(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759997
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】表面コーティングを有する楔形ねじ山を備える管状接合部
(51)【国際特許分類】
F16L 15/04 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
F16L15/04 A
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-532679(P2012-532679)
(86)(22)【出願日】2010年10月11日
(65)【公表番号】特表2013-507588(P2013-507588A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】IB2010002584
(87)【国際公開番号】WO2011048455
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】61/250,406
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/900,209
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310017862
【氏名又は名称】テナリス・コネクシヨンズ・リミテツド
【氏名又は名称原語表記】Tenaris Connections Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌネズ,アドリアン・ホセ
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−517614(JP,A)
【文献】
特表昭63−501814(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0048108(US,A1)
【文献】
特開昭61−124792(JP,A)
【文献】
特表2008−527249(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0197343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 15/00 − 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管用ねじ接合部であって、
ピン部材及びボックス部材であり、該ピン部材が該ボックス部材の雌ねじ山に対応するよう構成された雄ねじ山を有するピン部材及びボックス部材と、
スタブフランク及び負荷フランクと、平坦な谷及び頂きと、を有する略ダブテイル型のプロフアイルを備える該雌ねじ山及び該雄ねじ山のねじ山形と、を具備しており、
該雌ねじ山は該ボックス上で1つの方向に幅を増大し、該雄ねじ山は該ピン上でもう1つの方向に幅を増大しているので、該ねじ山の該谷、頂き、及びフランクは一緒に動き、シールを形成し、該シール間で流体の流れに抵抗するシールを形成しており、該ねじ接合部は又
該雌ねじ山及び該雄ねじ山の特定の領域に付けられたフルオロポリマーベースのコーティングと、そして
該フルオロポリマーベースのコーティングを欠いた該雌ねじ山及び雄ねじ山の領域に配置された樹脂コーティングと、を具備しており、
該樹脂コーティングが該フルオロポリマーベースのコーティングに接着せず、
該フルオロポリマーベースのコーティングと樹脂コーティングは一緒になって該雌ねじ山及び該雄ねじ山の全表面上に実質的に均一なコーティング層を形成するねじ接合部。
【請求項2】
管接合部のねじ山表面を改良する方法であって、
雄楔形ねじ山を有するピン部材と、該ピン部材の該雄楔形ねじ山に対応するよう構成された雌楔形ねじ山を有するボックス部材と、を提供する過程であり、該雌及び雄楔形ねじ山が略ダブテイル型のプロフアイルを有する該ピン部材及び該ボックス部材と、を提供する過程と、
該雌及び該雄楔形ねじ山の全表面を表面処理する過程と、
該雌及び該雄楔形ねじ山の指定された領域にフルオロポリマーベースのコーティングを付ける過程と、そして
フルオロポリマーベースのコーティングに次いで、該雌及び該雄ねじ山の全ねじ山面に樹脂コーティングを付ける過程と、を具備しており、該樹脂コーティングは該フルオロポリマーベースのコーティングを欠いた領域に接着するよう構成される方法。
