特許第5759822号(P5759822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759822
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】車両用ステップ
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20150716BHJP
   B62D 25/22 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B60R3/00
   B62D25/22
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-164294(P2011-164294)
(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-28219(P2013-28219A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤川 毅
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−098282(JP,U)
【文献】 実開平03−083180(JP,U)
【文献】 米国特許第06178364(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
B62D 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブへの乗降時に足を掛けるための踏み面と、該踏み面を前後及び車幅方向内側の三方から取り囲んで支持するステップカバーと、該ステップカバーの一部に設けられた切欠部と、該切欠部を塞ぐ可動壁とを備え、
前記切欠部は前記ステップカバーの後方壁面の少なくとも車幅方向中間部より車幅方向外側部分に設け、
前記可動壁を前記ステップカバーの後方壁面の残余の部分の車幅方向外側に取り付け且つ前記可動壁をその車幅方向内側端を軸として後方へ傾動し得るように構成したことを特徴とする車両用ステップ。
【請求項2】
可動壁がスプリングヒンジを介してステップカバーの後方壁面に枢着され、後方へ傾動した可動壁が前記スプリングヒンジの復元力により初期位置に復帰し得るよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ステップ。
【請求項3】
可動壁が可撓性のラバープレートにより構成され、後方へ撓んで傾動した可動壁が自身の復元力により初期位置に復帰し得るよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、大型トラック等のようにキャブの乗降口の地上高が高い車両にあっては、乗降口の下方にステップを設けて乗降性を高めるようになっており、図5に具体的な乗降時の様子を示す通り、通常の場合においては、キャブ1のドア2を大きく開け放った状態で乗員3が乗降口4のアシストグリップ5,6を掴みながらステップ7,8,9に足を掛けて乗降を行うようにしている。
【0003】
図6に詳細を示している通り、ここに図示している例では、乗降口4の下方に三段のステップ7,8,9が設けられており、各ステップ7,8,9は、乗降時に足を掛けるための踏み面7a,8a,9aと、該踏み面7a,8a,9aを前後及び車幅方向内側の三方から取り囲んで支持するステップカバー7b,8b,9bとにより構成され、該各ステップカバー7b,8b,9bが相互に連結されてキャブ1の側面下部に組み付けられるようになっている。
【0004】
尚、図5及び図6中における符号の10は前輪を示しており、最下段のステップカバー7aにおける後方壁面7bと前輪10との間には、所要のクリアランスが確保されるようになっている。
【0005】
また、この種の車両用ステップに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−91129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多数の大型トラック等の車両を、決められたパーキングエリア内に効率良く並べて駐停車させたいケースでは、車両同士の相互間隔をできるだけ小さくとって駐停車させることになるため、隣の車両が邪魔になってキャブ1のドア2を大きく開けることができなくなり、半開きにしたドア2(図6の図示を参照)の隙間を擦り抜けるようにして乗降しなければならなくなるが、最初に最下段のステップ7の踏み面7aに足を掛けようとした際に、図7に平面断面図で示す如く、最下段の踏み面7aを取り囲んでいるステップカバー7bの後方壁面7bが邪魔になり、最下段の踏み面7aに足11を乗せづらいという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ドアを半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する場合であっても、踏み面に足を乗せ易くすることが可能な車両用ステップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、キャブへの乗降時に足を掛けるための踏み面と、該踏み面を前後及び車幅方向内側の三方から取り囲んで支持するステップカバーと、該ステップカバーの一部に設けられた切欠部と、該切欠部を塞ぐ可動壁とを備え、前記切欠部は前記ステップカバーの後方壁面の少なくとも車幅方向中間部より車幅方向外側部分に設け、前記可動壁を前記ステップカバーの後方壁面の残余の部分の車幅方向外側に取り付け且つ前記可動壁をその車幅方向内側端を軸として後方へ傾動し得るように構成したことを特徴とする車両用ステップ、に係るものである。
【0010】
而して、このようにすれば、ドアを半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する際に、乗員が足を使ってステップカバーの可動壁を後方へ押しやることにより、該可動壁を後方へ従来よりも大きな傾動角度で傾動させて邪魔にならないよう退避させ、ステップの間口を大きくすることが可能となり、踏み面に対し足が乗せ易くなる。
【0011】
また、本発明においては、可動壁がスプリングヒンジを介してステップカバーの後方壁面の残余の部分の車幅方向外側に枢着され、後方へ傾動した可動壁が前記スプリングヒンジの復元力により初期位置に復帰し得るよう構成されていることが好ましく、このようにすれば、乗員の足が可動壁から離れると直ぐにスプリングヒンジの復元力により前記可動壁が初期位置に復帰するので、乗員が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)において、これまでと大きく変わらない意匠的な美観を保つことが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、可動壁がステップカバーの後方壁面の残余の部分の車幅方向外側に取り付けられ且つ可動壁が可撓性のラバープレートにより構成され、後方へ撓んで傾動した可動壁が自身の復元力により初期位置に復帰し得るよう構成されていても良く、このようにすれば、乗員の足が可動壁から離れると直ぐに可動壁自身の持つ復元力により該可動壁が初期位置に復帰するので、この場合も、乗員が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)において、これまでと大きく変わらない意匠的な美観を保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の車両用ステップによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0014】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、足を使ってステップカバーの可動壁を後方へ押しやり、該可動壁を後方へ傾動させて邪魔にならないよう退避させることができるので、ドアを半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する場合であっても、踏み面に対し足を乗せ易くすることができ、キャブ内への乗降性を従来より大幅に向上することができる。
