(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に設けられる開口を開閉するドアをモータの駆動による出力軸の回転に伴って開閉作動させ、前記ドアを自動開閉させる旨の指令が生じると、前記モータの駆動とともにクラッチが接続され、そのクラッチにより前記モータの回転軸の回転力を前記出力軸に伝達し、該出力軸の回転により前記ドアを開閉作動させる一方、前記モータの非駆動時には前記クラッチが切り離され、前記出力軸と前記回転軸とを断絶し、前記ドアの手動開閉による負荷側からの前記出力軸の回転力を前記回転軸には非伝達とする車両用ドア開閉装置の制御装置であって、
前記モータの回転軸の回転数を変更させるための複数個の駆動電圧を生成する駆動電圧生成回路と、
前記モータの非駆動時において前記出力軸と前記回転軸とが断絶され前記出力軸が前記回転軸に対して空転しながら前記ドアが移動したときの該ドアの移動状態を入力し、前記ドアの移動状態を検出するドア移動状態検出回路と、
前記ドア移動状態検出回路が検出した前記ドアの移動状態に応じて前記回転軸を回転させることにより前記クラッチが接続されて回転中の前記出力軸にブレーキ力を付与するための前記駆動電圧を選択して、前記駆動電圧生成回路を介して前記モータに印加させるモータ制御回路と、
を備え、
前記モータ制御回路は、前記ドアの移動状態が予め定めた第1基準値を超えた時、前記モータを駆動して前記出力軸にブレーキ力を付与させつつ前記ドアの手動開閉による操作を禁止するドア保持モードと、
前記ドア保持モードを実行した後に実行し、前記ドアの移動状態が前記第1基準値よりも大きい予め定めた第2基準値を超えた時、前記モータを駆動して前記出力軸にブレーキ力を付与させつつ前記ドアの手動開閉による操作を許容するブレーキ制御モードと
を有することを特徴とする車両用ドア開閉装置の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すモータ11は、ブラシモータであって、
図2に示す車両に搭載されるスライドドア開閉装置1の駆動源として用いられている。スライドドア開閉装置1は、車体2の側面に沿ってスライド開閉可能に配設されたスライドドア3内に配設されている。スライドドア3は、車体2に設けられたガイドレール4に連結された連結具5にて支持されている。連結具5は、モータ11の駆動によるワイヤケーブル6の巻き取り及び送り出しが行われることによりガイドレール4に沿って移動する。この連結具5の移動によって、スライドドア3が車体2に形成された乗降口2aを開閉するようになっている。
【0036】
図1に示すように、モータ11は、モータ本体12と減速部13とからなる所謂ギヤードモータである。モータ本体12は、ヨークハウジング14、一対のマグネット15、電機子16、ブラシホルダ17及び一対のブラシ18を備えている。
【0037】
ヨークハウジング14は、有底筒状をなすとともに、その内周面には一対のマグネット15が固着されている。そして、ヨークハウジング14の底部中央には軸受19が設けられるとともに、該軸受19は、ヨークハウジング14の内部に配置された電機子16の回転軸20の基端部を回転可能に支持する。
【0038】
ヨークハウジング14の開口部14aには、径方向外側に向かって延設されたフランジ部14bが形成されるとともに、該フランジ部14bは、後述する減速部13のギヤハウジング31に連結固定されている。尚、この固定の際には、フランジ部14bは、ギヤハウジング31の開口部31aとの間にブラシホルダ17が介在された状態で同ギヤハウジング31に螺子21にて固定される。
【0039】
ブラシホルダ17は、ヨークハウジング14内において、前記回転軸20の先端側の部位を軸支する軸受22と、同回転軸20に固着された整流子23に摺接する一対のブラシ18とを保持している。また、ブラシホルダ17において、ヨークハウジング14及びギヤハウジング31の外部に突出する部位は、車体2側から延びる車体側コネクタ(図示略)が接続されるコネクタ部17aであるとともに、該コネクタ部17aの接続凹部17b内には複数本のターミナル24が露出している。
【0040】
これらターミナル24は、ブラシホルダ17にインサートされるとともに、モータ11内に備えられた後述のドアセンサ40及び前記ブラシ18等と電気的に接続されている。そして、コネクタ部17aに車体側コネクタが接続されると、車体2側に備えられる後述するECU51(
図3参照)とモータ11とが電気的に接続される。これにより、モータ11とECU51との間で、電源供給やセンサ信号等の出力が可能となる。
【0041】
前記減速部13は、ギヤハウジング31と、ウォーム軸32(従動軸)及びウォームホイール33から構成される減速機構34と、出力軸35と、クラッチ45とを有する。
ギヤハウジング31は、前記ヨークハウジング14の開口部14aと対向する開口部31aを備え、両開口部14a,31a間に前記ブラシホルダ17が介装されている。また、ギヤハウジング31には、該ギヤハウジング31の開口部31aから軸方向にクラッチ収容部31bが凹設されている。さらに、同ギヤハウジング31には、クラッチ収容部31bの底部から軸方向に延びウォーム軸32を収容する略円筒状の軸収容筒部31cと、軸収容筒部31cと繋がりウォームホイール33を収容する略円形状のホイール収容部31dとが形成されている。
【0042】
軸収容筒部31cの軸方向の両端部には、軸受36,37がそれぞれ配置されている。そして、ウォーム軸32は、その先端部が軸受37にて軸支された状態で、回転軸20と同軸上(即ち回転軸20とウォーム軸32との中心軸線が一致)となるように、軸収容筒部31c内に配置されている。このウォーム軸32の軸方向の略中央部には、螺子の歯形状をなすウォームギヤ部32aが形成されている。また、軸収容筒部31cにおけるウォーム軸32の先端側の端部には、該ウォーム軸32のスラスト荷重を受けるためのスラスト受けボール38及びスラスト受けプレート39が配置されている。
【0043】
前記ホイール収容部31dには、ウォーム軸32のウォームギヤ部32aと噛合する円板状のウォームホイール33が回転可能に収容されている。このウォームホイール33の径方向の中央部には、該ウォームホイール33と一体回転するように出力軸35が固定されている。出力軸35には、スライドドア3を開閉作動させるための前記ワイヤケーブル6(
図2参照)が掛装される駆動プーリ(図示せず)が一体回転するように連結されている。
【0044】
つまり、モータ11が駆動し回転軸20が正逆回転すると、ウォーム軸32は、クラッチ45を介して正逆回転する。そして、ウォーム軸32が正逆転すると、ウォームホイール33を介して出力軸35が正逆回転する。出力軸35の正逆回転によって、スライドドア3は、全開方向又は全閉方向に移動する。
【0045】
ちなみに、出力軸35は、スライドドア3と連動しているため、スライドドア3の移動方向に応じて正逆回転するとともに、スライドドア3の移動速度に相対した回転数となる。従って、出力軸35の回動量及び回動位置は、スライドドア3の移動量及び移動位置に相対する。
