(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
汚水タンクが搭載された機体と、該機体の下端部に設けられて床面に接触する洗浄具と、該洗浄具の後方に設けられて前記機体に連結装置を介して連結されるスキージと、を備え、前記洗浄具によって床面を洗浄した後の汚水を前記スキージで吸引して前記汚水タンクに回収するように構成された床面洗浄機であって、
前記連結装置は、
前記機体の後部に第1の支点を介して左右方向回転可能に支持される第1の連結板と、
前記第1の支点よりも後方に設けられた第2の支点を介して前記第1の連結板に左右方向回転可能に支持され、前記スキージに固定される第2の連結板と、
前記第1の連結板と前記第2の連結板の間に介装され、前記第2の連結板が前記第1の連結板に対する回転中立位置から左右方向一方に回転した時に前記第2の連結板を前記回転中立位置側に付勢し、且つ前記第2の連結板が前記回転中立位置から左右方向他方に回転した時にも前記第2の連結板を前記回転中立位置側に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする床面洗浄機。
前記第1の取付部又は前記第2の取付部の少なくとも一方は、前記引張りコイルバネの端部に形成されたフックにスライド可能に係合する取付ピンであることを特徴とする請求項3又は4に記載の床面洗浄機。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る床面洗浄機の第1、第2の実施形態を、図面と共に詳細に説明する。なお、各実施形態においては、
図1における左側(進行方向側)、右側(操作者側)、奥側、手前側をそれぞれ、床面洗浄機1の前側、後側、右側、左側とした場合について説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
まず、床面洗浄機1の全体の構成について説明する。
図1に示されるように、床面洗浄機1は、前後方向に長い箱型形状の機体2を備えている。
【0032】
機体2の前端部の下端には前輪3が左右方向中央部に軸支され、機体2の後部の下端には、駆動輪である後輪4が左右両側に軸支されている。機体2の後部には、駆動用電源であるバッテリ5(
図2参照)が搭載されている。
【0033】
機体2の前下部にはモータ6が収納され、機体2の前部の下端には、床面と接触するように洗浄具としてのパッド7が設けられている。パッド7はモータ6と接続されており、モータ6によってパッド7を高速回転させるようになっている。機体2の下端部には、パッド7の前側及び左右両側を覆うようにしてスプラッシュガード8が設けられている。
【0034】
機体2の前下部には、例えばシリンダ装置によって構成される昇降装置10がモータ6の近傍に設けられており、この昇降装置10によってパッド7を昇降させることで、パッド7を床面に接触させた状態とパッド7を床面から離間させた状態を切り換えられるようになっている。
【0035】
機体2の後上端部には、運転用のハンドル11が支持され、ハンドル11の近傍には操作部12が設けられている。操作部12には、洗浄作業をするための運転スイッチやメインスイッチ、パッド圧の切換スイッチなどの各種スイッチやバッテリ残量表示やエラー表示を行なう表示部が設けられている。
【0036】
機体2の前端部には、モータ6の前方から右方にかけて洗浄液用タンク13が搭載されている。洗浄液用タンク13内には、洗浄液(清水又は清水と洗剤の混合液)が貯蔵されている。洗浄液用タンク13は、パッド7の近傍と給水ホース(図示せず)等を介して連通している。
【0037】
機体2の上部には汚水タンク14が搭載されており、汚水タンク14は、機体2の内部に収容されたブロア(図示せず)と吸引パイプ(図示せず)を介して接続されると共に、機体2の後部に連結されたスキージ15とバキュームホース16を介して接続されている。
【0038】
次に、スキージ15について、詳細に説明する。
【0039】
図2、
図3に示されるように、スキージ15は、機体2の後下方に左右方向に張り出すように設けられている。スキージ15は、平面視で全体が略弓型形状に湾曲しており、スキージ15の左右方向中央部は左右両端部よりも後方に位置している。このような構成により、スキージ15の前面側には、凹部19(
図3参照)が形成されている。
【0040】
スキージ15は、平面視で略三日月状を成すスキージ本体17と、スキージ本体17の前後両側面にサポータ18(
図4参照)を介して固定される2枚のブレード20と、を備えている。そして、スキージ本体17によって上側を覆われると共に2枚のブレード20によって前後両側を覆われる部分に、無底状のスキージ室(図示せず)が形成されている。
【0041】
