(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759725
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20150716BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20150716BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K35/78 C
A61P17/00
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-543438(P2010-543438)
(86)(22)【出願日】2009年1月23日
(65)【公表番号】特表2011-510916(P2011-510916A)
(43)【公表日】2011年4月7日
(86)【国際出願番号】EP2009000443
(87)【国際公開番号】WO2009092606
(87)【国際公開日】20090730
【審査請求日】2010年10月28日
【審判番号】不服2013-13202(P2013-13202/J1)
【審判請求日】2013年7月10日
(31)【優先権主張番号】0801401.1
(32)【優先日】2008年1月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508157299
【氏名又は名称】バリー カレボー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】バーナート, ハーウィグ
(72)【発明者】
【氏名】アレガート, リーン
【合議体】
【審判長】
内田 淳子
【審判官】
横山 敏志
【審判官】
穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/076006(WO,A2)
【文献】
特表2001−500016(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/002851(WO,A2)
【文献】
仏国特許出願公開第2885050(FR,A1)
【文献】
EUROPEAN JOURNAL OF NUTRITION,STEINKOPFF−VERLAG,2006年12月11日,Vol.46,No.1,p.53−56
【文献】
Journal of Nutrition,2006年,136,p.1565−1569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72
A61K31/00−31/80
A61K36/60
A61K47/00−47/48
A61P17/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与により、皮膚のしわの程度を減らすという皮膚の利点を提供するために使用される薬剤の製造に使用される、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量の有効量のカカオパウダーの使用。
【請求項2】
前記カカオパウダーは5〜25重量%のポリフェノール含有量である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記カカオパウダーは7〜15重量%のポリフェノール含有量である請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記カカオパウダーは8〜12重量%のポリフェノール含有量である請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記カカオパウダーは少なくとも5mg/gのエピカテキンを含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記カカオパウダーは少なくとも10mg/gのエピカテキンを含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記カカオパウダーは少なくとも15〜25mg/gのエピカテキンを含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記カカオパウダーは少なくとも1.5mg/gのカテキンを含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記カカオパウダーは少なくとも2.5mg/gのカテキンを含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記カカオパウダーは少なくとも3〜6mg/gのカテキンを含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記カカオパウダーは1000μmolTE/gよりも大きいORAC値である請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記カカオパウダーは1500μmolTE/gよりも大きいORAC値である請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記皮膚のしわの程度の減少は、皮膚のしわの幅又は量の少なくとも一方を減らすことである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記カカオパウダーの前記有効量は、1日に0.1g〜20gであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオパウダーの使用に関する。特に、本発明は、皮膚の利点になるカカオパウダーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートとココアは、興奮剤、緩和剤、陶酔剤、催淫剤、強壮剤、抗うつ剤の特性を含む、多くの有用な効果があると一般に主張されている。しかし、これらの主張の科学的な根拠は理解されていない。確かに、憂鬱になると甘い食べ物を切望する人も数人いるだろう。そして人々は、チョコレートを消費する喜びや、チョコレート内の糖分を消費することによる低血糖の軽減から、つかの間の高揚感が得られるだろう。しかし、向精神性や精神安定性の潜在的な効果を有すると示唆されているチョコレート内の様々な化学物質(糖分以外の)は、一般に薬理的に効果的な程度には存在しない。
