
車両内装品を取付可能な水平部と、前記水平部の長辺側端部に設けられ、前記貫通穴を貫通する第1固定具により前記第1取付部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられる鉛直部とを含む、隣接する少なくとも2つの第2取付部材とを備え、
前記第2取付部材が前記第1固定具により前記第1取付部材に対して仮締めされた状態で、隣接する前記第2取付部材の上下方向の位置が略一致するように調整される、鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項2】
前記第2取付部材の上下方向の位置が調整された後に、前記第1固定具により前記第2取付部材が前記第1取付部材に固定され、
さらに、前記第2取付部材が、前記第1取付部材に対して、せん断力により固定される第2固定具により固定される、請求項1に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項3】
前記第1取付部材は、少なくとも第1ブラケットと第2ブラケットとから構成され、
前記第2ブラケットは、長手方向の長さが前記第1ブラケットの長手方向の長さよりも長く、
前記第1ブラケット及び第2ブラケットは、前記第2取付部材の長辺側端部に設けられた各前記鉛直部を支持する、請求項1又は2に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項4】
複数の前記第2取付部材は、前記第2取付部材の長手方向に沿って連続して配置され、
隣接する各前記第2取付部材は、1つの前記第1取付部材により連結される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項5】
前記第2取付部材は、前記鉛直部の短辺側端部に、外側に屈曲して前記第2取付部材の長手方向に延びる屈曲部と、他端に前記鉛直部の長手方向に延在する挿入部とを有し、
前記屈曲部と前記鉛直部との間には、空所が形成され、
隣接する各前記第2取付部材のうち、一方の前記第2取付部材側に形成された前記挿入部が、他方の前記第2取付部材側の前記空所に挿入されて連結される、請求項4に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項6】
前記第2取付部材上であって、前記第2取付部材の短辺側端部に内側部材をさらに備え、
前記第2取付部材は、前記水平部の短辺側端部に、車両上部方向に屈曲して前記第2取付部材の長手方向に延びる屈曲挿入部と、他端に前記第2取付部材の長手方向に延びる延長部とを有し、
前記内側部材の一端には、車両上部方向に屈曲して前記第2取付部材の長手方向に延びる内側部材屈曲部を有し、
前記内側部材屈曲部と前記延長部との間には、隙間が形成され、
隣接する各前記第2取付部材のうち、一方の前記第2取付部材側に形成された前記屈曲挿入部が、他方の前記第2取付部材側に形成された前記隙間に挿入されて連結される、請求項4又は5に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項7】
前記内側部材屈曲部は、先端部が前記屈曲挿入部の挿入を案内するように傾斜している請求項6記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項8】
前記第2取付部材の前記水平部は、灯具の長さに対応し、かつ前記灯具を取り付け可能であり、
前記隣接する第2取付部材の間であって、前記内側部材と前記第2取付部材との重合部には吊り手棒受けを取り付け可能である、請求項6又は7に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項9】
前記第1取付部材及び第2取付部材は、金属板材をプレス成形して製作されるプレス成形品である請求項1〜8のいずれか1つに記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【請求項10】
前記第2取付部材は、複数の内装品取付面を有し、複数種類の車両内装品を取付可能である請求項9に記載の鉄道車両の内装品取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
は、車両内装品を取り付ける鉄道車両の内装品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車両構体の内側、たとえば屋根構体の内側には、空調機器、空調ダクト、蛍光灯、吊手棒、側天井などの車両内装品(天井内装品)が取り付けられている。