スキージ本体17の上面の左右方向中央部には通気口(図示せず)が開口され、通気口の周囲には通気筒21が立設されている。通気筒21の内部空間は、通気口を介してスキージ室に連通している。通気筒21の上端には、バキュームホース16の下端部が接続されており、このバキュームホース16の上端部は、前記した汚水タンク14(
図1参照)に接続されている。そして、前記したブロア(図示せず)を稼働させると、吸引パイプ(図示せず)、汚水タンク14、バキュームホース16及び通気筒21を介してブロアの吸引力がスキージ室に及ぶようになっている。
【0042】
スキージ本体17には、通気筒21の左右両側にボルト孔(図示せず)が設けられている。スキージ本体17の左右両端部にはガイドホイール23が取り付けられ、各ガイドホイール23の内側には、車輪カバー24が取り付けられている。車輪カバー24は、後ろ側のブレード20よりも後方に延びている。
図4に最も良く示されるように、車輪カバー24は、スキージ本体17にボルト25を介して固定される上面板26と、上面板26の左右両端部から下方に向かって屈曲される左右両側面板27と、を備えており、背面視で下向きコ字状を成している。左右両側面板27の間には車軸28が左右方向に架設され、車軸28にはガイド車輪30が回転自在に取り付けられ、このガイド車輪30によって、スキージ15の走行が可能となっている。
【0043】
各ブレード20は、可撓性のゴム板によって形成されている。各ブレード20は、スキージ本体17の前後両側から下方に垂れ下がるように設けられている。前側のブレード20と後側のブレード20の間には間隔が生じており、この間隔部分に、前記したスキージ室が形成されている。
【0044】
次に、このような構成のスキージ15を機体2の後部に連結する連結装置31について詳細に説明する。
【0045】
図3〜
図5に示されるように、連結装置31は、機体2の後部に接続される回動板32(
図5では図示略)と、回動板32に接続される第1の連結板33と、第1の連結板33の後部に接続され、スキージ15に固定される第2の連結板34と、第1の連結板33と第2の連結板34の間に介装される付勢部材としての左右一対の引張りコイルバネ35と、を備えている。
【0046】
回動板32は、後面が開口されて箱型形状を成している。回動板32には回動軸36が上下方向に設けられており、この回動軸36を介して、機体2の後下部に回動板32が左右方向回転可能に支持されている。なお、回動軸36は、機体2に固定されて回動板32に対して回転可能であっても良いし、回動板32に固定されて機体2に対して回転可能であっても良い。
【0047】
回動板32の左右両側壁37の下部には、取付軸孔38(
図4参照)が左右方向に穿設されている。回動板32の左右両側壁37の後部には、後方に向かって拡開するように傾斜板40が設けられ、各傾斜板40の外面には、ストッパーボルト41が突設されている。ストッパーボルト41は、機体2に設けられたストッパー部42と接触可能となっており(
図6参照)、ストッパーボルト41の傾斜板40からの突出長さを調節することで、回動板32の機体2に対する回転可能角度を適宜設定できるようになっている。本実施形態では、回動板32が機体2に対して左右15度ずつ(合計30度)回転可能となっている。
【0048】
第1の連結板33は、機体2の後輪4よりも後方に配置されている。第1の連結板33は、左右両側板43と、この左右両側板43の下端部を連結する底板44と、を備えている。
【0049】
左右両側板43は、例えば、底板44の左右両側部を上方に向かって折り曲げることで形成される。左右両側板43の前端部には、互いに平行な接続板45が前後方向に沿って設けられている。各接続板45は、底板44の前端部よりも前方に延びている。各接続板45には、取付軸孔46(
図5参照)が左右方向に穿設されている。各接続板45は、回動板32内に挿入されており、回動板32の取付軸孔38及び接続板45の取付軸孔46には、取付軸47が挿通されている。これにより、取付軸47を中心に上下方向回転可能な状態で第1の連結板33が回動板32に連結されると共に、第1の連結板33が、回動板32と共に、回動軸36を介して機体2の後部に左右方向回転可能に支持されている。即ち、本実施形態では、回動軸36が第1の連結板33の回転の中心(第1の支点)になっている。
【0050】
左右両側板43は、後方に向かって対向間隔がテーパ状に広がるように設けられており、平面視で略ハの字状を成している。左右両側板43の上縁部の後部には、外側に向かって屈曲されるように舌片48が設けられている。舌片48は、機体2の底面に沿って配置されている。左右両側板43の後縁部には、係止縁部50が上下方向に沿って設けられている。
【0051】
