(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の金属板と少なくとも1枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
セラミック板と隣接するように配置される全ての金属板の融点の差を140℃以内とするとともに、当該金属板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下としておき、融点の差が140℃以内である複数枚の金属板と、少なくとも1枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、セラミック板とセラミック板に隣接する金属板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
セラミック板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下としておき、1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより隣り合う金属板とセラミック板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載の積層材に比較して、生産性が優れているとともに平面度が向上した積層材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)
2枚の金属板と
1枚のセラミック板とが、
セラミック板が両金属板間に位置するように積層されるとともに、
両金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されており、
一方の金属板の融点と他方の金属板の融点との差が140℃以内であ
り、両金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されて
いる積層材。
【0011】
2)1枚の金属板と
1枚のセラミック板
とが積層されるとと
もに、金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されて
おり、金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されて
いる積層材。
【0012】
3)金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる上記1)または
2)記載の積層材。
【0013】
4)セラミック板が、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる上記1)または
2)記載の積層材。
【0014】
5)上下両面の平面度が100μm以下である上記1)または
2)記載の積層材。
【0015】
6)複数枚の金属板と少なくとも1枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されて
いる積層材を製造する方法であって、
セラミックと隣接するように配置される全ての金属板の融点の差を140℃以内としておき、融点の差が140℃以内である複数枚の金属板と、少なくとも1枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、セラミック板とセラミック板に隣接する金属板とを接合することを
含み、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することによるセラミック板とセラミック板に隣接する金属板との接合を、融点の差が140℃以内である全ての金属板のうち最も高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、同じく最も低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間に加熱することにより行う
ことを特徴とする積層材の製造方法。
【0016】
7)1枚のセラミック板と、融点の差が140℃以内でありかつセラミック板の両面に接合される2枚の金属板と、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる少なくとも1枚の金属板とを用意し、セラミック板の両側に、セラミック板に接合される金属板をそれぞれ隣接するように積層し、両金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板におけるセラミック板と接する側と反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板を積層し、セラミック板の両面に金属板を接合するとともに、少なくともいずれか一方の金属板におけるセラミック板に接合された面と反対側の面に放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板を接合する上記
6)記載の積層材の製造方法。
【0017】
8)1枚の金属板と
1枚のセラミック板と
が積層されるとともに、金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合され
ており、金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている積層材を製造する方法で
あって、
1枚のセラミック板と、セラミック板に接合される1枚の金属板と、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板とを用意し、セラミック板の片側にセラミック板に接合される金属板を
積層し、当該金属板におけるセラミック板を接する側と反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板を
積層すること、
セラミック板と、セラミック板に接合される1枚の金属板と、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
ならびに両電極間の導通を確保するとともに、セラミック板に接合される金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、セラミック板の片面に金属板を接合するとともに、当該金属板におけるセラミック板に接合された面と反対側の面に放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板を接合する
ことを特徴とする積層材の製造方法。
【0018】
9)複数枚の金属板と少なくとも1枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
セラミック板と隣接するように配置される全ての金属板の融点の差を140℃以内とするとともに、当該金属板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下としておき、融点の差が140℃以内である複数枚の金属板と、少なくとも1枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、セラミック板とセラミック板に隣接する金属板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
【0019】
10)複数枚の金属板と少なくとも1枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