【0046】
このことから、出力軸35と連動するウォーム軸32は、出力軸35(スライドドア3)の回転方向(移動方向)に相対して正逆回転するとともに、出力軸35(スライドドア3)の回転数(移動速度)に相対した回転数となる。従って、ウォーム軸32の回動量及び回動位置は、スライドドア3の移動量及び移動位置に相対する。
【0047】
軸収容筒部31cの先端部に設けた軸受37の近傍位置には、ドアセンサ40が設けられている。ドアセンサ40は、ウォーム軸32に取着されたセンサマグネット41と、センサマグネット41と対峙するように軸収容筒部31cの内周面に取着した2個の第1及び第2ホール素子42a,42bを有している。
【0048】
センサマグネット41は、周方向にN極とS極が等ピッチで多数着磁されたリング状のマグネットであって、ウォーム軸32と一体回転するように、同ウォーム軸32に装着されている。
【0049】
軸収容筒部31cの内周面に取着した第1及び第2ホール素子42a,42bは、センサマグネット41のN極に対峙した時にはプラス電位(Hレベル)、また、センサマグネット41のS極に対峙した時にはゼロ電位(Lレベル)となる第1及び第2パルス検出信号SGa,SGbを出力する。
【0050】
また、第1ホール素子42aと第2ホール素子42bは、第1パルス検出信号SGaと第2パルス検出信号SGbの位相が90度ずれて出力されるように、相対配置されている。従って、第1ホール素子42aの第1パルス検出信号SGaと第2ホール素子42bの第2パルス検出信号SGbの位相が90度ずれていることによって、ウォーム軸32の回転方向、すなわち、スライドドア3の移動方向が検出できる。
【0051】
これは、第1パルス検出信号SGaがLレベルからHレベルに立ち上がった時の、第2パルス検出信号SGbの状態がLレベルにあるかHレベルにあるかによって、ウォーム軸32の回転方向(スライドドア3の移動方向)が検出できる。また、第1パルス検出信号SGaの単位当たりのパルス数をカウントすることによって、ウォーム軸32の回転数(スライドドア3の移動速度)が検出できる。
【0052】
そして、後述する制御回路52(
図3参照)において、第1及び第2パルス検出信号SGa,SGbに基づいて、ウォーム軸32の回転方向及び回転数を算出するようになっている。さらに、制御回路52は、算出したウォーム軸32の回転方向及び回転数に基づいて、スライドドア3の移動方向及び移動速度を算出するようになっている。
【0053】
同様に、後述する制御回路52において、第1パルス検出信号SGaのパルス数をカウントし、そのカウント数からウォーム軸32の回動量を算出するとともに、その回動量に基づいてウォーム軸32の回動位置を算出するようになっている。
【0054】
さらに、制御回路52は、算出したウォーム軸32の回動量及び回動位置に基づいて、スライドドア3の移動量および移動位置を算出するようになっている。
前記クラッチ収容部31bには、ウォーム軸32と回転軸20との間に配置されてウォーム軸32と回転軸20との連結・断絶を行う機械式のクラッチ45が収容されている。
【0055】
機械式のクラッチ45は、回転軸20と一体的に回転する回転軸側可動部材(図示せず)と、ウォーム軸32と一体的に回転するウォーム軸側従動部材(図示せず)が設けられている。また、回転軸側可動部材とウォーム軸側従動部材との間には、動力伝達部材(図示せず)が設けられている。動力伝達部材は、回転軸側可動部材に対して、周方向に移動不能かつ径方向に移動可能に配設されている。動力伝達部材は、弾性部材(スプリング)にて、回転軸側可動部材の外周面から突出しないように弾性力が付与されている。
【0056】
そして、回転軸20とともに回転軸側可動部材が回転すると、その回転によって動力伝達部材に遠心力が付与される。遠心力が付与された動力伝達部材は、スプリングの弾性力に抗して径方向外側に移動し、回転軸側可動部材の外周面から突出する。動力伝達部材が回転軸側可動部材の外周面から突出すると、ウォーム軸従動部材の回転軸側可動部材の外周面と相対向する内側面に形成した嵌合凹部に係合する。
【0057】
その結果、ウォーム軸従動部材(ウォーム軸32)は、動力伝達部材を介して回転軸側可動部材(回転軸20)と連結する。
反対に、回転軸20(回転軸側可動部材)が回転しないとき、動力伝達部材は遠心力が付与されない。そのため、動力伝達部材は、スプリングの弾性力によって回転軸側可動部材の外周面から突出することはできず、ウォーム軸従動部材の内側面に形成した嵌合凹部に係合しない。これによって、ウォーム軸従動部材(ウォーム軸32)と回転軸側可動部材(回転軸20)とが断絶される。
【0058】
従って、ウォーム軸側従動部材は、ウォーム軸32の回転に伴って、回転軸側可動部材(回転軸20)に対して空転する。その結果、出力軸35側からウォーム軸32を回転させたとき、出力軸35側からみて回転負荷となる回転軸20がウォーム軸32から切り離されているため、該出力軸35からの回転が容易となる。つまり、手動によるスライドドア3の開閉作動が大きな操作力を必要としない。
【0059】
このように、本実施形態の機械式のクラッチ45は、回転軸20の有無によって、ウォーム軸32と回転軸20との連結・断絶を行う。
なお、機械式のクラッチ45の詳細は、例えば、特許文献2で示した公報を参照すれば、容易にその具体的な原理構成が理解されるため、さらなる詳細な説明は説明の便宜上省略する。
【0060】
次に、上記のように構成したスライドドア開閉装置1を制御するスライドドア開閉制御装置50の電気的構成について
図3に従って説明する。
図3に示すように、スライドドア開閉制御装置50は、スライドドア開閉装置1のモータ11を駆動制御するECU(電子制御ユニット)51を備えている。
【0061】
ECU51は、制御回路52、オープンリレー53及びクローズリレー54を備えている。また、ECU51は、制御回路52からの駆動制御信号CT1に基づいて、バッテリーBの電源電圧Vbをモータ11に供給する駆動電圧Vdに調整するPWM(パルス幅変調)回路55と、制御回路52からの駆動制御信号CT2に基づいてオープンリレー53及びクローズリレー54を切り替え駆動させるリレー駆動回路56とを備えている。
【0062】
制御回路52は、ワンチップマイコンよりなり、1つのチップ上に制御部(CPU)52a、ROM52b、RAM52c、タイマ52d、各種入出力インターフェース等が形成されている。そして、制御回路52(制御部52a)は、ROM52bに記憶されたプログラムに基づいて、スライドドア開閉装置1のモータ11を駆動制御するための演算処理を実行する。このとき、制御回路52(制御部52a)は、演算処理を実行して行く際、その時々に演算した演算処理結果等をRAM52cに一時記憶しながら演算処理を実行する。
【0063】