【0003】
鉄道車
両は、例えば、平面視で幅略3m×長さ略20mの広い室内空間を有し、上記車両内装品は広い範囲で見渡すことができるため、全てを見た目よく取り付けることが要求される。とくに、天井に取り付けられる車両内装品は、乗客に対する美感に大きな影響を与えるので、同形状の車両内装品を
車両長手方向において規則的に(たとえば連続して繰り返し)取り付ける場合には、それら全てを精度よく取り付け、全体として見栄えよく見えるように取り付けなければならない。
【0004】
一方、鉄道車両の構体はステンレス鋼(SUS)の薄板を組み合わせて溶接組立したり、アルミの形材や板材を溶接組立で構成するのが一般的である。そのような構体は主として溶接を用いて製作されることから、構体自体を精度よく製作するのは難しく、通常は公差の範囲内に収まるように製作される。
【0005】
具体的には、各種車両内装品を取り付ける場合には、それぞれについての専用の取付金具が用いられ、そのような取付金具が、車両構体(たとえば屋根構体)に溶接やボルト締結などで取り付けることが多いが、取付金具には車両内装品を支持させるために必要な剛性が求められるため、取付金具を単体で構成する場合には上記公差を吸収する調整機構を持たせることが難しい。
【0006】
そこで、従来は、前述したような車両内装品を見栄えよく取り付けるには前記公差を吸収できるよう取付金具と車両内装品との間に塩化ビニル製のライナーなどの調整スペーサを設け、構体の完成に応じて調整スペーサの厚みなどを適宜変更しながら,見栄えよく仕上がるよう車両内装品を取り付けている。
【0007】
しかし、
従来の車両内装品
は、それぞれに取付金具が必要な構造であるため、その調整はそれぞれについて実施する必要がある。そのため、この調整作業には非常に時間がかかっていた上、調整には熟練を要し、作業者によってできあがりにばらつきが生じる場合もある。
【0008】
これに対して、特許文献1には、板バネを利用した鉄道車両の内装パネルの取付構造が提案されている。かかる取付構造は、適切な反力を備えた金属ばねを、受け骨部材と内装パネルとの間であって取付用ねじを用いて取り付けられる部位に設けている。これにより、レベル調整用ライナーを設けることによるレベル調整作業を行うことなく、適切な位置に内装パネルを取り付けることが可能である、としている。
【0009】
また、特許文献2、3には、吊り溝などを利用して、
車両長手方向についての調整機構が提案されている。特許文献2の車両用艤装構造は、取付骨材の上端部を屋根構体側のアダプタ金具に固定し、取付骨材の下端部を床構体側の支持金具に固定するだけで、取付骨材が屋根構体と床構体との間に立設される。取付骨材は、各種の車両用の艤装を取り付けた状態のまま容易に立設することができるため、予めアウトワーク作業により車両用の艤装を取付骨材に取り付けておくことにより、工期短縮、コスト低減を達成することができる、としている。
また、特許文献3の内部艤装構造は、構体の内面には艤装品を支持する複数の支持具が車体長手方向に沿って設置され、各支持具に、艤装品を固定する締結手段が嵌合する支持固定部が、車体長手方向に沿って形成され、前記艤装品は前記複数の支持具に固定される複数の固定部を備え、前記固定部は締結手段の固定位置を車体長手方向に交差する方向に調整可能に構成されているので、艤装品支持具と艤装品の位置合わせが簡単に行え、従来行っていた支持部材と艤装品との直接的な位置合わせを行う必要がなくなり、作業性の向上を図れるようにしたもので
ある。
さらに、特許文献4の内装品取り付け構造は、内張板と、該内張板の車体外側に配設される内骨とにねじ挿通孔を重合して設け、該ねじ挿通孔に内装品のねじ挿通孔を合致させて、これらねじ挿通孔に内装品側から挿通した止めねじを、前記内骨の車体外側面に取り付けたねじ座のめねじ孔にねじ込んで前記内装品を取り付ける構造とするとともに、少なくとも前記内張板と内骨のねじ挿通孔を前記めねじ孔よりも大径に形成し、前記内骨の車体外側面にガイド枠を設けて、該ガイド枠内に前記ねじ座をスライド可能に支持している。これにより、車体の内張板を通して内装品を取り付ける際に、車体や内装品の製作誤差を吸収しながら、内装品を所定位置へ簡便に取り付けすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−229569号公報
