【0004】
以下、本発明のベースコート塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
本発明のベースコート塗料組成物(以下、「本塗料」又は「本発明の塗料組成物」と略称する場合がある)は、
(A)被膜形成性樹脂成分、
(B)体積基準の粒度分布において、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径(D
50)が1〜10μmの範囲内であり、かつ粒径が0.1μm以上3μm未満の粒子の含有率P
1(%)と粒径が3μm以上10μm以下の粒子の含有率P
2(%)との比P
r=P
2/P
1が少なくとも1.1であるタルク、ならびに
(C)水酸基及びリン酸基を含有する樹脂
を含んでなるものである。
被膜形成性樹脂成分(A)
被膜形成性樹脂成分(A)としては、従来から塗料分野において使用されている、基体樹脂及び場合によりさらに硬化剤を含んでなる、それ自体既知の被膜形成性樹脂成分を使用することができる。該基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。
被膜形成性樹脂成分(A)としては、特に、基体樹脂としての水酸基含有樹脂(A1)を硬化剤(A2)と組み合わせて含んでなるものが好適である。
水酸基含有樹脂(A1)
水酸基含有樹脂(A1)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂であり、水酸基含有樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜300mgKOH/g、特に5〜250mgKOH/g、さらに特に10〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
水酸基含有樹脂(A1)は分子内に酸基を有することもできる。該酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられ、特に、カルボキシル基が好適である。
本発明の塗料組成物を水性塗料として使用する場合、酸基、好ましくはカルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより、水酸基含有樹脂(A1)を水溶性化又は水分散化することが好ましい。上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミンを挙げることができる。これらの塩基性化合物は、水酸基含有樹脂(A1)の酸基に対して通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内で使用することができる。
本明細書において「水性塗料」は、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)中に、塗膜形成性樹脂成分、顔料等を分散及び/又は溶解させてなる塗料を意味する。本発明の塗料組成物は、環境負荷を低減する等の観点から、水性塗料であることが好ましい。本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、該組成物中における水の含有量は通常10〜90質量%、特に20〜80質量%、さらに特に30〜60質量%の範囲内にあることが好ましい。
塗料組成物の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基含有樹脂(A1)は、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に3〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。また、水酸基含有樹脂(A1)として酸価が10mgKOH/g以下の水酸基含有樹脂を使用する場合には、上記塩基性化合物を用いて中和することに代えて、該水酸基含有樹脂と乳化剤とを混合し、機械的なせん断力を加えて攪拌して該水酸基含有樹脂を水中に強制的に分散させることにより、水性塗料として使用することもできる。
上記水酸基含有樹脂(A1)としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、水酸基含有樹脂(A1)は、水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)であることがより好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)を、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水性媒体中でのエマルション重合法等のそれ自体既知の方法によって共重合させることにより製造することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端に水酸基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマー(b)の具体例としては、以下の(i)〜(xviii)に記載するものを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:例えば、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 分子末端にアルコキシ基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩、アンモニウム塩等。
(xvi) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xvii) 光安定性重合性不飽和モノマー:例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xviii) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)はアミド基を有することが好ましく、そのようなアミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)の少なくとも一部として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより製造することができる。
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応させることにより伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂と併用することもできる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、モノマー(a)及びモノマー(b)の合計量を基準にして、一般に1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは3〜30質量%の範囲内で使用することができる。
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に5〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、また、得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に5〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、さらに、得られる塗膜の外観、耐水性等の観点から、一般に2,000〜5,000,000、特に50,000〜1,000,000、さらに特に100,000〜500,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)に基いて、ポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)は、形成塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の観点から、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)70〜99.9質量%を共重合することにより得られる共重合体(I)のコアと、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)1〜35質量%、疎水性重合性不飽和モノマー(e)5〜60質量%、ならびに水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び疎水性重合性不飽和モノマー(e)以外の重合性不飽和モノマー(f)5〜94質量%を共重合することにより得られる共重合体(II)のシェルを構成成分とするコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)であることが好ましい。