セラミック板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下としておくとともに、セラミック板と隣接するように配置される全ての金属板の融点の差を140℃以内としておき、融点の差が140℃以内である複数枚の金属板と、少なくとも1枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、セラミック板とセラミック板に隣接する金属板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
【0020】
11)1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
金属板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下としておき、1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより隣り合う金属板とセラミック板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
【0021】
12)1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されている積層材を製造する方法であって、
セラミック板の表面粗さを、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下としておき、1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とを、金属板とセラミック板とが隣接するように積層すること、
金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置すること、
および両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより隣り合う金属板とセラミック板とを接合することを特徴とする積層材の製造方法。
【0022】
13)金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金およびNi合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる上記
6)、8)、9)、10)、11)または12)記載の積層材の製造方法。
【0023】
14)セラミック板が、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる上記
6)、8)、9)、10)、11)または12)記載の積層材の製造
方法。
【0024】
15)両電極間にパルス電流を通電することによる金属板とセラミック板との接合を、金属板およびセラミック板の積層方向の両側から10〜100MPaで加圧しながら行う上記
6)、8)、9)、10)、11)または12)記載の積層材の製造方法。
【0025】
16)両電極間にパルス電流を通電することによる金属板とセラミック板との接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行う上記
6)、8)、9)、10)、11)または12)記載の積層材の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
上記
1)、3)〜5)の積層材によれば、
2枚の金属板と
1枚のセラミック板とが、
セラミック板が両金属板間に位置するように積層されるとともに、
両金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されているので、製造の際には予めつくられた金属板の寸法変化は少なく、金属板の厚み方向の寸法精度を比較的簡単に向上させることが可能になる。したがって、特許文献1記載の積層材に比較して生産性が優れたものになる。しかも、積層材の上下両面の平面度を、たとえば100μm以下とすることができ、積層材の上下両面の平面度が特許文献1記載の積層材に比べて向上し、研磨などのサイジング工程による仕上げ処理が不要になる。
【0027】
また、セラミック板と隣接する
2枚の金属板の融点の差が140℃以内であるから、1回の放電プラズマ焼結工程によって確実にセラミック板とこれに隣接する金属板とを接合させることができるとともに、放電プラズマ焼結時に、融点が低い金属板の部分的な溶融などによる変形を防止することができる。
【0028】
上記
1)の積層材において、両金属板がAl、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金およびAu合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなると、上記一方の金属板を配線層として利用するとともに、セラミック板を電気絶縁層として利用することが可能になる。したがって、他方の金属板におけるセラミック板に接合された側と反対側の面に応力緩和部材がろう付などにより接合されるとともに、応力緩和部材がAl、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材にろう付されることによってパワーモジュール用ベースが形成され、このパワーモジュール用ベースの配線層にパワーデバイスが実装されてパワーモジュールが構成される。そして、パワーデバイスと放熱材の間には、2枚の金属板、1枚のセラミック板および応力緩和部材が存在するだけであるから、パワーデバイスから放熱材までの熱伝導の経路が短くなり、パワーデバイスから発せられる熱の放熱性能が向上する。また、2枚の金属板とセラミック板との間には熱伝導率の低いろう材を介在させる必要はなく、両金属板とセラミック板との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0029】
上記
2)〜5)の積層材によれば、1枚の金属板と1枚または2枚のセラミック板とが、金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されているので、製造の際には予めつくられた金属板の寸法変化は少なく、金属板の厚み方向の寸法精度を比較的簡単に向上させることが可能になる。したがって、特許文献1記載の積層材に比較して生産性が優れたものになる。しかも、積層材の上下両面の平面度を、たとえば100μm以下とすることができ、積層材の上下両面の平面度が特許文献1記載の積層材に比べて向上し、研磨などのサイジング工程による仕上げ処理が不要になる。
【0030】
上記
2)の積層材において、積層材が1枚の金属板と1枚のセラミック板とよりなり、かつ金属板がAl、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金およびAu合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなると、上記金属板を配線層として利用するとともに、セラミック板を電気絶縁層として利用することが可能になる。したがって、セラミック板における金属板が接合された側と反対側の面に応力緩和部材がろう付などにより接合されるとともに、応力緩和部材がAl、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材にろう付されることによってパワーモジュール用ベースが形成され、このパワーモジュール用ベースの配線層にパワーデバイスが実装されてパワーモジュールが構成される。そして、パワーデバイスと放熱材の間には、1枚の金属板、1枚のセラミック板および応力緩和部材が存在するだけであるから、パワーデバイスから放熱材までの熱伝導の経路が短くなり、パワーデバイスから発せられる熱の放熱性能が向上する。また、金属板とセラミック板との間には熱伝導率の低いろう材を介在させる必要はなく、金属板とセラミック板との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0031】
