(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転駆動が伝達されて回転及び光軸方向に移動する第一カム筒と、被写体側のレンズ群を保持し、前記第一カム筒の外周側に係合して光軸方向に移動する第一レンズ群枠と、前記第一カム筒の内周側に係合して回転及び光軸方向に移動する第二カム筒と、撮像素子側のレンズを保持し、前記第二カム筒の内周側に係合して光軸方向に移動する第二レンズ群枠と、を備え、前記第一カム筒と第二カム筒の回転角度を異ならせた鏡筒駆動機構であって、
前記第一カム筒及び第二カム筒の内周側にそれぞれ係合して前記第一カム筒と一体となって光軸方向に移動するキー筒を備え、
前記キー筒に設けられ、前記第二カム筒が係合する雌ヘリコイドは、
鏡筒の収納状態から撮影可能状態の間では、前記第二カム筒を光軸方向へ相対的に移動させないように光軸と直交して周方向に平行な溝部として形成されていることを特徴とする鏡筒駆動機構。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1及び
図2は本発明を適用した一実施形態の構成として鏡筒を構成する部品を分解して示すもので、
図3から
図5は鏡筒のPARK状態、WIDE状態及びTELE状態での概略構成をそれぞれ示しており、1は固定筒、2は移動筒、3は第一レンズ群枠、4は第一カム筒、5は第二カム筒、6はキー筒、7は第二レンズ群枠である。
【0012】
図示のように、固定筒1は光軸を中心とした略円筒形の形状を有しており、その内側に、移動筒2、第一レンズ群枠3、第一カム筒4、第二カム筒5、キー筒6、第二レンズ群枠7、レンズの順で内包している。
以下の説明では、光軸から直交方向のうち、光軸から離れる方向を外側、近づく方向を内側とする。
【0013】
固定筒1は、その内側面に、直進案内溝11が像端部に開放部を有した状態で光軸と平行に120°間隔で三箇所に形成され、かつ、
図6に示す雌ヘリコイド12が物体側端部のTELE端よりも先(第一カム筒4を138°よりも回転させた所)に開口部を有した状態で120°間隔で三箇所に形成されている。
直進案内溝11には、キー筒6から延伸している120°間隔で三箇所に形成された直進用突起部61と、移動筒2の外側から延伸している直進用突起部21が係合する。
雌ヘリコイド12には、第一カム筒4の外側面に120°間隔で三箇所に形成された雄ヘリコイド41が係合する。
【0014】
移動筒2は、その外側面の像側端部に、直進用突起部21が120°間隔で三箇所に形成されている。また、内側面には、直進案内溝22が像側端部に開放部を有した状態で光軸と平行な120°間隔で三箇所に形成されて、さらに、内側面の像側寄りに、固定溝23が光軸方向に直交して周方向に平行に形成されている。
直進用突起部21は、固定筒1の直進案内溝11に係合する。
固定溝23には、第一カム筒4の外側面の像側寄りの外側に突き出したフランジ部42に形成された固定リブ43が係合する。
直進案内溝22には、第一レンズ群枠3の外側面の像側端部に120°間隔で三箇所に形成された直進用突起部31が係合する。
【0015】
第一レンズ群枠3は、円筒形状を有し、物体側の光軸と直交する面には、物体側よりレンズバリア36、レンズ保持枠37、レンズ群38が固定されている。
第一レンズ群枠3は、外側面の像側端部には、120°間隔で三箇所に形成した直進用突起部31と、その直進用突起部31の内側面にカムフォロア32を有する。
直進用突起部31は、移動筒2の直進案内溝22に係合する。
カムフォロア32は、第一カム筒4の外側面に形成されているカム溝44に係合する。
【0016】
第一カム筒4は、外側面の像側端部が物体側と比べて光軸と直交する面の直径が大きくなり、より外方向へ突き出したフランジ部42を有する。
第一カム筒4の外側面のうち、フランジ部42よりも物体側には、
図7に示すカム溝44が120°間隔で三箇所に形成されている。