コアを構成する重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)は、形成塗膜の平滑性等の観点から、なかでも、アミド基を有することが好ましく、そのような重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)は、モノマー(c)及びモノマー(d)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜4質量%の範囲内で使用することができる。
また、コアを構成する重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)と共重合可能な重合性不飽和モノマーであり、1分子中に1個の重合性不飽和基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等を含有する化合物が包含される。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
他方、シェルを構成する水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、前述したように、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコ−ル;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、モノマー(a)、モノマー(e)及びモノマー(f)の合計質量を基準として、一般に1〜35質量%、好ましくは6〜25質量%、さらに好ましくは11〜20質量%の範囲内で使用することができる。
また、シェルを構成する疎水性重合性不飽和モノマー(e)には、炭素数が6以上の直鎖状、分岐状もしくは環状で飽和又は不飽和の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマーが包含され、具体的には、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)に用いる疎水性重合性不飽和モノマー(e)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、なかでも、ビニル芳香族化合物が好ましく、スチレンが特に好ましい。
疎水性重合性不飽和モノマー(e)は、モノマー(a)、モノマー(e)及びモノマー(f)の合計量を基準として、一般に5〜60質量%、特に9〜40質量%、さらに特に15〜25質量%の範囲内で使用することが好ましい。
また、シェルを構成する水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び疎水性重合性不飽和モノマー(e)以外の重合性不飽和モノマー(f)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び疎水性重合性不飽和モノマー(e)以外の重合性不飽和モノマー(f)は、形成塗膜の平滑性を確保できる点から、その成分の少なくとも一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(g)を含むことが好適である。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(g)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、なかでも、(メタ)アクリル酸が特に好適である。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(g)は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)の水性媒体中における安定性ならびに形成塗膜の平滑性及び耐水性等の観点から、モノマー(a)、モノマー(e)及びモノマー(f)の合計質量を基準として、一般に1〜40質量%、特に6〜25質量%、さらに特に11〜19質量%の範囲内で使用することが好ましい。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜70mgKOH/g、特に2〜60mgKOH/g、さらに特に5〜45mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
また、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、貯蔵安定性や形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に5〜90mgKOH/g、特に10〜70mgKOH/g、さらに特に15〜50mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
さらに、形成塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、モノマー(a)、モノマー(e)及びモノマー(f)として、重合性不飽和基を1分子中に1個のみ有する重合性不飽和モノマーを使用し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)のシェルを未架橋型とすることが好ましい。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)70〜99.9質量%を含有するモノマー混合物(I)を乳化重合して得られるエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)1〜35質量%、疎水性重合性不飽和モノマー(e)5〜60質量%及び上記モノマー(a)及びモノマー(d)以外の重合性不飽和モノマー(f)5〜94質量%を含有するモノマー混合物(II)を添加し、さらに重合させることによって得ることができる。
上記モノマー混合物の乳化重合は、それ自体既知の方法、例えば、乳化剤の存在下で重合開始剤を使用して行うことができる。
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等の有機酸のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用してもよく、なかでも、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好適である。
上記反応性アニオン性乳化剤としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。なかでも、形成塗膜の耐水性に優れるため、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等の市販品を挙げることができる。
上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「SR−1025A」(商品名、旭電化工業社製)等の市販品を挙げることができる。
上記乳化剤は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、通常0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%の範囲内で使用することができる。
前記重合開始剤としては、油溶性、水溶性のいずれのタイプのものであってもよく、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、 tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、 tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4´−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用し、レドックス重合系としてもよい。
上記重合開始剤は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1〜5質量%、特に0.2〜3質量%の範囲内で使用することが好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類や量等に応じて適宜選択することができる。例えば、該重合開始剤は、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、上記のようにして得られるエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)ならびに上記モノマー(a)及びモノマー(e)以外の重合性不飽和モノマー(f)を含むモノマー混合物(II)を添加し、さらに重合させることによって得ることができる。
モノマー混合物(II)は、必要に応じて、前記で列記したような重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。
また、モノマー混合物(II)はそのまま滴下することもできるが、モノマー混合物(II)を水性媒体に分散し、モノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
