(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759791
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】車両用エアサスペンション制御装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/052 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
B60G17/052
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-115323(P2011-115323)
(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公開番号】特開2012-240621(P2012-240621A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 貴司
【審査官】
平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−067316(JP,A)
【文献】
特開2005−029089(JP,A)
【文献】
特開2009−067246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右の前輪を支持するように配設されるフロントエアスプリングと、
車両の左右の後輪を支持するように配設されるリヤエアスプリングと、
前記車両前部における左右の車高の変化をそれぞれバルブ本体から張り出すレバーの傾動によって検出し、該レバーの傾動に連動させて前記フロントエアスプリングにエアタンク内の圧縮エアを給排することにより、車両前部における左右それぞれの車高を一定高さに且つ車軸に対し車体を平行に保持するレベリング制御を行うためのフロントレベリングバルブと、
前記車両後部における左右中間部の車高の変化をバルブ本体から張り出すレバーの傾動によって検出し、該レバーの傾動に連動させて前記リヤエアスプリングにエアタンク内の圧縮エアを給排することにより、車両後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御を行うためのリヤレベリングバルブと
を備えた車両用エアサスペンション制御装置において、
前記車両前部における左右の車高を検出するフロント車高センサと、
前記車両後部における左右の車高を検出するリヤ車高センサと、
前記フロントレベリングバルブとフロントエアスプリングとをつなぐエア管路途中に設けられるカットバルブと、
走行時或いは停止時、乗降口が設けられた車両前部の車高を下げるクラウチング制御が行われていない通常モード中に、前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差の絶対値が予め設定された第一閾値以上で、且つ、前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高の差と前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差との積が負となる場合、又は、前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高と基準車高との差の絶対値が予め設定された第二閾値以下となる場合に、車両がうねり路にいると判断し、前記カットバルブを閉じる制御信号を出力し、前記車両前部における左右それぞれのレベリング制御を強制的に休止させるコントローラと
を備えたことを特徴とする車両用エアサスペンション制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアサスペンション制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアサスペンション制御装置が搭載されたバス等の車両の場合、停車時或いは走行時には、路面の凹凸や傾斜によって車輪が上下動したり、或いは車体が傾斜したりしようとしても、車両前部における左右の車高を独立して一定高さに保持することにより車軸に対し車体を平行に保持するレベリング制御を行うようになっているものがある。
【0003】
図3は従来の車両用エアサスペンション制御装置の一例を示す全体概要構成図であって、1はバス等の車両、2は車両1の前輪、3は車両1の後輪であり、この車両用エアサスペンション制御装置は、前記前輪2を支持するように左右一個ずつ合計二個配設されるフロントエアスプリング4と、前記後輪3を支持するように左右二個ずつ合計四個配設されるリヤエアスプリング5と、圧縮エアが充填されたエアタンク6と、該エアタンク6と前記フロントエアスプリング4とを接続するエア管路7と、該エア管路7途中に設けられ、前記車両1前部における左右の車高の変化をそれぞれバルブ本体8Bから張り出すレバー8Lの傾動によって機械的に検出し、該レバー8Lの傾動に連動させて前記フロントエアスプリング4にエアタンク6内の圧縮エアを給排するフロントレベリングバルブ8と、前記エア管路7から分岐してリヤエアスプリング5とエアタンク6とを接続するエア管路9と、該エア管路9途中に設けられ、前記車両1後部における左右中間部の車高の変化をバルブ本体10Bから張り出すレバー10Lの傾動によって機械的に検出し、該レバー10Lの傾動に連動させて前記リヤエアスプリング5にエアタンク6内の圧縮エアを給排するリヤレベリングバルブ10とを備えてなる構成を有している。