【請求項3】
該表面処理する過程が燐酸塩コーティング、蓚酸塩コーティング、及び硼酸塩コーティングから成るグループから選択される化学的処理を適用する過程を備える請求項2記載の方法。
【請求項4】
該表面処理する過程が機械的処理を適用する過程を備える請求項2記載の方法。
【請求項5】
該雌ねじ山及び雄ねじ山のねじ山頂きと、ねじ山谷の実質的に中央の領域と、にフルオロポリマーベースのコーティングを付ける過程を更に具備する請求項2記載の方法。
【請求項6】
該雌ねじ山及び雄ねじ山の全表面上に、フルオロポリマーベースのコーティング及び樹脂コーティングで一つの均一層を形成する過程を更に具備する請求項2記載の方法。
【請求項7】
該フルオロポリマーベースのコーティングを付ける前に、約2マイクロメートルから約6マイクロメートルの範囲内の該雌ねじ山及び雄ねじ山の面粗さを提供する過程を更に具備する請求項2記載の方法。
【請求項8】
該雌ねじ山及び雄ねじ山への付着の後に、該樹脂コーティングを熱で硬化させる過程を更に具備する請求項2記載の方法。
【請求項9】
該フルオロポリマーベースのコーティングを付けるために、フルオロポリマーベースのコーティングを有する溶剤混合物を提供する過程を更に具備する請求項2記載の方法。
【請求項10】
該溶剤が2メトキシ−1メチル−エチルアセテートとキシレンを有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
該混合物内に、該フルオロポリマーベースのコーティングが約20−40重量パーセントの範囲内で存在し、該溶剤が約60−70重量パーセントの範囲内で存在する請求項9記載の方法。
【請求項12】
該樹脂コーティングが該フルオロポリマーベースのコーティングに接着しない請求項2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される実施例は一般的に楔形ねじ山を有するねじ接合部に関する。特に、ここに開示される実施例は上に付けられた改良した表面コーティングを有する楔形ねじ山と該改良した表面コーティングを付ける方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングジョイント、ライナー及び他の油田用管は油井を掘削、完成、そして生産するため使われることが多い。例えば、ケーシングジョイントは坑壁内に置かれ、高い坑壁圧力(例えば、形成部圧力を超える坑壁圧力)に対し形成部を安定化し、防護するが、該圧力はさもないと該形成部を損傷させる。ケーシングジョイントはねじ結合部、溶接結合部又は当該技術で公知の何等かの他の結合機構により、縦一列の仕方で接続されてもよい管(例えば鋼又はチタン)の部分である。この様であるから、結合部は通常は、接続されたケーシングジョイントの内部と、該ケーシングジョイントの外壁及び該坑壁の内壁の間に形成される冠状部(すなわち、該形成部)と、の間に少なくとも1つのシールが形成されるよう設計される。該シールはエラストマー(例えば、O−リングシール)、ねじシール、金属対金属シール、又は当業者に公知の何等かの他のシールであってもよい。
【0003】
或る用語は、ここでは、特に、坑壁内へ降下させるために管列を組み立てる時の様に、ねじ付き管状接合部がそれらの中心軸線に沿って垂直位置で結合される場合に、従来理解される様に、使われることは理解されるべきである。典型的に、雌雄ねじ付き管結合では、該結合部の雄部品は“ピン”部材と呼ばれ、雌部品は“ボックス”部材と呼ばれる。ここで使われる時、“組み立て”はピン部材をボックス部材内に係合させ、トルク及び回転により該部材を一緒になるようねじ込むことを言う。更に、用語“選択的組み立て”は望ましいトルク量で、又はボックス部材に対するピン部材の相対位置(軸方向又は円周方向の)に基づき、ピン部材とボックス部材を一緒にねじ込むことを言う。更に、用語“ボックス面”はボックスねじから外方へ面するボックス部材の端部であると理解され、用語“ピンノーズ”は結合部のねじ山から外方へ面するピン部材の端部であると理解される。この様であるから、結合部の組み立て時、ピンのノーズはボックスの面内に、そして該面を過ぎるよう、突き刺されるか、又は挿入される。
【0004】