制御回路52は、スライドドア開閉装置1に設けられたドアセンサ40と接続されている。制御回路52は、ドアセンサ40の第1及び第2ホール素子42a,42bからの第1及び第2パルス検出信号SGa,SGbを入力する。制御回路52は、第1及び第2パルス検出信号SGa,SGbに基づいて、その時々のウォーム軸32の回転方向、回転数、回動量及び回動位置を演算し、その演算結果から、スライドドア3の移動方向、移動速度、移動量及び移動位置を逐次演算する。
【0064】
制御回路52は、図示しない外部装置から、スライドドア3を「全閉位置」から「全開位置」に移動させるための開信号STo及びスライドドア3を「全開位置」から「全閉位置」に移動させるための閉信号STcが入力される。そして、制御回路52は、開信号SToを入力したとき、スライドドア3を「全開位置」に移動させるべくモータ11を駆動制御する。反対に、制御回路52は、閉信号STcを入力したとき、スライドドア3を「全閉位置」に移動させるべくモータ11を駆動制御する。
【0065】
制御回路52は、スライドドア3を移動させることが問題となる異常状態を示す異常信号SXを出力する各種センサ群58と接続されている。制御回路52は、各種センサ群58から異常信号SXを入力したとき、一旦、モータ11の印加電圧を遮断した後、その時のスライドドア3の移動状態に基づいて、モータ11を駆動制御する。
【0066】
詳述すると、スライドドア3が「全閉位置」又は「全開位置」にあって、ドアロック部材と係合されている状態で、制御回路52に異常信号SXを入力された時、制御回路52は、モータ11に印加している駆動電圧Vdを遮断し、手動でスライドドア3の開閉を可能にする。
【0067】
すなわち、回転軸20の回転を停止し、クラッチ45にて、回転軸20とウォーム軸32を非連結状態にする。そして、出力軸35からの回転を容易にして、手動によるスライドドア3の開閉を可能にする。
【0068】
また、モータ11の駆動にてスライドドア3が「全閉位置」又は「全開位置」に向かって移動中に、制御回路52に異常信号SXを入力された時、制御回路52は、一旦、モータ11に印加している駆動電圧Vdを遮断する。遮断した後、制御回路52は、その時のスライドドア3の移動状態に応じて、出力軸35にブレーキ力をモータ11の回転軸20の回転によって付与させるために、PWM回路55を介してモータ11を駆動制御するようになっている。
【0069】
なお、スライドドア3を移動させることが問題となる異常状態について、2、3例示すると、スライドドアを自動開閉モードと手動モードに切り替えるメインスイッチ(図示せず)が、オン状態にあったのがスライドドア3を自動開閉している途中において、オフ状態にされたり、ドライバが停止させている車両を停止させているにも拘わらず、車両が意図しない動きをしたり、又、スライドドアを自動で全開位置に移動させている途中において、燃料タンクの給油口の蓋が開いたりする等、がある。
【0070】
制御回路52は、PWM回路55と接続されている。制御回路52は、PWM回路55に駆動制御信号CT1を出力する。PWM回路55は、制御回路52からの駆動制御信号CT1に基づいて、バッテリーBの電源電圧Vbを使って、モータ11に印加する駆動電圧Vdを生成する。駆動電圧Vdは、複数個の電圧値の第1〜第4駆動電圧Vd1〜Vd4が生成される。
【0071】
本実施形態では、
図7の時間T0に示す9.6ボルトの第1駆動電圧Vd1を生成するとともに、時間T1で示す5ボルトの第2駆動電圧Vd2を生成する。さらに、
図7の時間Taに示す9ボルトの第3駆動電圧Vd3を生成するとともに、時間Tbで示す3ボルトの第4駆動電圧Vd4を生成する。
【0072】
制御回路52は、リレー駆動回路56と接続され、リレー駆動回路56に駆動制御信号CT2を出力する。リレー駆動回路56は、制御回路52からの駆動制御信号CT2に基づいて、オープン及びクローズリレー53,54を切り替え制御する。
【0073】
オープンリレー53は、共通接点53c、a接点53a、b接点53b及び可動端子53dを備えている。可動端子53dは、リレー駆動回路56の制御によって可動して、該共通接点53cとa接点53a、又は、共通接点53cとb接点53bのいずれかと電気的に接続させるようになっている。
【0074】
クローズリレー54は、共通接点54c、a接点54a、b接点54b及び可動端子54dを備えている。可動端子54dは、リレー駆動回路56の制御によって可動して、該共通接点54cとa接点54a、又は、共通接点54cとb接点54bのいずれかと電気的に接続させるようになっている。
【0075】
オープンリレー53の共通接点53cは、モータ11の一方のブラシ18と電気的に接続され、クローズリレー54の共通接点54cは、モータ11の他方のブラシ18と電気的に接続されている。オープン及びクローズリレー53,54のa接点53a,54aは、バッテリーBのプラス端子と電気的に接続されている。オープン及びクローズリレー53,54のb接点53b,54bは、PWM回路55を介してアースされている。
【0076】
従って、オープン及びクローズリレー53,54の可動端子53d,54dが共にb接点53b,54bに接続されるとき、モータ11への電源電圧Vb(PWM回路55が生成した駆動電圧Vd)が遮断される。
【0077】
また、オープンリレー53の可動端子53dがa接点53aに接続され、クローズリレー54の可動端子54dがb接点54bに接続されるとき、バッテリーBからの電流は、オープンリレー53→モータ11→クローズリレー54→PWM回路55と流れて、モータ11は正転駆動する。
【0078】
つまり、制御回路52に開信号SToが入力されると、制御回路52は、リレー駆動回路56を介してオープンリレー53の可動端子53dをa接点53aに接続させ、クローズリレー54の可動端子54dをb接点54bに接続させる。そして、モータ11を正転駆動させて、スライドドア3を「全開位置」まで移動させる。
【0079】
このとき、制御回路52は、PWM回路55を制御して、スライドドア3を「全開位置」に到達するまで、駆動電圧Vdを9.6ボルトの第1駆動電圧Vd1にして、同第1駆動電圧Vd1をモータ11に印加するようになっている。
【0080】
また、制御回路52は、モータ11を駆動してスライドドア3を「全閉位置」から「全開位置」に向かって移動中に、各種センサ群58から異常信号SXが入力された時、スライドドア3の状態によって、PWM回路55を制御して、駆動電圧Vdを5ボルトの第2駆動電圧Vd2にして、同第1駆動電圧Vd1をモータ11に印加するようになっている。この時、制御回路52は、リレー駆動回路56に駆動制御信号CT2を出力する。リレー駆動回路56は、制御回路52からの駆動制御信号CT2に基づいて、オープンリレー53の可動端子53dをa接点53aとb接点53bの間に入り切りさせる。
【0081】
これによって、モータ11に印加される駆動電圧Vd(第2駆動電圧Vd2)は、
図7の時間T1において、パルス幅変調、すなわちデュティー制御されてモータ11に印加される。従って、モータ11の回転軸20の回転数は、モータ11が第1駆動電圧Vd1で駆動されている時の回転数よりも小さくなる。
