特許第5759985号(P5759985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759985
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60B 9/12 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   B60B9/12
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-513033(P2012-513033)
(86)(22)【出願日】2010年5月3日
(65)【公表番号】特表2012-528042(P2012-528042A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】US2010001307
(87)【国際公開番号】WO2010138150
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/182,244
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/616,952
(32)【優先日】2009年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002976
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ベンジング、 ジェームス アルフレッド セカンド
(72)【発明者】
【氏名】キッシュ、 ジェームス クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴァケ、 モノハール アスナニ
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第01039427(US,A)
【文献】 仏国特許発明第00489324(FR,A)
【文献】 特開2004−309396(JP,A)
【文献】 特許第035030(JP,C1)
【文献】 米国特許第01180671(US,A)
【文献】 米国特許第00762740(US,A)
【文献】 米国特許第00835005(US,A)
【文献】 米国特許第03449199(US,A)
【文献】 特開2006−103504(JP,A)
【文献】 “Goodyear and NASA Invent ‘Spring Tyre' for Moon, Possibly Earth”,[online],Goodyear Dunlop Tyres Europe B.V.,2009年 8月 4日,[平成26年3月7日検索]、インターネット<URL:http://www.goodyear.eu/uk_en/sitewides/press/goodyearinthenews/2009/Goodyear_and_NASA.jsp>
【文献】 “Goodyear and NASA ‘Spring Tyre’ for Moon, Possibly Earth”,[online],JAX Quickfit Franchising Systems Pty Limited,2009年 9月26日,[平成26年3月7日検索]、インターネット<URL:http://www.jaxquickfit.com.au/blog/2009/09/goodyear-and-nasa-spring-tyre-for-moon-possibly-earth/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と空気無しタイヤの組立体であって、該空気無しタイヤは複数のらせんばねを有し、各前記らせんばねが、第1の端部と、第2の端部と、アーチ形中央部とを有し、少なくとも1つの他のらせんばねと絡み合わせられ、それによって、前記空気無しタイヤの全周に沿って延びる絡み合わせトロイダル構造を形成し、その絡み合わせトロイダル構造が、前記空気無しタイヤにかかる全荷重を支持し、
各前記らせんばねの第1の端部が前記車輪の第1の環状構造部に直接固定され、各前記らせんばねの第2の端部が前記車輪の第2の環状構造部に直接固定されており、前記第1の端部は前記第2の端部と同軸に方向付けられている、組立体。
【請求項2】
前記空気無しタイヤを前記車輪に固定するために前記第1および第2の環状構造部は前記空気無しタイヤの軸線方向両側にそれぞれ配置されている、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記トロイダル構造は前記空気無しタイヤの第1のプライを形成する、請求項1に記載の組立体
【請求項4】
タイヤの半径方向において前記第1のプライと重なり合う第2のプライをさらに有する、請求項に記載の組立体
【請求項5】
前記第2のプライは、複数のらせんばねを有する第2の絡み合わせトロイダル構造を有する、請求項4に記載の組立体。
【請求項6】