ねじ山の形状に言及すると、用語“負荷フランク”は、上にねじ山が形成されるそれぞれピン又はボックス部材の外端から離れるよう面し、該坑壁内にぶら下がる下部管状部材の重量を支える(すなわち、引っ張り負荷)ねじ山の側壁面を呼称する。同様に、“スタブフランク”は、それぞれピン又はボックス部材の外端の方に面し、該接合部の最初の組み立て時の上部管状部材の重さの様な、或いは下部管状部材を試錐孔底部に対するよう押すよう印加される力の様な、相互の方へ該接合部を圧縮する力(すなわち、圧縮力)を支持する、該ねじ山の側壁面を呼称する。
【0005】
産油国の管状品物で普通使われる1つの種類のねじ結合部は楔形ねじ山として知られる。最初に
図1Aと1Bを参照すると、楔形ねじ山を有する従来技術の管結合部100が示される。ここで使われる時、“楔形ねじ山”は、特定のねじ形に関係なく、ピン部材101とボックス部材102で反対方向に幅(すなわち、負荷フランク225及び226とスタブフランク232及び231の間の軸方向距離)が増加するねじ山である。結合部に沿ってねじ山の幅が変化する割合は、“楔形比”として知られる変数により規定される。ここで使われる時、“楔形比”は、技術的には比ではないが、スタブフランクリードと負荷フランクリードの間の差を言い、該差はねじ山の幅を結合部に沿って変化させる。更に、ここで使われる時、ねじ山“リード”は連続するねじ山上のねじ山部品間の差動距離を言う。この様であるから、“スタブリード”は該結合部の軸方向長さに沿った連続するねじ山ピッチのスタブフランク間の距離である。楔形比の詳細論議は、引用によりその全体がここに組み入れられる特許文献1で提供される。更に、楔形ねじ山は引用によりその全体がここに組み入れられる特許文献2、3、4及び5で広く開示される。
【0006】
なお
図1A及び1Bを参照すると、楔形ねじ山組み合わせのピンねじ山頂き222はピン部材101の遠位の端部108に向かって狭まり、一方ボックスねじ山頂き291は広くなる。軸線105に沿って動く(右から左へ)と、ピンねじ山頂き222は広くなり、一方ボックスねじ山頂き291は、該頂きがボックス部材102の遠位の端部110に近付くにつれ、狭まる。
図1Aに示す様に、該ねじはテーパー付けされ、ピンねじ山106は始めから終わりへ直径が増加し、一方ボックスねじ山107は相補的な仕方で直径が減じる。ねじテーパーを持つことは、ピン部材101をボックス部材102内に突き刺す能力を改善し、応力を該結合部中に分布させる。
【0007】
一般に、ねじ山シールは非楔形(すなわち、フリーランニング)ねじ山では達成が難しい。しかしながら、フリーランニング構成で楔形シールを形成することが出来ないねじ山形は、楔形ねじ山構成で使われる時、ねじシールを創る。当業者により理解されるべき様に、楔形ねじ山は何等特殊なタイプ又は形状のねじ山形を要しないので、種々のねじ山形が使われてもよい。適当なねじ山形の1例が、引用によりその全体がここに組み入れられる特許文献6で開示された半ダブテイルねじ山形である。もう1つのねじ山形は、引用によりその全体がここに組み入れられる特許文献7で開示される様に、多数小平面付きの負荷フランク又はスタブフランクを有する。上記ねじ山形の各々は“トラップされた”ねじ山形であると考えられ、対応する負荷フランク及び/又は対応するスタブフランクの少なくとも1部分は軸方向に重なり合うことを意味する。
【0008】
再び
図1A及び1Bを参照すると、楔形ねじ山では、ねじシールは、ピン負荷フランク226とボックス負荷フランク225の間及びピンスタブフランク232とボックススタブフランク231の間の結合部100の少なくとも1部分上で組立時に起こる干渉により引き起こされる接触圧力により達成される。谷292と221、頂き222と291の間の狭い近接又は干渉は、この様なフランク干渉の近くで起こる時ねじシールを完成させる。一般に、ピン部材101とボックス部材102上の谷と頂の間の干渉を増すか、又は前記フランクの干渉(“谷/頂き干渉”)を増すか、何れかにより、高い圧力が含まれてもよい。
【0009】
積極的停止トルク肩部を有する種々の楔形ねじ結合が存在するが(例えば、上記で参照された特許文献6)、楔形ねじ山は典型的にトルク肩部を有さず、従って該ねじの組立は“不静定”であり、結果として、ピン部材とボックス部材の相対位置は、印加されるべき与えられたトルク範囲で、組み立て時に、積極的停止トルク肩部を有する結合部より多く変動する。選択された組立でフランク干渉及び谷/頂き干渉を有するよう設計された楔形ねじについては、結合部はフランク干渉及び谷/頂き干渉の両者が、結合部が組み立てられると増加するように設計される(すなわち、トルクの増加がフランク干渉及び谷/頂き干渉を増加させる)。谷/頂き隙間を有するテーパー付き楔形ねじについては、該結合部が組み立てられる時該隙間は減少する。