カム溝44には、第一レンズ群枠3の内側面のカムフォロア32が係合する。
【0017】
また、第一カム筒4の外側面のうちフランジ部42に、像側端部の外側面に周方向の一部を覆う円弧状に第一カム筒4の回転角と等しい中心角を持つギア部45を有する。
このギア部45よりも物体側には、雄ヘリコイド41が先端を外側へ向けて120°間隔で三箇所に形成されている。
さらに、雄ヘリコイド41よりも物体側であり、フランジ部42とそれより物体側の外側面との境目の光軸方向に面を向けた段差部分に、120°間隔で三箇所に外側へ突起を向けた固定リブ43を有している。
【0018】
雄ヘリコイド41は、固定筒1の雌ヘリコイド12と係合する。
固定リブ43は、移動筒2の固定溝23と係合する。
また、フランジ部42は、凹部46を120°間隔で三箇所に有し、第一カム筒4の外側面のうちフランジ部42よりも物体側の側面と一繋がりとなっている。
それにより、凹部46内部にカム溝44の一部を形成することにより、カム溝44の光軸方向の長さを確保することが可能となっている。
【0019】
第一カム筒4の内側面は、外側面のフランジ部42と対応する部分とそれよりも物体側の内側面とで内径が異なり、外側面のフランジ部42に対応する部分の内径は、それよりも物体側に位置する内側面と比べて大きくなっている。
そして、内側面のうち、外側面のフランジ部42に対応する部分よりも物体側に位置する内側面には、
図8に示す直進案内溝47が像側端部に開放部を有した状態で光軸と平行に形成されている。
【0020】
この直進案内溝47は、像側端部で周方向に90°折れ曲がって像側端部を開放した状態で延伸されており、その延伸された溝部47Lの周方向の長さは、第一カム筒4が13°回転する際の周方向への移動量と等しくなっている。
以上の直進案内溝47には、第二カム筒5の外側面の直進用突起部51が係合する。
【0021】
また、第一カム筒4の内側面のうち外側面のフランジ部42に対応する内径が大きい内側面の像側寄りには、周方向に平行な固定溝48が形成されている。
固定溝48の像側の壁には、120°間隔で三箇所に開放部49が設けられている。
固定溝48には、キー筒6の外側面の固定リブ62が係合する。
【0022】
第二カム筒5は、外側面の像側端部に、直進用突起部51が120°間隔で三箇所に形成されている。
また、内側面の像側端部には、雄ヘリコイド52が120°間隔で三箇所に形成されている。
直進用突起部51は、第一カム筒4の内側面に形成された直進案内溝47に係合する。
雄ヘリコイド52は、キー筒6の外側面に形成された雌ヘリコイド63と係合する。
【0023】
また、第二カム筒5の内側面には、
図10に示すカム溝53が形成されている。
カム溝53には、第二レンズ群枠7の直進用突起部71の像側端部の外側面にあるカムフォロア72が係合する。
【0024】
キー筒6には、物体側に、
図11に示す切込み部64が側面を貫通して120°間隔で三箇所に形成されている。
この切込み部64は、物体側は開いているが、像側の端部は閉じている。
以上の切込み部64には、第二レンズ群枠7の外側面に形成された帯状の直進用突起部71が貫通して係合する。
【0025】
そして、キー筒6の外側面には、
図11に示す雌ヘリコイド63が形成されている。
この雌ヘリコイド63は、TELE端よりも先(第一カム筒4を138°よりも回転させた所)に開口部を有しており、周方向の幅は切込み部64の周方向の幅よりも大きく形成されている。
雌ヘリコイド63は、第二カム筒5の内側面の雄ヘリコイド52と係合する。
【0026】
また、キー筒6の外側面の像側端部には、直進用突起部61が形成されている。
直進用突起部61は、固定筒1の内側面に形成された直進案内溝11に係合する。
また、直進用突起部61の途中には、固定リブ62が形成されている。
固定リブ62は、第一カム筒4の内側面の像側端部の固定溝48に係合する。
【0027】