【0004】
前記車両用エアサスペンション制御装置においては、停車時或いは走行時、前記車両1前部における左右の車高が低くなると、前記フロントレベリングバルブ8のレバー8Lが相対的に上方へ傾動し、エアタンク6内の圧縮エアが左右のフロントエアスプリング4へ供給される一方、逆に前記車両1前部における左右の車高が高くなると、前記フロントレベリングバルブ8のレバー8Lが相対的に下方へ傾動し、左右のフロントエアスプリング4から圧縮エアが排出される。同時に、前記車両1後部における左右中間部の車高が低くなると、前記リヤレベリングバルブ10のレバー10Lが相対的に上方へ傾動し、エアタンク6内の圧縮エアが左右のリヤエアスプリング5へ供給される一方、逆に前記車両1後部における左右中間部の車高が高くなると、前記リヤレベリングバルブ10のレバー10Lが相対的に下方へ傾動し、左右のリヤエアスプリング5から圧縮エアが排出される。このようにして、レベリング制御が行われ、路面の凹凸や傾斜によって車輪が上下動したり、或いは車体が傾斜したりしようとしても、車両1前部における左右の車高を独立して一定高さに保持することにより車軸に対し車体が平行に保持され、車両1が横転しにくくなって安定性が増すようになっている。
【0005】
尚、前述の如き車両用エアサスペンション制御装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−205630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、
図4(a)に示される如く、車両1の右側の前輪2が接地する路面の高さが左側より著しく高くなっており、車両1の後輪3(
図4には示されていない)が接地する路面の高さは、
図4(b)に示される如く、前輪2側とは逆に右側の方が低くなっているような状況となる「うねり路」において、
図4(a)に示される如く、車両1前部における左右の車高を独立して一定高さに保持することにより車軸に対し車体が平行に保持された場合、車両1後部は、
図4(b)に示される如く、車両1後部における左右中間部の車高が高くなっていると判断され、
図3に示される前記リヤレベリングバルブ10のレバー10Lが相対的に下方へ傾動し、左右のリヤエアスプリング5から圧縮エアが排出されると、左側のリヤエアスプリング5に内蔵されているバンプストッパが、該リヤエアスプリング5の上面プレートに接触して高さ方向へそれ以上収縮できなくなる、いわゆるラバーコンタクト状態に陥ってしまうことがあった。
【0008】
しかも、前記左側のリヤエアスプリング5がラバーコンタクト状態となってしまってからも更に右側のリヤエアスプリング5から圧縮エアが排出された場合、車両1後部における右側の車高が低くなって車体の傾斜角度が緩やかになることから、この動作に伴って、車両1前部における右側の車高も低くなり、前記フロントレベリングバルブ8のレバー8Lが相対的に上方へ傾動し、エアタンク6内の圧縮エアが右側のフロントエアスプリング4へ供給されてしまい、以下、前述と同様の動作が繰り返され、車両1前部における左右の車高を独立して一定高さに保持するレベリング制御と、車両1後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御とが交互に行われて制御が収束せず、エアタンク6内の圧縮エアが全部消費されるまで車体の上下動が継続してしまうという不具合が生じる可能性があった。
【0009】
又、例えば、
図4(b)に示される如く、車両1の左側の後輪3が接地する路面の高さが右側より著しく高くなっており、車両1の前輪2が接地する路面の高さは、車両1の左側の後輪3が接地する路面の高さと等しく左右で高低差がほとんどないような状況においても、前述と同様の車両1後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御と、車両1前部における左右の車高を独立して一定高さに保持するレベリング制御とが交互に行われて制御が収束せず、エアタンク6内の圧縮エアが全部消費されるまで車体の上下動が継続してしまうという不具合が生じる可能性もあった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、車両の前輪と後輪が接地する路面の高さが左右で異なるうねり路を確実に判定することができ、且つ圧縮エアの消費を抑制し得る車両用エアサスペンション制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両の左右の前輪を支持するように配設されるフロントエアスプリングと、