【0003】
伝統的に、チョコレートの製造のためのココアは、乾燥され部分的に発酵された、カカオの木の種から作られる。収穫されたカカオの鞘は開かれ、果肉とカカオ豆が取り去られ、外皮は棄てられる。果肉と豆は、通常約6日間、山積みされるか、容器内に置かれるか、または格子の上に配置され、その間、厚い果肉が発酵するにつれて液化する。発酵した果肉は、ココア豆を残してしたたり落ちる。残されたココア豆は集められて乾燥されココアバターとカカオパウダーを作る処理がされる。いくつかの事例では、パウダーの酸味を減らすために、生産物はアルカリで処理される。そもそも強い苦味がある豆の品質と風味にとって、発酵は重要である。発酵させていない、または発酵途中のココア豆は、生のジャガイモに煮た風味を持ち、うどん粉カビや真菌の増殖の影響を非常に受けやすく、また、それゆえに、食料消費のためのチョコレートの大量生産には使用されていない。殻のないココア豆は「ココアニブ」(cocoa nib)として知られている。
【0004】
ココアはポリフェノールや、テオブロミン及びカフェインを含むキサンチンのような他の生物学的な活性のある化合物を含有することが知られている。
【0005】
加工していないココア豆は、おおよそ、40%の水、30〜35%の油脂、4〜6%のポリフェノール又はポリフェノール誘導体、1.5%のキサンチンと、主にタンパク質、デンプン、セルロース及び糖質により構成される残留物とを含有することが知られている。ココア豆の組成についての更なる情報は以下の文献に記載されているだろう。
ココアプロシアニジン:非特許文献1、2
【0006】
ココアは南アメリカ、アフリカ、その他の場所で成長する。収穫されると、その果実や鞘は摘まれ、豆は、乾燥される前の5〜6日の発酵からなる前処理を受ける。この発酵の間、特に、病原性の微生物の破壊、芳香の前駆体の形成、及び、酵素的な酸化またはタンパク質の黒化の後のポリフェノールの部分的な分解を引き起こす、一定の数の生化学的な反応が起こる。70〜80%のポリフェノールが伝統的な発酵の間に分解されると考えられている。
【0007】
ポリフェノールは多様な化合物のグループである(非特許文献3)。それらは様々な植物で幅広く発生し、そのいくつかは食物連鎖に入る。ポリフェノールの構造を持つ数千もの分子が高等植物で同定されており、数百は食用の植物で発見されている。これらの分子は植物の二次代謝産物であり、一般に、紫外線や病原菌による攻撃のような外部のストレス因子に対する防御に関与する(非特許文献4)。
【0008】
ポリフェノール類は芳香環の数および芳香環を結合させる構造要素のように、さらに様々なグループに分類される場合がある。フラボノイド類、非フラボノイド類、及びフェノール酸類の間で区別がされ(
図1参照)、フラボノイド類は2,000を超える既知の化合物を含む最も大きいグループである。
図1は、ココアのポリフェノールの重要な種類であるエピカテキン、カテキン及びプロシアニジン類を含むポリフェノールの分類階層を示す。
【0009】
ココア及びココア由来の生産物はポリフェノール類、及び、特に、幅広い種類の果物、野菜、茶類、及び赤ワインで存在する化合物の種類である、フラボノイド類が豊富である。チョコレートのような、ココア及びココア由来の生産物は、もっとも豊富なポリフェノール類の供給源の1つである(非特許文献5)。
【0010】
加えて、ココアはフラバノール類(フラバン−3−オール)と名付けられたフラボノイドの特定のサブグループが豊富であると言われてきた。フラバノール類は、エピカテキン及びカテキンのモノマー、または、プロシアニジン類と呼ばれる、エピカテキン及び/またはカテキンのオリゴマーとして存在する。ココアで発見された異なるフラバノールの化学構造は
図2及び
図3に示されている。
図2はココアのフラバノールモノマーの化学構造を示している。
図3はココアのフラバノールダイマー及びオリゴマーの化学構造を示している。
【0011】
ポリフェノール類の食事による摂取が健康を促進し、心血管疾患、癌、及び他の慢性疾患を含む、様々な病気の兆候を減らし、あるいは遅らせるという考えを支える証拠が相次いでいる。
【0012】
ココア及びココア生産物のフラバノール類は、血管に有利ないくつかの効果を示す(非特許文献6、7)。
【0013】
ココア及びココア生産物のフラバノール類は心血管疾患の有病率及び死亡率のリスクを低減する(非特許文献8)。ココア及びココア生産物のフラバノール類はまた、癌のリスクも減らす(非特許文献9)。ココア及びココア生産物のフラバノール類は、神経変性病、及び、糖尿病の予防に貢献する可能性がある(非特許文献10)。
【0014】
ココアのフラバノール類を長期間にわたり摂取することが紫外線に誘発される紅斑に対する光防護と女性の皮膚の状態を改善することが研究グループにより発見された(非特許文献11)。同じグループの他の研究では、フラバノールが豊富なココアを単回投与した摂取後2時間で、真皮血管の流れとヘモグロビンの酸素飽和状態の増加が検出された(非特許文献12)。
【0015】
ポリフェノール類は強力な自然の抗酸化剤及び抗ラジカル剤である。それらを含有するポリフェノールの抽出液及び調合液は通常、以下の適応症に使用される:循環器障害、静脈リンパ管機能不全、皮膚毛細管脆弱症、網膜循環障害、痔、太陽により引き起こされ、または、放射線の影響と関係する発疹(放射線治療により引き起こされる損傷の予防)、高血圧、高コレステロール血症、様々なウイルス性疾患や微生物性疾患。
以下を含む、主要な疾患と戦うための分子レベルでの作用のタイプを、多数の公表文献が明らかにした。
【0016】
心筋血管疾患:
血小板凝集抑制(非特許文献13)
消炎及びLDLコレステロールの酸化防止(非特許文献14)
エイコサノイドの酸化防止(非特許文献15)
抗アテローム性動脈硬化(非特許文献16)
抗血栓症(非特許文献17)
アルツハイマー病(非特許文献18)
癌(非特許文献19)
【0017】
ココアがポリフェノール類を含有すること及び医療分野におけるポリフェノール類の使用の重要性を考慮すると、これらの抗酸化物を含有する食事療法の食品や飲料を作る狙いで、ココアからポリフェノール化合物を抽出する試みが導かれる。乾燥処置に続く発酵を含む、伝統的な前処置は、結果として生じるココア生産物に含まれるポリフェノール類のレベルを低下させるという意味で、主要な欠点を構成する。