第二レンズ群枠7は、内側にレンズ76を保持しており、外側面には、光軸と平行な帯状の直進用突起部71と、その直進用突起部71の物体側に突き出した先端部から外側方向へ先端を向けたカムフォロア72が120°間隔で形成されている。
直進用突起部71は、キー筒6の切込み部64を貫通しながら係合する。
また、カムフォロア72は、第二カム筒5の内側面に形成されたカム溝53に係合する。
【0028】
次に、固定筒1、第一カム筒4、第二カム筒5及びキー筒6に形成された各溝の詳細について説明する。
【0029】
固定筒1の内側面の雌ヘリコイド12は、
図6に示すように、固定筒1の側面のうち中心角138°の範囲に形成されている。
雌ヘリコイド12は、固定筒1の内側面を展開して平面としてみた場合、0°から60°までは直線的に像側から物体側へ向かって斜め方向に形成され、60°から138°までは光軸と直交して周方向に平行の直線的な溝として形成されている。
【0030】
ここで、0°の時、鏡筒は
図3に示すPARK状態であり、60°の時、鏡筒は
図4に示すWIDE状態であり、138°の時、鏡筒は
図5に示すTELE状態である。
【0031】
第一カム筒4の外側面のカム溝44は、
図7に示すように、第一カム筒4の側面のうち中心角が138°の範囲に形成されている。
カム溝44は、第一カム筒4の外側面を展開して平面としてみた場合、0°から60°まで像側から物体側へ直線的に形成され、60°から138°では一旦像側へ移動してから再度物体側へ向かうように溝が形成されている。
【0032】
ここで、0°の時、鏡筒はPARK状態であり、60°の時、鏡筒はWIDE状態であり、138°の時、鏡筒はTELE状態である。
【0033】
第一カム筒4の内側面の直進案内溝47は、
図8及び
図9に示すように、第一カム筒4の内周面を展開して平面としてみた場合、光軸と平行に形成された溝である。
また、直進案内溝47の像側端部から直角に、第一カム筒4のPARK状態からWIDE状態へ移行時の回転方向へ向かって溝部47Lが延設されており、その延設された溝部47Lの長さは、第一カム筒4が13°回転した際の周方向の移動量に相当する。
【0034】
ここで、延設された溝部47Lの端に第二カム筒5の直進用突起部51が位置する時、鏡筒はPARK状態である。
そして、13°からWIDE状態である60°では、光軸と平行な溝部47と光軸と直交する溝部47Lとの境目である変曲点に直進用突起部51が位置する。
さらに、60°から138°では、直進用突起部51は光軸と平行な直進案内溝47を像側から物体側へ移動し、直進案内溝47の物体側寄りの所定位置に直進用突起部51が有るときTELE状態となる。
【0035】
第二カム筒5の内側面のカム溝53は、
図10に示すように、第二カム筒5の側面のうち中心角が125°の範囲に形成されている。
カム溝53は、第二カム筒5の内側面を展開して平面としてみた場合、0°から47°まで物体側から像側へ直線的に形成され、47°から125°では像側から物体側へ溝が形成されており、47°で最も像側に近づき、125°で最も物体側へ近づく。
【0036】
ここで、0°の時、鏡筒はPARK状態であり、47°の時、鏡筒はWIDE状態であり、125°の時、鏡筒はTELE状態である。
【0037】
キー筒6の外側面の雌ヘリコイド63は、
図11に示すように、キー筒6の側面のうち中心角が125°の範囲に形成されている。
雌ヘリコイド63は、キー筒6の外側面を展開して平面としてみた場合、0°から47°までは光軸と直交する周方向へ平行に直線的に溝部63Lが形成され、47°から125°では像側から物体側に向かって斜め方向へ直線的に溝部が形成されている。
【0038】
ここで、0°の時、鏡筒はPARK状態であり、47°の時、鏡筒はWIDE状態であり、125°の時、鏡筒はTELE状態である。
【0039】
次に、鏡筒の駆動の詳細について説明する。
【0040】
「第一カム筒4の回転角度0〜13°」