車両の左右の後輪を支持するように配設されるリヤエアスプリングと、
前記車両前部における左右の車高の変化をそれぞれバルブ本体から張り出すレバーの傾動によって検出し、該レバーの傾動に連動させて前記フロントエアスプリングにエアタンク内の圧縮エアを給排することにより、車両前部における左右それぞれの車高を一定高さに且つ車軸に対し車体を平行に保持するレベリング制御を行うためのフロントレベリングバルブと、
前記車両後部における左右中間部の車高の変化をバルブ本体から張り出すレバーの傾動によって検出し、該レバーの傾動に連動させて前記リヤエアスプリングにエアタンク内の圧縮エアを給排することにより、車両後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御を行うためのリヤレベリングバルブと
を備えた車両用エアサスペンション制御装置において、
前記車両前部における左右の車高を検出するフロント車高センサと、
前記車両後部における左右の車高を検出するリヤ車高センサと、
前記フロントレベリングバルブと
フロントエアスプリングとをつなぐエア管路途中に設けられるカットバルブと、
走行時或いは停止時、乗降口が設けられた車両前部の車高を下げるクラウチング制御が行われていない通常モード中に、前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差の絶対値が予め設定された第一閾値以上で、且つ、前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高の差と前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差との積が負となる場合、又は、前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高と基準車高との差の絶対値が予め設定された第二閾値以下となる場合に、車両がうねり路にいると判断し、前記カットバルブを閉じる制御信号を出力し、前記車両前部における左右それぞれのレベリング制御を強制的に休止させるコントローラと
を備えたことを特徴とする車両用エアサスペンション制御装置にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
前述の如く構成すると、例えば、車両の左右一方の側の後輪が接地する路面の高さが左右他方の側より著しく高い、即ち、前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差の絶対値が予め設定された第一閾値以上となっており、車両の前輪が接地する路面の高さは、後輪側とは逆に左右一方の側の方が低い、即ち、前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差と前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高の差との積が負となっているような場合、車両がうねり路にいると判断され、カットバルブ13が閉じ、車両前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止される。
【0014】
ここで、前記車両後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御を行うために、仮に、前記左右一方の側のリヤエアスプリングがラバーコンタクト状態となってしまってからも更に左右他方の側のリヤエアスプリングから圧縮エアが排出された場合、車両後部における左右他方の側の車高が低くなって車体の傾斜角度が緩やかになることから、この動作に伴って、本来であれば、車両前部における左右他方の側の車高も低くなり、前記フロントレベリングバルブのレバーが傾動し、エアタンク内の圧縮エアが左右他方の側のフロントエアスプリングへ供給されてしまうが、前記カットバルブが閉じて車両前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止されているため、エアタンク内の圧縮エアが左右他方の側のフロントエアスプリングへ供給されてしまうことが阻止される。
【0015】
又、例えば、車両の左右一方の側の後輪が接地する路面の高さが左右他方の側より著しく高い、即ち、前記リヤ車高センサで検出される車両後部における左右の車高の差の絶対値が予め設定された第一閾値以上となっており、車両の前輪が接地する路面の高さは、左右で高低差がほとんどない、即ち、前記フロント車高センサで検出される車両前部における左右の車高と基準車高との差の絶対値が予め設定された第二閾値以下となっているような場合も、車両がうねり路にいると判断され、前記カットバルブが閉じて車両前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止されているため、エアタンク内の圧縮エアが左右他方の側のフロントエアスプリングへ供給されてしまうことが阻止され、前記車両後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御のみが単独で行われることとなる。
