【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る防食塗料組成物は、セメントと無機系粉材と膨張材とを含有するコンパウンドと、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンまたはアクリル/スチレン共重合体エマルジョンから選択される高分子エマルジョンと、亜硝酸塩とを含んでいる。
上記構成とすることにより、塗料としての施工性や耐久性が確保される。また、鋼材表面にアルカリ性塗膜が形成されるため、鋼材表面が不動態化され、腐食が進行しない。不動態被膜(Fe
2O
3)が何らかの外的要因により損傷した場合には、亜硝酸イオン(NO
2−)がFe
2+及びOH
−と化学反応を起こして不動態被膜(Fe
2O
3)を再構築する。このため、従来に比べて大幅に鋼構造物の長寿命化を図ることができる。加えて、無機系粉材に対するセメントの質量比が1.0〜1.4となるようにすることで、密実な組織を構築することができる。これにより、亜硝酸塩の拡散スピードが低下し、亜硝酸塩の防錆効果を長期に亘って維持することができる。その結果、鋼構造物の供用期間中における塗り替え回数が減少し、塗り替えに掛かる費用を大幅に低減することができる。一方、無機系粉材に対するセメントの質量比が1.0未満もしくは1.4を超えた場合は、亜硝酸塩の拡散スピードを適正に低下させることはできない。
【0013】
スチレン/ブタジエン共重合体、アクリル/スチレン共重合体は、ともに下地への付着性が良好で、しかも温度による依存性が少なく、低温や比較的温度の高い領域でも優れた弾性を有している。このため、耐透水性、耐候性に優れた塗膜を得ることができる。
特許文献1に記載されているカチオン性スチレンブタジエン共重合体系の合成樹脂は、防錆効果は期待できるが、塗膜の変形能力(伸び)が0.4%であり、鋼材に曲げ軸力が作用した際の伸びが0.5%以上であることからすると、塗膜の亀裂等の問題がある。また、特許文献4に記載されているエポキシ系の合成樹脂は、カチオン性スチレンブタジエン共重合体系の合成樹脂より伸びが小さいと一般的に言われている。
一方、本発明では、スチレン/ブタジエン共重合体を採用するに当たり、スチレン/ブタジエン共重合体の配合を変更(スチレン量の減少)し、さらに、配合を変更したエマルジョン(ラテックス)に相性の良いコンパウンドと組み合わせることにより、伸び率が5%以上の塗膜を得ることに成功した。因みに、塗膜の安定性を考慮した場合、本発明に係る防食塗料組成物によって形成される塗膜の伸び率として5%とすることで、鋼構造物の変形に十分追従することができる。また、別の構成として、亜硝酸塩イオン(NO
2−)が陽極に向かう流れを助長するため、アニオン系の合成樹脂としてアクリル/スチレン共重合体を採用した。
【0014】
特許文献3などに記載されている従来のポリマーセメントモルタルにおける亜硝酸塩(固形分)の使用量は、全組成物に対する配合比を大きくするとセメントの異常凝結が起きる。そのため、亜硝酸塩の使用量は、亜硝酸リチウムの場合、5質量%、亜硝酸カルシウムの場合、1.25質量%が使用量の上限とされていた。しかし、塗料化に伴い、長期の防錆効果を維持するには、亜硝酸塩量を2.5質量%以上とする必要がある。このため、本発明では、スチレン/ブタジエン共重合体の量を5質量%以上とすること、またはアクリル/スチレン共重合体の量を6質量%以上とすることで、亜硝酸塩の増量を図った。また、セメント量を26質量%以上とすることで、塗膜にpH11.5〜12.5のアルカリ雰囲気をもたせ、下地処理の低減及び長期間の防食を可能とした。また併せて、塗料としての抗張力、伸び追従性、及び付着強さを確保するため、コンパウンドに無機系粉材と膨張材を含有させることとした。
【0015】
本発明に係る防食塗料組成物に含まれる前記亜硝酸塩は2.5質量%以上であることが好ましい。
亜硝酸塩が2.5質量%未満であると、防錆効果がエポキシ樹脂塗料並みとなり、塩水噴霧試験3000時間においてクロスカット部に錆が発生する。例えば、本発明における亜硝酸塩量を3質量%とした場合、亜硝酸塩量は従来塗料の約2.5倍となる。
高分子エマルジョンとしてスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンを選択する場合、防食塗料組成物に含まれる前記亜硝酸塩は、7.5質量%以下であることが好ましい。
亜硝酸塩が7.5質量%を超えると、スチレン/ブタジエン共重合体と混和する際の水量が増加し、セメント水和物中の空隙が増加する。これに伴い、空隙に水分が浸入しやすくなり、セメント水和物中の亜硝酸塩の拡散が早くなる。その結果、長期的な防錆効果が期待できなくなる。
高分子エマルジョンとしてアクリル/スチレン共重合体エマルジョンを選択する場合、防食塗料組成物に含まれる前記亜硝酸塩は9.0質量%以下であることが好ましい。