第一カム筒4に、図示しないモータの駆動がピニオンとギア部45を通して伝達され、それによって、第一カム筒4が光軸を中心とした周方向へ回転を始める。このとき、第一カム筒4の回転角が0〜13°の間では、第一カム筒4は固定筒1の雌ヘリコイド12に雄ヘリコイド41を係合させ、そのヘリコイド12・41同士の螺合により光軸方向へ移動する。
【0041】
移動筒2は、その内側面の固定溝23を第一カム筒4の固定リブ43と係合しているので、第一カム筒4と一体に光軸方向へ移動する。しかし、同時に、移動筒2の直進用突起部21が固定筒1の直進案内溝11に係合しているので、移動筒2は回転しない。
よって、移動筒2は、光軸方向への移動は第一カム筒4と一体となって行うが、周方向への回転は一切行わない。
【0042】
第一レンズ群枠3は、その内側面のカムフォロア32を第一カム筒4の外側面のカム溝44に係合しているので、第一カム筒4が回転するとカムフォロア32にはカム溝44からの駆動力を伝達される。しかし、同時に、第一レンズ群枠3の直進用突起部31が移動筒2の直進案内溝22に係合しているので、第一レンズ群枠3は回転しない。
よって、第一カム筒4による第一レンズ群枠3への駆動力のうち周方向の力は、直進案内溝22により抑えられているため、第一レンズ群枠3は、光軸方向への移動を行うが、周方向への回転は一切行わない。
【0043】
キー筒6は、その外側面の直進用突起部61を固定筒1の内側面の直進案内溝11に係合しているので、周方向への回転を行わない。しかし、同時に、直進用突起部61の途中に形成された固定リブ62を第一カム筒4の内側面の固定溝48に係合しているので、第一カム筒4と一体となって光軸方向の移動を行なう。
よって、キー筒6は、光軸方向へ第一カム筒4と一体となって移動を行うが、周方向への回転は一切行わない。
【0044】
第二カム筒5は、その外側面の直進用突起部51を第一カム筒4の内側面の直進案内溝47に係合している。しかし、直進用突起部51は直進案内溝47の周方向に平行な溝部47L内を移動するため、第一カム筒4の回転による駆動力は第二カム筒5には伝達されない。
また、鏡筒が組み立てられた状態では、第二カム筒5は第一カム筒4とキー筒6に挟まれており、第一カム筒4とキー筒6は光軸方向へ一体となって移動するので、第一カム筒4とは直進用突起部51で係合し、キー筒6とは雄ヘリコイド52で係合している第二カム筒5は、キー筒6と第一カム筒4が光軸方向へ移動するのに従い光軸方向へ移動する。
第一カム筒4の回転角度が13°に達したとき、直進用突起部51は直進用案内溝47の変曲点に到達する。
【0045】
第二レンズ群枠7は、その外側面の直進用突起部71をキー筒6の切込み部64と係合し、直進用突起部71の像側先端にあるカムフォロア72を第二カム筒5の内周面のカム溝53と係合している。しかし、第二カム筒5が周方向に回転しないため、カム溝53がカムフォロア72を付勢することもない。
よって、第二レンズ群枠7は、キー筒6と一体になって移動を行う。
【0046】
「第一カム筒4の回転角度13〜60°」
第一カム筒4に、モータの駆動をピニオンとギア部45を通して伝達され、それによって、第一カム筒4が光軸を中心とした周方向へ回転を始める。このとき、第一カム筒4の回転角が13〜60°の間では、第一カム筒4は、固定筒1の雌ヘリコイド12に雄ヘリコイド41を係合させ、そのヘリコイド12・41同士の螺合によって光軸方向へ移動する。
第一カム筒4の回転角度が60°に達したとき、雄ヘリコイド41は雌ヘリコイド12の最も物体側に位置している。
【0047】
移動筒2は、その内側面の固定溝23に第一カム筒4の固定リブ43が係合しているので、第一カム筒4と一体に光軸方向へ移動する。しかし、同時に、移動筒2の直進用突起部21が固定筒1の直進案内溝11に係合しているので、移動筒2は回転しない。
よって、移動筒2は、光軸方向への移動は第一カム筒4と一体となって行うが、周方向への回転は一切行わない。
