特許第5759729号(P5759729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759729
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】半導体部品の表面保護用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20150716BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20150716BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150716BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J183/04
   B32B27/00 M
   B32B27/00 101
   B32B27/36
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-10066(P2011-10066)
(22)【出願日】2011年1月20日
(65)【公開番号】特開2012-149192(P2012-149192A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150681
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 荘助
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
(72)【発明者】
【氏名】福原 淳仁
(72)【発明者】
【氏名】有満 幸生
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−213810(JP,A)
【文献】 特開2005−089609(JP,A)
【文献】 特開2003−003132(JP,A)
【文献】 特開2007−099858(JP,A)
【文献】 特開2006−052384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/02
B32B 27/00
B32B 27/36
C09J 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材フィルム、シリコーン系粘着剤層、剥離ライナーから構成される粘着テープにおいて、
基材フィルムの片面に粘着剤層を有し、
前記剥離ライナーが、該シリコーン系粘着剤層に貼り合せられる面に離型層を有さず、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートからなる未処理の単層プラスチックフィルムからなり、シリコーン系粘着剤層に貼り合せられる面が平滑である、
加熱工程用表面保護粘着テープ。
【請求項2】
シリコーン系粘着剤層が付加型シリコーン系粘着剤層である請求項1に記載の加熱工程用表面保護粘着テープ。
【請求項3】
該粘着剤層面からの剥離ライナーの剥離力が1N50mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱工程用表面保護粘着テープ。
【請求項4】
常温での粘着力が0.05N/20mm以下、260℃リフロー後の粘着力が0.50N/20mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の加熱工程用表面保護粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品の表面保護用粘着テープに関し、特に固体撮像デバイスを用いた映像センサを生産する際に該映像センサの受光部側を保護する目的で使用され、被着体(映像センサの受光部側)への転写異物低減を可能とする表面保護用の粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に示されるように、電気、電子部品、半導体部品を生産する際に、生産工程において部品の固定や保護を目的とする粘着テープが知られている。このような粘着テープとしては、基材フィルムに再剥離性のアクリル系粘着剤層が設けられたものや、加熱工程時には高い耐熱性を有するシリコーン系粘着剤層が設けられたものがある。該粘着テープは所定の処理工程が終了すると剥離されるが、このとき部品への粘着剤層からの転写異物が発生する。
【0003】
また、携帯電話等に搭載される小型カメラにおいては、CCD型やCMOS型の営巣センサー(固体撮像装置)が広く使用されている。この小型カメラは、一般に、撮像素子、赤外カットフィルター、光学レンズ、レンズホルダーなどの各構成要素から組み立てられている。このようなカメラに関し、その高解像度化に伴う要求の一つとして、撮像素子に付着する埃等付着によるノイズ低減があげられる。
【0004】
このため、上記電気、電子部品、半導体部品と同様に、映像センサの受光部側に、映像センサ表面の傷つきやゴミの付着を防止する目的で粘着テープを貼り合わせることで、実装および製造工程における傷つきやゴミとしての転写異物の付着を避ける手法が採られる。この転写異物が存在すると該映像センサにおける撮像に直接影響する可能性が高い。
この転写異物の発生原因は主に粘着剤由来であると考えられており、低分子量成分を除去したポリマーを粘着剤層に用いた表面保護粘着テープや、半田付け等の加熱工程での耐熱性を向上させるために各種添加剤を粘着剤層に混合した表面保護粘着テープを使用して、粘着剤層由来の転写異物の低減を図っている。
【0005】
ところが、剥離ライナー付き粘着テープの場合には、慣用の剥離ライナーにおける離型層として用いられている離型層(例えば、シリコーン系離型層やフルオロシリコーン系離型層など)の離型剤が粘着剤層へ転写し、この転写離型剤が被着体へ再転写することによって、被着体表面の異物として検出されることがある。このため、より粘着剤層への転写を防止した離型剤の検討が行われているが、離型剤転写の不安は払拭されていない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−201899号公報
【特許文献2】特開2006−332419号公報
【特許文献3】特開2006−077072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体部品の製造工程において、被着体(部品)への転写異物が少ない表面保護用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、
