特許第5759973号(P5759973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5759973感知向上層(senseenhancinglayer)を含む磁気感知デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759973
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】感知向上層(senseenhancinglayer)を含む磁気感知デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20150716BHJP
   H01L 43/10 20060101ALI20150716BHJP
   H01L 21/8246 20060101ALI20150716BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20150716BHJP
   G11B 5/39 20060101ALI20150716BHJP
   H01F 10/16 20060101ALI20150716BHJP
   H01F 10/30 20060101ALI20150716BHJP
   H01F 10/32 20060101ALI20150716BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01L43/08 Z
   H01L43/08 M
   H01L27/10 447
   H01L43/10
   G11B5/39
   H01F10/16
   H01F10/30
   H01F10/32
   G01R33/06 R
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-282698(P2012-282698)
(22)【出願日】2012年12月26日
(62)【分割の表示】特願2006-337714(P2006-337714)の分割
【原出願日】2006年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-102178(P2013-102178A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2013年1月17日
(31)【優先権主張番号】11/305,778
(32)【優先日】2005年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
(74)【代理人】
【識別番号】100085132
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083703
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 義平
(74)【代理人】
【識別番号】100096781
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100111246
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 眞人
(72)【発明者】
【氏名】チョン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ダブリュー. カール
(72)【発明者】
【氏名】ソン シェ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エル. グランストローム
(72)【発明者】
【氏名】クオン ティー. トラン
(72)【発明者】
【氏名】イー エックス. リー
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−319259(JP,A)
【文献】 特開2000−215414(JP,A)
【文献】 特開平10−198926(JP,A)
【文献】 特開2005−328064(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0057166(US,A1)
【文献】 米国特許第06127045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8246
H01L 27/105
H01L 27/22
H01L 29/82
H01L 43/00−43/14
G11B 5/33−5/39
G11B 5/62−5/82