上記
6)〜8)の積層材の製造方法によ
れば、積層材を簡単に製造することが
できる。
【0032】
上記
9)〜12)の積層材の製造方法によれば、金属板とセラミック板との接触面積が増大し、金属板とセラミック板との間に接合欠陥が発生することを効果的に抑制することができる。
【0033】
上記
15)の積層材の製造方法によれば、金属板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0034】
上記
16)の積層材の製造方法によれば、金属板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0038】
なお、以下の説明において、各図面の上下を上下というものとする。また、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
実施形態1
この実施形態は
図1〜
図3に示すものである。
図1はこの発明の実施形態1の積層材を示し、
図2は
図1の積層材の製造方法を示す。また、
図3は
図2の方法を実施する際の加熱温度の範囲を示す。
【0039】
図1において、積層材(1)は、複数枚の金属板(2)(3)と少なくとも1枚のセラミック板(4)とが、金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。ここでは、積層材(1)は、上下2枚の金属板(2)(3)と1枚のセラミック板(4)とが、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層されるとともに、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。
【0040】
積層材(1)の上下両面、すなわち上側金属板(2)の上面および下側金属板(3)の下面の平面度は、それぞれ100μm以下である。
【0041】
上下両金属板(2)(3)は、それぞれAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる。そして、上下両金属板(2)(3)を構成する材料は、これらの材料の中から、上側金属板(2)の融点と下側金属板(3)の融点との差が140℃以内となるように、適当に選択される。因みに、上下両金属板(2)(3)を構成する材料の融点は、Al:660℃、Cu:1083℃、Ag:961℃、Au:1063℃、Ni:1453℃、Ti:1727℃であり、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金の融点は、通常、Al、Cu、Ag、Au、NiおよびTiの融点よりも低い。上下両金属板(2)(3)は同一の材料から形成されていてもよいし、異なった材料で形成されていてもよい。また、上下両金属板(2)(3)の厚みは3mm以下であることが好ましい。上下両金属板(2)(3)は、公知の適当な方法で形成される。
【0042】
セラミック板(4)は、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の電気絶縁性材料からなる。セラミック板(4)の厚みは1mm以下であることが好ましい。セラミック板(4)は、たとえばAlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を、適当な焼結助剤を用いて放電プラズマ焼結法により焼結することにより形成される。また、セラミック板(4)は、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を用いて熱間静水圧プレス(HIP)することにより形成されていてもよい。
【0043】
ここで、各セラミック材料の融点または分解点は、AlN:2200℃、Al
2O
3:2050℃、Si
3N
4:1900℃、SiC:2000℃、Y
2O
3:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃であり、上下両金属板(2)(3)を構成する材料の融点よりも高くなっている。
【0044】
図示は省略したが、積層材(1)は、以下に述べるようにして、パワーモジュール用ベースとして用いられる。
【0045】
すなわち、上側金属板(2)にエッチングを施すことによって回路を形成し、上側金属板(2)を配線層とする。また、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材と、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなり、かつ応力吸収空間を有する応力緩和部材とを用意する。応力緩和部材としては、たとえば複数の貫通穴が形成されたAlまたはAl合金板からなり、貫通穴が応力吸収空間となっているものが用いられる。
【0046】
そして、放熱材上に、応力緩和部材を介して積層材(1)を置き、下側金属板(2)(3)と応力緩和部材、および応力緩和部材と放熱材とを同時にろう付する。こうして、パワーモジュール用ベースが構成される。
【0047】
なお、放熱材は、たとえば内部に冷却流体通路を有する中空体の上壁からなることがある。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。また、放熱材は、応力緩和部材が接合されたのと反対側の面に放熱フィンが設けられた放熱基板からなることがある。
【0048】
パワーモジュール用ベースの積層材(1)の上側金属板(2)に、パワーデバイスがはんだ付により実装されてパワーモジュールが構成される。当該パワーモジュールにおいて、パワーデバイスから発せられた熱は、上側金属板(2)、セラミック板(4)、下側金属板(3)および応力緩和部材を経て放熱材に伝えられ、放熱材から放熱される。このとき、積層材(1)のセラミック板(4)と放熱材との熱膨張率の相違に起因して放熱材がセラミック板(4)に引っ張られて反ろうとすることによりパワーモジュール用ベースに熱応力が発生した場合にも、応力緩和部材の働きにより熱応力が緩和されるので、セラミック板(4)にクラックが生じたり、放熱材の下側金属板(3)への接合面に反りが生じたりすることが防止される。
【0049】
次に、積層材(1)の製造方法について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0050】
すなわち、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなり、かつ一般的な製法で作製された2枚の金属板(2)(3)と、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4、SiC、Y
2O
3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、かつ一般的な製法で作製された1枚のセラミック板(4)とを用意する。
【0051】