前記第2のプライの各らせんばねは、第1の端部と、第2の端部と、アーチ形中央部とを有し、少なくとも1つの他のらせんばねと絡み合わせられ、それによって、前記空気無しタイヤの全周に沿って延びる前記第2の絡み合わせトロイダル構造を形成しており、
前記第2のプライの各らせんばねの第1の端部が前記第1の環状構造部に固定され、前記第2のプライの各らせんばねの第2の端部が前記第2の環状構造部に固定されている、請求項5に記載の組立体。
【請求項7】
前記第1および第2の環状構造部の各々は、前記空気無しタイヤを前記第1および第2の環状構造部に取付けるための複数のソケット穴を有している、請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
車輪と空気無しタイヤの組立体であって、該空気無しタイヤは複数のばねを有し、各前記ばねが、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部を相互に連結するアーチ形中央部とを有し、各前記ばねは、前記第1の端部からタイヤの半径方向外側に前記中央部まで延び、前記中央部からタイヤの半径方向内側に前記第2の端部まで延び、
各前記ばねが、該ばねの第1の側の隣接するばねと絡み合わされ、該第1の側とは反対の第2の側の隣接するばねとさらに絡み合わされ、それによって、前記空気無しタイヤの全周に沿って延びるトロイダル構造を形成し、該トロイダル構造は、前記空気無しタイヤにかかる全荷重を支持し、
各前記ばねの第1の端部が前記車輪の第1の環状構造部に直接固定され、各前記ばねの第2の端部が前記車輪の第2の環状構造部に直接固定されており、前記第1の端部は前記第2の端部と同軸に方向付けられている、組立体。
【請求項9】
各前記ばねは、前記車輪からタイヤの半径方向外側に延びるアーチを形成する、請求項8に記載の組立体
【請求項10】
各前記ばねを前記車輪に固定するために前記第1および第2の環状構造部は前記空気無しタイヤの軸線方向両側にそれぞれ配置されている、請求項8に記載の組立体。
【請求項11】
前記トロイダル構造は前記空気無しタイヤの第1のプライを形成する、請求項8に記載の組立体
【請求項12】
タイヤの半径方向において前記第1のプライと重なり合う第2のプライをさらに有する、請求項11に記載の組立体
【請求項13】
前記第2のプライは複数の前記ばねを有する第2のトロイダル構造を有する、請求項12に記載の組立体
【請求項14】
前記第2のプライの各ばねが、第1の端部と、第1の端部と向かい合う第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部を相互に連結するアーチ形中央部とを有し、前記第2のプライの各ばねは、前記第1の端部からタイヤの半径方向外側に前記中央部まで延び、前記中央部からタイヤの半径方向内側に前記第2の端部まで延び、
前記第2のプライの各ばねは、該ばねの第1の側の隣接するばねと絡み合わされ、該第1の側とは反対の第2の側の隣接するばねと絡み合わされ、それによって、前記空気無しタイヤの全周に沿って延びる前記第2のトロイダル構造を形成しており、
前記第2のプライの各ばねの第1の端部が前記第1の環状構造部に固定され、前記第2のプライの各ばねの第2の端部が前記第2の環状構造部に固定されている、請求項13に記載の組立体。
【請求項15】
前記第1および第2の環状構造部の各々は、前記空気無しタイヤを前記第1および第2の環状構造部に取付けるための複数のソケット穴を有している、請求項8に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願との相互参照
本出願は、2009年5月29日に出願された関連の米国特許仮出願第61/182244号の利益を享受する。
連邦支援の研究に関する声明
本明細書に記載された発明は、NASA Contract No.NNX07AO16Aに基づく業務を遂行する際になされたものであり、1958年の国家航空宇宙法の第305項の規定に従う(42U.S.C.2457)。
発明の分野
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、長距離月探査および月面基地の開発を支援するために新しい月面車を開発していた。このような車輌は、1960年代後半のアポロ計画向けに開発された月面移動車(LRV)よりも重く、走行距離が長い。このため、新しいタイヤは、地球上で使用されている乗用車と同様の動作特性が必要とされるので、アポロLRV上で使用されたタイヤと比べて10倍の重量までを支え、かつ100倍の走行距離までにわたって耐えることが求められる。しかし、従来のゴム製空気入りタイヤは月面では十分に機能しない。
【0003】
たとえば、ゴム特性は、日陰における低温(最低で40K)と日光を浴びているときの高温(最高で400K)との間で著しく変化する。さらに、ゴムは、大気の保護なしに太陽放射に直接さらされると劣化する。最後に、空気の入ったタイヤは、パンクする可能性があるため有人月面車輌に許容されない。これらの弱点を克服するために、アポロLRV向けにタイヤ構造が開発され、アポロミッション15、16、および17で首尾よく使用された。このタイヤは、月での温度変化および太陽放射に耐えるピアノ線で織られており、真空中で動作し、荷重を支えるための空気を必要としなかった。この構造はさらに、月の地形に合わせるように働き、牽引が容易であり、アポロLRVへの振動伝達が少なかった。