【特許文献2】特開2005−125998号公報
【特許文献3】特開平7−172306号公報
【特許文献4】特開2002−356162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の取付構造は、レベル調整作業を容易にすることができるが、軽量の内装パネルについてのレベル調整であり、比較的重量のある車両内装品の調整については開示されていない。また、板バネを用いて調整しているため、調整範囲が狭いという問題がある。
【0012】
また、特許文献2の構造は、車両上下方向に延びる取付骨材を用いているため、部品点数も多くなるという問題があり、特許文献3の技術では車両上下方向の位置調整機構としてそのまま採用することはできない。
【0013】
さらに、特許文献4の構造は、前記内張板と内骨のねじ挿通孔を前記めねじ孔よりも大径に形成し、前記内骨の車体外側面にガイド枠を設けて、該ガイド枠内に前記ねじ座をスライド可能に支持した構造であるため、部品点数が多く、構造が複雑である。また、重量がある車両内装品(荷棚ブラケット)自体の取付けの調整範囲を大きくして、位置調整して取り付けるので、取付作業性に劣る。各車両内装品毎に位置調整する必要があるので、この点においても取付作業性が劣るという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、車両内装品の取付作業が容易で、車両内装品を見栄えよく取り付けることができる鉄道車両の内装品取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、鉄道車両の屋根構体に取り付け可能
であって、水平方向に延在する一端部と、鉛直方向に延在し、上下方向に延在する貫通穴が形成された他端部とを有する第1取付部材と、車両内装品を取付可能な水平部と、前記水平部の長辺側端部に設けられ
、前記貫通穴を貫通する第1固定具により前記第1取付部材に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられる鉛直部とを含む、
隣接する少なくとも2つの第2取付部材とを備え
、前記第2取付部材が前記第1固定具により前記第1取付部材に対して仮締めされた状態で、隣接する前記第2取付部材の上下方向の位置が略一致するように調整される、ものである。
【0016】
【0017】
【0018】
かかる構成によれば、第1取付部材に対し
第2取付部材が位置調整可能に取り付けられるので、調整作業中における取付位置の仮決め、再調整が容易である。よって、屋根構体に取り付けられた
第1取付部材に対し、
上下方向の位置調整がなされた
第2取付部材に車両内装品を取り付けることになるので、屋根構体の製作精度にかかわらず、前記車両内装品を
上下方向の位置関係において精度よく取り付けることができる。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】
【0042】
本発明により、車両内装品の取付作業が容易で、車両内装品を見栄えよく取り付けることができる鉄道車両の内装品取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明に係る鉄道車両の内装品取付構造の一実施の形態である、屋根構体への車両内装品の取付構造を示す断面図である。
【
図2】
第1取付部材及び第2取付部材を示す分解斜視図である。
【
図3】
第1取付部材、第2取付部材、および内側部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】隣接する
第2取付部材の関係を示し、(a)は外側からみた側面図、(b)は
図5(a)のA−A線における断面図である。
【
図6】前記隣接する
第2取付部材の関係を示し、(a)は平面図、(b)は
図6(a)のB−B線における断面図である。
【
図7】他の実施の形態についての分解斜視図である。
【
図8】前記他の実施の形態の取付状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0045】
図1は、屋根構体への車両内装品の取付構造を示す断面図で
ある。
【0046】
図1に示すように、屋根構体4は、主に、屋根外板1に設けられ、
車両幅方向(枕木方向)に延びる垂木2と、この垂木2の間に
車両長手方向に延びる縦桁(図示せず)と、垂木2の車室内側に
車両長手方向に延びる内装部品受け3とから構成される。