ここで、2枚の金属板(2)(3)の融点の差が140℃以内となるように、両金属板(2)(3)を構成する材料を上記材料の中から適宜選択する。また、金属板(2)(3)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下であることが好ましく、厚みは3mm以下であることが好ましい。セラミック板(4)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下であることが好ましく、厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0052】
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層して配置する。ダイ(10)の上下方向の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(10)の上下両端部は、上下両金属板(2)(3)よりも上下方向外側に突出している。ついで、ダイ(10)内における上側金属板(2)、セラミック板(4)および下側金属板(3)からなる積層体の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0053】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両パンチ(11)(12)により上下両方、すなわち両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、 両金属板(2)(3)を設定温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合する。ここで、両金属板(2)(3)の融点が同じ場合には、両金属板(2)(3)を融点よりも10〜150℃低い温度に加熱する。また、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合、高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の金属よりも10℃低い温度との間の温度に加熱する。すなわち、
図3に示すように、高融点の金属板の融点をT1℃、低融点の金属板の融点をT2℃とした場合、高融点の金属板をセラミック板に放電プラズマ焼結法により接合しうる加熱温度は、(T1−150)〜(T1−10)℃の範囲内であり、低融点の金属板をセラミック板に放電プラズマ焼結法により接合しうる加熱温度は、(T2−150)〜(T2−10)℃の範囲内であるから、TWで示す(T1−150)〜(T2−10)℃の範囲内であれば、低融点の金属板が溶融することなく、両金属板を同時にセラミック板に接合することが可能になる。なお、(T1−150)℃と(T2−10)℃が同じ温度の場合がある。こうして、積層材(1)が製造される。
【0054】
上述した方法での両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合条件は、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の材料や寸法により異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
【0055】
なお、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが接合されるメカニズムは明確ではないが、次の通りであると考えられる。
【0056】
すなわち、金属板(2)(3)とセラミック板(4)との積層体を積層方向の両側から加圧すると、金属板(2)(3)が降伏することにより、金属板(2)(3)を構成する材料がセラミック板(4)表面の微小な凹部に入り込み、金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接触面積が大きくなる。この状態で、放電プラズマ焼結装置の両電極(13)(14)を導通させるとともに両電極(13)(14)間にパルス電流を通電し、高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、同じく最も低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱すると、金属板(2)(3)が軟化して金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接触面積が一層大きくなる。このとき、金属板(2)(3)表面とセラミック板(4)表面との接触部付近において放電プラズマが放射されると、金属板(2)(3)表面の酸化皮膜が破壊、除去されるので、活性な表面が露出する。この金属板(2)(3)の活性面がセラミック板(4)の表面と接触すると、物質拡散により金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが接合されると考えられる。
【0057】
図4〜
図7は積層材(1)を製造する方法の変形例を示す。
【0058】
図4に示す方法の場合、放電プラズマ焼結装置の上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間にはパンチは配置されていない。また、導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(20)の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも若干高くなっており、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両電極(13)(14)により上下両方から加圧した際に、上下両電極(13)(14)が上下両金属板(2)(3)に接するようになっている。したがって、加圧状態において、ダイ(20)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、
図2に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
【0059】
図5に示す方法の場合、放電プラズマ焼結装置の上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間にはパンチは配置されていない。また、導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(25)の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも低く、かつセラミック板(4)の厚みよりも高くなっており、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両電極(13)(14)により上下両方から加圧した際に、ダイ(25)が両電極(13)(14)とは接触せず、上下両金属板(2)(3)に跨った位置に来るようになっている。したがって、加圧状態において、上下両金属板(2)(3)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、
図2に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
【0060】
図6に示す方法の場合、