【0082】
つまり、「全閉位置」に向かって移動中に、各種センサ群58から異常信号SXが入力され、モータ11の給電が停止しクラッチ45が断絶されたとき、スライドドア3が意図しない方向に移動しないように、出力軸35に付与するブレーキ力を、モータ11の回転数にて制御する。
【0083】
一方、オープンリレー53の可動端子53dがb接点53bに接続され、クローズリレー54の可動端子54dがa接点54aに接続されるとき、バッテリーBからの電流は、クローズリレー54→モータ11→オープンリレー53→PWM回路55と流れて、モータ11は逆転駆動する。
【0084】
つまり、スライドドア3が「全開位置」にあるとき、制御回路52に閉信号STcが入力されると、制御回路52は、リレー駆動回路56を介してクローズリレー54の可動端子53dをb接点54bに接続させ、クローズリレー54の可動端子54dをa接点54aに接続させる。そして、モータ11を逆転駆動させて、スライドドア3を「全閉位置」まで移動させる。
【0085】
このとき、同様に、制御回路52は、PWM回路55を制御して、スライドドア3を「全閉位置」に到達するまで、駆動電圧Vdを9.6ボルトの第1駆動電圧Vd1にして、同第1駆動電圧Vd1をモータ11に印加するようになっている。
【0086】
また、同様に、制御回路52は、モータ11を駆動してスライドドア3を「全開位置」から「全閉位置」に向かって移動中に、異常信号SXが入力された時、スライドドア3の状態によって、PWM回路55を制御して、駆動電圧Vdを5ボルトの第2駆動電圧Vd2にして、同第1駆動電圧Vd1をモータ11に印加する。この時、同様に、制御回路52は、リレー駆動回路56を制御して、クローズリレー54の可動端子54dをa接点54aとb接点54bの間に入り切りさせる。
【0087】
これによって、モータ11に印加される駆動電圧Vd(第2駆動電圧Vd2)は、
図7の時間T1において、パルス幅変調、すなわちデュティー制御されてモータ11に印加される。従って、モータ11の回転軸20の回転数は、モータ11が第1駆動電圧Vd1で駆動されている時の回転数よりも小さくなる。
【0088】
つまり、「全閉位置」に向かって移動中に、各種センサ群58から異常信号SXが入力され、モータ11の給電が停止しクラッチ45が断絶されたとき、スライドドア3が意図しない方向に移動しないように、出力軸35に付与するブレーキ力を、モータ11の回転数にて制御する。
【0089】
制御回路52は、車両の室内に設けた報知器59と接続されている。制御回路52は、スライドドア3の自動開閉が開始されたとき、その開閉動作の報知するために、本実施形態では、2秒間、報知器59を鳴動させるようになっている。また、制御回路52は、各種センサ群58から異常信号SXが入力されクラッチ45が断絶されて、出力軸35にブレーキ力を付与するためにモータ11の回転数を制御する際に、報知器59を鳴らして報知するようになっている。
【0090】
次に、上記のように構成したスライドドア開閉制御装置50の作用を説明する。ここでは、制御回路52内のROM52bに記憶したプログラムに基づく制御回路52(制御部52a)の処理動作を説明する
図4〜
図6に示すフローチャートと、
図7に示すウォーム軸32の回転数Nn、駆動電圧Vd、スライドドア3の状態との関係を示す図に従って説明する。
【0091】
なお、
図7において、L1は、スライドドア3が全閉位置から全開位置に移動する際の位置推移線であり、L2はウォーム軸32の回転数Nnの推移を示す回転数推移線である。また、L3はモータ11に印加する駆動電圧Vdの推移を示す電圧推移線であり、L4はモータ11に流れる駆動電流の電流推移線である。
【0092】
今、車両が坂道に停車した状態であって、その車両の前側が坂の上側を向いて停止した状態にあるとする。また、スライドドア3が「全閉位置」にある状態とする。
この状態で、
図7に示す時刻t1において、図示しない外部装置から開信号SToが入力されると、制御回路52は、ステップS1に移り、スライドドア3を開方向に移動させるスライドドア開閉処理動作を実行する。
(ステップS1)
制御回路52は、ステップ1において、モータ11を正転駆動させる。このとき、制御回路52は、開信号SToに基づいて、PWM回路55を制御して駆動電圧Vdを第1駆動電圧Vd1にするとともに、リレー駆動回路56を介してオープンリレー及びクローズリレー54を制御してモータ11を正転駆動させる。従って、モータ11は、9.6ボルトの第1駆動電圧Vd1が印加されて正転駆動を開始する。つまり、スライドドア3が「全開位置」に向かって移動を開始する。
(ステップS2、ステップS3、ステップS4)
モータ11が正転駆動を開始すると、制御回路52はステップS2に移り、異常信号SXの有無を検出する。制御回路52は、異常信号SXがない場合(ステップS2でNO)、ステップS3に移り、スライドドア3が「全開位置」に到達したか判断する。
【0093】
そして、制御回路52は、スライドドア3が「全開位置」に到達していないと判断すると(ステップS3でNO)、ステップS2に戻り、異常信号SXの有無を判断する。つまり、制御回路52は、スライドドア3が「全開位置」に到達するまで、常時、異常信号SXを検出しながらこの処理動作を繰り返す。
【0094】
やがて、スライドドア3が「全開位置」に到達したと判断すると(ステップS3でYES)、制御回路52は、ステップS4に移り、モータ11への給電を停止しモータ11の駆動を停止させる。そして、制御回路52は、スライドドア3を自動で「全開位置」へ移動させる開閉処理動作を終了する。
【0095】
一方、モータ11の駆動によってスライドドア3が「全開位置」に向かって移動中に、異常信号SXが出力されると、制御回路52は、異常信号SXがあったと判断し(ステップS2でYES)、ステップS5に移る。
(ステップS5)
ステップS5に移ると、制御回路52は、駆動電圧Vdを0ボルトにしてモータ11の駆動を一旦停止させた後、直ちに、ステップS6に移り、ドア保持モードの処理動作を実行する。
【0096】
ドア保持モードは、手動でスライドドア3を容易に移動操作できないように、予め定めた時間T1経過するまで出力軸35にブレーキ力を付与するモードである。つまり、手動でのスライドドア3の操作を禁止させるモードである。
(ステップS6)
ステップS6のドア保持モードの処理動作は、
図5に示すように、まず、制御回路52は、ステップS6−1において、報知器59を鳴動させるとともに、タイマ52dの計時動作を開始させた後、ステップS6−2に移る。
(ステップS6−2)
ステップS6−2に移ると、制御回路52は、モータ11の駆動が一旦停止された状態(クラッチ45が切り離されている状態)において、その時のウォーム軸32の回転数Nnが予め定めた第1基準回転数Nk1より大きいかどうか判断する(ステップS6−2)。
【0097】