モノマー混合物(II)の重合は、例えば、乳化されていてもよいモノマー混合物(II)を一括で又は滴下で上記エマルションに添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱することにより行うことができる。
上記の如くして得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)を含有するモノマー混合物(I)から形成される共重合体(I)をコアとし、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)ならびに上記モノマー(a)及び(e)以外の重合性不飽和モノマー(f)を含有するモノマー混合物(II)から形成される共重合体(II)をシェルとするコア/シェル型複層構造を有することができる。
また、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、共重合体(I)を得る工程と共重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成する重合性不飽和モノマー(1種又は2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層又はそれ以上の層からなる樹脂粒子としてもよい。
なお、本発明において、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)の「シェル」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コアとシェルを有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型構造は、通常、コアがシェルに完全に被覆された層構造が一般的であるが、コアとシェルの質量比率等によっては、シェルのモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コアの一部をシェルが被覆した構造であってもよく、あるいはコアの一部にシェルの構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)においてコアに多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
コア/シェル型復層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)における共重合体(I)と共重合体(II)の割合は、形成塗膜のフリップフロップ性、メタリックムラ等の観点から、共重合体(I)/共重合体(II)の固形分質量比で、一般に10/90〜90/10、特に50/50〜85/15、さらに特に65/35〜80/20の範囲内にあることが好ましい。
上記のようにして得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)は、一般に10〜1000nm、特に20〜500nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。なお、上記水酸基含有アクリル樹脂の平均粒子径は、測定温度20℃で、コールターカウンター法によって測定された値である。この測定は、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて行うことができる。
得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)の水分散体粒子の機械的安定性を向上させるために、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)が有するカルボキシル基等の酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和することができるものであれば特に制限はなく使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられ、これらの中和剤は、中和後の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1−1’)の水分散液のpHが約6.5〜約9.0となるような量で用いることが望ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)
本発明の塗料組成物において、水酸基含有樹脂成分(A)の基体樹脂として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)を使用することによって、得られる塗膜の平滑性を向上させることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸には、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物が包含され、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜6、好ましくは1〜4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
上記脂環族多塩基酸には、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物が包含され、脂環式構造は、主として4〜6員環構造であることができる。脂環族多塩基酸としては、具体的には、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜6、好ましくは1〜4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物が包含され、具体的には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜6、好ましくは1〜4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。上記芳香族多塩基酸としては、中でも、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られるアルコール化合物等が挙げられる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150〜約250℃の温度で5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)を製造することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらの成分を一度に添加してもよいし、一方又は両者を数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させることにより、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することもできる。さらに、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂を製造してもよい。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、該樹脂の製造中又は製造後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
変性に使用しうる脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、変性に使用しうるモノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を挙げることができる。
また、変性に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物はそれぞれ単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)としては、得られる塗膜の平滑性及び耐チッピング性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量が、該酸成分の合計量を基準として、一般に30〜100mol%、特に40〜97mol%、さらに特に50〜95mol%の範囲内にあるものが好ましい。特に、得られる塗膜が耐チッピング性に優れるという観点から、上記脂肪族多塩基酸がアジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であり、脂環族多塩基酸が1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に10〜300mgKOH/g、特に50〜250mgKOH/g、さらに特に80〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、更にカルボキシル基を有する場合、得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に15〜100mgKOH/g、さらに特に20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、得られる塗膜の平滑性、耐水性等の観点から、一般に500〜50,000、特には1,000〜30,000、さらに特に1,200〜10,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、カルボキシル基を有することが好ましく、この場合、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)は、一般に1〜200mgKOH/g、特に15〜100mgKOH/g、さらに特に20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
