(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれに接する前記発熱素子からの電気信号の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項1又は2に記載の発熱量測定システム。
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれに接する前記発熱素子からの電気信号の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項6又は7に記載の発熱量の測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
まず、斜視図である
図1、及びII−II方向から見た断面図である
図2を参照して、実施の形態に係る発熱量測定システムに用いられるマイクロチップ8について説明する。マイクロチップ8は、キャビティ66が設けられた基板60、及び基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65を備える。基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。さらにマイクロチップ8は、絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた発熱素子61と、発熱素子61を挟むように絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた第1の測温素子62及び第2の測温素子63と、基板60上に設けられた保温素子64と、を備える。
【0012】
ダイアフラムには、複数の孔が設けられている。ダイアフラムに複数の孔を設けることにより、キャビティ66内のガスの置換が速くなる。あるいは、絶縁膜65は、
図3、及びIV−IV方向から見た断面図である
図4に示すように、キャビティ66をブリッジ状に覆うように、基板60上に配置されてもよい。これによっても、キャビティ66内が露出し、キャビティ66内のガスの置換が速くなる。
【0013】
発熱素子61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65のダイアフラムの部分の中心に配置されている。発熱素子61は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、発熱素子61に接する雰囲気ガスを加熱する。第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、例えば抵抗器等の受動素子等の電子素子であり、雰囲気ガスのガス温度に依存した電気信号を出力する。以下においては、第1の測温素子62の出力信号を利用する例を説明するが、これに限定されず、例えば第1の測温素子62の出力信号及び第2の測温素子63の出力信号の平均値を、測温素子の出力信号として利用してもよい。
【0014】
保温素子64は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、基板60の温度を一定に保つ。基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO
2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。また発熱素子61、第1の測温素子62、第2の測温素子63、及び保温素子64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。また、発熱素子61、第1の測温素子62、及び第2の測温素子63は、同一の部材からなっていてもよい。
【0015】
マイクロチップ8は、マイクロチップ8の底面に配置された断熱部材18を介して、雰囲気ガスが流されるパイプに固定される。断熱部材18を介してマイクロチップ8をパイプに固定することにより、マイクロチップ8の温度が、パイプの内壁の温度変動の影響を受けにくくなる。ガラス等からなる断熱部材18の熱伝導率は、例えば1.0W/(m・K)以下である。
【0016】
図5に示すように、発熱素子61の一端には、例えば、オペアンプ170の+入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ170の+入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子161が接続される。オペアンプ170の−入力端子は、直列に接続された抵抗素子162と抵抗素子163との間、直列に接続された抵抗素子163と抵抗素子164との間、直列に接続された抵抗素子164と抵抗素子165との間、又は抵抗素子165の接地端子に電気的に接続される。各抵抗素子162−165の抵抗値を適当に定めることにより、例えば5.0Vの電圧Vinを抵抗素子162の一端に印加すると、抵抗素子163と抵抗素子162との間には、例えば2.4Vの電圧V
L3が生じる。また、抵抗素子164と抵抗素子163との間には、例えば1.9Vの電圧V
L2が生じ、抵抗素子165と抵抗素子164との間には、例えば1.4Vの電圧V
L1が生じる。
【0017】
抵抗素子162及び抵抗素子163の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW1が設けられており、抵抗素子163及び抵抗素子164の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW2が設けられている。また、抵抗素子164及び抵抗素子165の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW3が設けられており、抵抗素子165の接地端子と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW4が設けられている。
【0018】
オペアンプ170の−入力端子に2.4Vの電圧V
L3を印加する場合、スイッチSW1のみが通電され、スイッチSW2,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.9Vの電圧V
L2を印加する場合、スイッチSW2のみが通電され、スイッチSW1,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.4Vの電圧V
L1を印加する場合、スイッチSW3のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に0Vの電圧V
L0を印加する場合、スイッチSW4のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW3は切断される。したがって、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、オペアンプ170の−入力端子に0V又は3段階の電圧のいずれかを印加可能である。そのため、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、発熱素子61の発熱温度を定める印加電圧を3段階に設定可能である。
【0019】
ここで、オペアンプ170の+入力端子に1.4Vの電圧V
L1を印加した場合の発熱素子61の温度をT
H1とする。また、オペアンプ170の+入力端子に1.9Vの電圧V
L2を印加した場合の発熱素子61の温度をT
H2、オペアンプ170の+入力端子に2.4Vの電圧V
L3を印加した場合の発熱素子61の温度をT
H3とする。
【0020】
図6に示すように、第1の測温素子62の一端には、例えば、オペアンプ270の−入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ270の−入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子261が接続される。オペアンプ270の+入力端子は、直列に接続された抵抗素子264と抵抗素子265との間に電気的に接続される。これにより、第1の測温素子62には、0.3V程度の弱い電圧が加えられる。
【0021】
図1及び
図2に示す発熱素子61の抵抗値は、発熱素子61の温度によって変化する。発熱素子61の温度T
Hと、発熱素子61の抵抗値R
Hの関係は、下記(1)式で与えられる。
R
H = R
H_STD×[1+α
H (T
H-T
H_STD) + β