亜硝酸塩が9.0質量%を超えると、アクリル/スチレン共重合体と混和する際の水量が増加し、セメント水和物中の空隙が増加する。これに伴い、空隙に水分が浸入しやすくなり、セメント水和物中の亜硝酸塩の拡散が早くなる。その結果、長期的な防錆効果が期待できなくなる。
【0016】
本発明では、前記防食塗料組成物には、5〜18質量%の前記スチレン/ブタジエン共重合体が含まれていてもよい。スチレン/ブタジエン共重合体が5質量%未満であると、セメント100質量部に対してスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンが18質量部未満となり、塗膜の伸度及び破断強度が向上せず、鋼材の変形に対する追従性が低下する。このため、塗膜亀裂が発生しやすく、亀裂部からの錆が進行する。一方、スチレン/ブタジエン共重合体が18質量%を超えると、塗膜として必要以上の変形能力を有する反面、塗膜付着強度が不足して塗膜剥離が起きる。
あるいは、前記防食塗料組成物には、6〜24質量%の前記アクリル/スチレン共重合体が含まれていてもよい。アクリル/スチレン共重合体が6質量%未満であると、セメント100質量部に対してアクリル/スチレン共重合体エマルジョンが11質量部未満となり、塗膜の伸度及び破断強度が向上せず、鋼材の変形に対する追従性が低下する。このため、塗膜亀裂が発生しやすく、亀裂部からの錆が進行する。一方、アクリル/スチレン共重合体が24質量%を超えると、塗膜として必要以上の変形能力を有する反面、塗膜付着強度が不足して塗膜剥離が起きる。
【0017】
さらに、本発明では、前記防食塗料組成物に含まれる前記セメントが26〜39質量%、前記無機系粉材が20〜28質量%、前記膨張材が0.5〜1.5質量%である。
スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンを選択する場合、前記防食塗料組成物に含まれる前記セメントは、26質量%以上、39質量%以下とすることが好ましい。
セメントが26質量%未満であると、亜硝酸塩とスチレン/ブタジエン共重合体を適正に混和した際に、水セメント比が1.4を上回り、所要の塗膜強度が得られない。具体的には、付着強度不足から塗膜剥離が起きると共に、圧縮強度不足から凝集破壊が発生する。
一方、39質量%を超えると、所要の塗膜強度は期待できるが、セメント過多となり、収縮量が増大し塗膜面にひび割れが発生する。
アクリル/スチレン共重合体エマルジョンを選択する場合、前記防食塗料組成物に含まれる前記セメントは、26質量%以上、38質量%以下とすることが好ましい。
セメントが26質量%未満であると、亜硝酸塩とアクリル/スチレン共重合体を適正に混和した際に、水セメント比が1.0を上回り、所要の塗膜強度が得られない。具体的には、付着強度不足から塗膜剥離が起きると共に、圧縮強度不足から凝集破壊が発生する。一方、セメントが38質量%を超えると、所要の塗膜強度は期待できるが、セメント過多となり、収縮量が増大し塗膜面にひび割れが発生する。
【0018】
無機系粉材が20質量%未満であると、塗膜がセメントリッチになって乾燥中におけるひび割れの発生確率が高くなる。また水量が増加し塗膜強度が確保できなくなる。一方、無機系粉材が28質量%を超えると、骨材粉が多くなり過ぎ、セメント水和物の粘度が低下し、下地面の接着力が低下する。
膨張材は、適正なセメント使用量の時に、その効果が期待できる。膨張材が0.5質量%未満であると、スチレン/ブタジエン共重合体またはアクリル/スチレン共重合体が少ない場合、塗膜が脆くなり、セメントに起因する収縮に対応できない。逆に、スチレン/ブタジエン共重合体またはアクリル/スチレン共重合体が多い場合、必然的に水量も多くなり、塗膜が軟らかくなり過ぎ、膨張材の効果が期待できない。一方、1.5質量%を超えると、コンパウンド中のSO
3(三酸化硫黄)量が増加して使用限界値(対セメント質量比で8%)に近づき、膨張ひび割れの原因となる。
【0019】
高分子エマルジョンとしてスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンを選択する場合、水分は、13〜42質量%であることが好ましい。ここでの水分は、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョン中及び亜硝酸水溶液中の水分である。水分が13質量%未満であると、亜硝酸塩2.5質量%が確保できず、42質量%を超えると、亜硝酸塩が7.5質量%を超え過剰スペックとなり、コストが増大する。
高分子エマルジョンとしてアクリル/スチレン共重合体エマルジョンを選択する場合、水分は、12〜43質量%であることが好ましい。ここでの水分は、アクリル/スチレン共重合体エマルジョン中及び亜硝酸水溶液中の水分である。水分が12質量%未満であると、亜硝酸塩2.5質量%が確保できず、43質量%を超えると、亜硝酸塩が9.0質量%を超え過剰スペックとなり。コストが増大する。
【0020】