【0004】
月面車に対する新しい重量と距離の要件のため、強度および耐久性がより高いタイヤが望まれていた。
【0005】
従来の1つの、車輪と空気無しタイヤの組立体は、変更可能な直径を有し、そして、該組立体の直径を変えるだけでなく該組立体の幅も変えることができ、それによって、地面と噛み合う車輪の面積が大きくなる。したがって、この空気無しタイヤは、車輌が走行する地形に応じて車輌の性能を高くするように調整されうる。このタイヤは、ホイールハブに接触する第1の端部および第2の端部を有する複数のアーチ形部材を有する。これらのアーチ形部材は、第1の端部と第2の端部との間を外側に向かってアーチ状に延びる。これらのアーチ形部材は、ハブの周りに周方向に間隔を置いて配置され、かつハブから半径方向外側に延びる複数の可撓性フープを形成する。
【0006】
より具体的には、従来の空気無しタイヤは、均等な間隔で配置され半径方向に延び、ハブの軸線方向外側リム同士の間にアーチを形成する38個のフープで構成された、ケージを形成する。これらのフープは、所望の長さに切断され、かつばねの中心に通されたワイヤが充填された複数のらせんスチールばねで作られる。この従来のハブは、軸線方向に膨張/収縮してタイヤの直径を変えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アポロLRVの最初のワイヤーメッシュ構成は、容易に拡大縮小できないことが分かった。具体的には、ワイヤの直径を大きくして最初の構成の荷重の10倍の荷重を支えるタイヤを形成すると、2つの顕著な弱点が生じた。すなわち、1)地形に合わせる能力が失われ、したがって、牽引および振動を分離する能力が弱まった。2)ワイヤの応力が増大し、タイヤの機能寿命が短くなった。本発明によるタイヤは、これらの弱点を克服し、それによって、月、地球、および他の惑星の表面に対してタイヤの画期的な技術的進歩を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明によるタイヤは複数のらせんばねを含む。各らせんばねは、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部を相互に連結するアーチ形中央部とを含む。各らせんばねは、他の複数のらせんばねの少なくとも1つと絡み合わせられ、それによって、タイヤの全周に沿って延びる絡み合わせトロイダル構造を形成する。
【0009】
本発明の他の態様によれば、複数のらせんばねのうちの一部が車輪の第1の環状リムと車輪の第2の環状リムの少なくとも一方に固定されている。
【0010】
本発明の他の態様によれば、タイヤの軸線方向片側で、環状リムを有する車輪が、タイヤを車輪に固定する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、絡み合わせトロイダル構造はタイヤの第1のプライを形成する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、第2のプライは半径方向において第1のプライと重なり合う。
【0013】
本発明の他の態様によれば、第2のプライは、複数のらせんばねを有する絡み合わせトロイダル構造を有する。
【0014】
本発明の他の態様によれば、第2のプライの各らせんばねは、第1の端部と、第2の端部と、アーチ形中央部とを含む。第2のプライの各らせんばねは、第2のプライの少なくとも1つの他のらせんばねと絡み合わせられ、それによって、タイヤの全周に沿って延びる絡み合わせトロイダル構造を形成する。
【0015】
本発明による他のタイヤは複数のばねを含む。各ばねは、第1の端部と、第1の端部とは反対の第2の端部と、第1の端部と第2の端部を相互に連結するアーチ形中央部とを含む。各ばねは、第1の端部から半径方向外側に中央部まで延び、中央部から半径方向内側に第2の端部まで延びる。各ばねは、そのばねの第1の側の隣接するばねと絡み合わせられ、そのばねとは反対の第2の側の隣接するばねとさらに絡み合わせられ、それによって、タイヤの全周に沿って延びるトロイダル構造を形成する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、各ばねの第1の端部は、車輪の第1の環状リムに固定され、各ばねの第2の端部は、車輪の第2の環状リムに固定されている。
【0017】
本発明の他の態様によれば、各ばねは、車輪から半径方向外側に延びるアーチを形成する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、タイヤの軸線方向片側にて、環状リムを有する車輪は、複数のばねをこの車輪に固定する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、トロイダル構造はタイヤの第1のプライを形成する。
【0020】