本発明の塗料組成物は、被膜形成性樹脂成分(A)における基体樹脂として、水酸基含有樹脂(A1)以外に、実質的に水酸基を含有しない樹脂(以下、これを「水酸基不含樹脂」という)(A3)を使用することもできる。
水酸基不含樹脂(A3)
水酸基不含樹脂(A3)としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性等の観点から、なかでも、ポリウレタン樹脂が好適である。これらの樹脂は例えばカルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有していることができ、特に、カルボキシル基を有していることが好ましい。これらの樹脂はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができるが、通常、水酸基含有樹脂(A1)と組み合わせて使用することが好ましい。
上記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート;ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール;低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを製造し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させることにより得られる、平均粒径が約0.001〜約3μmの範囲内にある自己乳化型のウレタンエマルション(A3−1)等を挙げることができる。該ウレタンエマルションとしては、例えば、商品名「ユーコートUX−5000」、商品名「ユーコートUX−8100」(いずれも三洋化成工業株式会社製)等の市販品を挙げることができる。
硬化剤(A2)
硬化剤(A2)は、水酸基含有樹脂(A1)中に存在する水酸基及び場合により存在しうるカルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して、本発明の塗料組成物を硬化させ得る官能基含有化合物である。硬化剤(A2)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる塗膜の耐水性及び耐チッピング性の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、さらに、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、アミノ樹脂が特に好ましい。
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を適当なアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いうるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
アミノ樹脂としてはメラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
なかでも、鮮映性及び耐水性に優れた複層塗膜が得られるという観点から、水酸基含有樹脂(A1)として、原料の酸成分中の脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量が、該酸成分の合計量を基準として30〜97mol%の範囲内にあり且つ芳香族多塩基酸の含有量が3〜70mol%の範囲内にある酸成分を用いて製造される水酸基含有ポリエステル樹脂を用い、且つ硬化剤(A2)として、上記メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂及びメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種のアルキルエーテル化メラミン樹脂を用いてなる塗料組成物が特に好適である。
また、上記メラミン樹脂は、一般に400〜6,000、特に700〜4,000、さらに特に1,000〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
メラミン樹脂としては市販品を使用でき、具体的には、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製、商品名)等が挙げられる。
また、硬化剤(A2)としてメラミン樹脂を使用する場合、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミンとの塩等を触媒として使用することができる。
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等が包含される。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーを使用することもできる。
ポリイソシアネート化合物は、得られる塗膜の耐水性の観点から、該ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂(A1)中の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.5〜2.0、特に0.8〜1.5の範囲内となる割合で使用することが好ましい。
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体(ビウレット、イソシアヌレート等);これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
また、前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ブロック剤としては、なかでも、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が好適である。
上記ブロック剤として、また、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等を使用することもできる。
本発明の塗料組成物が水性塗料の場合、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
また、水酸基含有樹脂(A1)及び/又は水酸基不含樹脂(A3)が、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有する場合、硬化剤(A2)として、該官能基と反応し得る架橋性官能基を有する硬化剤を使用することができる。
このような硬化剤としては、例えば、上記架橋性官能基と反応し得る、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、なかでも、カルボキシル基と反応し得るポリカルボジイミド化合物が好ましい。
ポリカルボジイミド化合物は、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有する化合物であり、例えば、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。
本発明の塗料組成物が水性塗料の場合、得られる塗膜の平滑性等の観点から、上記ポリカルボジイミド化合物としては、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(商品名、いずれも日清紡社製)等の市販品を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(商品名、いずれも日清紡社製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の塗料組成物における水酸基含有樹脂(A1)と硬化剤(A2)との使用割合は、塗膜の付着性及び耐チッピング性の向上の観点から、両者の合計量に基づいて、水酸基含有樹脂(A1)は一般に30〜95質量%、特に50〜90質量%、さらに特に60〜80質量%の範囲内、そして硬化剤(A2)は一般に5〜70質量%、特に10〜50質量%、さらに特に20〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