【0047】
車両内装品は、
第1取付部材5及び第2取付部材6を介して、屋根構体4に対して取り付けられる。ここで、車両内装品は、灯具7(たとえば蛍光灯)、側天井8、空調ダクト9等を含むが、車内に設置されるものであれば、これらに限られない。なお、本実施の形態では、
取付部材5,6は、金属板材をプレス成形したプレス成形品を用いているが、同程度の強度を有するものであれば、金属板材に限られるものではない。
【0048】
そして、後述するように、同じ灯具7が、
車両長手方向において一定間隔で取り付けられ、隣り合う灯具7,7の間に吊り手棒受け10が取り付けられている、これにより、吊り手棒受け10も
車両長手方向において一定間隔でもって取り付けられていることになる。よって、灯具7や吊り手棒受け10が、
車両長手方向において連続して繰り返し、つまり規則的に配置される。
【0049】
屋根構体4の内装部品受け3は、車体中央側の車両上下方向の長さが長い脚部3aと、この脚部3aから車体外方側に水平方向に延びる水平部3bとを有する。
【0050】
この屋根構体(内装部品受け3の水平部3b)に、
第1取付部材5が
車両長手方向に沿って配置され、
車両長手方向及び
車両幅方向の位置を調整してそれらが取り付け
られている。第1取付部材5は、図2に示すように、互いに形状の異なる金属製の第1ブラケット5A及び第2ブラケット5Bによって構成されている
【0051】
灯具7が取り付けられる
第2取付部材6は、
車両長手方向及び
車両幅方向の位置調整された
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)に取り付けられ、このとき、
第2取付部材6は、車両上下方向の位置(床面からの高さ)を調整して取り付けられる。両ブラケット5A,5Bによって、
第2取付部材6(灯具7)の、
車両幅方向の両側が支持され、この
第2取付部材6は灯具7の長さに対応する長さを有するので、灯具7全体を安定して支持することができる。
【0052】
上述したように、第1取付部材5及び第2取付部材6は、プレス成形品で軽量であるた
め、屋根構体4に対し位置調整して取り付けることができる。
その上で、第2取付部材6に対し重量がある灯具7をボルトなどの機械的締結具11Aを用いて取り付けることができるので、取り付け作業が容易であるし、灯具7が精度よく見栄えよく取り付けられ
る。また、灯具7の車外側の側天井8
が、機械的締結具11Bに
よって第2取付部材6に取り付けられている。さらに、車内中央側の空調ダクト9
が、締結部11Cを用いて
第2取付部材6に取り付けられている。また、具体的に図示していないが、灯具7の間には吊り手棒受け10が取り付けられる。このように位置調整された
第2取付部材6(内装品取付面)を基準として各種車両内装品が取り付けられるので、各種車両内装品は精度よく、見栄えよく取り付けることができ、取付作業性もよい。
【0053】
続いて、各取付部材5,6及びそれらの構造について説明する。
【0054】
図2〜
図4に示すように、
第1取付部材5のうち
第1ブラケット5Aは、
水平部5Aaと、鉛直部5Abとを有し、断面L字形状に形成されている。水平部5Aaは、屋根構体4に取り付けられる部分であり、取付孔5aが形成されている。また、鉛直部5Abは、水平部5Aaに直交する方向に
延びており、車両上下方向に平行に延びる1対の長穴5b,5b
(貫通穴)が形成されている。なお、各第1ブラケット5Aは、
車両長手方向において灯具7の長さに対応するピッチで配置されている。
【0055】
第2ブラケット5B
は、断面L字形状であるが、
車両長手方向の長さが
第1ブラケット5Aよりも長くなっている。本実施の形態では、
第2ブラケット5Bは、灯具7の
車両長手方向の長さに対して略2倍の長さを有する。ただし、
第2ブラケット5Bの長さは、これに限られず、車両内装品の大きさ及び作業性の観点から、2500mm程度から4000mm程度の長さであればよい。
【0056】
この
第2ブラケット5Bは、
水平部5Baと、鉛直部5Bbとを有している。水平部5Baには、車両長手方向の中央部及び両端部
に取付孔5c,5cが
形成されている。鉛直部5Bbは、その水平部5Baに直交する方向に延び
ており、第1ブラケット5Aの位置に対応する位置に、
第1ブラケット5Aと同様に車両上下方向に平行に延びる1対の長穴5d,5d
(貫通穴)が形成されている。
【0057】
第1