【0048】
第一レンズ群枠3は、その内側面のカムフォロア32を第一カム筒4の外側面のカム溝44に係合しているため、第一カム筒4が回転するとカムフォロア32にはカム溝44により駆動力が伝達される。しかし、同時に、第一レンズ群枠3の直進用突起部31が移動筒2の直進案内溝22に係合しているので、第一レンズ群枠3は回転しない。
よって、第一カム筒4による第一レンズ群枠3への駆動力のうち周方向の力は、直進案内溝22により抑えられているため、第一レンズ群枠3は、光軸方向への移動のみを行い、周方向への回転は一切行わない。
第一カム筒4の回転角度が60°に達したとき、第一レンズ群枠3はWIDE状態となる。
【0049】
キー筒6は、その外側面の直進用突起部61を固定筒1の内側面の直進案内溝11と係合しているので、周方向への回転を行わない。しかし、同時に、直進用突起部61の途中に形成された固定リブ62が第一カム筒4の内側面の固定溝48に係合しているので、第一カム筒4と一体となって光軸方向の移動を行なう。
よって、キー筒6は、光軸方向へ第一カム筒4と一体となって移動を行うが、周方向への回転は一切行わない。
【0050】
第二カム筒5は、その外側面の直進用突起部51が第一カム筒4の内側面の直進案内溝47に係合しており、第一カム筒4の回転角度が13°の時点で直進用突起部51は直進案内溝47の変曲点に位置している。このため、第一カム筒4が13°以上回転すると、直進用突起部51が直進案内溝47の内壁を押し、それにより、第二カム筒5が回転を始める。
第二カム筒5が回転を始めると、第二カム筒5の内側面の雄ヘリコイド52が、キー筒6の外側面の雌ヘリコイド63を移動する。しかし、第一カム筒4が13°から60°まで回転する間に、雄ヘリコイド52が係合する雌ヘリコイド63の部分は周方向に平行な溝であるため、第二カム筒5は、第一カム筒4及びキー筒6に対して光軸方向に相対移動はせずに、一体となって光軸方向へ移動する。
第一カム筒4の回転角度が60°に達した時点で、第二カム筒5の回転角度は47°となり、また、直進用突起部51は、第一カム筒4の回転角度が13〜60°の間では、直進案内溝47の変曲点から移動せずに、その場に留まっている。
【0051】
第二レンズ群枠7は、その外側面の直進用突起部71がキー筒6の切込み部64に係合し、直進用突起部71の像側先端に外側方向へ先端を向けたカムフォロア72が第二カム筒5の内周面のカム溝53に係合している。このため、第二カム筒5が周方向に回転することにより、カム溝53がカムフォロア72を付勢して、同時に、キー筒6の切込み部64が直進用突起部71と係合することにより、第二レンズ群枠7の周方向への回転を規制して、第二レンズ群枠7は光軸方向へのみ移動する。
第一カム筒4の回転角度が60°に達した時点で、第二カム筒5の回転角度は47°であり、第二レンズ群枠7はWIDE状態となる。
【0052】
「第一カム筒4の回転角度60〜138°」
第一カム筒4に、モータの駆動をピニオンとギア部45を通して伝達され、それによって、第一カム4筒が光軸を中心とした周方向へ回転を始める。このとき、第一カム筒4の回転角が60〜138°の間では、固定筒1の雌ヘリコイド12の周方向に平行な溝部内を第一カム筒4の雄ヘリコイド41が移動するため、第一カム筒4は、光軸方向へは移動せず、周方向への回転のみを行う。
第一カム筒4の回転角度が138°に達したとき、第一カム筒4の雄ヘリコイド41は、固定筒1の雌ヘリコイド12の前端部の周方向に平行な溝部のうち最も開口部に近いTELE端に位置している。
【0053】
移動筒2は、その内側面の固定溝23に第一カム筒4の固定リブ43が係合しているので、第一カム筒4と一体に光軸方向へ移動する。しかし、同時に、移動筒2の直進用突起部21が固定筒1の直進案内溝11に係合しているので、移動筒2は回転しない。
