【実施例】
【0016】
本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施例の給湯暖房システム10を示している。
図1に示すように、給湯暖房システム10は、ヒートポンプユニット20と、タンクユニット28と、給湯暖房ユニット80と、暖房端末90を備えている。
【0017】
本実施例の給湯暖房システム10は、例えば北海道地方のように、融雪用電力(単に融雪電力ともいう)を利用可能な地域での使用を前提とするものである。周知のように、融雪用電力は、暖房のために使用することはできるが、給湯のために使用することは禁止されている。そのことから、本実施例の給湯暖房システム10では、暖房のみに供されるヒートポンプユニット20及びタンクユニット28については融雪用電力を利用し、給湯にも供される給湯暖房システム10については一般電灯用電力(単に一般電灯電力ともいう)を利用するように構成されている。
【0018】
ヒートポンプユニット20は、大気から吸熱して、タンクユニット28から送られる熱媒を加熱するヒートポンプである。ヒートポンプユニット20は、図示省略するが、圧縮機、放熱器、膨張弁、蒸発器と、それらを順に接続する冷媒循環経路を備えている。その他、蒸発器に送風するファンや、それを駆動するモータ等も設けられている。冷媒循環経路内には、冷媒である二酸化炭素が充填されている。ヒートポンプユニット20の詳細については、公知のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。また、ヒートポンプユニット20には、ヒートポンプユニット20とタンクユニット28との間で熱媒を循環させる循環ポンプ22が設けられている。
【0019】
タンクユニット28は、熱媒を貯めるタンク30を備えている。本実施例の熱媒は、不凍液である。本実施例のタンク30は、一例であるが、30リットルの容量を有している。タンク30には、高さ方向に沿って複数のタンクサーミスタ42が設けられている。複数のタンクサーミスタ42は、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、複数のタンクサーミスタ42によって検出された温度から、タンク30に貯められた熱量を把握することができる。
【0020】
タンク30は、蓄熱用往路34と蓄熱用復路32を介して、ヒートポンプユニット20に接続されている。蓄熱用往路34は、タンク30からヒートポンプユニット20へ熱媒を送る管路であり、タンク30の底部に接続されている。蓄熱用復路32は、ヒートポンプユニット20からタンク30へ熱媒を戻す管路であり、タンク30の頂部に接続されている。蓄熱用往路34と蓄熱用復路32は、ヒートポンプユニット20とタンク30との間で熱媒を循環させる循環経路を構成している。当該循環経路には、前述した循環ポンプ22が設けられている。本実施例の循環ポンプ22は、ヒートポンプユニット20に内蔵されているが、循環ポンプ22の位置は特に限定されない。
【0021】
蓄熱用往路34には、手動弁24と、蓄熱往路サーミスタ44が設けられている。同様に、蓄熱用復路32にも、手動弁24と、蓄熱復路サーミスタ46が設けられている。蓄熱往路サーミスタ44と蓄熱復路サーミスタ46は、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、蓄熱往路サーミスタ44による検出温度から、ヒートポンプユニット20による加熱前の熱媒の温度を把握し、蓄熱復路サーミスタ46による検出温度から、ヒートポンプユニット20による加熱後の熱媒の温度を把握することができる。
【0022】
暖房端末90は、タンク30からの熱媒を放熱させて暖房を行う。暖房端末90は、例えば、パネルヒータ、パネルラジエータ、床暖房、ファンコンベクタ、温水式ルームエアコンである。暖房端末90は、暖房用往路56と暖房用復路60を介して、タンク30に接続されている。暖房用往路56は、タンク30から暖房端末90へ熱媒を送る管路であり、タンク30の頂部に接続されている。暖房用復路60は、暖房端末90からタンク30へ熱媒を戻す管路であり、タンク30の底部に接続されている。暖房用往路56と暖房用復路60は、タンク30と暖房端末90との間で熱媒を循環させる循環経路を構成している。
【0023】
暖房用復路60には、手動弁52を有する排水管50が接続されている。また、暖房用復路60には、膨張タンク70が設けられている。本実施例では、熱媒の循環する回路が密閉回路とされているので、熱媒の熱膨張を吸収するために、膨張タンク70が用意されている。なお、膨張タンク70を接続する位置は、暖房用復路60に限定されず、例えば暖房用往路56や他の経路に接続してもよい。
【0024】
暖房用往路56は、給湯暖房ユニット80を経由して、暖房端末90に接続されている。給湯暖房ユニット80は、燃焼式の熱源機であり、可燃性ガスを燃焼させる二つのバーナー84、86を有する。一方のバーナー84は、給湯用のものであり、給湯管路82を流れる上水を加熱する。他方のバーナー86は、暖房用のものであり、必要に応じて、暖房用往路56を流れる熱媒を加熱する。また、給湯暖房ユニット80は、コントローラ88を有している。また、給湯暖房ユニット80には、暖房端末90とタンクユニット28との間で熱媒を循環させる循環ポンプ87が設けられている。なお、循環ポンプ87を設ける位置は、給湯暖房ユニット80に限られず、特に限定されない。この構成によると、暖房用往路56を通って暖房端末90に送られる熱媒の温度が低すぎるときは、バーナー86で暖房用往路56を流れる熱媒を加熱することにより、暖房端末90に送られる熱媒の温度を上昇させることができる。
【0025】
暖房用往路56と暖房用復路60の間は、バイパス経路64を介して接続されている。それにより、暖房用復路60を流れる熱媒の一部又は全部を、タンク30を経由することなく、暖房用往路56へ送ることができるように構成されている。また、暖房用復路60とバイパス経路64との分岐位置には混合弁66が設けられており、暖房用復路60からバイパス経路64を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量と、暖房用復路60からタンク30を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量の比率を調整できるようになっている。混合弁66は、コントローラ54に接続されており、その動作はコントローラ54によって制御される。この構成によると、暖房用往路56を通って暖房端末90に送られる熱媒の温度が高すぎるときは、暖房用復路60を流れる放熱後の熱媒を、暖房用往路56を流れる熱媒に合流させることによって、暖房端末90に送られる熱媒の温度を低下させることができる。