【0018】
特許文献1には、ある有用な脂質誘導体を使用してココア豆を加工することで(最初の豆の含有量と比較して)高ポリフェノール含有量かつ濃縮された製品を提供することができる、特定の条件で抽出を実行する方法が開示されている。特許文献1に開示された方法は、新鮮な豆の使用を含み、前処理や脱脂を行わず、これらの豆から果肉及び殻を除去することで汚れていない種子を取得し、溶媒の存在下で前記種子をすりつぶし、すりつぶした種子を、抽出される所望の化合物を考慮した状態で浸漬し、浸漬混合物をろ過し、ろ過液から前記化合物を含有する抽出液を回収する。
【0019】
特許文献2には、さらに、ポリフェノールの含有量を高めたココアベースの素材の生産方法が開示されている。
【0020】
特許文献3には、出発原料に含まれているポリフェノール類の含有量を保つ方法により生産される、ポリフェノール類及びステロール及び/またはスタノールエステル類を含有する、飲料を含む、生産物が開示されている。この文献は、ポリフェノールを含有する材料を酸性化することで、最終生産物の生産の間、ポリフェノール類の含有量が保たれることを教示する。開示された方法は、生産物の全ての原材料を一緒に配合し、その後、次の工程の前にpHを下げるために酸を加えることを基本としている。
【0021】
ポリフェノール類を含有するココア抽出液には、多くの用途が提案されている。例えば、特許文献4には、抗腫瘍性であると言われているプロアントシアニジンを含有するココア抽出液が記載されている。特許文献5には、高血圧の治療に使用できる、ポリフェノール含有ココア抽出液が開示されている。特許文献6には、ポリフェノール類を含有するココア抽出液が、ギャップ結合の伝達不全を含む、病気の治療に使用できると記載されている。
【0022】
ポリフェノール類を除くココア抽出液の活性もまた、生理的な効果を得ようと試みられてきた。例えば、特許文献7には、ココアのアルブミン及びその用途が開示されている。特許文献8は、活力を向上させ気分を高揚させている間、ニコチン、コーヒー、甘い物またはチョコレートのような物質への食欲及び渇望を抑制する、テオブロミンまたはその塩を含む組成物と関連している。特許文献9は、テオブロミンが強化されたチョコレートを含む組成物を開示し、チョコレート内の活性がある成分を概説する。神経伝達物質として作用し、覚醒感及び満足感と関連する感情の昂りを引き起こすことにより気分の変化をもたらす可能性がある、フェニルエチルアミン及びチラミンを含む、ヒト及び/または動物の生理に対する影響が完全には理解されていない、多くの化学物質をココアが含有することが記載されている。
【0023】
特許文献10には、有効量のココア成分を含む組成物を被験者に経口投与することを含む、紫外線により誘発される皮膚の紅斑及び/または光老化を、それについて必要とする被験者において減らす方法が記載されている。
【0024】
特許文献11には、ポリフェノール類を含有するココア抽出液を含む、痩せる化粧品及び/または皮膚の脂肪細胞の治療のための医薬組成物が開示されている。どのようにココア抽出液が得られるかについての正確な言及はない。
【0025】
特許文献12は、プロアントシアニジン、アスコルビン酸、またはそれらの誘導体、L−システインまたはその誘導体を含有する健康食品産物に関わる。この生産物はすばらしい美化(皮膚の美化)を提供するといわれている。
【0026】
特許文献13には、生のココア豆の溶媒抽出法により、ココア豆のポリフェノール抽出液を得る方法が記載されている。抽出液は化粧品、食品、及び治療上の用途があり、増加した含有量のベータ・シトステロールを含有する可能性がある。
【0027】
特許文献14は、特許文献13に記載された方法により、ビールの生産において生産された可能性がある、ココアポリフェノールの用途と関連している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/096566号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0258920号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/002883号
【特許文献4】国際公開第96/010404号
【特許文献5】米国特許7122574号明細書
【特許文献6】国際公開第03/079998号
【特許文献7】米国特許6927280号明細書
【特許文献8】米国特許7115285号明細書
【特許文献9】国際公開第2007/042745
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0148107号明細書
【特許文献11】仏国特許出願公開第2885050号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2006/0134179号明細書
【特許文献13】国際公開第02/14251号
【特許文献14】国際公開第2007/082703号
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】L.J.ポーター、Z.Ma、及び、B.G.チャン、「主要なフラボノイド類、及び、いくつかの少ない代謝産物の同定」、ファイトケミストリー、1991年、35巻、第5号、1657−1663ページ
【非特許文献2】H.キム、及び、P.G.キーニー、「発酵した又は非発酵のココア豆におけるエピカテキンの内容量」、ジャーナル・オブ・フード・サイエンス、1984年、第49巻、1090−1092ページ
【非特許文献3】フェリエーラ ら、「オリゴマーのフラボノイド類の構造及び機能の多様性」、テトラへドロン、1992年、第48巻第10号、p.1743−1803
【非特許文献4】マナック C ら、「ポリフェノール:食料源と生物学的利用能」、アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション、2004年、第79巻、p.727−47
【非特許文献5】ディング E.ら、「チョコレートと心臓血管疾患の予防:システムの概論」、ニュートリション・アンド・メタボリズム、2006年、第3巻:p.1−12
