特許第5759968号(P5759968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧

特許5759968オリビン型シリケート化合物の製造法、及び二次電池正極活物質の製造法
<>
  • 特許5759968-オリビン型シリケート化合物の製造法、及び二次電池正極活物質の製造法 図000004
  • 特許5759968-オリビン型シリケート化合物の製造法、及び二次電池正極活物質の製造法 図000005
  • 特許5759968-オリビン型シリケート化合物の製造法、及び二次電池正極活物質の製造法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759968
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】オリビン型シリケート化合物の製造法、及び二次電池正極活物質の製造法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/32 20060101AFI20150716BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20150716BHJP
【FI】
   C01B33/32
   H01M4/58
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-274531(P2012-274531)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-120324(P2014-120324A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年1月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】西城 晶子
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 務
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102088074(CN,A)
【文献】 特開2007−335325(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102142556(CN,A)
【文献】 特開2014−080318(JP,A)
【文献】 特開2012−248283(JP,A)
【文献】 L. JIAN-YUN et al.,Effect of Al3+ Doping on Structure and Electrochemical Performance of Li2FeSiO4,Chinese Journal of Inorganic Chemistry,2011年 8月,Vol. 27, No. 8, Pages 1497-1502.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
H01M4/00−4/62
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム化合物と、ケイ酸化合物と、鉄化合物と、マンガン化合物と、カルシウム化合物とを含有する塩基性水分散液を130〜180℃の温度で水熱反応させることを特徴とする、次式(1):
Li2-abmSiO4・・・・・(1)
(式(1)中、Xは+2酸化状態にあるCa2+を示し、MはFe及びMnを示し、0<a≦0.5、0<b≦0.25、かつ2b=a、0.5≦m≦1である)
で表されるオリビン型シリケート化合物の製造法。
【請求項2】
ケイ酸化合物が、Na4SiO4である請求項1に記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
【請求項3】
塩基性水分散液のpHが、12.0〜13.5である請求項1又は2記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
【請求項4】
請求項1〜3の製造法により得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とする二次電池正極活物質の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオリビン型シリケート化合物、二次電池正極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、非水電解質電池の1種であり、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。リチウムイオン電池は、正極材料としてリチウム金属酸化物を用い、負極材料としてグラファイトなどの炭素材を用いるものが主流となっている。
【0003】
この正極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(
LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ケイ酸鉄リチウム(Li2FeS
iO4)等が知られている。このうち、LiFePO4やLi2FeSiO4等は、オリビン構造を有し、高容量のリチウムイオン電池用正極材料として有用である。
【0004】
二次電池の放電容量は、正極材料の種類によって大きく変化するので、種々のオリビン型化合物が報告され(特許文献1及び2)、さらに前記オリビン型ケイ酸鉄リチウムにMnなどをドープすることにより放電容量の向上が検討されている(非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−266882号公報
【特許文献2】特開2008−186807号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Electrochemical and Solid−State Letters 19,12,A542−A544(2006)
【非特許文献2】GS Yuasa Technical Report 2009年6月、第6巻、第1号、p21−26
【非特許文献3】R.Dominiko et al,Journal of Power Sources 184(2008),p462−468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらのオリビン型シリケート化合物を正極活物質として用いた二次電池を繰り返し充放電した場合、徐々にその放電容量が低下する問題のあることが判明した。