また、塗膜面の白斑やピンホールの低減を図るため、前記無機系粉材は、硅砂粉、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、スラグ粉末(鉄鋼スラグ粉末等)、及びクレー粉から選ばれる1種又は2種以上である。夏季施工で薄塗り施工の際は、ドライアウト(下地に水分をとられて水和反応が阻害され、硬化不良や接着不良を起こす現象。)を防止するうえでメチルセルローズ系の増粘剤に更にクレー粉を使用することで保水性を確保させることができ、効果が一層向上する。
【0021】
また、本発明に係る防食塗料組成物では、前記セメントが普通ポルトランドセメントの場合、前記亜硝酸塩は亜硝酸リチウムであることが好ましい。また、前記亜硝酸塩が亜硝酸カルシウムの場合、前記セメントは高炉セメントであることが好ましい。
セメント製造過程で生成されるクリンカーは、エーライト、ビーライト、アルミネート相、及びフェライト相を主な構成要素とする。本発明者等は、クリンカー中のアルミネート相が亜硝酸カルシウムと反応し、セメントの異常凝結を引き起こすことを発見した。そこで、セメントの異常凝結を防止するため、セメントが普通ポルトランドセメトの場合、亜硝酸塩には亜硝酸リチウムを使用することとした。また、亜硝酸塩として亜硝酸カルシウムを使用する場合は、高炉セメントを使用してアルミネート相の減量を図り、セメントの異常凝結を防止した。
なお、高炉セメントと亜硝酸リチウムを組み合わせた場合、凝結時間が延びるため、施工時に塗料が垂れ、塗膜厚を確保することが難しくなる。
【0022】
本発明に係る防食塗料組成物の一態様は、
26〜39質量%のセメントと
20〜28質量%の無機系粉材と
0.5〜1.5質量%の膨張材とからなるコンパウンドと、
5〜18質量%のスチレン/ブタジエン共重合体
と、2.5〜7.5質量%の亜硝酸塩と
、13〜42質量%の水分とからな
り、前記無機系粉材が、硅砂粉、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、スラグ粉末、及びクレー粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
本発明に係る防食塗料組成物の他の態様は、
26〜38質量%のセメントと
20〜28質量%の無機系粉材と
0.5〜1.5質量%の膨張材とからなるコンパウンドと、
6〜24質量%のアクリル/スチレン共重合体
と、2.5〜9.0質量%の亜硝酸塩と
、12〜43質量%の水分とからな
り、前記無機系粉材が、硅砂粉、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、スラグ粉末、及びクレー粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
上記の防食塗料組成物は、前記セメントが高炉セメント、且つ前記亜硝酸塩が亜硝酸カルシウムであってもよい。
上記の防食塗料組成物は、前記セメントが普通ポルトランドセメント、且つ前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムであってもよい。
上記の防食塗料組成物は、前記膨張材が無水石膏であってもよい。
また、上記防食塗料組成物によって形成された、防食塗膜は、セメントと無機系粉材と膨張材とからなるコンパウンドと、スチレン/ブタジエン共重合体またはアクリル/スチレン共重合体から選択される高分子と、亜硝酸塩とを含む防食塗膜である。
本発明の防食塗膜の一態様は、
32.5〜49質量%のセメントと
25〜35質量%の無機系粉材と
0.6〜1.9質量%の膨張材とからなるコンパウンドと、
6〜23質量%のスチレン/ブタジエン共重合体と、
3.1〜9.4質量%の亜硝酸塩と
、7〜12質量%の結晶水とからな
り、前記無機系粉材が、硅砂粉、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、スラグ粉末、及びクレー粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴としている。
本発明の防食塗膜の他の態様は、
32.5〜47.5質量%のセメントと
25〜35質量%の無機系粉材と
0.6〜1.9質量%の膨張材とからなるコンパウンドと、
7.5〜30質量%のアクリル/スチレン共重合体と、
3.1〜11.2質量%の亜硝酸塩と
、7.8〜12質量%の結晶水とからな
り、前記無機系粉材が、硅砂粉、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、スラグ粉末、及びクレー粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴としている。
上記の塗膜の構成において、セメント、膨張材、亜硝酸塩等の含有量は、塗膜の各原料成分の含有量を表しており、結晶水の含有量は、セメントとの水和反応により塗膜にとりこまれた水分量に対応している。
【0023】
上記いずれの態様においても、防食塗料組成物の硬化に伴って蒸発した水分量は、実験結果より、防食塗料組成物の総質量の約20%であった。因って、防食塗膜の成分比は、防食塗料組成物の成分比を0.8で除したものとなる。