【0010】
楔形ねじ山の設計と関係無く、対応するフランクは組立時相互に近付く(すなわち、隙間が減少する又は干渉が増加する)。不静定の組立はフランク干渉及び谷/頂き干渉が、結合部上で組み立てトルクを増やすことにより増やされることを可能にする。かくして、楔形ねじ山は、結合部をより多くのフランク干渉及び/又は谷/頂き干渉を持つよう設計することにより、或いは該結合部上の組み立てトルクを増やすことにより、ガス及び/又は液体の高い圧力をねじシールすることが出来る。しかしながら、増加した干渉と組み立
てトルクは組立時の結合部の応力を増やし、該応力は該結合部の早過ぎる故障へ導く。
【0011】
更に、示した様に、結合部100は、ピン部材101とボックス部材102上に、それぞれ配置された対応するシール面103と104の間の接触により創られる金属対金属のシール112を有する。金属対金属のシール112は、ねじ結合部100用にシールの完全性(すなわち、楔形ねじ山シールが充分でない時)の追加の対策を提供し、結合部100が高圧力ガスを含むよう意図された場合、特に有用である。金属対金属シール112はピン部材102の遠位の端部108に近く配置されて示されるが、金属対金属シール112は、ボックス部材102の遠位の端部110に近い場所を含むが、それに限定されない、結合部100の長さに沿うどんな場所にも位置付けられてよいことは当業者により理解されるべきである。
【0012】
或る場合に、ねじ結合部のシール特性を改良し、ねじの摩滅に抵抗し、そして耐腐食性を提供する様な、種々の理由で1つ以上の“ドライな”表面コーティングが結合部のねじ山面に付けられてもよい。該表面コーティングがドライな様に特徴付けられるのは、該コーティングは流動するドープ型潤滑剤として付けられるよりも、ねじ山形に恒久的に接着するからである。例えば、本出願の被譲渡人に譲渡された特許文献8は、フリーランニングねじと、多層で付けられた表面コーティングと、を有するねじ接合部を開示している。しかしながら、楔形ねじ山は、該ねじ山形自身の複雑で、高い裕度のシール特性のために、表面コーティングについての新しい困難を呈する。従って、フリーランニングねじに現在付けられる表面コーティングの有益な特性を示す楔形ねじ山面用のドライ表面コーティングのニーヅが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】マリス(Mallis)に発行され、ハイドリル社(Hydril Company)に譲渡された米国特許第6,206,436号明細書
【特許文献2】ブローズ(Blose)に発行され、ハイドリル社に譲渡された米国特許第RE30,647号明細書
【特許文献3】リーブス(Reeves)に発行され、ハイドリル社に譲渡された米国特許第RE34,467号明細書
【特許文献4】オルトロフ(Ortloff)に発行され、ハイドリル社に譲渡された米国特許第4,703,954号明細書
【特許文献5】モット(Mott)に発行され、ハイドリル社に譲渡された米国特許第5,454,605号明細書
【特許文献6】クレメンチッチ(Klementich)に発行された米国特許第5,360,239号明細書
【特許文献7】チャーチ(Church)に発行された米国特許第6,722,706号明細書
【発明の概要】
【0014】
1つの側面では、ここに開示される実施例はピン部材とボックス部材を有する管用ねじ接合部に関するが、該ピン部材は該ボックス部材の雌ねじに対応するよう構成された雄ねじを有し、該雌ねじ及び雄ねじのねじ山形は、スタブフランク及び負荷フランクと平坦な谷及び頂きとを有する略ダブテイル型のプロフアイルを備えており、該雌ねじは該ボックス上で1つの方向で幅を増加しており、そして該雄ねじは該ピン上でもう1つの方向で幅を増加しているので、該ねじ山の谷、頂き及びフランクは一緒に動き、シールを形成するが、該シール間の流体の流れに抵抗する該シールを形成する。該ねじ接合部は更に、該雌ねじ及び雄ねじの特定の領域に付けられたフルオロポリマーベースのコーティングと、該フルオロポリマーベースのコーティングを欠く該雌ねじ及び雄ねじの領域内に配置された
樹脂コーティングと、を有しており、該フルオロポリマーベースのコーティングと該樹脂コーティングは該雌ねじ及び雄ねじ山形の全表面上に実質的に均一な厚さの層を形成するよう構成される。
【0015】