図4に示す方法に用いられる放電プラズマ焼結装置において、上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間に、それぞれ導電性を有する黒鉛製スペーサ(26)(27)が配置されている。スペーサ(26)(27)の大きさはダイ(20)の上下両端開口よりも大きい。また、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両電極(13)(14)によりスペーサ(26)(27)を介して上下両方から加圧した際に、上下両スペーサ(26)(27)が上下両金属板(2)(3)に接するようになっている。したがって、加圧状態において、スペーサ(26)(27)およびダイ(20)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、
図4に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
【0061】
図7に示す方法の場合、
図5に示す方法に用いられる放電プラズマ焼結装置において、上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間に、それぞれ黒鉛製スペーサ(26)(27)が配置されている。スペーサ(26)(27)の大きさはダイ(25)の上下両端開口よりも大きい。また、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両電極(13)(14)により黒鉛スペーサ(26)(27)を介して上下両方から加圧した際に、ダイ(25)が両電極(13)(14)とは接触せず、上下両金属板(2)(3)に跨った位置に来るようになっている。したがって、加圧状態において、上下両スペーサ(26)(27)、上下両金属板(2)(3)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、
図5に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
実施形態2
この実施形態は
図8および
図9に示すものである。
図8はこの発明の実施形態2の積層材を示し、
図9は
図8の積層材の製造方法を示す。
【0062】
図8において、積層材(30)は、実施形態1の積層材(1)における上下両金属板(2)(3)のうちの少なくともいずれか一方の金属板(2)(3)におけるセラミック板(4)と接合された面とは反対側の面、ここでは下側金属板(3)の下面に、積層材(30)を製造する際の放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板(31)が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている。すなわち、両金属板(2)(3)が同じ融点を有する材料からなる場合には、金属板(31)は両金属板(2)(3)の融点以上の融点を有する材料からなり、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合には、金属板(31)は融点が低い方の金属板の融点よりも高い融点を有する材料からなる。たとえば、両金属板(2)(3)がAlまたはAl合金からなる場合、金属板(31)は、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料で形成される。
【0063】
図示は省略したが、積層材(30)は、以下に述べるようにして、パワーモジュール用ベースとして用いられる。
【0064】
上側金属板(2)にエッチングを施すことによって回路を形成し、上側金属板(2)を配線層とする。また、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材と、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなり、かつ応力吸収空間を有する応力緩和部材とを用意する。応力緩和部材としては、たとえば複数の貫通穴が形成されたAlまたはAl合金板からなり、貫通穴が応力吸収空間となっているものが用いられる。
【0065】
そして、放熱材上に、応力緩和部材を介して積層材(30)を置き、高融点金属板(31)と応力緩和部材、および応力緩和部材と放熱材とを同時にろう付する。こうして、パワーモジュール用ベースが構成される。
【0066】
なお、放熱材は、たとえば内部に冷却流体通路を有する中空体の上壁からなることがある。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。また、放熱材は、応力緩和部材が接合されたのと反対側の面に放熱フィンが設けられた放熱基板からなることがある。
【0067】
パワーモジュール用ベースの積層材(30)の上側金属板(2)に、パワーデバイスがはんだ付により実装されてパワーモジュールが構成される。当該パワーモジュールにおいて、パワーデバイスから発せられた熱は、上側金属板(2)、セラミック板(4)、下側金属板(3)、高融点金属板(31)および応力緩和部材を経て放熱材に伝えられ、放熱材から放熱される。このとき、高融点金属板(31)の熱伝導率が高いので、ヒートスプレッダとして働き、熱が高融点金属板(31)の全体に広がった後に応力緩和部材を経て放熱材に伝えられることになり、放熱性が向上する。また、積層材(30)のセラミック板(4)と放熱材との熱膨張率の相違に起因して放熱材がセラミック板(4)に引っ張られて反ろうとすることによりパワーモジュール用ベースに熱応力が発生した場合にも、応力緩和部材の働きにより熱応力が緩和されるので、セラミック板(4)にクラックが生じたり、放熱材のセラミック板(4)への接合面に反りが生じたりすることが防止される。
【0068】
次に、積層材(30)の製造方法について、
図9を参照して説明する。
【0069】
すなわち、実施形態1の積層材(1)を製造するのに用いられる2枚の金属板(2)(3)およびセラミック板(4)と、たとえばCu、Ag、Au、、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる高融点金属板(31)とを用意する。
【0070】
ここで、高融点金属板(31)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下であることが好ましく、厚みは3mm以下であることが好ましい。
【0071】
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(32)内に、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)を、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するとともに、高融点金属板(31)が下側金属板(3)の下方に位置するように積層して配置する。ダイ(32)の上下方向の高さは、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(32)の上下両端部は、上下両金属板(2)(3)よりも上下方向外側に突出している。ついで、ダイ(32)内における上側金属板(2)(3)、セラミック板(4)下側金属板(3)および高融点金属板(31)からなる積層体の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(32)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0072】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、上下両パンチ(11)(12)により上下両方、すなわち両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、両金属板(2)(3)の融点が同じ場合には、両金属板(2)(3)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱昇温し、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合には、両金属板(2)(3)のうち高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、同じく低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間に加熱昇温し、当該温度に所定時間保持し、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)、および下側金属板(3)と高融点金属板(31)とを接合する。こうして、積層材(30)が製造される。