本発明の他の態様によれば、第2のプライは半径方向において第1のプライと重なり合う。
【0021】
本発明の他の態様によれば、第2のプライは複数のばねを有するトロイダル構造を含む。
【0022】
本発明の他の態様によれば、各ばねは、第1の端部と、第1の端部とは反対の第2の端部と、第1の端部と第2の端部を相互に連結するアーチ形中央部とを含む。第2のプライの各ばねは、第1の端部から半径方向外側に中央部まで延び、中央部から半径方向内側に第2の端部まで延びる。各ばねは、そのばねの第1の側の隣接するばねと絡み合わせられ、そのばねとは反対の第2の側の隣接するばねと絡み合わせられ、それによって、タイヤの全周に沿って延びるトロイダル構造を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来のワイヤーメッシュシートの概略図である。
図2】本発明に使用される、絡み合わせられたらせんばねのシートを表す図である。
図3図2のシートを形成する中間ステップを表す図である。
図4図2のシートを形成する他の中間ステップを表す図である。
図5図2のシートのような2枚のシートを固定するステップを表す図である。
図6】本発明に使用されるらせんばねを表す図である。
図7図6のらせんばねをたわませた状態で表す図である。
図8】本発明による、タイヤと車輪の組立体の概略図である。
図9図8の線9−9に沿った断面図である。
図10図9の線10−10に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例の説明
このタイヤは、絡み合わせられた複数のらせんばね(たとえば、荷重を受けて弾性的に変形し、エネルギーの損失がほとんどないコイル状ワイヤ)を含んでいる。このタイヤは、車輪に取り付けるためのトロイダル形構造を形成する。このタイヤは、対応する車輌への振動伝達を抑制しつつ牽引を容易にするためにかみ合う表面に合わせることができる。複数のらせんばねが、車輌の荷重を支えること及び/又は分散させることを行う。このタイヤは空気入りタイヤであっても空気無しタイヤであってもよい。
【0025】
車輌の重量の下で、このタイヤは駆動または牽引することができ、あるいは車輌に方向性を与えることができる。タイヤの複数のらせんばねは、相互にたわみ、かつ移動することによってどんな地形にも受動的に合わせることができる。これらのらせんばねの絡み合わせ構造は、タイヤに安定性を与え、かつタイヤが回転して変化の多い地形とかみ合う際に構造自体が潰れるのを防ぐ。
【0026】
タイヤの複数のらせんばねは、限られた範囲の変形の間は弾性を有することができ、したがって、比較的剛性の高いフレームを使用して過剰な変形を防止することができる。
【0027】
半径方向に向けられた複数のばねを使用してタイヤを車輪に連結することができる。これらのばねは組み合わせ可能である。荷重を分散させることを目的として、他の複数のばねを半径方向から周方向に任意のバイアス角度でタイヤと組み合わせることができる。これらの他のばねはらせんばねであってよい。また、一例として、これらの他のばねは、タイヤの半径方向外側部分でタイヤに沿って周方向に延びてよい。
【0028】
複数のらせんばねを衝撃損傷から保護することと、及び/又は浮いてけん引力を発生させるタイヤの能力を変化させることをある種の外部カバー(すなわち、トレッド)に付加してもよい。
【0029】
一例として、4つの基本ステップを利用してタイヤの一例を製造することができる。すなわち、i)複数のらせんばねをねじり、タイヤの所望の円周に相当する長さを有する矩形シートを形成する。ii)複数のばねからなる矩形シートの端部同士を絡み合わせてメッシュシリンダを形成する。iii)メッシュシリンダの一方の端部を折り畳んで車輪の一つのリムに取り付ける、iv)メッシュシリンダの他方の端部を裏返して、車輪の軸線方向の対向する他のリムに取り付ける。
【0030】
本発明によるタイヤは、地球、月、火星、他の任意の惑星体上で使用可能である。なぜなら、このタイヤの各部材は、これらの惑星の大気および地形条件における動作が信頼できるからである。
【0031】
このタイヤは、そのままで利用されてよく、あるいは、部分荷重支持/分散システムまたは補助荷重支持/分散システムとして他のタイヤ種に組み込まれてもよい。しかし、このタイヤは空気もゴムも必要とせず、様々な環境で動作し、すべての地形に適合する。
【0032】
このタイヤは、アポロLRVの従来のワイヤーメッシュタイヤに対する改良を与える。このタイヤは、比較的少ない機能変更で複数のらせんばねの線径を大きくすることができるため大きな荷重能力を備える。このタイヤは、複数のらせんばねの線応力が構造全体にわたってより一様に分散されるためより長いサイクル寿命を供する。また、このタイヤは、絡み合わせられたらせんばね網の強度が基本的に、縁曲げされたワイヤーメッシュの強度よりも高いため、支持される車重の単位当たりの重量が比較的軽い。また、このタイヤは、複数のらせんばねを互いに編み合わせるのではなく互いにねじ込むことができるためより高い生産性を有する。また、製造上のばらつきに対処するために複数のらせんばねを圧縮しかつ伸長させることができる。最後に、このタイヤは、荷重分散ばねを付加して様々な位置および方向でタイヤ強度を変えることができるため、設計に関してより高い汎用性を有する。