他の側面では、ここで開示される実施例は管接合部のねじ山面を改良する方法に関しており、該方法は雄楔形ねじ山を有するピン部材と、該ピン部材の該雄楔形ねじ山と対応するよう構成された雌楔形ねじ山を有するボックス部材と、を提供する過程と、該雌及び雄楔形ねじ山の全面を表面処理する過程と、該雌及び雄楔形ねじ山の指定された領域にフルオロポリマーベースのコーティングを付ける過程と、そして該雌及び雄ねじ山の全ねじ山面に、フルオロポリマーベースのコーティングに次いで、樹脂コーティングを付ける過程と、を具備しており、該樹脂コーティングは該フルオロポリマーベースのコーティングを欠いた領域に接着するよう構成される。
【0016】
本発明の他の側面と利点は次の説明と附属する請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A-1B】楔形ねじ山を有する従来技術の管状結合部の断面を示す。
【
図2】本開示の実施例に依るねじ山面コーティングを有する楔形ねじ山の断面を示す。
【実施例1】
【0018】
1側面では、ここで開示される実施例は楔形ねじ山に付けられる表面コーティングと、楔形ねじ山への該表面コーティングを付ける関連方法に関する。
図2を参照すると、本開示の実施例による表面コーティング300を有する楔形ねじ山形の断面が示される。表面コーティング300は第1コーティング310と第2コーティング312を有し、該両コーティングは一緒になって該ねじ山形の全表面上に1つの均一表面コーティング層300を形成する。
図2は、ピン部材のねじ山に付けられた表面コーティング300を示し、表面コーティング300はピン部材及びボックス部材の両ねじ山、又はピン部材のねじ山のみ、又はボックス部材のねじ山のみ、に付けられてもよいことは理解されるべきである。或る実施例では、表面コーティング300はボックス部材に付けられ、もう1つの耐腐食性コーティング及び/又は潤滑剤がピン部材に付けられてもよい。
【0019】
ここで開示された実施例では、多数コーティング付着が、ねじ山表面全体を完全にカバーする単一均一コーティング層として表面コーティング300を究極的に完成するよう要求されてもよい。ここに開示される実施例の付着方法は次の様に進行する。最初に、表面前処理(すなわち、化学的又は機械的表面処理)(
図2には示されてない)が次のコーティング用に該ねじ山面を準備するためにねじ山面全体に適用される。化学的処理はねじ山表面用の準備コーティングであり、何等実質的厚さを有しなくてもよい。該化学的コーティングは燐酸塩コーティング、蓚酸塩コーティング及び硼酸塩コーティングを含むが、それらに限定されない。該化学的コーティングは、ねじ山表面への次のコーティングの最高の接着を促進し、該ねじ山面の摩滅及び腐食を防止するために、該ねじ山面にベースを形成する。例えば、次のコーティングによる該ねじ山表面への適当な接着を可能にするために、該ねじ山表面の面仕上げ又は粗さは、該化学的コーティングの付着後或る範囲内にあることが要求される。機械的処理はサンドブラスト又は他の研磨処理を含む。或る実施例では、平均表面粗さ(Ra)は約2.0マイクロメートルから6.0マイクロメートルの範囲内にある。他の実施例では、該平均表面粗さは約2.0から4.0マイクロメートルの範囲内にある。
【0020】
該表面処理後、該ねじ山表面に第1コーティング310が付けられる。第1コーティン
グ310は溶剤と一緒に付けられてもよく、該溶剤は混合物の粘度を付着粘度(すなわち、該混合物を薄めるので、該混合物は該ねじ山表面により容易に付けられる)まで減じる。コーティング混合物に使われてもよい典型的有機溶剤は、2メトキシ−1メチル−エチルアセテート、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルアミルアセテート、ダイイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、及び上記品の混合物を含むが、それらに限定されない。該ねじ山表面上への第1コーティング310の付着後、該溶剤は典型的に該混合物から蒸発し、該ねじ山表面上の層として該第1コーティング310を残す。
【0021】
第1コーティング310は一般に該ねじ山表面の特定の領域、すなわち、ねじ山頂き面304と、該ねじ山谷面302の実質的に中央の領域302Aと、に付けられる。第1コーティング310は、該第1コーティング310の付着方法と、楔形ねじ山の構造により課せられる制限のために、ねじ山谷面302の実質的に中央の領域にだけ付けられる。第1コーティング310は一般に該ねじ山へ半径方向に付けられる(例えば、中心軸305に実質的に直角な方向で)。該半径方向が使われるのは、該半径方向が該谷面により均一な分布を生じ、かくして次のコーティングを付ける工程経過を少なくしか要しないからである。