ブラケット5A及び
第2ブラケット5Bは、
車両長手方向(レール方向)の位置を調整して、屋根構体4の一部を構成する内装部品受け3にボルトなどの機械的締結具11Dを用いてそれぞれ
取り付けられている。第1ブラケット5A及び第2ブラケット5Bが取り付けられた状態では、鉛直部5Ab,5Bb同士は、ほぼ平行な位置関係と
なる。
【0058】
そして、
図3に示すように、2つの
第1ブラケット5A,5Aと1つの
第2ブラケット5Bとの間に、1つの
第2取付部材6が取り付けられる。この
第2取付部材6は、
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)に対して車両上下方向の高さ(床面からの高さ)が調整されて、ボルトなどの機械的締結具11E(軸力により固定される
第1固定具)を用いて取り付けられる。なお、具体的に図示していないが、前記調整終了後、ボルトなどの機械的締結具11Eにて締結固定した上で、両
部材5,6に貫通穴を設け、リベットなどの固定具(せん断力により固定される
第2固定具)にて、第2
取付部材6を
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)に固定する。これにより
第2取付部材6は、
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)に位置がずれないように固定され、鉄道車両の走行による振動にかかわらず、長期間にわたって位置調整された状態が維持される。この固定具による固定は、隣接する
第2取付部材6がある場合には、隣り合う
第2取付部材6とその間に位置している
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)とを同時に行うことになる。
【0059】
なお、機械的締結具11Eは、
第1取付部材5と
第2取付部材6との位置関係のずれを軸力にて防止できる固定具であればよく、ボルトに限られるものではない。
【0060】
また、
第1取付部材5と
第2取付部材6は、機械的締結具11Eにより固定された後、リベットを用いて固定したが、これに限られず、せん断力を用いて固定できる固定具であればよい。例えば、
第1取付部材5と第2取付部材6の位置調整を行なった後、
第1取付部材5及び
第2取付部材6に貫通穴を設け、タップ加工してネジ穴を形成し、ボルト等により固定してもよい。
【0061】
第2取付部材6は、第1取付部材5に取り付けられる鉛直部6a,6aと、それらの下縁部を連結する水平部6cとを有している。鉛直部6a,6aは、第1ブラケット5Aまたは第2ブラケット5Bに車両上下方向に位置調整可能に
締結される。つまり、鉛直部6a,6aは、水平部6cの長辺側端部(
車両長手方向に延びる端部)に設けられ、
第1ブラケット5Aの長穴5bあるいは
第2ブラケット5Bの長穴5dに、車両上下方向の位置調整可能に締結される。また、水平部6cは、車両内装品が
取り付けられる程度の大きさを有し、灯具7,側天井8,空調ダクト9及び吊り手棒受け10などの複数種類の車両内装品が取り付けられる。なお、水平部6cは中央部に開口部を有する形状としてもよい。
【0062】
以上のような構成により、
第2取付部材6は、車両上下方向の高さが調整されて取り付けられているので、この
第2取付部材6に車両内装品を取り付けることで、車両内装品自体の車両上下方向の高さを直接調整することなく、所定の高さに精度良く取り付けられる。これにより、
第2取付部材6は、
車両長手方向に沿って連続して繰り返し配置されても、見栄えよく取り付けることができる。
【0063】
各鉛直部6aの
短辺側端部のうち一方には、屈曲延長部6aa(屈曲部)が形成され
ており、他方には、係合部6ac(挿入部)が形成されている。
図4に示すように、屈曲延長部6aaは、鉛直部6aに対して
車両幅方向に段差を有し、外側に屈曲した後、
鉛直部6aの長手方向に延び
ており、その先端には案内傾斜部6abが形成されている(図5(a)参照)。屈曲延長部6aaと鉛直部6aとの間には、前記段差によって空所S1が形成されている。
また、係合部6acは、鉛直部6aの長手方向に延在
している。
【0064】
そして隣接する
第2取付部材6同士が連結された状態では、一方の
第2取付部材6の鉛直部6aの係合部6acは、他方の
第2取付部材6の屈曲延長部6aaの内側に沿って位置する。すなわち、他方の
第2取付部材6の屈曲延長部6aaにより形成された空所S1には、一方の
