(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759803
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/41 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
H01R13/41
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-141147(P2011-141147)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2013-8594(P2013-8594A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス インコーポレイテド
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾田 聡也
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−150022(JP,A)
【文献】
特開2005−032630(JP,A)
【文献】
実開昭63−117069(JP,U)
【文献】
実開平03−32369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の端子と、
前記端子が挿入される挿入穴が形成された筐体と、
を備え、
前記端子は、挿入方向に沿った、角部を形成する第1及び第2の外面を有し、
前記筐体は、前記挿入穴の内側に、前記第1の外面と対向する第1の内面と、前記第2の外面と対向する第2の内面と、前記第1の内面と前記第2の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記角部が食い込む中間面と、を有し、
前記角部の前記挿入方向の途中に溝部が形成され、前記溝部の側面が前記挿入方向に垂直である、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
1又は複数の板状の端子と、
前記端子が挿入される挿入穴が形成された筐体と、
を備え、
前記端子は、
挿入方向に沿った第1及び第2の板面と、
前記第1の板面と前記第2の板面との間で前記挿入方向に沿って、前記第1の板面と共に第1の角部を形成し、前記第2の板面と共に第2の角部を形成する端面と、
を有し、
前記筐体は、
前記第1の板面と対向する第1の内面と、
前記第2の板面と対向する第2の内面と、
前記端面と対向する第3の内面と、
前記第1の内面と前記第3の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記第1の角部が食い込む第1の中間面と、
前記第2の内面と前記第3の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記第2の角部が食い込む第2の中間面と、
を前記挿入穴の内側に有し、
前記第1及び第2の角部の前記挿入方向の途中に溝部が形成され、前記溝部の側面が前記挿入方向に垂直である、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記筐体は、
前記端面とは逆側の端面と接触する、前記逆側の端面と同幅または前記逆側の端面より幅広の第4の内面を、
前記挿入穴の内側にさらに有する、
請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特には筐体における端子の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6A及び
図6Bに示されるように、従来のコネクタでは、筐体102の挿入穴102aの内面に端子103を食い込ませるため、端子103の縁に爪部133が設けられる。この爪部133が挿入穴102aの内面に食い込むとき、当該内面に対して垂直な力Fが筐体102に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−243495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のコネクタでは、端子103から筐体102に作用する力が端子103の断面の長手方向を向き、挿入穴102aの側方の部分Lに応力が集中することから、端子の高密度化や筐体の小型化が進むに従って、この部分Lにクラックが生じやすくなる。
【0005】
なお、特許文献1には、端子に対して保持力を異なる2方向から作用させるため、端子の外面に複数の突起を設けることが記載されている。しかしながら、このような突起を端子の外面に設けることは、製造上の負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、筐体に生じるクラックを抑制することが可能なコネクタを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、1又は複数の端子と、前記端子が挿入される挿入穴が形成された筐体と、を備える。前記端子は、挿入方向に沿って、角部を形成する第1及び第2の外面を有する。前記筐体は、前記挿入穴の内側に、前記第1の外面と対向する第1の内面と、前記第2の外面と対向する第2の内面と、前記第1の内面と前記第2の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記角部が食い込む中間面と、を有する。
【0008】
本発明によると、端子の角部が中間面に食い込むことで、端子から筐体に作用する力が中間面に対して垂直な方向を向く。このため、応力が集中する箇所を分散させて、筐体に生じるクラックを抑制することが可能である。また、挿入穴の内側に中間面を設けることは、端子の外面に突起を設けることと比較して、製造上の負担が小さい。
【0009】
また、本発明のコネクタは、1又は複数の板状の端子と、前記端子が挿入される挿入穴が形成された筐体と、を備える。前記端子は、挿入方向に沿った第1及び第2の板面と、前記第1の板面と前記第2の板面との間で前記挿入方向に沿って、前記第1の板面と共に第1の角部を形成し、前記第2の板面と共に第2の角部を形成する端面と、を有する。前記筐体は、前記第1の板面と対向する第1の内面と、前記第2の板面と対向する第2の内面と、前記端面と対向する第3の内面と、前記第1の内面と前記第3の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記第1の角部が食い込む第1の中間面と、前記第2の内面と前記第3の内面との間でこれらが向く方向の間の方向を向き、前記第2の角部が食い込む第2の中間面と、を前記挿入穴の内側に有する。
【0010】
本発明によると、第1の角部が第1の中間面に食い込み、第2の角部が第2の中間面に食い込むことで、応力が集中する箇所を分散させて、筐体に生じるクラックを抑制することが可能である。また、挿入穴の内側に中間面を設けることは、端子の外面に突起を設けることと比較して、製造上の負担が小さい。