ここで、制御回路52は、ウォーム軸32の回転数Nnを、ドアセンサ40からの第1パルス検出信号SGaに基づいて算出する。
また、第1基準回転数Nk1は、スライドドア3の移動速度に基づいて決められた閾値であって、予めROM52bに記憶されている。
【0098】
第1基準回転数Nk1は、以下のように設定されている。つまり、この時点ではクラッチ45が切られ、坂道で車両を停止させていることから、スライドドア3は、手動操作以外に、スライドドア3の自重で「全開位置」に向かって移動する。そこで、クラッチ45が切られた時(つまり、モータ11による自動開閉から手動操作に切り替えられた時)には、このスライドドア3の移動を制限させる必要がある。
【0099】
そして、この制限を加える必要があるスライドドア3の移動速度をウォーム軸32の回転数に置き替えて、制限を加える必要があるスライドドア3の移動速度に対する第1基準回転数Nk1を試験、実験等で求め、その求めた第1基準回転数Nk1をROM52bに記憶させている。
【0100】
本実施形態では、第1基準回転数Nk1を20rpmとしている。ちなみに、第1基準回転数Nk1(20rpm)でのウォーム軸32の回転は、スライドドア3は1秒間で5センチ程度移動させることのできる回転数に相当するため、スライドドア3はそれ以上の速さで移動することモータ11に負荷により制限される。
【0101】
そして、ステップS6−2において、ウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1(20rpm)より大きい場合(ステップS6−2でYES)、制御回路52は、ステップS6−3に移る。
(ステップS6−3)
制御回路52は、ステップS6−3に移ると、PWM回路55を制御して、駆動電圧Vdを5ボルトの第2駆動電圧Vd2にして、モータ11に印加させる。
【0102】
このとき、制御回路52は、リレー駆動回路56を介して、ウォーム軸32(出力軸45)がその時回転する回転方向と同じ回転方向(順方向)にモータ11を回転させるためにオープンリレー53及びクローズリレー54を切り替え作動させる。
【0103】
また、制御回路52は、リレー駆動回路56を介して、オープンリレー53の可動端子53dをa接点53aとb接点53bとの間で切り替え制御する。これによって、モータ11には、
図7に示すように、5ボルトの第2駆動電圧Vd2がPWM変調(デュティー制御)されて印加される。
【0104】
ちなみに、本実施形態では、50ミリ秒間、可動端子53dをa接点53aに接続した後、50ミリ秒間、可動端子53dをb接点53bに接続する切り替え動作を繰り返すようになっている。
【0105】
そして、モータ11は、デュティー制御された第2駆動電圧Vd2の印加にて駆動制御される。このモータ11の駆動(回転軸20の回転)によって、クラッチ45は接続し、回転軸20とウォーム軸32(出力軸35)は連結状態となる。
【0106】
この時、モータ11はデュティー制御された5ボルトの第2駆動電圧Vd2が印加されて駆動されていることから、回転軸20の回転数は、第1基準回転数Nk1より小さくなるように制御される。従って、その時のウォーム軸32の回転数Nnよりも小さくなるため、ウォーム軸32(出力軸35)には、回転軸20の回転力が大きなブレーキ力となって付加される。その結果、この出力軸35に付加されるブレーキ力は、手動でスライドドア3を開閉操作することのできないブレーキ力となる。
【0107】
また、この時、回転軸20の回転方向は、回転するウォーム軸32と同じ方向に回転しているため、クラッチ45の接続時の衝撃を抑制する。
(ステップS6−4)
続いて、ステップS6−4に移り、制御回路52は、ステップS6−1で計時動作を開始したタイマ52dが予め定めた第1基準時間T1(例えば、2秒)を経過したどうか判断する。そして、第1基準時間T1を経過していない場合(ステップS6−4でNO)、制御回路52は、ステップS6−2に戻る。従って、制御回路52は、再び、ウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1より大きいかどうか判断する。そして、制御回路52は、ウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1より大きい場合(ステップS6−2でYES)、ステップS6−3に移り、モータ11の回転数を制御して出力軸35にブレーキ力を付与し続ける。
【0108】
つまり、第1基準時間T1を経過するまでに、ウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1以下にならない場合(ステップS6−2でNO)には、出力軸35にブレーキ力が付与され続けられ、手動による開操作ができないようになっている、
そして、回転軸20の回転制御によってウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1以下になった場合(ステップS6−2でNO)、制御回路52は、ステップS6−4に移る。この時、制御回路52は、モータ11への第2駆動電圧Vd2の印加を停止(モータ11への給電を遮断)した後、ステップS6−4に移り、この状態を第1基準時間T1が経過するまで維持する。
【0109】
なお、制御回路52は、ステップS6−1からステップS6−2に移った際、ウォーム軸32の回転数Nnが第1基準回転数Nk1以下になっている場合(ステップS6−2でNO)、ステップS6−4に移り、第1基準時間T1が経過するまでモータ11への給電を遮断し続ける。
(ステップS6−5)
やがて、タイマ52dが第1基準時間T1を計時すると、制御回路52は、ステップS6−5に移り、報知器59の鳴動を停止し、ドライバにドア保持処理が終了したことを報知した後、ドア保持モードの処理動作は終了する。
【0110】
従って、ドア保持モードでは、何らかの原因で、スライドドア3を自動で全開方向に移動中に、自動から手動に切り替わって、スライドドア3が自重で傾斜に沿って移動を行おうとしても、移動が制限される。
(ステップS7)
制御回路52は、ドア保持モードの処理動作が終了すると、ステップS7に移り、ブレーキ制御モードの処理を実行する。
【0111】
ブレーキ制御モードは、ドア保持モードが手動でのスライドドア3の操作を禁止させるのに対して、スライドドア3の手動による開閉動作を許容にするモードである。このブレーキ制御モードでは、ウォーム軸32(出力軸35)が所定の回転数(第2基準回転数Nk2)を超えて回転するとき、モータ11の回転軸20の回転数を制御して、ウォーム軸32(出力軸35)にブレーキ力を付与する制御を行う。
(ステップS7−1)
ブレーキ制御モードの処理動作は、
図6に示すように、まず、制御回路52は、ステップS7−1において、タイマ52dの計時動作を開始させた後、ステップS7−2に移り、その時のウォーム軸32の回転数Nnが予め定めた第2基準回転数Nk2より大きいかどうか判断する。
【0112】