よって、第一カム筒4の回転角度が60°以上では、第一カム筒4は、光軸方向へは移動せず、周方向への回転のみを行うので、移動筒2は、光軸方向へも周方向へも移動せず、その場で静止している。
【0054】
第一レンズ群枠3は、その内側面のカムフォロア32が第一カム筒4の外側面のカム溝44に係合しているので、第一カム筒4が回転すると、カムフォロア32にはカム溝44により駆動力が伝達される。しかし、同時に、第一レンズ群枠3の直進用突起部31が移動筒2の直進案内溝22に係合しているので、第一レンズ群枠3は回転しない。
よって、第一カム筒4による第一レンズ群枠3への駆動力のうち周方向の力は、直進案内溝22により抑えられているため、第一レンズ群枠3は、光軸方向への移動を行うが、周方向への回転は一切行わない。
第一カム筒4の回転角度が138°に達したとき、第一レンズ群枠3はTELE状態となる。
【0055】
キー筒6は、その外側面の直進用突起部61が固定筒1の内側面の直進案内溝11に係合しているので、周方向への回転を行わない。しかし、同時に、直進用突起部61の途中に形成された固定リブ62が第一カム筒4の内側面の固定溝48に係合しているので、第一カム筒4と一体となって光軸方向の移動を行なう。
よって、第一カム筒4の回転角度が60°以上では、第一カム筒4は、光軸方向へは移動せず、周方向の回転のみを行うので、キー筒6は、光軸方向にも周方向への回転も行わずに、その場で静止している。
【0056】
第二カム筒5は、その外側面の直進用突起部51が第一カム筒4の内側面の直進案内溝47に係合しており、第一カム筒4の回転角度が60°の時点で直進用突起部51は直進案内溝47の変曲点に位置している。
そして、第一カム筒4の回転角度が60°を超えると、第二カム筒5の内側面の雄ヘリコイド52がキー筒6の外側面の雌ヘリコイド63の光軸方向への成分を持つ溝部に係合して、ヘリコイド52・63同士の螺合によって光軸方向へ移動を行い、かつ、周方向の回転は第一カム筒4と一体となって行う。
第一カム筒4の回転角度が138°に達した時点で、第二カム筒5の回転角度は125°となり、直進用突起部51は直進案内溝47の所定の物体側寄りのTELE位置に存在している。
【0057】
第二レンズ群枠7は、その外側面の直進用突起部71をキー筒6の切込み部64と係合しており、直進用突起部71の像側先端の外側方向へ向いたカムフォロア72が第二カム筒5の内周面のカム溝53に係合している。このため、第二カム筒5が周方向に回転することにより、カム溝53がカムフォロア72に駆動力を伝達し、同時に、キー筒6の切込み部64が直進用突起部71と係合することにより、第二レンズ群枠7の周方向への回転を規制することよって、第二レンズ群枠7は光軸方向へ移動する。
第一カム筒4の回転角度が138°に達した時点で、第二カム筒5の回転角度は125°であり、第二レンズ群枠7はTELE状態となる。
【0058】
以上のとおり、第二カム筒5を光軸方向に直進するように支持する第一カム筒4の内側面の直進案内溝47において、その直進案内溝47の像側端部から光軸と直交して周方向に平行な溝部47Lが、PARK状態からWIDE状態へ移行するためのカム筒4・5の回転方向へ、第一カム筒4と第二カム筒5の回転角度の差分に相当する角度を中心角に持つ円弧の長さ分だけ延設されている。
それにより、第一カム筒4の回転角度を十分に確保しながら、第二カム筒5の回転角度を小さくして、第二カム筒5のカム溝53が重なることを抑制することが可能となる。
【0059】
そして、第二カム筒5を光軸方向へ駆動するように係合するキー筒6の外側面の雌ヘリコイド63において、第二カム筒5の雄ヘリコイド52がPARK状態からWIDE状態へ移行する際に通過する溝部63Lが、光軸と直交して周方向に平行に形成されている。
これにより、第二カム筒5をWIDE状態からTELE状態へ移行する際の光軸方向への移動量を十分に確保することが可能となり、それにより、第二レンズ群枠7のみの光軸方向への移動量を少なくすることが可能となり、第二レンズ群枠7を駆動するカム溝53を第二カム筒5の側面に納めることが可能となる。