【0022】
この特殊な付着方法のため、該ねじ山形の構造は該第1コーティング310が付けられるねじ山形の領域に関して、制限を課す。前に説明した様に、或る実施例では、楔形ねじ山はトラップされた又はダブテイル型のねじ山形として特徴付けられる。
図2で図解される様に、ダブテイルのねじ山形はねじ山谷302近くで短い軸方向幅を、そしてねじ山頂き304近くで長い軸方向幅を有する。かくして、ねじ山谷302の部分又は領域は隣接ねじ山頂き304と重なり合う、又は該ねじ山頂きによりカバーされる。ねじ山谷302の実質的に中央の領域は
図2で302Aで示され、一方該重なり合う領域は302Bで示される。従って、第1コーティング310はねじ山谷302の実質的に中央の領域302Aに付けられるのみで、一方該コーティングはねじ山頂き304の面全体に付けられる。第1コーティング310は実質的に低い摩擦と低い表面張力特性を有する(すなわち、次のコーティングは第1コーティングに容易には付着しない)。ここに開示した実施例の低い摩擦値は約0.08より小さい。他の実施例では、低い摩擦値は約0.04より小さい。第1コーティング310の低い表面張力特性は下記で説明する様に、第2コーティングの付着に有利である。
【0023】
第2コーティング312は第1コーティング310の後に、注入、スプレイ又は刷毛塗りによりねじ山の全表面に付けられる。しかしながら、第1コーティングの低い表面張力特性のために、第2コーティング312は第1コーティング310によりはじかれ、該ねじ山形の未コート領域の方へ移る。該第2コーティング312は一般的に、該第2コーティングの表面エネルギーが第1コーティングの表面エネルギーより高いと云う、両コーティング間の表面エネルギーの差のために、第1コーティング310によりはじかれる。或る実施例では、第2コーティングは第1コーティングの少なくとも2倍の表面エネルギーを有する。ここで開示した実施例の表面エネルギーの低い値は、約0.05N/m(約50dyne/cm)より小さい値である。他の実施例では、表面エネルギーの低い値は約0.02N/m(約20dyne/cm)より小さい。
【0024】
第1コーティング310が付けられた後、該ねじ山形の未コート領域は一般的に、ねじフランク306(スタブ及び負荷の両フランク)と、該ねじ谷302の最外領域302B(軸方向)と、を含んでおり、該最外領域302Bは、ねじ山谷302からねじ山フランク306へのねじ山形移行部303内の移行部303の方へ、該中央領域302Aから離
れるように延びている。第2コーティング312の付着後、結合部のねじ山面上には1層の均一表面コーティング300(すなわち、一定厚さのコーティング)が存在する。該表面コーティング300は必要なら熱処理により硬化される。或る実施例では、約150℃までの、或いはコーティングに依ってはもっと高温の付着後熱処理が行われてもよい。
【0025】
1例では、第1コーティング310はフルオロポリマーベースのコーティングであってもよい。該フルオロポリマーベースのコーティングは、エポキシの様な熱硬化材内に分散されたフルオロポリマー固体(例えば、粉体)を有してもよい。該エポキシはエポキサイド(ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとノボラックエポキシ樹脂のみならず、当該技術で公知の何等かの他のエポキシを含むが、それらに限定されない、従来のグリシジルエポキシの様な)と当該技術で公知の硬化剤から形成される。該フルオロポリマーベースのコーティングは、中に分布するフルオロポリマーを有する熱硬化性網状結合を形成するよう硬化剤と反応する反応性エポキシを有する。該熱硬化材は、未反応であるが、望まれるねじ山表面上に付着時に硬化する反応性樹脂として送られる(すなわち、付けられる)。
【0026】
該フルオロポリマー固体は、第1コーティングの望ましい特性(例えば、シール能力、耐摩滅性、耐腐食性、耐久性、他)を示すために指定割合で該エポキシ内に分散されてもよい。或る実施例では、該フルオロポリマー固体は約20−40重量パーセント寄与し、該エポキシは約40−60重量%寄与してもよい。加えて、2酸化チタンが該混合物内に存在し、5−15重量パーセント寄与してもよい。ここで開示された実施例では、第1コーティング310の厚さは約10−40マイクロメートルの範囲内で変化してもよい。
【0027】