第2基準回転数Nk2は、スライドドア3の移動速度に基づいて決められた閾値であって、予めROM52bに記憶されている。第2基準回転数Nk2は、前記第1基準回転数Nk1よりも大きい値に設定されている。
【0113】
その理由は、ブレーキ制御モードでは、ドア保持モードと相違して、手動操作が可能な制御であるため、第2基準回転数Nk2を第1基準回転数Nk1よりも大きい値にして、ブレーキ力の付与するタイミングを遅らせ、手動操作を可能にするためである。そして、第2基準回転数Nk2も、第1基準回転数Nk1と同様に、制限を加える必要があるスライドドア3の移動速度に対する第2基準回転数Nk2を試験、実験等で求め、その求めた第2基準回転数Nk2をROM52bに記憶させている。
【0114】
本実施形態では、第2基準回転数Nk2を80rpmとしている。ちなみに、第2基準回転数Nk2でのウォーム軸32の回転は、スライドドア3は1秒間で20センチ程度移動させることのできる回転数に相当する。
【0115】
そして、ステップS7−2において、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2より大きい場合(ステップS7−2でYES)、制御回路52は、ステップS7−3に移り第1制御モードの処理を実行する。つまり、制御回路52は、スライドドア3の移動速度が手動動作させるには、制限を加える必要のある速度と判断して、モータ11の回転数を制御して出力軸35にブレーキ力を付与するためのステップS7−3の処理に移る。
(ステップS7−3)
制御回路52は、ステップS7−3に移ると、モータ11の回転軸20の回転数が第2基準回転数Nk2となるように、PWM回路55を制御して、駆動電圧Vdを9ボルトの第3駆動電圧Vd3にする。また、このとき、制御回路52は、リレー駆動回路56を介して、ウォーム軸32(出力軸45)がその時回転する回転方向と同じ回転方向(順方向)にモータ11を回転させるためにオープンリレー53及びクローズリレー54を切り替え作動する。
【0116】
そして、この状態を時間Ta(例えば、100ミリ秒)継続させる。従って、モータ11に9ボルトの第3駆動電圧Vd3が印加されて、回転軸20の回転数は素早く第2基準回転数Nk2となる。その結果、回転軸20の回転数が、その時のウォーム軸32の回転数Nnである第2基準回転数Nk2又はそれに近い回転数と同程度となることから、機械式のクラッチ45がスムーズに接続状態となる。
(ステップS7−4)
時間Taが経過すると、制御回路52は、ステップS7−4に移り第2制御モードの処理を実行する。制御回路52は、PWM回路55を制御して、駆動電圧Vdを3ボルトの第4駆動電圧Vd4にする。そして、この状態を時間Tb(例えば、300ミリ秒)継続させた後、モータ11への給電を停止する。
【0117】
従って、モータ11は3ボルトの低い電圧の第4駆動電圧Vd4が印加されて駆動されることから、回転軸20の回転数はその時のウォーム軸32の回転数Nn(第2基準回転数Nk2)よりも小さくなる。これによって、第4駆動電圧Vd4が印加されている時間Tbの間、ウォーム軸32(出力軸35)は、回転軸20の回転力によるブレーキ力が付与される。
【0118】
つまり、ステップS7−3の第1制御モードの処理において、モータ11に9ボルトの高い第3駆動電圧Vd3を印加して、回転軸20をウォーム軸32の回転数Nnを第2基準回転数Nk2になるように素早く上げる。これによって、回転軸20とウォーム軸32の回転数を合わせ、機械式のクラッチ45をスムーズに接続させる。
【0119】
続いて、ステップS7−4の第2制御モードの処理において、モータ11に3ボルトの低い第4駆動電圧Vd4を印加して、回転軸20をウォーム軸32の回転数Nnを第2基準回転数Nk2以下に下げる。そして、回転軸20の回転力にて、ウォーム軸32(出力軸35)にブレーキ力を付与する。
【0120】
なお、時間Tbのモータ11への第4駆動電圧Vd4の印加が経過するとき、オープンリレー53の可動端子53dをクローズリレー54の可動端子54dと合わせる。つまり、クローズリレー54の可動端子54dはb接点54bに接続されているため、オープンリレー53の可動端子53dをb接点53bに接続する。これによって、モータ11の一対のブラシ18が短絡し、モータ電流は
図7に示すように、一瞬逆方向に流れ、モータ11はショートブレーキがかかり、回転軸20の回転はさらに下がる。
(ステップS7−5)
続いて、ステップS7−5において、制御回路52は、ステップS7−1で計時動作を開始したタイマ52dが予め定めた第2基準時間T2(例えば、8秒)を経過したどうか判断する。そして、第2基準時間T2を経過していない場合(ステップS7−5でNO)、制御回路52は、ステップS7−2に戻る。従って、制御回路52は、再び、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2より大きいかどうか判断する。そして、制御回路52は、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2より大きい場合(ステップS7−2でYES)、ステップS7−3、ステップS7−4に移り、モータ11の回転数を制御して出力軸35にブレーキ力を付与し続ける。
【0121】
つまり、第2基準時間T2を経過するまでに、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2を超える毎に(ステップS7−2でYES)には、出力軸35にブレーキ力が付与され続けられる。
【0122】
一方、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2以下になった場合(ステップS7−2でNO)、制御回路52は、ステップS7−5に移る。この時、制御回路52は、モータ11への駆動電圧Vdの給電を遮断した状態にあるので、回転数Nnが第2基準回転数Nk2を超えない限り、この状態を第2基準時間T2が経過するまで維持する。
【0123】
従って、スライドドア3の手動による操作は、機械式のクラッチ45が切れた状態となるため、可能となる。
やがて、タイマ52dが第2基準時間T2を計時すると(ステップS7−5でYES)、制御回路52は、ブレーキ制御モードの終了し、異常信号SXの検出時の開閉処理動作を終了する。
【0124】
次に、上記のように構成した第1実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、モータ11を駆動して、スライドドア3を自動的に移動させているときに、異常信号SXが検出されると、モータ11の給電を停止し機械式のクラッチ45を切り離し、スライドドア3の操作が自動から手動に切り替わるようにした。
【0125】
そして、スライドドア3の操作が自動から手動に切り替わった時、スライドドア3の不意の移動に伴って、ウォーム軸32が第1基準回転数Nk1を超える回転をしたとき、モータ11に第2駆動電圧Vd2を印加して、回転軸20の回転数をその時のウォーム軸32の回転数Nnよりも小さくなるように制御した。