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁性部分と、第2の磁性部分と、前記第1の磁性部分と前記第2の磁性部分の間のバリア層とを含むセンサスタックを含んでなる磁気センサであって、
前記第1の磁性部分が、前記バリア層に隣接する正の磁気ひずみを有する第1の磁性層と、負の磁気ひずみを有する第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層の間の中間層とを含む多層構造を含んでなり、
前記第1の磁性部分および前記第2の磁性部分の一方が自由層であり、他方が基準層であり、
前記中間層が磁性層であり、
前記磁気センサの抵抗−面積(RA)積が約1.0Ω・μmのとき、前記磁気センサが少なくとも約80%の磁気抵抗比を示す、上記磁気センサ。
【請求項2】
前記中間層が、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記バリア層が、MgO及びMgからなる群から選択された材料を含む、請求項1または請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1の磁性層が、CoFeB、CoFeNiB、CoFe、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第2の磁性層が、Ni及びNiベース合金からなる群から選択された材料を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第2の磁性層が、結晶強磁性体及びアモルファス強磁性体からなる群から選択された材料を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
MgOを含むバリア層と、
前記バリア層に隣接する、正の磁気ひずみを有する第1の強磁性層と、負の磁気ひずみを有する第2の強磁性層と、第1と第2の強磁性層の間にあり、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む中間層とを含む第1の多層磁性構造と、前記バリア層に対して第1の多層磁性構造と反対側に配置され、強磁性体からなる第2の磁性構造層とを含み、前記第1の多層磁性構造および前記第2の磁性構造層の一方が自由層であり、他方が基準層である、センサスタック。
【請求項8】
前記第1の強磁性層が、CoFeB、CoFeNiB、CoFe、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む、請求項7に記載のセンサスタック。
【請求項9】
前記第2の強磁性層が、Ni及びNiベース合金からなる群から選択された材料を含む、請求項7または請求項8に記載のセンサスタック。
【請求項10】
前記第2の強磁性層が、結晶強磁性体及びアモルファス強磁性体からなる群から選択された材料を含む、請求項からのいずれか1項に記載のセンサスタック。
【請求項11】
前記第1の多層磁性構造が自由層であり、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層の間の結合が、強磁性結合及び反強磁性結合からなる群から選択される、請求項から10のいずれか1項に記載のセンサスタック。
【請求項12】
前記第1の多層磁性構造が基準層である、請求項から10のいずれか1項に記載のセンサスタック。
【請求項13】
第1の磁性構造と、
前記第1の磁性構造に隣接するMgOバリア層と、
前記MgOバリア層に前記第1の磁性構造とは反対の側で隣接し、前記バリア層に隣接する正の磁気ひずみ層と、負の磁気ひずみ層と、正の磁気ひずみ層と前記負の磁気ひずみ層の間の感知向上層とを含む第2の磁性構造とを含んでなり、前記第1の磁性構造および前記第2の磁性構造が、自由層および基準層の一方および他方である、感度が改善された磁気抵抗(MR)センサであって、
前記感知向上層は磁性層であり、
(a)抵抗−面積(RA)積が約0.5Ω・μmの場合、少なくとも約30%の、(b)RA積が約0.8Ω・μmの場合、少なくとも約50%の、(c)RA積が約1.0Ω・μmの場合、少なくとも約80%の、(d)RA積が約1.4Ω・μmの場合、少なくとも約100%のMR比を有することを特徴とする、磁気抵抗センサ。
【請求項14】
前記感知向上層が、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む、請求項13に記載の磁気抵抗センサ。
【請求項15】