【非特許文献6】シュルーター・H.ら、「人間の血管機能に対して、フラバノールの豊富なココアが示す有利な効果を、エピカテキンが介在する。」、PNAS、2006年、103巻、p.1024−1029
【非特許文献7】;エングラー・M.B.ら、「フラボノイドの豊富なダークチョコレートは内皮の機能を高め、健康な成人の血漿エピカテキン濃度を上昇させる」、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・ニュートリション、2004年、第23巻第3号、p.197−204
【非特許文献8】ビュイゼー・B.ら、「ココアの摂取、血圧及び心血管疾患の死亡率。ズフェン・エルダリー・スタディ。」、アーチ・インターン・メッド、2006年、第166巻、p.41−417
【非特許文献9】ヤマギシ・M.ら、「オスのラットの多臓器発癌モデルにおける、カカオリカーのプロアントシアニジンによる肺の発癌の化学予防」、キャンサー・レターズ、2003年、第191巻、p.49−57
【非特許文献10】バイヤード・V.ら、「フラバノールの摂取は一酸化窒素に依存するプロセスから死亡率に影響するか?パナマにおける虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病、及び癌」、インターナショナル・ジャーナル・オブ・メディカル・サイエンス、2007年、第4巻、第1号、p.53−58
【非特許文献11】ハインリッヒ・U.ら、ジャーナル・オブ・ニュートリション、2006年、第136巻、p.1565−1569
【非特許文献12】ニューカム・K.ら、「フラバノールが豊富なココアの摂取がヒト皮膚の微小循環を急激に増加させる。」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション、2007年、第46巻、第1号、p.43−56
【非特許文献13】ペトローニ・A.、M.ブラセビッチ、M.サラミ、N.パピニ、G.F.モンテドロ、及びC.ガリ、「オリーブ油のフェノール性成分による、血小板凝集及びエイコサノイド産生の阻害」、スランボシス・リサーチ、1995年、第78巻、第2号、p.151−160
【非特許文献14】フランケル・E.、J.カナー、J.ジャーマン、E.パークス、及びJ.キンセラ、「赤ワイン内のフェノール性物質によるヒトの低比重リポタンパク質の酸化阻害」、ランセット、1993年、第341巻、第8843号、p.454−457
【非特許文献15】ペース・アシアック・C.R.、S.ハーン、E.P.ディアマンディス、G.ソレアス及びD.M.ゴールドバーグ、「赤ワインのフェノール性トランス−リスベラトロール及びクェルセチンはヒト血小板の凝集及びエイコサノイドの合成を阻害する:冠状動脈性心疾患の予防の示唆」、クリニカ・チミカ・アクタ、1995年、第235巻、第2号、p.207−219
【非特許文献16】ヤマコシ・J.、S.カタオカ、T.コガ、及びT.アリガ、「プロアントシアニジンが豊富なブドウ種からの抽出物は、コレステロール食が与えられたウサギにおいて大動脈のアテローム性動脈硬化を弱める」、アテロスクレオロシス、1999年、第142巻、第1号、p.139−149
【非特許文献17】フーマン・B.、A.ラヴィー、及びM.アーヴィラム、「食事とともに赤ワインを消費することがヒト血漿及び低密度リポタンパク質の脂質酸化に対する脆弱性を減らす」、アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション、1995年、第61巻、第3号、p.549−554
【非特許文献18】オルゴゴゾ・J.M.、J.F.ダーティグス、S.ラフォント、L.レテンネウル、D.コメンゲス、R.サラモン、S.レナウド及びM.ブレテラー、「ワインの消費と高齢者の痴呆:ボルドー地域の予想される地域研究」、レヴィスタ・デ・ニューロロジア、1997年、第153巻、第3号、p.185−192
【非特許文献19】ジャング・M.S.、カイ・G.O.、ユデアニ・K.V.スロウイング、C.F.トーマス、C.W.W.ビーチャー、H.H.S.フォング、N.R.ファーンスワース、A.D.キングホーン、R.G.メータ、R.C.ムーン、及びJ.M.ペッツット、「ブドウ由来の自然の生産物、レスベラトロルの化学発癌抑制作用」、サイエンス、1997年、第275巻、第5297号、p.218−220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
皮膚のために役立つ経口投与可能な組成物、とりわけ自然の産物由来の組成物の需要がある。また、経口摂取する製剤に容易に取り入れられる、これらの利点がある組成物の需要がある。例えば、食品や飲料に取り入れるための組成物は直ちに分散し、色や質感の観点から、製品によい外観を与えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明によれば、経口投与により皮膚の利点を提供する用途のための、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量のカカオパウダーが提供される。
好ましくは、カカオパウダーは5〜25重量%のポリフェノール含有量である。
好適には、カカオパウダーは7〜15重量%のポリフェノール含有量である。
好都合には、カカオパウダーは8〜12重量%のポリフェノール含有量である。
好ましくは、カカオパウダーは少なくとも5mg/gのエピカテキンを含有する。
好適には、カカオパウダーは少なくとも10mg/gのエピカテキンを含有する。
好都合には、カカオパウダーは少なくとも15〜25mg/gのエピカテキンを含有する。
好ましくは、カカオパウダーは少なくとも1.5mg/gのカテキンを含有する。
好適には、カカオパウダーは少なくとも2.5mg/gのカテキンを含有する。
好都合には、カカオパウダーは少なくとも3〜6mg/gのカテキンを含有する。
好ましくは、カカオパウダーは1000μmolTE/gよりも大きいORAC値である。
好適には、カカオパウダーは1500μmolTE/gよりも大きいORAC値である。
好都合には、カカオパウダーは食材または菓子製品の一部として提供される。
好ましくは、食材は飲料である。
好適には、カカオパウダーは化粧品の組成物または栄養補助食品として提供される。