水酸基含有樹脂(A1)がその少なくとも一部分として水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)を含有する場合、本発明の塗料組成物における水酸基含有アクリル樹脂(A1−1)の含有量は、水酸基含有樹脂(A1)及び硬化剤(A2)の合計量に基づいて、一般に2〜80質量%、特に10〜60質量%、さらに特に20〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
水酸基含有樹脂(A1)がその少なくとも一部分として水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)を含有する場合、本発明の塗料組成物における水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−2)の含有量は、水酸基含有樹脂(A1)及び硬化剤(A2)の合計量に基づいて、一般に2〜80質量%、特に5〜60質量%、さらに特に10〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明の塗料組成物が、前述のウレタンエマルション(A3−1)を含む場合、ウレタンエマルション(A3−1)の含有量は、水酸基含有樹脂(A1)及び硬化剤(A2)の合計100質量部あたり、一般に1〜80質量部、特に5〜60質量部、さらに特に10〜40質量部の範囲内であることが好適である。
タルク(B)
本発明の塗料組成物において、タルク(B)として、体積基準の粒度分布において、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径(D
50)が1〜10μmの範囲内にあり、かつ粒径が0.1μm以上3μm未満の粒子の含有率P
1(%)と粒径が3μm以上10μm以下の粒子の含有率P
2(%)との比P
r=P
2/P
1が少なくとも1.1であるタルクが使用される。
なお、タルクは、マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物であって、組成式は一般にMg
3Si
4O
10(OH)
2で表される。かかるタルクとしては、例えば、「シムゴン」、「タルクMS」、「MICRO ACE SG−95」、「MICRO ACE P−8」、「MICRO ACE P−6」、「MICRO ACE P−4」、「MICRO ACE P−3」、「MICRO ACE P−2」、「MICRO ACE L−1」、「MICRO ACE K−1」、「MICRO ACE L−G」、「MICRO ACE S−3」、「NANO ACE D−1000」(以上商品名、日本タルク社製)、「Pタルク」、「PHタルク」、「PSタルク」、「TTKタルク」、「TTタルク」、「Tタルク」、「STタルク」、「ハイトロン」、「ハイトロンA」、「ミクロライト」、「ハイラック」、「ハイミクロンHE5」(以上商品名、竹原化学工業社製)等の市販品が挙げられる。
タルク(B)の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱法によって測定することができる。本明細書において、タルク(B)の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックNT3300」(商品名、日機装社製)を使用して測定したものである。その際、分散媒として水を使用し、サンプル濃度は装置に設定された所定の透過率の範囲となるように調整した。
上記のようにして測定される体積基準の粒度分布から、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径(D
50)を算出することができる。タルク(B)において、得られる塗膜の平滑性及び耐チッピング性の観点から、該粒径(D
50)は1〜10μm、特に2〜9μm、さらに特に3〜8μmの範囲内であることが好適である。
また、タルク(B)は、得られる塗膜の平滑性及び耐チッピング性の観点から、体積基準の粒度分布において、粒径が0.1μm以上3μm未満の粒子の含有率P
1(%)と粒径が3μm以上10μm以下の粒子の含有率P
2(%)との比P
r=P
2/P
1が少なくとも1.1、特に1.3〜20、さらに特に1.5〜10、さらにより一層特に2〜5の範囲内であることが好適である。
タルクを小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径(D
50)及び含有率P
1と含有率P
2との比P
rを上記特定の範囲内になるように調整する方法としては、例えば、タルクを粉砕する際の粉砕時間を調整したり、タルクを塗料溶媒中に分散する際の分散時間を調整したりする方法等が挙げられる。
水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)
本発明の塗料組成物に使用される水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基と少なくとも1個のリン酸基とを有する樹脂であり、該樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上記水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)は一般に15〜200mgKOH/g、特に20〜140mgKOH/g、さらに特に30〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。また、該樹脂(C)は一般に10〜200mgKOH/g、特に40〜170mgKOH/g、さらに特に70〜150mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。さらに、該樹脂(C)は一般に2,000〜100,000、特に4,000〜50,000、さらに特に8,000〜30,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)としては、例えば、以下に述べる水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)1〜50質量部、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)1〜70質量部及びその他の重合性不飽和モノマー(c−3)0〜98質量部を共重合することにより得られる共重合体(C’)が好適である。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)は、1分子中にリン酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、具体的には、例えば、下記一般式(1)
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、Xは−O−又は−NH−を示し、R
2は炭素数1〜30の2価の有機基を示す]
で表されるリン酸基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
上記一般式(1)において、Xは−O−であることが好ましい。また、R
2で示される炭素数1〜30の有機基としては、エーテル結合、エステル結合又はカーボネート結合を有していてもよい炭素数1〜30のアルキレン基であることが好ましい。
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)としては、例えば、以下に記載するアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−1)、オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−2)、ポリエステル変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−3)、ポリカーボネート変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−4)等を用いることが好ましい。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
アルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−1)は下記一般式(2)
[式中、R
1は前記と同じ意味を有し、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を示す]
で表されるモノマーである。
上記式(2)において、R3で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また。該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。
