(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759909
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】筺体構造
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20150716BHJP
F21V 31/03 20060101ALI20150716BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20150716BHJP
G10K 9/122 20060101ALI20150716BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
F21S8/10 542
F21V31/03 400
H04R1/00 311
G10K9/12 101K
H05K5/02 L
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-11263(P2012-11263)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-149573(P2013-149573A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】アンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】宮田 晋
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 誠
【審査官】
太田 良隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−319548(JP,A)
【文献】
特開2001−332871(JP,A)
【文献】
特開2007−141629(JP,A)
【文献】
特開2011−035239(JP,A)
【文献】
特開2005−158909(JP,A)
【文献】
特開2005−129861(JP,A)
【文献】
特開2007−141959(JP,A)
【文献】
特開2011−087175(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0177089(US,A1)
【文献】
特開2012−236520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S8/10−8/12
F21V31/03
B60Q5/00
H05K5/02
B60R16/02
H04R1/00
G10K9/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間(13)と第2空間(14)とに仕切る隔壁(6)を有するベース(2)と、前記ベース(2)の前記第1空間(13)側を区画するケース(4)と、前記ベース(2)の第2空間(14)側を区画するカバー(3)とを備えた筺体構造において、
防水性と通気性を有する素材よりなり前記隔壁(6)に設けた通気孔(7)を覆う防水シート(8)の前記第2空間(14)側に、前記防水シート(8)の表面に接触しない程度の近接状態で、小間隙で対向する板片の対からなる導水体(9)を設けることを特徴とする筺体構造。
【請求項2】
前記導水体(9)は、前記ベース(2)の外周面に設けた排水口(12)まで延設されることを特徴とする請求項1に記載の筺体構造。
【請求項3】
前記導水体(9)は、前記カバー(3)の前記第2空間(14)側の面に立設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の筺体構造。
【請求項4】
前記導水体(9)は、前記隔壁(6)に当接する第2突起(11)を有することを特徴とする請求項3に記載の筺体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される各種機器の筺体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室外に配置される車載機器の筺体は、その第1空間と第2空間とを連通させる通気孔を有し、通気孔は防水性と通気性を有する素材からなる防水シートで覆われている。この通気孔が被水したときには、通気孔は表面張力による水膜で塞がれ、通気孔として機能しなくなる。
【0003】
この問題を解決するものとして、特許文献1には、通気孔に至る通気経路を迷路構造にして、通気孔が被水しないようにする技術が開示されている。
【0004】
また、通気孔の周囲に複数個の板状の壁部を設け、隣接する壁部との間にスリットを形成して、通気孔に溜まった水をスリットの毛細管現象により吸い出して排出するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−323351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る技術によれば、迷路構造を形成する部位の容積が大きくなって機器が大型化し、機器の取り付け姿勢の制約が大きくなるとともに、通気孔まで水が浸入した場合の排水が困難になるという問題がある。
【0007】
また、通気孔の周囲に壁部とスリットを設ける技術によれば、通気孔が下向きとなる筺体の水平搭載状態において、通気孔の防水シートに水膜が張るのを防止することができず、音質不良や発音体の破損を誘発するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、防水シートで覆われた通気孔に水膜が張ることを防止した車両用警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、第1空間(13)と第2空間(14)とに仕切る隔壁(6)を有するベース(2)と、ベース(2)の第1空間(13)側を区画するケース(4)と、ベース(2)の第2空間(14)側を区画するカバー(3)とを備えた筺体構造において、防水性と通気性を有する素材よりなり隔壁(6)に設けた通気孔(7)を覆う防水シート(8)の第2空間(14)側に、防水シート(8)の表面に接触しない程度の近接状態で
、小間隙で対向する板片の対からなる導水体(9)を設けることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、通気孔(7)を覆う防水シート(8)の第2空間(14)側に、防水シート(8)の表面に接触しない程度の近接状態で
、小間隙で対向する板片の対からなる導水体(9)を設けるので、防水シート(8)の水膜が除去され、通気孔(7)に水膜が張ることを防止できるという優れた効果を奏する。
【0013】
請求項