本発明のさらなる局面によれば、経口投与により皮膚の利点を提供するために使用される薬剤の製造における、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量のカカオパウダーの用途が提供される。
本発明の他の局面によれば、経口投与により皮膚の利点を提供するために使用される食材の製造における、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量のカカオパウダーの用途が提供される。
好ましくは、使用されるカカオパウダーは上記に定義されたものである。
本発明のさらなる局面によれば、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量のカカオパウダーを有効量、被験者に経口投与することを含む、被験者に皮膚の利点を提供する方法が提供される。
好適には、皮膚の利点には、皮膚のしわの程度を減らすことが含まれる。
好都合には、皮膚の利点には、皮膚の滑らかさを向上することが含まれる。
好ましくは、皮膚の利点には、紫外線により引き起こされる皮膚の紅斑及び/または光老化の低減を含まない。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、皮膚の利点を提供するカカオパウダー及びその用途、被験者に皮膚の利点を提供する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】カカオパウダーに存在する可能性があるポリフェノールの種類の概要を示す図である。
【
図2】ココアポリフェノール類のカテキン、エピカテキン、及びこれらの誘導体の化学構造を示す図である。
【
図3】ココアのプロシアニジンのポリフェノール類の化学構造を示す図である。
【
図4】D−Squam(登録商標)粘着テープを用いて剥離された皮膚サンプルの顕微鏡写真である。
【
図5】皮膚の水和状態を評価するためのDiagnoskin(登録商標)採点システムを示す図である。
【
図6】干渉縞投影測定技術におけるビデオカメラの使用を示す概略図である。
【
図7】干渉縞投影測定技術におけるグレーコード投影の使用を示す図である。
【
図8】干渉縞投影測定技術における位相シフトの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を、添付の図面を参照するとともに、実施例を挙げて詳細に説明する。
【0035】
少なくとも5重量%のポリフェノールを含有するカカオパウダーが経口摂取後の皮膚への影響の観点で利点があることが発見された。その影響は、局所性というよりはむしろ全身性であり、ココアを主成分とする素材の局所的な塗布により得られるものとは非常に異なる。
【0036】
本発明で用いられるカカオパウダーは、少なくとも5重量%、例えば少なくとも7重量%のポリフェノール含有量である。ポリフェノール含有量の上限は、概して、約25重量%である。それゆえに、望ましい量のポリフェノール含有量は5〜25%、7〜15%、8〜12%、9〜11%、そして約10%であり、そのパーセンテージはカカオパウダーの重量当たりである。
【0037】
この明細書においては、「カカオパウダー」は1種類のカカオパウダーを意味し、適切であれば、2種類またはそれ以上のカカオパウダーの混合物をも意味する。それゆえに、例えば、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量を含有するカカオパウダーは、少なくとも5重量%のポリフェノール含有量を含有する1種類のカカオパウダーであるか、平均して少なくとも5重量%のポリフェノール含有量を含有する、カカオパウダーの混合物について言及していてもよい。このような混合物は、例えば、5重量%よりも多いポリフェノール含有量のカカオパウダー及び5重量%よりも少ないポリフェノール含有量のカカオパウダーを、全体で少なくとも5重量%の混合物のとしたものを含んでもよい。
【0038】
ポリフェノールのパーセンテージは、フォリン−チオカルト法に従って、ガリル酸同等物として表現されることが好ましい(例えば、シングルトン・V.L.、オルソファー・R.、ラミュエラ−ラヴェントス、「フォリン−チオカルト試薬を用いた全フェノール及び他の酸化基質及び抗酸化物質のRM分析」、メソッド・イン・エンザイモロジー、1999年、第99巻、p.152−178)。
【0039】
本発明で用いられるカカオパウダーのポリフェノールは、一般的に、モノマー及びオリゴマーを含む。好ましくは、本発明で用いられるカカオパウダーは、単量体、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体のそれぞれ最大で20重量%、及び、より大きなオリゴマーを最大で25重量%含有する。より好ましくは、本発明で用いられるカカオパウダーは、カカオパウダーの重量に対して、15〜20%の単量体(好ましくは少なくとも15%のエピカテキン)、10〜15%の二量体、7〜12%の三量体、6〜10%の四量体、6〜10%の五量体、6〜10%の六量体、2〜6%の七量体、2〜6%の八量体、2〜6%の九量体、2〜6%の十量体、そして10〜25%のより大きなオリゴマーを含有する。
【0040】
本発明で用いられるカカオパウダーはカフェイン及びテオブロミンのようなキサンチン類(好ましくはメチルキサンチン類)を含有していてもよい。カフェインはテオブロミンとともに、概して、テオブロミンのカフェインに対する重量比が20:1〜5:1の範囲で、存在していてもよい。本発明の1実施態様において、テオブロミンの含有量は少なくとも1重量%であり、1〜3重量%であることが好ましい。この実施態様において、この組成はポリフェノール:テオブロミンの重量比は4:1〜8:1であることが好ましい。他の実施態様においては、カカオパウダーは、テオブロミンの含有量や他の存在する可能性があるキサンチンの含有量を低減するために、場合によっては溶媒及び圧力を組み合わせ、例えば、超臨界状態の二酸化炭素により処理してもよい。ココア原料内のテオブロミン含有量を低下させる方法は国際公開第2007/082703号の実施例2.3に記載されており、その内容は参照することにより本願に組み込まれる。この他の実施態様において、カカオパウダーは2重量%未満であり、例えば1.5重量%未満であり、例えば0.1〜1.5重量%である。
【0041】