上記アルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−1)としては、具体的には、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシブチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、特に、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−2)は下記一般式(3)
[式中、R
1は前記と同じ意味を有し、R
4は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、pは3〜30の整数を示し、複数個のR
4は互いに同一でも異なっていてもよい]
で表されるモノマーである。
上記式(3)において、R4で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また。該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。pは4〜20の整数であることが好ましく、5〜15の整数であることがより好ましい。
オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−2)としては、具体的には、例えば、アシッドホスホオキシテトラ(オキシエチレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシペンタ(オキシエチレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシペンタ(オキシプロピレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−2)は、例えば、(メタ)アクリル酸を、常法に従いアルキレンオキサイドで変性し、五酸化リン、オキシ塩化リン等の既知のリン酸化剤を作用させた後、加水分解することにより容易に合成することができる。変性に用いるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが好ましく、プロピレンオキサイドがより好ましい。
ポリエステル変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−3)は下記一般式(4)
[式中、R
1及びXは前記と同じ意味を有し、R
5は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
6及びR
7は互いに独立して炭素数1〜10のアルキレン基を示し、qは1〜30の整数を示し、qが2以上のとき、複数個のR
6は互いに同一でも異なっていてもよく、rは0〜30の整数を示し、rが2以上のとき、複数個のR
7は互いに同一でも異なっていてもよい]
で表されるモノマーである。
上記式(4)において、R5で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。R6で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、該アルキレン基は炭素数2〜6であることが好ましく、炭素数4〜6であることがより好ましい。R7で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また。該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。qは1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましい。rは0〜20の整数であることが好ましく、0〜10の整数であることがより好ましい。
ポリエステル変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−3)は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類を、常法に従い、環状エステル及び/又はアルキレンオキサイドで変性し、リン酸化剤を作用させた後、加水分解することにより容易に合成することができる。
上記環状エステルとしては、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の炭素数3〜11のラクトン類を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、ε−カプロラクトンを用いることが好ましい。また、上記リン酸化剤としては、それ自体既知のもの、例えば、五酸化リン、オキシ塩化リン等を使用することができる。
ポリカーボネート変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−4)は下記一般式(5)
[式中、R
1及びXは前記と同じ意味を有し、R
8は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
9及びR
10は互いに独立して炭素数1〜10のアルキレン基を示し、sは1〜30の整数を示し、sが2以上のとき、複数個のR
9は互いに同一でも異なっていてもよく、tは0〜30の整数を示し、tが2以上のとき、複数個のR
10は互いに同一でも異なっていてもよい]
で表されるモノマーである。
上記式(5)において、R
8で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。R
9で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、該アルキレン基は炭素数2〜6であることが好ましく、炭素数2〜4であることがより好ましい。R
10で示されるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、該アルキレン基は炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2又は3であることがより好ましい。sは1〜20の整数であるのが好ましく、1〜10の整数であるのがより好ましい。tは0〜20の整数であるのが好ましく、0〜10の整数であることがより好ましい。
ポリカーボネート変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2−4)は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類を、常法に従い、環状カーボネート及び/又はアルキレンオキサイドで変性し、リン酸化剤を作用させた後、加水分解することにより容易に合成することができる。
上記環状カーボネートとしては、例えば、1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキセパン−2−オン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。また、リン酸化剤としては、それ自体既知のもの、例えば、五酸化リン、オキシ塩化リン等を使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマー(c−3)
その他の重合性不飽和モノマー(c−3)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)及びリン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)と共重合し得る、当該モノマー(c−1)及び(c−2)以外の重合性不飽和モノマーである。該モノマー(c−3)は、水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマー(c−3)の具体例としては以下の(i)〜(xviii)に記載するものを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:例えば、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩、アンモニウム塩等。
(xvi) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xvii) 光安定性重合性不飽和モノマー:例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xviii) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
得られる塗膜の耐水性の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(c−3)としては、その成分の少なくとも一部として、疎水性重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