【0011】
また、本発明のコネクタにおいて、前記筐体は、前記端面とは逆側の端面と接触する、前記逆側の端面と同幅または前記逆側の端面より幅広の第4の内面を、前記挿入穴の内側にさらに有してもよい。これによると、第4の内面を端子の位置の基準として、端子の位置精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のコネクタの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、コネクタ1の斜視図である。
図2A及び
図2Bは、端子3の斜視図及び側面図である。
図3A及び
図3Bは、筐体2の正面図及び断面図である。
図4A及び
図4Bは、コネクタ1の断面図である。これらの図では、不図示の回路基板に対してコネクタ1が取り付けられる方向を上方向とし、端子3の挿入方向を前方向とする。
【0015】
図1に示されるように、コネクタ1は、絶縁性の樹脂材料により成形された筐体2と、導電性の金属材料からなる複数の端子3と、折り曲げられた金属板からなる支持金具4と、を備えている。筐体2は、全体として概略C字状を形成する中辺部21及び一対の側辺部23を有している。中辺部21には、前後方向に貫通する複数の挿入穴21aが形成されており、各々の挿入穴21aには、端子3が後方から前方に向けて挿入されている。一対の側辺部23には、前端から後方に向けて延びる挿入穴23aが形成されており、各々の挿入穴23aには、支持金具4が前方から後方に向けて挿入されている。相手方のコネクタは、筐体2が形成する概略C字状の内側に嵌め込まれる。支持金具4は、はんだ又は接着剤などで不図示の回路基板に固着される。
【0016】
図2A及び
図2Bに示されるように、端子3は、打ち抜かれた金属板からなる。左右方向が端子3の板厚方向であり、前後方向が端子3の挿入方向である。端子3は、表裏の関係にある一対の板面である外左面31及び外右面32を有している。これら外左面31及び外右面32は、端子3の挿入方向に沿っている。また、端子3は、端子3の挿入方向に沿った端面である外上面33及び外下面34を有している。このうち、外左面31と外上面33とは前後方向に延びる角部313を形成しており、外右面32と外上面33とは前後方向に延びる角部323を形成している。また、端子3は、角部313,323の途中が潰されることで形成された溝部313a,323aを有している。
【0017】
図3A及び
図3Bに示されるように、筐体2に形成された挿入穴21aの断面形状は、上下方向の幅が左右方向の幅よりも大きい略矩形状に形成されている。挿入穴21aは、左右方向に所定の間隔で配列している。挿入穴21aの内側には、内左面211と、内右面212と、内上面213と、内下面214と、が設けられている。内左面211は端子3の外左面31に対応し、内右面212は端子3の外右面32に対応し、内上面213は端子3の外上面33に対応し、内下面214は端子3の外下面34に対応する。
【0018】
また、挿入穴21aの内側には、内左面211と内上面213との間に中間面231が設けられており、内右面212と内上面213との間に中間面232が設けられている。中間面231は、内左面211が向く方向と内上面213が向く方向との間の方向を向いている。すなわち、中間面231は、右方かつ下方を向いている。中間面232は、内右面212が向く方向と内上面213が向く方向との間の方向を向いている。すなわち、中間面232は、左方かつ下方を向いている。
【0019】
図4A及び
図4Bに示されるように、筐体2の挿入穴21aに端子3が挿入されると、端子3の外左面31と挿入穴21aの内左面211とが対向し、端子3の外右面32と挿入穴21aの内右面212とが対向し、端子3の外上面33と挿入穴21aの内上面213とが対向し、端子3の外下面34と挿入穴21aの内下面214とが対向する。このうち、外左面31、外右面32及び外上面33は、内左面211、内右面212及び内上面213と接触してもよいし、接触しなくてもよい。これに対し、内下面214は端子3の位置の基準とされるため、外下面34は内下面214と接触する。内下面214は、外下面34と同幅または外下面34より幅広に形成される。
【0020】
また、筐体2の挿入穴21aに端子3が挿入されると、端子3の角部313は挿入穴21aの中間面231に食い込み、端子3の角部323は挿入穴21aの中間面232に食い込む。この結果、中間面231に垂直な方向の力F1が、端子3の角部313から挿入穴21aの中間面231に作用し、中間面232に垂直な方向の力F2が、端子3の角部323から挿入穴21aの中間面232に作用する。これによると、端子3から筐体2に作用する力の方向を分散させることが可能である。
【0021】
すなわち、
図6A及び
図6Bに示される従来のコネクタでは、端子103から筐体102に作用する力Fが上方向を向くため、筐体102に加わる負荷は、挿入穴102aの左右両側の部分に集中する。これに対し、本実施形態のコネクタ1では、端子3から筐体2に作用する力F1が上方かつ右方を向き、力F2が上方かつ左方を向くため、筐体2に加わる負荷は、挿入穴21aの左右両側の部分と上下両側の部分とに分散する。このため、筐体2に生じるクラックを抑制することが可能である。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【0023】
上記実施形態では、挿入穴21aの上側の2つの隅のみに中間面231、232が設けられていたが、これに限られず、
図5Aに示されるように、挿入穴21aの下側の2つの隅にも中間面241,242が設けられてもよい。また、中間面は、4つの隅のうち対角の関係にある2つの隅にあってもよいし、4つの隅のうち何れか1つ又は3つの隅にあってもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、中間面231、232が平面であったが、これに限られず、
図5Bに示されるような凹状の曲面であってもよいし、
図5Cに示されるような凸状の曲面であってもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、端子3の角部313、323が挿入穴21aの中間面231,232に食い込むのみであったが、これに限られず、
図5Dに示されるように、端子3が挿入穴21aの内上面213にも食い込んでもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 コネクタ、2 筐体、3 端子、4 支持金具、21 中辺部、21a 挿入穴、23 側辺部、23a 挿入穴、211 内左面、212 内右面、213 内上面、214 内下面、231 中間面、232 中間面、241 中間面、242 中間面、31 外左面(板面)、32 外右面(板面)、33 外上面(端面)、34 外下面(端面)、313 角部、313a 溝部、323 角部、323a 溝部。