H (T
H-T
H_STD)
2] ・・・(1)
ここで、T
H_STDは発熱素子61の標準温度を表し、例えば20℃である。R
H_STDは標準温度T
H_STDにおける予め測定された発熱素子61の抵抗値を表す。α
Hは1次の抵抗温度係数を表す。β
Hは2次の抵抗温度係数を表す。
【0022】
発熱素子61の抵抗値R
Hは、発熱素子61の駆動電力P
Hと、発熱素子61の通電電流I
Hから、下記(2)式で与えられる。
R
H = P
H / I
H2 ・・・(2)
あるいは発熱素子61の抵抗値R
Hは、発熱素子61にかかる電圧V
Hと、発熱素子61の通電電流I
Hから、下記(3)式で与えられる。
R
H = V
H / I
H ・・・(3)
【0023】
ここで、発熱素子61の温度T
Hは、発熱素子61と雰囲気ガスの間が熱的に平衡になったときに安定する。なお、熱的に平衡な状態とは、発熱素子61の発熱と、発熱素子61から雰囲気ガスへの放熱とが釣り合っている状態をいう。下記(4)式に示すように、平衡状態における発熱素子61の駆動電力P
Hを、発熱素子61の温度T
Hと雰囲気ガスの温度T
Iとの差ΔT
Hで割ることにより、雰囲気ガスの放熱係数M
Iが得られる。なお、放熱係数M
Iの単位は、例えばW/℃である。
M
I = P
H / (T
H - T
I)
= P
H /ΔT
H ・・・(4)
【0024】
上記(1)式より、発熱素子61の温度T
Hは下記(5)式で与えられる。
T
H = (1 / 2β
H)×[-α
H+ [α
H2 - 4β
H (1 - R
H / R
H_STD)]
1/2] + T
H_STD ・・・(5)
したがって、発熱素子61の温度T
Hと雰囲気ガスの温度T
Iとの差ΔT
Hは、下記(6)式で与えられる。
ΔT
H = (1 / 2β
H)×[-α
H+ [α
H2 - 4β
H (1 - R
H / R
H_STD)]
1/2] + T
H_STD - T
I ・・・(6)
【0025】
雰囲気ガスの温度T
Iは、自己発熱しない程度の電力を与えられる第1の測温素子62の温度T
Iに近似する。第1の測温素子62の温度T
Iと、第1の測温素子62の抵抗値R
Iの関係は、下記(7)式で与えられる。
R
I = R
I_STD×[1+α
I (T
I-T
I_STD) + β
I (T
I-T
I_STD)
2] ・・・(7)
T
I_STDは第1の測温素子62の標準温度を表し、例えば20℃である。R
I_STDは標準温度T
I_STDにおける予め測定された第1の測温素子62の抵抗値を表す。α
Iは1次の抵抗温度係数を表す。β
Iは2次の抵抗温度係数を表す。上記(7)式より、第1の測温素子62の温度T
Iは下記(8)式で与えられる。
T
I = (1 / 2β
I)×[-α
I+ [α
I2 - 4β
I (1 - R
I / R
I_STD)]
1/2] + T
I_STD ・・・(8)
【0026】
よって、雰囲気ガスの放熱係数M
Iは、下記(9)式で与えられる。
M
I = P
H /ΔT
H
=P
H/[(1/2β
H)[-α
H+[α
H2-4β
H (1-R
H/R
H_STD)]
1/2]+T
H_STD-(1/2β
I)[-α
I+[α
I2-4β
I (1-R
I/R
I_STD)]
1/2]-T
I_STD]
・・・(9)
【0027】
発熱素子61の通電電流I
Hと、駆動電力P
H又は電圧V
Hは測定可能であるため、上記(2)式又は(3)式から発熱素子61の抵抗値R
Hを算出可能である。同様に、第1の測温素子62の抵抗値R
Iも算出可能である。よって、マイクロチップ8を用いて、上記(9)式から雰囲気ガスの放熱係数M
Iが算出可能である。
【0028】
なお、保温素子64で基板60の温度を一定に保つことにより、発熱素子61が発熱する前のマイクロチップ8の近傍の雰囲気ガスの温度が、基板60の一定の温度と近似する。そのため、発熱素子61が発熱する前の雰囲気ガスの温度の変動が抑制される。温度変動が一度抑制された雰囲気ガスを発熱素子61でさらに加熱することにより、より高い精度で放熱係数M
Iを算出することが可能となる。
【0029】
ここで、雰囲気ガスが混合ガスであり、混合ガスが、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDの4種類のガス成分からなっているとする。ガスAの体積率V
A、ガスBの体積率V
B、ガスCの体積率V
C、及びガスDの体積率V
Dの総和は、下記(10)式で与えられるように、1である。
V
A+V
B+V
C+V
D=1 ・・・(10)
【0030】
また、ガスAの単位体積当たりの発熱量をK
A、ガスBの単位体積当たりの発熱量をK
B、ガスCの単位体積当たりの発熱量をK
C、ガスDの単位体積当たりの発熱量をK
Dとすると、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の単位体積当たりの発熱量を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(11)式で与えられる。なお、単位体積当たりの発熱量の単位は、例えばMJ/m
3である。
Q = K
A×V
A+ K
B×V
B+ K
C×V
C+K
D×V
D ・・・(11)
【0031】
また、ガスAの放熱係数をM
A、ガスBの放熱係数をM
B、ガスCの放熱係数をM
C、ガスDの放熱係数をM
Dとすると、混合ガスの放熱係数M
Iは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の放熱係数を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの放熱係数M
Iは、下記(12)式で与えられる。
M
I = M
A×V
A+ M
B×V
B+ M
C×V
C+M
D×V
D ・・・(12)
【0032】
さらに、ガスの放熱係数は発熱素子61の温度T
Hに依存するので、混合ガスの放熱係数M
Iは、発熱素子61の温度T
Hの関数として、下記(13)式で与えられる。
M
I (T
H)= M
A(T
H)×V
A+ M
B(T
H)×V
B+ M
C(T
H)×V
C+M
D(T
H)×V
D ・・・(13)
【0033】
したがって、発熱素子61の温度がT
H1のときの混合ガスの放熱係数M
I1(T
H1)は下記(14)式で与えられる。また、発熱素子61の温度がT
H2のときの混合ガスの放熱係数M
I2(T
H2)は下記(15)式で与えられ、発熱素子61の温度がT
H3のときの混合ガスの放熱係数M
I3(T
H3)は下記(16)式で与えられる。
M
I1 (T
H1)= M
A(T
H1)×V
A+ M
B(T
H1)×V
B+ M
C(T
H1)×V
C+M
D(T
H1)×V
D ・・・(14)
M
I2 (T
H2)= M
A(T
H2)×V
A+ M
B(T
H2)×V
B+ M
C(T
H2)×V
C+M
D(T
H2)×V
D ・・・(15)
M
I3 (T
H3)= M
A(T
H3)×V
A+ M
B(T
H3)×V
B+ M
C(T
H3)×V
C+M
D(T
H3)×V
D ・・・(16)
【0034】
ここで、発熱素子61の温度T
Hに対して各ガス成分の放熱係数M
A(T
H),M
B(T
H),M
C(T
H),M
D(T
H)が非線形性を有する場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。また、発熱素子61の温度T
Hに対して各ガス成分の放熱係数M
A(T
H),M
B(T
H),M
C(T
H),M
D(T
H)が線形性を有する場合でも、発熱素子61の温度T
Hに対する各ガス成分の放熱係数M
A(T
H),M
B(T
H),M
C(T
H),M
D(T
H)の変化率が異なる場合は、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。さらに、(14)乃至(16)式が線形独立な関係を有する場合、(10)及び(14)乃至(16)式は線形独立な関係を有する。
【0035】