第2取付部材6の鉛直部6aの係合部6acが挿入される。
【0065】
水平部6cの短辺側端部のうち一方(屈曲延長部6aaが設けられた
側)には屈曲挿入部6caが形成されており、他方には延長部6cbが形成されている。屈曲挿入部6caは、車両幅方向の両側に
形成されており、図5(a)に示すように、水平部6cに対して車両上部方向に段差を有し、車両上部方向に屈曲して
水平部6aの長手方向に延び
ている。また、延長部6cbには、水平部6cの車両幅方向全体にわたって形成され,長手方向に延在している。なお、屈曲挿入部6caと延長部6cbの設置箇所及び数はこれに限られない。
【0066】
図3及び図6(a)に示すように、内側部材12A,12Bは、第2取付部材6の両短辺側に内周面に沿って取り付けられている。この
内側部材12A,12B
は、いずれも2つの鉛直部12Aa,12Baと、それらの下縁を連結する水平部12Ab,12Bbとを
有している。
【0067】
上述の屈曲挿入部6ca
側にあたる内側部材12Aには、屈曲延長部12Abaが形成されている。図4及び図6(b)に示すように、屈曲延長部12Abaは、屈曲挿入部6ca
の上面に沿って車両上部方向に屈曲して
第2取付部材6の長手方向に延び
ており、屈曲挿入部6caと略同じ幅を有している。
【0068】
ま
た、延長部6cb
側にあたる内側部材12B
には、屈曲延長部12Bba(内側部材屈曲部)が形成されている。屈曲延長部12Bbaは、隣接する屈曲延長部12Abaと略同じ幅を有
している。屈曲延長部12Bbaは、水平部12Bbに対して車両上部方向に段差を有し、車両上部方向に屈曲しており、先端には案内傾斜部12Bbcが
形成されている。そして、内側部材12Bが
第2取付部材6の上に取り付けられた状態において、屈曲延長部12Bba
と延長部6cbとの間には、
第2取付部材6の板厚に相当する幅を有する隙間S2が
形成されている。隣接して取り付けられる
第2取付部材6の屈曲挿入部6caは、案内傾斜部12Bbcによって案内されて隙間S2に挿入され、その結果、
第2取付部材6及び
内側部材12Bが重ね合わされた状態となる。
【0069】
このように、隙間S2に隣に位置する
第2取付部材6の屈曲挿入部6caを挿入して取り付けることにより、
第2取付部材6の
車両長手方向の位置決めを行なうことができる。
【0070】
図3は、
第1ブラケット5A及び第2ブラケット5B(第1取付部材5)と
第2取付部材6と
内側部材12A,12Bをそれぞれ組み付けた状態を示す斜視図である。
図3に示すように、各構成部材を容易に位置決めして取り付けることができるので、隣接する
第2取付部材6を連続して取り付けることができるとともに、
第2取付部材6に取り付けられる灯具7も見栄えよく配置することができる。
【0071】
また、
図3に示すように、隣接する、2つの
第2取付部材6(挿入により板材が重ね合わされた部分)に対し、共通の
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)が用いられている。つまり、隣接する、2つの
第2取付部材6が同じ1つの
第1取付部材5(
第1ブラケット5A及び第2ブラケット5B)にて支持される。
【0072】
ところで、複数の車両内装品を取り付ける場合には、強度が必要な個所(例えば天井の吊手棒受け10)とそれほど強度を要しない個所(例えば天井の灯具)がある。そこで、本実施の形態では、
図1に示すように
取付部材5,6が重ね合わされた箇所には吊り手棒受け10が取り付けられた構成としている。すなわち、
取付部材5と、
内側部材12A,12Bが設けられた
取付部材6とを重ね合わせた構成により、強度を要する箇所のみ板厚を増大させることができるので、
取付部材全体の重量増を最小限に抑えるとともに、必要な強度も確保できる。
【0073】
また、隣り合う
取付部材5,6に端部を差し込んで重量をある程度支持させることで作業者の負担が軽減でき、一人の作業者による作業が可能となる。また、差し込む個所を
内側部材12A,12Bで構成することにより製造性を高めることができ、案内傾斜部12Bbcによって差し込みやすくすることで作業性を高めることができる。そして、薄板で
部材5,6,12A,12B全体を製作しても、車両内装品を取り付けることになる
取付部材6の端部のみ重ねあわせを多く取ることで強度を持たせることができる。
【0074】