【0126】
そして、回転軸20の回転力を、ウォーム軸32(出力軸35)のブレーキ力として付与した。しかも、手動でスライドドア3を開閉操作することのできないブレーキ力をこの出力軸35に付加した。
【0127】
つまり、異常信号SXが出力されて自動開閉から手動操作切り替わった場合、時間T1経過するまで、手動でスライドドア3を容易に移動操作できないように、出力軸35にブレーキ力を付与するドア保持モード(ステップS6)を実行するようにした。
【0128】
従って、例えば、坂道でスライドドアが自動開閉されている途中に、異常信号SXが出力されて自動開閉から手動操作切り替わった場合、スライドドア3が不意に移動することを未然に防止できる。
【0129】
(2)上記実施形態によれば、ドア保持モード(ステップS6)を実行した後、ブレーキ制御モード(ステップS7)を実行してモータ11への給電を停止して、スライドドア3の手動による開閉動作を可能にした。そして、ウォーム軸32が第1基準回転数Nk1より大きい第2基準回転数Nk2を超えて回転するとき、モータ11の回転軸20の回転数を制御して、ウォーム軸32(出力軸35)にブレーキ力を付与するようにした。
【0130】
従って、ドア保持モードを実行後は、手動操作が可能となる。しかも、スライドドア3が移動速度が所定以上になると(ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2を超えると)にウォーム軸32(出力軸35)にブレーキ力がかかるため、スライドドア3が不意に移動することはない。
【0131】
(3)上記実施形態によれば、ドア保持モード及びブレーキ制御モードにおいて、回転停止している回転軸20を回転させて、出力軸35にブレーキ力を付与する際、回転するウォーム軸32と同じ方向に回転させるようにした。従って、機械式のクラッチ45の接続時の衝撃を抑制することができる。
【0132】
(4)上記実施形態によれば、ブレーキ制御モードに第1制御モード(ステップS7−3)と第2制御モード(ステップS7−4)を設けた。そして、第1制御モードにおいて、ウォーム軸32の回転数Nnが第2基準回転数Nk2を超えるとき、モータ11に9ボルトの高い第3駆動電圧Vd3を印加して、回転軸20をウォーム軸32の回転数Nnを第2基準回転数Nk2になるように素早く上げるようにした。従って、回転軸20とウォーム軸32の回転数が合うため、機械式クラッチ45は小さな衝撃でスムーズに接続する。
【0133】
その後、第2制御モードにおいて、モータ11に3ボルトの低い第4駆動電圧Vd4を印加して、回転軸20をウォーム軸32の回転数Nnを第2基準回転数Nk2以下に下げるようにした。従って、スムーズに接続されたクラッチ45を介して、回転軸20の回転力を、ウォーム軸32(出力軸35)のブレーキ力として、効率よく付与することができる。
【0134】
(5)上記実施形態によれば、ブレーキ制御モード(第2制御モード)において、第4駆動電圧Vd4を印加してウォーム軸32(出力軸35)にブレーキ力を付与する時間である時間Tb経過した後、モータ11の一対のブラシ18を短絡させ、モータ11にショートブレーキを発生させるようにした。従って、スライドドア3の不意の移動を短時間で停止させることができる。
【0135】
(6)上記実施形態によれば、ドア保持モードにおいて、ドア保持モードを実行している間、報知器59を鳴動させるようにした。従って、ドライバ等は、報知器59を鳴動によって、自動でスライドドア3を自動開閉させている途中で、異常信号SXが検出されて、スライドドア3が手動での操作に切り替わってスライドドア3が不意に動きを開始したことを、認識することができる。
【0136】
しかも、モータ11に印加する第3駆動電圧Vd3をデュティー制御した断続的に印加して、回転軸20を回転制御した。従って、スライドドア3の挙動が断続的となり、スライドドア3が手動での操作に切り替わってスライドドア3が不意に動きを開始したことを、ドライバ等に認識させることができる。
【0137】
(7)上記実施形態によれば、機械式のクラッチ45を、モータ11の回転軸20と減速機構34のウォーム軸32との間に設けた。従って、クラッチ45は、減速機構34によって減速される前の位置に設けられることで、大きなトルクを受けないことから小型化でき、モータ11全体を小さくすることができる。
【0138】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記第1実施形態では、制御回路52は、ドア保持モード(ステップS6)とブレーキ制御モード(ステップS7)の2つのモードを実行したが、いずれか一方を省略して実施してもよい。
【0139】
○上記第1実施形態では、スライドドア3の移動状態の検出を、ウォーム軸32の回転数Nnで検出したがこれに限定されるものではない。例えば、出力軸35の回転数を検出したり、スライドドア3の移動速度を直接検出したりして実施してもよい。
【0140】
○上記第1実施形態では、スライドドア3の移動状態として、ウォーム軸32の回転数Nn、即ち、スライドドア3の移動速度であったがこれに限定されるものではなく、スライドドア3の移動状態として、スライドドア3の移動方向であってもよい。
【0141】
この場合、スライドドア3の移動方向を直接検出したり、ウォーム軸32又は出力軸35の回転方向を検出したりして実施してもよい。
○上記第1実施形態では、スライドドア3の移動状態として、ウォーム軸32の回転数Nn、即ち、スライドドア3の移動速度であったがこれに限定されるものではなく、スライドドア3の移動状態として、スライドドア3の位置であってもよい。
【0142】
例えば、自動から手動に切り替わった時の、スライドドア3の位置が、「全閉位置」に近い位置で発生したとき、第1基準回転数Nk1及び第2基準回転数Nk2の値を共に小さくし、素早く出力軸35にブレーキ力を付与させて、不意の動きを制限し挟み込みを防止するようにしてもよい。反対に、スライドドア3の位置が、「全閉位置」から遠い位置で発生したとき、第1基準回転数Nk1及び第2基準回転数Nk2の値を共に大きくし、ゆっくりしたタイミングで出力軸35にブレーキ力を付与して、不意の動きを制限し挟み込みを防止するようにしてもよい。
【0143】
つまり、スライドドア3の位置に応じて第1基準回転数Nk1及び第2基準回転数Nk2の値を変更して、回転軸20の回転数を制御して出力軸35に付加するブレーキ力を制御するようにしてもよい。
【0144】
この場合、スライドドア3の位置を直接検出したり、ウォーム軸32又は出力軸35の回動量を検出したりして実施してもよい。
勿論、スライドドア3の移動状態の検出を、ウォーム軸32の回転数Nnで検出したが、スライドドア3の移動状態を、移動速度、移動方向及び位置の要素を複数検出して総合的に判断して実施してもよい。
【0145】