図7は、天然ガスに含まれるメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)の放熱係数と、発熱抵抗体である発熱素子61の温度との関係を示すグラフである。発熱素子61の温度に対して、メタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)のそれぞれのガス成分の放熱係数は線形性を有する。しかし、発熱素子61の温度に対する放熱係数の変化率は、メタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)のそれぞれで異なる。したがって、混合ガスを構成するガス成分がメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)であるである場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。
【0036】
(14)乃至(16)式中の各ガス成分の放熱係数M
A(T
H1),M
B(T
H1),M
C(T
H1),M
D(T
H1),M
A(T
H2),M
B(T
H2),M
C(T
H2),M
D(T
H2),M
A(T
H3),M
B(T
H3),M
C(T
H3),M
D(T
H3)の値は、測定等により予め得ることが可能である。したがって、(10)及び(14)乃至(16)式の連立方程式を解くと、ガスAの体積率V
A、ガスBの体積率V
B、ガスCの体積率V
C、及びガスDの体積率V
Dのそれぞれが、下記(17)乃至(20)式に示すように、混合ガスの放熱係数M
I1(T
H1),M
I2(T
H2),M
I3(T
H3)の関数として与えられる。なお、下記(17)乃至(20)式において、nを自然数として、f
nは関数を表す記号である。
V
A=f
1[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(17)
V
B=f
2[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(18)
V
C=f
3[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(19)
V
D=f
4[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(20)
【0037】
ここで、上記(11)式に(17)乃至(20)式を代入することにより、下記(21)式が得られる。
Q = K
A×V
A+ K
B×V
B+ K
C×V
C+K
D×V
D
= K
A×f
1[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)]
+ K
B×f
2[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)]
+ K
C×f
3[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)]
+ K
D×f
4[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(21)
【0038】
上記(21)式に示すように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱素子61の温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の混合ガスの放熱係数M
I1(T
H1),M
I2(T
H2),M
I3(T
H3)を変数とする方程式で与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(22)式で与えられる。
Q = g[M
I1 (T
H1), M
I2 (T
H2), M
I3 (T
H3)] ・・・(22)
【0039】
よって、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDからなる混合ガスについて、予め上記(22)式を得れば、ガスAの体積率V
A、ガスBの体積率V
B、ガスCの体積率V
C、及びガスDの体積率V
Dが未知の測定対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを容易に算出可能であることを、発明者は見出した。具体的には、発熱素子61の発熱温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の測定対象混合ガスの放熱係数M
I1(T
H1),M
I2(T
H2),M
I3(T
H3)を測定し、(22)式に代入することにより、測定対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0040】
また、混合ガスの放熱係数M
Iは、上記(9)式に示すように、発熱素子61の抵抗値R
Hと、第1の測温素子62の抵抗値R
Iと、に依存する。そこで、本発明者は、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(23)式に示すように、発熱素子61の温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61の抵抗値R
H1(T
H1),R
H2(T
H2),R
H3(T
H3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値R
Iと、を変数とする方程式でも与えられることを見出した。
Q = g[R
H1 (T
H1), R
H2 (T
H2), R
H3 (T
H3), R
I] ・・・(23)
【0041】
よって、測定対象混合ガスに接する発熱素子61の発熱温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61の抵抗値R
H1(T
H1),R
H2(T
H2),R
H3(T
H3)と、測定対象混合ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値R
Iを測定し、(23)式に代入することによっても、測定対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0042】
また、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(24)式に示すように、発熱素子61の温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61の通電電流I
H1(T
H1),I
H2(T
H2),I
H3(T
H3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の通電電流I
Iと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[I
H1 (T
H1), I
H2 (T
H2), I
H3 (T
H3), I
I] ・・・(24)
【0043】
あるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(25)式に示すように、発熱素子61の温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61にかかる電圧V
H1(T
H1),V
H2(T
H2),V
H3(T
H3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62にかかる電圧V
Iと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[V
H1 (T
H1), V
H2 (T
H2), V
H3 (T
H3), V
I] ・・・(25)
【0044】
またあるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(26)式に示すように、発熱素子61の温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61に接続されたアナログ−デジタル変換回路(以下において「A/D変換回路」という。)の出力信号AD
H1(T
H1),AD
H2(T
H2),AD
H3(T
H3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路の出力信号AD
Iと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[AD
H1 (T
H1), AD
H2 (T
H2), AD
H3 (T
H3), AD
I] ・・・(26)
【0045】
よって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(27)式に示すように、発熱素子61の発熱温度がT
H1,T