取付部材5,6同士は、必要に応じて緩めたり締め付けたりできる機械的締結具にて結合し、必要な寸法調整を行なうようにしているので、
第2取付部材6についての位置の仮決め、再調整が容易となる。そして、位置決め、調整終了後に緩めることができないリベットなどの固定具で固定することで、信頼性を高めることができる。
【0075】
隣り合う
第2取付部材6及び
第1取付部材5を同じ機械的締結具で締結し、また、同じ固定具にて固定できるので、機械的締結具や固定具の種類を削減できる。
【0076】
複数の車両内装品を同じ
取付部材(
第2取付部材6)で支持することで、一度の
位置調整により複数の車両内装品に対する
位置調整ができることになり、
位置調整に要する時間を短縮できる。
【0077】
また、
取付部材5,6をプレス成形品としているので、断面視でL字状や凹凸状の補強部を有する形状とすることができる。これにより、薄板でも強度を保つことができ、軽量化も図れる。しかも、製品の寸法精度が高く、車両内装品の取付時における調整作業を削減できる。車両内装品の形状により
取付部材側の取付面高さが異なると、複数の車両内装品を取り付ける
取付部材を、溶接かつ板曲げにより1つの
部材として構成するのが難しい。従来は車両内装品毎の複数の
取付部材を用意する必要があったが、前述したように
取付部材5,6をプレス成形品とすることで一つの
取付部材内で異なる高さの、複数の内装品取付面を成形することが可能となり、部品点数を削減できる。また、複数の車両内装品を同じ
取付部材(
第2取付部材6)で支持することで、車両内装品間の位置調整が不要となる。
【0078】
本発明は、前記実施の形態のほか、次のように変更して実施することも可能である。
【0079】
<変形例1>
前記実施の形態では、車両上下方向の位置調整をするための長穴5b,5dは、
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)に形成されているが、
第2取付部材に形成されてもよい。
【0080】
<変形例2>
前記実施の形態では、
内側部材12Bの屈曲延長部12Bbaと
第2取付部材6の延長部6cbとの間に、隣接する
第2取付部材6の屈曲挿入部6caが挿入される隙間S2を形成しているが、そのような隙間を形成することなく、屈曲延長部12Bbaあるいは延長部6cbと屈曲挿入部6caとが重ね合わされるだけの構造とすることも可能である。また、
第2取付部材6が支持する車両内装品が軽量の場合には、
内側部材12A,12Bを省略することもできる。
【0081】
<変形例3>
前記実施の形態では、
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)の取り付けの向きは、
第1取付部材5の長手方向を
車両長手方向と一致させているが、
車両幅方向としてもよい。たとえば、
図7及び
図8に示すように、
第1取付部材5(ブラケット5A,5B)は、
取付部材長手方向が
車両幅方向となるように、屋根構体21に形成され
車両長手方向に延びる吊り溝21aに機械的締結具11Fを用いて位置調整して取り付ける。そして、
第1ブラケット5A及び第2ブラケット5B(第1取付部材5)には、長穴
5b,5dを設け、
第1取付部材5と
第2取付部材6とは機械的締結具11Gに締結される。このとき、長穴
5b,5dを利用しているので、車両上下方向の位置調整が可能である。車両上下方向の位置調整後には、他の構成部材はリベットなどの固定具により固定される点は上述の実施の形態と同様である。そして
第2取付部材6Aには、
車両長手方向に配置される蛍光灯などの灯具7Aを支持するフレーム22が取り付けられ、
取付部材を構成する板材が重複する部分に吊り手棒受け10Aが取り付けられるようにすればよい。
【符号の説明】
【0082】
1 屋根外板
4 屋根構体
5
第1取付部材
5b 長穴(貫通穴)
5d 長穴(貫通穴)
5A
第1ブラケット
5B
第2ブラケット
6,6A
第2取付部材
6a 鉛直部
6aa 屈曲延長部(屈曲部)
6ab 案内傾斜部
6ac 係合部(挿入部)
6c 水平部
6ca 屈曲挿入部
6cb 延長部
7 灯具
8 側天井
9 空調ダクト
10 吊り手棒受け
11A〜11G 機械的締結具(
第1固定具)
12A,12B
内側部材
12Aa,12Ba 鉛直部
12Ab,12Bb 水平部
12Aba 屈曲延長部
12Bba 屈曲延長部
(内側部材屈曲部)
12Bbc 案内傾斜部
S1 空所
S2 隙間