図5に示されるように、底板44の前後方向中央部には、左右一対の第1貫通穴51が穿設されている。そして、各第1貫通穴51に、第1の取付部としての第1の取付ピン52のネジ部53を差し込んだ後、このネジ部53にナット54を締結させることで、各第1の取付ピン52が底板44の上面に左右対称に固定されている。
図3に示されるように、各第1の取付ピン52は、左右方向中心線(
図3の二点鎖線a参照)に対して一定距離を介して配置されている。底板44の後部には、第1貫通穴51の後方に、左右方向に長い長穴55(
図5参照)が穿設されている。
【0052】
底板44の後端部には、後方に向かってV字状の突出する突部59が設けられ、この突部59に連結軸56が設けられている。
図3に示されるように、突部59は、スキージ15の前面側に形成される凹部19内に挿入されており、これに伴って、連結軸56は、スキージ15の左右両端部を結ぶ仮想線(
図3の二点鎖線b参照)よりも後方に配置されている。なお、「仮想線よりも後方」とは、連結軸56の軸心が仮想線の後方にあれば良く、必ずしも連結軸56の全体が仮想線よりも後方になくても良い。連結軸56は、第1の連結板33において機体2の後輪4の中心(
図3においてSで示す。)から最も離れた位置で、且つ、スキージ15の各ブレード20に最も近接した箇所に設けられている。
【0053】
図5に最も良く示されるように、連結軸56は、底板44の上面に固定された円柱状の大径部57と、この大径部57の上面に固定されて大径部57と段差状を成す円環状の小径部58と、を備えている。小径部58の上面には、挿入穴60が設けられている。
【0054】
第2の連結板34は、平板状に形成されている。第2の連結板34の前縁部61は、平面視で半円状に湾曲しており、前縁部61が作る半円の中心部分付近に、挿通穴62が穿設されている。この挿通穴62の孔径は、連結軸56の小径部58の外径と略同一であり、より正確には、挿通穴62の孔径が連結軸56の小径部58の外径よりも僅かに大きい。そして、挿通穴62に連結軸56の小径部58を挿通させた状態で小径部58の挿入穴60にボルト63を挿入することで、第2の連結板34が連結軸56を介して第1の連結板33に左右方向回転可能に支持されている。即ち、本実施形態では、連結軸56が第2の連結板34の回転の中心(第2の支点)になっている。なお、
図3に最も良く示されるように、連結軸56は、左右方向中心線(
図3の二点鎖線a参照)上に配置され、且つ、回動軸36よりも後方に配置されている。つまり、第2の連結板34は、第1の連結板33の後方に直列に連結されている。
【0055】
本実施形態では、第2の連結板34の板厚より小径部58の高さを若干大きくすることで、第2の連結板34が円滑に回転するように構成されている。また、第2の連結板34の回転を一層円滑にするために、第2の連結板34と連結軸56の間及び第2の連結板34とボルト63の間には、それぞれワッシャー64が介装されている。また、第2の連結板34の前縁部61が、各第1の取付ピン52よりも後方に位置するように、各部材の配置が調整されている(
図3参照)。これにより、第2の連結板34が回転しても、第2の連結板34の前縁部61と各第1の取付ピン52が干渉しない(接触しない)ようになっている。
【0056】
第2の連結板34の前縁部61の左右両側には、係止部65が設けられている。各係止部65は、第1の連結板33の係止縁部50と対応する位置に設けられており、係止部65が係止縁部50に当接することで、第1の連結板33に対する第2の連結板34の回転範囲が規制されるようになっている(
図6参照)。本実施形態では、第2の連結板34が第1の連結板33に対して左右25度ずつ(合計50度)回転可能となっている。
【0057】
図5に最も良く示されるように、第2の連結板34には、挿通穴62よりも前側且つ左右方向中央部に、切起し部66が形成されている。切起し部66は、例えば、第2の連結板34の一部を上方に向かってアーチ状に切り起こすことで形成される。
【0058】
切起し部66は、操作ハンドル11の下方に設けられたスキージレバー67(
図2参照)とワイヤー68(
図2参照)を介して接続されている。そして、汚水の回収を伴う機体2の走行時(床面洗浄時)には、スキージレバー67を下降させることで、第1の連結板33、第2の連結板34及びスキージ15が取付軸47を中心に下方に回転して、スキージ15を床面に接触させることが可能となる。一方で、汚水の回収を伴わない機体2の走行時(床面洗浄機1の移動時)には、スキージレバー67を上昇させることで、第1の連結板33、第2の連結板34及びスキージ15が取付軸47を中心に上方に回転して、スキージ15を床面から離間させることが可能となる。
【0059】