H2,T
H3である場合の発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iと、を変数とする方程式で与えられる。
Q = g[S
H1 (T
H1), S
H2 (T
H2), S
H3 (T
H3), S
I] ・・・(27)
【0046】
なお、混合ガスのガス成分は、4種類に限定されることはない。例えば、混合ガスがn種類のガス成分からなる場合、まず、下記(28)式で与えられる、少なくともn−1種類の発熱温度T
H1,T
H2,T
H3,・・・,T
Hn-1における発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3),・・・,S
Hn-1(T
Hn-1)と、混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iと、を変数とする方程式を予め取得する。そして、n−1種類の発熱温度T
H1,T
H2,T
H3,・・・,T
Hn-1における、n種類のガス成分のそれぞれの体積率が未知の測定対象混合ガスに接する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3),・・・,S
Hn-1(T
Hn-1)の値と、測定対象混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、を測定し、(28)式に代入することにより、測定対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
Q = g[S
H1 (T
H1), S
H2 (T
H2), S
H3 (T
H3), ・・・, S
Hn-1 (T
Hn-1), S
I] ・・・(28)
【0047】
ただし、混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)に加えて、jを自然数として、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)以外のアルカン(C
jH
2j+2)を含む場合、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)以外のアルカン(C
jH
2j+2)を、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)の混合物とみなしても、(28)式の算出には影響しない。例えば、エタン(C
2H
6)、ブタン(C
4H
10)、ペンタン(C
5H
12)、ヘキサン(C
6H
14)を、下記(29)乃至(32)式に示すように、それぞれ所定の係数を掛けられたメタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)の混合物とみなして(28)式を算出してもかまわない。
C
2H
6 = 0.5 CH
4 + 0.5 C
3H
8 ・・・(29)
C
4H
10 = -0.5 CH
4 + 1.5 C
3H
8 ・・・(30)
C
5H
12 = -1.0 CH
4 + 2.0 C
3H
8 ・・・(31)
C
6H
14 = -1.5 CH
4 + 2.5 C
3H
8 ・・・(32)
【0048】
したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなる混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)に加えて、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)以外のz種類のアルカン(C
jH
2j+2)を含む場合、少なくともn−z−1種類の発熱温度における発熱素子61からの電気信号S
Hと、第1の測温素子62からの電気信号S
Iと、を変数とする方程式を求めてもよい。
【0049】
なお、(28)式の算出に用いられた混合ガスのガス成分の種類と、単位体積当たりの発熱量Qが未知の測定対象混合ガスのガス成分の種類が同じ場合に、測定対象混合ガスの発熱量Qの算出に(28)式を利用可能であることはもちろんである。さらに、測定対象混合ガスがn種類より少ない種類のガス成分からなり、かつ、n種類より少ない種類のガス成分が、(28)式の算出に用いられた混合ガスに含まれている場合も、(28)式を利用可能である。例えば、(28)式の算出に用いられた混合ガスが、メタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)の4種類のガス成分を含む場合、測定対象混合ガスが、窒素(N
2)を含まず、メタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、及び二酸化炭素(CO
2)の3種類のガス成分のみを含む場合も、測定対象混合ガスの発熱量Qの算出に(28)式を利用可能である。
【0050】
さらに、(28)式の算出に用いられた混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)を含む場合、測定対象混合ガスが、(28)式の算出に用いられた混合ガスに含まれていないアルカン(C
jH
2j+2)を含んでいても、(28)式を利用可能である。これは、上述したように、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)以外のアルカン(C
jH
2j+2)を、メタン(CH
4)とプロパン(C
3H
8)の混合物とみなしても、(28)式を用いた単位体積当たりの発熱量Qの算出に影響しないためである。
【0051】
ここで、
図8及び
図9に示す実施の形態に係る発熱量測定システム20は、複数のサンプル混合ガスのそれぞれが流れるパイプ101と、パイプ101に配置され、
図1に示す第1の測温素子62及び複数の発熱温度T
Hで発熱する発熱素子61を含むマイクロチップ8と、を備える。
図8に示すように、マイクロチップ8は、断熱部材18を介してパイプ101内に突き出るように配置されている。なお、少なくとも
図1に示す第1の測温素子62及び発熱素子61が
図8に示すパイプ101内に突き出ていれば、マイクロチップ8は部分的にパイプ101の側壁に埋め込まれていてもよい。マイクロチップ8をパイプ101内に突き出すように配置することにより、
図2に示すマイクロチップ8のキャビティ66内のガスの置換が速くなり、マイクロチップ8の応答性が向上する。
【0052】
また、
図10に示すように、マイクロチップ8を、パイプ101の側壁に対して斜めに配置してもよい。この場合、
図10に示すように、マイクロチップ8を含むパッケージ118全体を、パイプ101の側壁に対して斜めに配置してもよいし、
図11に示すように、マイクロチップ8をパッケージ118に対して斜めにダイボンドすることにより、マイクロチップ8をパイプ101の側壁に対して斜めに配置してもよい。マイクロチップ8をパイプ101の側壁に対して斜めに配置することによって、マイクロチップ8がパイプ101内を流れてくるガスに対向するため、
図2に示すマイクロチップ8のキャビティ66内のガスが効率良く置換する。
図4に示すマイクロチップ8においても同様である。
【0053】
図8に示す発熱量測定システム20は、さらに、複数のサンプル混合ガスのそれぞれの温度T
Iに依存する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、複数の発熱温度T
Hのそれぞれにおける発熱素子61からの電気信号S
Hの値と、を測定する測定部301と、複数の混合ガスの既知の発熱量Qの値、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値、及び複数の発熱温度における発熱素子61からの電気信号の値に基づいて、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び複数の発熱温度T
Hにおける発熱素子61からの電気信号S
Hを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成部と、を備える。なお、サンプル混合ガスは、複数種類のガス成分を含む。
【0054】
それぞれ発熱量Qが異なる4種類のサンプル混合ガスが使用される場合、