前記正の磁気ひずみ層が、CoFeB、CoFeNiB、CoFe、及びそれらの合金からなる群から選択された材料を含む、請求項13または請求項14に記載の磁気抵抗センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関する。より詳細には、本発明は、トンネル障壁及びセンサの感度を改善するための層を含む磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電子データの記憶検索システムでは、磁気記録ヘッドが一般に、磁気ディスク上に記憶された、磁気的に符号化された情報を検索するセンサを有するリーダ部分を含む。ディスクの表面からの磁束が、センサの1層又は複数層の感知層の磁化ベクトルの回転を引き起こし、それが順にセンサの電気特性の変化を引き起こす。感知層の磁化ベクトルが外部磁束に応答して自由に回転することができるので、感知層はしばしば自由層と呼ばれる。センサの電気特性の変化は、センサに電流を流し、センサの両端間で電圧を測定することによって検出することができる。デバイスの幾何形状に応じて、センス電流は、デバイスの層の平面内を流れる(CIP)、又はデバイスの層の平面に垂直に流れる(CPP)ことができる。次いで、外部回路が、電圧情報を適当な形式に変換し、必要に応じてその情報に手を加えて、ディスク上に符号化された情報を回復させる。
【0003】
最新の読取りヘッドにおける本質的な構造は、トンネル磁気抵抗(TMR)など、ある種の磁気抵抗(MR)を呈する強磁性体を含む薄膜多層構造である。典型的なTMRセンサ構成では、絶縁薄膜又はバリア層が、合成反強磁性体(SAF)と強磁性自由層の間、又は2つの強磁性自由層の間に配置され形成された多層構造を含む。バリア層は、これらの磁性層間で電子トンネル効果を可能にするのに十分なほど薄い。一方の磁性層から、バリア層上を入射した電子がトンネルする確率は、電子の波動関数の特性、及び他方の磁性層内の磁化方向に対する電子のスピンに依存する。その結果、TMRセンサの抵抗は、これらの磁性層の磁化の相対的な向きに依存し、磁性層の磁化が平行な構成の場合は最小を、磁性層の磁化が反平行な構成の場合は最大を呈する。
【0004】
一部のTMRセンサには、酸化マグネシウム(MgO)を含むバリア層が組み込まれており、それによりTMRセンサの抵抗−面積(RA)積が高い(即ち、10Ω・μmよりも大きい)とき、200%に近い磁気抵抗比が可能になっている。高い磁気抵抗比を実現するために、絶縁薄膜に隣接するCoFeBベースの単一の自由層が、高温の(即ち、300℃よりも高い)アニールと共に使用されることがある。しかし、このデバイスは、正の磁気ひずみが高く、RA積が高く、又高温のアニールとなり、それら全てが、デバイスの性能を低減するか、そうしたデバイスの処理を難しくしている。デバイスの磁気ひずみを低減するためには、CoFeB自由層を、負の磁気ひずみを有する材料と共に積層するか、同時スパッタすることができる。こうすることにより、磁気ひずみの低いセンサがもたらされるが、センサの磁気抵抗比が大幅に低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の磁性部分、第2の磁性部分、及び第1の磁性部分と第2の磁性部分の間のバリア層を有するセンサスタック(sensor stack)を含む、磁気センサである。第1の磁性部分及び第2の磁性部分のうち少なくとも一方が、バリア層に隣接する正の磁気ひずみを有する第1の磁性層と、第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層の間の中間層とを有する多層構造を含む。この磁気センサは、その抵抗面積(RA)積が約1.0Ω・μmであるとき、少なくとも約80%のMR比を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】感知向上層を有する多層自由層を含む磁気センサの層を示す図である。
図2】感知向上層を有する多層基準層を含む磁気センサの層を示す図である。
図3】感知向上層を有する多層自由層と、感知向上層を有する多層基準層とを含む 磁気センサの層を示す図である。