従って、本発明の課題は、繰り返し充放電しても放電容量の低下しない二次電池正極活物質及びこの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、オリビン型シリケート化合物の元素組成について種々検討した結果、リチウムシリケートのリチウムの一部を他の特定の元素に置換することにより、結晶の骨格が安定化する結果、これを用いた二次電池を繰り返し充放電を行っても放電容量が低下しない正極活物質が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]リチウムの一部を金属元素X、Y又はZで置換したオリビン型リチウムシリケート化合物であって、次式(1):
Li2-abcdmSiO4・・・・・(1)
(式(1)中、Xは+2酸化状態にある金属であって、Mg2+、V2+、Co2+、Zr2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+から選ばれる金属を示し、Yは+3酸化状態にある金属であって、Al3+、V3+及びZr3+から選ばれる金属を示し、Zは+4酸化状態にある金属であって、V4+及びZr4+から選ばれる金属を示し、MはFe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、V及びZrから選ばれる1種又は2種以上の金属を示し、0<a≦0.5、0≦b≦0.25、0≦c<0.167、0≦d≦0.125、かつ2b+3c+4d=a、0.5≦m≦1である)
で表されるオリビン型シリケート化合物。
[2]Mが、Fe及びMnから選ばれる1種以上の金属とCo、Al、V、Zn及びZrから選ばれる1種以上の金属である[1]記載のオリビン型シリケート化合物。
[3]X、Y又はZが、Co2+、Ca2+、V3+及びZr4+から選ばれる金属である[1]又は[2]記載のオリビン型シリケート化合物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のオリビン型シリケート化合物を含有する二次電池正極活物質。
[5][4]記載の二次電池正極活物質を有する二次電池。
[6]リチウム化合物と、ケイ酸化合物と、Fe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、Mg、V、Zr、Ca、Sr及びBaから選ばれる金属の化合物とを含有する塩基性水分散液を水熱反応させることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
[7]リチウム化合物と、ケイ酸化合物と、Fe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、Mg、V、Zr、Ca、Sr及びBaから選ばれる金属の化合物とを含有する塩基性水分散液を水熱反応させ、得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とする、[4]記載の二次電池正極活物質の製造法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオリビン型シリケート化合物を正極材料として用いた二次電池は繰り返し充放電しても放電容量が低下せず、優れた二次電池である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】Li1.60.1Fe0.5Mn0.5SiO4のX線回折図を示す。
図2】Li1.8Ca0.1Fe0.5Mn0.5SiO4のX線回折図を示す。
図3】Li2.0Fe0.5Mn0.5SiO4のX線回折図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のオリビン型シリケート化合物は、リチウムの一部を金属元素X、Y又はZで置換したオリビン型リチウムシリケート化合物であって、次式(1):
Li2-abcdmSiO4・・・・・(1)
(式(1)中、Xは+2酸化状態にある金属であって、Mg2+、V2+、Co2+、Zr2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+から選ばれる金属を示し、Yは+3酸化状態にある金属であって、Al3+、V3+及びZr3+から選ばれる金属を示し、Zは+4酸化状態にある金属であって、V4+及びZr4+から選ばれる金属を示し、MはFe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、V及びZrから選ばれる1種又は2種以上の金属を示し、0<a≦0.5、0≦b≦0.25、0≦c<0.167、0≦d≦0.125、かつ2b+3c+4d=a、0.5≦m≦1である)で表される。
【0013】
すなわち、本発明のオリビン型シリケート化合物は、Li2mSiO4(Mは前記と同じ)で表されるリチウムシリケートのリチウムの一部をXbcdで置換した化合物である。
【0014】
式(1)中、Xは、+2酸化状態にある金属であって、Mg2+、V2+、Co2+、Zr2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+から選ばれる金属を示すが、このうち、Ca2+、Co2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+が好ましく、Ca2+、Co2+がより好ましい。Yは、+3酸化状態にある金属であって、Al3+、V3+及びZr3+から選ばれる金属を示すが、このうち、Al3+が好ましい。Zは、+4酸化状態にある金属であって、V4+及びZr4+から選ばれる金属を示し、V4+、Zr4+のいずれでもよい。
【0015】
式(1)中のa、b、c及びdは、0<a≦0.5、0≦b≦0.25、0≦c<0.167、0≦d≦0.125、かつ2b+3c+4d=aを満たす数である。aは0.01≦a≦0.5が好ましく、0.05≦a≦0.4がより好ましく、0.05≦a≦0.3がさらに好ましい。bは0≦b≦0.20が好ましく、0≦b≦0.15がより好ましく、0≦b≦0.10がさらに好ましい。cは、0≦c≦0.160が好ましく、0≦c≦0.150がより好ましく、0≦c≦0.10がさらに好ましい。dは0≦d≦0.120が好ましく、0≦d≦0.11がより好ましく、0≦d≦0.10がさらに好ましい。
【0016】
式(1)中、MはFe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、V及びZrから選ばれる1種又は2種以上の金属を示す。さらに、Fe及びMnから選ばれる1種以上の金属とCo、Al、V、Zn及びZrから選ばれる1種以上の金属であることが好ましい。