図9に示すように、第1のサンプル混合ガスを貯蔵する第1のガスボンベ50A、第2のサンプル混合ガスを貯蔵する第2のガスボンベ50B、第3のサンプル混合ガスを貯蔵する第3のガスボンベ50C、及び第4のサンプル混合ガスを貯蔵する第4のガスボンベ50Dが用意される。第1のガスボンベ50Aには、パイプ91Aを介して、第1のガスボンベ50Aから例えば0.2MPa等の低圧に調節された第1のサンプル混合ガスを得るための第1のガス圧調節器31Aが接続されている。また、第1のガス圧調節器31Aには、パイプ92Aを介して、第1の流量制御装置32Aが接続されている。第1の流量制御装置32Aは、パイプ92A及びパイプ101を介して発熱量測定システム20に送られる第1のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0055】
第2のガスボンベ50Bには、パイプ91Bを介して、第2のガス圧調節器31Bが接続されている。また、第2のガス圧調節器31Bには、パイプ92Bを介して、第2の流量制御装置32Bが接続されている。第2の流量制御装置32Bは、パイプ92B,93,101を介して発熱量測定システム20に送られる第2のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0056】
第3のガスボンベ50Cには、パイプ91Cを介して、第3のガス圧調節器31Cが接続されている。また、第3のガス圧調節器31Cには、パイプ92Cを介して、第3の流量制御装置32Cが接続されている。第3の流量制御装置32Cは、パイプ92C,93,101を介して発熱量測定システム20に送られる第3のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0057】
第4のガスボンベ50Dには、パイプ91Dを介して、第4のガス圧調節器31Dが接続されている。また、第4のガス圧調節器31Dには、パイプ92Dを介して、第4の流量制御装置32Dが接続されている。第4の流量制御装置32Dは、パイプ92D,93,101を介して発熱量測定システム20に送られる第4のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0058】
第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えば天然ガスである。第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えばメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)の4種類のガス成分を含む。
【0059】
図8に示すパイプ101に第1のサンプル混合ガスが留まることなく流れる際、
図1及び
図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第1のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号S
Iを出力する。次に、発熱素子61は、
図8に示す駆動回路303から駆動電力P
H1,P
H2,P
H3を与えられる。駆動電力P
H1,P
H2,P
H3を与えられた場合、パイプ101内を留まることなく流れる第1のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度T
H1、150℃の温度T
H2、及び200℃の温度T
H3で発熱し、発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)を出力する。
【0060】
パイプ101から第1のサンプル混合ガスが除去された後、第2乃至第4のサンプル混合ガスがパイプ101に順次流される。パイプ101に第2のサンプル混合ガスが留まることなく流れる際、
図1及び
図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第2のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号S
Iを出力する。次に、留まることなく流れる第2のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)を出力する。
【0061】
図8に示すパイプ101に第3のサンプル混合ガスが留まることなく流れる際、
図1及び
図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第3のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号S
Iを出力する。次に、留まることなく流れる第3のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)を出力する。
【0062】
図8に示すパイプ101に第4のサンプル混合ガスが留まることなく流れる際、
図1及び
図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第4のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号S
Iを出力する。次に、留まることなく流れる第4のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)を出力する。
【0063】
なお、それぞれのサンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、マイクロチップ8の
図1及び
図2に示す発熱素子61は、少なくともn−1種類の異なる温度で発熱させられる。ただし、上述したように、メタン(CH
4)及びプロパン(C
3H
8)以外のアルカン(C
jH
2j+2)は、メタン(CH
4)及びプロパン(C
3H
8)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH
4)及びプロパン(C
3H
8)に加えてz種類のアルカン(C
jH
2j+2)を含む場合は、発熱素子61は、少なくともn−z−1種類の異なる温度で発熱させられる。
【0064】
図8に示すように、マイクロチップ8は、測定部301を含む中央演算処理装置(CPU)300に接続されている。CPU300には、電気信号記憶装置401が接続されている。測定部301は、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、発熱素子61からの発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)の値と、を測定し、測定値を電気信号記憶装置401に保存する。
【0065】
なお、第1の測温素子62からの電気信号S
Iとは、第1の測温素子62の抵抗値R
I、第1の測温素子62の通電電流I
I、第1の測温素子62にかかる電圧V
I、及び第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路304の出力信号AD
Iのいずれであってもよい。同様に、発熱素子61からの電気信号S
Hとは、発熱素子61の抵抗値R
H、発熱素子61の通電電流I
H、発熱素子61にかかる電圧V
H、及び発熱素子61に接続されたA/D変換回路304の出力信号AD
Hのいずれであってもよい。
【0066】
CPU300に含まれる式作成部302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの既知の発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の複数の測定値と、を収集する。さらに式作成部302は、収集した発熱量Q、電気信号S
I、及び電気信号S
Hの値に基づいて、多変量解析により、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。
【0067】
なお、「多変量解析」とは、A. J Smola及びB. Scholkopf著の「A Tutorial on Support Vector Regression」(NeuroCOLT Technical Report (NC−TR−98−030)、1998年)に開示されているサポートベクトル回帰、重回帰分析、及び特開平5−141999号公報に開示されているファジィ数量化理論II類等を含む。
【0068】
発熱量測定システム20は、CPU300に接続された式記憶装置402をさらに備える。式記憶装置402は、式作成部302が作成した発熱量算出式を保存する。さらにCPU300には、入力装置312及び出力装置313が接続される。入力装置312としては、例えばキーボード、及びマウス等のポインティングデバイス等が使用可能である。出力装置313には液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置、及びプリンタ等が使用可能である。