また、本発明の請求項1に記載の発明によれば、切欠部の車幅方向内側端をステップカバーの後方壁面の車幅方向中間部程度に留めたので、ステップカバーの後方壁面における車幅方向中間部より内側まで大きく可動壁を形成するよりも、ステップカバーの後方壁面と前輪との間の可動壁を後方へ傾動できる範囲での傾動角度を大きくとることができ、ステップの間口を大きくすることができる。
【0015】
(II)本発明の請求項2,3に記載の発明によれば、スプリングヒンジの復元力、或いは、ラバープレートから成る可動壁自身の持つ復元力により、足で傾動させた可動壁を初期位置に復帰させることができるので、乗員が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)における意匠的な美観を保つことができ、可動壁を設けたことによる外観品質の悪化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す平面断面図である。
図2図1の可動壁を後方へ傾動させた状態を示す平面断面図である。
図3】本発明の別の形態例を示す平面断面図である。
図4図3の可動壁を後方へ傾動させた状態を示す平面断面図である。
図5】乗降口の地上高が高い車両への乗降時の様子を説明する斜視図である。
図6図5のドアを大きく開けることができない状態を説明する斜視図である。
図7】最下段の踏み面への足の乗せづらさを説明する平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図5図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0019】
図1に示す如く、本形態例においては、先の図6で乗降口4の下方に三段で設けられていたステップ7,8,9のうちの最下段のステップ7に関し、そのステップカバー7bの後方壁面7bにおける車幅方向中間部付近より外側部分を切欠部12とし、該切欠部12を塞ぐように可動壁13を配設している。
【0020】
ここで、前記可動壁13の車幅方向内側端は、ステップカバー7bの後方壁面7bにおける残余の部分に対しスプリングヒンジ14を介して取り付けられており、図2に示す如く、前記可動壁13の車幅方向内側端を軸として後方へ傾動し得るようになっていると共に、後方へ傾動した可動壁13が前記スプリングヒンジ14の復元力により初期位置(図1に示す傾動前の位置)に復帰し得るようにもなっている。
【0021】
尚、ステップカバー7bの後方壁面7bと前輪10との間のクリアランスは限られているので、可動壁13を後方へ傾動できる範囲には自ずから限界があるが、ステップカバー7bの後方壁面7bにおける車幅方向中間部より内側まで大きく可動壁13を形成しなくても、前記後方壁面7bの車幅方向中間部程度に留めた方が寧ろ傾動角度を大きくとることができ、ステップ7の間口を大きくすることが可能である。
【0022】
而して、このようにステップ7を構成すれば、ドア2(図6参照)を半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する際に、乗員3(図5参照)が足11を使ってステップカバー7bの可動壁13を後方へ押しやることにより、該可動壁13を図1の状態から図2の状態のように後方へ傾動させて邪魔にならないよう退避させることが可能となり、踏み面7aに対し足11が乗せ易くなる。
【0023】
また、乗員3(図5参照)の足11が可動壁13から離れると直ぐにスプリングヒンジ14の復元力により前記可動壁13が初期位置に復帰するので、乗員3(図5参照)が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)において、これまでと大きく変わらない意匠的な美観を保つことが可能となる。
【0024】
従って、上記形態例によれば、足11を使ってステップカバー7bの可動壁13を後方へ押しやり、該可動壁13を後方へ傾動させて邪魔にならないよう退避させることができるので、ドア2(図6参照)を半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する場合であっても、踏み面7aに対し足11を乗せ易くすることができ、キャブ1(図6参照)内への乗降性を従来より大幅に向上することができる。
【0025】
また、スプリングヒンジ14の復元力により、足11で傾動させた可動壁13を初期位置に復帰させることができるので、乗員3(図5参照)が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)における意匠的な美観を保つことができ、可動壁13を設けたことによる外観品質の悪化を回避することができる。
【0026】
図3及び図4は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、可動壁13が可撓性のラバープレートにより構成されている場合を示しており、先の図1及び図2の形態例の場合と同様に、ステップカバー7bの後方壁面7bにおける車幅方向中間部付近より外側部分を切欠部12とし、該切欠部12を塞ぐようにラバープレートの可動壁13を配設してリベット15等により前記後方壁面7bにおける残余の部分に固定し、後方へ撓んで傾動した可動壁13が自身の復元力により初期位置に復帰し得るようにしてある。
【0027】
このようにした場合でも、足11を使ってステップカバー7bの可動壁13を後方へ押しやり、該可動壁13を後方へ傾動させて邪魔にならないよう退避させることができるので、ドア2(図6参照)を半開程度にしか開けられない狭い場所で乗降する場合であっても、踏み面7aに対し足11を乗せ易くすることができ、キャブ1(図6参照)内への乗降性を従来より大幅に向上することができる。
【0028】
また、可動壁13自身の持つ復元力により、足11で傾動させた可動壁13を初期位置に復帰させることができるので、乗員3(図5参照)が乗降し終えた後の通常時(駐停車時や走行時)における意匠的な美観を保つことができ、可動壁13を設けたことによる外観品質の悪化を回避することができる。
【0029】
尚、本発明の車両用ステップは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、最下段以外のステップに適用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 キャブ
4 乗降口
7 ステップ
7a 踏み面
7b ステップカバー
7b 後方壁面
11 足
12 切欠部
13 可動壁
14 スプリングヒンジ
15 リベット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7