図5に最も良く示されるように、第2の連結板34の左後隅部及び右後隅部には、丸穴70がそれぞれ穿設されている。第2の連結板34の後縁部には、左右方向中央部に、通気筒21を逃げるようにして装着溝71が設けられている。装着溝71の左右両側には、U字状のボルト溝72がスキージ15のスキージ本体17に設けられたボルト孔(図示せず)と対応する位置に設けられている。そして、ノブボルト73(
図3、
図4参照)にボルト溝72を係合させた状態で、スキージ本体17のボルト孔にノブボルト73を締め込むことで、第2の連結板34とスキージ15が相対回転不能に固定されている。
【0060】
図5に示されるように、第2の連結板34の前後方向中央には、左右一対の第2貫通穴74(
図5では片方のみ表示)が穿設されている。そして、各第2貫通穴74に、第2の取付部としての第2の取付ピン75のネジ部76を差し込んだ後、上記したネジ部76にナット77を締結させることで、各第2の取付ピン75が第2の連結板34の下面に左右対称に固定されている。
【0061】
図3に示されるように、各第2の取付ピン75の左右方向中心線(
図3の二点鎖線a参照)からの距離は、各第1の取付ピン52の左右方向中央線からの距離よりも長くなるように設定されている。また、左側の第1の取付ピン52の中心と左側の第2の取付ピン75の中心を結ぶ線分と左側の第2の取付ピン75の中心と連結軸56の中心を結ぶ線分の成す角が、平面視において略90度となるように設定されている。また、右側の第1の取付ピン52の中心と右側の第2の取付ピン75の中心を結ぶ線分と右側の第2の取付ピン75の中心と連結軸56の中心を結ぶ線分の成す角が、平面視において略90度となるように設定されている。
【0062】
図5に示されるように、各引張りコイルバネ35は、長軸方向に伸縮可能なコイル78と、コイル78の両端に設けられたU字状のフック80と、を備えている。一方のフック80は、第1の連結板33に固定された第1の取付ピン52に取り付けられ、他方のフック80は、第2の連結板34に固定された第2の取付ピン75に取り付けられている。
【0063】
図3に示されるように、各引張りコイルバネ35は、左右方向中心線(
図3の二点鎖線a参照)に対して傾斜するように設けられている。本実施形態では、各引張りコイルバネ35の左右方向中心線からの傾斜角度が、略25度に設定されている。各引張りコイルバネ35は、左右方向中心線を中心に線対称となるように配置されている。
【0064】
各引張りコイルバネ35は、数mm伸長した状態で、第1の取付ピン52と第2の取付ピン75の間に張設されている。各引張りコイルバネ35は、第1の連結板33と第2の連結板34の間の空間に収納されている。この空間の高さは、連結軸56の大径部57の高さによって決定される。本実施形態では、各引張りコイルバネ35が伸縮できるように、各引張りコイルバネ35のコイル78の外径よりも連結軸56の大径部57の高さを十分大きくしている。
【0065】
図6に示されるように、第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に回転中立位置から右回りに回転すると、右側の第2の取付ピン75も右回りに回転するため、右側の引張りコイルバネ35が引っ張られて伸長する。これに伴って、右側の引張りコイルバネ35が第2の連結板34を回転中立位置側に付勢する。一方、左側の第2の取付ピン75も右回りに回転するが、左側の引張りコイルバネ35のフック80内をスライドするだけである。つまり、左側の引張りコイルバネ35は引っ張られない。
【0066】
これとは反対に、第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に回転中立位置から左回りに回転すると、左側の第2の取付ピン75も左回りに回転するため、左側の引張りコイルバネ35が引っ張られて伸長する。これに伴って、左側の引張りコイルバネ35が第2の連結板34を回転中立位置側に付勢する。一方、右側の第2の取付ピン75も左回りに回転するが、右側の引張りコイルバネ35のフック80内をスライドするだけである。つまり、右側の引張りコイルバネ35は引っ張られない。
【0067】
なお、スキージ15及び第2の連結板34が回転中立位置にある場合(
図3参照)には、左右の引張りコイルバネ35の引張り力は均等であるため、第2の連結軸56周りのトルクは0(N・m)である。
【0068】
上記の如く構成されたものにおいて、床面の洗浄を行うには、昇降装置10によってパッド7を下降させてパッド7を床面に接触させる。そして、床面洗浄機1を走行させ、洗浄液用タンク13からパッド7の近傍に洗浄液を供給して洗浄液を散布しつつ、モータ6によってパッド7を高速回転させる。このようにパッド7によって床面を洗浄した後には、洗浄液が汚水となって床面に残留する。この床面に残留した汚水は、床面洗浄機1の走行に伴ってスキージ15のスキージ室へと案内され、機体2の内部に収容されたブロアの吸引力によって、通気筒21及びバキュームホース16を通して汚水タンク14内に回収される。