図4図3の磁気センサを、感知向上層のない磁気センサと比較した、磁気抵抗(MR)比と抵抗−面積(RA)積との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、自由層14、バリア層16、基準層18、結合層19、ピンド層(pinned layer)20、及びピンニング層(pinning layer)21を含む磁気センサ10の層の図である。自由層14は、第1の強磁性層22、感知向上層24、及び第2の強磁性層26を含む。一実施形態では、磁気センサ10は、磁気記録ヘッド内で、2つの電極又はシールド間に配置される。磁気センサ10は、磁気センサ10内で後続の層の成長を促進するためのシード層、並びに抵抗−面積(RA)積及び磁気抵抗(MR)比など、磁気センサ10の特性を変えるキャップ層など、追加の層を含んでもよい。磁気センサ10の構成は例示的なものにすぎず、本発明に従って、磁気センサ10用の他の層構成を使用することもできることに留意されたい。例えば、基準層18の代わりに第2の自由層を使用して、3層タイプの磁気センサを形成してもよい。さらに、図1ではボトム型のセンサ構成が示されているが、磁気センサ10の層を、トップ型のセンサ構成に構成することもできる。
【0008】
動作の際には、センス電流が、磁気センサ10を流れる。センス電流は、磁気センサ10の層の平面に垂直に流れ、自由層の磁化方向と基準層の磁化方向との間、又は(3層磁気センサにおいて)2つの自由層の磁化方向の間に形成される角度のコサインに比例する抵抗の影響を受ける。次いで、抵抗の変化を決定するために、磁気センサ10の両端間の電圧が測定され、得られた信号が、例えば、磁気媒体からの符号化情報を回復するのに使用される。
【0009】
自由層14は、第1の強磁性層22、感知向上層24、及び第2の強磁性層26を含む。自由層14の磁化は、磁気媒体から発する磁界などの外部磁界に応答して自由に回転する。第1の強磁性層22を、バリア層16に隣接して配置し、感知向上層24を、第1の強磁性層22と第2の強磁性層26の間に配置する。第1の強磁性層22は、センサの抵抗−面積(RA)積が高い(即ち、10Ω・μmよりも大きい)とき、又低い(即ち、4Ω・μm未満の)ときに、磁気センサ10の磁気抵抗比を改善するように、CoFeB又はCoFeベースの合金など、正の磁気ひずみを有する材料を含む。第1の強磁性層22内の各元素の比は、磁気センサ10の性能を改善するように調整することができる。
【0010】
第1の強磁性層22の正の磁気ひずみをオフセットするために、第2の強磁性層26を、自由層14内で感知向上層24の第1の強磁性層22とは反対の側に含める。第2の強磁性層26は、負の磁気ひずみを有する材料を含み、第1の強磁性層22と交換結合する結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含むことができる。一実施形態では、第2の強磁性層26は、Ni、NiFeなどのNiベース合金、又はCoFeを含む。第2の強磁性層26は、第1の強磁性層22と共に積層、又は同時スパッタすることができる。
【0011】
感知向上層24を、第1の強磁性層22と第2の強磁性層26の間に配置する。感知向上層24は、感知向上層24のないセンサに比べて、磁気センサ10の磁気抵抗(MR)比を大幅に改善する。これは、感知向上層24が、第1の強磁性層22及び第2の強磁性層26の結晶成長を分離するためかもしれないし、第1の磁性層22とバリア層16の間、及び第1の強磁性層22と第2の強磁性層26の間の境界面を保つためかもしれないし、或いは、第1の強磁性層22と第2の強磁性層26の間の構成元素の拡散を回避(し、従ってこれらの層の劣化を回避)するためかもしれない。
【0012】
一実施形態では、感知向上層24をTaで形成する。感知向上層24を、Ru、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Pt、Rh、Ir、Al、Cu、Cr、Ti、又はそれらの合金など、他の非磁性体で形成してもよい。一実施形態では、非磁性の感知向上層24の厚さtS1は、約0.5Å〜約10Åの範囲である。感知向上層24は、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、又はそれらの合金などの磁性体を含んでもよい。感知向上層24が、磁性体で形成される場合、厚さtS1は、感知向上層24が非磁性体で形成される場合よりもずっと厚くてよい。
【0013】
第1の強磁性層22及び第2の強磁性層26の磁化の相対的な向きは、感知向上層24の材料及び厚さに依存する。即ち、第1の強磁性層22及び第2の強磁性層26を強磁性結合させ、従ってそれらの層の磁化を、互いに平行に整列させることができる。第1の強磁性層22及び第2の強磁性層26を反強磁性結合させ、従ってそれらの層を、互いに反平行に整列させることもできる(例えば、感知向上層26がRuで形成され、約4Å〜約12Åの範囲の厚さを有する場合である。)。
【0014】