上記疎水性重合性不飽和モノマーには、炭素数6以上の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーが包含され、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。そのような疎水性重合性不飽和モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。得られる塗膜の耐水性向上の観点から、特に、芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いることが好ましく、スチレンを用いることがさらに好ましい。
疎水性重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(c−3)の合計量を基準として、一般に2〜80質量%、特に10〜60質量%、さらに特に15〜40質量%の範囲内で使用することが好適である。
共重合体(C’)において、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(c−3)の使用割合は、モノマー(c−1)〜(c−3)の合計量を基準にして下記の範囲内とすることができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1):1〜50質量%、好まし
くは5〜40質量%、さ
らに好ましくは10〜
30質量%、
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2):1〜70質量%、好ま
しくは10〜55質
量%、さらに好ましく
は20〜45質量%、
その他の重合性不飽和モノマー(c−3):0〜98質量%、好ましく
は5〜85質量%、さらに
好ましくは25〜70質
量%。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(c−3)の共重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水性媒体中でのエマルション重合法等のそれ自体既知の方法により行なうことができる。これらのうち、溶液重合法が好適である。
溶液重合法による場合は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−1)、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(c−3)と、ラジカル重合開始剤との混合物を有機溶媒に溶解又は分散せしめ、通常、約80〜約200℃の温度で1〜10時間程度撹拌しながら加熱して共重合させることにより共重合体(C’)を得ることができる。
上記共重合反応において使用し得る有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n一ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド等のアミド系溶剤;1,3−ジメチル−2−イミダゾーリジノン等のウレア系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;テトラメチレンスルホン等のスルホン系溶剤;丸善石油化学(株)製の「スワゾール310」、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上、いずれも商品名)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。溶液重合における有機溶剤の使用量は、モノマー(c−1)〜(c−3)の合計量100質量部あたり、通常400質量部以下であることが好ましい。
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2’−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、モノマー(c−1)〜(c−3)の合計量100質量部あたり、通常約0.1〜約15質量部の範囲内が好ましく、約0.3〜約10質量部の範囲内がより好ましい。
上記重合反応において、モノマー成分及び重合開始剤の添加順序は、特に制約されないが、重合反応における温度制御の容易性、不良な架橋ゲル化物の生成抑制等の点から、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下する方が好ましい。
かくして得られる共重合体(C’)は一般に15〜200mgKOH/g、特に20〜140mgKOH/g、さらに特に30〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。また、該共重合体(C’)は一般に10〜200mgKOH/g、特に40〜170mgKOH/g、さらに特に60〜150mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。さらに、該共重合体(C’)は一般に2,000〜100,000、特に4,000〜50,000、さらに特に8,000〜30,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
ベースコート塗料組成物
本発明のベースコート塗料組成物は、以上に述べた被膜形成性樹脂成分(A)、タルク(B)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)を、通常の塗料化手段により、溶媒中に均一に混合することにより調製することができる。上記溶媒としては、有機溶剤又は水性溶媒を使用することができる。水性溶媒としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒との混合物を使用することができる。該親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
上記混合の際、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、付着性、耐チッピング性等の観点から、タルク(B)と水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)とをあらかじめ混合して顔料分散液を調製しておき、その顔料分散液を被膜形成性樹脂成分(A)等と共に有機溶剤中又は水性媒体中で混合、分散せしめることが好ましい。
本発明のベースコート塗料組成物における被膜形成性樹脂成分(A)、タルク(B)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)の含有量は、被膜形成性樹脂成分(A)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)の合計樹脂固形分100質量部を基準として、次の範囲内にあることが好適である。
被膜形成性樹脂成分(A):50〜99.5質量部、好ましくは75〜
99質量部、さらに好ましくは85〜98
質量部、
タルク(B):2〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、さらに好
ましくは6.5〜25質量部、さらに特に好ましくは8
〜20質量部、
水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C):0.5〜50質量部、好ま
しくは1〜25質量部、さ
らに好ましくは2〜15
質量部。
本発明のベースコート塗料組成物を使用することにより、付着性及び耐チッピング性に優れ、かつ上塗り塗料に求められる優れた平滑性及び鮮映性を有する塗膜を形成せしめることができる。その理由としては、本塗料中のタルク(B)が、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径(D
50)が1〜10μmの範囲内であり、比較的小粒径のタルクを主成分とする一方で、粒径が0.1μm以上3μm未満の粒子の含有率P
1(%)と粒径が3μm以上10μm以下の粒子の含有率P
2(%)との比P
r=P
2/P
1が1.1以上であり、粒径が0.1μm以上3μm未満の粒子よりも粒径が3μm以上10μm以下の粒子を多く含有し、過度に小粒径化していないため、耐チッピング性を損なわずに、優れた平滑性及び鮮映性を有する塗膜を形成せしめるできることが推察される。さらに、水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)中のリン酸基が、タルク(B)と相互作用し、タルク(B)を塗膜中に均一に分散させるため、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び塗膜強度が向上し、結果として、平滑性、鮮映性、付着性及び耐チッピング性に優れた塗膜が形成されると推察される。
本発明の塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性向上の観点から、さらに、疎水性溶媒(D)を含有することが好ましい。