例えば、自動から手動に切り替わった時の、スライドドア3の位置が、「全閉位置」に近い位置で発生したとき、スライドドア3が「全開位置」方向に移動しているときは、第1実施形態のようにスライドドア3を制御する。反対に、スライドドア3が「全閉位置」方向に移動しているときは、スライドドア3の移動速度(ウォーム軸32の回転数Nn)に関係なく、直ちに出力軸35にブレーキ力を付与して、不意の動きを制限し挟み込みを防止するようにしてもよい。この時、モータ11の回転軸20をウォーム軸32の回転方向と逆の方向に回転させることによって、スライドドア3の動きを早急に止めることができる。
【0146】
○上記第1実施形態では、ドア保持モードの第1基準時間T1を2秒としたが、これに限定されるのではなく、2秒より長くしたり、反対に短くしたりして適宜変更して実施してもよい。
【0147】
又、スライドドア3のその時の位置に応じて、第1基準時間T1を変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、第1基準時間T1を長くして実施してすることが考えられる。このとき、スライドドア3の移動方向を考慮して実施してもよい。即ち、例えば、「全閉位置」に方向に移動している時であって、「全閉位置」に近いほど、第1基準時間T1を長くなるように変更して実施してもよい。
【0148】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を移動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
○上記第1実施形態では、ドア保持モードの第1基準回転数Nk1を20rmpとしたが、これに限定されるのではなく、スライドドアの仕様に応じて20rpmより大きくしたり、反対に小さくしたりして適宜変更して実施してもよい。
【0149】
又、同様に、スライドドア3のその時の位置に応じて、第1基準回転数Nk1を変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、第1基準回転数Nk1を小さくして実施してすることが考えられる。このとき、スライドドア3の移動方向を考慮して実施してもよい。即ち、例えば、「全閉位置」に方向に移動している時であって、「全閉位置」に近いほど、第1基準回転数Nk1を短くするように変更して実施してもよい。
【0150】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
○上記第1実施形態では、ブレーキ制御モードの第2基準時間T2を8秒としたが、これに限定されるのではなく、8秒より長くしたり、反対に短くしたりして適宜変更して実施してもよい。
【0151】
又、スライドドア3のその時の位置に応じて、第2基準時間T2を変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、第2基準時間T2を長くして実施してすることが考えられる。このとき、スライドドア3の移動方向を考慮して実施してもよい。即ち、例えば、「全閉位置」に方向に移動している時であって、「全閉位置」に近いほど、第2基準時間T2を長くなるように変更して実施してもよい。
【0152】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を移動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
○上記第1実施形態では、ブレーキ制御モードの第2基準回転数Nk2を80rmpとしたが、これに限定されるのではなく、スライドドアの仕様に応じて80rpmより大きくしたり、反対に小さくしたりして適宜変更して実施してもよい。
【0153】
又、同様に、スライドドア3のその時の位置に応じて、第2基準回転数Nk2を変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、第2基準回転数Nk2を小さくして実施してすることが考えられる。このとき、スライドドア3の移動方向を考慮して実施してもよい。即ち、例えば、「全閉位置」に方向に移動している時であって、「全閉位置」に近いほど、第2基準回転数Nk2を短くするように変更して実施してもよい。
【0154】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を移動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
○上記第1実施形態では、ブレーキ制御モード中の第1制御モードの第3駆動電圧を印加する時間Taを100ミリ秒とし、第2制御モードの第4駆動電圧を印加する時間Tbを300ミリ秒としたが、これら時間Ta,Tbを適宜変更して実施してもよい。
【0155】
又、同様に、スライドドア3のその時の位置に応じて、これら時間Ta,Tbを変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、これら時間Ta,Tbを長くして実施してすることが考えられる。このとき、スライドドア3の移動方向を考慮して実施してもよい。即ち、例えば、「全閉位置」に方向に移動している時であって、「全閉位置」に近いほど、これら時間Ta,Tbを長くするように変更して実施してもよい。ちなみに、時間Taを一定にし、時間Tbを長くして実施してもよい。
【0156】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を移動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
○上記第1実施形態では、ブレーキ制御モード中の第2制御モードでは、モータ11に対して、ウォーム軸32の回転方向と同方向に回転軸20が回転するように第4駆動電圧Vd4を印加し出力軸35にブレーキ力を付与した。
【0157】
これを、ウォーム軸32の回転方向とは逆方向に回転軸20が回転するように第3駆動電圧を印加し出力軸35にブレーキ力を付与して実施してもよい。これによって、素早くスライドドア3を移動制限できことから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
【0158】
又、同様に、スライドドア3のその時の位置に応じて、回転方向を変更してもよい。例えば、スライドドア3が「全開位置」又は「全閉位置」に近いとき、回転方向を逆転させて実施してすることが考えられる。
【0159】
これによって、「全開位置」又は「全閉位置」に近いほど、素早くスライドドア3を移動制限させることができることから、挟み込み防止がより確実なものとなる。
勿論、第1制御モード及び第2制御モードにおいて、初めからモータ11に対して、ウォーム軸32の回転方向と逆方向に回転軸20が回転するように第3及び第4駆動電圧Vd3,Vd4を印加するように実施してもよい。
【0160】
○上記第1実施形態では、ドアとしてスライドドア3に具体化したが、これに限定されるものではなく、スライドドア3以外であって車両に設けられあらゆる開閉ドアに応用して実施してもよい。