【0069】
次に、
図12に示すフローチャートを用いて実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法について説明する。
【0070】
(a)ステップS100で、
図9に示す第2乃至第4の流量制御装置32B−32Dの弁を閉じたまま、第1の流量制御装置32Aの弁を開き、
図8に示すパイプ101内に第1のサンプル混合ガスを導入する。ステップS101で、測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる第1のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。次に、駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61に駆動電力P
H1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、100℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0071】
(b)ステップS102で、駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度150℃及び温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、
図8に示す駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61を150℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる第1のサンプル混合ガスに接し、150℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H2(T
H2)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0072】
(c)再びステップS102で、
図1及び
図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、
図8に示す駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61を200℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる第1のサンプル混合ガスに接し、200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H3(T
H3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0073】
(d)発熱素子61の温度の切り替えが完了した場合には、ステップS102からステップS103に進む。ステップS103で、サンプル混合ガスの切り替えが完了したか否かを判定する。第2乃至第4のサンプル混合ガスへの切り替えが完了していない場合には、ステップS100に戻る。ステップS100で、
図9に示す第1の流量制御装置32Aを閉じ、第3乃至第4の流量制御装置32C−32Dの弁を閉じたまま第2の流量制御装置32Bの弁を開き、
図8に示すパイプ101内に第2のサンプル混合ガスを導入する。
【0074】
(e)第1のサンプル混合ガスと同様に、ステップS101乃至ステップS102のループが繰り返される。測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる第2のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。また、測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる第2のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0075】
(f)その後、ステップS100乃至ステップS103のループが繰り返される。これにより、パイプ101内を留まることなく流れる第3のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、パイプ101内を留まることなく流れる第3のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の値と、が電気信号記憶装置401に保存される。また、パイプ101内を留まることなく流れる第4のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、パイプ101内を留まることなく流れる第4のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の値と、が電気信号記憶装置401に保存される。
【0076】
(g)ステップS104で、入力装置312から式作成部302に、第1のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第2のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第3のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、及び第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値を入力する。また、式作成部302は、電気信号記憶装置401から、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の複数の測定値と、を読み出す。
【0077】
(h)ステップS105で、第1乃至第4のサンプル混合ガスの発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の複数の測定値と、に基づいて、式作成部302は、重回帰分析を行う。重回帰分析により、式作成部302は、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。その後、ステップS106で、式作成部302は作成した発熱量算出式を式記憶装置402に保存し、実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法が終了する。
【0078】
以上示したように、実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法によれば、測定対象混合ガスの発熱量Qの値を一意に算出可能な発熱量算出式を作成することが可能となる。
【0079】
次に、発熱量Qが未知の測定対象混合ガスの発熱量Qの値を測定する際の、実施の形態に係る発熱量測定システム20の機能を説明する。例えば未知の体積率でメタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)等を含む、発熱量Qが未知の天然ガス等の測定対象混合ガスが、パイプ101に導入される。
図1及び
図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスの温度に依存する電気信号S
Iを出力する。次に、発熱素子61は、
図8に示す駆動回路303から駆動電力P
H1,P
H2,P
H3を与えられる。駆動電力P
H1,P
H2,P
H3を与えられた場合、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度T
H1、150℃の温度T
H2、及び200℃の温度T
H3で発熱し、発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)を出力する。
【0080】
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接し、測定対象混合ガスの温度T
Iに依存する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、測定対象混合ガスに接する発熱素子61からの発熱温度T
H1における電気信号S
H1(T
H1)、発熱温度T
H2における電気信号S
H2(T
H2)、及び発熱温度T
H3における電気信号S