「ポリフェノール」は、1分子あたり1以上のフェノール基が存在するという特徴を有する、植物で見られる化学物質のよく知られたグループを意味する。ポリフェノールはしばしば単量体、二量体、三量体、及び他のオリゴマーとして存在する。フラボノイド類はポリフェノールの小集団である。ココアはカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガラート、エピガロカテキンガラート、プロシアニジン類、プロデルフィニジン類、及びプロペルアルゴニジンのようなポリフェノールを含有する。望ましいポリフェノール類はプロシアニジンA2、B1〜B5、及びC−1を含む。分子量が3000未満のポリフェノール類が好ましい。
【0042】
本発明の用途のためのカカオパウダーはポリフェノール類の濃度が強化されている。「強化された濃度のポリフェノール」とは、ココアを主成分とする素材が、従来の調整されたココアを主成分とする素材に見られるよりも高い濃度のポリフェノール類を含有することを意味する。従来の調整されたココアを主成分とする素材の1例は、アルカリ化されたカカオパウダーである。したがって、アルカリ化されたカカオパウダーよりも多くのポリフェノール類を含有するカカオパウダーは、強化された濃度のポリフェノールを有する。強化された濃度のポリフェノールを含有するカカオパウダーは、ココア豆の管理された発酵過程を用いて調整されてもよい。より具体的には、強化された濃度のポリフェノールを含有するカカオパウダーは、カカオパウダー1グラムあたり少なくとも50mg(50mg/gまたは5重量%)のポリフェノール類を含有する。
【0043】
アルカリ化されたカカオパウダーは一般的に3.5重量%以下のポリフェノール類を含有する。自然のカカオパウダーは一般的にアルカリ化されたカカオパウダーよりも多いポリフェノール類を含有する。しかしながら、自然のカカオパウダーは、取り扱いの問題を引き起こす約5.5の比較的低いpHである。強化された濃度のポリフェノールを有する、望ましい、ココアを主成分とする素材は、自然のカカオパウダーよりも大きいpHであり、より好ましくは約6以上のpHであり、約6.2〜約6.4のpHであることが最も好ましい。
【0044】
好ましくは、本発明の食材は、添加アルコールを含有しない、飲料を含む。望ましい本発明の飲料は本質的にアルコールが存在しない。
【0045】
本発明で用いられるココアを主成分とする素材は強化された濃度のポリフェノールを有し、好ましくは、収穫されたココア豆に存在するポリフェノール類を保つように工夫された方法を使用してココア豆から得られる。
【0046】
生産物内のポリフェノール類の濃度を算出するよく知られた方法の1つは、そのORAC値を測定することである。ORACは酸素ラジカル吸収能(Oxigen Radical Absorbance Capacity)を表し、サンプルのフリーラジカル中和能力の計測である。この能力はORAC分析として知られる試験方法を用いて測定することができる。
【0047】
この試験は、AAPHを生理学的な関連のあるラジカル発生器として用い、フルオレセインを蛍光プローブとして用いる。この分析における国際標準として、Trolox(トロロックス;ビタミンEの水溶性の類似物)が用いられる。フルオレセインは激しくかつ長持ちする蛍光プローブである。AAPHはフルオレセインと反応することで蛍光を退色させる。物質のサンプルが抗酸化能力を有する場合、そのサンプルはAAPHラジカルを中和/除去し、それによってフルオレセインの蛍光を退色から保護する。この物質のサンプルの抗酸化能力は、ORAC分析を用いて測定されるということで、ORAC値と呼ばれる。Troloxが国際標準として用いられるので、このORAC値はトロロックス当量(Trolox Equivarents)またはTEと表現される。ORAC値を表現する国際標準の方法は、サンプル1mg(または1mL)当たりマイクロモルTEである。特定の出願において、ORAC値はリットル当たりTEまたは1人前当たりTEのような他の単位に転換されているかもしれない。ここでは、ORAC値は、物質1グラム当たりマイクロモルトロロックス当量(TE)(μmolTE/g)の単位で表現される、物質のサンプルの抗酸化能力を示す値である。
【0048】
本発明で用いられるカカオパウダーは、ORAC値が1,000μmolTE/gよりも大きいことが好ましく、1,500μmolTE/gよりも大きいことがより好ましい。
【0049】
好ましい強化された濃度のポリフェノールを有するカカオパウダーの1つは、アクティコア(ACTICOA、登録商標)の商品名でバリーカレボー社から入手できる。アクティコアのカカオパウダーのサンプルは2129μmolTE/gのORAC値を有することが計測されている。これは自然のカカオパウダーで計測された826μmolTE/gのORAC値よりも大きい。自然のカカオパウダーの値自身が伝統的なアルカリ処理後のカカオパウダーのレベル、402μmolTE/gのmORAC値よりも大きいのであるが。また、アクティコアのカカオパウダーはpHが約6.3である。
【0050】
本発明で用いられるカカオパウダーは2重量%未満のフェニルエチルアミンを含有することが好ましい。
【0051】
カカオパウダーは、(好ましくはヒトの)皮膚の利点を提供するために本発明で用いられる。「皮膚の利点」という用語は、ここでは、皮膚の健康の一般的な改善を含む、1以上の望ましい皮膚の効果をいう。皮膚の利点は、例えば、以下の1以上を含む:ハリの向上、弾力性の向上、緊張力の向上、しわの減少(しわの幅及び/または数を含む)、小ジワの減少、水和度の向上、皮膚の粗さの減少、落屑の減少、皮膚の平滑性の向上、皮膚の構造(皮膚の障壁を含む)の向上。皮膚の利点は、しわの減少(しわの幅及び/または数を含む)、及び/または、皮膚の平滑性の向上を含むことが好ましい。好ましくは、皮膚の利点は、紫外線によって引き起こされる皮膚の紅斑、及び/または、光老化の減少を含まない。
【0052】
本発明で用いられるカカオパウダーは、経口投与のために処方され、局所塗布を意図していない。本発明で用いられるカカオパウダーは食べられる、毒性のない形で摂取される。例えば、カカオパウダーを、食材または菓子製品の一部として提供してもよい。通常、カカオパウダーは、食材または菓子製品の中に、0.1〜80重量%、例えば0.5〜40重量%の量が含まれる。
【0053】
食材及び菓子製品は、例えば、油脂連続相を有するものも、水連続相を有するものも含む。食材は食品及び飲料を含む。