或る実施例では、該フルオロポリマー粉体はポリテトラフルオロエチレン{“ピーテーエフイー(PTFE)”}であってもよい。ここで開示される実施例で使われてもよいフルオロポリマーの他の例は、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂{“ピーエフエイ(PFA)”}、フッ化エチレンプロピレン{“エフイーピー(FEP)”}、ポリエチレンテトラフルオロエチレン{“イーテーエフイー(ETFE)”}、ポリフッ化ビニル{“ピーブイエフ(PVF)”}、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン{“イーシーテーエフイー(ECTFE)”}、ポリビニリデンフルオライド{“ピーブイデーエフ(PVDF)”}、ポリクロロトリフルオロエチレン{“ピーシーテーエフイー(PCTFE)”}、そしてパーフルオロポリエーテルホンブリン{“ピーエフピーイー(PFPE)”}、を含むがそれらに限定されない。
【0028】
第2コーティング312はポリマー樹脂であり、該樹脂は該ねじ山の未カバー面、又は第1コーティング310によりなおカバーされてはいない面、をカバーするよう付けられる。第2コーティング312は該ねじ山面に着けられた後弾性特性を有してもよい。ポリマー樹脂の機能は該第1コーティングにより発生されたギャップを充たすことである。該弾性特性が有利であるのは、該材料が、各組み立てと分解後に、該材料の完全な侭のシール容量を伴いながら該材料の形状を回復するからである。該第2コーティングとして使われる樹脂の種類は、エポキシ、ポリエステルそしてエステルエポキシ樹脂を含むがそれらに限定されない。ここで開示した実施例では、第2コーティング312の厚さは約10−40マイクロメートルの範囲内で変わってもよい。第1コーティング310の低い摩擦と低い表面張力特性のために、該第2コーティング312、又は樹脂は、該第1コーティング310を欠くねじ山面の領域に選択的に分布する。換言すれば、第1コーティング310の低摩擦特性は第2コーティングが、第1コーティング310を欠くねじ山面の領域に移動するよう促進する(例えば、追い出すことにより)。かくして、第1コーティング310及び第2コーティング312は、下記で詳細に説明される様に、それらのそれぞれの別々の領域を占めることにより、ねじ山面全体上に1つの均一コーティング層300を形成する。
【0029】
代わりの実施例では、コーティングを付ける前に、銅メッキ層が該ねじ山面に付けられてもよい。或る実施例では、表面処理で約2.0マイクロメートルから6.0マイクロメートルの範囲内の平均面粗さ(Ra)を提供してもよい。他の実施例では、該平均面粗さは約2.0と4.0マイクロメートルの間にあってもよい。耐腐食性合金はより厳しい又は極端な下向き掘削孔環境に耐えるためにより高クロム含有量を有してもよい。当業者は耐腐食性合金の選択を理解するであろう。
【0030】
有利なことは、本開示の実施例は改良された摩滅防止及び耐焼き付き性の特性を有するねじ山面コーティングを提供し、該特性は該ねじ結合部が多数回の組み立て及び分解に耐えるこの様な表面コーティングを有することを可能にする。多数回の組み立て及び分解を乗り越えるようねじ結合の寿命を延ばすことは、摩耗した又は損傷したねじ結合部の取り換えに付随するコストを減じる。テストデータは、約1.289×10
4Nm(約9,500フートポンド)トルク及び約2.714×10
4Nm(20,000フートポンド)トルクの間のトルク値で組み立てられ、ここで開示した実施例の表面処理を有する楔形ねじ結合部が、何れの連続する組み立て及び分解に於いても、ねじ山及びシール面の摩滅を経験しないことを示した。
【0031】
加えて、ここで開示される実施例の表面コーティングは、組立時金属対金属の接触を除くことによりねじ結合部用に潤滑特性を提供する。更に、該表面コーティングは該ねじ結合部のシール特性を改良する。なお更に、該表面コーティングは改良された耐腐食性を提供し、それにより該ねじ結合部の有用寿命を延長させる。該ねじ結合部が長く役立ち続けられ得る程、保守及び機器交換のコストが減じられる。最後に、該表面コーティングは環境に優しく、何等汚染する可能性のある要素を含まない。
【0032】
本開示が限定した数の実施例に関し説明されたが、本開示の利点を得た当業者は、ここに説明した開示の範囲から離れることなく他の実施例が工夫されることを評価するであろう。従って、本開示の範囲は附属する請求項に依ってのみ限定されるべきである。