【0016】
この結果、車両前部における左右の車高を独立して一定高さに保持するレベリング制御と、車両後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御とが交互に行われて制御が収束しなくなるようなことが回避され、エアタンク内の圧縮エアが全部消費されるまで車体の上下動が継続してしまうというような不具合も生じなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用エアサスペンション制御装置によれば、車両の前輪と後輪が接地する路面の高さが左右で異なるうねり路を確実に判定することができ、且つ圧縮エアの消費を抑制し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の車両用エアサスペンション制御装置の実施例を示す全体概要構成図である。
【
図2】本発明の車両用エアサスペンション制御装置の実施例を示すフローチャートである。
【
図3】従来の車両用エアサスペンション制御装置の一例を示す全体概要構成図である。
【
図4】車両がうねり路にいる状況の一例を示す概略図であって、(a)は車両の前輪が接地する右側の路面の高さが左側より高い状態を示す図、(b)は車両の後輪が接地する左側の路面の高さが右側より高い状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び
図2は本発明の車両用エアサスペンション制御装置の実施例であって、図中、
図3及び
図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図3及び
図4に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、
図1及び
図2に示す如く、車両1前部における左右の車高を検出するフロント車高センサ11と、車両1後部における左右の車高12aを検出するリヤ車高センサ12とを設け、前記フロントレベリングバルブ8と
フロントエアスプリング4とをつなぐエア管路7途中にカットバルブ13を設け、通常モード中に、車両1がうねり路にいるか否かを判断し、該車両1がうねり路にいる場合には、前記カットバルブ13を閉じる制御信号13aを出力し、前記車両1前部における左右それぞれのレベリング制御を強制的に休止させるコントローラ14を設けた点にある。
【0021】
先ず、
図2のステップS1において通常モードとは、走行時或いは停止時に、クラウチング制御が行われていない状態を指す。クラウチング制御とは、前記フロントエアスプリングから圧縮エアを排出することにより、乗降口が設けられた車両1前部の車高を下げ、乗客の乗降を容易にする制御である。
【0022】
図2のステップS2において前記車両1がうねり路にいるか否かの判断は、例えば、
図4(b)に示される如く、車両1の左側の後輪3が接地する路面の高さが右側より著しく高くなっており、
図4(a)に示される如く、車両1の右側の前輪2が接地する路面の高さは、後輪3側とは逆に左側の方が低くなっているような状況の場合に、車両1がうねり路にいると判断することが可能となる。
【0023】
ここで、前記ステップS2におけるうねり路の判断は、数式で表すと、
[数1]
|RR−RL|≧ΔR0
但し、RR:車両1後部における右側の車高
RL:車両1後部における左側の車高
ΔR0:車両1後部における左右の車高の差の絶対値の閾値(第一閾値)
で、且つ
[数2]
(FR−FL)×(RR−RL)≦0
但し、FR:車両1前部における右側の車高
FL:車両1前部における左側の車高
又は
[数3]
(|FR−FS|≦ΔF0で且つ|FL−FS|≦ΔF0)
但し、FS:車両1後部における基準車高
ΔF0:車両1前部における左右の車高と基準車高との差の絶対値の閾値(第二閾値)
となる。
【0024】
即ち、[数1]の条件は、リヤ車高センサ12(
図1参照)で検出される車両1後部における左右の車高12aの差の絶対値が予め設定された第一閾値ΔR0以上ということを示し、[数2]の条件は、前記フロント車高センサ11で検出される車両1前部における左右の車高11aの差とリヤ車高センサ12(
図1参照)で検出される車両1後部における左右の車高12aの差との積が負となる場合を示し、[数3]の条件は、前記フロント車高センサ11で検出される車両1前部における左右の車高11aと基準車高との差の絶対値が予め設定された第二閾値ΔF0以下となる場合を示しており、[数1]で且つ[数2]、或いは[数1]で且つ[数3]という条件を満たす場合に、車両1がうねり路にいると判断し、ステップS3において前記車両1前部における左右それぞれのレベリング制御を強制的に休止させ、前記ステップS2へ戻って、前記車両1がうねり路にいるか否かの判断を再度行うようにする。