【0069】
次に、上記のような床面の洗浄を、機体2を最小旋回半径で旋回させながら行う場合について、
図7を用いて説明する。本実施形態では、直進していた機体2が、右側の後輪4を中心として最小旋回半径で右回りに180度旋回した後に、再び直進する場合について説明する。なお、
図7において、L1、L2はそれぞれスキージ15の汚水回収範囲とパッド7の洗浄範囲を示し、Sは機体2の旋回中心(即ち、右側の後輪4の中心)を示し、P、Qはそれぞれ機体2の直進方向と旋回方向を示している。
【0070】
なお、機体2を最小旋回半径で旋回させる際には、駆動輪である後輪4の一方を回転中心として旋回させることになるが、これは、一方の後輪4のみにブレーキをかけることで容易に実現することができる。例えば、機体2を右回りで旋回させる時には、右側の後輪4にブレーキをかけて右側の後輪4を中心に機体2を旋回させる。
【0071】
図7(1)において、紙面右方向に向かって直進していた機体2は、
図7(2)において、右側の後輪4を中心として最小旋回半径で右回りに旋回を開始する。
図7(3)では、機体2が右回りに約40度旋回しているが、スキージ15はまだ回転を開始していない。
図7(4)では、機体2が右回りに90度旋回しており、これに追従して、スキージ15が回転を開始している。この時点で、スキージ15は、約40度回転している。
図7(5)では、機体2が右回りの旋回を終了したが、スキージ15はまだ回転中であり、機体2に対して傾いている。
図7(6)では、機体2が紙面左方向に向かって直進を開始しているが、スキージ15は回転中であり、まだ機体2に対して傾いている。
図7(7)では、スキージ15の回転も終了し、機体2に対する傾きも無くなっている。
【0072】
図8は、上記のように、機体2が「直進→最小旋回半径で右回りに180度旋回→直進」という動作をした場合に、本発明に係る床面洗浄機1と従来の床面洗浄機におけるパッド7の軌跡に対するスキージ15の軌跡の余裕分を比較した図である。
【0073】
図面上において実線Aで示されているのは、本発明に係る床面洗浄機1と従来の床面洗浄機に共通するパッド7の軌跡である。これに対して、二点鎖線B(細い二点鎖線)で示されているのは、従来の床面洗浄機におけるスキージの軌跡であり、二点鎖線C(太い二点鎖線)で示されているのは、本発明に係る床面洗浄機1におけるスキージ15の軌跡である。図面上において矢印Xで示されているのは、従来の床面洗浄機におけるパッドの軌跡に対するスキージの軌跡の余裕分であり、矢印Yで示されているのは、本発明の床面洗浄機1におけるパッド7の軌跡に対するスキージ15の軌跡の余裕分である。
【0074】
従来の床面洗浄機では、スキージを左右方向回転自在に連結する支点を機体の後部のみに設けている。即ち、スキージと機体の間に支点が1箇所のみ存在する。これに対して、本発明の床面洗浄機1では、本実施形態で示すように、機体2と第1の連結板33の間に回動軸36(第1の支点)を設けると共に、第1の連結板33と第2の連結板34の間に連結軸56(第2の支点)を設けている。即ち、スキージ15と機体2の間に支点が2箇所存在する。なお、本発明の床面洗浄機1において、第1の連結板33は、回動軸36を中心に機体2に対して左右方向に15度ずつ回転するように設定され、第2の連結板34は、連結軸56を中心に第1の連結板33に対して左右方向に25度ずつ回転するように設定されている。
【0075】
図8の記載から明らかなように、本発明の床面洗浄機1における余裕分Yは、従来の床面洗浄機における余裕分Xよりも大きくなっている。このように、本発明においては、スキージ15と機体2を2箇所の支点を介して連結することで、スキージ15の回転可能範囲を大きくし、パッド7の軌跡に対するスキージ15の軌跡の余裕分を従来よりも大きくすることが可能となっている。そのため、機体2が最小旋回半径で旋回した時の汚水の回収漏れを解消し、汚水の回収性能を向上させることが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、第1の連結板33が機体2の後輪4よりも後方に配置されるとともに、連結軸56が第1の連結板33の後端部に設けられている。これに伴って、機体2の旋回中心となる後輪4から最も離れた位置に連結軸56を設けることが可能となる。そのため、機体2が最小旋回半径で旋回する時のスキージ15の回転可能範囲を広げて、汚水の回収性能を高めることが可能となる。
【0077】
また、連結軸56が左右方向中心線(
図3の二点鎖線a参照)上に配置されているため、第1の連結板33上において左右の後輪4から同じ距離だけ離れた位置に連結軸56を配置することが可能となる。これに伴って、機体2が左右どちらに旋回する時でも、スキージ15の回転可能範囲を広げて、汚水の回収性能を高めることが可能となる。