【0073】
上述した方法での両金属板(2)(3)とセラミック板(4)、および下側金属板(3)と高融点金属板(31)との接合条件は、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の材料や寸法により異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
実施形態3
この実施形態は
図10に示すものである。
図10はこの発明の実施形態3の積層材を示す。
【0074】
図10において、積層材(35)は、実施形態1の積層材(1)における上下両金属板(2)(3)のうちの少なくともいずれか一方の金属板(2)(3)におけるセラミック板(4)と接合された面とは反対側の面、ここでは上側金属板(2)の上面に、積層材(35)を製造する際の放電プラズマ焼結法の加熱温度では溶融しない材料からなる高融点金属板(36)が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている。
【0075】
両金属板(2)(3)はAlまたはAl合金で形成され、高融点金属板(36)はCu、Ag、Au、Ni、Cu合金、Ag合金、Au合金およびNi合金よりなる群から選ばれた1種の材料で形成されている。これらの材料は、高熱伝導性を有するとともに、はんだ付け性が優れている。
【0076】
図示は省略したが、積層材(35)は、以下に述べるようにして、パワーモジュール用ベースとして用いられる。
【0077】
高融点金属板(36)の表面をマスキングしてエッチングを施すことにより上側金属板(2)を部分的に露出させ、上側金属板(2)の露出した部分にさらにエッチングを施すことによって回路を形成することによって、上側金属板(2)を、表面に高融点金属板(36)を備えた配線層とする。また、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材と、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなり、かつ応力吸収空間を有する応力緩和部材とを用意する。応力緩和部材としては、たとえば複数の貫通穴が形成されたAlまたはAl合金板からなり、貫通穴が応力吸収空間となっているものが用いられる。
【0078】
そして、放熱材上に、応力緩和部材を介して積層材(35)を置き、下側金属板(3)と応力緩和部材、および応力緩和部材と放熱材とを同時にろう付する。こうして、パワーモジュール用ベースが構成される。
【0079】
なお、放熱材は、たとえば内部に冷却流体通路を有する中空体の上壁からなることがある。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。また、放熱材は、応力緩和部材が接合されたのと反対側の面に放熱フィンが設けられた放熱基板からなることがある。
【0080】
パワーモジュール用ベースの積層材(35)の上側金属板(2)表面の高融点金属板(36)に、パワーデバイスがはんだ付により実装されてパワーモジュールが構成される。ここで、高融点金属板(36)は、はんだ付け性に優れた材料からなるので、上側金属板(2)の表面に、はんだの濡れ性を向上させるNiメッキなどを施す処理工程が不要になり、コストを低減させることができる。
【0081】
当該パワーモジュールにおいて、パワーデバイスから発せられた熱は、高融点金属板(36)、上側金属板(2)、セラミック板(4)、下側金属板(3)および応力緩和部材を経て放熱材に伝えられ、放熱材から放熱される。
【0082】
なお、実施形態3の積層材(35)の下側金属板(3)の下面に、実施形態2の場合と同様な材料からなる高融点金属板(31)が積層状に接合されていてもよい。
実施形態4
この実施形態は
図11および
図12に示すものである。
図11はこの発明の実施形態4の積層材を示し、
図12は
図11の積層材の製造方法を示す。
【0083】
図11において、積層材(40)は、1枚の金属板(41)と1枚のセラミック板(42)とが、金属板(41)が上に来るように積層されるとともに、金属板(41)とセラミック板(42)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。
【0084】
積層材(40)の上下両面、すなわち金属板(2)の上面およびセラミック板(42)の下面の平面度は、それぞれ100μm以下である。
【0085】
金属板(41)およびセラミック板(42)としては、実施形態1の積層材(1)における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)と同様な材料からなるものが用いられる。この実施形態3の場合、金属板(41)の融点を考慮する必要はない。
【0086】
なお、実施形態4の積層材(40)において、金属板(41)におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されていてもよい。
【0087】
図示は省略したが、積層材(40)は、以下に述べるようにして、パワーモジュール用ベースとして用いられる。
【0088】
金属板(41)にエッチングを施すことによって回路を形成し、金属板(41)を配線層とする。また、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材と、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなり、かつ応力吸収空間を有する応力緩和部材とを用意する。応力緩和部材としては、たとえば複数の貫通穴が形成されたAlまたはAl合金板からなり、貫通穴が応力吸収空間となっているものが用いられる。
【0089】
そして、放熱材上に、応力緩和部材を介して積層材(40)を置き、セラミック板(42)と応力緩和部材、および応力緩和部材と放熱材とを同時にろう付する。こうして、パワーモジュール用ベースが構成される。
【0090】
なお、放熱材は、たとえば内部に冷却流体通路を有する中空体の上壁からなることがある。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。また、放熱材は、応力緩和部材が接合されたのと反対側の面に放熱フィンが設けられた放熱基板からなることがある。
【0091】