バリア層16を、自由層14と基準層18の間で電子トンネル効果を可能にする材料で形成する。一実施形態では、バリア層16は、酸化マグネシウム(MgO)からなる層である。MgO層は、MgOの高周波(RF)堆積技術又は分子線エピタキシ(MBE)によって形成することができる。MgO層は、堆積後のMg層を(プラズマ酸化、ラジカル酸化、又は自然酸化などによって)酸化させることによって形成することもできる。バリア層16は、Mg/MgO又はMgO/Mgの2層、Mg/MgO/Mgの3層など、他の構造を含んでもよく、MgO及びMgを含む、他のどんな積層又は多層構造を含んでもよい。バリア層16の厚さは、磁気センサ10のMR比の最大化とRA積の最小化のバランスを保つものを選択する。
【0015】
基準層18は、CoFeBなどの強磁性体を含む。基準層18は、結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含む、他のどんなタイプの強磁性体で形成してもよい。基準層18、結合層19、及びピンド層20は、磁化方向が固定された合成反強磁性体(SAF)を含む。基準層18及びピンド層20は、基準層18の磁化方向がピンド層20の磁化方向とは反対となるように、結合層19によって磁気結合される。ピンド層20の磁化は、ピンニング層21をピンド層20と交換結合することによって、ピン止めされる。一実施形態では、ピンド層20は強磁性体を含み、ピンニング層21は反強磁性体を含む。別法として、SAF及びピンニング層21を、例えば、磁気センサ10に隣接して配置された永久磁石(図示せず)によって発生したバイアス磁界によって磁化が固定される、単一の強磁性層で置き換えることもできる。
【0016】
図2は、自由層34、バリア層36、基準層38、結合層39、ピンド層40、及びピンニング層41を含む磁気センサ30の層の図である。基準層38は、第1の強磁性層42、感知向上層44、及び第2の強磁性層46を含む。一実施形態では、磁気センサ30は、磁気記録ヘッド内で、2つの電極又はシールド間に配置される。磁気センサ30は、図1に示す磁気センサ10内の同様の要素(element)に類似した特性を有する要素を含む。具体的には、バリア層36、結合層39、ピンド層40、及びピンニング層41はそれぞれ、図1に関して説明したバリア層16、結合層19、ピンド層20、及びピンニング層21に類似した特性を有する。
【0017】
自由層34は、磁気媒体から発する磁界などの外部磁界に応答して自由に回転する磁化を有する、強磁性体からなる単一層とすることができる。一実施形態では、自由層34をCoFeB又はCoFeベースの合金で形成する。別法として、自由層34を、(バリア層36に隣接する)CoFeBが、Ni、Niベース合金、又は他の結晶強磁性体若しくはアモルファス強磁性体と共に同時スパッタ、或いは積層されたものなど、2層の強磁性層とすることもできる。
【0018】
基準層38、結合層39、及びピンド層40は、磁化方向が固定されたSAFを含む。基準層38及びピンド層40は、基準層38の磁化方向がピンド層40の磁化方向とは反対となるように、結合層39によって磁気結合される。ピンド層40の磁化は、ピンニング層41をピンド層40と交換結合することによって、ピン止めされる。
【0019】
基準層38は、第1の強磁性層42、感知向上層44、及び第2の強磁性層46を含む。第1の強磁性層42を、バリア層36に隣接して配置し、感知向上層44を、第1の強磁性層42と第2の強磁性層46の間に配置する。第1の強磁性層42は、センサのRA積が高いとき、又低いときに、磁気センサ30の磁気抵抗比を改善するように、CoFeB又はCoFeベースの合金などの結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含むことができる。第1の強磁性層42内の各元素の比は、磁気センサ30の性能を改善するように調整することができる。
【0020】
第2の強磁性層46を、基準層38内で感知向上層44の第1の強磁性体42とは反対の側に配置する。第2の強磁性層46は、第1の強磁性層42と交換結合し、ピンド層40及びピンニング層41と良好に結合する、任意の結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含むことができる。
【0021】
感知向上層44を、第1の強磁性層42と第2の強磁性層46の間に配置する。感知向上層44は、感知向上層44のないセンサに比べて、磁気センサ30のMR比を大幅に改善する。一実施形態では、感知向上層44をTaで形成する。感知向上層44を、Ru、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Pt、Rh、Ir、Al、Cu、Cr、Ti、又はそれらの合金など、他の非磁性体で形成してもよい。一実施形態では、非磁性の感知向上層44の厚さtS2は、約0.5Å〜約10Åの範囲である。感知向上層44は、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、又はそれらの合金などの磁性体を含んでもよい。感知向上層44が磁性体で形成される場合、厚さtS2は、感知向上層44が非磁性体で形成される場合よりもずっと厚くてよい。