【0024】
また、本発明に係る防食塗料組成物の製造方法は、上記防食塗料組成物
の製造方法であって、前記亜硝酸塩の水溶液に前記スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョ
ンを加えた混和液を恒温前処理する第一の工程と、恒温前処理した前記混和液に、前記セメントと前記無機系粉材と前記膨張材と
からなる前記コンパウンドを加える第二の工程とを有することを特徴としている。
本発明の防食塗料組成物の製造方法の他の態様は、上記の防食塗料組成物の製造方法であって、前記亜硝酸塩の水溶液にアクリル/スチレン共重合体エマルジョンを加えた混和液を恒温前処理する第一の工程と、恒温前処理した前記混和液に、前記セメントと前記無機系粉材と前記膨張材とからなる前記コンパウンドを加える第二の工程とを有することを特徴としている。
上記の防食塗料組成物の製造方法では、前記セメントが高炉セメント、且つ前記亜硝酸塩が亜硝酸カルシウムであってもよい。
上記の防食塗料組成物の製造方法では、前記セメントが普通ポルトランドセメント、且つ前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムであってもよい。
上記の防食塗料組成物の製造方法では、前記膨張材が無水石膏であってもよい。
ここで、「恒温前処理」とは、亜硝酸塩水溶液にスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンまたはアクリル/スチレン共重合体エマルジョンを加えた混和液を所定温度を維持した状態で所定時間、低速撹拌することをいう。所定温度としては30〜60℃、例えば40℃前後、また所定時間としては3〜10分、例えば5分間程度が好適である。なお、恒温前処理した混和液を5〜10日、例えば7日間程度静置した後、該混和液にコンパウンドを加えるとなお良い。
【0025】
本発明では、亜硝酸塩水溶液にスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンまたはアクリル/スチレン共重合体エマルジョンを加えた混和液を恒温前処理することにより、混和液の粘度をスチレン/ブタジエン共重合体エマルジョンまたはアクリル/スチレン共重合体エマルジョン単独の粘度の1/40程度に低減することが可能となる。その結果、コンパウンドとの混練効果に関して大幅な改善が期待できる。しかも、長期的に安定した混和液となり、長期保存も可能となる。
【0026】
また、本発明に係る鋼材の防食方法は、鋼材表面の浮き錆を除去した後、上記防食塗料組成物からなる下塗り材を前記鋼材表面に塗布して下塗り層を形成し、5%以上の伸び率を有する塗膜を形成する上塗り材を前記下塗り層の上に塗布して上塗り層を形成することを特徴としている。
そして、本発明に係る塗膜層は、上記防食塗膜からなる下塗り層と、5%以上の伸び率を有する塗膜からなる上塗り層とをから形成されることを特徴としている。
【0027】
ここで、上記伸び率は、日本建築学会編「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説」の「参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」に記載されている「3.引張強さおよび破断時の伸び率試験」に準拠した測定法によって求められる値である。
【0028】
本発明では、上記防食塗料組成物に含まれるセメントによって下塗り層がアルカリ性(pH11.5以上)となるため、鋼材表面に不動態被膜(Fe
2O
3)が形成され、発錆が防止される(アルカリ防食機能)。これにより、鋼材表面の高度な素地調整が不要となり、コストを低減することができる。例えば、鋼材の表面より浮き錆を除去する3種ケレン程度の素地調整でよい。不動態被膜が何らかの外的要因により損傷した場合には、亜硝酸塩が溶出して不動態被膜を再構築する(自己修復機能)。加えて、スチレン/ブタジエン共重合体またはアクリル/スチレン共重合体によって下塗り層に柔軟性が付与され、鋼材面の変形に追従することが可能な下塗り層が形成される。
【0029】
なお、本発明に係る防食塗膜の伸び率は、前述したように、鋼材に曲げ軸力が作用した際の伸びが0.5%以上であることから、塗膜の安定性を考慮した場合、下塗り層の伸びに上塗り塗膜を追従させるためには、上塗り塗膜の伸び率を5%以上とする必要がある。
上塗層は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ハルスハイブリッド樹脂等から選択される一種以上を含むも塗膜から構成されていてもよい。上塗り層は、一層の塗膜でもよく、二層以上の塗膜から構成されていてもよい。
上塗り層の全体層厚は特に制限されないが、例えば60〜130μmであってもよい。例えば、層厚60〜80μmの第一層と、層厚20〜40の第二層から構成されていてもよい。あるいは、層厚40〜70μmの第一層と、層厚30〜40μmの第二層から構成されていてもよい。