なお、式(1)中の係数mは、選ばれるMの金属種によって、化合物の電気的中性が保たれるように0.5≦m≦1の範囲で変化する。
【0017】
なお、前記Liの一部に置換される金属とMの金属とが重複する場合は、Mの金属として、Liと置換する金属を使用しないのが望ましい。
【0018】
本発明のオリビン型シリケート化合物(1)は、リチウム化合物と、ケイ酸化合物と、Mg、V、Co、Zr、Ca、Sr、Zn及びAlから選ばれる金属の化合物と、Fe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、V及びZrから選ばれる金属の化合物とを含有する塩基性水分散液を水熱反応させることにより製造される。かかる水熱合成反応によれば、微細かつ均一で高純度のオリビン型シリケート化合物(1)が得られる。
【0019】
リチウム化合物としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硫酸リチウム、酢酸リチウムが挙げられるが、水酸化リチウム、炭酸リチウムが特に好ましい。水分散液中のリチウム化合物の濃度は、0.30〜3.00mol/lが好ましく、さらに1.00〜1.50mol/lが好ましい。
【0020】
ケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、非晶質シリカ、Na4SiO4やNa4SiO4・nH2O(例えばNa4SiO4・H2O)が好ましい。このうちNa4SiO4を用いた場合、水分散液が塩基性になるので、より好ましい。水分散液中のケイ酸化合物の濃度は、0.15〜1.50mol/lが好ましく、さらに0.50〜0.75mol/lが好ましい。
【0021】
Mg、V、Co、Zr、Ca、Sr、Zn及びAlから選ばれる金属の化合物としては、これらの金属のハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては酢酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩等が挙げられる。水分散液中のこれらの金属の化合物の濃度は、0.001〜0.3mol/lが好ましく、さらに0.01〜0.2mol/lが好ましい。
【0022】
Fe、Ni、Co、Al、Zn、Mn、V及びZrから選ばれる金属の化合物としては、これらの金属のハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩等が挙げられる。水分散液中のこれらの金属の化合物の濃度は、0.001〜0.15mol/lが好ましく、さらに0.01〜0.1mol/lが好ましい。
【0023】
さらに、この分散液には副反応を防止する点から、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水、亜硫酸ナトリウム等が使用できる。水分散液中の酸化防止剤の含有量は、多量に添加するとオリビン型シリケート化合物の生成を抑制してしまうため、前記のLiを除く金属の合計に対して等モル量以下が好ましく、モル比で0.5以下がさらに好ましい。
【0024】
Li以外の金属源として金属硫酸塩を用いる場合、副反応を抑制する点から、金属硫酸塩とは別に、リチウム化合物、ケイ酸化合物を含有する塩基性水分散液を予め調製しておくのが好ましい。この場合、該水分散液と、金属硫酸塩とを混合して水熱反応に付す。該水分散液の調製にあたって、リチウム化合物とケイ酸化合物の添加順序、及び金属硫酸塩の添加順序は特に限定されず、各々の成分を同時に添加してもよい。
【0025】
Li以外の金属源として有機酸金属塩を用いる場合には、リチウム化合物、ケイ酸化合物を含有し、さらに有機酸金属塩を含有する塩基性水分散液を調製し、水熱反応に付す。この場合、リチウム化合物とケイ酸化合物、及び有機酸金属塩の添加順序は特に限定されない。また、大気条件下でもよい。通常、有機酸塩は固相法に用いられる原料であるが、水熱反応に用いることにより副反応を抑制することができる。
【0026】
水分散液のpHは、塩基性であればよいが、12.0〜13.5であるのが副反応(例えば、Fe34等の生成)の防止、ケイ酸化合物の溶解性及び反応の進行の点でより好ましい。該水分散液のpHの調整は、塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加することにより行ってもよいが、ケイ酸化合物としてNa4SiO4を用いるのがより好ましい。
【0027】
水熱反応は、100℃以上であればよく、130〜180℃が好ましく、さらに140〜160℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜180℃で反応を行う場合この時の圧力は0.3〜0.9MPaとなり、140〜160℃で反応を行う場合の圧力は0.3〜0.4MPaとなる。水熱反応時間は1〜24時間が好ましく、さらに3〜12時間が好ましい。
【0028】
当該水熱反応により、式(1)のオリビン型シリケート化合物が高収率で得られる。また、得られたオリビン型シリケート化合物の平均粒径は10〜100nmとなり、その結晶度も高い。
【0029】
得られた式(1)のシリケート化合物は、ろ過後、乾燥することにより単離できる。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
【0030】
得られた式(1)のシリケート化合物は、カーボン担持し、次いで焼成することにより、二次電池正極活物質とすることができる。カーボン担持は、オリビン型シリケート化合物(1)に常法により、グルコース、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、サッカロース、デンプン、デキストリン、クエン酸等の炭素源及び水を添加し、次いで焼成すればよい。なかでも、コストの面から、炭素源としてグルコースを用いるのが好ましい。焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400〜800℃で10分〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間行うのが好ましい。かかる処理によりシリケート化合物表面にカーボンが担持された正極活物質とすることができる。炭素源の使用量は、式(1)のシリケート化合物100質量部に対し、炭素源に含まれる炭素として3〜15質量部が好ましく、炭素源に含まれる炭素として5〜10質量部がさらに好ましい。
【0031】
また、二次電池正極活物質中の式(1)のシリケート化合物の含有量は、85〜97質量%が好ましく、90〜95質量%がより好ましい。