1.少なくとも基材フィルム、粘着剤層、剥離ライナーから構成される粘着テープにおいて、基材フィルムの片面に粘着剤層を有し、該粘着剤層上に、離型層を設けない未処理プラスチックフィルムによる剥離ライナーが積層されている表面保護用粘着テープ。
2.剥離ライナーはポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートである1に記載の表面保護用粘着テープ。
3.該粘着剤層が付加反応型シリコーン系粘着剤層である1又は2に記載の表面保護用粘着テープ。
4.該粘着剤層面からの剥離ライナーの剥離力が1N/50mm以下、好ましくは0.5N/50mm以下であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の表面保護用粘着テープ。
5.常温での初期粘着力が0.05N/20mm以下、260℃リフロー後の初期粘着力が0.50N/20mm以下である1〜4のいずれかに記載の表面保護用粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体表面保護用粘着テープは、少なくとも基材フィルム、粘着剤層、剥離ライナーから構成される粘着テープにおいて、基材フィルムの片面に粘着剤層を有し、該粘着剤層上に離型層を含有しない未処理プラスチックフィルムが用いられた剥離ライナーが形成されている。該剥離ライナーに離型層を含有しないことにより、粘着剤層面への離型剤の転写が発生しない、すなわち、被着体への再転写を防ぐことが可能であり、結果的に被着体への転写異物が低減される。
特に粘着剤層が付加反応型シリコーン系粘着剤層である場合、シリコーンゴム成分とシリコーンレジン成分の配合比率を調整して粘着力を制御でき、他の樹脂からなる粘着剤よりも低い粘着力とした場合には、特に剥離ライナーに対しても粘着力が低下するので、剥離ライナー自体に剥離剤層を設けることなく、ひいては粘着剤層面への離型剤の転写を発生させることがない。
さらに該粘着剤層面からの剥離ライナーの剥離力が1N/50mm以下、好ましくは0.50N/50mm以下としたり、常温での初期粘着力を0.05N/20mm以下とすること、つまり、粘着剤層の粘着力を低下させることにより、剥離ライナーには剥離剤層を設ける必要がないことになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面保護用粘着テープにおける剥離ライナーは、剥離ライナーにおける離型層として公知の離型剤(例えば、シリコーン系離型剤やフルオロシリコーン系離型剤等)による処理や、剥離性を付与するための何らかの処理が施されておらず、表面が未処理である状態のプラスチックフィルムからなる剥離ライナーである。
このような剥離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂等のフィルムを使用できる。そして、これらのフィルムのなかでも特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが好ましい。
剥離ライナーの厚さは、取扱性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般に10〜200μm程度、好ましくは20〜100μm程度である。
【0011】
本発明の表面保護用粘着テープにおける基材フィルムとしては、粘着テープに通常用いられる基材であればよく、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハンなどのプラスチックからなるプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙;マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの天然繊維、半合成繊維又は合成繊維の繊維状物質などからなる単独又は混紡などの織布や不織布等の布;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等からなる発泡体による発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。
【0012】
これらの基材フィルムの中でも、加熱工程がない、もしくは比較的低温(160℃以下)での加熱工程においても使用するにはポリエチレン製フィルムやポリエステル製フィルム(ポリエチレンテレフタレート製フィルム等)などのプラスチックフィルムを、200℃以下の加熱工程において使用するにはポリエステル製フィルム(ポリエチレンナフタレート製フィルム等)、200℃以上の加熱工程で使用するにはポリイミド系樹脂を好適に用いる等、使用される工程に合わせて基材を使い分けることが可能である。なお、基材は透明、半透明、不透明のうちいずれであってもよい。
【0013】
粘着剤の投錨力を高めるために、基材に表面処理を行ってもよく、表面処理としては、コロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV処理、プラズマ処理、アルカリ金属エッチング処理等の表面処理が挙げられる。これら表面処理法のなかでも耐熱性が良く、物理的に表面を荒らして接着層を形成する表面積を増やすことのできるスパッタ処理が良好である。
基材の厚さは、取扱性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般に10〜500μm程度、好ましくは20〜100μm程度である。
【0014】
本発明の表面保護用粘着テープの粘着剤層は、基材フィルムの片面に塗布した後、乾燥し、架橋させて硬化させることにより得ることができる。粘着剤層の厚さは、1〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmであることが望ましい。1μm未満の場合、高温雰囲気中においてセンサから剥がれてしまう。また、30μmを超える場合には、剥離する際に、剥離することができない。
【0015】
上記粘着剤層に用いられる粘着剤ベースポリマーは、粘着テープに通常用いられる粘着剤であればよく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。特に、再剥離性に優れるアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好まれる。例えば、シリコーン系粘着剤としては、加熱工程に対して耐熱性を有するものであれば良く、例えば、特開2003−193226号公報に記載の、トルエン不溶分が35%以上のシリコーン系粘着剤などを用いることができる。また、耐熱性に優れたアクリル系粘着剤でもよい。