疎水性溶媒(D)としては、20℃における100gの水に対する溶解質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒を用いることが望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
疎水性溶媒(D)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
本発明の塗料組成物が疎水性溶媒(D)を含有する場合、疎水性溶媒(D)の含有量は、被膜形成性樹脂成分(A)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)の合計樹脂固形分100質量部あたり、通常10〜100質量部、特に20〜80質量部、さらに特に30〜60質量部の範囲内であることが好適である。
また、本発明の塗料組成物は、光輝性顔料(E)を含有することができる。光輝性顔料(E)は、塗膜にキラキラとした光輝感や光干渉性模様を付与するために使用される顔料であり、具体的には、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等から選ばれる少なくとも1種の顔料を使用することができる。なかでも、特に、アルミニウム顔料を使用することが好適である。
上記メタリック顔料はりん片状であることが好ましく、これらのメタリック顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μmの範囲内、そして厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
光輝性顔料(E)は、被膜形成性樹脂成分(A)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)の合計樹脂固形分100質量部あたり、通常1〜50質量部、特に5〜35質量部、さらに特に8〜20質量部の範囲内で使用することが好適である。
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられ、上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、通常、光輝性顔料(E)及び/又は着色顔料を含有する着色ベースコート塗料組成物として使用することができる。
増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記増粘剤としては、特にポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤が好適である。ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用することができ、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」(以上、いずれも商品名);サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、いずれも商品名)等の市販品が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用することができ、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、いずれも商品名);ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」(以上、いずれも商品名);サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、いずれも商品名)等の市販品が挙げられる。
本発明の塗料組成物が上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の含有量は、被膜形成性樹脂成分(A)ならびに水酸基及びリン酸基を含有する樹脂(C)の合計樹脂固形分100質量部あたり、通常0.01〜10質量部、特に0.05〜3質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部の範囲内であることが好適である。
本発明の塗料組成物は、一般に5〜50質量%、特に15〜40質量%、さらに特に20〜30質量%の範囲内の固形分を有することが好適である。
塗装
本発明の塗料組成物は、種々の被塗物に塗装することにより、優れた平滑性、鮮映性、付着性及び耐チッピング性を有する塗膜を形成せしめることができる。
本発明の塗料組成物を適用し得る被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭用電気電子製品の外板部等を挙げることができる。なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
また、本発明の塗料組成物を適用し得る被塗物の材質もまた、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼板等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
上記被塗物は、上記金属材料等の基材上に、電着塗膜等の下塗り塗膜を形成したものであってもよい。また、該基材上に下塗り塗膜及び中塗り塗膜を順に形成したものであってもよい。基材が金属材料である場合は、該基材上に下塗り塗膜を形成させる前に、予めりん酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
本発明の塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられる。これらの塗装方法でウエット塗膜を形成せしめることができる。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。塗装に際して、必要に応じて、静電印加を行ってもよい。
本発明の塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常2〜40μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは8〜18μmの範囲内とすることができる。
ウェット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の塗料組成物を塗装後、加熱することにより行うことができる。加熱はそれ自体既知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の範囲内であることができる。また、加熱時間は通常約10〜約90分間、好ましくは約15〜約60分間、さらに好ましくは約20〜約40分間の範囲内とすることができる。
本発明の塗料組成物が水性塗料の場合、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止するという観点から、該塗料組成物の塗装後、上記加熱硬化を行なう前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常約40〜約100℃、好ましくは約50〜約90℃、さらに好ましくは約60〜約80℃の範囲内であることができる。プレヒートの時間は通常約30秒間〜約20分間、好ましくは約1〜約15分間、さらに好ましくは約2〜約10分間の範囲内とすることができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温の又は約25℃〜約80℃の範囲内の温度に加熱された空気を約30秒間〜約15分間吹き付けることにより行うことができる。
本発明の塗料組成物によって形成される塗膜上には、必要に応じて、それ自体既知のクリヤーコート塗料組成物を塗装することができる。該クリヤーコート塗料組成物を塗装する場合、本発明の塗料組成物によって形成される塗膜は、未硬化塗膜であってもよく、或いは硬化塗膜であってもよい。本発明の塗料組成物によって形成される塗膜が未硬化塗膜である場合、上記クリヤーコート塗料組成物を塗装後に、本発明の塗料組成物の塗膜とクリヤーコート塗料組成物の塗膜を同時に加熱硬化させることができる。
上記クリヤーコート塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。該クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、一般に10〜80μm、好ましくは15〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmの範囲内とすることができる。
上記クリヤーコート塗料組成物の硬化は、前述した如きそれ自体既知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の範囲内であることができる。また、加熱時間は通常約10〜約90分間、好ましくは約15〜約60分間、さらに好ましくは約20〜約40分間の範囲内とすることができる。