【0054】
飲料は摂取のために温めたもの及び冷やしたものを含む。飲料は、甘味料、香料、着色料、安定剤、及び保存料から選択される1以上の添加物を含んでもよい。飲料は通常、50〜90%の水を含む。飲料は通常、その中に分散し、及び/または懸濁したカカオパウダーを含む。本発明で用いられるカカオパウダーは飲料内に0.1〜10重量%の量が含まれることが好ましい。カカオパウダーは、水を加えて混合することで飲料に変化する粉として処方してもよい。
【0055】
特に望ましい飲料は、ココア風味の飲料である。ココア風味の飲料は以下を含む:少なくとも5重量%のポリフェノールを含有するカカオパウダー;任意の乳もしくは乳製品(例えばスキムミルクの粉)及び/または甘味料。カカオパウダーは全脂肪のカカオパウダーでも減脂肪のカカオパウダーでもよい。甘味料は糖類及び非糖甘味料を含む。ココア風味の飲料は温めて(例えばホットチョコレート)あるいは冷やして(例えばミルクシェイク)摂取するように処方してもよい。
【0056】
食材は通常、1以上のタンパク、脂質及び炭水化物を含む。食材は酪農製品及び菓子製品を含む。好ましい食材は植物油及び/またはココアバターを含む。特に好ましい食材には、固形のココア及び砂糖を含むチョコレート及びチョコレート様製品が含まれる。例えば、本発明で用いられるカカオパウダーは、伝統的なチョコレートまたはチョコレート様製品に、0.1〜80重量%、例えば0.5〜40重量%の量が含まれていてもよい。
【0057】
本発明で用いられるカカオパウダーは、チョコレートまたはチョコレート様製品に含まれていてもよい。チョコレートまたはチョコレート様製品は、カカオパウダー類、ココア原料、糖類、砂糖の代用品、粉ミルク、乳化剤、香料及びこれらの混合物からなるグループから選択される1以上の成分を含有することが好ましい。好ましくは、ココア原料は、ココアマス、ココアリカー、ココアバター及びこれらの混合物から選択される。粉ミルクは、例えば、スキムミルクパウダー、ホエイパウダー及びその誘導体、全粉乳、及びこれらの混合物を含む。適切な糖類はスクロース、フルクトース、グルコース、及びデキストロース及びこれらの混合物(スクロースを含むことが好ましい)を含む。砂糖の代用品は、イヌリン、デキストリン、イソマルツロース、ポリデキストロース、及びマルチトール及びこれらの混合物を含むことが好ましい。脂肪はバター脂肪もしくはその分別物、パーム油もしくはその分別物、ココナッツもしくはその分別物、パーム核油もしくはその分別物、液体油類(例えば、ヒマワリ油及び/または菜種油)、これらの油もしくはその分別物若しくは硬化させた成分の混合物をインターエステル化したもの、またはこれらの混合物を含む。乳化剤はレシチン、分別物したレシチン及びPGPRまたはこれらの混合物を含む。香料はバニラ及びカラメルまたはこれらの混合物を含む。
【0058】
チョコレート及びチョコレート様製品は、例えばビスケット、ナッツ(全粒または、かけら)、クリスピー、スポンジ、ウエハース、または、サクランボのようなフルーツ、ショウガ、干しブドウや他のドライフルーツのような1以上の食品添加物を含んでいてもよい。これらの添加物は通常は製品の内部に埋め込まれている。
【0059】
あるいは、カカオパウダーは、化粧品の組成物または栄養補助食品として提供してもよい。
【0060】
化粧品の組成物は、タブレット、錠剤、カプセル、カプレット、多くの細粒(散粒、ビーズ、ペレット及びマイクロカプセル化された微粒子を含む)、粉、エリキシル剤、シロップ、懸濁液、及び溶液の形を取ることが好ましい。化粧品の組成物は容認可能な希釈液または担体を包含する。経口摂取可能な組成物は固体又は液体の形状であり、タブレット、粉、懸濁液及びシロップの形を取ってもよい。任意的に、組成物は1以上の香料及び/または着色料を含んでもよい。このような組成物の使用に適している担体は技術としてよく知られている。本発明の組成物は0.1〜99重量%のカカオパウダーを含有していてもよい。
【0061】
栄養補助食品は、例えば、液体形状(例えば、溶液、分散液または懸濁液)及び/またはカプセル内に封入されたカカオパウダーを含有していてもよい。栄養補助食品(当該用語は食品製品及び栄養製品を含む)は、好ましくは、ゼラチン、グリセロール、デンプン、加工デンプン、グルコースのようなデンプン誘導体、スクロース、ラクトース及びフルクトースを含む群より選択される、封入素材を含む、柔らかいゲルまたは硬いカプセルの形状を取ることができる。封入素材は付加的に、架橋剤または重合剤、安定剤、酸化防止剤、感光性成分を保護するための光吸収剤、保存料、及び同類のものを含有していてもよい。好ましくは、栄養補助食品内のカカオパウダーの量は1〜1000mg、例えば50〜500mgである。
【0062】
ここで使用されているように、「有効量」という言葉は、1以上の皮膚の利点が達成するために被験者へ1回分又は複数回分の投与で有効であるカカオパウダーまたは組成物の量をいう。本発明に用いられるカカオパウダーの有効量は、通常、1日に約0.1g〜20g、例えば、大人のヒト1人にとって1日に1〜10gであり、1日に0.5〜5gであることが最も好ましい。毎日の投与は1日に1回投与してもよいし、分散投与でもよい。
【0063】
ここで使用される「処方」という言葉及び関連する言葉は、組成物や他の製品の摂取を含み、医学的な有資格者が関与することを意味しない。カカオパウダー、組成物、及び他の製品は、例えば、被験者自身が他の指示や治療計画とは独立して、カカオパウダー、組成物、または他の製品(例えば食品または飲料)を購入した後、単に摂取することにより処方することができる。
【0064】
この明細書における、先に出版された文献のリストまたは議論は必ずしもその文献が従来技術の一部や一般的な知識をなすものと捉えられるべきではない。
【0065】
以下の非限定的な例は本発明を説明するものであり、その範囲を如何様にも制限するものではない。例及び明細書全体において、全てのパーセンテージ、割合及び比は、他に示すものがなければ重量によるものである。
【0066】
[例1]
I.要約
皮膚の健康パラメーター、水和性及びしわにおけるポリフェノールが豊富なココア飲料の生物学的効率の評価
1.実験計画:無作為抽出、二重盲検法、並行研究
2.参加者:48人のボランティア、18〜65歳(18〜44歳が24人、44〜65歳が24人)、男性及び女性