H3(T
H3)の値と、を測定し、測定値を電気信号記憶装置401に保存する。
【0081】
上述したように、式記憶装置402は、第1の測温素子62からの電気信号S
Iと、発熱温度T
H1が100℃の発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1)と、発熱温度T
H2が150℃の発熱素子61からの電気信号S
H2(T
H2)と、発熱温度T
H3が200℃の発熱素子61からの電気信号S
H3(T
H3)と、を独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存している。
【0082】
実施の形態に係る発熱量測定システム20は、さらに、発熱量算出部305を備える。発熱量算出部305は、発熱量算出式の第1の測温素子62からの電気信号S
Iの独立変数、及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の独立変数に、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの測定値、及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の測定値をそれぞれ代入し、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスの発熱量Qの測定値を算出する。CPU300には、発熱量記憶装置403がさらに接続されている。発熱量記憶装置403は、発熱量算出部305が算出した測定対象混合ガスの発熱量Qの値を保存する。
【0083】
次に、
図13に示すフローチャートを用いて、実施の形態に係る発熱量の測定方法について説明する。
【0084】
(a)ステップS200で、
図8に示すパイプ101内に測定対象混合ガスを導入する。ステップS201で、測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。次に、駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61に駆動電力P
H1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接し、100℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0085】
(b)ステップS202で、
図8に示す駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度150℃及び温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61に駆動電力P
H2を与え、発熱素子61を150℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接し、150℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H2(T
H2)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0086】
(c)再びステップS202で、
図1及び
図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、駆動回路303は、
図1及び
図2に示す発熱素子61に駆動電力P
H3を与え、発熱素子61を200℃で発熱させる。
図8に示す測定部301は、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接し、200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号S
H3(T
H3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0087】
(d)発熱素子61の温度の切り替えが完了した場合には、ステップS202からステップS203に進む。ステップS203で、
図8に示す発熱量算出部305は、式記憶装置402から、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を読み出す。また、発熱量算出部305は、電気信号記憶装置401から、測定対象混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの測定値、及び測定対象混合ガスに接する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の測定値を読み出す。
【0088】
(e)ステップS204で、発熱量算出部305は、発熱量算出式の電気信号S
I及び電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の独立変数に、それぞれ測定値を代入し、測定対象混合ガスの発熱量Qの値を算出する。その後、発熱量算出部305は、算出した発熱量Qの値を発熱量記憶装置403に保存し、実施の形態に係る発熱量の測定方法を終了する。
【0089】
以上説明した実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、高価なガスクロマトグラフィ装置や音速センサを用いることなく、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号S
Iの値と、パイプ101内を留まることなく流れる測定対象混合ガスに接する発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の値と、から、測定対象混合ガスの混合ガスの発熱量Qの値を測定することが可能となる。
【0090】
天然ガスは、産出ガス田によって炭化水素の成分比率が異なる。また、天然ガスには、炭化水素の他に、窒素(N
2)や炭酸ガス(CO
2)等が含まれる。そのため、産出ガス田によって、天然ガスに含まれるガス成分の体積率は異なり、ガス成分の種類が既知であっても、天然ガスの発熱量Qは未知であることが多い。また、同一のガス田由来の天然ガスであっても、発熱量Qが常に一定であるとは限らず、採取時期によって変化することもある。
【0091】
従来、天然ガスの使用料金を徴収する際には、天然ガスの使用発熱量Qでなく、使用体積に応じて課金する方法がとられている。しかし、天然ガスは由来する産出ガス田によって発熱量Qが異なるため、使用体積に課金するのは公平でない。これに対し、実施の形態に係る発熱量算出方法を用いれば、ガス成分の種類が既知であるが、ガス成分の体積率が未知であるために発熱量Qが未知の天然ガス等の混合ガスの発熱量Qを、簡易に算出することが可能となる。そのため、公平な使用料金を徴収することが可能となる。
【0092】
また、ガスタービンを駆動する際には、ガスタービンに供給する燃料ガスとしての天然ガスの発熱量Qをタイムラグなく監視することが求められる。燃料ガスの発熱量Qが一定でない場合、燃焼振動等でガスタービンが破損することがあるためである。しかし、従来の熱量計は、応答時間が分単位と長く、ガスタービンに供給する燃料ガスの発熱量Qの制御に適さない。これに対し、実施の形態に係る発熱量測定システムは、秒単位で発熱量を測定することが可能であるため、ガスタービンに供給する燃料ガスの発熱量Qの制御にも適する。
【0093】
さらに、実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、天然ガス等の混合ガスの正確な発熱量Qを容易に知ることが可能となるため、混合ガスを燃焼させる場合に必要な空気量を適切に設定することが可能となる。そのため、無駄な二酸化炭素(CO
2)の排出量を削減することも可能となる。
【0094】
(実施例1)
まず、発熱量Qの値が既知の23種類のサンプル混合ガスを用意した。23種類のサンプル混合ガスのそれぞれは、ガス成分としてメタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)、窒素(N
2)、及び二酸化炭素(CO
2)のいずれか又は全部を含んでいた。例えば、あるサンプル混合ガスは、90vol%のメタン、3vol%のエタン、1vol%のプロパン、1vol%のブタン、4vol%の窒素、及び1vol%の二酸化炭素を含んでいた。また、あるサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、10vol%のエタン、3vol%のプロパン、及び2vol%のブタンを含み、窒素及び二酸化炭素を含んでいなかった。また、あるサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、8vol%のエタン、2vol%のプロパン、1vol%のブタン、2vol%の窒素、及び2vol%の二酸化炭素を含んでいた。