【0025】
因みに、前記第一閾値ΔR0は、例えば、78[mm]に設定することができるが、この数値に限定されるものではなく、20〜150[mm]の範囲から適宜選定すれば良い。
【0026】
又、前記第二閾値ΔF0は、例えば、5[mm]に設定することができるが、この数値に限定されるものではなく、0〜40[mm]の範囲から適宜選定すれば良い。
【0027】
前記ステップS2において、車両1がうねり路にいないと判断された場合には、前記車両1後部における左右それぞれのレベリング制御を強制的に休止させることはせずにステップS4へ進み、前記車両1後部における左右それぞれのレベリング制御を実行し、前記ステップS2へ戻って、前記車両1がうねり路にいるか否かの判断を再度行うようにする。
【0028】
前述の如く構成すると、例えば、
図4(b)に示される如く、車両1の左側の後輪3が接地する路面の高さが右側より著しく高い、即ち、前記リヤ車高センサ12で検出される車両1後部における左右の車高12aの差の絶対値が予め設定された第一閾値ΔR0以上となっており([数1]参照)、車両1の前輪2が接地する路面の高さは、
図4(a)に示される如く、後輪3側とは逆に左側の方が低い、即ち、前記リヤ車高センサ12で検出される車両1後部における左右の車高12aの差と前記フロント車高センサ11で検出される車両1前部における左右の車高11aの差との積が負となっている([数2]参照)ような場合、車両1がうねり路にいると判断され、カットバルブ13が閉じ、車両1前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止される。
【0029】
ここで、前記車両1後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御を行うために、仮に、前記左側のリヤエアスプリング5がラバーコンタクト状態となってしまってからも更に右側のリヤエアスプリング5から圧縮エアが排出された場合、車両1後部における右側の車高が低くなって車体の傾斜角度が緩やかになることから、この動作に伴って、本来であれば、車両1前部における右側の車高も低くなり、前記フロントレベリングバルブ8のレバー8Lが相対的に上方へ傾動し、エアタンク6内の圧縮エアが右側のフロントエアスプリング4へ供給されてしまうが、前記カットバルブ13が閉じて車両1前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止されているため、エアタンク6内の圧縮エアが右側のフロントエアスプリング4へ供給されてしまうことが阻止される。
【0030】
又、例えば、
図4(b)に示される如く、車両1の左側の後輪3が接地する路面の高さが右側より著しく高い、即ち、前記リヤ車高センサ12で検出される車両1後部における左右の車高12aの差の絶対値が予め設定された第一閾値ΔR0以上となっており([数1]参照)、車両1の前輪2が接地する路面の高さは、左右で高低差がほとんどない、即ち、前記フロント車高センサ11で検出される車両1前部における左右の車高と基準車高との差の絶対値が予め設定された第二閾値ΔF0以下となっている([数3]参照)ような場合も、車両1がうねり路にいると判断され、前記カットバルブ13が閉じて車両1前部における左右それぞれのレベリング制御は強制的に休止されているため、エアタンク6内の圧縮エアが右側のフロントエアスプリング4へ供給されてしまうことが阻止され、前記車両1後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御のみが単独で行われることとなる。
【0031】
この結果、車両1前部における左右の車高を独立して一定高さに保持するレベリング制御と、車両1後部における左右中間部の車高を一定高さに保持するレベリング制御とが交互に行われて制御が収束しなくなるようなことが回避され、エアタンク6内の圧縮エアが全部消費されるまで車体の上下動が継続してしまうというような不具合も生じなくなる。
【0032】
こうして、車両1の前輪2と後輪3が接地する路面の高さが左右で異なるうねり路を確実に判定することができ、且つ圧縮エアの消費を抑制し得る。
【0033】
尚、本発明の車両用エアサスペンション制御装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
2 前輪
3 後輪
4 フロントエアスプリング
5 リヤエアスプリング
6 エアタンク
7 エア管路
8 フロントレベリングバルブ
8B バルブ本体
8L レバー
10 リヤレベリングバルブ
10B バルブ本体
10L レバー
11 フロント車高センサ
11a 車高
12 リヤ車高センサ
12a 車高
13 カットバルブ
13a 制御信号
14 コントローラ