【0033】
このタイヤは、らせんばねが変形時に消費するエネルギーが零に近いため、カーカスに摩擦材料またはヒステレティック材料を使用するタイヤと比べてエネルギー損失が比較的少ない。
【0034】
このタイヤは、不静定の荷重支持部材を含み、著しい損傷を受けた後でも正常に動作することができる。
【0035】
したがって、本発明によるタイヤは、車輌のエネルギー消費量を少なくする必要がある場合と、タイヤの障害が、起伏の多い地形を走行するうえで深刻な脅威になる場合と、車輌が極端な温度または高レベルの放射にさらされる場合と、車輌が銃撃または砲撃にさらされる場合の少なくとも1つの場合に利用することができる。
【0036】
図1に示されているように、従来の月面タイヤには編んだワイヤーメッシュが使用されている。しかし、上述のように、強度および耐久性を高くすることが望まれている。図2は、ワイヤーメッシュよりも強度および耐久性を高くすることのできる絡み合わせられた複数のらせんばねからなるメッシュシート50を示している。図3、4、および5は、図2に示されているようなメッシュシート50を形成する中間ステップを示している。図3には、回転させられ、それによって第2のらせんばね55と絡み合わせられる第1のらせんばね55が示されている。図4には、回転させられ、それによって、すでに絡み合わせた第1および第2のばね55と絡み合わせられる第3のらせんばね55が示されている。図5には、らせんばね55の2枚のメッシュシート50(すなわち、図2のシート)を連結するために回転させられるらせんばね55が示されている。図6は、上記に図2〜5で説明したように使用する単一のらせんばね55を示している。図7は、後述のように、タイヤで使用するのにたわませられた単一のらせんばね55を示している。
【0037】
図8〜10に示されているように、本発明による組立体100の一例は車輪200とタイヤ300とを含んでいる。車輪200は、タイヤ300を車輪に固定する環状リム202を各軸方向側部に有している。いずれか一方のリム202は、他方のリム202に対して固定されている。各リム202は、タイヤ300をリムに整合するための複数のソケット穴204を含んでいる。タイヤ300をリム200に固定するのに任意の他の適切な手段を使用してもよい。
【0038】
タイヤ300は、半径方向において車輪200から離れる方向に延びてアーチ形を構成するように、半径方向において車輪の方へ戻る複数のらせんばね310を含んでいる。各ばね310の各端部315は、車輪の対応するリム202の所で車輪に固定されてよい。各ばね310は、各端部315を相互に連結する中央部を有している。各端部315は、軸線方向の向きで固定される(図9)かあるいは斜めに固定されてよく、ばね310は一方のリム202から外側へ延び、次いで車輪300から離れる方向に延び、次いでばね310自体が反り返って、次いで内側へ延び、最後に他方のリム202の方へ延びている。各ばねの各端部315は、同じばねの他方の端部315と同軸に(あるいは該端部315に対して斜めに)向けられてよい。
【0039】
また、各ばね55は、隣接するばね55(図2参照)と絡み合わせられている。図2に示されているように、各ばね55は、そのばねの第1の側の隣接するばね55と絡み合わせられ、そのばねの第1の側とは反対の第2の側の隣接するばね55とさらに絡み合わせられる。したがって、複数のばね310は、半径方向および軸線方向に延び、タイヤ300の全周に沿って延びる絡み合わせトロイダル構造を形成する(図8〜10)。
【0040】
これらのらせんばね310は、任意の適切な長さ、ゲージ、およびピッチを有してよい。これらのらせんばね310は、タイヤの一連の半径方向位置にわたって連続的なメッシュを形成するようにコイル径(例えば、バレルばねが使用される。)を変えてよい。これらのらせんばね310は、2つまたは3つ以上のプライ、半径方向において半径方向外側の1つまたは2つ以上のプライと重ね合わせられた半径方向内側の1つまたは2つ以上のプライとして構成されてよい。これらのらせんばね310は、Ti−N合金、鋼、チタン、ポリマー、セラミック、または他の適切な任意の材料であってよい。
【0041】
上記の説明では、説明を簡潔および明確にするためと理解のためにある用語を使用したが、それによって従来技術の要件を超えた不要な制限が課されることはない。なぜなら、そのような用語は説明のために使用されており、広義に解釈されるべきものであるからである。さらに、本発明の説明および各図は一例であり、本発明の範囲は、図示または説明した厳密な詳細に限定されない。
【0042】
本発明の特徴、発見、および原則、本発明をどのように構成し使用するか、構成の特徴、ならびに得られる有利で新しく有用な結果について説明したが、新しく有用な構造、装置、部材、構成、部品、および組み合わせの範囲は、本明細書によって添付の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10