【0016】
本発明の粘着剤層については、粘着性及び耐熱性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、付加反応型シリコーン系粘着剤やアクリル系粘着剤層等が挙げられる。
その付加反応型シリコーン粘着剤層としては、例えばオルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムやシリコーンレジンを含有してなり、これに架橋剤を添加してキュアーすることにより粘着剤層を形成することができる。このように、粘着剤は通常架橋剤を添加して、3次元構造化して凝集力を上げている。その他、粘着剤には必要に応じて、タッキファイヤー、酸化防止剤、その他の添加剤等を配合することが出来る。
【0017】
シリコーンゴムとしては、シリコーン系感圧接着剤に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、ジメチルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンを好ましく使用できる。オルガノポリシロキサンには必要に応じてビニル基、その他の官能基が導入されていてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は通常10万以上であるが、望ましくは10万から100万、特に15万から50万のものが好適である。
【0018】
シリコーンレジンとしては、シリコーン系感圧接着剤に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、M単位(R3 SiO1/2 )と、Q単位(SiO2 )、T単位(RSiO3/2 )およびD単位(R2 SiO)から選ばれるいずれか少なくとも1種の単位(前記単位中、Rは一価炭化水素基または水酸基を示す)を有する共重合体からなるオルガノポリシロキサンを好ましく使用できる。前記共重合体からなるオルガノポリシロキサンは、OH基を有する他に、必要に応じてビニル基等の種々の官能基が導入されていてもよい。導入する官能基は架橋反応を起こすものであってもよい。前記共重合体としてはM単位とQ単位からなるMQレジンが好ましい。M単位と、Q単位、T単位またはD単位の比(モル比)は特に制限されないが、前者:後者=0.3:1〜1.5:1程度、好ましくは0.5:1〜1.3:1程度のものを使用するのが好適である。
【0019】
シリコーンゴムとシリコーンレジンの配合割合(重量比)は、前者:後者=100:0〜100:220程度が好ましく、100:0〜100:180程度のものを使用するのがより好ましく、さらに100:0〜100:100のものを使用することがさらに好ましい。シリコーンゴムとシリコーンレジンは、単にそれらを配合して使用してもよく、それらの部分縮合物であってもよい。
【0020】
前記配合物には、それを架橋構造物とするために、通常、架橋剤を含む。架橋剤としては、SiH基を有するシロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。過酸化物架橋剤としては、従来よりシリコーン系感圧接着剤に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3等があげられる。
【0021】
また、シロキサン系架橋剤として、たとえば、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも平均2個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンが用いられる。ケイ素原子に結合した有機基としてはアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基等があげられるが、合成および取り扱いが容易なことから、メチル基が好ましい。シロキサン骨格構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が良く用いられる。
【0022】
アクリル系粘着剤としては、具体的には、少なくともアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーの共重合から得られたアクリル系ポリマーからなる粘着剤である。ここでいうアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,ブチル(メタ)アクリレート,イソアミル(メタ)アクリレート,n−ヘキシル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート,イソオクチル(メタ)アクリレート,イソノニル(メタ)アクリレート,デシシル(メタ)アクリレート,ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記アクリル系粘着剤は比較的耐熱性も高く、本発明に最も好適な粘着剤である。
【0023】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン,アクリロイルモルフォリン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)などがあげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。前記共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の70重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
【0024】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の70重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0025】
また、これらのアクリル系粘着剤には適宜な架橋剤を含有しうる。例えば一例として、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン系化合物、キレート系架橋剤などである。
架橋剤の使用量は特に制限されるものではないが、例えば、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜15重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0026】