パワーモジュール用ベースの積層材(40)の金属板(41)に、パワーデバイスがはんだ付により実装されてパワーモジュールが構成される。当該パワーモジュールにおいて、パワーデバイスから発せられた熱は、金属板(41)、セラミック板(42)および応力緩和部材を経て放熱材に伝えられ、放熱材から放熱される。このとき、積層材(40)のセラミック板(42)と放熱材との熱膨張率の相違に起因して放熱材がセラミック板(42)に引っ張られて反ろうとすることによりパワーモジュール用ベースに熱応力が発生した場合にも、応力緩和部材の働きにより熱応力が緩和されるので、セラミック板(42)にクラックが生じたり、放熱材のセラミック板(42)への接合面に反りが生じたりすることが防止される。
【0092】
次に、積層材(40)の製造方法について、
図12を参照して説明する。
【0093】
すなわち、実施形態1の積層材(1)を製造するのに用いられる上下のいずれかの金属板(2)(3)およびセラミック板(4)と同様の材料からなる1枚の金属板(41)および1枚のセラミック板(42)を用意する。
【0094】
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(45)内に、金属板(41)およびセラミック板(42)を、金属板(41)が上側に位置するように積層して配置する。ダイ(45)の上下方向の高さは、セラミック板(42)の厚みよりも高くかつ金属板(41)およびセラミック板(42)の厚みの合計よりも低くなっており、金属板(41)の一部がダイ(45)から上方に突出している。ついで、金属板(41)およびセラミック板(42)からなる積層体の上下にそれぞれ電極(13)(14)を配置するとともに、両電極(13)(14)を金属板(41)およびセラミック板(42)に接触させる。この状態では、金属板(41)およびダイ(45)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0095】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、金属板(41)およびセラミック板(42)を、上下両電極(13)(14)により上下両方から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、金属板(41)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、金属板(41)とセラミック板(42)とを接合する。こうして、積層材(40)が製造される。
【0096】
上述した方法での金属板(41)とセラミック板(42)との接合条件は、金属板(41)およびセラミック板(42)の材料や寸法により異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
【0097】
なお、上述した実施形態2〜4において、金属板とセラミック板とが接合されるメカニズムは、実施形態1の場合と同様であると考えられる。
【0098】
以下、この発明による積層材の具体的実施例について、比較例とともに説明する。なお、以下の実施例は実施形態1の積層材である。
実施例1〜7および比較例1〜2
この実施例1〜7および比較例1〜2は、金属板とセラミック板とを放電プラズマ焼結法により接合する際の加熱温度を調べるために行ったものである。
【0099】
純度99.9wt%のAlからなりかつ縦:34mm、横:28mm、厚み:1.0mmの2枚のAl製金属板(2)(3)と、縦:34mm、横:28mm、厚み:0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)(5wt%程度のY2O3を含む)とを用意し、金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。金属板(2)(3)の両面の表面粗さはRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さはRa0.8μmである。
【0100】
ついで、
図2に示すような焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層して配置した。そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を接触させた。
【0101】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、上下両パンチ(11)(12)を介して両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を上下両方から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2000Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、5分間かけて種々の温度まで加熱するとともに、当該温度で5分間保持し、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。その後、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより3層構造の積層材(1)を製造した。
【0102】
製造された積層材(1)を観察したところ、実施例1〜7においては、両金属板(2)(3)は溶融することなく、全面的にセラミック板(4)に接合されていた。これに対し、比較例1においては、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合面積は小さく、簡単に両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とは簡単に剥離した。
【0103】
加熱温度および接合状態を表1に示す。
【0105】
実施例8
この実施例は、実施形態1の積層材(1)を製造したものである。
【0106】
純度99.99wt%のAlからなりかつ縦:34mm、横:28mm、厚み:0.6mmの2枚のAl製金属板(2)(3)と、縦:34mm、横:28mm、厚み:0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)とを用意し、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。各金属板(2)(3)の両面の表面粗さはRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さはRa0.8μmである。
【0107】
ついで、
図2に示すような焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層して配置した。そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を接触させた。
【0108】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、上下両パンチ(11)(12)を介して両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を上下両方から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大1500Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、15分間かけて575℃まで加熱するとともに、575℃で5分間保持し、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。接合のための加熱温度である575℃は、金属板(2)(3)を形成する純度99.99wt%のAlの融点660℃よりも10〜150℃低い温度である。その後、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより3層構造の積層材(1)を製造した。