【0078】
更に、本実施形態では、スキージ15が機体2の後下方に左右方向に張り出すように設けられ、スキージ15の左右両端部を結ぶ仮想線よりもスキージ15の左右方向中央部が後方に位置するように、スキージ15の全体が略弓型に湾曲している。そのため、スキージ15の各ブレード20に最も近接した箇所に連結軸56を設けることが可能となり、機体2が最小旋回半径で旋回する際のスキージ15の回転可能範囲を更に広げて、汚水の回収性能を更に高めることが可能となる。
【0079】
図9は、本発明に係る床面洗浄機1と従来の床面洗浄機を用いて、機体2を最小旋回半径で旋回させながら床面の壁際部分を洗浄する時のスキージの回転角度を示す比較図である。
【0080】
図9(1)は、従来の床面洗浄機を示しており、
図9(2)は、本発明の床面洗浄機1を示している。なお、従来の床面洗浄機と本発明の床面洗浄機1の構成は、
図8の場合と同様である。
図9(1)、
図9(2)のR1、R2は、機体2の旋回中心である後輪4の中心(図中においてSで示す。)から壁面(図中においてWで示す。)に接触しているスキージ15の端部までの距離、即ち、スキージ15の回転半径をそれぞれ示している。また、
図9(1)、
図9(2)のθ1、θ2は、スキージ15の回転中立位置からの回転角度をそれぞれ示している。なお、説明の便宜上、従来の床面洗浄機において本発明の床面洗浄機1の各部と同様の機能を有する部分については、本発明の床面洗浄機1の各部と同一の符号を図中に付する。
【0081】
図9(1)、
図9(2)の記載から明らかなように、本発明の床面洗浄機1におけるスキージ15の回転半径R2は、従来の床面洗浄機におけるスキージの回転半径R1よりも大きくなっている。これに伴って、本発明の床面洗浄機1におけるスキージ15の回転角度θ2は、従来の床面洗浄機におけるスキージの回転角度θ1よりも大きくなっている。
【0082】
このように、本発明においては、スキージ15と機体2を2箇所の支点を介して連結することで、スキージ15の回転角度を従来よりも大きく設定することが可能となっている。これに伴って、機体2を旋回させながら床面の壁際部分を洗浄する際、スキージ15の端部が壁面と接触した場合に、スキージ15の端部を壁面から逃げるように大きく回転させることができる。そのため、スキージ15の端部が壁面に擦れて床面の洗浄が困難になる虞がなく、スキージ15をスムーズに旋回させながら、床面の壁際部分の洗浄を行うことが可能となる。また、床面洗浄機1が壁面から離間した場合には、引張りコイルバネ35によって第2の連結板34及びスキージ15を回転中立位置に即座に復元させることができる。
【0083】
図10は、本発明の床面洗浄機1において、機体2が右回りで旋回する時に、連結装置31の各部に作用するトルク(モーメント)を示している。なお、
図10(1)は、機体2の旋回開始直後の状態であり、
図10(2)は、機体2の旋回が開始されてから所定の時間が経過した後の状態である。
図10において、矢印D、矢印Eは、それぞれ機体2の旋回方向とスキージ15の回転方向を示している。なお、
図10(1)、(2)では、機体2と連結装置31及びスキージ15の相対的な位置関係を分かり易く表示するため、実際には回転している機体2を同一の位置に表示している。
【0084】
図10(1)に示されるように、機体2が右回りに最小旋回半径で旋回する際、瞬間的に回動軸36に作用する力は、矢印Fの向きとなる。また、スキージ15の両端部に作用する抗力を簡易的にμNとし、連結軸56からスキージ15の両端部までの距離をそれぞれL1、L2とすると、連結軸56に作用するモーメントMは、M=μN×L1+μN×L2となり、連結軸56に対して左回りのモーメントが作用することになる。よって、
図10(2)に示されるように、第2の連結板34及びスキージ15が、連結軸56を中心として左回りに回転することとなる。
【0085】
このように第2の連結板34及びスキージ15が左回りに回転すると、前述のように左側の引張りコイルバネ35が引っ張られて伸長し、左側の引張りコイルバネ35が第2の連結板34を回転中立位置側に付勢する。これに伴って連結軸56には、第2の連結板34及びスキージ15を回転中立位置側に戻そうとするモーメントm(図示せず)が作用する。しかしながら、引張りコイルバネ35の定数(初張力、バネ定数)は、機体2の旋回時にはM>mとなるように設定されているため、第2の連結板34及びスキージ15が左側に回転した状態が保持される。一方で、引張りコイルバネ35の定数は、機体2の旋回が終了する際にはM<mとなるように設定されている。そのため、機体2の旋回が終了する際には、第2の連結板34及びスキージ15が左側に回転した位置から回転中立位置に復元する。
【0086】