粘着剤層は必要に応じて、タッキファイヤー、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤等の各種の添加剤等を含んでいてもよい。
【0027】
本発明において、粘着剤層面からの剥離ライナーの剥離力が1N/50mm以下であると、剥離ライナーから表面保護用粘着テープを容易に剥離することができるので作業性が向上する。また、ガラスに対する常温での初期粘着力が0.05N/20mm以下、260℃リフロー後の初期粘着力が0.50N/20mm以下であれば、表面保護用粘着テープのリワーク時やリフロー後の剥離除去時において、保護される表面から剥がしやすく、しかも保護される表面での粘着剤の糊残りを生じない。
このような性質は、粘着力が弱いシリコーン系粘着剤層、架橋密度が高いアルキル系粘着剤層によって実現され、しかもこのような粘着力を有する粘着剤によって、離型層を有しない未処理プラスチックフィルムを剥離ライナーとすることが可能となった。
【実施例】
【0028】
以下本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明し、比較例と共に性能試験例を示し、本発明の優れた効果を明示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
ポリイミドフィルム(東レデュポン社製カプトン200H:厚さ50μm)の片面に、付加反応型シリコーン系粘着剤(シリコーンゴム:シリコーンレジン=95:5)100部に白金系触媒0.5部を加えた18重量%トルエン溶液を塗布し、150℃で3分間加熱して厚さ6μmのシリコーン系粘着層を形成した。該シリコーン系粘着層上に、剥離ライナーとして離型処理していないポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS−10」東レ社製;厚さ:50μm)を貼り合わせ、表面保護用粘着テープを得た。
【0030】
〔比較例1〕
上記実施例1において、剥離ライナーとしてフルオロシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルム(商品名「MRS−50」三菱化学(株)製;厚さ:50μm)にした以外は実施例1と同様にして表面保護用粘着テープを得た。
【0031】
〔比較例2〕
上記実施例1において、剥離ライナーとしてシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルム(商品名「セラピールMD(A)(R)」東洋メタライジング(株)製;厚さ:38μm)にした以外は実施例1と同様にして表面保護用粘着テープを得た。
【0032】
〔比較例3〕
上記実施例1において、剥離ライナーを貼り合わせていないこと以外は実施例1と同様にして表面保護用粘着テープを得た。
〔実施例2〕
ポリイミドフィルム(東レデュポン社製カプトン200H:厚さ50μm)の片面に、付加反応型シリコーン系粘着剤(シリコーンゴム:シリコーンレジン=80:20)100部に白金系触媒0.5部を加えた20重量%トルエン溶液を塗布し、150℃で3分間加熱して厚さ10μmのシリコーン系粘着層を形成した。該シリコーン系粘着層上に、剥離ライナーとして離型処理していないポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS−10」東レ社製;厚さ:50μm)を貼り合わせ、表面保護用粘着テープを得た。
〔比較例4〕
上記実施例2において、剥離ライナーとしてフルオロシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルム(商品名「MRS−50」三菱化学(株)製;厚さ:50μm)にした以外は実施例1と同様にして表面保護用粘着テープを得た。
【0033】
〔表面保護用粘着テープの性能試験〕
上記実施例1および比較例1、2、3で得られた各粘着テープについて、以下に示す各試験により、表面汚染性(パーティクル)、初期粘着力、を評価したところ、表1の結果を得た。
【0034】
(1)表面汚染性(パーティクル)
半導体ウエハに粘着テープを貼付し、これをNORITAKE社製加熱装置(型番CLF-104C)を用いてTop260℃リフロー加熱後、粘着テープを剥離した。粘着テープ剥離後の該ウエハ上の1.6μm以上のパーティクルの数を表面異物検査装置(商品名「Surfscan6200」、KLA−Tencor社製)を用いて測定した。
【0035】
(2)粘着力
常温及びNORITAKE社製加熱装置(型番CLF-104C)を用いて260℃リフロー後のそれぞれの粘着力を引っ張り試験機にて測定した。試験用の被着体はガラス面とし、試験は180゜剥離、剥離速度300mm/分で行った。
【0036】
(3)剥離ライナーの剥離力
基材フィルムの背面側をステンレスに仮圧着し、引っ張り試験機にて、上記サンプルの剥離ライナー剥離力(180°剥離、剥離速度300mm/分)を測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1より明らかなように、実施例1及び比較例1〜3による常温と260℃リフロー後の耐ガラス粘着力をみると、どの例も同程度の結果となり、剥離ライナーの有無や、離型剤層の有無はこの耐ガラス粘着力には影響を及ぼさないことがわかる。
しかしながら、剥離ライナーを貼り合わせていない比較例3の粘着テープと比較して、シリコーン系離型層やフルオロシリコーン系離型層の離型処理をした剥離ライナーを用いた比較例1及び2の粘着テープは、転写異物が多くなっており、この結果によれば比較例1及び2に記載の剥離ライナーの剥離面に形成された離型剤層から、離型剤が再転写していることがわかる。
これに対し、実施例1の結果から明らかなように、剥離ライナーとして離型処理していないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた本発明の表面保護用粘着テープは、剥離ライナーを使用しない比較例3と同程度のパーティクル数を示すので、実施例1によれば離型剤の再転写が発生することなく、転写異物低減が可能であることがわかる。
実施例2及び比較例4による常温と260℃リフロー後の耐ガラス粘着力をみると、いずれの例も同程度の結果となり、剥離ライナーの有無や、離型剤層の有無はこの耐ガラス粘着力には影響を及ぼさないことがわかる。
しかしながら、剥離ライナーとして離型処理していないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた実施例2とフルオロシリコーン系離型層の離型処理をした剥離ライナーを用いた比較例4のパーティクル数を比べると、実施例2は離型剤の再転写が発生することなく、転写異物低減が可能であることがわかる。