【0026】
暖房用往路56には、第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58が設けられている。第1暖房往路サーミスタ48は、バイパス経路64が暖房用往路56に合流する合流点よりも上流側に設けられており、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度を検出する。第2暖房往路サーミスタ58は、バイパス経路64が暖房用往路56に合流する合流点よりも下流側に設けられており、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒とバイパス経路64から暖房用往路56に送られる熱媒が混合した後の温度を検出する。暖房用復路60には、暖房復路サーミスタ62が設けられている。暖房復路サーミスタ62は、暖房用復路を流れる熱媒の温度を検出する。第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58および暖房復路サーミスタ62は、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58および暖房復路サーミスタ62の検出温度に基づいて、混合弁66の動作を制御することで、暖房端末90に送られる熱媒の温度を所望の温度に調整することができる。
【0027】
なお、混合弁66は、バイパス経路64が暖房用復路60から分岐する分岐点に設置してもよいし、バイパス経路64が暖房用往路56に合流する合流点に設置してもよい。本実施例のように、混合弁66をバイパス経路64が暖房用復路60から分岐する分岐点に設けた場合、混合弁66には低温の熱媒のみが流れるため、混合弁66として耐熱性の低いものを用いることができる。
【0028】
図2は、ヒートポンプユニット20を運転しながら暖房を行うときの熱媒の流れを示している。
図2に示すように、暖房端末90には、タンク30の上部から暖房用往路56を通じて高温の熱媒が送られる。暖房端末90に送られた高温の熱媒は、暖房端末90において放熱した後に、暖房用復路60を通じてタンク30の下部へ戻される。一方、ヒートポンプユニット20には、タンク30の下部から蓄熱用往路34を通じて低温の熱媒が送られる。ヒートポンプユニット20に送られた低温の熱媒は、ヒートポンプユニット20において加熱された後に、蓄熱用復路32を通じてタンク30の上部へ戻される。
【0029】
図3は、暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が高い場合の熱媒の流れを示している。この場合には、混合弁66を制御して、暖房用復路60からバイパス経路64を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量を増加させ、暖房用復路60からタンク30を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量を減少させる。これにより、暖房用往路56から暖房端末90へ送られる熱媒の温度を、暖房端末90の要求する熱媒の温度に調整することができる。暖房端末90の要求する熱媒の温度が低下した場合でも、ヒートポンプユニット20の加熱能力を変化させることなく、暖房端末90における要求の変化に速やかに対応することができる。
【0030】
図4は、暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が低い場合の熱媒の流れを示している。この場合には、バーナー86で暖房用往路56を流れる熱媒を加熱する。バーナー86における加熱量を調整することで、暖房用往路56から暖房端末90へ送られる熱媒の温度を、暖房端末90の要求する熱媒の温度に速やかに調整することができる。暖房端末90の要求する熱媒の温度が上昇した場合でも、ヒートポンプユニット20の加熱能力を変化させることなく、暖房端末90における要求の変化に速やかに対応することができる。
【0031】
蓄熱用往路34には、凍防ポンプ38と逆止弁40が設けられている。凍防ポンプ38と逆止弁40は、互いに並列に接続されている。凍防ポンプ38は、ヒートポンプユニット20の停止時に、熱媒を循環させるためのポンプであり、それによって熱媒の凍結を防止する。周知のように、融雪電力の利用者は、電力需要がピークを迎える所定の時間帯において、融雪電力の使用を中止する通電遮断時間を定めなければならない。ヒートポンプユニット20は、融雪電力を利用することから、通電遮断時間の間、運転をすることができない。その間に、屋外に配置されたヒートポンプユニット20では、熱媒が凍結するおそれがある。そこで、通電遮断時間の間は、凍防ポンプ38を運転することによって、熱媒の凍結を防止する。凍防ポンプ38は、電力線89によって給湯暖房ユニット80のコントローラ88に接続されている。それにより、一般電灯用電力の供給を受けて、融雪電力の通電遮断時間でも作動することができる。
【0032】
凍防ポンプ38は、凍結を防止することができる程度に熱媒を循環させられればよく、比較的に小型のポンプを採用することができる。ただし、小型の凍防ポンプ38を熱媒の循環経路へ設けると、ヒートポンプユニット20の運転時において、凍防ポンプ38が大きな抵抗となってしまう。そこで、本実施例では、凍防ポンプ38に対して逆止弁40を並列に設けている。
【0033】
上記した構成によると、ヒートポンプユニット20の運転時には、
図2に示すように、熱媒が逆止弁40を通って循環し、凍防ポンプ38がバイパスされることから、熱媒が凍防ポンプ38による抵抗を受けることがない。一方、凍防ポンプ38の運転時には、
図4に示すように、凍防ポンプ38の入側と出側が逆止弁40によって遮断されるので、閉回路36において短絡することなく、タンク30とヒートポンプユニット20との間で熱媒を確実に循環させることができる。なお、逆止弁40に代えて、凍防ポンプ38の運転時に閉弁し、ヒートポンプユニット20の運転時に開弁するような電磁弁を設けることもできる。
【0034】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0035】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。