【0022】
図3は、自由層54、バリア層56、基準層58、結合層59、ピンド層60、及びピンニング層61を含む磁気センサ50の層の図である。自由層54は、第1の強磁性層62、感知向上層64、及び第2の強磁性層66を含む。基準層58は、第1の強磁性層72、感知向上層74、及び第2の強磁性層76を含む。一実施形態では、磁気センサ50は、磁気記録ヘッド内で、2つの電極又はシールド間に配置される。磁気センサ50は、図1に示す磁気センサ10内の同様の要素に類似した特性を有する要素を含む。具体的には、バリア層56、結合層59、ピンド層60、及びピンニング層61はそれぞれ、図1に関して説明したバリア層16、結合層19、ピンド層20、及びピンニング層21に類似した特性を有する。
【0023】
自由層54は、図1の自由層14に類似した構成及び特性を有する。自由層54は、第1の強磁性層62、感知向上層64、及び第2の強磁性層66を含む。自由層54の磁化は、磁気媒体から発する磁界などの外部磁界に応答して自由に回転する。第1の強磁性層62を、バリア層56に隣接して配置し、感知向上層64を、第1の強磁性層62と第2の強磁性層66の間に配置する。第1の強磁性層62は、センサの抵抗−面積(RA)積が高いとき、又低いときに、磁気センサ50の磁気抵抗比を改善するように、CoFeB又はCoFeベースの合金など、正の磁気ひずみを有する材料を含む。第1の強磁性層62内の各元素の比は、磁気センサ50の性能を改善するように調整することができる。
【0024】
第2の強磁性層66を、負の磁気ひずみを有する材料で形成し、自由層54内で、感知向上層64の第1の強磁性層62とは反対の側に含める。第2の強磁性層66は、第1の強磁性層62と交換結合する結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含むことができる。一実施形態では、第2の強磁性層66は、Ni、NiFeなどのNiベース合金、又はCoFeを含む。第2の強磁性層66は、第1の強磁性層62と共に積層、又は同時スパッタすることができる。
【0025】
感知向上層64を、第1の強磁性層62と第2の強磁性層66の間に配置する。感知向上層64は、(図4に関してより詳細に説明するように)感知向上層64のないセンサに比べて、磁気センサ50のMR比を大幅に改善する。一実施形態では、感知向上層64をTaで形成する。感知向上層64を、Ru、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Pt、Rh、Ir、Al、Cu、Cr、Ti、又はそれらの合金など、他の非磁性体で形成してもよい。一実施形態では、非磁性の感知向上層64の厚さtS3は、約0.5Å〜約10Åの範囲である。感知向上層64は、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、又はそれらの合金などの磁性体を含んでもよい。感知向上層64が磁性体で形成される場合、厚さtS3は、感知向上層64が非磁性体で形成される場合よりもずっと厚くてよい。
【0026】
第1の強磁性層62及び第2の強磁性層66の磁化の相対的な向きは、感知向上層64の材料及び厚さに依存する。即ち、第1の強磁性層62及び第2の強磁性層66を強磁性結合し、従ってそれらの層の磁化を、互いに平行に整列させることができる。第1の強磁性層62及び第2の強磁性層66を反強磁性結合し、従ってそれらの層を、互いに反平行に整列させることもできる(例えば、感知向上層66が、Ruで形成され、約4Å〜約12Åの範囲の厚さを有する場合である)。
【0027】
基準層58、結合層59、及びピンド層60は、磁化方向が固定されたSAFを含む。基準層58及びピンド層60は、基準層58の磁化方向がピンド層60の磁化方向とは反対となるように、結合層59によって磁気結合される。ピンド層60の磁化は、ピンニング層61をピンド層60と交換結合することによって、ピン止めされる。
【0028】