【0060】
以上、各部の動作についてまとめると以下のとおりである。
【0061】
固定筒1は、光軸方向へ移動もせず、周方向に回転もしない。
移動筒2、第一レンズ群枠3、キー筒6、第二レンズ群枠7は、光軸方向へのみ移動する。
第一カム筒4は、光軸方向へ移動し、周方向に回転も行う。その回転角度は138°である。
第二カム筒5は、光軸方向へ移動し、周方向に回転も行う。その回転角度は125°である。
【0062】
モータの駆動をギア部45が受け取り、第一カム筒4が回転を行う。
第一カム筒4のみが13°回転する。
第二カム筒5の直進用突起部51が第一カム筒4の直進案内溝47の内壁を付勢し始める。
第一カム筒4からの付勢により第二カム筒5も回転を始める。
【0063】
第一カム筒4は、回転すると固定筒1とのヘリコイド12・41同士の螺合により光軸方向へ移動する。
第一カム筒4の回転角度が60°を超えると、第一カム筒4の光軸方向への移動は停止する。
第二カム筒5は、回転するとキー筒6とのヘリコイド52・63同士の螺合により光軸方向へ移動する。
第二カム筒5の回転角度が47°を超えると、第二カム筒5の光軸方向への移動が開始する。
【0064】
移動筒2は、固定溝23と固定リブ43により第一カム筒4と光軸方向へ一体となって移動する。
直進用突起部21を直進案内溝11に係合して、移動筒2の周方向への回転を規制する。
【0065】
第一レンズ群枠3は、第一カム筒4のカム溝44に沿って光軸方向へ移動する。
直進用突起部31を直進案内溝22に係合して、第一レンズ群枠3の周方向への回転を規制する。
【0066】
キー筒6は、固定溝48と固定リブ62により第一カム筒4と光軸方向へ一体となって移動する。
直進用突起部61を直進案内溝11に係合して、移動筒2の周方向への回転を規制する。
【0067】
第二レンズ群枠7は、第二カム筒5のカム溝53に沿って光軸方向へ移動する。
直進用突起部71を切込み部64に係合して、第二レンズ群枠7の周方向への回転を規制する。
【0068】
以上、実施形態の鏡筒駆動機構によれば、第一カム筒4と第二カム筒5の回転角度が異なるため、シンプルかつ小型で光軸方向への移動量の大きい鏡筒を提供することができる。
【0069】
具体的には、第二カム筒5が係合する第一カム筒4の直進案内溝47の像側端部に、第一カム筒4と第二カム筒5の回転角度の差分に相当する角度分だけ、光軸と直交して周方向に平行な溝部47Lが延設されている。
【0070】
従って、第二カム筒5は周方向の長さが短いため、第一カム筒4と同じ回転角度を持たせると、側面に形成される複数のカム溝44・53同士が重なってしまうのに対し、第二カム筒5の回転角度を第一カム筒4の回転角度よりも少なくすることで、第二カム筒5のカム溝53が重なることを抑制することができる。
【0071】
そして、第二カム筒5が係合するキー筒6の雌ヘリコイド63は、PARK状態からWIDE状態の間では第二カム筒5を光軸方向へ
相対的に移動させないように光軸と直交して周方向に平行な溝部63Lとして形成されている。
【0072】
従って、WIDE状態からTELE状態への変倍時において、第二レンズ群枠7の光軸方向に対する移動量を確保しつつ、カム溝53の光軸方向の幅を第二カム筒5の側面内に収めることができる。
【0073】
(変形例)
以上の実施形態においては、第一カム筒の直進案内溝の像側端部に光軸と直交して周方向に平行な溝部を延設して、キー筒の雌ヘリコイドに光軸と直交して周方向に平行な溝部を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、 第一カム筒と第二カム筒の回転角度を異ならせればよい。
また、係合するカムの形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。