2に記載の発明は、導水体(9)が、ベース(2)の外周面に設けた排水口(12)まで延設されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、導水体(9)は吸水した防水シート(8)の水膜の水を排水口(12)まで導水するので、防水シート(8)の水を効果的に排出することができる。
【0015】
請求項
3に記載の発明は、導水体(9)が、カバー(3)の第2空間(14)側の面に立設されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、筺体の構造を簡易にすることができる。
【0017】
請求項
4に記載の発明は、導水体(9)が、隔壁(6)に当接する第2突起(11)を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、例えば、カバー(3)が外力を受けて変形したとしても第2突起(11)がベース(2)の隔壁(6)に当接し、防水シート(8)と導水体(9)とが接触することはないので、防水シート(8)の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を実施する部品筺体の正面図(a)及び下面図(b)である。
【
図4】
図1(a)においてカバー3を取外した場合の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
発音体5を搭載する筺体1は、
図1及び
図2に示すように、内側の中間部に隔壁6を有する樹脂製のベース2と、ベース2の一方の開口端を気密に封じる樹脂製のケース4と、ベース2の他方の開口端を防滴に封じる樹脂製のカバー3とによって構成される。
【0022】
隔壁6の偏芯した位置には開口部15が設けられている。この開口部15を塞ぐように発音体5が気密に設けられている。発音体5は、スピーカや振動板等である。
【0023】
ベース2の一方の開口端にはケース4が溶着、接着されているので、ベース2、隔壁6、発音体5及びケース4で囲繞された空間は気密が保持される第1空間13となる。第1空間13の温度が変化したときには、発音体5に加わる圧力が変動して発音体5の音圧レベルに影響を与えるので、隔壁6の通気孔7に防水シート8を溶着して設けることにより空間の圧力を調整している。
【0024】
図3及び
図4に示すように、通気孔7は、第2空間(14)側にラッパ状に開いて隔壁6に穿孔されている。通気孔7は、一個で足り、その大きさも比較的小さなもので済む。
【0025】
防水シート8は、防水性と通気性を有する薄膜状の素材であり、例えば、ゴアテックス(登録商標)が好ましく採用される。
【0026】
カバー3は、発音体5が発する音を外部へ放出するための図示しない貫通孔等を有するとともに、その貫通孔等から雨水等が容易に浸入しないようにするため、種々のリブやスリットを備える。そして、カバー3、ベース2及び隔壁6で囲繞された空間は、外気と連通する第2空間14を形成する。第2空間14に雨水等が浸入したとき、通気孔7も被水することになる。
【0027】
図5に示すように、カバー3は、その裏面であって第2空間(14)を形成する面に立設された導水体9を有する。
【0028】
導水体9は、1mm程度の小間隙をもって対向する板片の対からなる。そして、この板片は、その短冊状の長手方向でカバー3に接する端面の背端面の両端部に第1突起10と第2突起11を突設させた形状を有する。第1突起10は、カバー3を
図4に示すベース2へ取り付けるとき、
図3に示す状態となるように頭頂面のカバー3からの高さが設定されている。すなわち、第1突起10の頭頂面は、防水シート8の第2空間(14)側の表面に接触しない程度の近接状態に位置決めされる。第1突起10の頭頂面と防水シート8の表面との間隙は、零であることが吸水効果を高める点で好ましいが、その場合には防水シート8を損傷させる虞があるので、実施例では0.3〜0.5mmとしている。
【0029】
カバー3をベース2に取り付けるとき、第2突起11の頭頂面は隔壁6に当接するように、第2突起11の頭頂面のカバー3からの高さが設定されている。この高さ寸法は、第1突起10の頭頂面の高さ寸法より小さい。このように構成することにより、カバー3をベース2に取り付けるときに、第1突起10の頭頂面で防水シート8が損傷されるのを防ぐことができる。
【0030】
導水体9の第1突起10が設けられた一方の端部は、第1突起10から直線的にカバー3の外周部へ短く延長されている。また、導水体9の第2突起11が設けられた他方の端部方向へ、導水体9は第1突起10部分から屈曲してカバー3の外周部へ比較的長く延長されている。そして、導水体9の延長された両端部は、
図1(b)に示す排水口12の近傍に位置するようにカバー3の裏面に設けられる。そのため、通気孔7に設けられた防水シート8の第2空間14側の表面に表面張力で形成された水膜の水は、導水体9の小間隙をもって対向する板片の対に基づく毛細管現象で吸水され、さらに導水されて排水口12に至るようにして排出される。
【0031】
排水口12は、ベース2のカバー3に隣接する外周面に刻設されており、発音体5から発する音の出口ともなるものである。
【0032】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態の筺体構造によれば、防水性と通気性を有する素材からなり隔壁6に設けた通気孔7を覆う防水シート8の第2空間14側に、防水シート8の表面に接触しない程度の近接状態で
、小間隙で対向する板片の対からなる導水体9を設けるので、防水シート8の水膜が除去され、第1空間13の圧力を良好に保つので、発音体5の音質不良や破損を回避できるという優れた効果を奏する。
【0033】
なお、本発明は、当業者の知識に基づいて様々な変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものを含む。また、前記変更等を加えた実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りいずれも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0034】
例えば、上述の実施形態は、筺体に発音体を収納する例で説明したものであるが、本発明は、防水シートにて通気孔を覆う必要のある各種機器であって、被水の虞のあるものに適用することができる。具体的には、結露防止等のための通気孔を有する車載用の電磁継電器、ECU、ヘッドライト等の機器に適用することができる。
【0035】
また、導水体は、毛細管現象を用いたものとして説明したが、ベルヌーイの定理を応用したものやポンプを用いたもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 筺体
2 ベース
3 カバー
4 ケース
5 発音体
6 隔壁
7 通気孔
8 防水シート
9 導水体
10 第1突起
11 第2突起
12 排水口
13 第1空間
14 第2空間