【0032】
得られた正極活物質は、放電容量の点で優れており、二次電池の正極材料として有用である。本発明の正極活物質を適用できる二次電池としては、リチウムイオン二次電池であればよく、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0033】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
【0034】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0035】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1(Li1.60.1Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.36g(80mmol)、VOSO4・nH2O 1.09g(5mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、200℃で3hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0039】
実施例2(Li1.6Co0.2Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.36g(80mmol)、Co(OH)2 0.98g(10mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、200℃で3hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0040】
実施例3(Li1.6Zr0.1Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.36g(80mmol)、ZrSO4・7H2O 1.78g(5mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、200℃で3hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0041】
実施例4(Li1.6Al0.13Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.36g(80mmol)、Al2(SO43 1.35g(6.7mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0042】
実施例5(Li1.6Ca0.2Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.36g(80mmol)、Ca(OH)2 0.76g(10mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、200℃で3hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0043】
実施例6(Li1.8Ca0.1Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.78g(90mmol)、Ca(OH)2 0.38g(5mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0044】
実施例7(Li1.8Co0.1Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 3.78g(90mmol)、Co(OH)2 0.49g(5mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0045】
参考例1(Li2Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 4.20g(100mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、200℃で3hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0046】
参考例2(Li2Fe0.5Mn0.5SiO4の合成)
LiOH・H2O 4.20g(100mmol)、Na4SiO4・nH2O 13.98g(50mmol)に蒸留水80gを加えて混合した。この水分散液にFeSO4・7H2O 6.95g(25mmol)及びMnSO4・5H2O 6.03g(25mmol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び蒸留水10cm3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0047】
[試験例1]
実施例1、6及び参考例1で得られた凍結乾燥粉末のX線回折を行った。得られたX線回折図を図1図3に示す。図1図3から明らかなように、実施例1、6及び参考例1で得られた粉末は、いずれもオリビン型シリケート化合物の単一相であり、高純度であることが判明した。
【0048】
[試験例2]
実施例1〜7及び参考例1で得られた焼成物を用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。実施例1〜7及び参考例1で得られた焼成物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
【0049】
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
【0050】
製造したリチウムイオン二次電池を用いて定電流密度での充放電を4サイクル行った。このときの充電条件は電流0.1CA(33mA/g)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件は電流0.1CA、終止電圧1.5Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。
実施例1〜7及び参考例1の正極材で構築した電池の1サイクル目の放電容量の最大値及び4サイクル後の放電容量の維持率を表1及び表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1及び表2から明らかなように、オリビン型シリケート化合物のLiの一部を他の元素に置換した本発明のオリビン型シリケート化合物を正極材として用いた二次電池は、充放電を繰り返しても放電容量の低下が少なく安定であることがわかる。
図1
図2
図3