つまり、機体2が旋回する際には、第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に第1の連結板33に対して回転することで片側の引張りコイルバネ35が伸長し、第1の連結板33の係止縁部50と第2の連結板34の係止部65が接触するまで第2の連結板34及びスキージ15が第1の連結板33に対して回転することになる。また、機体2の旋回が終了する際には、伸長した引張りコイルバネ35の付勢力によって、第2の連結板34及びスキージ15が第1の連結板33に対する回転中立位置に復元することになる。
【0087】
このように、本実施形態では、第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に回転中立位置から左右どちらかに回転した場合に、片側の引張りコイルバネ35によって連結軸56の周りにトルク(モーメント)を発生させて、第2の連結板34及びスキージ15を左右回転位置から回転中立位置に素早く復元させることが可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、引張りコイルバネ35の初張力を比較的大きく設定することで、床面の小さな凹凸や段差などにスキージ15が接触した場合でも、スキージ15が容易に振られない(回転しない)ようにし、機体2の直進時におけるスキージ15の走行安定性を向上させている。また、引張りコイルバネ35を用いることで、比較的簡素に付勢部材を形成することができ、製造コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0089】
更に、本実施形態では、各第1の取付ピン52と各第2の取付ピン75を結ぶ線分と各第2の取付ピン75と連結軸56を結ぶ線分の成す角が略90度であるため、引張りコイルバネ35のバネ力を連結軸56に損失無く作用させることが可能となり、トルクの伝達効率を向上させることが可能となる。
【0090】
更にまた、本実施形態では、引張りコイルバネ35の両端部に形成されたフック80にスライド可能に係合する各取付ピン52、75によって、各取付部が構成されている。このような構成を採用することにより、機体2の直進時において、第2の連結板34及びスキージ15が左右どちらかに数度振られた場合に、一方の引張りコイルバネ35の復元力に伴うトルクのみが第2の連結軸56に作用することとなり、第2の連結板34及びスキージ15を左右回転位置から回転中立位置に素早く復元させることができる。
【0091】
また、引張りコイルバネ35の付勢力を適度に設定すれば、機体2が最小旋回半径で旋回する時に、第2の連結板34及びスキージ15の回転力を引張りコイルバネ35の付勢力に伴う回転抑制力よりも大きくすることが可能となり、第2の連結板34及びスキージ15を第1の連結板33に対して回転させることが可能となる。
【0092】
また、本実施形態の連結装置31は、各連結板33、34と引張りコイルバネ35を用いた簡素な構成であるため、連結装置31のイニシャルコストを安くすることができる。
【0093】
なお、本実施形態では、引張りコイルバネ35の両端部にU字状のフック80を設けているが、いずれか一方のフック80のみをU字状としても良い。また、フック80の形状は、U字状でなくても、O字状(円環状)、コ字状等の形状であっても良い。即ち、フック80内において各取付ピン52、75をスライドさせることができる形状であれば良い。
【0094】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、連結装置31以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
図11、
図12に示されるように、連結装置31は、機体2の後部に接続される回動板32(
図12では図示略)と、回動板32に接続される第1の連結板33と、第1の連結板33の後部に接続されてスキージ15に固定される第2の連結板34と、第1の連結板33と第2の連結板34の間に介装される付勢部材としてのトーションバネ82と、を備えている。回動板32の構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
図11、
図12に示されるように、第1の連結板33の底板44の前後方向及び左右方向の中央部には、切欠部83が設けられている。切欠部83の後縁部の左右方向中央部には、第1の腕支持部84(中立用腕支持部)が設けられている。第1の腕支持部84は、第1の連結板33の一部を上方に向かって略直角に曲げ起こして形成されており、第1の連結板33と一体である。第1の連結板33のその他の部分の構成については、第1の取付ピン52が固定されていない点を除いて第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0097】