【0095】
次に、23種類のサンプル混合ガスのそれぞれを用いて、
図8に示す第1の測温素子62からの電気信号S
Iの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の複数の測定値と、を取得した。その後、23種類のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号S
Iの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)の複数の測定値と、に基づいて、サポートベクトル回帰により、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする、発熱量Qを算出するための1次方程式、2次方程式、及び3次方程式を作成した。
【0096】
発熱量Qを算出するための1次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、3乃至5個を目安に、適宜決定できる。作成された1次方程式は下記(33)乃至(35)式で与えられた。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを(33)乃至(35)式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は2.1%であった。
Q = 40.1 + 17.4×V
H1 (100℃) + 17.9×V
H2 (150℃) - 28.9×V
H3 (200℃) - 10.4×V
I ・・・(33)
Q = 40.1 + 23.8×R
H1 (100℃) + 6.07×R
H2 (150℃) - 22.8×R
H3 (200℃) - 11.4×R
I ・・・(34)
Q = 40.1 + 17.4×AD
H1 (100℃) + 17.9×AD
H2 (150℃) - 28.9×AD
H3 (200℃) - 10.4×AD
I ・・・(35)
【0097】
発熱量Qを算出するための2次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、8乃至9個を目安に、適宜決定できる。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された2次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2乃至1.4%であった。
【0098】
発熱量Qを算出するための3次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、10乃至14個を目安に、適宜決定できる。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された3次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2%未満であった。
【0099】
(実施例2)
実施例1で使用したサンプル混合ガスと同様に、発熱量Qの値が既知の23種類のサンプル混合ガスを用意した。ここで、発熱素子61で加熱される前のサンプル混合ガスの温度を、−10℃、5℃、23℃、40℃、及び50℃に設定した。次に、サポートベクトル回帰により、第1の測温素子62からの電気信号S
I及び発熱素子61からの電気信号S
H1(T
H1),S
H2(T
H2),S
H3(T
H3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする、発熱量Qを算出するための3次方程式を作成した。すると、
図14乃至
図16に示すように、発熱素子61で加熱される前のサンプル混合ガスの温度にかかわらず、算出される発熱量Qの誤差にばらつきが生じなかった。なお、
図14の結果は、電気信号Sとして抵抗Rを用いて得られた。
図15の結果は、電気信号Sとして電圧Vを用いて得られた。
図16の結果は、電気信号SとしてA/D変換回路304からの出力信号ADを用いて得られた。
【0100】
(実施例3)
図17に示すように、マイクロチップ8をパイプ101内に突き出るように配置した、実施例3に係る発熱量測定システムを用意した。また、
図18に示すように、パイプ101の側壁に凹部を設け、マイクロチップ8をパイプ101の側壁の凹部に配置した、比較例に係る発熱量測定システムも用意した。次に、実施例3に係る発熱量測定システムと、比較例に係る発熱量測定システムと、を用いて、同一条件下で、測定対象混合ガスの発熱量を算出した。すると、
図19に示すように、実施例3に係る発熱量測定システムは、約8秒で発熱量の算出が可能であった。しかし、
図20に示すように、比較例に係る発熱量測定システムは、約16秒で発熱量の算出が可能であった。したがって、マイクロチップ8をパイプ101内に突き出るように配置することにより、マイクロチップ8の応答速度が向上することが示された。
【0101】
また、実施例3に係る発熱量測定システムを用いて、様々な流量で、測定対象混合ガスの発熱量を算出した。結果として、
図21に示すように、流量を変化させても、発熱量の算出誤差は0.3%以内に収まることが示された。したがって、実施例3に係る発熱量測定システムは、ガスタービンへのガスの供給路等、ガスの流量を変更することが好ましくない環境においても、正確に発熱量を算出可能であることが示された。
【0102】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、実施の形態では、
図8に示す式記憶装置402が、
図1に示す第1の測温素子62からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子61からの電気信号を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存する例を説明した。
【0103】
これに対し、上記(22)式で説明したように、気体の発熱量Qは、発熱素子61の温度がそれぞれT
H1,T
H2,T
H3である場合の気体の放熱係数M
I1(T
H1),M
I2(T
H2),M
I3(T
H3)を変数とする方程式でも与えられる。よって、
図8に示す式記憶装置402は、発熱素子61の複数の発熱温度における気体の放熱係数を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式等の、放熱係数と、発熱量Qと、の相関関係を保存してもよい。この場合、測定部301は、パイプ101に注入された気体の放熱係数の測定値を、発熱素子61を複数の発熱温度に発熱させて測定する。なお、気体の放熱係数をマイクロチップ8を用いて測定可能であることは、上記(9)式で説明したとおりである。発熱量算出部305は、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式の独立変数に、気体の放熱係数の測定値を代入して、気体の発熱量Qの測定値を算出する。
【0104】
次に、
図22は、発熱抵抗体に2mA、2.5mA、及び3mAの電流を流した際の、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率と、の関係を示す。
図22に示すように、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率と、は一般に比例関係にある。したがって、
図8に示す式記憶装置402は、発熱素子61の複数の発熱温度における気体の熱伝導率を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存してもよい。この場合、測定部301は、パイプ101に注入された気体の熱伝導率の測定値を、発熱素子61を複数の発熱温度に発熱させて測定する。発熱量算出部305は、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式の独立変数に、気体の熱伝導率の測定値を代入して、気体の発熱量Qの測定値を算出する。
【0105】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。