基準層58は、図1の基準層18に類似した構成及び特性を有する。基準層58は、第1の強磁性層72、感知向上層74、及び第2の強磁性層76を含む。第1の強磁性層72を、バリア層56に隣接して配置し、感知向上層74を、第1の強磁性層72と第2の強磁性層76の間に配置する。第1の強磁性層72は、センサのRA積が高いとき、又低いときに、磁気センサ50の磁気抵抗比を改善するように、CoFeB又はCoFeベースの合金など、正の磁気ひずみを有する材料を含むことができる。第1の強磁性層72内の各元素の比は、磁気センサ50の性能を改善するように調整することができる。
【0029】
第2の強磁性層76を、基準層58内で感知向上層74の第1の強磁性層72とは反対の側に配置する。基準層38の磁気ひずみは、正でもよく、負でもよい。従って、第2の強磁性層76は、第2の強磁性層76と交換結合し、ピンド層60及びピンニング層61と良好に結合する、結晶強磁性体又はアモルファス強磁性体を含むことができる。
【0030】
感知向上層74を、第1の強磁性層72と第2の強磁性層76の間に配置する。感知向上層74は、(図4に関してより詳細に説明するように)感知向上層74のないセンサに比べて、磁気センサ50のMR比を大幅に改善する。一実施形態では、感知向上層74をTaで形成する。感知向上層74を、Ru、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Pt、Rh、Ir、Al、Cu、Cr、Ti、又はそれらの合金など、他の非磁性体で形成してもよい。一実施形態では、非磁性の感知向上層74の厚さtS4は、約0.5Å〜約10Åの範囲である。感知向上層74は、CoZrNb、CoZrTa、FeTa、FeTaN、NiFeZr、CoFeTa、CoNb、又はそれらの合金などの磁性体を含んでもよい。感知向上層74が磁性体で形成される場合、厚さtS4は、感知向上層74が非磁性体で形成される場合よりもずっと厚くてよい。
【0031】
図1〜3に関して示し、説明した磁気センサは、低温(即ち約250℃)のアニールを使用して製作することができる。得られるデバイスは、少なくとも300℃まで熱的に安定であり、約1.0Ω・μmのRA積を有するセンサにおいて、300mVを上回る破壊電圧を有する。さらに、本発明による磁気センサは、感知向上層が自由層又は基準層内に含まれていない対応するデバイスに勝る、大幅に改善されたMR比を示す。
【0032】
図4は、磁気センサ50を、類似した構造を有するが感知向上層64及び74のない比較の磁気センサと比べた、磁気抵抗(MR)比と抵抗−面積(RA)積の関係を示すグラフである。感知向上層64及び74は、テストされた磁気センサ50内ではTaを含んでいた。磁気センサ50のテストデータが、グラフ上に丸でプロットされ、比較のセンサのテストデータが、グラフ上に四角でプロットされている。各データ点が、ウエーハ上の複数のセンサからとった平均値を表す。図から分かるように、磁気センサ50は、センサのRA積が1.4Ω・μmのときに約100%の、センサのRA積が1.0Ω・μmのときに約75%の、センサのRA積が0.8Ω・μmのときに約60%の、センサのRA積が0.5Ω・μmのときに約30%のMR比を達成した。磁気センサ50は、(下方に0.5Ω・μmまで及ぶ)類似のRA積を有する比較のセンサに比べて、MR比がほぼ100%改善されたことを示す。従って、本発明による磁気センサは、磁気記録ヘッド用途、特に、300Gbit/inの記録面密度を超える記録用途に適したRA積の範囲(即ち、4.0Ω・μm未満)をかなり超えて、改善されたMR比を実現する。
【0033】
要約すると、本発明は、第1の磁性部分、第2の磁性部分、及び第1の磁性部分と第2の磁性部分の間のバリア層を有するセンサスタックを含む磁気センサである。第1の磁性部分及び第2の磁性部分のうち少なくとも一方が、バリア層に隣接し正の磁気ひずみを有する第1の磁性層、第2の磁性層、及び第1の磁性層と第2の磁性層の間の中間層を有する多層構造を含む。この磁気センサは、その抵抗面積(RA)積が約1.0Ω・μmであるとき、少なくとも約80%のMR比を有する。本発明による磁気センサは、低温アニールを使用して製作することができ、300℃を超えても熱的に安定で、負の磁気ひずみを有し、高破壊電圧であり、センサのRA積が低いときに高MR比を示す。
【0034】
以上、本発明を、好ましい諸実施形態に即して説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形の上で詳細に変更を加えることができることが当業者には理解されよう。例えば、本発明による磁気センサを、磁気記録ヘッド用途の文脈において説明してきたが、この磁気センサは、磁気ランダムアクセスメモリ用途を含む、他の様々な用途に使用することができることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4