第2の連結板34には、半円状の前縁部61の左右方向中央部に、左右方向に沿って延びる平坦部85が設けられ、この平坦部85の左右方向中央部に、第2の腕支持部86(回転用腕支持部)が設けられている。第2の腕支持部86は、第2の連結板34の一部を下方に向かって略直角に曲げ起こして形成されており、第2の連結板34と一体である。第2の腕支持部86は、第1の腕支持部84よりも僅かに前方に配置されるように、その形成位置が調整されている。第2の連結板34のその他の部分の構成については、第2の取付ピン75が固定されていない点を除いて第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0098】
トーションバネ82は、コイル部87と、このコイル部87の両端に設けられる双腕部88と、を備えている。
【0099】
コイル部87は、その内径が第2の連結軸56の大径部57の外径よりも大きくなるように形成されている。これにより、コイル部87を連結軸56の周囲に取り付けられるようになっている。
【0100】
各双腕部88は、各腕支持部84、86に支持されていない状態において、
図12に二点鎖線で示されるように、前側に向かって拡開している。この状態から、双腕部88を互いに交差させるようにして、一方の双腕部88を各腕支持部84、86の左側部に引っ掛けると共に、他方の双腕部88を各腕支持部84、86の右側部に引っ掛けることで、各双腕部88が付勢された状態で各腕支持部84、86に支持されるようになっている。各双腕部88には屈曲部90(
図12参照)が設けられている。この屈曲部90の屈曲角度は、各双腕部88が各腕支持部84、86に支持された状態において、各双腕部88が前後方向と略平行になるように、調節されている。
【0101】
上記の如く構成されたものにおいて、第2の連結板34及びスキージ15が回転中立位置に有る場合には、トーションバネ82の右側の双腕部88が各腕支持部84、86の右側部に付勢状態で支持されるとともに、トーションバネ82の左側の双腕部88が各腕支持部84、86の左側部に付勢状態で支持されている。これにより、第2の連結板34及びスキージ15が回転中立位置に保持されている(
図11参照)。
【0102】
この状態から、スキージ15が床面の凹凸や障害物に接触したり、機体2が旋回したりすると、第1の連結板33に対して第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に左右に回転する。例えば、第2の連結板34及びスキージ15が回転中立位置から右回りに回転すると、
図13に示されるように、右側の双腕部88が第2の腕支持部86の右側面に押圧されてコイル部87を支点に右回りに回転する。これに伴って右側の双腕部88が第2の連結板34を回転中立位置側に付勢する。
【0103】
一方で、第2の連結板34及びスキージ15が連結軸56を中心に回転中立位置から左回りに回転すると、左側の双腕部88が第2の腕支持部86の左側面に押圧されてコイル部87を支点に左回りに回転する。これに伴って左側の双腕部88が第2の連結板34を回転中立位置側に付勢する。
【0104】
以上のように、本実施形態では、付勢部材を1個のトーションバネ82のみで構成しているため、複数個の付勢部材を必要とする場合と比較して、製造コストの低廉化を図ることが可能となる。また、第1の連結板33及び第2の連結板34の一部を曲げ起こすことで、各連結板33、34と一体の腕支持部84、86を形成しているため、フック80を取り付けるための取付ピン等の部材が不要となる。これに伴って、製造コストの更なる低廉化を図ることが可能となり、極めて安価に連結装置31を製造することができる。
【0105】
第1、第2の実施形態においては、スキージ15を平面視において略弓型に湾曲させているが、他の異なる実施形態では、スキージ15を平面視において略V字型に湾曲させても良い。
【0106】
第1、第2の実施形態では、回動板32と第1の連結板33を分離可能としているが、他の異なる実施形態では、回動板32と第1の連結板33を一体構造としても構わない。
【0107】
第1、第2の実施形態では、第1の連結板33と第2の連結板34の間に付勢部材としての引張りコイルバネ35やトーションバネ82を設けたが、他の異なる実施形態では、第1の連結板33と第2の連結板34の間に加えて、機体2と第1の連結板33の間にも付勢部材を設けても構わない。
【0108】
第1、第2の実施形態では、洗浄具としてパッド7を用いたが、他の異なる実施形態では、例えばブラシ等の他の洗浄具を用いても良い。
【0109】
第1、第2の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。