3.期間:12週間
4.処置:毎日、高ポリフェノールココア飲料または低ポリフェノールココア飲料
5.計測:合計24人(高ポリフェノール12人、低ポリフェノール12人)の参加者においてしわ取り効果、水和性
6.結論:12週間後、高ポリフェノール飲料はしわの幅(−1%)及び量(−4%)を減らすのに、低ポリフェノール飲料(それぞれ幅+0.4%、数−2.3%)と比較してより効果的だった。12週間後に、水和性の数値は高ポリフェノール飲料(+12%)では低ポリフェノール飲料(+7%)と比較してより大きな増加があった。
【0067】
II.飲料の調整
乾燥粉の組成を表1に示す。
【表1】
【0068】
ポリフェノール含有量を表2に示す。
【表2】
【0069】
飲料を調整するために、乾燥粉10gを200mlの飲料水に投入し、かき混ぜた。1杯の飲料は12週間の実験期間の間、全ての参加者により毎朝調整され摂取された。
【0070】
III.皮膚の利点の分析方法
III.A.水和性
D−Squam(登録商標)粘着テープを用いて剥離された皮膚サンプルの分析により、落屑の質の評価が可能となる。このパラメーターは角質層の水和性と相互に関連がある。
【0071】
落屑のパラメーターの採点法(1から12まで)は、皮膚の水和状態を評価するために用いられる(ディアグノスキン(商標)システム)。
図5に1〜12の尺度、及び、皮膚サンプルの典型的な写真を示す。
【0072】
参考資料
水和性の評価方法
柔軟性のある粘着テープ、D−Squam(商標)を皮膚に貼ると、剥がされたときに角質細胞の表層が残る。
光学顕微鏡(対物25倍、冷光照明)でこの剥離物の幾何学的な評価をすると、水和性のレベルに従って増加する、1〜12の値が導かれる。
図4に典型的なD−Squam(商標)のサンプルの写真を示す。
【0073】
III.B.しわ
しわが形成された領域のトポグラフィーを検討した。「カラスの足跡」領域において、シリコンエラストマー(Silflo)により、皮膚表面の複製が採取された。最も小さい皮膚の深さでさえ、詳細に再生された。
【0074】
干渉縞投影技術を用いて三次元再構築がなされた。三次元画像を用いた個別の比較分析がなされた。
図6、7、8にこの技術の原理を示す。
【0075】
皮膚のトポグラフィーの分析は、特別なコンピュータソフトウェアと関係付けられた、干渉縞投影技術によりなされた。三次元の物体の表面は、パラメーター(x、y、z)の3元方程式で表現される。この物体の起伏は、z=f(x、y)の表面のポイントMにおける高さzを表現する関数f(x、y)である。いくつかの等高線Z=Ziを得るために、この物体は傾斜した格子を用いた縞投影技術(ハロゲン)により照明された。深さの範囲は6mm(−3mm<Z<3mm)とした。
【0076】
図6、7、8はフランスのラ・ソシエテ・エオテックのデルマトップ(商標)システムで使用されているような、干渉稿技術を用いた皮膚のトポグラフィーの分析に最適なシステムを示す。
図6は干渉稿投影測定技術におけるビデオカメラの使用を示す概略図である。
図7は干渉縞投影測定技術におけるグレーコード投影の使用を示す。
図8は干渉縞投影測定技術における位相シフトの使用を示す。
【0077】
IV.結果
IV.A.水和性
初期の水和性のスコアが低い(スコアが0〜6)の被験者のグループを選択した。(18〜65歳)
0〜3:乾燥肌
3〜6:低水和性
n=16/グループとした。
【0079】
IV.B.しわ
高ポリフェノール処方群はn=14、低ポリフェノール処方群はn=11とした。
【0081】
例2
ポリフェノールが豊富なココア飲料の皮膚の水和性に対する生物学的効果の評価
1.実験計画:無作為抽出、プラシーボ対照、二重盲検法、並行研究
2.参加者:32人の健康な(中央)ヨーロッパ人女性、35〜65歳、BMI値18〜27、皮膚の写真タイプI、II&III(16人/グループ)
3.期間:6週間
4.処置:毎日、ACTICOA(商標)カカオパウダーで作った、1日に500mgのフラバノール類を摂取する高フラバノールココア飲料、対、低フラバノールカカオパウダーで作った、1日に16mgのフラバノール類を摂取するプラシーボのココア飲料、1人前を朝食時。ココア飲料は等カロリーで、テオブロミン及びカフェインの含有量に差はない。
【0082】
II.飲料の調整
飲料を調整するために、乾燥粉20gを250mlのお湯に投入し、かき混ぜた。1杯の飲料は6週間の実験期間の間、全ての参加者により毎朝調整され摂取された。
【0083】
20gの提供混合物は50%の砂糖と50%のカカオパウダーを含有し、各提供混合物当たり10gのカカオパウダーを与える。
プラシーボ:低フラバノールカカオパウダー100%
高ポリフェノール飲料:ACTICOA(商標)カカオパウダー50%及び低フラバノールカカオパウダー50%
乾燥粉の組成を表5、表6に示す。
【0085】
カカオパウダーのポリフェノール含有量を表7に示す。
【0087】
「低」ポリフェノール飲料内の10gのカカオパウダーはポリフェノール類を1%(フォリン−チオカルト法により計測)含有しており、総計12650 ORAC(または、カカオパウダー1g当たり1265 ORAC)である。
「高」ポリフェノール飲料内の10gのカカオパウダーはポリフェノール類を5.5%(フォリン−チオカルト法により計測)含有しており、総計4000 ORAC(または、カカオパウダー1g当たり400 ORAC)である。
【0088】
水和性:
皮膚の水和性はコルネオメーター(商標)CM825(Courage+Khazaka社製)を用いて計測した。皮膚の水和性の計測は角質層の保水容量に依存している。乾燥した角質層は弱い電気伝導性を示す。潤った角質層は電界に対してより敏感であり、誘電率の増加を引き起こす。角質層の水和性の増加は静電容量の増加を引き起こす。コルネオメーター(商標)CM825の計測原理は静電容量の計測に基づいている。皮膚の表面の静電容量の計測による誘電率のどのような変化も、皮膚表面の水和性の変化による誘電率のどのような変化も、精密な計測用コンデンサーの静電容量を変える。計測は水和性のレベルの極めてわずかな変化さえ検出する。計測の再現性は非常に高く、計測時間は非常に短い(1秒以下)。
【0089】
結果
水和性(6週間後に前腕で計測)
・プラシーボ:−0.3%
・高ポリフェノール飲料:+8.4%(P=0.07)