【0109】
製造された積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、44μmであった。また、製造された積層材(1)における両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合状態を確認するために、断面観察を実施したところ、接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
実施例9
両電極(13)(14)間でのパルス電流の通電を窒素からなる不活性ガス雰囲気中で行ったことを除いては、実施例1と同様にして3層構造の積層材(1)を製造した。
【0110】
製造された積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、53μmであった。また、製造された積層材(1)における両金属板とセラミック板との接合状態を確認するために、断面観察を実施したところ、接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
比較例3
図13に示すように、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイを用いないことを除いては、上記実施例1と同様にして2枚の金属板(2)(3)および1枚のセラミック板(4)を配置するとともに、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。
【0111】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、上下両パンチ(11)(12)により両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を上下両方から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に電圧を印可した。
【0112】
しかしながら、両電極(13)(14)間に電流が流れないために温度上昇がなく、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合することはできなかった。
比較例4
縦:34mm、横:28mm、厚み:0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(50)を用意し、セラミック板(50)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。セラミック板の両面の表面粗さはRa0.8μmである。
【0113】
また、純度99wt%のAlからなる平均粒径100μmのAl粉末を用意した。
【0114】
ついで、
図14に示すように、セラミック板(50)を黒鉛製の焼結用ダイ(10)内に配置するとともに、ダイ(10)内におけるセラミック板(50)の上下両側部分にAl粉末(51)を充填した。そして、ダイ(10)内におけるセラミック板(50)およびAl粉末(51)の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。
【0115】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、上下両パンチ(11)(12)によりセラミック板(50)およびAl粉末(51)を上下両方から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2000Aのパルス電流を通電することによりセラミック板(50)およびAl粉末(51)を15分間で550℃まで加熱するとともに、550℃で5分間保持した。これにより、Al粉末(51)を放電プラズマ焼結して焼結体とするとともに、当該焼結体をセラミック板(50)の両面に接合した。その後、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより3層構造の積層材を製造した。
【0116】
製造された積層材の両面の平面度を測定したところ、123μmであり、研磨などのサイジング工程を施す必要があるレベルであった。また、製造された積層材のかさ密度はバルク体密度の99.0%であり、焼結体の気孔率が高く、内部に欠陥があって品質上問題がある。
実施例10
この実施例は、実施形態1の積層材(1)を製造したものである。
【0117】
純度99.9wt%のAlからなりかつ縦:34mm、横:28mm、厚み:0.6mmである1枚のAl製金属板(2)と、Si10wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなりかつ縦:34mm、横:28mm、厚み:1.0mmであるAl−Si合金製金属板(3)と、縦:34mm、横:28mm、厚み:0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)(5wt%程度のY2O3を含む)とを用意し、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。各金属板(2)(3)の両面の表面粗さはRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さはRa0.8μmである。
【0118】
ついで、
図2に示すような焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層して配置した。そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の上下に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を接触させた。
【0119】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、上下両パンチ(11)(12)を介して両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を上下両方から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2000Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、10分間かけて540℃まで加熱するとともに、540℃で3分間保持し、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。接合のための加熱温度である540℃は、金属板(2)を形成する純度99.9wt%のAlの融点660℃よりも150℃低い510℃と、金属板(3)を形成するAl−Si合金の融点577℃よりも10℃低い567℃との間の温度である。その後、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより3層構造の積層材(1)を製造した。
【0120】
得られた積層材(1)の接合界面の状態を、断面観察により確認した。
【0121】
その結果を
図15〜
図17に示す。
図15〜
図17から明かなように、Al製金属板とセラミック板、およびAl−Si合金製金属板とセラミック板とは、それぞれ確実に接合されている。